特許第6574525号(P6574525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574525
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】凍結生イースト成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/18 20060101AFI20190902BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20190902BHJP
   A21D 8/02 20060101ALI20190902BHJP
   A21D 8/06 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C12N1/18
   C12N1/16 G
   C12N1/16 H
   A21D8/02
   A21D8/06
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-535775(P2018-535775)
(86)(22)【出願日】2017年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2017030471
(87)【国際公開番号】WO2018038244
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-166205(P2016-166205)
(32)【優先日】2016年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 大
(72)【発明者】
【氏名】出海 卓也
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−084579(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161303(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/128186(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結生イースト成形体であって、
前記成形体は、食用油脂又は乳化剤が添加されておらず且つ密度が0.90〜1.20g/cmの生イーストが凍結されたものであり、
前記成形体は、最大幅が2〜20cmの略球形の形状を有し、
前記凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である、凍結生イースト成形体。
【請求項2】
前記凍結生イースト成形体同士が接触しうる最大の接触面積が、該成形体1個の全表面積に対し10%以下である、請求項1に記載の凍結生イースト成形体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の凍結生イースト成形体が複数個充填されたパッケージ。
【請求項4】
成形体重量の変動係数が0.050以下である、請求項3に記載のパッケージ。
【請求項5】
食用油脂又は乳化剤が添加されておらず且つ密度が0.90〜1.20g/cmの生イーストを、最大幅が2〜20cmの略球形となるように成形し、得られた成形体を冷凍して凍結生イースト成形体を得る工程を含み、前記凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である、凍結生イースト成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の凍結生イースト成形体と他のパン生地原材料とを混捏してパン生地を製造する工程を含む、パン生地の製造方法。
【請求項7】
前記凍結生イースト成形体を、解凍せず凍結状態のまま、又は、解凍して、前記パン生地原材料に配合して混捏する、請求項6に記載のパン生地の製造方法。
【請求項8】
食用油脂又は乳化剤が添加されておらず且つ密度が0.90〜1.20g/cmの生イーストを、最大幅が2〜20cmの略球形となるように成形し、得られた成形体を冷凍して、凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である凍結生イースト成形体を得る工程、
前記凍結生イースト成形体と他のパン生地原材料とを混捏してパン生地を製造する工程、及び、
前記パン生地を加熱調理してパンを得る工程を含む、パンの製造方法。
【請求項9】
前記パン生地を製造する工程において、前記凍結生イースト成形体を、解凍せず凍結状態のまま、又は、解凍して、前記パン生地原材料に配合して混捏する、請求項8に記載のパンの製造方法。
【請求項10】
食用油脂又は乳化剤が添加されておらず且つ密度が0.90〜1.20g/cmの生イーストを、最大幅が2〜20cmの略球形となるように成形し、得られた成形体を冷凍する工程を含み、得られた凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である、凍結生イースト成形体の固結防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生イーストを凍結してなる凍結生イースト成形体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製パン業界では人材の流動化および国際化のために不慣れな作業者が多くなり、また、コスト競争が激化しているため、製パン工程の簡便化および効率化が求められている。
