(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超音波ドップラエコー信号から胎児心拍数を決定するためのプログラムであって、請求項1に記載の処理装置に該処理装置上で実行された場合に請求項5に記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する、プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に胎児心拍数の一貫性があり且つ信頼性のある決定を可能にするために既存の方法を(更に)改善することに対する関心が存在する。
【0007】
本発明の目的は、胎児心拍数を確実且つ高信頼度で決定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様においては、胎児心拍数を決定する処理装置が提供され、その場合において、当該超音波ドップラエコー信号は少なくとも2つのチャンネルを有し、該少なくとも2つのチャンネルは、第1深度又は深度範囲に関して得られる第1チャンネル及び該第1深度又は深度範囲とは異なる第2深度又は深度範囲に関して得られる第2チャンネルを含み、処理ユニットは第1処理部及び第2処理部を含み、前記第1処理部は前記エコー信号の第1チャンネルから第1心拍数を決定するように構成され、前記第2処理部は前記エコー信号の第2チャンネルから第2心拍数を決定するように構成され、前記処理ユニットは、更に、決定されるべき前記胎児心拍数に関する及び/又は決定されるべき前記胎児心拍数以外の心拍数に関する外部情報を受信するように構成された入力部と、前記外部情報に基づいて前記決定された第1心拍数及び前記決定された第2心拍数のうちの一方を前記決定されるべき胎児心拍数として選択するように構成された選択部とを有する。
【0009】
本発明の第2態様においては、胎児心拍数を決定するシステムが提供され、該システムは、前記第1態様による処理装置に加えて、超音波信号を送信すると共に超音波ドップラエコー信号を検出するように構成された超音波ドップラ装置と、追加の心拍数を前記検出された超音波ドップラエコー信号からは独立に決定するように構成された追加の心拍数決定装置であって、該追加の心拍数が決定されるべき胎児心拍数及び/又は決定されるべき胎児心拍数以外の心拍数である追加の心拍数決定装置とを有し、前記処理装置における入力部は前記追加の心拍数決定装置から前記外部情報を受信するように構成される。
【0010】
本発明の第3態様においては、胎児心拍数を決定する方法が提供され、その場合において、当該超音波ドップラエコー信号は少なくとも2つのチャンネルを有し、該少なくとも2つのチャンネルは、第1深度又は深度範囲に関して得られる第1チャンネル及び該第1深度又は深度範囲とは異なる第2深度又は深度範囲に関して得られる第2チャンネルを含み、当該方法は、更に、前記エコー信号の第1チャンネルから第1心拍数を決定すると共に前記エコー信号の第2チャンネルから第2心拍数を決定するチャンネル心拍数決定ステップと、決定されるべき前記胎児心拍数に関する及び/又は決定されるべき前記胎児心拍数以外の心拍数に関する外部情報を受信する入力ステップと、前記外部情報に基づいて前記決定された第1心拍数及び前記決定された第2心拍数のうちの一方を前記決定されるべき胎児心拍数として選択する選択ステップとを有する。
【0011】
母体のサイズ及び胎位の大きな差異をカバーするために、通常、超音波ビームの広い深度範囲が好ましい。胎児心拍数の測定及び視覚化のための装置の既知の超音波ドップラ(US)トランスジューサは、収束されない略円柱状の超音波ビーム場を使用する。感度ボリュームの広がりは、USトランスジューサが反射信号を受信しやすくなる特性時間窓(受信窓)により決定される。典型的に、受信窓の期間は約5〜23cmなる広い深度範囲をカバーするように設計される。測定値は、胎児心臓が平均で当該トランスジューサの表面から6〜10cmの距離内に位置することを示している。種々の身体サイズをカバーするためには、大きな深度範囲が望ましい。しかしながら、ドップラ原理を利用するトランスジューサは感度ボリューム内の全ての移動する構造により生じる周波数シフトを受け易いということが理解されるべきである。多くの場合における胎児心臓の情報を含む信号は、受信される全体の信号のうちの小部分のみを表す。胎児心臓の背後に位置する母体動脈等の他の運動する構造からの信号寄与分が、しばしば、重畳される。望ましくない妨害信号の信号強度は、種々の要因により影響を受けると共に、時間にわたり変化する。胎児信号と母体信号との間の信号強度比に影響を与える1つの主要な要因は、投薬である。例えば、幾つかの子宮収縮抑制薬は母体心拍の信号強度を、時には劇的に、増加させることが分かっている。異なる重畳された心拍数値の混合から正しい心拍を選択するために、信号強度及び心拍数値自体が重要な役割を果たす。胎児心拍数値は、通常、120〜160bpmの間であることが予想される一方、通常条件下での母体心拍数は100bpmより遙かに低い。しかしながら、出産の間における投薬及びストレスは、母体脈拍を容易に160bpmまでも上昇させ得る。これらの条件下では、正しい胎児心拍数を選択するための従来のアルゴリズムは、胎児心拍数の代わりに母体心拍数を選択するように誤って誘導され得る。特に陣痛の第2段階の間において誤った心拍数を測定することは、実際によくある現象である。母体信号及び胎児信号の相互作用により生じる心拍数変化は、遡って識別することは困難であり、最悪の場合は誤った解釈につながり得る。
【0012】
本発明の第1ないし第3態様は、複数の心拍数から胎児心拍数を正確に選択する判断及び選択アルゴリズムを支援することを特に目指している。このことは、超音波ドップラチャンネルから到来する(全ての)心拍数値を、例えば独立したトランスジューサ又は組み込まれた第2の独立した心拍数検出チャンネルから導出される心拍数と比較することにより実行することができる。該独立した心拍数測定チャンネルは、好ましくは、例えば光吸収度、加速度計による移動検出又は電気的活動(ECG)等の異なる測定技術を使用する。心拍数を計算するための上記第2チャンネルは、好ましくは、母体心拍数のみが計算され得ることを保証するものとする(別のチャンネル又はソースが、比較のために胎児心拍数も供給することができるとしても)。例えば赤外線吸収による光学的方法は、母体心拍数のみを取り出す安全且つ正確な方法である。この心拍数を超音波ドップラ信号処理アルゴリズムの判断ユニットに供給することは、当該第2ソースの心拍数の範囲内にある心拍数の除外を可能にする。この場合、信号採点を行う上記判断及び選択アルゴリズムは、最も高い点数を有するが最も母体心拍数でありそうな心拍数値を破棄することができる。この場合、より低い点数の第2の心拍数値は、十中八九、胎児心拍数である。この心拍数が十分な点数及び品質を有しているなら、当該アルゴリズムは該心拍数を出力することができる。
【0013】
好ましい実施態様において、前記追加の心拍数決定装置は、母体心臓運動を測定するように構成された加速度計ユニット、母体心電的活動を測定するように構成された心電計ユニット、拍動する母体酸素飽和度を示す光吸収度を測定するよう構成された光センサ、母体血圧を測定するように構成された血圧センサ、及び前記決定されるべき胎児心拍数以外の心拍数を決定するように構成された追加の超音波ドップラユニットのうちの1以上を含む。
【0014】
独立した心拍数源(前記追加の心拍数決定装置)に対しては、2以上の独立したソースを考えることができる。ECG、運動及び赤外線センサは当該超音波ドップラセンサユニットに容易に組み込むことができ、かくして、母体心拍数のための2以上のソースを提供する。更に、該独立した母体心拍数ソースは、必ずしも当該超音波センサの物理的一部である必要はない。母体心拍数値は、完全に別の装置から(例えば血圧ユニットから)当該超音波信号処理ユニットへメッセージ送信により供給することもできる。該母体心拍数値を連続的に又は心拍間値として供給することも必要ではない。この目的のためには、少なくとも当該超音波ドップラ信号源の深度分布が突然の変化を受けない限り、一定の又は調整する繰り返し周期での抜き取りチェック値で全く十分である。
【0015】
母体心拍数に関する独立したソースが一層多く利用可能であるほど、望ましくない心拍数を除外する判断が一層信頼のおけるものとなる。
【0016】
一実施態様において、超音波ドップラ信号の深度分割のための2以上の組込処理チャンネルを備えた超音波トランスジューサは、母体心拍数を独立に検出するための1以上のチャンネルを含む。可能性のあるソースは、例えば、母体心臓により生じる拍動運動を測定するための加速度計、ECG活動を測定するために母体の皮膚に直接接触される当該トランスジューサハウジングの底面上のECG電極、又はパルス的酸素飽和度による生じる光吸収度を測定するための光センサであり得る。
【0017】
深度区分信号処理チャンネルにより供給される心拍数値は、上記の独立したチャンネルから供給される値に対して比較される。心拍数チャンネルを選択する場合、当該選択アルゴリズムは、上記独立チャンネルの心拍数をおおよそ有する深度区分を除外することができる。
【0018】
他の実施態様において、超音波トランスジューサは外部ソースからの心拍数値のメッセージ伝送を可能にする。ここで、超音波ドップラ信号の深度分割のための2以上の組込処理チャンネルを備える超音波トランスジューサは、第2トランスジューサ(又は他のソース)から有線又は無線通信チャンネルを介してメッセージを受信することができる。該第2トランスジューサは、既知のソースの1以上の心拍数を独立に決定する手段を含むことができる。例えば、Toco(子宮収縮)トランスジューサはECG信号処理経路を含むことができる。母体ECG電極が取り付けられた場合、このチャンネルの心拍数は明らかに母体のものである。有効な心拍数が利用可能である場合、このトランスジューサからメッセージが全ての接続された超音波トランスジューサに対するブロードキャストとして送信される。このシステムに接続された全ての超音波トランスジューサは、この情報を当該メッセージの値をおおよそ有する深度区分を除外するために使用することができる。
