特許第6574578号(P6574578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574578
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】発泡性飲料及びこれに関する方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/00 20060101AFI20190902BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C12C5/00
   C12C11/04
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-31762(P2015-31762)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-152778(P2016-152778A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2018年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神前 陽一
(72)【発明者】
【氏名】飯牟礼 隆
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭46−001847(JP,A)
【文献】 特開2013−188191(JP,A)
【文献】 特開2012−223101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00−13/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法であって、
前記アルコール発酵の終了前に消泡剤を10ppm以上、50ppm未満の濃度で添加して前記アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、前記消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて泡特性が向上した発泡性飲料を製造することを含む
ことを特徴とする発泡性飲料の製造方法。
【請求項2】
前記消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べてNIBEM値が増大した前記発泡性飲料を製造する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡性飲料の製造方法。
【請求項3】
前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤及び/又は乳化剤系消泡剤である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性飲料の製造方法。
【請求項4】
前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤である
ことを特徴とする請求項3に記載の発泡性飲料の製造方法。
【請求項5】
前記消泡剤は、乳化剤系消泡剤である
ことを特徴とする請求項3に記載の発泡性飲料の製造方法。
【請求項6】
発泡性飲料の泡特性を向上させる方法であって、
アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法において、前記アルコール発酵の終了前に消泡剤を10ppm以上、50ppm未満の濃度で添加して前記アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、前記消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて前記発泡性飲料の泡特性を向上させる
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて前記発泡性飲料のNIBEM値を増大させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤及び/又は乳化剤系消泡剤である
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤である
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記消泡剤は、乳化剤系消泡剤である
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性飲料及びこれに関する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホップ由来成分を含むビールテイスト飲料の製造方法において、消泡剤を添加することにより、自然で好ましい苦味を有し味のボディ感が増強されたビールテイスト飲料を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−128240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、飲料の泡特性が向上することについては何ら記載されていない。一方、発泡性飲料については、その泡特性を向上させることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、泡特性が効果的に向上した発泡性飲料及びこれに関する方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料の製造方法は、アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法であって、前記アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、泡特性が向上した発泡性飲料を製造することを含むことを特徴とする。本発明によれば、泡特性が効果的に向上した発泡性飲料の製造方法を提供することができる。