【0003】
製パン用イーストの流通形態は、生イースト、ドライイースト、セミドライイーストに大別される。生イーストは、圧搾イーストともいわれ、ブロック状または粉状の形状で販売されている。このような生イーストは、ドライイーストまたはセミドライイーストと比べて砂糖を分解する力が強く、風味が良好で発酵力が高い等の特長が支持され、市場で最も多く流通している。
【0004】
しかしながら、生イーストは乾燥や温度変化に弱く、冷蔵で保存する必要がある。冷蔵で保存しないとすぐに腐ってしまい、また、冷蔵で保存しても保存期間は一般に2週間から長くて1カ月とされている。
【0005】
加えて、生イーストは脆く、製造、流通、保存、及び計量時に崩壊しやすいために、パン生地に配合する前の計量作業が煩雑となり、また、計量に付随して衛生問題や清掃作業が発生するという問題があり、製パン工程の簡便化および効率化の障害となっていた。
【0006】
一方、生イーストの保存期間を延長するために、生イーストを冷凍で保存することが考えられる。しかし、非特許文献1では、生イーストを冷凍で保存すると、酵母の一部が死滅して発酵力が弱くなるので、生イーストは冷凍しない方が賢明であると記載されている。
【0007】
特許文献1では、粒状の冷凍イーストが記載されているが、これは、乾燥物質含量が70〜85%のドライイーストまたはセミドライイーストを冷凍したものにすぎず、上述のように砂糖を分解する力が十分ではなく、発酵力が低いという問題があった。
【0008】
特許文献2では、生イーストを凍結して生イーストの長期保存を実現したペレット状の凍結生イーストが記載されている。当該文献では、圧搾生イーストを食用油脂または乳化剤と練合してあるか、あるいは、ペレット表面に食用油脂または乳化剤が塗抹してあるペレット状凍結生イーストであって、ペレットの大きさが、格子幅0.9mmの篩を通るものが40%以下、25mmの篩を通るものが80%以上であるペレット状凍結生イーストが記載されており、当該ペレット状凍結生イーストは、イーストを使用する際の計量性、作業性、小麦粉生地中での分散性に優れ、通常の生イーストと同様に使用できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−282578号公報
【特許文献2】特開平9−84579号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Biochemistry, 1997年, 54巻, 234-240頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献2に記載のペレット状凍結生イーストでは、これを製造するために、食用油脂や乳化剤といった原料を余分に添加する必要があった。また、当該ペレット状凍結生イーストは、具体的に開示されているペレットの粒径が3mmと小さく(実施例)、各ペレットの個数を数えてイーストを計量することが難しいという問題があった。
【0012】
また、食用油脂や乳化剤を使用せずに生イーストを凍結してなる従来の成形体は、特に未凍結の成形体同士を密着させた状態で冷凍して凍結させた場合に、凍結した成形体同士が互いに強固に固結して、容易に分割できないという問題があり、成形体の個数を数えてのイーストの計量が困難であった。
【0013】
本発明の目的は、食用油脂や乳化剤を添加せずに生イーストが凍結されており、長期保存後も生イーストの発酵力を維持し、また、凍結成形体同士が互いに強固に固結することなく、たとえ固結しても容易に分割でき、凍結成形体の個数を数えることでイーストの計量が可能な凍結生イースト成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生イーストからなり、最大幅が特定範囲にある略球形の形状を有し、イースト含量、及び水分含量が特定範囲にある凍結生イースト成形体は、食用油脂や乳化剤が添加されておらず、長期保存性に優れ、凍結成形体同士が互いに強固に固結することなく、たとえ固結しても容易に分割でき、成形体の個数を数えることでイーストの計量が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の第一は、凍結生イースト成形体であって、前記成形体は、生イーストが凍結されたものであり、前記成形体は、最大幅が2〜20cmの略球形の形状を有し、前記凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である、凍結生イースト成形体に関する。好ましくは、前記凍結生イースト成形体同士が接触しうる最大の接触面積が、該成形体1個の全表面積に対し20%以下である。好ましくは、前記凍結生イースト成形体は、密度が0.90〜1.20g/cmの生イーストが凍結されたものである。
【0016】
本発明の第二は、前記凍結生イースト成形体が複数個充填されたパッケージに関する。好ましくは、成形体重量の変動係数が0.050以下である。