【0019】
上述したソースに加えて又は代えて、独立した心拍数値のソースとして、非侵襲的血圧測定から導出される心拍数、SpO2センサからの脈拍数も考えられる。
【0020】
双子又は三つ子の心拍数を測定する場合、通常、2以上の超音波トランスジューサが使用される。これらの配置に依存して、各トランスジューサは異なる深度区分における1以上の有効な胎児心拍数を有し得る。これらトランスジューサが全て同一の深度区分を選択することを防止するために、各トランスジューサはブロードキャストメッセージにより当該心拍数及び/又は深度範囲/区分を他のトランスジューサに通知することができる。定義された優先度に依存して、より低い優先度のトランスジューサは、より高い優先度のトランスジューサにより既に選択された深度区分を除外することができる。特定のケースにおいて、母体心臓の上に配置された第2超音波トランスジューサを、第1トランスジューサの母体心拍数を含む深度区分を除外するために使用することができる。
【0021】
更に、前述したように、複数の超音波トランスジューサは、おおよそ同一の値を有する深度区分の心拍数を除外するために既知の独立したソースから心拍数値を持つブロードキャストメッセージを受信することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、前記処理装置は、第1チャンネル選択情報及び前記エコー信号を発生させるために使用された超音波信号の搬送波周波数に基づく復調周波数としての第1入力周波数を使用して前記エコー信号を復調することにより第1復調信号を供給するように構成された第1復調ユニットと、第2チャンネル選択情報及び前記エコー信号を発生させるために使用された前記超音波信号の搬送波周波数に基づく復調周波数としての第2入力周波数を使用して前記エコー信号を復調することにより第2復調信号を供給するよう構成された第2復調ユニットとを有し、該処理装置はチャンネルモード及び位相シフトモードのうちの一方において選択的に動作するように構成され、前記チャンネルモードにおいて、前記第1チャンネル選択情報は前記第1チャンネルを示し、前記第2チャンネル選択情報は前記第2チャンネルを示し、前記第1及び第2入力周波数は同一であり、前記位相シフトモードにおいて、前記第1チャンネル選択情報及び前記第2チャンネル選択情報は同一のチャンネルを示し、前記第1及び第2入力周波数の間には90度の位相のシフトが存在し、前記第1復調ユニット及び前記第2復調ユニットは、各々、基準復調ユニット及び位相シフト復調ユニットとして機能し、比較ユニットは前記第1及び第2復調信号を時間的関係に関する情報を得るために比較するよう構成され、当該処理装置は前記選択部の選択に従って前記チャンネルモードから前記位相シフトモードに切り換わるように構成され、これにより、前記第1及び第2チャンネル選択情報により示されるチャンネルが前記胎児心拍数として選択された前記決定された心拍数を供給するチャンネルとなる。
【0023】
この実施態様においては、2つの別個のモードが設けられ、これらのモードのうちの一方は別個のチャンネルを処理することに向けられ、従って、外部心拍数情報に基づいて胎児心拍数のための適切なチャンネルを並列な処理チェーンにより決定することができる。当該チャンネルが決定されたなら、即ち他のチャンネル(又は他のチャンネルのうちの少なくとも1つ)が胎児心拍に関する(最良の)情報を提供していないと分かった場合、この“破棄される”チャンネルのために使用されていた処理チェーンは、第4ないし第6態様に関して後述されるような位相シフト処理に切り替えられる。言い換えると、ここでは、前記処理チェーンは全体として当該処理装置のモードに依存して異なる目的のために使用される。
【0024】
特定の構成において、当該実施態様は、患者体格依存性処理制御のために患者データにより制御される個々に構成可能な信号処理チャンネル、複数のソースを1つの超音波トランスジューサで測定するための(例えば、双子+母体)異なる構成を用いた複数のチャンネルの並列動作、及びダブリングのない心拍数登録のための切り換え可能な復調方法を提供することができる。
【0025】
特に、超音波ドップラ復調チャンネルの多重使用は、以下の利点のうちの少なくとも幾つかをもたらすことができる。即ち、信号対雑音比を向上させるために感度ボリュームの分割を可能にする;直交復調が適用された場合、ダブルカウントを防止する;異なる評価規則セットのチャンネルを取っておくことは、一層高い精度を生じる追加のバックグラウンド計算を可能にする;異なる規則セットによる並列的心拍数計算は正しい心拍数を測定する信頼性レベルを向上させる;1つのトランスジューサによる複数のソースの測定を可能にする(例えば、双子+母体)。
【0026】
本発明の第4態様においては、超音波ドップラエコー信号から胎児心拍数を決定する処理装置が提供され、該処理装置は、前記エコー信号を発生させるために使用された超音波信号の搬送波周波数を復調周波数として使用して前記エコー信号を復調することにより基準復調信号を供給するように構成された基準復調ユニットと、該基準復調ユニットと比較して90度シフトされた復調周波数を使用して前記エコー信号を復調することにより位相シフト復調信号を供給するように構成された位相シフト復調ユニットと、前記基準復調信号及び前記位相シフト復調信号を比較して、これら基準復調信号及び位相シフト復調信号の対応する各信号点の間の時間的関係に関する情報を得るように構成された比較ユニットと、前記時間的関係に関する情報を処理して、前記エコー信号における第1方向の運動に対応する第1部分及び前記エコー信号における前記第1方向とは反対の第2方向の運動に対応する第2部分を示すタイミング情報を決定するように構成された処理ユニットとを有し、該処理ユニットは更に前記タイミング情報を、前記胎児心拍数を決定する処理に使用するように構成される。
【0027】
本発明の第5態様においては、胎児心拍数を決定するシステムが提供され、該システムは、超音波信号を送信すると共に超音波ドップラエコー信号を検出するように構成された超音波ドップラ装置と、前記検出された超音波ドップラエコー信号を受信するために前記超音波ドップラ装置に結合される前記第4態様による処理装置とを有する。
【0028】
本発明の第6態様においては、超音波ドップラエコー信号から胎児心拍数を決定する方法が提供され、該方法は、前記エコー信号を発生させるために使用された超音波信号の搬送波周波数を復調周波数として使用して前記エコー信号を復調することにより基準復調信号を供給する基準復調ステップと、該基準復調ステップと比較して90度シフトされた復調周波数を使用して前記エコー信号を復調することにより位相シフト復調信号を供給する位相シフト復調ステップと、前記基準復調信号及び前記位相シフト復調信号を比較して、これら基準復調信号及び位相シフト復調信号の対応する各信号点の間の時間的関係に関する情報を得る比較ステップと、前記時間的関係に関する情報を処理して、前記エコー信号における第1方向の運動に対応する第1部分及び前記エコー信号における前記第1方向とは反対の第2方向の運動に対応する第2部分を示すタイミング情報を決定する処理ステップとを有し、該処理ステップは、前記タイミング情報を、前記胎児心拍数を決定する処理に使用するステップを含む。
【0029】
超音波を用いたドップラ効果を利用する前後関係において、到来するドップラ信号(即ち、エコー)は、典型的に、同期復調により搬送波から抽出される。この方法は非常に簡単であり、高い技術的努力は必要としない。
【0030】
本発明の上記態様の前後関係において、この方法は、復調が搬送波と同一の周波数で実行される故にドップラシフトの方向情報又は符号が不可逆的に失われるという1つの重大な欠点を有することが発明者により理解された。
【0031】
この技術が心拍検出のために適用された場合、収縮期心臓活動と拡張期心臓活動との間の区別は最早不可能となる。両活動はタイミング図において2つのピークとして現れる。通常の条件下において、収縮期及び拡張期心臓活動の間の時間t
1は、後続する心臓活動の拡張期と収縮期との間の時間t
2よりも大幅に小さい。入力信号は2つの活動ピークを示し、一方は心臓収縮(収縮期)を表し、他方は心臓弛緩(拡張期)を表す。通常の枠組みの場合、ドップラ原理によれば、収縮期は負の周波数シフトを生じる一方、拡張期は正のものを生じる。復調の間に符号が失われるので、心臓活動の実際には望まれない第1又は第2ピークを識別又は削除することができず、従って一層高い周波数において自己相関関数の望ましくないピークを生じることになる。
【0032】
上記から及び本明細書でなされる更なる説明から明らかとなるように、超音波ドップラエコーのための従来の信号処理は、2つの連続する心臓活動の間の時間比が1に近付く場合、正しい心拍数を選択することに困難さを有する。ダブリングを除去するための信号処理の一般的理論からの簡単なアプローチは、心臓活動の望まれない信号成分(収縮期又は拡張期の何れか)を削除することであり得る。このような簡単な方法の一例は、心臓活動の検出後の定義された時間にわたり、入力データストリームの値を零にすることである。しかしながら、実際には記録されるエコー信号は余りに弱くてノイズ内に隠されるので、例えばECG信号を評価するために使用されるようなピークトリガ方法は可能ではない。母体又は子供に起因する動きアーチファクトは、強い信号変動を生じ、このことは自己相関の使用を必須とさせる。運動方向の喪失を補償するための他の可能性は、送信周波数より高い復調周波数を使用することであり得る。この場合、例えば適切なフィルタは、例えば拡張期の間の望ましくない周波数成分を削除することができる。発明者は、技術的に余り要求度が高くなく且つ複雑でない解決策を直交復調等の方法を使用することにより見付けることができるということを理解した。このような直交復調の場合、受信された信号はオリジナルの送信周波数で復調され、次いで併行して、90度位相シフトされた送信周波数で復調される。これら2つの信号を互いに比較することは、位相シフトされた信号が基準信号に先行する又は基準信号より遅れることを明らかにする。
【0033】
