(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要約
この開示の組成、材料、調製方法、装置、およびシステムは各々、いくつかの局面を有し、そのいずれの単一の1つもその望ましい属性のみを担うものではない。この発明の範囲を限定することなく、そのより顕著な特徴を以下に簡単に論じる。
【0005】
本明細書中に直接に規定していないいずれの用語も、当該技術分野で理解されるようなそれらと一般的に関連付けられる意味のすべてを有すると理解されなければならない。ある用語を以下または明細書中のどこかで論じて、さまざまな実施形態の組成、方法、システムなど、およびそれらをどのように作ったり用いたりするかを記載する際に、実務者に対する付加的な案内を与える。1つよりも多くのやり方で同じことを述べることがあることが認められるであろう。その結果、本明細書中で論じる用語の任意の1つ以上について代替的な文言および同義語を用いることがある。本明細書中で用語が練られたり論じられたりしているか否かに何の意義も置かれるべきではない。いくつかの同義語または置換可能な方法、材料などを提供する。1つ、または2、3の同義語または均等物の記載は、明示的に述べなければ、他の同義語または均等物の使用を排除するものではない。用語の例を含む明細書中の例の使用は例示の目的のためのみのものであり、本明細書中の実施形態の範囲および意味を限定するものではない。
【0006】
本明細書中に開示する実施形態は、材料の磁性に悪影響を及ぼすことなくガーネット中
のイットリウム(Y)または他の希土類金属を低減するまたは排除するように、RF適用例で用いる合成ガーネットを改変(modify)するための方法を含む。いくつかの実施形態では、希土類含有量が大幅に低減された改変合成ガーネット組成は、すべてのセル方式基地局に必要な構成要素であるアイソレータおよびサーキュレータなどの装置でフェライト材料として用いるのに好適な性質を有するように設計される。
【0007】
いくつかの実施形態は、ビスマスと1つ以上の高原子価イオンとの組合せなどの他の化学物質でガーネット構造中のイットリウム(Y)の少なくともいくらかを置換する方法を含む。置換化学物質は、材料の性能に悪影響を及ぼすことなくYの含有量を低減するように選択される。本明細書中に記載する希土類置換物は、イットリウム鉄ガーネット(YIG)などの、あるガーネット構造の合成におけるイットリウム酸化物の必要性を実質的に低減するとともに、セル方式基地局のための装置での使用を含むがこれに限定されないさまざまな電子的適用例で有用な改変結晶性材料を提供する。
【0008】
1つの実施形態では、合成ガーネットを改変するための方法は、ガーネット構造の十二面体部位上のイットリウム(Y)のいくらかの代わりにビスマス(Bi)を用いることと、好ましくは+3よりも大きい高原子価の非磁性イオンを八面体部位に導入してガーネット中の鉄(Fe)のいくらかを置き換えることとを備える。置換イオンの量および組合せならびに処理技術は、結果的に得られる材料が、低減されたイットリウム(Y)含有量とともに線幅が低い高い磁化を確実に有するように選択される。いくつかの実施形態では、カルシウム(Ca)も、高原子価イオンによって誘導される電荷補償のためのガーネット構造の十二面体部位に導入される一方で、同時に残余のイットリウム(Y)のいくらかまたはすべてを置き換える。いくつかの他の実施形態では、方法は、バナジウム(V
5+)などの1つ以上の高原子価イオンをガーネット構造の四面体部位に導入して、結果的に得られる材料の飽和磁化をさらに低減することをさらに備える。
【0009】
1つの実現例では、改変合成結晶性材料は、式Bi
xCa
y+2xY
1−x−y−2zFe
5−y−zZr
yV
zO
12で表わされ、式中、xは0.5以上1.4以下であり、yは0.3以上0
.55以下であり、zは0以上0.6以下である。BiおよびCaは十二面体部位上に置かれ、Zrは八面体部位に置かれ、Vは四面体部位上に置かれる。いくつかの形態では、少量のニオビウム(Nb)を八面体部位の上に置いてもよく、少量のモリブデン(Mo)を四面体部位の上に置いてもよい。好ましくは、改変結晶性材料は、11エルステッド以下の磁気共鳴線幅を有する。
【0010】
別の実施形態では、改変合成結晶性材料は式Bi(Y,Ca)
2Fe
4.2M
I0.4M
II0.4O
12で表わされ、式中、M
IはFeの代わりの八面体置換物であり、In、Zn、Mg、Zr
、Sn、Ta、Nb、Fe、Ti、Sb、およびその組合せからなる群から選択可能であり、式中、M
IIはFeの代わりの四面体置換物であり、Ga、W、Mo、Ge、V、Si、およびその組合せからなる群から選択可能である。
【0011】
また別の実現例では、改変合成結晶性材料は式Bi
0.9Ca
0.9xY
2.1−0.9x(Zr
0.7Nb
0.1)
xFe
5−0.8xO
12で表わされ、式中、xは0.5以上1.0以下である。
【0012】
また別の実現例では、改変合成結晶性材料は、式Bi
xY
3−x−0.35Ca
0.35Zr
0.35
Fe
4.65O
12で表わされ、式中、xは0.5以上1.0以下であり、より好ましくはxは0.6以上0.8以下である。
【0013】
また別の実現例では、改変合成結晶性材料は、式Y
2.15−2xBi
0.5Ca
0.35+2xZr
0.35V
xFe
4.65−xO
12で表わされ、式中xは0.1以上0.8以下である。
【0014】
また別の実現例では、改変イットリウム系ガーネット構造を提供する。改変イットリウム系ガーネット構造は、ビスマス(Bi
3+)およびカルシウム(Ca
2+)でドープされた十二面体部位と、四価または五価のイオンでドープされた八面体部位とを備え、Bi
3+は十二面体部位の約0〜100原子%を占め、Ca
2+は十二面体部位の約0〜90原子%を占め、四価または五価のイオンは八面体部位の約0〜50原子%を占め、当該改変合成イットリウム系ガーネット構造の磁気共鳴線幅は0〜50エルステッドの間である。いくつかの実現例では、改変イットリウム系ガーネット構造はバナジウム(V
5+)でドープされた四面体部位をさらに備え、V
5+は四面体部位の約0〜50原子%を占める。好ましくは、イットリウムは、改変イットリウム系ガーネット構造の十二面体部位の残部を占める。いくつかの実現例では、改変イットリウム系ガーネット構造は、アイソレータ、サーキュレータ、または共振器などのRF装置中のフェライト材料として組入れられる。
【0015】
有利には、置換物は、ガーネット構造の八面体部位上で四価、五価および他のイオンを用いることを可能にし、その結果、低減されたY含有量とともに低い線幅を有する、潜在的に高い磁化を生じる。
【0016】
いくつかの実現例では、本開示は、十二面体部位を含む構造を有する合成ガーネット材料に関し、ビスマスが十二面体部位のうち少なくともいくつかを占める。ガーネット材料の誘電率値は少なくとも21である。
【0017】
いくつかの実現例では、誘電率値は25〜32の範囲に入り得る。いくつかの実現例では、ガーネットを式Bi
3−x(REまたはCa)
xFe
2−y(Me)
yFe
3−z(Me′)
zO
12
で表わすことができ、式中、xは1.6以上2.0以下であり、REは希土類元素を表わし、MeおよびMe′の各々は金属元素を表わす。xの値は約1.6であり得る。金属元素MeはZrを含むことができ、yの値は0.35以上0.75以下であり得る。yの値は約0.55であり得る。金属元素Me′はVを含むことができ、zの値は0以上0.525以下であり得る。zの値は、ガーネットが実質的に希土類を含まず、かつ式がBi
1.4Ca
1.6Zr
0.55V
0.525Fe
3.925O
12であるように、約0.525であり得る。そのような例示的な組成について、誘電率値は約27であり得る。いくつかの実施形態では、ガーネット材料は、12エルステッドよりも小さいフェリ磁性共鳴線幅値を有することができる。
【0018】
多数の実現例に従うと、本開示は、十二面体部位、八面体部位、および四面体部位を有する合成ガーネット材料を作製するための方法に関する。方法は、十二面体部位の少なくともいくつかにビスマスを導入することを含む。方法は、八面体および十二面体部位のいずれかまたは両方の少なくともいくつかに高分極イオンを導入してガーネット材料について少なくとも21の誘電率値を生じることをさらに含む。
【0019】
いくつかの実現例では、高分極イオンは非磁性イオンを含むことができる。非磁性イオンは、低い磁気共鳴線幅を維持するように選択される濃度で八面体部位にジルコニウムを含むことができる。磁気共鳴線幅は12エルステッド以下であり得る。非磁性イオンは四面体部位にバナジウムを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、誘電率値は25〜32の範囲内に入り得る。いくつかの実施形態では、ビスマスおよび高分極イオンの導入の結果、実質的に希土類を含まないガーネット材料を得ることができる。
【0021】
多数の実現例では、本開示は、複数の信号ポートを有する導体を含むサーキュレータを含むことができる。サーキュレータは、磁場を与えるように構成される1つ以上の磁石をさらに含む。サーキュレータは、磁場により無線周波数(RF)信号が信号ポートの間を