【0017】
本発明の第三は、生イーストを、最大幅が2〜20cmの略球形となるように成形し、得られた成形体を冷凍して凍結生イースト成形体を得る工程を含み、前記凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である、凍結生イースト成形体の製造方法に関する。
【0018】
本発明の第四は、前記凍結生イースト成形体と他のパン生地原材料とを混捏してパン生地を製造する工程を含む、パン生地の製造方法に関する。好ましくは、前記凍結生イースト成形体を、解凍せず凍結状態のまま、又は、解凍して、前記パン生地原材料に配合して混捏する。
【0019】
本発明の第五は、前記製造方法により得られたパン生地を加熱調理してパンを得る工程を含む、パンの製造方法に関する。
【0020】
本発明の第六は、生イーストを、最大幅が2〜20cmの略球形となるように成形し、得られた成形体を冷凍する工程を含み、得られた凍結生イースト成形体の全重量に対して、イースト含量が乾燥重量として25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である、凍結生イースト成形体の固結防止方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従えば、食用油脂や乳化剤を添加せずに生イーストが凍結されており、長期保存後も生イーストの発酵力を維持している。また、未凍結の成形体同士を密着させた状態で冷凍して製造した場合であっても、凍結成形体同士が互いに強固に固結することなく、たとえ固結しても容易に分割することができる。さらに、凍結成形体の個数を数えることでイーストを計量することが可能となり、イーストの計量作業を簡便化及び効率化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0023】
本発明の凍結生イースト成形体(以下、凍結成形体ともいう)は、生イーストが凍結されており、所定の形状に成形されたものである。当該凍結成形体は、食用油脂や乳化剤が添加されていないものであり、実質的に、生イーストのみからなる無添加のものが好ましい。
【0024】
本発明の凍結生イースト成形体は、凍結されているので、未凍結で単なる冷蔵保管の生イーストと比較して長期間保存することが可能になる。しかも、長期間保存後であっても、未凍結の生イーストの発酵力が維持されている。また、本発明の凍結生イースト成形体は、凍結されているので、未凍結の成形体と比較して、製造、流通、保存及び計量時に外部から衝撃を受けても成形体の形状が崩れにくく、複数の成形体の重量が均一に揃っており、成形体の個数を数えることがイーストの計量に直結する利点がある。
【0025】
本発明において、生イーストは圧搾イーストとも呼ばれるもので、水分含量が高いイーストである。この点で、乾燥工程に付されて水分含量が低いドライイースト(水分含量5〜10重量%)や、セミドライイースト(水分含量15〜30重量%)とは異なる。本発明における生イーストは、前記凍結生イースト成形体の全重量に対して、乾燥重量でイースト含量が25〜40重量%であり、水分含量が60〜75重量%である。水分含量が60重量%より少ないと、イーストが所定の形状を保持しにくく所定の形状への成形が難しくなる場合がある。逆に水分含量が75重量%より多いと、イーストにべたつきが生じ、各成形体同士が固結しやすくなる恐れがあり、また、長期保存後の生イーストの発酵力が低下し、成形体が崩壊しやすくなる傾向がある。好ましくはイースト含量が30〜35重量%、水分含量が65〜70重量%である。
【0026】
本発明で使用するイーストの菌株は、冷凍保存によって発酵力が大幅に落ちない菌株である限り特に限定されないが、例えば、以下のサッカロマイセス・セレビシエが挙げられる。CFB27−1(寄託番号FERM BP−15903、特許第4357007号に記載、後述する表1に掲載した実施例等で使用)、KCY1160(寄託番号FERM P−16962、特許第4475144号に記載)、KCY1170(寄託番号FERM P−20408、特許第4475144号に記載)、KSY290(寄託番号FERM P−18863、特許第4411864号、特許第4513383号に記載)、KSY68−9290(寄託番号FERM P−20204、特許第4839809号に記載)、KSY85−596(寄託番号FERM P−20295、特許第4839809号に記載)、KKK47(寄託番号FERM BP−7267、特許第4565789号に記載)、KGLY59(寄託番号FERM BP−20635、特許第4839860号に記載、後述する表8に掲載した実施例等で使用)、KCY1254(寄託番号NITE BP−1396、特許第5677624号に記載、後述する表9に掲載した実施例等で使用)、KCY1240(寄託番号NITE BP−1269、特許第5677624号に記載)、KCY1249(寄託番号NITE BP−1270、特許第5677624号に記載)、KCY1251(寄託番号NITE BP−1272、特許第5677624号に記載)、KCY1217(寄託番号NITE BP−1058、特許第5907161号に記載、後述する表10に掲載した実施例等で使用)、KCY1222(寄託番号NITE BP−1059、特許第5907161号に記載、後述する表11に掲載した実施例等で使用)、KSY735(寄託番号NITE P−731、特許第5926494号に記載)、KSY736(寄託番号NITE P−1071、特許第5926494号に記載)、KSY737(寄託番号NITE P−1072、特許第5926494号に記載)。