このような進み又は遅れに関する情報は、収縮期及び拡張期運動の間を区別するために使用することができ、その場合において、このことは胎児心拍数自体を決定するために使用することができるか、又は胎児心拍数の決定のために使用される超音波エコー信号の望まれない部分をマスキングし、これにより斯かる部分の悪影響を少なくとも低減するために使用することができる。
【0034】
本前後関係で考察される前記信号点は好ましくは当該信号の零交差であるが、代わりに又は加えて、例えば最大の正及び/又は負の振幅の点等の他の点も考えることができる。
【0035】
好ましい実施態様において、前記処理ユニットは前記エコー信号を復調することにより得られた復調信号の部分を前記タイミング情報に基づいて選択的に削除することにより、削除された復調信号を得るように構成することができ、その場合において、前記処理ユニットは、更に、胎児心拍数を自己相関により上記の削除された復調信号を用いて決定するように構成される。
【0036】
結局のところ心臓運動のフェーズに関する情報を含む上記タイミング情報は、超音波ドップラエコー信号の部分を除去又は無視するために使用することができ、これにより望ましくないアーチファクトを防止することを可能にする。特に、収縮期の又は拡張期の心臓活動の何れかを削除することにより、自己相関においてダブリングが回避される。
【0037】
好ましい実施態様において、前記処理ユニットは、更に、削減されていない心拍数を前記基準復調信号に自己相関を施すことにより決定すると共に、削減された心拍数を削除された復調信号に自己相関を施すことにより決定するよう構成され、該処理ユニットは、更に、前記削減されていない心拍数及び前記削減された心拍数の一方を選択することにより胎児心拍数を決定するように構成された選択部を含む。
【0038】
発明者により、前記削除により情報を除去することにより可能性として生じ得る心拍間精度の喪失に対し、心拍数を従来の手段により(例えば、削減されていない完全な超音波ドップラエコー信号に自己相関を適用して)併行して決定することができる一方、前記削除された復調信号から得られる心拍数と従来のようにして得られる心拍数との比較を、倍化された心拍数を誤って考慮することを防止するために使用することができることが見出された。
【0039】
好ましい実施態様において、前記処理ユニットは前記タイミング情報に自己相関を施し、胎児心拍数を得るよう構成される。
【0040】
例えば上記タイミング情報を形成する符号のストリームを使用して、心拍数を自己相関の使用により計算することができる。相関のために、正の符号若しくは負の符号の何れか又は両方を用いることができる。正及び負の符号の独立した評価も可能である。
【0041】
上述した実施態様のフィーチャの混合例において、フェーズ考慮心拍数は前記タイミング情報から自己相関により得ることができ、その場合において、このフェーズ考慮心拍数は従来のようにして得られる心拍数と一緒に使用されて、倍化心拍数に起因する混乱を回避する。
【0042】
上述され且つ図を参照して例示的実施態様に関して説明される本発明の第4ないし第6態様は、各々、本発明の第1ないし第3態様のコンテキストで示されている。
【0043】
本発明の第7態様においては、胎児心拍数を決定する処理装置が提供され、前記処理ユニットは患者関連データを受信するように構成され、前記処理ユニットには該処理ユニットにより提供される処理に関連する設定データが供給され、前記処理ユニットは該設定データを前記受信された患者関連データに基づいて調整するように構成される。
【0044】
本発明の第8態様においては、胎児心拍数を決定するシステムが提供され、該システムは、超音波信号を送信すると共に超音波ドップラエコー信号を検出するように構成された超音波ドップラ装置と、前記検出された超音波ドップラエコー信号を受信するために前記超音波ドップラ装置に結合された本発明の第7態様による処理装置とを有し、前記超音波ドップラ装置は患者関連データを受信するように構成され、該超音波ドップラ装置には自身の動作に関連する設定データが供給され、該超音波ドップラ装置は該設定データを前記受信された患者関連データに基づいて調整するよう構成される。
【0045】
本発明の第9態様においては、胎児心拍数を決定する方法が提供され、該方法は、患者関連データを受信する受信ステップと、当該方法の動作に関連する設定データを前記受信された患者関連データに基づいて調整する調整ステップとを有する。
【0046】
特に病院で使用される場合、胎児心拍等の生理学的パラメータを測定及び視覚化するためのモニタ又は装置はローカルネットワーク設備に接続され、該ローカルネットワーク設備は当該モニタをしばしば集中化される視覚化及び記録保管プログラムに接続する。このプログラムは、基本的に、時間にわたり収集された全ての関連する患者データを格納するデータベースである。妊娠の異なる時点で取られたCTG波形記録、投薬、既往歴、患者データ及び多くの他の生理学的パラメータが、電子健康医療記録に記憶及び文書化される。
【0047】
現在、このような接続される胎児モニタは、適用されたセンサにより記録されたデータを記録保管及び記憶するために電子健康医療記録データベースを主に使用する。斯かるモニタの幾つかは特別な手続きを規定し、その場合、妊婦は特定の陣痛及び分娩室又はモニタに対し加入又は解放される。加入/解放手続きの後、当該モニタは当該患者の個人的情報を格納したデータベースに接続される。従来、胎児モニタは斯かるデータベースを主に測定データを出力するためだけに使用している。データベースからモニタに情報を読み出すことは、断片的にしか使用されない。
【0048】
胎児及び母体の生理学的パラメータをモニタすることは、弱くて雑音の多い信号を拾うために非常に敏感なセンサ素子を必要とする。感度レベルは、通常一定であり、広範囲の身体体格をカバーするために製造者の経験により定められる。肥満患者の数の増加により、適切な強度の信号を得ることは益々困難となってきている。全てに対して感度レベルを単に上昇させることは、体重計の上端をカバーするための良いやり方とは言えない。何故なら、望まれない信号を記録する尤度も増加するからである。超音波、電場又は磁場を用いるセンサ系の場合、場強度を上昇させることも問題がある。何故なら、このような場合、通常の体重の又は体重不足の患者は不必要に高い場強度に曝されるからである。更に、電池駆動装置の動作時間は不必要に減少される。胎児モニタは、既に、手動調整の幾つかの簡単な可能性を提供している。例えば、Tocoセンサの感度は、該センサが痩せた婦人に適用される場合、記録のクリッピングを防止するために50%低減することができる。感度又は場エネルギの調整は、操作者の手動対話を必要とする。手動対話は、常に時間が掛かると共に、操作方法に関する深い知識を必要とする。設定調整の更なる可能性を追加することは、一方では望ましいが、他方で、このことは操作者を混乱させると共に、装置準備のための時間を増加させる。装置の準備及び設定のための時間を低減することは些細なことではない。何故なら、多くの国において、病院要員は経済的圧力のため減少されているからである。更に、全ての設定変更は、予期せぬ停電の後の復旧のためにメモリに記憶されねばならない。当該モニタが患者変更の後にデフォルトの設定に戻るためのメカニズムを設けていない場合、新しい患者を不適切な設定でモニタする危険性が存在する。
【0049】
発明者は、特に脂肪が陣痛及び出産の間に測定される全ての生理学的パラメータの可測性に対して極めて悪い影響を有することを理解した。成人の場合、過体重及び肥満範囲は、体重及び身長を用いて“体格指数”(BMI)と称される数を計算することにより決定される。BMIは、殆どの人に関して体脂肪の量と相関するので使用される。患者の体重及び身長並びに妊娠の週は、電子健康医療記録の主要部分である。この情報を組み合わせることにより、例えば3つの部類、即ち肥満、普通及び痩せ型への分類は容易に可能である。このBMI連結分類によれば、胎児モニタシステムに接続された全てのセンサ又はトランスジューサは、最適性能の点まで強制することができる。このアプローチの要点は、各生理学的パラメータの設定調整を身体分類の使用により自動化することである。斯かる分類は、例えば、加入時における患者健康医療記録からの関連するデータの自動的読み出し、加入時におけるタッチスクリーン又はキーボードによる当該モニタでの手動入力、加入時におけるバーコードタグ又は無線IDタグの読み取りによるデータ入力により得ることができる。
【0050】
各生理学的パラメータの重要な測定設定を調整することは、測定性能が最適化された信号対雑音により(著しくさえ)増加され得る、モニタの準備時間が低減される、操作者により普通は知られていない設定も自動的に変更され得るので動作点が最適化される、例えば超音波等のエネルギ場に対する暴露が改善される、電池給電装置の動作時間が改善される等の利点を自動的に可能にする。
【0051】
前記処理ユニットがデータベースに結合されると共に該データベースから患者関連データを受信するように構成された好ましい実施態様においては、患者関連データが記憶されたデータ担体を読み取るように構成された読取部が設けられ、及び/又は前記処理装置のユーザにより患者関連データの入力を可能にするように構成されたインターフェース部が設けられる。
【0052】
前述され且つ図を参照して例示的実施態様に関して説明される本発明の第7ないし第9態様は、各々、好ましくは本発明の第1ないし第3態様及び/又は第4ないし第6態様の前後関係で設けられる。それにも拘わらず、本明細書で説明される第7ないし第9態様及びそれらの実施態様は、別途に、即ち本発明の第1ないし第3態様とは独立に、又は第4ないし第6態様とだけの組み合わせで設けることも考えられる。
【0053】
本発明の更なる態様においては、超音波ドップラエコー信号から胎児心拍数を決定するコンピュータプログラムが提供され、該コンピュータプログラム(ソフトウェア製品)は、第1、第4又は第7態様による処理装置に、該処理装置上で当該ソフトウェア製品が実行された場合に、第3、第6又は第9による方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する。
【0054】