選択的に経路設定されるように、導体に対して配設される1つ以上のフェライトディスクと1つ以上の磁石とをさらに含む。1つ以上のフェライトディスクの各々は、少なくとも21の向上した誘電率値と、少なくともいくつかのガーネット構造とを有する。ガーネット構造は十二面体部位を含み、十二面体部位の少なくともいくつかはビスマスによって占められる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ガーネット構造は実質的にイットリウムを含まないものであり得る。いくつかの実施形態では、ガーネット構造は実質的に希土類元素を含まないものであり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、フェライトディスクは円形のディスクであり得る。いくつかの実施形態では、円形のフェライトディスクは、(ε/ε´)の平方根だけ直径が小さくされ得、式中、εは14〜16の範囲の誘電率であり、ε′は向上した誘電率である。いくつかの実施形態では、サーキュレータは横方向磁気(TM)モード装置であり得る。
【0024】
いくつかの実現例に従うと、本開示は、その上に1つ以上の構成要素を受けるように構成される実装プラットフォームを含むパッケージ化されたサーキュレータモジュールに関する。パッケージ化されたサーキュレータモジュールは、実装プラットフォーム上に実装されるサーキュレータ装置をさらに含む。サーキュレータ装置は複数の信号ポートを有する導体を含む。サーキュレータ装置は、磁場を与えるように構成される1つ以上の磁石をさらに含む。サーキュレータは、磁場により無線周波数(RF)信号が信号ポートの間を選択的に経路設定されるように、導体および1つ以上の磁石に対して配設される1つ以上のフェライトディスクをさらに含む。1つ以上のフェライト磁石の各々は、少なくとも21の向上した誘電率値と少なくともいくつかのガーネット構造とを有する。ガーネット構造は十二面体部位を含み、少なくともそのいくつかはビスマスによって占められる。パッケージ化されたサーキュレータモジュールは、実装プラットフォーム上に実装され、サーキュレータ装置を実質的に囲みかつ保護するように寸法決めされる筺体をさらに含む。
【0025】
いくつかの実現例では、本開示は、複数の構成要素を受けるように構成される回路基板を含む無線周波数(RF)回路板に関する。回路板は、回路基板上に配設され、RF信号を処理するように構成される複数の回路をさらに含む。回路板は、回路基板上に配設され、回路のうち少なくともいくつかと相互接続されるサーキュレータ装置をさらに含む。サーキュレータ装置は複数の信号ポートを有する導体を含む。サーキュレータ装置は磁場を与えるように構成される1つ以上の磁石をさらに含む。サーキュレータは、磁場により無線周波数(RF)信号が信号ポートの間を選択的に経路設定されるように導体および1つ以上の磁石に対して配設される1つ以上のフェライトディスクをさらに含む。1つ以上のフェライトディスクの各々は、少なくとも21の向上した誘電率値と、少なくともいくつかのガーネット構造とを有する。ガーネット構造は十二面体部位を含み、その少なくともいくつかはビスマスで占められる。回路板は、RF回路板へのおよびRF回路板からのRF信号の通過を容易にするように構成される複数の接続特徴をさらに含む。
【0026】
いくつかの実現例に従うと、本開示は、RF信号の送信および受信を容易にするように構成されるアンテナアセンブリを含む無線周波数(RF)システムに関する。システムは、アンテナアセンブリに相互接続され、アンテナアセンブリによる送信のための送信信号を生成し、かつアンテナアセンブリからの受信信号を処理するように構成されるトランシーバをさらに含む。システムは、送信信号および受信信号の経路設定を容易にするように構成されるフロントエンドモジュールをさらに含む。フロントエンドモジュールは1つ以上のサーキュレータを含み、各々のサーキュレータは複数の信号ポートを有する導体を含む。サーキュレータは、磁場を与えるように構成される1つ以上の磁石をさらに含む。サーキュレータは、磁場により無線周波数(RF)信号が信号ポートの間を選択的に経路設
定されるように導体および1つ以上の磁石に対して配設される1つ以上のフェライトディスクをさらに含む。1つ以上のフェライトディスクの各々は、少なくとも21の向上した誘電率値と、少なくともいくつかのガーネット構造とを有した。ガーネット構造は十二面体部位を含み、その少なくともいくつかはビスマスによって占められる。
【0027】
いくつかの実施形態では、システムは基地局を含むことができる。いくつかの実施形態では、基地局はセル方式基地局を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
いくつかの実施形態の詳細な説明
本明細書中に付与する見出しは、存在する場合は、便宜上のみのものであり、請求する発明の範囲または意味に必ずしも影響を及ぼすものではない。
【0030】
図1は、1つ以上の化学元素(ブロック1)、化学化合物(ブロック2)、化学物質(ブロック3)、および/または化学混合物(ブロック4)をどのように処理して、本明細書中に記載の1つ以上の特徴を有する1つ以上の材料(ブロック5)を生じることができるかを概略的に示す。いくつかの実施形態では、そのような材料は、所望の誘電性(ブロ
ック7)、磁性(ブロック8)、および/または高度な材料特性(ブロック9)を含むように構成されるセラミック材料(ブロック6)に形成可能である。
【0031】
いくつかの実施形態では、以上の性質のうち1つ以上を有する材料は、無線周波数(RF)適用例などの適用例(ブロック10)で実現可能である。そのような適用例は、装置12において、本明細書中に記載のような1つ以上の特徴の実現例を含むことができる。いくつかの適用例では、そのような装置を製品11においてさらに実現可能である。そのような装置および/または製品の例を本明細書中に記載する。
【0032】
本明細書中には、イットリウム鉄ガーネット(YIG)などの合成ガーネット組成を改変して、そのような組成中の希土類金属の使用を低減するまたは排除する方法を開示する。本明細書中には、希土類金属の含有量が低減されたまたは希土類金属を含有しない合成ガーネット材料、その材料を生産する方法、ならびにそのような材料を組入れる装置およびシステムも開示する。開示に記載の実施形態に従って調製される合成ガーネット材料は、マイクロ波磁気適用例について好ましい磁性を呈する。これらの好ましい性質は、低い磁気共鳴線幅、最適化された密度、飽和磁化、および誘電正接損失を含むがそれらに限定されない。出願人らは、驚くべきことに、イオンのある組合せでガーネット組成をドープし、これをある処理技術を用いて調製すると、希土類元素のすべてではなくてもかなりの量を置換することができ、さらに依然として、イットリウム(Y)または他の希土類元素を含有する市販のガーネットのような、優れていなくても匹敵する性能特性を有するマイクロ波磁性結晶性材料という結果をもたらすことを見出した。
【0033】
合成ガーネットは典型的にA
3B
5O
12の式単位を有し、式中、AおよびBは三価の金属イオンである。イットリウム鉄ガーネット(YIG)は、Y
3Fe
5O
12の式単位を有する合成ガーネットであり、これは3+酸化状態のイットリウム(Y)および3+酸化状態の鉄(Fe)を含む。YIG式単位の結晶構造を
図2に描く。
図2に示すように、YIGは十二面体部位、八面体部位、および四面体部位を有する。Yイオンは十二面体部位を占める一方で、Feイオンは八面体および四面体部位を占める。結晶分類では立方晶である各々のYIG単位セルは、これらの式単位のうち8つを有する。
【0034】
改変合成ガーネット組成は、いくつかの実施形態では、結果的に得られる材料がマイクロ波適用例のための所望の磁性を維持するように、他のイオンの組合せでイットリウム鉄ガーネット(YIG)中のイットリウム(Y)のいくらかまたはすべてを置換することを備える。材料の性質を改変するために異なるイオンを用いたYIGのドーピングに向けた試みが過去に存在した。ビスマス(Bi)でドープされたYIGなどのこれらの試みのいくつかは、D. B. Cruickshankによる「Microwave Materials for Wireless Applications」に記載され、その全体がここに引用により援用される。しかしながら、実際には、置換物として用いられるイオンは、たとえば、磁性イオンそれ自体によりまたは磁気イオンに隣接する環境に対する非磁性イオンの影響によって誘導されるスピンカント(spin canting)により予測可能に振舞わないことがあり、整列度が低くなってしまう。このように、結果的に得られる磁性を予測することができない。さらに、いくつかの場合、置換の量は限られる。ある限界を超えると、イオンはその好ましい格子部位に入らず、第2相化合物中で外側に留まるかまたは別の部位に漏れてしまう。加えて、イオンの大きさおよび結晶学的方位の優先が高い置換レベルで競合することがあったり、または置換イオンがイオンの大きさおよび他の部位上のイオンの配位によって影響されたりする。このように、正味磁気挙動は独立した副格子の和であるまたは単一のイオン異方性であるという仮定が、磁性を予測する際に常に当てはまるわけではないことがある。