【0027】
本発明の凍結生イースト成形体が有する所定の形状とは、略球形である。略球形とは、丸みを帯びた形状を意味し、具体的には、球形、楕円体形、円柱形、俵形(円柱の角を丸めた形状)等が挙げられる。これらのうち、本発明の効果の観点から、平面を含まない形状が好ましく、球形、楕円体形がより好ましい。
【0028】
成形体の形状が略球状であると、凍結成形体の表面積、すなわち接触面積が減少するため、凍結成形体同士が固結しにくく、また、固結しても強固な固結塊を形成しにくくなる。そのため、たとえ成形体同士が固結して固結塊が形成されても、5kg/cm程度の、一般成人の標準的な握力で容易に固結塊を分割できるので、成形体の個数の計数によるイーストの計量を容易に実施することができる。一方、凍結成形体を直方体形や立方体状形の角張った形状に成形すると、凍結成形体同士の接触面積が大きくなり、凍結成形体同士が固結しやすく、また、簡単には分割できない強固な固結塊を形成しやすくなる。そのため、成形体の個数の計数によるイーストの計量が容易ではない場合がある。
【0029】
以上の観点から、凍結生イースト成形体1個の全表面積に対して、当該成形体同士が接触しうる最大の接触面積が占める割合(以下、最大接触面積割合という)は、小さいほうが好ましい。最大接触面積割合が大きすぎると、成形体同士が強固に固結する恐れがあるため、固結塊を分割しにくくなり、成形体の個数の計数によるイーストの計量が容易でなくなる恐れがある。具体的には、最大接触面積割合は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは16%以下、さらに好ましくは10%以下である。なお、最大接触面積割合は、凍結成形体の形状に基づいて算出する計算値である。例えば、球状又は楕円体状の成形体の場合、最大接触面積割合は0%であり、円柱状の成形体の場合、その円柱の全表面積に対して両底面の表面積が占める割合である。
【0030】
本発明の凍結生イースト成形体は、略球形における最大幅が2cm以上20cm以下である。最大幅が2cmより小さくなると、成形体が小さすぎて成形体の個数を数えてイーストの計量をすることが困難になる。また、凍結成形体の表面がべたつきやすく、計量時に取り扱いにくくなるとともに、凍結成形体が固結しやすくなり、また、固結塊も分割しにくくなるため、この点からも成形体の個数の計数によるイーストの計量が困難になる。また、最大幅が20cmより大きくなると、凍結成形体を手で持ちにくくなり、固結塊の分割が容易でなくなるので、成形体の個数を数えてイーストの計量をすることが困難になる。最大幅は、好ましくは3cm以上15cm以下であり、より好ましくは4cm以上10cm以下である。なお、最大幅とは、略球形における最大の径又は辺を意味する。球形の場合、最大幅は直径を指し、楕円体形の場合、3つの径のうち最大の径を指し、円柱形の場合、高さ及び底面の直径のうち大きいほうを指す。
【0031】
また、本発明の凍結生イースト成形体の形状が球形以外の、楕円体形や円柱形の場合、その最小幅は特に限定されない。しかし、最小幅が小さくなりすぎると、凍結成形体の表面がべたつきやすく、凍結成形体同士が固結しやすくなる恐れがあり、また、成形体の形状が崩れやすくなる恐れがあるので、最小幅は0.5cm以上であることが好ましく、1cm以上であることがより好ましく、2cm以上であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の凍結生イースト成形体1個の重量は特に限定されない。しかし、成形体1個の重量が小さすぎると、成形体同士が固結して大きな固結塊を形成しやすくなるので、成形体の個数を数えてイーストの計量をすることが困難になる。また、凍結成形体の表面が融け易くなるため成形体表面がべたつくことで、計数時の取り扱いが難しくなり、成形体の重量の変動係数が大きくなる恐れがある。一方、成形体1個の重量が大きすぎると、凍結するまでに時間を要し、また、製造及び流通時に成形体の形状が崩れやすく、その結果、成形体の重量の変動係数が大きくなる恐れがある。以上の観点から、凍結成形体1個あたりの重量は1〜1000gであることが好ましく、より好ましくは3〜500g、さらに好ましくは10〜300gである。
【0033】
本発明の凍結生イースト成形体の密度は特に限定されない。しかし、凍結直前の生イーストの密度が小さすぎると、外部から衝撃を受けた際に成形体の形状が崩れやすく、結果、成形体の重量の変動係数が大きくなる恐れがある。逆に凍結直前の生イーストの密度が大きすぎると、成形が困難になる。以上の観点から、生イーストの密度を0.90〜1.20g/cmに調節した後、凍結することが好ましく、1.00〜1.10g/cmがより好ましい。
【0034】
本発明の凍結生イースト成形体を製造する方法は特に限定されない。生イーストを、所定の形状に圧縮成形又は切削成形した後に冷凍を行なうことで製造しても良いし、ブロック状などの塊状の生イーストを冷凍した後に所望の形状に切削成形することで製造しても良い。しかし、成形の容易さ、及び成形体の崩壊しにくさの観点から、前者の製造方法が好ましい。