請求項1の処理装置、請求項3のシステム、請求項5の胎児心拍数を決定する方法及び請求項6のコンピュータプログラムは、特に従属請求項に記載されるような同様の及び/又は同一の好ましい実施態様を有すると理解されるべきである。
【0055】
本発明の好ましい実施態様は、従属請求項又は上記実施態様と各独立請求項との任意の組み合わせもあり得ると理解されるべきである。
【0056】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施態様から明らかとなり、該実施態様を参照して説明されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、自己相関の概念を図示した複数の図を示す。
最初に、自己相関の説明の限定するものでない導入部として、胎児心拍数の決定の例示的実現例の説明を行う。
【0059】
超音波ドップラトランスジューサが、母体の腹部上に配置され、腰の周りに装着される弾性ベルトにより定位置に保持される。ドップラ効果は、運動する目標から反射される音波が運動の方向及び速度に依存して周波数的にシフトされるという原理に基づいている。この原理に基づいて、胎児心筋の機械的収縮は超音波反射の周期的信号パターンを生じさせる。該パターンの周期性は、胎児モニタにより該胎児の現在の心拍数を決定するために用いられる。胎児心拍数トランスジューサの大多数は、パルス波原理を用いる。圧電素子のアレイが、電気機械変換器として使用される。このアレイは、送信器及び受信器として双方向に動作する。シーケンサが送信及び受信フェーズの間の適時の切り換えを制御する。送信フェーズの間において、圧電アレイは超音波パケットを発生するために反復的に励起され、これら超音波パケットは胎児心臓に向かって進行する。これらの進行する超音波パケットは、反射され、妊婦の身体内の運動する層(例えば、胎児の心臓)上でのドップラ効果により周波数シフトされる。受信された反射信号は、同期復調器により送信バーストに使用されたものと正確に同一の周波数を用いて復調される。復調、積分、増幅及び帯域通過フィルタ処理の後、ドップラ周波数が信号処理のために利用可能となる。受信された弱いドップラシフトされたエコー信号は、身体又はトランスジューサの運動により生じるアーチファクトからの信号及び雑音内に埋まっている。
【0060】
上記雑音から周期的信号を抽出するために、自己相関の方法が適用される。自己相関は、雑音下に埋められている周期的信号の存在等の、繰り返しパターンを見付けるための数学的方法である。該相関の結果は、心拍数の正確な計算を可能にする関数である。
【0061】
図1は、自己相関の出力がどの様に計算されるかの簡略化された図を示す。信号は、自身の点毎の時間シフトされた複写で増殖(複数化)される。各複数化の結果は、合計される。
【0062】
図1において、陰影の付けられた長方形は、積がゼロでなく、従って自己相関関数に寄与する箇所を示す。
【0063】
図1のaは、0の時間シフト(τ=0)の場合を示し、ここでは類似性が全体のパルスに対応する。
図1のbは128ラグ(τ=128)の時間シフトの場合を示し、この場合、類似性はパルスの半分に対応する(3回繰り返して)。
図1のcは256ラグ(τ=256)の時間シフトの場合を示し、この場合、類似性は全く存在しない。
図1のdは384ラグ(τ=384)の場合を示し、この場合、類似性はパルスの半分に対応する(2回繰り返して)。該自己相関の結果は
図1のeに示され、ここで、矢印は
図1のa〜dから当該結果の対応する部分を指している。
【0064】
図1の横軸は時間の経過(ラグでの)を示す一方、縦軸は任意の単位で示される。
【0065】
時間シフト0において、該自己相関の結果(
図1のe)は当該信号のエネルギを表す最大値を有する。時間シフト512(
図1のa〜dには示されていない)において、該自己相関関数は第1の最大値(τ=512)を有する。このピークは、信号周期性の最初の繰り返しを表す。このピークのτ値を取り入れて、信号周波数を計算することができる。
【0066】
図2は、非等距離の単純化心臓活動の自己相関の解説図を示す。
【0067】
典型的に、到来するドップラエコー信号は搬送波から同期復調により抽出され、その場合において、この方法は極めて簡単であり、高い技術的努力は要さない。発明者は、この方法は、復調が搬送波と同一の周波数で実行されるので、ドップラシフトの方向情報(又は符号)が不可逆的に失われるという点で1つの重大な欠点を有することを理解した。
【0068】
このような技術が心拍検出のために適用された場合、収縮期心臓活動と拡張期心臓活動との間の区別は、最早、不可能となる。両活動は時間ダイアグラムにおいて2つのピークとして現れる(
図2a参照)。通常の条件下で、収縮期心臓活動と拡張期心臓活動との間の時間(t
1)は、続く心臓活動の拡張期と収縮期との間の時間(t
2)より大幅に小さい。
【0069】
入力信号は2つの活動ピークを示し(
図2a)、一方は心臓収縮(S=収縮期)を表し、他方は心臓弛緩(D=拡張期)を表す。ドップラ原理によれば、収縮期は負の周波数シフトを生じる一方、拡張期は正の周波数シフトを生じる。復調の間に符号が失われるので、心臓活動の実際には望まれない第1又は第2のピークを除去することができず、従って一層高い周波数での自己相関関数の不所望なピークを生じる。
【0070】
所与のものは、2Hz=120bpmの収縮(S)と弛緩とからなる周期的心拍である。収縮期と拡張期との間の時間は100msである(
図2aの横軸は時間を秒の単位で示し、縦軸は正規化されている)。自己相関関数(ACF)の結果(
図2b、ラグを示す横軸及び任意に示された縦軸を伴う)は、100の振幅を持つ2つのピークを、一方はτ=200に、他方はτ=1024に示している。
【0071】
両ピークは同じ振幅を有する。関係する周波数を計算する場合、τ=200は614bpmの周波数となる一方、τ=1024における第2ピークは依然として120bpmを示す。誤ったHRの評価を防止するために、自己相関を用いるCTGの評価範囲は、約240(τ=512)の範囲に限定される。ラインLはピーク検査限界を示す。
【0072】
ピーク評価及びピーク選択は、信号処理の第2部分、所謂後処理において実行される。この機能は、通常、240bpmより高い周波数を持つピークを単に削除する。ピーク検査限界の設定は、モニタのダブリング(倍化)挙動に対して本質的な影響を有する。当該設定が240bpmにおけるものである場合、120bpmより高い全ての心拍数は“ダブリング保存(doubling save)”となる。何故なら、心拍数が倍化された場合、結果は常に評価限界の外側になるからである。胎児心拍数記録は殆ど140bpm〜180bpmの領域をカバーする一方、母体心拍数は殆ど100bpmより低い。
【0073】
評価限界設定を除いて、ダブリングに関する恐らく最も重要な因子はt
1とt
2との間の比である。t
1/t
2の比が1に近付くと、心拍数値は高い尤度で倍化される。残念ながら、超音波ドップラセンサは感度ボリューム内の全ての運動する構造により影響を受け易い。多くの場合における胎児心臓に関する情報を含む信号は、受信される全信号の小部分のみを表す。胎児心臓の背後に位置する母体動脈等の他の運動する構造からの信号寄与分は、特に投薬が母体の脈拍数及び血圧を上昇させる場合に、頻繁に重畳される。
【0074】
時間比t
1/t
2は、ダブリングに関して重要である。人の心臓の生理機能により、時間比t
1/t
2は心拍数範囲にわたって一定ではない。80bpmと120bpmとの間の心拍数においては1の比に近付く尤度が高いと言うことができる。この場合、80bpmの周波数のダブリングは、160bpmとして記録される。これは、正に、胎児に関して予想される心拍数範囲となり得る。胎児心拍数の欠如により何時間にもわたり母体の(倍化された)心拍数が記録されたケースが時折報告されている。
【0075】
図3は、等距離の簡略化された心臓活動の自己相関の解説図を
図2のものと同様の配置で示す。
【0076】
図3は、特にダブリングの効果を図示している。入力信号において、t
1はt
2と略同じ値まで延長されている。結果として、以前には評価限界外であった最大ピーク(P
1)は今や正確に限界線上に位置し、かくして、4Hz=240bpm(τ=512は4Hzとなる)なるHR値を生成する。当該ピーク評価関数は、P
2の代わりにP
1を選択しなければならない。
【0077】
ダブルカウントは、主に胎児の徐脈の場合、又は母体脈拍が不注意に測定された場合に観察される。通常、胎児徐脈に起因するダブルカウントの連続は、母体心拍数が独立した心拍数測定チャンネルで記録される場合(例えば、赤外センサで測定される母体脈拍)、容易に識別することができ、誤った記録解釈のリスクを課すことはない。それにも拘わらず、倍化された母体心拍数を不注意に測定することは、母体心拍数パターンが胎児心拍数パターンに類似し得るので、重大なリスクである。チャンネル間照合の普通の方法は同一の源を有する心拍数の倍数を検出し損なうので、ダブリングは長い時間にわたり発見されないままとなり得る。
【0078】
図4は、(人工的)超音波ドップラエコー信号の位相シフト復調の図を示す。
【0079】
特に、
図4は基準信号(オリジナルの人工ドップラ信号)及び90度位相シフトで復調された人工ドップラ信号を示す。第1信号1は位相シフト無しで復調されている一方、第2波形2は90度位相シフトで復調されている。該波系図の第1半部において、第1信号1は第2信号2に明らかに先行している。当該信号振幅の最大値において、位相は突然変化し、ここからは第2信号が3つの振動にわたり第1信号1に先行する。当該振動の残りに関して、位相は初期条件に切り換わって戻る。
【0080】
視点に依存して、初期部及び末尾部は前方移動として見ることができる一方、3つの振動を伴う中央部は後方移動であり得る。第1信号1の零交差と第2信号2の零交差との間の時間差を測定することの結果として、負の値又は正の値の何れかが得られる。移動方向を再現するためには、基本的に値を除く符号のみが重要である。両信号1,2の零交差を評価することは、一連の符号3を得ることを可能にする。
【0081】
図5は、