【0035】
マイクロ波磁気適用例のためのYIG中の希土類金属の効果的な置換を選択する際の考慮点は、結果的に得られる改変結晶構造中の密度の最適化、磁気共鳴線幅、飽和磁化、キ
ュリー温度、および誘電正接損失を含む。磁気共鳴は回転電子から導出され、これは、適切な無線周波数(RF)で励起されると、印加される磁場および周波数に比例した共鳴を示す。共鳴ピークの幅は通常は電力半値点で規定され、磁気共鳴線幅と称される。低い線幅は、すべての低挿入損失フェライト装置に求められる低い磁気損失として現われるので、材料の線幅が低いことが一般的に望ましい。本発明の好ましい実施形態に従う改変ガーネット組成は、イットリウム含有量が低減され、依然として低い線幅およびマイクロ波磁気適用例について他の望ましい性質を維持する単結晶または多結晶材料を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、イットリウム系ガーネットは、二価(+2)、三価(+3)、四価(+4)、五価(+5)、または六価(+6)非磁性イオンなどの1つ以上のイオンを構造の八面体部位に導入して鉄(Fe
3+)の少なくともいくらかを置き換えることと組合せて、ガーネット構造の十二面体部位上のイットリウム(Y
3+)のいくらかの代わりにビスマス(Bi
3+)を用いることによって改変される。好ましい実現例では、ジルコニウム(Zr
4+)またはニオビウム(Nb
5+)などの1つ以上の高原子価非磁性イオンを八面体部位に導入することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、イットリウム系ガーネットは、高原子価イオンによって誘導される電荷補償のために、構造の十二面体部位中のイットリウム(Y
3+)の代わりにカルシウム(Ca
2+)を用いて、こうしてY
3+含有量を低減することと組合せた、ガーネット構造の八面体または四面体部位に3+よりも大きな酸化状態を有する1つ以上の高原子価イオンを導入することによって改変される。非三価イオンを導入する場合、原子価のバランスは、たとえば、二価のカルシウム(Ca
2+)を導入して非三価イオンのバランスを取ることによって維持される。たとえば、八面体または四面体部位に導入される各4+イオン毎に、1つのY
3+イオンをCa
2+イオンで置き換える。各5+イオン毎に、2つのY
3+イオンをCa
2+イオンで置き換える。各6+イオン毎に、3つのY
3+イオンをCa
2+イオンで置き換える。各6+イオン毎に、3つのY
3+イオンをCa
2+イオンで置き換える。1つの実現例では、Zr
4+、Sn
4+、Ti
4+、Nb
5+、Ta
5+、Sb
5+、W
6+、およびMo
6+からなる群から選択される1つ以上の高原子価イオンを八面体または四面体部位に導入し、二価カルシウム(Ca
2+)を用いて電荷のバランスを取り、これが次にY
3+含有量を低減する。
【0038】
いくつかの実施形態では、イットリウム系ガーネットは、バナジウム(V
5+)などの1つ以上の高原子価イオンをガーネット構造の四面体部位に導入してFe
3+の代わりに用いて、結果的に得られる材料の磁気共鳴線幅をさらに低減することによって改変される。いずれの理論にも拘束されなければ、イオン置換のメカニズムは、格子の四面体部位の低減された磁化を生じ、その結果、ガーネットの正味磁化がより高くなり、第2鉄イオンの磁気結晶環境を変えることによって異方性およびしたがって材料の強磁性線幅も低減すると考えられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、出願人は、バナジウム(V)およびジルコニウム(Zr)誘導カルシウム(Ca)原子価補償と組合せた高ビスマス(Bi)ドーピングの組合せがマイクロ波装置ガーネット中のイットリウム(Y)のすべてまたは大部分を効果的に置換することができることを見出した。出願人らはまた、四面体または八面体部位上である他の高原子価イオンも用いることができ、5〜20のエルステッド範囲内の磁気共鳴線幅を得るにはガーネット構造中のかなり高レベルの八面体置換が好ましいことも見出した。さらに、イットリウム置換は好ましくは、ビスマスに加えて、十二面体部位にカルシウムを加えることによって達成される。好ましくは3+よりも大きいより高原子価のイオンで八面体または四面体部位をドープすることにより、より多くのカルシウムを十二面体部位に導入して電荷を補償することが可能になり、これは次にイットリウム含有量のさらなる低減という結果をもたらすであろう。
【0040】
改変合成ガーネット組成
1つの実現例では、改変合成ガーネット組成を一般式I:Bi
xCa
y+2xY
1−x−y−2zFe
5−y−zZr
yV
zO
12で表わし得、式中、x=0〜3、y=0〜1、およびz=0〜
1.5、より好ましくはx=0.5〜1.4、y=0.3〜0.55、およびz=0〜0.6である。好ましい実現例では、0.5〜1.4式単位のビスマス(Bi)を十二面体部位上のイットリウム(Y)のいくらかの代わりに用い、0.3〜0.55式単位のジルコニウム(Zr)を八面体部位上の鉄(Fe)のいくらかの代わりに用いる。いくつかの実施形態では、0.6式単位までのバナジウム(V)を四面体部位上の鉄(Fe)のいくらかの代わりに用いる。電荷のバランスは、残余のイットリウム(Y)のいくらかまたはすべての代わりに用いるカルシウム(Ca)によって達成される。いくつかの他の実施形態では、少量のニオビウム(Nb)を八面体部位上に置いてもよく、少量のモリブデン(Mo)を四面体部位上に置いてもよい。
【0041】
別の実現例では、改変合成ガーネット組成を一般式II:Bi
xY
3−x−0.35Ca
0.35
Zr
0.35Fe
4.65O
12で表わし得、式中、x=0.5〜1.0、好ましくはx=0.6〜0.8、より好ましくはx=0.5である。この実現例では、十二面体部位上のイットリウム(Y)のいくらかの代わりに0.5〜1.0式単位のビスマス(Bi)を用い、八面体部位上の鉄(Fe)のいくらかの代わりにジルコニウム(Zr)を用いる。十二面体部位にカルシウム(Ca
2+)を加えて、残余のYのいくらかを置き換えてZr電荷のバランスを取る。ZrをZr=0.35に固定して保持しながらBi含有量を変化させて異なる材料性質を達成することができる。
【0042】
別の実現例では、改変ガーネット組成を一般式III:Bi(Y,Ca)
2Fe
4.2M
I0.4
M
II0.4O
12で表わし得、式中、M
IはFeの代わりの八面体置換物であり、In、Zn、Mg、Zr、Sn、Ta、Nb、Fe、Ti、およびSbの元素のうち1つ以上から選択可能であり、式中、M
IIはFeの代わりの四面体置換物であり、Ga、W、Mo、Ge、V、Siの元素のうち1つ以上から選択可能である。
【0043】
別の実現例では、改変合成ガーネット組成を一般式IV:Y
2.15−2xBi
0.5Ca
0.35+2xZr
0.35V
xFe
4.65−xO
12で表わし得、式中x=0.1〜0.8である。この実現例では、0.1〜0.8式単位のバナジウム(V)を四面体部位に加えて鉄(Fe)のいくらかの代わりに用いるとともに、BiおよびZrのレベルを式IIIと同様に固定したままにしながらカルシウム(Ca)を加えてV電荷のバランスを取り、残余のYのいくらかを置き換える。
図3は、Vの異なるレベルと関連した材料性質のばらつきを図示する。
図3に示すように、材料の誘電率および密度は、Vのレベルが異なってもほぼ一定のままである。Vの増大するレベルは、Vの各々0.1毎に約160ガウスだけ4PiMを低減する。
図3にさらに示すように、V=0.5までは3dB線幅における認め得るほどの変化はない。
【0044】
別の実現例では、改変合成ガーネット組成を式V:Bi
0.9Ca
0.9xY
2.1−0.9x(Zr
0.7Nb
0.1)
xFe
5−0.8xO
12で表わし得、式中x=0.5〜1.0である。この実現例では、2つの高原子価イオンZr
4+およびNb
5+を用いて八面体置換を行ない、Biは0.9に一定に保持される。
図4は、(Zr,Nb)の異なるレベルと関連した材料性質のばらつきを図示する。
図4に示すように、磁気共鳴線幅は、八面体置換がより高くなると減少した。合計非磁性イオンの増加がより高い非磁性八面体置換に勝るにつれて、磁化も低下した。
【0045】
別の実現例では、改変合成ガーネット組成を式VI:Bi
0.9Ca
0.9+2xY
2.1−0.9−2xZr
0.7Nb
0.1V
xFe
4.2−xO
12で表わし得、式中V=0−0.6である。この実現例
では、ZrおよびNbに加えてバナジウムを八面体部位に導入する。V=0.6である場合、Yが完全に置き換えられる。
図5A−
図5Gは、Vのレベルが0から0.6に増大するにつれての焼成温度とさまざまな材料性質との間の関係を図示する。図示するように、ASTM A883/A883M−01に従って測定される3dB線幅は、1040℃よりも低い焼成温度で、すべてのVレベルで50Oeを下回ったままである傾向がある。