【0007】
また、前記方法において、前記アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することは、消泡剤を50ppm未満の濃度で添加することであることとしてもよい。この場合、前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤及び/又は乳化剤系消泡剤であることとしてもよい。さらに、この場合、前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤であることとしてもよい。また、前記消泡剤は、乳化剤系消泡剤であることとしてもよい。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料は、前記いずれかの方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、泡特性が効果的に向上した発泡性飲料を提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料は、消泡剤を50ppm未満の濃度で含有することを特徴とする。本発明によれば、泡特性が効果的に向上した発泡性飲料を提供することができる。
【0010】
また、前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤及び/又は乳化剤系消泡剤であることとしてもよい。この場合、前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤であることとしてもよい。また、前記消泡剤は、乳化剤系消泡剤であることとしてもよい。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、発泡性飲料の泡特性を向上させる方法であって、アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法において、前記アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、前記発泡性飲料の泡特性を向上させることを特徴とする。本発明によれば、発泡性飲料の泡特性を効果的に向上させる方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、泡特性が効果的に向上した発泡性飲料及びこれに関する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る実施例1において、アルコール発酵中に液面で形成された泡の高さを測定した結果を示す説明図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る実施例2において、シリコーン系消泡剤を添加して製造された発酵液及び発泡性飲料のNIBEM値を測定した結果を示す説明図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る実施例2において得られた、シリコーン系消泡剤の添加濃度と発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す説明図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る実施例2において、乳化剤系消泡剤を添加して製造された発酵液及び発泡性飲料のNIBEM値を測定した結果を示す説明図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る実施例2において得られた、乳化剤系消泡剤の添加濃度と発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る実施例2において得られた、発泡性飲料の官能検査の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0015】
本実施形態に係る発泡性飲料の製造方法は、アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法であって、当該アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、泡特性が向上した発泡性飲料を製造することを含む。
【0016】
また、本実施形態に係る発泡性飲料の泡特性を向上させる方法は、アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法において、当該アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、当該発泡性飲料の泡特性を向上させる方法である。
【0017】
アルコール発酵は、発酵前液に酵母を添加することにより開始する。アルコール発酵中は、発酵液中で、酵母により炭酸ガスが生成される。このため発酵液の液面に泡の層が形成される。
【0018】
すなわち、例えば、一般的なビールの製造方法においては、アルコール発酵の開始後、発酵液の液面が泡で覆われ始め、2日目又は3日目に、当該液面に形成された泡の層の高さが最大となる。
【0019】