図4に示したような位相シフト復調に対応する生の一連の符号の一例を示す。
【0082】
図5は、符号の典型的な連続を生の形で示す。測定領域における雑音及び重ね合わされた逆移動部分は、
図5に示されるように強い符号の変動の原因となる(値ゼロは、零交差の間に差がないか、又は結果が不確定であるかの何れかを示す)。
【0083】
図6は、
図5における生の一連の符号から導出された処理済の一連の符号の一例を示す。
【0084】
図5に示された前記一連の生の符号に既知の適切な信号処理方法を適用する結果、
図6に示されたような平滑化された符号信号が生じ、該信号を更なる信号処理のために使用することができる。
【0085】
図6に示された符号は、
図7に示されるような心臓活動の予想される速度プロファイルに非常に良好に関連する。
【0086】
横軸の異なるスケーリングを心に留めると、
図6に示された平滑化された符号信号は心臓活動の速度方向を非常に良好に表しており、従って当該信号の望ましくない部分を削除するために使用することができることが分かる。言い換えると、発明者は、基準信号をゲート処理するために該二進符号値を使用することができると理解した。
【0087】
図8は、本開示の一要素によるダブリングを回避するための基本的信号処理経路を示す。
【0088】
この要素は、移動方向又は符号により識別される望ましくない信号事象を削除することにより提供するものである。0度位相シフトで復調された基準信号(基準復調信号)10及び同じソースから90度位相シフトで復調された第2信号(位相シフト復調信号)15は、DCオフセットを除去するために各ハイパスフィルタ20,21に供給される。基準信号10は、自己相関のための準備として必要とされる通常の信号処理チェーン(即ち、振幅処理部22、ローパスフィルタ23及び遅延部24)を通過する。
【0089】
両信号は、ハイパスフィルタ20,21の後で取り出される。ハイパスフィルタ処理された信号は、近似された包絡線の平滑フィルタ遅延を補償するために遅延される(ブロック25,26)。その後、これらの信号は、例えば機械的休止期間における単なるノイズ信号上での符号検出を防止するために包絡線制御ノイズゲート27,28を通過される。両信号に対する次の段は、各零交差検出器29,30である。これら零交差検出器29,30の2つの出力の時間的関係を比較することにより、符号検出器31は当該信号が正の符号又は負の符号を有するかを決定する。正、負又は不確定極性(零交差無し若しくはノイズ)の符号のストリームは、
図6に示されたような信号を得るために、フィルタ処理され、遅延され、平滑化される(ブロック32,33)。結果としての二進符号信号15’(
図6参照)は、スイッチ34の使用により望ましくない信号事象を削除するために使用される。スイッチ34の後、当該処理された基準信号10’は1つの心臓活動の信号部分のみを有する。拡張期又は拡張期心臓活動を削除することにより、以降の自己相関35は、最早、ダブリングの可能性は有さない。
【0090】
図9は、従来の整流され且つフィルタ処理された信号、及び本開示の一要素により処理されたゲート制御された信号の比較を可能にする。
【0091】
上述した様な心臓活動の事象の削除の効果が、
図9に示されている。相関のために普通に使用される整流され且つフィルタ処理された信号(
図9のa)は、符号信号15’により制御されるゲートを通過しなければならない。この例において、負の符号を有する信号活動は阻止される。結果は、“ダブリング無し”である調整された信号10’である。
【0092】
ここでは、
図8に示されるような信号処理シーケンスが、ダブルカウントを防止するために使用される。この構成は、何の追加の自己相関も必要とされないという利点を有している。従来の構成と比較して設けられる強化は、直交復調及び零交差検出並びに符号評価のための第2ハードウェアチャンネルがフィルタ処理を含むことを含む。
【0093】
しかしながら、当該信号は情報を失うので、自己相関の結果が実際にダブリング無しでも、心拍間精度の喪失を被り得る。
【0094】
図10は、本開示の第2要素による信号処理を示す。
【0095】
心拍間精度の喪失を回避するために、予備胎児心拍数(削除されていない心拍数)が、幾らか従来的な方法40(即ち、自己相関42が後続する基準信号処理41を含む)を用いて要素追加的に計算される。併行して、第2心拍数が
図8の処理方式に従って計算される。第2心拍数(削除された心拍数)は、最初の自己相関の心拍数選択器43が倍化された心拍数を誤って取り込むのを防止するために使用される。
【0096】
上記の変形例において、第2心拍数は、
図11に示されるように、符号ストリーム15’から直接得ることができる。
【0097】
図11における本開示の要素によれば、自己相関(及び後処理)35’は符号ストリーム又は信号15’(削除された超音波エコー信号10’に対してというより)に対して行われる。
【0098】
図12は、符号ストリームから得られた心拍数自体が使用される、本開示の第4要素による信号処理を示す。ここでは、正の符号又は負の符号の何れかのための符号選択36が更に行われる。
【0099】
両信号を、正及び負の符号の独立した評価との組み合わせ又は斯かる評価の過程において相関のために使用することもできることに注意すべきである。
【0100】
図8、
図10、
図11及び
図12における対応する要素は、対応する又は同様の符号により示されており、従って、これらの更なる説明は省略される。
【0101】
図13は、胎児及び母体心拍数波形を伴う胎児心拍陣痛図の一例を示す。
【0102】
図13に図示された胎児心拍陣痛図から切り出された波形は、2つの波形F及びMを示す。上側の波形Fは、超音波ドップラトランスジューサから導出された胎児心拍数波形を示す。下側の波形Mは、子宮活動を測定するトランスジューサに組み込まれた赤外センサにより導出された母体心拍数波形を示す。
【0103】
この例に関し、2つの空間的に分離された独立の心拍数チャンネルが考察される。
図13の最初の半部において、2つの波形は明確に分離されている。胎児心拍数の記録の正しさに関して何の疑いもない。該図の第2半部において、2つの波形F及びMは殆ど一致している。母体波形Mに関する情報無しでは、胎児波形Fは胎児波形として解釈されるであろうが、この例では、事実上、超音波アルゴリズムが意図せずに、採点及び選択アルゴリズムにより一層低い点数の胎児心拍数値より良い点数を有する母体心拍数Mに切り換えている。本発明による修正された選択アルゴリズムは、より低い点数の胎児心拍数を印刷のために選択するか、又は代わりの心拍数が利用可能でない場合は斯かる印刷を抑圧(空白に)する。
【0104】
2つの心拍数値を印刷する現在の状態(典型的に使用されているサーモプリンタはカラー印刷が不可能であるので、両方とも黒である)は、各心拍数が略一致すると重ね印刷が胎児心拍数をぼかすと共に恐らくは利用可能な代わりの心拍数が隠されるので、ユーザは印刷された心拍数の何れが有効な胎児心拍数であるかを決定しなければならず、不満足なものである。
【0105】
ここで提供される相互比較は、超音波ドップラトランスジューサにより記録された胎児心拍数波形の信頼性を改善する。該相互比較は、母体心拍数への意図せぬ切り換わりの尤度を低減する。該切り換わり効果により生じる心拍数の変化は、波形解釈を誤った方向に導き得る。誤った心拍数波形を誤って解釈することは、不必要な行為、不必要な手術、及び障害を受けた胎児の遅延出産又は胎児の死亡の原因となり得る。
【0106】
従来の胎児モニタは、妊娠及び分娩の間における胎児心拍数の非侵襲的収集及び記録のために超音波ドップラ技術を使用する。胎児心筋の機械的収縮は、超音波反射に周期的信号パターンを生じさせる。該パターンの周期は、胎児モニタにより胎児の現在の心拍数を検出するために使用される。
【0107】
この技術の主要な問題は、超音波反射を発生する生理学的信号源に対する無頓着さである。使用される超音波ビームの範囲内の組織又は血流の全ての周期的動きは、心拍パターンを発生し得る。特に、母体の腹部動脈の拍動は、この問題の既知の原因である。
【0108】
発明者は、異なる信号源は空間的に分離されていることを理解した。
【0109】
超音波トランスジューサは、妊婦の腹部上に配置される。送信フェーズの間において、圧電トランスジューサは繰り返し励起されて、胎児心臓に向かって進行する超音波パケットを発生する。これらの進行波パケットは、妊婦及び子供の身体中の運動する層上で、例えば胎児心臓及び母体動脈から反射されると共にドップラ効果により周波数シフトされる。胎児心臓及び母体動脈は当該トランスジューサの表面に対して異なる距離にあるから、上記進行波パケットは反射点まで及び該トランスジューサに戻るまで異なる進行時間を要する。
【0110】
圧電素子アレイは、両方向において使用される。送信が終了した場合、当該トランスジューサは送信から受信モードへと切り換わる。全測定深度をカバーする単一の受信窓によれば、
図14に示されるように、胎児信号源及び母体信号源からの信号を重畳した信号が結果となる。
【0111】
このような信号は、信号処理ユニットが正しい心拍数を抽出することを困難にさせる。
【0112】
このような理由で、測定サイクルの異なる時点で活性状態になる複数の受信チャンネルが使用される。既述したように、異なる深度からのエコー信号は、トランスジューサの表面に到達するまでに異なる進行時間を要する。複数の受信チャンネルで適時にずらされた信号取得は、適切な信号分離を可能にする。
【0113】
図15は、本発明の一実施態様による信号処理を示す。
【0114】
図15は、各自己相関53,54のための入力信号51,52として適時に細断された
図14の信号を示す。重畳された超音波ドップラ信号の適時の(深度)分離のために、当業者は超音波信号復調及びフィルタ処理に良く馴染みがあるので、離散的復調及びフィルタ処理チャンネルが使用される(ここでは、図示されていない)。
【0115】
実施法は、ハードウェアにより提供される復調及びフィルタ処理経路の利用可能性に依存して様々であり得る。
【0116】