図6は、異なる焼成温度での最良の線幅対1つの好ましい実施形態のVの異なるレベルでの組成を図示する。いくつかの実現例では、線幅は材料をアニールすることによってさらに低減可能である。x=0.1〜0.5であるBi
0.9Ca_Zr
0.7Nb
0.1V
xFe
4.2−x
O
12の線幅に対するアニールの効果を以下の表1に図示する。
【0047】
別の実現例では、改変合成ガーネット組成を式VI:Bi
1.4Ca
1.05−2xZr
0.55V
xFe
4.45−xO
12で表わし得、式中x=0−0.525である。この実現例では、Biド
ーピングのレベルが増大される一方で、八面体置換のレベルが減少される。形成される材料は、キュリー温度がより高く、線幅がより低い。バナジウム(V)含有量は0から0.525へ変化する。V=0.525である場合、組成はイットリウムを含有しない。結果的に得られる材料は、その後の熱処理がなくても20Oeの線幅を達成した。
図7は、Vの量が異なる材料の性質を図示する。
図7に示すように、Vは、式単位中のVの各々の0.1毎に約1単位だけ誘電率を急速に降下させ、Vの各々0.1毎に約80ガウスだけ磁化を降下させる。焼成条件などの処理パラメータを最適化すると、Yを含有しない、11程度に低い線幅または0.525のもしくはそれに近いVを発生した。これらの値は、同じ磁化の市販のカルシウムイットリウムジルコニウムバナジウムガーネットに匹敵する。
【0048】
別の実現例では、改変合成ガーネット組成を式VII:Y
2CaFe
4.4Zr
0.4Mo
0.2O
12で表わし得る。この実現例では、高原子価イオンモリブデン(Mo)を四面体部位に加えて、単相の結晶を作り出す。他の実現例では、改変合成ガーネット組成を、BiY
2
Fe
4.6In
0.4O
12、BiCa
.4Y
1.6Fe
4.6Zr
.4O
12、BiCa
.4Y
1.6Fe
4.6Ti
.4O
12、BiCa
.8Y
1.2Fe
4.6Sb
.4O
12、BiY
2Fe
4.6Ga
.4O
12、BiCa
1.2
Y
.8Fe
4.2In
.4Mo
.4O
12、BiY
1.2Ca
.8Fe
4.2Zn
.4Mo
.4O
12、BiY
1.2Ca
.8Fe
4.2Mg
.4Mo
.4O
12、BiY
.4Ca
1.6Fe
4.2Zr
.4Mo
.4O
12、BiY
.4C
a
1.6Fe
4.2Sn
.4Mo
.4O
12、BiCa
2Fe
4.2Ta
.4Mo
.4O
12、BiCa
2Fe
4.2Nb
.4Mo
.4O
12、BiY
.8Ca
1.2Fe
4.6Mo
.4O
12、およびBiY
.4Ca
1.6Fe
4.2
Ti
.4Mo
.4O
12からなる群から選択される式で表わすことができる。
【0049】
改変合成ガーネット組成の調製
改変合成ガーネット材料の調製は、公知のセラミック技術を用いることによって達成可能である。プロセスフローの特定の例を
図8に図示する。
【0050】
図8に示すように、プロセスは原料を計量するためのステップ106で始まる。原料は、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、炭化カルシウム(CaCO
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、五酸化バナジウム(V
2O
5)、バナジウム酸イットリウム(YVO
4)、ニオブ酸ビスマス(BiNbO
4)、シリカ(SiO
2)、五酸化ニオビウム(Nb
2O
5)、酸化アンチモン(Sb
2O
3)、酸化モリブ
デン(MoO
3)、酸化インジウム(In
2O
3)、またはその組合せなどの酸化物および
炭化物を含み得る。1つの実施形態では、約35−40重量%の、より好ましくは約38.61重量%の酸化ビスマス、約10−12重量%、より好ましくは10.62重量%の酸化カルシウム、約35−40重量%、より好ましくは約37重量%の酸化鉄、約5−10重量%、より好ましくは約8.02重量%の酸化ジルコニウム、約4−6重量%、より好ましくは約5.65重量%の酸化バナジウムから本質的になる原料である。さらに、エトキシドおよび/またはアクリレートのためのゾルゲルプロセスで有機系材料を用いてもよく、またはクエン酸塩系技術を用いてもよい。材料を得る方法として、水酸化物の共沈などの当該技術分野で公知の他の方法も用いてもよい。原料の量および選択は具体的な配合に依存する。
【0051】
原料を計量した後、セラミックの現行技術に整合する方法を用いて、これらをステップ108で配合する。これは、混合プロペラを用いる水性配合または鋼もしくはジルコニウム媒質を用いた振動ミルを用いる水性配合を含むことができる。いくつかの実施形態では、原料を配合すると同時にこれを反応させるのに、硝酸グリシンまたは噴霧熱分解技術を用いてもよい。
【0052】
その後ステップ110で、配合した酸化物を乾燥させる。これは、スラリーを枠の中に流し入れて好ましくは100−400℃の間のオーブンでまたは噴霧乾燥によってまたは他の当該技術分野で公知の技術によって達成可能である。
【0053】
ステップ112で、乾燥した酸化物配合物をふるいを通して処理する。これは粉末を均質化し、か焼後の密な粒子をもたらし得る軟らかい凝集体を壊す。
【0054】
その後ステップ114で、焼結前か焼を通して材料を処理する。好ましくは、材料は、アルミナまたは菫青石サヤなどの容器に搬入され、約800−1000℃、より好ましくは約900−950℃の範囲内で熱処理される。好ましくは、焼成温度は低い。というのも、より高い焼成温度は線幅に対して悪影響を有するからである。
【0055】
か焼の後、ステップ116で、好ましくは振動ミル、アトリションミル、ジェットミル、または他の標準的な粉砕技術で材料を粉砕して、中間粒子径を約0.5ミクロン〜10ミクロンの範囲に小さくする。好ましくは水系のスラリーの中で粉砕を行なうが、エチルアルコールまたは別の有機系溶媒の中で行なってもよい。
【0056】
その後ステップ118で、材料を噴霧乾燥する。噴霧乾燥プロセスの間、当該技術分野で公知の技術を用いて結合剤および可塑剤などの有機添加剤をスラリーに加えることができる。材料を噴霧乾燥して、好ましくは約10ミクロン〜150ミクロンの大きさの範囲の、プレスに適用可能な粒を与える。
【0057】
その後ステップ120で、噴霧乾燥された粒を、好ましくは一軸または静水圧プレスによってプレスして、できる限りX線理論上密度の60%に近いプレス密度を達成する。さらに、焼成していない本体を形成するのに、テープ鋳造、テープカレンダー加工、または押出成形などの他の公知の方法を用いてもよい。
【0058】
その後ステップ122で、か焼プロセスを通して、プレスされた材料を処理する。好ましくは、プレスされた材料は、ガーネット材料と容易に反応しないアルミナなどの材料から作られるセッタープレート上に置かれる。セッタープレートは、約850℃−
1000℃の間の範囲で、周期窯またはトンネル窯の中で空気または圧力酸素中で加熱されて、密なセラミック成形体を得る。誘導加熱などの他の公知の処理技術もこのステップで用いてもよい。
【0059】
ステップ124で密なセラミック成形体を機械加工して、特定の適用例に好適な寸法を達成する。
【0060】
合成ガーネット組成を利用する無線周波数(RF)適用例は、
図2−
図8を参照して記載するような磁気共鳴線幅が比較的低い(たとえば約11Oe以下)フェライト装置を含むことができる。RF適用例は、低減されたまたは実質的にゼロの低減土類含有量を有するガーネット組成を有するかまたはこれに関連する装置、方法、および/もしくはシステムも含むことができる。本明細書中に記載するように、比較的高い誘電率を生じるようにそのようなガーネット組成を構成可能であり、有利な機能性を提供するのにそのような特徴を利用可能である。
図2−
図8を参照して記載する組成、装置、および方法のうち少なくともいくつかをそのような実現例に適用することができることが理解されるであろう。
【0061】
図9は、ガーネット構造および化学的性質、ならびにしたがって複数の十二面体構造、八面体構造、および四面体構造を有する無線周波数(RF)装置200を示す。装置200は、そのような十二面体、八面体、および四面体構造から形成されるガーネット構造(たとえば、ガーネット構造220)を含むことができる。本明細書中には、十二面体部位212、八面体部位208、および四面体部位204がどのように異なるイオンで充填されたり置換されたりしてRF装置200について1つ以上の望ましい性質を生じ得るかのさまざまな例を開示する。そのような性質は、RF装置200を作製するのに利用可能なセラミック材料の望ましいRF性質およびその製造の費用対効果を含むことができるが、それらに限定されない。一例として、本明細書中には、誘電率が比較的高く、かつ希土類含有量が低減されたまたは希土類を実質的に含有しないセラミック材料を開示する。
【0062】
そのような特徴を達成するためのいくつかの設計上の考慮点をここに記載する。例示的な装置および関連のRF性能比較も記載する。そのような装置の例示的な適用例および作製例も記載する。
【0063】
希土類ガーネット
商業用途のガーネット系は典型的に、Y
3-x(REまたはCa)
xFe
2-y(Me)
yFe
3-z(Me′)