そして、本実施形態においては、この発酵液の液面における泡の形成を抑制することにより、当該泡の形成を抑制しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて泡特性が向上した発泡性飲料を製造する。
【0020】
すなわち、本願発明の発明者らは、発泡性飲料の泡特性を向上させる技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、発泡性飲料の泡特性を向上させることができることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0021】
液面における泡の形成の抑制は、例えば、泡の量(体積及び/又は重量)の低減であってもよいし、泡の高さの低減であってもよいし、当該液面の全面積に対する、当該液面の泡で覆われている部分の割合の低減であってもよい。
【0022】
なお、発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0023】
発泡性飲料の泡特性の向上は、例えば、泡持ち特性の向上である。泡持ち特性の向上は、容器に注がれた当該発泡性飲料の液面にいったん形成された泡が保たれる時間が長くなることを意味する。
【0024】
発泡性飲料の泡持ち特性の向上は、例えば、当該発泡性飲料のNIBEM値の増加により確認される。NIBEM値は、ビール等の発泡性アルコール飲料の泡持ち特性を示す指標値として使用されている。NIBEM値は、発泡性飲料を所定の容器に注いだ際に形成された泡の高さが所定量減少するまでの時間(秒)として評価される。NIBEM値が大きいほど、発泡性飲料の泡持ち特性が優れていることになる。
【0025】
この点、本実施形態では、アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することにより、当該泡の形成を抑制しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて大きなNIBEM値を示す発泡性飲料を製造することができる。
【0026】
具体的に、例えば、泡の形成を抑制しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、特に好ましくは18以上大きなNIBEM値を示す発泡性飲料を製造することができる。また、これらの場合、NIBEM値が250秒以上、好ましくは260秒以上、より好ましくは270秒以上である発泡性飲料を製造することとしてもよい。
【0027】
発泡性飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよい。発泡性アルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の発泡性飲料である。発泡性アルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1〜20体積%であってもよい。
【0028】
また、発泡性飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であってもよい。発泡性ノンアルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%未満の発泡性飲料である。発泡性ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。
【0029】
アルコール発酵を行って発泡性ノンアルコール飲料を製造する場合、例えば、アルコール発酵後の発酵液に、そのエタノール含有量を低減するアルコール除去処理を施し、当該アルコール除去処理後の発酵液を使用して、当該発泡性ノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。また、例えば、アルコール発酵後の発酵液を希釈して、発泡性ノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。
【0030】
また、アルコール発酵は、上述のとおり、発酵前液に酵母(例えば、ビール酵母)を添加して行う。具体的に、アルコール発酵は、例えば、発酵前液に酵母を添加して調製された発酵液を所定の温度(例えば、0〜40℃)で所定の時間(例えば、1〜14日)維持することにより行う。発酵開始時の発酵液における酵母の密度は特に限られず、例えば、1×10個/mL〜3×10個/mLであることとしてもよい。
【0031】
発酵前液は、酵母が資化する炭素源及び窒素源を含むものであれば特に限られない。発酵前液は、例えば、植物原料を使用して調製する。この場合、発酵前液は、植物原料と水(好ましくは湯)とを混合することにより調製する。こうして得られる発酵前液は、植物原料から抽出された成分を含む。
【0032】
植物原料は、飲料の製造に使用され得るものであれば特に限られず、例えば、穀類(例えば、大麦、小麦、米類及びとうもろこしからなる群より選択される1種以上)、豆類、いも類からなる群より選択される1種以上であってもよい。これら穀類、豆類及びいも類は、発芽させたものであってもよく、発芽させていないものであってもよい。
【0033】
具体的に、植物原料は、例えば、麦芽、大麦及び小麦からなる群より選択される1種以上であってもよい。麦芽は、例えば、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽である。大麦麦芽は大麦を発芽させることにより得られ、小麦麦芽は小麦を発芽させることにより得られる。麦芽の使用は、麦芽エキスの使用であってもよい。麦芽エキスとしては、市販の麦芽エキスを使用してもよい。
【0034】
また、発酵前液は、例えば、ホップを使用して調製してもよい。この場合、麦芽、大麦及び小麦からなる群より選択される1種以上と、ホップとを使用してもよい。