この実施態様により提供されるような基本的深度分離を実施するために、少なくとも2つの(独立した)復調及び信号処理チャンネルが必要とされる。信号処理能力とハードウェアの複雑さとの間の良好な実施化のための妥協点は、4チャンネルシステムである。
【0117】
複雑さを低く維持するために、実施態様の説明は、ここでは、2チャンネルのみを使用する。
【0118】
デジタル化された超音波ドップラ信号は、次いで、自己相関53,54及び該自己相関の結果の後処理55,56により伝統的方法で処理される。各信号処理チェーンの出力は心拍数の値である。
【0119】
第1深度チャンネルは145bpmであると仮定する(上側の枝路51,53,55)。本例は、更に、このチャンネルの深度範囲は、68bpmの心拍数を生じる他方よりも表面に近いと仮定する。
【0120】
該簡略化された構成において、これら2つの心拍数値は比較のために利用可能である。これら超音波深度チャンネルの値は、次のステップ57において独立信号源62の値と比較される(58,59)。
【0121】
該独立信号源は例えばECGを使用したもので、心拍数の処理61及び検出62が施される。
【0122】
前記値のうちの一方が該独立信号源の値に近い場合、続くアルゴリズム63が該値を除外して、胎児心拍数を出力する(64)ことができる。
【0123】
当該判断アルゴリズムを改善するために、超音波の深度情報を、除外精度を増加させるために使用することができる。例えば、トランスジューサが伝統的に超音波ビームを背骨に向けて配置される場合、一層大きな進行時間を持つチャンネルから計算される心拍数は、当該トランスジューサの表面から一層遠くの信号源を有する。この例において、当該心拍数が前記独立信号源の値に合致すると共に深度範囲が他方の心拍数の層より後である場合、この心拍数の源(ソース)は疑いもなく母体のものである。通常のトランスジューサ配置の場合、これは常に当てはまる。何故なら、母体血管は空間的に胎児心臓の背後に位置するからであるが、当該ビームが背中から又は横方向に向けられた場合、この発見的アプローチは機能しない。
【0124】
図16は、本開示の他の要素を概略的に示す。
【0125】
現在の胎児モニタは、種々の測定可能な生理学的パラメータをカバーしている。とりわけ、胎児心拍数及び子宮活動のパラメータ組である。この主要なパラメータ対は、血圧、酸素飽和度、脈拍及び温度等の種々の母体パラメータにより補足することができる。
【0126】
妊婦内の胎児を外部的にモニタするための従来の非侵襲的方法は、胎児心拍数(FHR)を測定するための超音波ドップラトランスジューサ、及び子宮活動/収縮を測定するためのトコダイナモメータ(Toco)と呼ばれる圧力トランスジューサを含む。両トランスジューサは、母体の腹部上に、腰の周りに取り付けられる弾性ベルトにより定位置に保持される。
【0127】
当該超音波ドップラトランスジューサは、高周波音波が胎児心臓の機械的活動を反映するという原理に基づいている。胎児心筋の機械的収縮は、超音波反射に周期信号パターンを生じさせる。該パターンの周期は、胎児モニタにより胎児の現在の心拍数を決定するために使用される。該超音波トランスジューサは、圧電素子のアレイを電気機械変換器として使用する。該圧電素子のアレイは、送信器及び受信器として双方向で動作する。シーケンサが、送信及び受信フェーズ間の適時の切り換えを制御する。送信フェーズの間において、該圧電素子は繰り返し励起されて、胎児心臓に向かって進行する超音波パケットを発生する。これらの進行波パケットは、例えば胎児心臓におけるような妊婦の身体内の運動する層上で反射されると共にドップラ効果により周波数シフトされる。当該反射位置まで進行し且つ当該トランスジューサまで戻る間に、当該波パケットは筋肉組織、脂肪層又は羊水等の異なる有機構造を通過しなければならない。これらの構造は、異なる寸法及び異なる減衰比を有する。例えば、脂肪は水より3〜4倍大きな吸収率を有する。脂肪の大きな層が超音波トランスジューサの性能に大きく影響することは明らかである。モニタの扱い及び接続されたトランスジューサの容易さを助けるために、製造者は調整のための制御エレメントは避ける。トランスジューサは、通常の体重を有する患者に対して最適な性能を有するように設計される。極めて体重の重い又は極めて体重の不足した患者の数の増加により、“全サイズ共通”原理に従うトランスジューサは、“通常の”範囲に当てはまらない婦人に適用された場合、弱い又は悪い性能を示す。通常の条件下で使用するように設計されたトランスジューサが期待外れの性能を示す他の側面は、推奨される限界外での使用である。パルス超音波ドップラによる胎児心拍数検査のための推奨される開始時点は、妊娠の約25週目である。幾つかの国は、益々、CTG検査を妊娠の20週目又はそれより早期に開始するようになっている。この条件下での胎児心臓の深度位置及び寸法は、妊娠の30週目と比較して大きく相違する。妊娠の早期の週における胎児心臓の十分な位置合わせのためには、通常、3〜8cmの感度深度範囲を持つ狭い超音波ビームが望ましい。妊娠の早期の週が太り過ぎと組み合わさった場合、深度範囲及び超音波ビームエネルギは増加されねばならない。極端な範囲の使用をカバーすべく個々の調整を可能にするために、超音波ビームエネルギ、ビーム形状、感度範囲等をユーザに対して調整可能にすることができる。経験があり良く訓練された操作者は、利用可能な調整を意味のある形で使用することができるが、標準的操作者は混乱し得る。前述したように、調整可能な構成を追加することは、研究を行う人にとっては望ましいであろうが、標準的ユーザにとってはそうではない。CTGは、全ての条件下で最小限のレベルのユーザ相互作用及び動作モードに関する最小限のレベルの知識で以って高い信頼度で動作しなければならない。このような理由で、付加的な制御及び調整要素を単に追加することは、動作範囲を拡張するやり方ではない。多くの場合において電子的に記憶された記録の形で又はバーコード若しくは他の媒体として利用可能な周囲の情報に基づいて、当該装置は最適な性能を達成すべく当該自身の構成を現活動のために変更することができる。今日、CTGモニタは患者データが要求される開始メニュを提供するようになっている。所謂加入/解放(ADT:加入、解放、移転)メニュは患者の人口統計学的属性を要求する。患者の人口統計学的属性の内容は、定義による。通常、患者の名前、妊娠の週等が患者の加入に際して要求される。この情報は、モニタ画面上に部分的に表示されると共に、紙片上に印刷される。記録保管及び調査システムに接続されたモニタにより、加入のために必要とされるデータはデータベースから取り出され、該患者が特定のベッドに割り当てられているなら当該モニタに自動的にロードされる。ADTデータセットの程度は、自由な定義による。本発明の前後関係において、該データセットは、好ましくは、少なくとも妊娠の週、BMI又は代わりに身長及び体重、例えば米国又は日本等の国名、双子、三つ子等に関する情報(この情報は、複数の接続されたトランスジューサから導出することもできる)を含むものとする。
【0128】
この情報を読むことにより、モニタは当該データ(例えば、BMI)を2以上のグループに分類することができる。これらの分類に基づいて、該モニタは最良のCTG位置合わせ結果を達成するためにデータ取得、信号増幅、フィルタ処理及び信号処理チェーンの種々のパラメータを個別に構成することができる。例えば、高いBMI(=肥満分類)及び妊娠の早期の週(<25週目=未熟分類)の患者の場合、モニタは超音波ビーム形状を狭く調整し、ビーム強度を強く調整し、期待される深度範囲を中/遠に調整する。これら全ては、ユーザの相互作用(対話)無しに自動的に実行される。ここでも、超音波トランスジューサに関する可能性のある変更は、例示的なものである。例えばToco、母体脈拍等の全ての他のパラメータに対しても、データ収集及び信号処理経路における同様の適応的変更が可能である。ADTデータの利用可能性により、患者認識的トランスジューサ制御は、信号収集及び全てのパラメータの処理が最適化される、操作者の相互作用が全く又は殆ど必要とされない、エネルギ場(超音波)への露出が低減される、使用の複雑さが増加しない、ソフトウェアのアップグレードにより設置されたトランスジューサの基盤に対して少なくとも部分的に遡及的に適用可能であるという利点を有する。
【0129】
本前後関係において、トランスジューサ75が接続された胎児モニタ74は、データベース73を持つ集中調査及び記録保管システム72に接続されている。患者は、これも調査システム72に接続されたローカル端末又はPC71を備えた特定のモニタ又はベッドに導かれる。上記PC又は端末上で動作するアプリケーションは、加入手続きの一部として、患者データのためのマスク70を提示する。患者を加入させる場合、該マスクは完全に記入されねばならない。関連するデータは、トランスジューサ75及び信号処理制御(74又は75内)に関する情報を含み、データベース73に記憶される。当該データセットは、当該患者が割り当てられたモニタ74に設定される。モニタ74は、上記データを、例えば信号処理又は該信号処理の一部がモニタ74内で実行される場合に使用することができる。信号処理が有線又は無線であり得る活性トランスジューサ75内で実行される場合、モニタ74は関連する情報が接続された各トランスジューサに確実に分配されるようにする。当該加入/割当手続きは、データ収集及び信号処理手順が当該ADTデータにより定義される設定に自動的に適応化されることを保証する。
【0130】
図17は、本開示の他の要素を概略的に示す。
【0131】
この要素の前後関係においては、データ交換のために近接場通信経路が設けられる。該近接場通信装置は、モニタ74’の一部又はモニタ74’に配線により接続された別体の装置の何れかとすることができる。関連するADTデータは、可能性のある他の情報と一緒に、個別にプログラムされたIDタグ又はカード76に記憶される。加入処理は、上記タグをNFC装置74’の近傍に持って行くことにより開始される。後続するステップにおいて、該カード76に記憶されたADTデータは読み出され、モニタシステム74’,75の関連する部分に設定される。
【0132】
加えて(又は、代わりとして)、ADTデータを含むバーコードタグを、取り付けられたバーコードリーダ77により読み取ることもできる。
【0133】