zO
12として表現することができる一連の組成に属し、式中、「RE」は非Y希土類元素を表わす。非Y希土類元素(RE)は、たとえば、磁化の温度補償のためのGdであり得、高出力ドーピング目的のためには少量のHoを用いることがある。希土類は典型的に三価であり、十二面体部位を占める。八面体部位の「Me」は典型的に非磁性である(たとえば、典型的にZr
+4、もっとも、In
+3またはSn
+4を典型的には式中約y=0.4で用いることができる)。四面体部位の「Me′」は典型的に非磁性である(たとえば、典型的にAl
+3またはV
+5、式中、zは磁化の範囲を与えるように式中0〜約1に異なることができる)。Ca
+2は、八面体または四面体置換物が原子価>3のイオンである場合に、原子価補償のために十二面体部位で用いられる。以上に基づき、そのような商業
用のガーネット系は、40%よりも多くのYまたは他のRE元素を含有し、残部は主に八面体および四面体部位上のFe
+3であることがわかる。
【0064】
フェライト装置設計上の考慮点
セルラーインフラなどのRF適用例のためのフェライト装置の磁化(4πM
s)は典型
的に、上記共鳴モードでは400MHz〜3GHzで動作する。約5〜15%の典型的な帯域幅を達成するため、約1,000〜2,000ガウス(約0.1〜0.2テスラ)の範囲の磁化が望まれる。
【0065】
フェライト装置と関連付けられる磁気損失は、フェリ磁性共鳴線幅ΔH
oによって決ま
り得る。そのような線幅の値は典型的に約30エルステッド(約0.377アンペア回数/メータ)未満であり、典型的にK
1/M
sと同等であり、式中、K
1は、非磁性Yが唯一
のREである場合は、その部位のうち2つにおけるFe
+3イオンの異方性によって決まる一次磁気結晶異方性である。約4πM
s×pの、線幅に対する気孔率(p)寄与も存在し
得る。
【0066】
フェライト装置に関連の誘電損失は典型的に、損失正接δが条件tanδ<0.0004を満たすように選択される。フェライト装置と関連のキュリー温度は、上記の磁化の範囲については約160℃を超えることが予期され得る。
【0067】
ビスマスガーネット
式中xが1.25である、式がBi
(3−2x)Ca
2xFe
5−xV
xO
12である単結晶材料が過去に成長されている。約600ガウスの4πM
sの値が得られ(これは1−2GHz範
囲のいくつかの同調可能なフィルタおよび共振器に好適である)、線幅は約1エルステッドであり、これはシステムの低い内在的磁気損失を示す。しかしながら、Bi置換のレベルは、式中わずか約0.5であった。
【0068】
単結晶材料と同様の(式がBi
3−2xCa
2xFe
5−xO
12である)単相多結晶材料を作
る試みは、x>0.96の領域でのみ成功し、4πM
sを約700エルステッド未満に効
果的に閉じ込め、その結果、線幅は劣った(100エルステッドを超える)。少量のAl
+3は線幅を約75エルステッドに低減したが、増大したAl
+3は4πM
sを低減した。こ
れらの材料については、Bi置換は、式中わずか約0.4であった。
【0069】
ファラデー回転装置については、ファラデー回転は、ガーネット中のBi置換のレベルに本質的に比例することができ、これは、置換のレベルの増大の関心を高める。異方性は一般的に、光学適用例については主な要因ではないため、八面体および四面体部位における置換は、回転の最大化に基づくことができる。このように、そのような適用例では、できるだけ多くのBi
+3を十二面体部位に導入することが望ましいことがある。最大レベルのBi
+3は、十二面体希土類三価イオンの大きさによって影響される可能性があり、式中、1.2〜1.8の間で異なる可能性がある。
【0070】
いくつかの状況では、Bi
+3置換のレベルは他の部位での置換に影響され得る。Bi
+3は非磁性であるため、これは四面体および八面体Fe
+3イオンに対するその影響により、ファラデー回転に影響し得る。これはスピン軌道相互作用であると考えられるので、Bi
+3が既存のFe
+3対の遷移を改変する場合は、Fe
+3イオンの異方性の変化および大きなファラデー回転を含む光学的効果の両方を予期することができる。Bi
+3置換YIGのキュリー温度も、低いBi
+3置換で上昇することができる。
【0071】
多結晶ガーネットにおけるBi置換
十二面体部位上のBi
+3と八面体部位上のZr
+4との組合せから結果的に生じ得る効果
(たとえば、低い磁気結晶異方性、およびしたがって低い磁気損失)を見るため、以下の方策を試験した。第1の例示的な構成は、式Bi
0.5Y
2.5−xCa
xZr
xFe
5−xO
12中
に、固定されたBiおよび可変Zrを含んだ。式中、xは約0から0.35に変化した。第2の例示的な構成は、式Bi
xY
2.65−xCa
0.35Zr
0.35Fe
4.65O
12中に、固定されたZrおよび可変Biを含んだ。式中、xは約0.5から1.4に変化した。
【0072】
図10は、第1の構成(Bi
0.5Y
2.5−xCa
xZr
xFe
5−xO
12)についてのZr含
有量の関数としてのさまざまな性質を示し、式中、Bi
+3含有量は約0.5に固定された一方で、Zr
+4含有量は0から0.35に変化した。プロットからは、Zrが0での0.5Bi材料は、比較的高い(気孔率補正後は80Oe近くの)線幅を有する。これは、はるかにより低い補正された約17Oeという値を有する標準的なY
3Fe
5O
12とは対照的であり、このことは、非磁性Bi
+3が、八面体および四面体Fe
+3からのK
1寄与である
、磁気結晶異方性を実質的に上昇させることができることを示す。
【0073】
Bi非含有ガーネットに見出されるように、増大する量のZr
+4の導入は、異方性寄与を着実に低下させ、Zr=0.35で非常に低い線幅が見られるが、キュリー温度がいくらか低下していることも見ることができる。予期される結果は、Bi含有量からのより高いキュリー温度がZr寄与によってオフセットされことである。
【0074】
図10にさらに示すように、4πM
s値は一般的にZr含有量とともに増大するが、K
1/M
s寄与に対する効果はK
1に対して圧倒的であり、大きな技術的画期的成功を表わす。
【0075】
図11は、Zr
+4含有量が約0.35に固定された一方で、Bi
+3含有量が異なった第2の構成(Bi
xY
2.65−xCa
0.35Zr
0.35Fe
4.65O
12)についてのBi含有量の関数としてのさまざまな性質を示す。
図12は、同じ構成についてのBi含有量の関数としての誘電率および密度を示す。Bi含有量が約1よりも大きくなると、誘電率の大きな増大が起こることがわかる。いくつかの実現例では、そのような増大した誘電率を、望ましい特徴を有するRF装置を生じるのに利用することができる。
【0076】
最大Bi
+3含有量は、式中1.4であり、したがって調査された少なくともZr
+4置換の範囲では、Y
+3を置き換える最適なまたは所望の量であり得るように思われた。例示的な所望の1.4というBi含有量では、キュリー温度を実質的に低下させずにZr
+4含有量を最適化して線幅を低減するまたは最小化する要望があった。(たとえば、Y系ZrまたはIN Ca−Vガーネットで見られるような)キュリー温度の大きな低下なく磁化の範囲を生じることができるV
+5置換の範囲を実現する可能性も考慮した。
【0077】
以上に少なくとも部分的に基づいて、Bi置換ガーネット組成を最適化するまたは改良するように以下の置換を試験した。たとえば、V
+5のバランスを取るようにCa
+2を用いることにより、1V
+5につき2Ca
+2の割合でより多くのYを置換することができた。別の例では、Zr
+4はYの代わりのCa
+2による1:1置換を生じることができ、このように、Nb
+5を八面体部位に用いることができれば、より多くのYを組成から除去することができた。
【0078】
図13は、
図10を参照して説明した、0.35の限界を超えるZr含有量の関数としてのさまざまな性質のプロットを示す。そのような測定は、Zr含有量を洗練するまたは最適化する、Bi含有量(約1.4)の以上の選択に基づいていた。そのような測定に基づき、V
+5含有量の変化の効果を試験するように、0.55という例示的なZrの含有量を選択した。
【0079】
図14は、V
+5含有量の関数としてのさまざまな性質のプロットを示す。そのような測
定のため、Bi含有量は約1.4に保持され、Zr含有量は約0.55に保持された。最大のV
+5置換において、例示的な組成(Bi
1.4Ca
1.6Zr
0.55V
0.525Fe
3.925O
12)は実質的に希土類を含有しない。
【0080】
RF適用例の文脈では、以上の例示的な希土類非含有組成(Bi
1.4Ca
1.6Zr
0.55V
0.525Fe
3.925O
12)について以下の観察をなすことができる。誘電率は約27であり、これはイオンの分極率を大きく増大する可能性があるBi
+3に対する「孤立電子対」によるものであると考えられる。誘電損失は0.0004未満であり、これは大抵の適用例には有用である。(線幅としての)磁気損失は約11エルステッドであり、これは最良のY系ガーネットに匹敵する。4πM
sは約1150ガウスであり、これは、セルラーインフ