【0035】
成形の具体的な方法としては特に限定されないが、例えば、生イーストを所定の形状を有する型に入れて、圧力をかける方法や、押出成形により成形を行なう方法が挙げられる。また、この成形時の圧力により成形体の密度を調整することができる。また、成形体の密度を調整するには成形時に適用する圧力を調整すればよい。その具体的な方法は特に限定されないが、例えば、3D体積レーザー計Selnac−WinVM210(ASTEX社製)を用いて成形体の密度を測定しながら成形を行なうことで、測定された成形体密度に応じて、成形中に加える圧力を調整すればよい。
【0036】
冷凍は、急速冷凍、緩慢冷凍のいずれであってもよく、冷凍する際の冷却速度は特に限定されない。
【0037】
本発明の凍結生イースト成形体は、1つの容器に複数個の凍結成形体が充填されてなるパッケージとすることができる。このパッケージは、複数個の凍結成形体を1つの容器に投入することで形成しても良いし、未凍結の生イースト成形体を複数個1つの容器に投入した後、凍結することで形成することもできる。1つの容器に充填されている凍結成形体の個数は特に限定されないが、例えば、2〜1000個程度が好ましく、5〜500個がより好ましく、10〜100個がさらに好ましい。
【0038】
容器としては、凍結成形体を内部に収納でき、冷凍下で保持できるものであれば特に限定されず、箱、袋、瓶、カップなどを使用できる。また、包装紙で構成した容器であってもよい。容器の素材は特に限定されないが、凍結成形体が容器の内壁に付着しにくいため、少なくとも内面に樹脂層が形成されている容器が好ましい。容器の開口部は密封できることが好ましい。
【0039】
このようなパッケージに複数の凍結体を充填すると、通常、凍結体同士が接触して固結する恐れがあるが、本発明の凍結成形体によると、接触しても凍結成形体同士が互いに強固に固結することなく、たとえ固結しても容易に分割できるので、パッケージから凍結成形体を取り出して凍結成形体の個数を数えることでイーストの計量が可能になる。
【0040】
さらに、凍結成形体を複数個含むパッケージでは、成形体の重量におけるバラツキが小さいほうが好ましい。成形体の重量のバラツキが小さいほど、成形体の個数を数えることによるイーストの計量がより正確に実現される。具体的には、成形体重量の変動係数が0.050以下であることが好ましい。より好ましくは0.014以下、さらに好ましくは0.010以下、よりさらに好ましくは0.003以下である。
【0041】
成形体重量の変動係数とは、成形体の重量におけるバラツキを示す指標であり、変動係数の値が小さいほど成形体の重量におけるバラツキが少ないことを意味する。当該変動係数は、例えば、無作為に選んだ40個の成形体それぞれの重量を測定し、その測定結果に基づき成形体1個の重量の平均値と標準偏差を算出し、得られた標準偏差を平均値で除することで算出される。1つのパッケージに含まれる凍結成形体の個数が40個未満の場合は、複数のパッケージから40個の凍結成形体を無作為に集めて、その40個の凍結成形体について変動係数を算出すればよい。成形体1個の重量を測定するにあたっては、パッケージ内で固結塊が形成されている場合、その固結塊を個々の成形体に分割してから行なう。本発明の凍結成形体によると、固結していても容易に分割できるので、固結塊を分割してから測定した重量の変動係数であっても、上記のように低い数値とすることができる。
【0042】
本発明の凍結生イースト成形体を用いたパン生地製造では、常法におけるイースト使用量と同量の凍結生イースト成形体を、他のパン生地原材料に混合して混捏し、必要に応じて一次発酵を行い、生地を分割、成型してパン生地を得る。当該パン生地は、成型後にホイロ(最終発酵)を行なったものであっても良いし、ホイロを行なう前のものであっても良い。また、当該パン生地は冷凍されたものであってもよい。他のパン生地原材料には、小麦粉等の穀粉の他、必要に応じて、糖類、乳製品、卵、食塩、酸化防止剤、油脂、水等が適宜含まれる。
【0043】
本発明の凍結生イースト成形体を他のパン生地原材料に混合する際には、凍結成形体を解凍してから他のパン生地原材料に配合しても良いが、凍結成形体を解凍することなく凍結状態のまま配合しても良い。本発明の凍結生イースト成形体は、凍結されていても適度に崩壊しやすく、混合時の撹拌により崩壊してパン生地中に分散することができる。
【0044】
上記パン生地は、必要に応じて解凍及び/又はホイロを行なった後、常法により加熱調理することでパンを製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
乾燥物重量32%のカネカ製圧搾生イーストを、表1に示した形状及び寸法の鋳型に詰め、ハンドプレス機を用いて圧縮成形し、表1に示した形状、寸法、密度、および重量(成形体1個あたりの重量)の生イースト成形体を得た。該成形体中のイーストの乾燥物重量は32.1%であった。この実施例では、イーストの菌株としてCFB27−1(寄託番号FERM BP−15903、特許第4357007号に記載)を使用した。
【0047】