【0035】
麦芽を使用する場合、糖化を行って発酵前液を調製してもよい。すなわち、この場合、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、得られた混合液の糖化を行う。糖化は、例えば、麦芽及び水を含む混合液を、当該麦芽に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜80℃)に維持することにより行う。
【0036】
麦芽及びホップを使用する場合、例えば、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、得られた混合液にホップを添加し、煮沸することにより発酵前液を調製してもよい。また、例えば、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、糖化を行い、その後、ホップを添加して煮沸することにより発酵前液を調製してもよい。
【0037】
また、アルコール発酵に続いて、熟成を行うこととしてもよい。すなわち、この場合、アルコール発酵を行い、さらに熟成を行って、発泡性飲料を製造する。熟成は、アルコール発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、香味を向上させることができる。
【0038】
また、アルコール発酵後に、ろ過を行うこととしてもよい。すなわち、この場合、アルコール発酵を行い、その後、ろ過を行って、発泡性飲料を製造する。また、アルコール発酵を行い、さらに熟成を行い、その後、ろ過を行って、発泡性飲料を製造してもよい。
【0039】
アルコール発酵後の発酵液のろ過は、特に限られないが、例えば、珪藻土ろ過、樹脂フィルターによるろ過及び活性炭によるろ過からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0040】
本実施形態において、泡の形成を抑制する方法は、特に限られないが、例えば、アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することは、消泡剤を50ppm未満の濃度で添加することであってもよい。
【0041】
すなわち、この場合、本実施形態に係る発泡性飲料の製造方法は、アルコール発酵を行うことを含む発泡性飲料の製造方法であって、消泡剤を50ppm未満の濃度で添加することにより、泡特性が向上した発泡性飲料を製造することを含む。なお、2種以上の消泡剤を添加する場合には、当該2種以上の消泡剤の濃度の合計が50ppm未満となるように、当該2種以上の消泡剤を添加する。
【0042】
ここで、消泡剤の添加は、一見、発泡性飲料の泡特性の向上と矛盾するように解され得る。しかしながら、本願発明の発明者らは、発泡性飲料の泡特性を向上させる技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、消泡剤を50ppm未満の特定濃度で添加することにより、アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制するとともに、発泡性飲料の泡特性を向上させることができることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0043】
消泡剤は、本願発明の効果を奏するものであれば特に限られず、任意のものを適宜選択して使用することができるが、例えば、シリコーン系消泡剤及び/又は乳化剤系消泡剤であることが好ましい。すなわち、この場合、シリコーン系消泡剤及び乳化剤系消泡剤の少なくとも一方を50ppm未満の濃度で添加する。
【0044】
具体的に、シリコーン系消泡剤を50ppm未満の濃度で添加してもよいし、乳化剤系消泡剤を50ppm未満の濃度で添加してもよいし、シリコーン系消泡剤及び乳化剤系消泡剤を50ppm未満の濃度で(すなわち、シリコーン系消泡剤及び乳化剤系消泡剤の合計濃度が50ppm未満となるように)添加してもよい。また、消泡剤として、シリコーン系消泡剤を単独で使用してもよいし、乳化剤系消泡剤を単独で使用してもよいし、シリコーン系消泡剤及び乳化剤系消泡剤を使用してもよい。
【0045】
なお、シリコーン系消泡剤は、シリコーンを主成分として含有する無機系消泡剤である。乳化剤系消泡剤は、乳化剤を主成分として含有する有機系消泡剤である。
【0046】
消泡剤の上記添加濃度は、消泡剤を添加する原料液(例えば、発酵前液及び/又は発酵液)に対して50ppm未満(1Lの原料液に対して、50mg未満)の濃度であれば特に限られないが、例えば、49ppm以下であってもよく、47ppm以下であってもよく、45ppm以下であってもよい。
【0047】
消泡剤の添加濃度の下限値は、本願発明による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、1ppm以上であってもよく、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよい。
【0048】
消泡剤の添加濃度の範囲は、上記上限値と下限値とを任意に組み合わせて規定してもよい。すなわち、消泡剤の添加濃度は、例えば、1ppm以上、49ppm以下であってもよく、5ppm以上、47ppm以下であってもよく、10ppm以上、45ppm以下であってもよい。
【0049】
消泡剤を添加するタイミングは、アルコール発酵の終了前であれば特に限られないが、例えば、アルコール発酵中に液面に形成された泡の高さが最大となる時点より前であることが好ましく、酵母の対数増殖期が終了する前であることがより好ましく、発酵前液に酵母を添加してから24時間後より前であることがより一層好ましく、発酵前液に酵母を添加する前であることが特に好ましい。なお、消泡剤を複数回のタイミングで添加する場合には、当該複数回の添加による合計濃度が50ppm未満となるように当該消泡剤を添加する。