ラで用いられるものなどの多数のRF装置にとって有用である。キュリー温度は約160℃であり、これは大部分の適用例に有用である。
【0081】
希土類非含有または低減ガーネットを有する装置の例
本明細書中に記載するように、希土類含有量が低減されたまたはこれを含有しないガーネットを形成することができ、そのようなガーネットは、RF適用例などの適用例のための装置で用いるのに望ましい性質を有することができる。いくつかの実現例では、そのような装置は、Bi
+3イオンの独自の性質を利用するように構成可能である。
【0082】
たとえば、Bi
+3イオン上の「孤立電子対」は、イオン分極率、およびしたがって誘電率を上昇させることができる。これは、
図14を参照して観察される測定と整合する。その例では、誘電率は、Biが式中1.4で最大置換であった場合に、標準的なYCaZrVガーネットからBiCaZrVガーネットへ行った際に15から27へとほぼ2倍になった。そのような誘電率の増大を多数のやり方で利用することができる。
【0083】
たとえば、分割分極横方向磁気(TM)モードで動作する(ガーネットディスクなどの)フェライト装置の中心周波数は1/(ε)
1/2に比例するので、誘電率(ε)を2倍に
すると、2の平方根(約1.414)だけ周波数を低下させることができる。本明細書中により詳細に記載するように、たとえば誘電率を2倍増大させる結果、2の平方根だけフェライトディスクの横方向寸法(たとえば直径)を小さくすることができる。応じて、フェライトディスクの面積を2倍小さくすることができる。そのような小型化は有利であり得る。なぜなら、RF回路板上の装置の設置面積を(たとえば、誘電率が2倍増大される場合は2倍)小さくすることができるからである。例の文脈では2倍の増大と記載するが、同様の利点を2よりも大きいまたは2よりも小さい因子に係る構成で実現することができる。
【0084】
高誘電率のフェライトを有する小型化されたサーキュレータ/アイソレータ
本明細書中に記載のように、希土類の含有量が低減されたまたはこれを含有しないガーネットを有するフェライト装置は、高誘電性を含むように構成可能である。RF適用例に適用されるような誘電率に関するさまざまな設計上の考慮点をここで説明する。いくつかの実現例では、誘電率が高いガーネットを利用するそのような設計は、希土類非含有構成に係ってもよく、または必ずしも係らなくてもよい。
【0085】
マイクロ波フェライトガーネットおよびスピネルの誘電率の値は一般的に、密な多結晶セラミック材料については12〜18の範囲に入る。そのようなガーネットは典型的に、それらの低い共鳴線幅のために、たとえばUHFおよび低マイクロ波領域での上記強磁性共鳴適用例に用いられる。そのようなスピネルは典型的に、それらのより高い磁化のために、以下の共鳴適用例のためにたとえば中〜高マイクロ波周波数で用いられる。そのようなフェライト装置を用いる、実質的にすべてではなくても大部分のサーキュレータまたはアイソレータは、トリプレート/ストリップ線路または導波路構造を有して設計される。
【0086】
低い線幅ガーネットの誘電率の値は典型的に14〜16の範囲にある。これらの材料は、約16の値を有するイットリウム鉄ガーネット(YIG)、または値を約14に低減することができる、アルミニウムまたはたとえばジルコニウム/バナジウム組合せを有するその化学的性質置換版に基づくことができる。たとえばリチウムチタン系スピネルフェライトは20近くまでの誘電率を有して存在するが、これらは一般的に狭い線幅を有しないため、多数のRF適用例には好適でない。
【0087】
本明細書中に記載するように、イットリウムの代わりに用いられるビスマスを用いて作られるガーネットははるかにより高い誘電率を有することができる。本明細書中にも記載するように、ビスマス置換と連携してジルコニウムを用いて低い線幅を維持する場合、表2の例を通じて示すように、ガーネットの誘電率は増大することができる。
【0089】
表2は、ガーネットの誘電率を2倍よりも大きくすることが可能であることを示す。いくつかの実現例では、誘電率の増加は、八面体および四面体部位のいずれかまたは両者上に他の非磁性置換物(たとえば、それぞれジルコニウムまたはバナジウム)を有するものを含む、ビスマスを含有する組成について維持可能である。より高分極のイオンを用いることにより、誘電率をさらに増大することが可能である。たとえば、ニオビウムまたはチタンを八面体または四面体部位に代わりに入れることができ、チタンは潜在的に両方の部位に入ることができる。
【0090】
いくつかの実現例では、フェライト装置の大きさと、誘電率と、動作周波数との間の関係を以下のように表わすことができる。異なる伝送線表示を特徴付けることができる異なる式が存在する。たとえば上記共鳴ストリップ線路構成では、フェライトディスクの半径Rを以下のように特徴付けることができる。
【0091】
R=1.84/[2π(有効透過率)×(誘電率)]
1/2 (1)
式中、(有効透過率)=H
dc+4πM
s/H
dcであり、H
dcは磁場バイアスである。式1
は、固定された周波数および磁気バイアスについて、半径Rが誘電率の平方根に反比例することを示す。
【0092】
別の例で、以下の共鳴ストリップ線路構成では、式1と同様のフェライトディスク半径Rについての関係を、低いバイアス場が以下の共鳴動作に対応する、弱く結合された4分の1波長サーキュレータに利用可能である。(たとえば円盤またはロッド状の導波路における)以下の共鳴導波路構成については、フェライトの横方向寸法(たとえば半径R)および厚みdの両方が周波数に影響を及ぼし得る。しかしながら、半径Rを依然として以下のように表現することができる。
【0093】
R=λ/[2π(誘電率)
1/2][((πR)/(2d))
2+(1.84)
2]
1/2 (2)
これは、Rと誘電率との間の関係という観点で、式1と同様である。
【0094】
式2の例示的な関係は、円形のディスク形状のフェライトの文脈においてのものである。三角形の共振器については、同じ導波路表現を用いることができるが、この場合、円形のディスクケースの半径の代わりに、3.63×λ/2πに等しいA(三角形の高さ)を適用する。
【0095】
以上の例示的な場合のすべてにおいて、誘電率を(たとえば2倍)増大させることにより、2の平方根だけフェライト(たとえば円形のディスクまたは三角形)の大きさを小さくし、これによりフェライトの面積を2倍小さくすることを予期することができる。式2を参照して記載したように、フェライトの厚みも低減することができる。
【0096】
フェライト装置をRF装置として用いる実現例では、そのようなRF装置の大きさも小さくすることができる。たとえば、ストリップ線路装置では、装置の設置面積は、用いられるフェライトの面積によって左右され得る。このように、装置の大きさの対応する低減が達成されるであろうことを予期することができる。導波路装置では、用いられるフェライトの直径が大きさを決める際の限定要因であり得る。しかしながら、フェライトの直径について与えられる低減は、接合部の金属部分中の導波路関連の寸法を保つ必要性によってオフセットされるかもしれない。
【0097】
イットリウム非含有ガーネットを有する小型化されたフェライトの例
本明細書中に記載のように、フェライトの大きさは、ガーネット構造と関連の誘電率を増大させることによって大幅に低減することができる。本明細書中にも記載のように、イットリウムが低減されたおよび/または非Y希土類含有量が低減されたガーネットを適切なビスマス置換によって形成することができる。いくつかの実施形態では、そのようなガーネットはイットリウム非含有または希土類非含有ガーネットを含むことができる。誘電率が増大し、かつイットリウム非含有ガーネットを有するフェライト装置を有する例示的なRF装置を
図15−
図17を参照して説明する。
【0098】
図15Aおよび
図15Bは、本明細書中に記載の例示的なフェライト小型化を要約する。本明細書中に記載しかつ
図15Aに示すように、フェライト装置200は、低減された直径2R′および厚みd′を有する円形のディスクであり得る。厚みは低減されてもされなくてもよい。式1を参照して記載したように、円形のフェライトディスクの半径Rはフェライトの誘電率の平方根に反比例し得る。このように、フェライト装置200の増大した誘電率は、その低減された直径2R′を生じるように示される。
【0099】
本明細書中に記載しかつ
図15Bに示すように、フェライト装置200は、低減された辺寸法S′および厚みd′を有する三角形のディスクでもあり得る。厚みは低減されてもされなくてもよい。式2を参照して記載するように、(辺の寸法Sから導出可能な)三角形のフェライトディスクの高さAは、フェライトの誘電率の平方根に反比例し得る。このように、フェライト装置200の増大した誘電率は、その低減された寸法S′を生じるように示される。
【0100】
例示的な円形および三角形のフェライトの文脈で記載したが、本開示の1つ以上の特徴を他の形状のフェライトで実現することもできる。
【0101】