続いて、該生イースト成形体40個をポリエチレン袋に詰めて、この袋詰めの状態で、−20℃の空冷式冷凍庫で2ヶ月間冷凍して、凍結生イースト成形体が40個入ったパッケージを得た。なお、前記袋詰めの際、パッケージ中のイースト成形体同士は互いに密着するように袋詰めを行なった。
【0048】
(実施例2〜6)
実施例1と同様に表1に従って、生イースト成形体、および凍結生イースト成形体のパッケージを得た。
【0049】
(比較例1〜3)
実施例1と同様に表1に従って、生イースト成形体を得て袋詰めを行なったが、その後の冷凍作業を行なわなかった。
【0050】
(比較例4)
バルク状(無定形の粉末状)に成形した乾燥物重量32%のカネカ製圧搾生イースト500gをポリエチレン袋に詰めて、この袋詰めの状態で、−20℃の空冷式冷凍庫で1週間冷凍し、バルク状凍結生イーストのパッケージを得た。この時、各バルク片の重量の範囲は0.0001〜5.0gであった。
【0051】
(比較例5)
乾燥物重量32%のカネカ製バルク状圧搾生イースト500gを、球形造粒機で成形し、直径が3.0mmの球状の生イースト成形体を得た。
【0052】
続いて、該生イースト成形体全量をポリエチレン袋に詰めて、この袋詰めの状態で、−20℃の空冷式冷凍庫で1週間冷凍し、凍結生イースト成形体のパッケージを得た。
【0053】
(比較例6〜7)
実施例1と同様に表1に従って、直方体形状の生イースト成形体、および凍結生イースト成形体のパッケージを得た。
【0054】
(参考例1)
特許文献2の実施例11に沿って、食用油脂および乳化剤を練り合わせた微小な凍結生イーストのパッケージを得た。具体的には、以下のとおりである。
【0055】
乾燥物重量32%のカネカ製バルク状圧搾生イースト500gを、表1の配合に従い乳化剤(ソルビタンモノステアレート)及び食用油脂(ナタネ硬化油)と練合した後、球形造粒機で成形し、直径が3.0mmの球状の生イースト成形体を得た。続いて当該生イースト成形体全量をポリエチレン袋に詰めて、この袋詰めの状態で、−20℃の空冷式冷凍庫で1週間冷凍し、凍結生イーストのパッケージを得た。
【0056】
(試験例1)
実施例、比較例及び参考例で得られた成形体またはそのパッケージについて、以下の方法に従って各評価を行なった。
【0057】
(1)長期保存性
実施例1〜6、比較例4〜7、および参考例1に関しては、4℃で1日間冷蔵保管した後の未凍結の生イースト成形体、及び、−20℃で2ヶ月間冷凍保管した後の凍結生イースト成形体について、イースト工業会が定めるパン用酵母試験法の高糖生地炭酸ガス測定法に準じ、30℃2時間の炭酸ガス発生量を測定した。未凍結の1日間冷蔵保管品の炭酸ガス発生量に対する2ヶ月間冷凍保管品の炭酸ガス発生量の割合を算出することで、長期保存性を評価した。なお、凍結生イースト成形体は、解凍せず凍結状態のまま上記試験に供した。
【0058】
一方、比較例1〜3に関しては、生イースト成形体を4℃で1日間及び2ヶ月間冷蔵保管した後、同様に炭酸ガス発生量を測定し、1日間冷蔵保管品の炭酸ガス発生量に対する2ヶ月間冷蔵保管品の炭酸ガス発生量の割合を算出することで、長期保存性を評価した。
【0059】
(評価基準)1:炭酸ガス発生量が70%未満、2:炭酸ガス発生量が70%以上80%未満、3:炭酸ガス発生量が80%以上90%未満、4:炭酸ガス発生量が90%以上95%未満、5:炭酸ガス発生量が95%以上
(2)崩壊し難さ
実施例1〜6、比較例4〜7、および参考例1の凍結生イースト成形体および比較例1〜3の生イースト成形体について、成形体一つを両手の手の平で上下に軽く挟み、両手を平行にしたまま反対方向に移動させることにより手の平で成形体を10回転がして、成形体の崩壊し難さを以下の基準で評価した。
【0060】
(評価基準)1:非常に崩壊し易い、2:崩壊し易い、3:やや崩壊し難い、4:崩壊し難い、5:非常に崩壊し難い
(3)凍結成形体の固結し難さ
袋詰めして−20℃で2ヶ月間冷凍保管した後、パッケージから凍結成形体を取り出して固結の状況を観察し、凍結成形体同士の固結し難さを以下の基準で評価した。
【0061】
(評価基準)1:成形体同士が固結し、大きな塊が形成されている、2:成形体同士が固結し、やや大きな塊が形成されている、3:成形体同士が固結し、小さな塊が形成されている、4:成形体同士はあまり固結していない、5:成形体同士は殆ど固結していない
(4)固結塊の分割し易さ
袋詰めして−20℃で2ヶ月間冷凍保管した後、2個以上の凍結成形体が固結してなる塊を取り出し、その固結塊のなかで隣り合った凍結成形体をそれぞれ左右の手で持ち、固結部へ5kg/cm程度の力(一般成人の標準的な握力)を加えて、容易に固結塊を分割できるか否かで、固結塊の分割し易さを評価した。
【0062】
(評価基準)1:非常に分割し難い、2:分割し難い、3:やや分割し易い、4:分割し易い、5:非常に分割し易い
(5)計数作業の容易性
実施例1〜6、比較例4〜7、および参考例1の凍結生イースト成形体について、比較例1〜3のブロック状の未凍結の生イースト成形体を基準にして、各成形体の大きさや、成形体の崩壊し難さ、凍結成形体の固結し難さ、固結塊の分割し易さを総合的に考慮して、成形体の個数を数える計数作業の容易性を評価した。
【0063】
(評価基準)1:計数作業が比較例1〜3と比較して極めて困難である、2:計数作業が比較例1〜3と比較して困難である、3:計数作業が比較例1〜3と同等である、4:計数作業が比較例1〜3より容易である、5:計数作業が比較例1〜3より極めて容易である