【0050】
消泡剤を50ppm未満の上記特定範囲の濃度で添加することにより、当該消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて泡特性が向上した発泡性飲料を製造することができる。
【0051】
具体的に、例えば、消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、特に好ましくは18以上大きなNIBEM値を示す発泡性飲料を製造することができる。また、これらの場合、NIBEM値が250秒以上、好ましくは260秒以上、より好ましくは270秒以上である発泡性飲料を製造することとしてもよい。
【0052】
本実施形態に係る発泡性飲料は、上述の方法により好ましく製造される。すなわち、この発泡性飲料は、アルコール発酵中の液面での泡の形成を抑制することを含む上記方法により製造され、当該泡の形成を抑制しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて泡特性が向上した発泡性飲料である。
【0053】
より具体的に、発泡性飲料は、泡の形成を抑制しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、特に好ましくは18以上大きなNIBEM値を示す発泡性飲料である。また、発泡性飲料のNIBEM値は、例えば、250秒以上であってもよく、好ましくは260秒以上であり、より好ましくは270秒以上である。
【0054】
発泡性飲料が、消泡剤を50ppm未満の濃度で添加することを含む上記方法により製造された場合、当該発泡性飲料は、当該消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて泡特性が向上した発泡性飲料である。
【0055】
より具体的に、発泡性飲料は、消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料に比べて、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、特に好ましくは18以上大きなNIBEM値を示す発泡性飲料である。この場合も、発泡性飲料のNIBEM値は、例えば、250秒以上であってもよく、好ましくは260秒以上であり、より好ましくは270秒以上である。
【0056】
発泡性飲料は、例えば、消泡剤を50ppm未満の濃度で含有する。この場合、消泡剤は、シリコーン系消泡剤及び/又は乳化剤系消泡剤であることとしてもよい。すなわち、この場合、上述した方法における添加の場合と同様に、シリコーン系消泡剤及び乳化剤系消泡剤の少なくとも一方を50ppm未満の濃度で含有する。
【0057】
消泡剤の含有濃度は、発泡性飲料に対して50ppm未満(1Lの発泡性飲料に対して、50mg未満)の濃度であれば特に限られないが、例えば、49ppm以下であってもよく、47ppm以下であってもよく、45ppm以下であってもよい。消泡剤の含有濃度の下限値は、特に限られないが、例えば、1ppm以上であってもよく、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよい。
【0058】
消泡剤の含有濃度の範囲は、上記上限値と下限値とを任意に組み合わせて規定してもよい。すなわち、発泡性飲料における消泡剤の含有濃度は、例えば、1ppm以上、49ppm以下であってもよく、5ppm以上、47ppm以下であってもよく、10ppm以上、45ppm以下であってもよい。
【0059】
そして、これらの発泡性飲料は、上述のように消泡剤を含有するにもかかわらず、優れた泡特性を有する。すなわち、上記消泡剤を含有する発泡性飲料のNIBEM値は、例えば、250秒以上であってもよく、好ましくは260秒以上であり、より好ましくは270秒以上である。
【0060】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0061】
容量180mLの発酵管を使用した小スケールにて発泡性飲料を製造した。すなわち、まず、植物原料を使用して発酵前液を調製した。植物原料としては、大麦麦芽、大麦及びホップを使用した。具体的に、粉砕された大麦麦芽及び大麦に55℃の湯を加え、得られた混合液を65℃で維持することにより、糖化を行った。さらに、糖化後の混合液にホップを添加して煮沸を行った。煮沸後の混合液を冷却して発酵前液として得た。
【0062】
ここで、アルコール発酵の開始前に、発酵前液に、消泡剤を15ppm、150ppm又は300ppmの濃度で添加した。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤(KM−72F、信越化学工業株式会社製)を使用した。なお、このシリコーン系消泡剤は、30%溶液であったため、例えば、当該30%溶液を50ppmの濃度で添加することにより、当該シリコーン系消泡剤を15ppm添加した。
【0063】
その後、消泡剤が添加された発酵前液に、さらにビール酵母を添加して、発酵液のエタノール含有量が約5体積%になるまでアルコール発酵を行った。ここで、アルコール発酵の開始から0.25日、1日、2日、3日、4日、5日、6日及び7日が経過した時点において、発酵液の液面に形成された泡の高さを測定した。
【0064】