動作周波数(およびいくつかの実現例では大きさ)に対する誘電率の以上の効果を実証するため、(アイソレータと称されることもある)サーキュレータ装置を構築した。TransTech TTVG1200(直径17.56mm、厚み1mm)として入手可能な現状のフェライトを用いて1つのサーキュレータを構築した。同じ寸法のイットリウム非含有フェライトを用いて別のサーキュレータを構築した。記載の目的のため、そのようなイットリウム非含有フェライトを「TTHiE1200」と称する。2つの例示的なサーキュレータの各々は直径が
約25mmである。
【0102】
TTVG1200フェライトはイットリウムカルシウムジルコニウムバナジウム鉄ガーネット構成を有し、約14.4の典型的な誘電率を有する。イットリウム非含有フェライト(TTHiE1200)は、約1%以下の希土類酸化物を含有するビスマスカルシウムジルコニウムバナ
ジウム鉄ガーネット構成および約26.73の誘電率を有する。
【0103】
以上の例示的なサーキュレータに関する付加的な詳細を
図16Aおよび
図16Bを参照して説明し、この中で「フェライト」は第1の種類(TTVG1200)または第2の種類(TTHiE1200)であり得る。
【0104】
図16Aおよび
図16Bは、1対の円筒形磁石306、316の間に配設される1対のフェライトディスク302、312を有するサーキュレータ300の例を示す。フェライトディスク302、312の各々は、本明細書中に記載の1つ以上の特徴を有するフェライトディスクであり得る。
図16Aは例示的なサーキュレータ300の部分の組立てられていない図を示す。
図16Bは例示的なサーキュレータ300の側面図を示す。
【0105】
示す例では、第1のフェライトディスク302は、第1の接地平面304の下側に実装されて示される。第1の接地表面304の上側は、第1の磁石306を受けかつ保持するように寸法決めされた凹部を規定するように示される。同様に、第2のフェライトディスク312は、第2の接地平面314の上側に実装されて示され、第2の接地表面314の下側は、第2の磁石316を受けかつ保持するように寸法決めされる凹部を規定するように示される。
【0106】
以上の態様で配置される磁石306、316は、フェライトディスク302、312を通るほぼ軸方向の力線を生じることができる。フェライトディスク302、312を通過する磁場磁束は、320、318、308、および310によって設けられる帰還経路を通ってその回路を完成させて、フェライトディスク302、312に印加される磁場を強化することができる。いくつかの実施形態では、帰還経路部分320および310は、磁石316、306より直径が大きなディスクであり得、帰還経路部分318および308は、帰還経路ディスク320、310の直径にほぼ一致する内径を有する中空の円筒であり得る。帰還経路の以上の部分は単一片として形成されるかまたは複数片のアセンブリであり得る。
【0107】
例示的なサーキュレータ装置300は、2枚のフェライトディスク302、312の間に配設される(本明細書中では中心導体とも称される)内部磁束導体322をさらに含むことができる。そのような内部導体は、共振器およびポートへの整合ネットワーク(図示せず)として機能するように構成可能である。
【0108】
図17は、(TTVG1200フェライトディスク(YCaZrVFeガーネット、誘電率14.4に基づく)およびイットリウム非含有フェライト(TTHiE1200)(BiCaZrVF
eガーネット、誘電率26.73)に基づく)2つの上述の25mmのサーキュレータについての挿入損失プロットおよびリターンロスプロットを示す。2つのサーキュレータ(「TTVG1200」および「TTHiE1200」)の損失曲線の端縁の周波数および損失値は、
図17
に示しかつ表3に列挙するそれぞれの軌跡マーカによって示される。
【0110】
以上の測定に基づくと、TTVG1200構成は約2.7GHzの中心動作周波数を有し、TTHiE1200構成は約2.0GHzの中心動作周波数を有することがわかる。TTHiE1200とTTVG1200構成との間の中心動作周波数の比率は約0.74である。より高い誘電率による周波数の理論的な低減は、誘電率の比率の平方根に比例するとして(たとえばBosmaの式を用い
て)算出可能であることが注記される。このように、そのような算出は、sqrt(14.4/26.73)=0.734を生じ、これは測定された0.74の低減と十分に一致している。
【0111】
TTHiE1200およびTTVG1200構成を有する例示的な25mmのサーキュレータについて、
相互変調の比較は以下の測定を生じる。室温での2×40Wトーンについて、TTVG1200構成は2.7GHzで約−78dBcの相互変調性能を生じ、TTHiE1200構成は1.8GH
zで約−70dBcの相互変調性能を生じる。そのような結果はバイアス磁場の低減により予期されることが注記される。
【0112】
本明細書中に記載のようにTTHiE1200フェライトをさらに特徴付けるため、TTHiE1200フェライトディスク(約7.00mmの半径、約0.76mmの厚み)を用いてより小さな10mmのサーキュレータを作った。
図18Aおよび
図18Bは、それぞれ動作温度25℃および100℃での10mmの装置についてのsパラメータデータを示す。相互変調測定も、25℃で10mm装置について行なった。2×15Wトーンについて、相互変調値を表4に列挙し、ここでさまざまなパラメータを「パラメータ」列に示す。
【0114】
図18Aおよび
図18Bに基づくと、sパラメータデータがほぼ正であるように思われることがわかる。表4に基づくと、IMD性能はこの大きさのパッケージにほぼ予期されるものである。たとえば、20mmの装置についての典型的なIMD性能は約−70dBcであり、15mmの装置については約−60dBcである。
【0115】
新しいガーネット系およびそれに関する装置のさまざまな例を本明細書中に記載する。いくつかの実現例では、そのようなガーネット系は、高レベルのビスマスを含有することができ、これは低損失フェライト装置の形成を可能にすることができる。さらに、他の元素の選択された添加により、商業用途のガーネットを含むガーネットの希土類含有量を低減するまたは排除することができる。そのような希土類含有量の低減または排除は、イットリウムを含むことができるが、これに限られるものではない。いくつかの実現例では、本明細書中に記載のガーネット系は、非Biガーネットの誘電率を大幅に増大(たとえば2倍)するように構成可能であり、これにより従来のガーネットと関連のフェライト装置のプリント回路「設置面積」を大幅に小さくする(たとえば半分にする)可能性を与える。
【0116】
本明細書中に記載のようないくつかの実現例では、合成ガーネット材料は、十二面体部位を有する構造を含むことができ、ビスマスは十二面体部位のうち少なくともいくつかを占める。いくつかの実施形態では、そのようなガーネット材料は、少なくとも、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0、26.0、または27.0の誘電率値を有することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のような1つ以上の特徴を有するフェライト系サーキュレータ装置を、パッケージ化されたモジュール式装置として実現可能である。
図19は、パッケージ化プラットフォーム404上に実装されかつ筺体構造402で囲まれるサーキュレータ装置300を有する例示的なパッケージ化された装置400を示す。例示的なプラットフォーム404は、パッケージ化された装置400の実装を可能にするように寸法決めされた複数の穴408を含むものとして描かれる。例示的なパッケージ化された装置400は、電気的接続を容易にするように構成される例示的な端子406a−406cをさらに含むように示される。
【0118】
いくつかの実施形態では、
図19の例などのパッケージ化されたサーキュレータ/アイソレータを回路板またはモジュールで実現可能である。そのような回路板は、1つ以上の無線周波数(RF)関連動作を行なうように構成される複数の回路を含むことができる。回路板は、回路板と回路板の外部の構成要素との間のRF信号および電力の転送を可能に
するように構成される多数の接続特徴も含むことができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、以上の例示的な回路板は、RF装置のフロントエンドモジュールと関連のRF回路を含むことができる。
図20に示すように、そのようなRF装置は、RF信号の送信および/または受信を容易にするように構成されるアンテナ412を含むことができる。そのような信号を、トランシーバ414で生成するおよび/または処理することができる。送信のため、トランシーバ414は送信信号を生成することができ、これは、電力増幅器(PA)によって増幅され、アンテナ412による送信のためにフィルタリングされる(Txフィルタ)。受信のため、アンテナ412から受信した信号は、トランシーバ414に渡される前にフィルタリングされ(Rxフィルタ)、かつ低雑音増幅器(LNA)によって増幅されることができる。そのようなTxおよびRx経路の例示的な文脈では、本明細書中に記載のような1つ以上の特徴を有するサーキュレータおよび/またはアイソレータ400は、たとえばPA回路およびLNA回路においてまたはこれと関連して実現可能である。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のような1つ以上の特徴を有する回路および装置は、ワイヤレス基地局などのRF適用例で実現可能である。そのようなワイヤレス基地局は、RF信号の送信および/または受信を容易にするように構成される、