(6)重量の変動係数
−20℃で2ヶ月間冷凍保管したパッケージを20cmの高さから3回自然落下させてパッケージ内で大きな固結塊を分割した後、さらに、パッケージの外側から5kg/cm程度の力を加えて小さな固結塊を分割した。その後、一つ一つの成形体を取り出し、各成形体の重量を測定し、各成形体の重量の標準偏差を、各成形体の重量の平均値で除して、重量の変動係数を算出した。比較例1〜3に関しては、4℃で1日間冷蔵保管したパッケージから一つ一つの未凍結の生イースト成形体を取り出し、同様に各成形体の重量を測定し、重量の変動計数を算出した。
【0064】
以上により得られた結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1より、実施例1〜6は、長期保存後も多いガス発生量を維持しており、凍結成形体は崩壊しにくく、凍結体同士が固結しにくく、固結しても容易に分割でき、成形体の個数を数える計数作業が容易であった。一方、凍結をしていない比較例1〜3は、長期保存後のガス発生量が大幅に低下するとともに、成形体が比較的崩壊しやすいものであった。バルク状に成形を行なった比較例4は、長期保存性が低いことに加え、凍結体同士が固結しやすく、容易に分割できない固結塊を形成し、計数作業が困難であった。成形体の最大幅が小さい比較例5や直方体に成形した比較例6及び7は、凍結体同士が固結しやすく、容易に分割できない固結塊を形成し、計数作業が困難であった。参考例1は、食用油脂及び乳化剤といった添加物が添加されており、微小に成形されているため計数作業が困難であった。
【0067】
(試験例2)
実施例2の凍結生イースト成形体、及び、比較例1の未凍結の生イースト成形体に関し、表2の配合1、条件1に従ってパン(ワンローフ及びプルマン)を製造した。なお、凍結生イースト成形体については、−20℃の冷凍庫に3ヶ月間保管後、解凍せず凍結状態のまま、他のパン生地原材料と混合した。未凍結の生イースト成形体については、4℃で1日間冷蔵保管後、そのまま、他のパン生地原材料と混合した。
【0068】
【表2】
【0069】
製造したパンの品質は、下記の中種ガス発生量、ホイロガス発生量、パン比容積、及び、パン風味を基に評価した。
【0070】
中種ガス発生量及びホイロガス発生量は、それぞれ、中種ミキシング及びベンチタイム終了後の生地20gについて、ファーモグラフII(ATOO社製)を用いて全ガス発生量を測定し、全ガス発生量に2.5を乗じることで、生地50gに相当するガス発生量を算出した。
【0071】
パン比容積は、製造したワンローフの体積を3Dレーザー体積計Selnac−WinVM210(ASTEX社製)により測定し、これをワンローフの重量で除すことにより算出した。
【0072】
パン風味は、製造したプルマンについて、以下の基準に基づき官能評価を行なった。
【0073】
(パン風味の官能評価基準)
○:未凍結の生イーストを使用して製造したプルマンと同等の良好な風味
△:未凍結の生イーストを使用して製造したプルマンと比べ、やや風味が劣る
×:未凍結の生イーストを使用して製造したプルマンと比べ、風味が劣る
以上により得られた結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3より、凍結生イースト成形体は、3ヶ月間冷凍保管を行なった後であるにも関わらず、中種ガス発生量、ホイロガス発生量、パン比容積、及びパン風味のいずれについても、未凍結の生イースト成形体と同等の評価がされており、イーストの長期保存性に優れていることが分かる。
【0076】
(試験例3)
実施例2の凍結生イースト成形体、及び、比較例1の未凍結の生イースト成形体に関し、表4の配合2、条件2に従って中糖パン生地を成型した後、当該パン生地の冷凍及び解凍を経てロールパンを製造した。なお、凍結生イースト成形体については、−20℃の冷凍庫に3ヶ月間保管後、解凍せず凍結状態のまま、他のパン生地原材料と混合した。
【0077】
【表4】
【0078】
製造したパンの品質は、上述と同様の方法によって、ホイロガス発生量、パン比容積、及び、パン風味を基に評価した。
【0079】
以上により得られた結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
表5より、凍結生イースト成形体は、3ヶ月間冷凍保管を行なった後であるにも関わらず、ホイロガス発生量、パン比容積、及びパン風味のいずれについても、未凍結の生イースト成形体と同等の評価がされており、イーストの長期保存性に優れていることが分かる。
【0082】
(試験例4)
実施例2の凍結生イースト成形体を25℃8時間で解凍した。これを、冷解凍を1回施したものとする。次いで−20℃16時間及び25℃8時間の冷解凍を1〜3回行なった。これらをそれぞれ、冷解凍を2〜4回施したものとする。これら1〜4回の冷解凍を施した凍結生イースト成形体を、下記の基準に基づき、解凍後の発酵力、凍結時の成形体の保形性、及び解凍後の成形体の性状を評価した。比較例1の未凍結の生イースト成形体については、発酵力、及び成形体の性状を評価した。
【0083】