図1には、アルコール発酵中に発酵液の液面に形成された泡の高さを測定した結果を示す。図1において、横軸は、アルコール発酵の開始から経過した時間、すなわち発酵日数(日)を示し、縦軸は、泡の高さ(cm)を示す。また、白抜きの丸印(0ppm)は、消泡剤を添加しなかった例の結果を示し、黒塗りの丸印は、消泡剤を15ppm添加した例の結果を示し、黒塗りの三角は、消泡剤を150ppm添加した例の結果を示し、黒塗りの四角印は、消泡剤を300ppm添加した例の結果を示す。
【0065】
図1に示すように、消泡剤の添加濃度が増加するにつれて、アルコール発酵中に液面に形成される泡の高さが低減された。すなわち、消泡剤を15ppm添加した例においても、アルコール発酵中の液面における泡の形成は効果的に低減された。
【実施例2】
【0066】
容量30Lのパイロット設備を使用して発泡性飲料を製造した。すなわち、まず、植物原料を使用して発酵前液を調製した。植物原料としては、大麦麦芽、大麦及びホップを使用した。具体的に、粉砕された大麦麦芽及び大麦に55℃の湯を加え、得られた混合液を65℃で維持することにより、糖化を行った。さらに、糖化後の混合液にホップを添加して煮沸を行った。煮沸後の混合液を冷却して発酵前液として得た。
【0067】
ここで、アルコール発酵の開始前に、発酵前液に、消泡剤を添加した。すなわち、上述の実施例1でも使用したシリコーン系消泡剤を、11ppm、15ppm、26ppm、41ppm、87ppm又は183ppmの濃度で添加した。また、乳化剤系消泡剤(アワブレークG109、太陽化学株式会社製)を、31ppm、36ppm、319ppm、又は676ppmの濃度で添加した。
【0068】
その後、消泡剤が添加された発酵前液に、さらにビール酵母を添加してアルコール発酵を行った。さらに、アルコール発酵後には、熟成を行った。そして、熟成後の発酵液を珪藻土ろ過によりろ過し、発泡性飲料を得た。発泡性飲料は、エタノール含有量が約5体積%の発泡性アルコール飲料であった。
【0069】
そして、得られた発泡性飲料のNIBEM値を測定した。また、一部の条件について、貯酒が終了した後、且つろ過を行う前の発酵液のNIBEM値も測定した。また、得られた発泡性飲料については、官能検査も行った。すなわち、熟練した5人のパネラーにより、発泡性飲料について、「マイルドさ」、「ボディー感」及び「総合的な香味」の評価を行った。各パネラーは、各評価項目について、1点、2点、3点、4点又は5点のいずれかの点数を付した。
【0070】
図2Aには、シリコーン系消泡剤の各添加濃度(ppm)と、貯酒後、ろ過前の発酵液及び発泡性飲料のNIBEM値(秒)とを対応させて示す。なお、図2Aにおいて「−」と記された条件では、ろ過前の発酵液のNIBEM値を測定しなかった。図2Bには、シリコーン系消泡剤の添加濃度(ppm:横軸)と、発泡性飲料のNIBEM値(秒:縦軸)との関係を示す。
【0071】
図2A及び図2Bより、シリコーン系消泡剤を11ppm、15ppm、26ppm又は41ppmの濃度で添加することを含む方法により製造された発泡性飲料のNIBEM値は、当該消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料のそれより顕著に大きかった。
【0072】
一方、シリコーン系消泡剤を87ppm又は183ppmの濃度で添加した例において、発泡性飲料のNIBEM値は、当該シリコーン系消泡剤を上述の50ppm未満の濃度で添加した例ほど大きくなかった。
【0073】
また、図2Aより、シリコーン系消泡剤を15ppm添加した例においては、ろ過前の発酵前液及び発泡性飲料のいずれのNIBEM値も、当該消泡剤を添加しない例より顕著に大きかった。
【0074】
図3Aには、乳化剤系消泡剤の各添加濃度(ppm)と、貯酒後、ろ過前の発酵液及び発泡性飲料のNIBEM値(秒)とを対応させて示す。なお、図3Aにおいて「−」と記された条件では、ろ過前の発酵液のNIBEM値を測定しなかった。図3Bには、乳化剤系消泡剤の添加濃度(ppm:横軸)と、発泡性飲料のNIBEM値(秒:縦軸)との関係を示す。
【0075】
図3A及び図3Bより、乳化剤系消泡剤を31ppm又は36ppmの濃度で添加することを含む方法により製造された発泡性飲料のNIBEM値は、当該消泡剤を添加しない以外は同一の方法で製造された発泡性飲料のそれより顕著に大きかった。
【0076】
一方、乳化剤系消泡剤を319ppm又は676ppmの濃度で添加した例の発泡性飲料のNIBEM値は、当該消泡剤を添加しなかった例のそれ以下であった。また、乳化剤系消泡剤を319ppm又は676ppmの濃度で添加した例では、発酵液のろ過時に閉塞が生じ、発泡性飲料を効率よく製造することができなかった。
【0077】
また、図3Aより、乳化剤系消泡剤を36ppm添加した例において、ろ過前の発酵液のNIBEM値は、当該消泡剤を添加しない例に比べて顕著に小さかったが、ろ過を経て得られた発泡性飲料のNIBEM値は、当該消泡剤を添加しない例に比べて顕著に大きくなった。
【0078】
図4には、官能検査の結果を示す。図4に示す数値は、5人のパネラーにより付された点数の算術平均値である。
【0079】
図4に示すように、シリコーン系消泡剤の添加濃度が増加するにつれて、発泡性飲料の「マイルドさ」が増し、「総合的な香味」も好ましくなる傾向が確認された。
【0080】
一方、発泡性飲料の「ボディー感」は、シリコーン系消泡剤の添加濃度が増加しても、あまり変化せず、特に、添加濃度が15ppmの場合には、消泡剤を添加しない例(「無添加」)と大差ないと評価された。
【0081】
これに対し、乳化剤系消泡剤については、その添加濃度が増加するにつれて、発泡性飲料の「ボディー感」が増強される傾向が確認されたが、「マイルドさ」及び「総合的な香味」は低下する傾向が確認された。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4