図20を参照して記載する例などの1つ以上のアンテナ412を含むことができる。そのようなアンテナを、本明細書中に記載のような1つ以上のサーキュレータ/アイソレータを有する回路および装置に結合することができる。
【0121】
本明細書中に記載のように、「サーキュレータ」および「アイソレータ」という用語は、一般的に理解されるような適用例に依存して、相互に交換可能にまたは別々に用いることができる。たとえば、サーキュレータは、RF適用例で利用されて、アンテナと、送信器と、受信器との間でRF信号を選択的に経路設定する受動的装置であり得る。送信器とアンテナとの間で信号の経路設定をする場合、受信器は好ましくは分離すべきである。これに応じて、そのようなサーキュレータをアイソレータと称することもあり、そのような分離性能はサーキュレータの性能を表わすことができる。
【0122】
図21−
図25は、本明細書中に記載のような1つ以上の特徴を有するフェライト装置をどのように作製することができるかの例を示す。
図16は、以上の性質のうち1つ以上を有するセラミック材料を作製するように実現可能なプロセス20を示す。ブロック21で、粉末を調製することができる。ブロック22で、調製された粉末から、形作られた物体を形成することができる。ブロック23で、形成された物体を焼結することができる。ブロック24で、焼結体を仕上げて、1つ以上の望ましい性質を有する仕上がりセラミック体を生じることができる。
【0123】
仕上がったセラミック体が装置の一部である実現例では、ブロック25で装置を組立てることができる。装置または仕上げたセラミック体が製品の一部である実現例では、ブロック26で製品を組立てることができる。
【0124】
図21は、例示的なプロセス20のステップのいくつかまたはすべてを設計、仕様などに基づかせることができることをさらに示す。同様に、ステップのうちいくつかまたはすべては、試験、品質管理などを含むまたはこれらを経ることができる。
【0125】
いくつかの実現例では、
図21の粉末調製ステップ(ブロック21)は、
図14を参照して記載した例示的なプロセスによって行なうことができる。そのような態様で調製した粉末は、本明細書中に記載のような1つ以上の性質を含むことができる、および/または本明細書中に記載のような1つ以上の性質を有するセラミック体の形成を容易にすること
ができる。
【0126】
いくつかの実現例では、本明細書中に記載のように調製された粉末を、異なる形成技術によって異なる形状に形成することができる。一例として、
図22は、本明細書中に記載のように調製された粉末材料から、形作られた物体をプレス成形するように実現可能なプロセス50を示す。ブロック52で、形作られたダイを所望の量の粉末で充填することができる。
図23で、構成60は、粉末63を受けかつそのような粉末63をプレスできるようにするように寸法決めされる容積62を規定する形作られたダイを61として示す。ブロック53でダイ中の粉末を圧縮して、形作られた物体を形成することができる。構成64は、ダイ61が規定する容積62の中にピストン65が押圧されるにつれて(矢印66)中間成形形態67にされた粉末を示す。ブロック54で、ダイから圧力を除去することができる。ブロック55で、ピストン(65)をダイ(61)から除去して容積(62)を開くことができる。構成68は、ダイ(61)の開いた容積(62)を示し、これにより、形成された物体69をダイから取り外すことが可能になる。ブロック56で、形成された物体(69)をダイ(61)から取り外すことができる。ブロック57で、形成された物体を以降の処理のために保管することができる。
【0127】
いくつかの実現例では、本明細書中に記載のように作製された、形成された物体を焼結して、セラミック装置としての望ましい物性を生じることができる。
図24は、そのような形成された物体を焼結するように実現可能なプロセス70を示す。ブロック71で、形成された物体を設けることができる。ブロック72で、形成された物体を窯の中に入れることができる。
図25で、複数の形成された物体69は、焼結トレイ80の中に搬入されて示される。例示的なトレイ80は、形成された物体69の上側部分よりもトレイの上側端縁が高くなるように、形成された物体69を表面82上に保持するように寸法決めされる凹部83を規定するように示される。そのような構成により、搬入されたトレイを、焼結プロセスの間に積み重ねることが可能となる。例示的なトレイ80は、トレイがともに積み重ねられるときですら凹部83内での熱い気体の向上した循環を可能にするように、側壁に切抜き83を規定するようにさらに示される。
図25は、複数の搬入されたトレイ80の積み重ね84をさらに示す。いちばん上のトレイに搬入された物体が全般的に下方のトレイと同様の焼結条件を経るように、頂部カバー85を設けることができる。
【0128】
ブロック73で、形成された物体に熱を加えて焼結体を生じることができる。そのような熱の適用は、窯を用いることによって達成可能である。ブロック74で、焼結体を窯から出すことができる。
図25では、複数の搬入されたトレイを有する積み重ね84が窯87に入れられて描かれる(段階86a)。所望の時間および温度プロファイルに基づいて、そのような積み重ねを窯を通して移動させることができる(段階86b、86c)。段階86dで、積み重ね84は、窯から出されて冷却されるように描かれる。
【0129】
ブロック75で、焼結体を冷却することができる。そのような冷却は、所望の時間および温度プロファイルに基づくことができる。ブロック206で、冷却された物体は1つ以上の仕上げ作業を受けることができる。ブロック207で、1つ以上の試験を行なうことができる。
【0130】
さまざまな形態の粉末およびさまざまな形態の形作られた物体の熱処理を、か焼、焼成、アニール、および/または焼結として本明細書中で記載する。そのような用語は、いくつかの適切な状況で、文脈固有の態様で、またはその何らかの組合せにおいて相互交換可能に用いてもよいことが理解されるであろう。
【0131】
文脈が明確にそうでないことを要件としていなければ、記載および請求項を通して、「備える」、「備えている」などの語は、排他的または網羅的な意味とは反対に、包括的な
意味、すなわち「含むが限定されない」という意味に解釈されるべきである。本明細書中で一般的に用いるような「結合される」という語は、直接に接続されるかまたは1つ以上の中間要素を介して接続されることがある2つ以上の要素を指す。加えて、「本明細書中で」、「上記」、「以下」という語および同様の趣旨の語は、この出願で用いる場合は、この出願の任意の特定の部分ではなくこの出願全体を指すものとする。文脈が許す場合は、単数または複数の数を用いる上記詳細な説明における語は、それぞれ複数または単数も含むことがある。2つ以上の項目の列挙を参照する「または」という語は、この語は、語の以下の解釈のすべて、すなわち、列挙中の項目の任意のもの、列挙中の項目のすべて、および列挙中の項目の任意の組合せをカバーする。
【0132】
発明の実施形態の以上の詳細な説明は、網羅的になることまたは発明を以上開示した正確な形態に限定することを意図するものではない。発明の具体的な実施形態およびそのための例を例示の目的のために上述したが、当業者が認識するように、発明の範囲内でさまざまな均等の修正例が可能である。たとえば、プロセスまたはブロックを所与の順序で提示しているが、代替的な実施形態は、異なる順序でステップを有するルーチンを行なってもよく、またはブロックを有するシステムを用いてもよく、いくつかのプロセスもしくはブロックを削除、移動、追加、細分、組合せ、および/もしくは修正してもよい。これらのプロセスまたはブロックの各々をさまざまな異なるやり方で実現してもよい。また、プロセスまたはブロックを、時には連続して行なうものとして示すが、代わりに、これらのプロセスまたはブロックを並列に行なってもよく、または異なる時期に行なってもよい。
【0133】
本明細書中に提供する発明の教示は、必ずしも上述したシステムではなく他のシステムに適用可能である。上述のさまざまな実施形態の要素および行為は、さらなる実施形態を提供するように組合せ可能である。
【0134】
発明のある実施形態を記載したが、これらの実施形態は例示のためにのみ提示され、開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書中に記載の新規の方法およびシステムをさまざまな他の形態で具体化してもよい。さらに、開示の精神から逸脱することなく、本明細書中に記載の方法およびシステムの形態におけるさまざまな省略、置換、および変更を行なってもよい。添付の請求項およびそれらの均等物は、開示の範囲および精神の範囲内に入るであろうようなそのような形態または修正例をカバーすることが意図される。