発酵力については、イースト工業会が定めるパン用酵母試験法の高糖生地炭酸ガス測定法に準じ、30℃2時間の炭酸ガス発生量を測定した。
【0084】
凍結時の成形体の保形性については、凍結時のイースト成形体が未凍結の生イースト成形体の形状を保持しているかどうかにより、3段階評価を行なった。
【0085】
(凍結時の成形体の保形性の評価基準)
○:未凍結の生イースト成形体の形状と同一である
△:未凍結の生イースト成形体の形状からやや形状が変化している
×:未凍結の生イースト成形体の形状から大きく形状が変化している
成形体の性状については、解凍後の生イースト成形体の表面を指で押したときに感じる柔らかさにより、3段階評価を行なった。
【0086】
(成形体の性状の評価基準)
○:未凍結の生イースト成形体と同程度に硬い
△:未凍結の生イースト成形体と比べ、やや柔らかい
×:未凍結の生イースト成形体と比べ、非常に柔らかい
以上により得られた結果を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
表6より、本発明の凍結生イースト成形体を1度だけ解凍したものは、未凍結の生イースト成形体と同等の発酵力を示し、未凍結の生イースト成形体の形状及び硬さを保持しているが、2回以上の冷解凍を施したものは発酵力の低下や、形状の変化及び軟化が確認された。以上の結果から、凍結生イースト成形体を一度解凍した後に、再び凍結することは避けたほうがよい。
【0089】
(試験例5)
実施例2の凍結生イースト成形体、及び、比較例1の未凍結の生イースト成形体を4℃の冷蔵庫に静置して2日後、及び1ヶ月後の発酵力を、試験例4と同様の方法で評価した。
【0090】
以上により得られた結果を表7に示す。
【0091】
【表7】
【0092】
表7より、凍結生イースト成形体、未凍結の生イースト成形体いずれも、1ヶ月間冷蔵保管後に発酵力が大きく低下したが、凍結生イースト成形体における発酵力低下は、未凍結の生イースト成形体における発酵力低下よりも著しいものであった。このことから、凍結生イースト成形体を一旦解凍した後は、長期にわたって冷蔵保管をすることなく、速やかに使用したほうがよい。
【0093】
(実施例7〜12、比較例8〜14、参考例2)
イーストの菌株としてKGLY59(寄託番号FERM BP−20635、特許第4839860号に記載)を使用した以外は、実施例1〜6、比較例1〜7、及び参考例1と同様にして、成形体、及びそのパッケージを得た。各成形体中のイーストの乾燥物重量は31.5%であった。これら成形体、及びそのパッケージについて、試験例1に従って各種評価を行なった。得られた結果を表8に示す。
【0094】
【表8】
【0095】
(実施例13〜18、比較例15〜21、参考例3)
イーストの菌株としてKCY1254(寄託番号NITE BP−1396、特許第5677624号に記載)を使用した以外は、実施例1〜6、比較例1〜7、及び参考例1と同様にして、成形体、及びそのパッケージを得た。各成形体中のイーストの乾燥物重量は32.4%であった。これら成形体、及びそのパッケージについて、試験例1に従って各種評価を行なった。得られた結果を表9に示す。
【0096】
【表9】
【0097】
(実施例19〜24、比較例22〜28、参考例4)
イーストの菌株としてKCY1217(寄託番号NITE BP−1058、特許第5907161号に記載)を使用した以外は、実施例1〜6、比較例1〜7、及び参考例1と同様にして、成形体、及びそのパッケージを得た。各成形体中のイーストの乾燥物重量は32.9%であった。これら成形体、及びそのパッケージについて、試験例1に従って各種評価を行なった。得られた結果を表10に示す。
【0098】
【表10】
【0099】
(実施例25〜30、比較例29〜35、参考例5)
イーストの菌株としてKCY1222(寄託番号NITE BP−1059、特許第5907161号に記載)を使用した以外は、実施例1〜6、比較例1〜7、及び参考例1と同様にして、成形体、及びそのパッケージを得た。各成形体中のイーストの乾燥物重量は32.3%であった。これら成形体、及びそのパッケージについて、試験例1に従って各種評価を行なった。得られた結果を表11に示す。
【0100】
【表11】
【0101】
異なる菌株を使用した表8〜表11の各実施例及び比較例においても、表1の各実施例及び比較例と同じ傾向の結果が得られた。すなわち、各実施例は、長期保存後も多いガス発生量を維持しており、凍結成形体は崩壊しにくく、凍結体同士が固結しにくく、固結しても容易に分割でき、成形体の個数を数える計数作業が容易であった。一方、凍結をしていない比較例8〜10、15〜17、22〜24、及び29〜31は、長期保存後はガス発生量が大幅に低下するとともに、成形体が比較的崩壊しやすいものであった。バルク状に成形を行なった比較例11、18、25、及び32は、長期保存性が低いことに加え、凍結体同士が固結しやすく、容易に分割できない固結塊を形成し、計数作業が困難であった。成形体の最大幅が小さい比較例12、19、26、及び33や、直方体に成形した比較例13、14、20、21、27、28、34、及び35は、凍結体同士が固結しやすく、容易に分割できない固結塊を形成し、計数作業が困難であった。各参考例は、食用油脂及び乳化剤といった添加物が添加されており、微小に成形されているため計数作業が困難であった。