図18は、本開示の更に他の要素を概略的に示す。
【0134】
この要素は、多くのモニタ74”において、患者加入の間において書式シート78に記入することによりADTデータの直接入力のための既に利用できる可能性を用いる。データは、タッチスクリーン、キーボード又はマウスにより手作業で入力され、次いで前述したようにモニタ74”又はトランスジューサ75の関連する部分に設定される。
【0135】
図19は、本発明の他の実施態様による処理装置100を概略的に示す。
【0136】
処理装置100は、基準復調ユニット101、位相シフト復調ユニット102、比較ユニット103及び処理ユニット104を有している。
【0137】
基準復調ユニット101、位相シフト復調ユニット102及び比較ユニット103は、2チャンネルを提供するために二重に設けられている。
【0138】
基準復調ユニット101には各チャンネルから超音波ドップラエコー信号が供給され、各基準復調ユニットは受信されるエコー信号を、当該エコー信号を発生させるために使用された超音波信号の搬送波周波数を復調周波数として用いて復調すると共に、各基準復調信号を比較ユニット103及び処理ユニット104に出力する。同様に、位相シフト復調ユニット102は、各超音波ドップラエコー信号を受信すると共に、該エコー信号を上記基準復調ユニットと比較して90度シフトされた復調周波数を用いて復調し、且つ、該位相シフト復調信号を対応する比較ユニット103に出力する。
【0139】
各比較ユニット103は、上述したように、前記チャンネルの一方に関する基準復調信号及び位相シフト復調信号を受け、これら基準復調信号及び位相シフト復調信号の対応する各信号点間の時間的関係に関する情報を得る。この場合、本実施態様における斯かる各信号点は、上記基準復調信号及び位相シフト復調信号の零交差(
図4)である。前述したように、本コンテキストにおいて考察される信号点は当該信号の零交差であるが、代わりに又は加えて、例えば最大の正及び/又は負の振幅等の他の点を考えることもできる。
【0140】
第1及び第2チャンネルに関する各零交差の間の時間的関係に関する情報並びに第1及び第2チャンネルに関する基準復調信号は、処理ユニット104に供給される。
【0141】
処理ユニット104は、2つの処理部105,105’、入力部107、選択部108及び設定ユニット109を含む。一方が第1チャンネルのために設けられ、他方が第2チャンネルのために設けられた処理部105,105’は、各々、胎児心拍数を決定する際の3つの異なるアプローチのために設けられている。
【0142】
第1のアプローチによれば、前記各信号点間の時間的関係に関する情報は、この情報が既に胎児心拍数を示す周期性を含んでいるので、胎児心拍数を得るために直接使用される。
【0143】
第2のアプローチによれば、前記時間関係に関する情報は、基準復調信号の部分を削除するために使用され、斯かる削除された復調信号から胎児心拍数が自己相関により得られるようにする。
【0144】
第3のアプローチにおいては、前記基準復調信号に対して更に自己相関がなされ(基本的に、従来の方法による)、その場合において、前記第2方法により得られた胎児心拍数が当該結果と比較され、処理部105,105’の選択部106は胎児心拍数を従来の様に決定された心拍数又は上記の削除された心拍数の何れかを選択することにより決定するよう構成される。
【0145】
処理ユニット104は、チャンネル毎に上記各方法を選択することができ、かくして、各チャンネルのための出力を供給するように構成される。入力部107は、決定されるべき胎児心拍数に関する又は決定されるべき胎児心拍数以外の心拍数(例えば、母体心拍数)に関する外部情報を受信し、選択部108に接続される。該選択部は、第1チャンネルにより決定された心拍数又は第2チャンネルにより決定された心拍数を、上記外部情報に基づいて決定されるべき心拍数として選択する。
【0146】
更に、前述したように、処理ユニット104は設定ユニット109を含み、該設定ユニットは患者関連データを受信すると共に、該受信された患者関連データに基づいて当該処理ユニットの設定を調整するように構成される。
【0147】
本実施態様において、処理装置100は2つの別のチャンネルを処理するために設けられているが、3以上のチャンネルが処理されることも可能である。更に、上述した3つの全ての方法が前記処理ユニット内で処理されることも必要ではない。該処理ユニットにおいては、上述した方法のうちの1つ若しくは2つのみ又は別の方法を使用することもできるからである。
【0148】
図19に示された復調ユニット101の出力は、積分器及びハイパス、帯域通過フィルタの組み合わせ(図示略)による処理を受けることができるが、斯かるエレメントは当該復調ユニット内に含めることもできる。
【0149】
図20は、本発明の一実施態様による胎児心拍数を決定する方法を解説した概略フローチャートを示す。
【0150】
図19に関連して前述した実施態様と同様に、
図20の説明は2つのチャンネルによる情報の併行取得に関して行うが、本発明は、これに限定されるものではなく、3以上のチャンネルを利用することもできる。
【0151】
患者関連データを受信する受信ステップ200の後、該受信された患者関連データに基づいて当該実施態様の動作に関連する設定データが調整される調整ステップ201が実施される。このステップには、チャンネル心拍数決定ステップ202が続く。チャンネル心拍数決定ステップ202は、当該超音波ドップラエコー信号の第1チャンネルから第1心拍数を決定するステップ、及び該エコー信号の第2チャンネルから第2心拍数を決定するステップを含む。第1心拍数を決定するステップは、基準復調ステップ203、位相シフト復調ステップ204、比較ステップ205及び処理ステップ206を含む。同様に、第2心拍数を決定するステップも、基準復調ステップ207、位相シフト復調ステップ208、比較ステップ209及び処理ステップ210を含む。
【0152】
ステップ207〜210は、基本的にステップ203〜206に対応するので、後者のみに関して説明を行う。
【0153】
基準復調ステップ203においては、当該超音波ドップラエコー信号が該エコー信号を発生させるために使用された超音波信号の搬送波周波数を復調周波数として用いて復調される一方、位相シフト復調ステップ204においては、対応するように該エコー信号は90度のシフトで復調される。
【0154】
比較ステップ205において、結果としての基準復調信号及び位相シフト復調信号は比較され、対応する各信号点(ここでも、基準復調信号及び位相シフト復調信号の零交差である)の間の時間的関係についての情報が得られる。この情報は、ステップ206において、胎児心拍数を決定する処理に使用される。
【0155】
入力ステップ211において、胎児心拍数に対する外部情報が受信され、この場合、該外部情報は別途、独立に取得される母体心拍数に関する情報である。選択ステップ212において、両チャンネルの使用により決定された心拍数の一方が、決定されるべき胎児心拍数として選択され、それに応じて出力される。
【0156】
図21は、本発明の更に他の実施態様による処理装置100’を、チャンネルモードで示す。
【0157】
処理装置100’は高周波増幅器110及びスプリッタ111を含む。該スプリッタは、当該信号を、処理装置100’の処理チェーンに供給される複数の副信号にする。図には2つのチェーンしか示されていないが、如何なる大きな数のチェーンも設けることができる。各チェーンは、切り換え可能な復調クロック112,112’を有する同期復調ユニット101’,102’を含む。
【0158】
処理装置100’は、更に、ゲート信号(深度選択/測定ボリューム選択のためのタイミング信号)の形のチャンネル選択情報を供給するタイミング部114を含む。各ゲート信号は、前記復調信号を各ゲート115,115’によりゲート処理するために供給される。
【0159】
各チェーンは、更に、復調部から信号を受けると共に整流及び平滑された信号をプロセッサ117,117’(自己相関及び心拍数評価のために設けられる)に供給する積分及び帯域通過フィルタユニット116,116’を含む。
【0160】
これらチェーンの出力は、入力部107’、選択部108’及び設定部109’を含む制御ユニット118に供給される。
【0161】
入力部107’は、例えば母体心拍数、他の超音波トランスジューサの深度範囲又は両者の組み合わせ等についての情報の外部ソース120に結合される。該外部情報は除外されるべき他の心拍数(例えば、独立に決定される他の双子の胎児心拍数)に関係することもできることに注意すべきである。該独立に取得される外部情報は、無視されるべき心拍数に関係するものではなく、関心の胎児心拍数に関するものであることさえ考えられる。
【0162】
設定部109’は、患者関連データを供給する外部データベース119に結合される。
【0163】
前述した実施態様と同様に、選択部108’は、当該胎児心拍数を供給するチャンネル(即ち、処理チェーン)を選択するように構成される。
【0164】
図21に示されたモードにおいて、復調に対して位相シフトはなされず、基本的に各処理チェーンは異なるチャンネルを処理する。
【0165】
図22は、
図21の処理装置100’を位相シフトモードにおいて概略的に示す。
【0166】
図21の場合とは対照的に、復調ユニット102’に関し、復調周波数は、復調クロック112の場合と比較して位相が90度シフトされた復調クロック112’により供給されている。
【0167】
更に、結果としての位相シフト復調信号はプロセッサ117に供給され、該プロセッサは前記復調ユニット101’により供給される基準復調信号及び該位相シフト復調信号を比較して、本開示の前述した他の実施態様及び要素に関して既述されたように、これら基準復調信号及び位相シフト復調信号の対応する各信号点の間の時間的関係についての情報を取得する。
【0168】
1つの超音波ドップラセンサによりカバーされる感度のボリュームを幾つかの副ボリュームに分割することが有利である。更に、本出願から明らかとなるように、標準的同期復調と併行して直交復調を使用することにより可能性のあるダブルカウントを防止することが望ましい。複数のチャンネルを備える1つの信号処理ユニットにおいて両方法を組み合わせることは、所要のチャンネル数を低減することを可能にする。何故なら、チャンネル機能が異なる状況に対して個々に適応可能となるからである。復調器、積分器、フィルタ処理ベンチ及びAD変換器を有するチャンネルの少なくとも第1部分は、今までのところ、ハードウェアで構成される。このような理由で、チャンネルの数を少なくすることはコストの利点のみに限らない。将来において全てがデジタル的に実施されるとしても、集積回路の複雑さを低く保つことは、電力消費、コスト及びチップ寸法に対して好ましい影響を有する。
【0169】
上述したように、
図21及び
図22の図示においては当該例を簡素に維持するために2つのチャンネルのみが示されているが、チャンネルの数は制限されるものではないことに注意されたい。適切なチャンネル数は、例えば、4である。
図21及び
図22に示されるように、受信された超音波信号は高周波増幅器110により増幅される。スプリッタ111は、該信号を2〜N個の副信号に分割する。各副信号は、このケースでは、同様の信号処理チェーンに供給される。このチェーンは、切り換え可能な復調クロック112,112’を有する同期復調ユニット101’,102’で始まる。上記制御可能な切り換えは、復調のために、0度位相シフトされた又は90度位相シフトされた基準クロックの何れかを選択する。復調信号は、更に、ANDゲート115,115’の使用によりゲート信号でもってゲート処理される。該ゲート信号は深さ感度又は感度ボリュームを定義する。送信期間の最後に対する開始点及び終了点は、各チャンネルに対して自由に定義可能である。このことは、ボリューム区域を分離させる又は重なり合わせることを可能にする。復調の後、当該信号は、該信号をプロセッサ117,117’における自己相関のために整えるために、積分され、帯域通過フィルタ処理され(エレメント116,116’)、整流され、平滑化される。
【0170】
複数の信号処理チェーンの終端における制御ユニット118は、当該胎児心拍数を最も測定していそうなチャンネルを選択する責務を負う。複数の心拍数から心拍数を選択する信頼性のある方法は、当該心拍数を、外部ソース120等の、例えばECGにより導出された既知のソースから到来する心拍数と比較することである。該既知のソースからの心拍数と類似する心拍数値を有するチャンネルは除外される。斯かる除外されたチャンネルは、いわば免除されたもので、測定精度には貢献しない。
【0171】
このアプローチは、制御ユニット118が或るチャンネルがアイドル状態であり有意に貢献していないと認識した場合に、精度及び信頼性を向上させるために再構成することができるような柔軟性のあるチャンネルを有することを可能にする。この場合、制御ユニット118は、例えば、当該胎児心拍数を実際に測定しているチャンネルの範囲に深度範囲を設定することができる。次いで、該制御ユニットは、速度の方向を得るために直交復調を可能にすべく、90度位相シフト信号を復調のために選択することができる。この場合、当該速度の符号は、ダブルカウントを防止するために当該信号の望ましくない部分を削除するために使用することができる。3以上のチャンネルが利用可能である場合、心拍数を測定していない又は誤った心拍数を測定している他のチャンネルは、例えば、このチャンネルが、現在直交復調を行っているチャンネルにより以前にカバーされていたボリューム区域を今度は追加としてカバーするように再プログラムすることができる。深さボリューム及び機能適応化の該処理は、当該制御ユニットにより実施される静的又は動的に制御される処理とすることができる。
【0172】
復調方法及び感度ボリュームの割当は、好ましくは、患者関連データを考慮に入れるものとする。例えば、妊娠の早期の週及び低いBMIにおいて、当該アルゴリズムは、最初は狭い感度ボリュームを選択する。最初は、活動区域を見付けるために全てのチャンネルが深度分割のために使用される。活動区域が識別されたら、制御ユニット118は例えば復調の方法を変えることによりチャンネルの機能を変更することができる。該制御ユニットは、増幅及びフィルタ処理に影響を与えると共に、相関結果から心拍数を抽出するための規則セットに因数として影響を与えることもできる。活動区域が一旦識別されたなら、制御ユニット118は1以上のチャンネルを測定チャンネルから外すことができる。併行して動作するチャンネルは、必ずしも異なる復調方法を有する必要はない。パラメータ、特に心拍数を決定するための規則セットを変更する結果、特に上側の心拍周波数範囲において一層高い心拍間精度を得ることができる。
【0173】
医療関係者は、心拍波形印刷の特定の形に馴れているので、一層高い微細な変動を伴う波形を示すことは混乱及び拒絶を生じ得る。併行して動作するチャンネルは、通常の提示方法とは異なるデータを提供することができる。このデータは、例えば当該超音波トランスジューサが母体信号ではなく胎児信号を拾っていることの信頼レベルを向上させるために、バックグラウンドでの計算のために使用することができる。
【0174】
全てのチャンネルが必ずしも切り換え可能な復調ソースを有する必要はないことに注意すべきである。1つのチャンネルで十分で有り得るが、QAMによる分割チャンネルが測定及び音声出力チャンネルである場合、測定チャンネルが別のチャンネルに移動された場合にクラッキングノイズが聞こえ得る。
【0175】
本発明は、とりわけ、望ましくない信号寄与分を削除することにより心拍数のダブルカウントの除去を行い、その場合において、特に心拍数選択を、少ない情報の信号に基づいて計算された第2の心拍数と比較することにより及び/又は超音波ドップラエコー信号のフェーズ情報を示す符号の(二進)ストリームの自己相関を行うことにより更に改善することができる。
【0176】
本発明の他の側面は、第2の独立したソースから抽出される心拍数との比較による深度分割超音波ドップラ信号から導出される複数の心拍数からの心拍数の除外、及び/又は複数の超音波ドップラセンサにより複数の心拍数信号を測定する場合の相互心拍数除外を提供する。
【0177】
本発明の更に他の側面は、患者関連データにより制御される適応的信号処理及びデータ収集法を提供し、例えば超音波トランスジューサの場合の最適化されたエネルギ放出、電池給電装置の場合の最適化された動作時間並びに分散された信号処理及びデータ収集ユニットへの患者関連データの伝送及び分配を可能にする。
【0178】
本開示は、特に、複数の深度区分を有する超音波ドップラシステムを提供し、各深度区分に対して心拍数は個別に且つ独立に計算される一方、他の個別の又は独立したソースからの心拍数に等しい区分又は心拍数値を除外するための判断ユニットが設けられる。上記個別の又は独立したソースは、それでも、当該超音波トランスジューサ(の1つ)と同じハウジングに組み込むことができ、例えばIRセンサ、加速度計等とすることができる。また、上記個別の又は独立したソースは、空間的に分離された第2のユニット(例えば、ECG又は血圧測定ユニット)に配置することもできる。好ましくは、前記複数の超音波ドップラトランスジューサは、ケーブル又は無線接続を介して心拍数値及び/又は深度区分を互いの間で交換するものとする。
【0179】
また、IQ復調のために代わりに90度位相シフトされた復調信号が供給される少なくとも1つの深度区分を伴う複数の深度区分を有する超音波ドップラシステムも提供される。位相シフト復調チャンネルは、胎児心拍数を測定する心拍数計算チャンネルのために永久的に取っておくことができる。更に、有効な心拍数を有さないと分類された如何なるチャンネルも、胎児心拍数を測定するチャンネルとは別にしておくことができる。
【0180】
本開示によれば、例えば双子又は三つ子等の複数の心拍数を測定する複数の超音波ドップラトランスジューサを備えるシステムは、或るトランスジューサにより測定される心臓活動が他のトランスジューサによっては測定されないように自己組織化することができる。これは、心拍数及び深度区分値をブロードキャストメッセージ又はトランスジューサ間データ交換により交換することにより実施することができる。
【0181】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、このような図示及び説明は解説的又は例示的なものであって限定するものではないと見なされるべきである。即ち、本発明は開示された実施態様に限定されるものではない。
【0182】
開示された実施態様に対する他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載された本発明を実施するに際して図面、本開示及び添付請求項の精査から理解し、実施することができるものである。
【0183】
尚、請求項において、“有する”なる文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。
【0184】
単一のプロセッサ、装置又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を満たすことができる。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。
【0185】
復調する、比較する、(情報を)処理する、(信号を)削除する又はマスキングする、自己相関を実行する、選択する、設定を調整及び供給する、受信する及び送信する等の動作は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用のハードウェアとして実施化することができる。
【0186】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと一緒に若しくは他のハードウェアの一部として供給される固体媒体等の適切な媒体により記憶及び/又は分配することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してのように他の形態で分配することもできる。
【0187】
請求項における如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。