(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力信号と第3検出レベルとを比較して、前記出力信号が前記第3検出レベルを超過したことを検出し、検出結果に基づいて前記増幅回路の利得を制御する利得制御部を備える
請求項11に記載の波形整形フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る波形整形フィルタについて、
図1〜
図12を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る波形整形フィルタの一例を示す図である。
図1に示すように、波形整形フィルタは、フィルタ段1,2と、制御部3と、を備える。
【0010】
フィルタ段1は、1段目のフィルタ段である。波形整形フィルタの入力端子Inputから入力された入力信号In(s)は、フィルタ段1に入力される。sは、ラプラス演算子である。
図1に示すように、フィルタ段1は、微分信号生成部11と、比例信号生成部12と、加算部13と、を備える。
【0011】
微分信号生成部11は、入力信号In(s)の微分成分をk
11倍に増幅し、微分信号を生成する。微分信号は、In(s)×k
11sとなる。微分信号生成部11は、微分信号を加算部13に入力する。
【0012】
比例信号生成部12は、入力信号In(s)をk
12倍に増幅し、比例信号を生成する。比例信号は、In(s)×k
12となる。比例信号生成部12は、比例信号を加算部13に入力する。
【0013】
加算部13は、微分信号生成部11から微分信号を入力され、比例信号生成部12から比例信号を入力される。加算部13は、微分信号と比例信号とを加算して出力する。加算部13の出力信号は、In(s)×(k
11s+k
12)となり、フィルタ段1の出力信号となる。フィルタ段1の時定数は、k
11/k
12である。
【0014】
フィルタ段2は、フィルタ段1に接続された2段目のフィルタ段である。フィルタ段1の出力信号は、フィルタ段2に入力される。
図1に示すように、フィルタ段2は、微分信号生成部21と、比例信号生成部22と、加算部23と、を備える。
【0015】
微分信号生成部21は、フィルタ段1の出力信号の微分成分をk
21倍に増幅し、微分信号を生成する。微分信号は、In(s)×(k
11s+k
12)×k
21sとなる。微分信号生成部21は、微分信号を加算部23に入力する。
【0016】
比例信号生成部22は、フィルタ段1の出力信号をk
22倍に増幅し、比例信号を生成する。比例信号は、In(s)×(k
11s+k
12)×k
22となる。比例信号生成部22は、比例信号を加算部23に入力する。
【0017】
加算部23は、微分信号生成部21から微分信号を入力され、比例信号生成部22から比例信号を入力される。加算部23は、微分信号と比例信号とを加算して出力する。加算部23の出力信号は、In(s)×(k
11s+k
12)(k
21s+k
22)となり、フィルタ段2の出力信号となる。フィルタ段2の時定数は、k
21/k
22である。フィルタ段2は、最終段であるため、フィルタ段2の出力信号が、波形整形フィルタの出力信号Out(s)となる。
【0019】
なお、本実施形態に係る波形整形フィルタは、フィルタ段を1段だけ備えてもよいし、3段以上のフィルタ段を備えてもよい。いずれの場合も、1段目のフィルタ段に入力信号In(s)が入力され、最終段のフィルタ段から出力信号Out(s)が出力される。
【0020】
制御部3は、出力信号Out(s)に基づいて、波形整形フィルタの時定数を制御する。
図1に示すように、制御部3は、比較部31と、制御信号生成部32と、を備える。
【0021】
比較部31は、出力信号Out(s)を入力される。比較部31は、出力信号Out(s)と第1検出レベルとを比較する。第1検出レベルは、出力信号Out(s)のアンダーシュート又はオーバーシュートを検出するための閾値である。以下では、出力信号Out(s)のアンダーシュートを検出する場合について説明するが、比較部31は、出力信号Out(s)のオーバーシュートを検出してもよい。出力信号Out(s)のアンダーシュートを検出するかオーバーシュートを検出するかは、入力信号In(s)の向き(符号)によって決まる。比較部31は、出力信号Out(s)と第1検出レベルとの比較結果、すなわち、アンダーシュートの検出結果を、制御信号生成部32に入力する。
【0022】
制御信号生成部32は、比較部31から入力された検出結果に基づいて、波形整形フィルタの時定数を制御する制御信号を生成し、フィルタ段1及びフィルタ段2の少なくとも一方に入力する。制御部3は、この制御信号により、波形整形フィルタの時定数を制御する。
【0023】
上述の通り、フィルタ段1の時定数はk
11/k
12であるから、制御部3は、k
11及びk
12の少なくとも一方の値を調整することにより、フィルタ段1の時定数を制御することができる。また、フィルタ段2の時定数はk
21/k
22であるから、制御部3は、k
21及びk
22の少なくとも一方の値を調整することにより、フィルタ段2の時定数を制御することができる。
【0024】
より詳細には、制御部3は、k
11又k
21の値を大きくするか、k
12又はk
22の値を小さくすることにより、波形整形フィルタの時定数を大きくすることができる。また、制御部3は、k
11又k
21の値を小さくするか、k
12又はk
22の値を大きくすることにより、波形整形フィルタの時定数を小さくすることができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係る波形整形フィルタの時定数の調整方法について説明する。以下では、入力信号In(s)は、不定期に到来する信号パルスであるものとする。また、波形整形フィルタの後段には、入力信号In(s)の到来を検出する信号検出回路が接続されるものとする。
【0026】
信号検出回路は、出力信号Out(s)と第2検出レベルとを比較して、入力信号In(s)の到来を検出する。第2検出レベルは、入力信号In(s)の到来を検出するための閾値である。信号検出回路は、第2検出レベルより大きい出力信号Out(s)を入力された場合、入力信号In(s)が到来したと判定する。
【0027】
上記の式(1)からわかるように、波形整形フィルタは、ゼロ点を有する。このため、入力信号In(s)が、1次のポールを有する低域通過特性を備えた系を介して波形整形フィルタに入力される場合、波形整形フィルタのゼロ点を用いてポール・ゼロキャンセルを行うことで、入力信号In(s)のパルス幅を狭めることができる。
【0028】
ポール及びゼロ点の周波数が一致し、ポール・ゼロキャンセルが正しく行われた場合、
図2に示すように、系の低域通過特性によって鈍くなった入力信号In(s)は、パルス幅を狭められる。ゼロ点の周波数は、波形整形フィルタの時定数に依存するため、波形整形フィルタの時定数を適切に設定することにより、
図2のようなポール・ゼロキャンセルが可能となる。
【0029】
しかしながら、実際には、波形整形フィルタを構成する素子のばらつきや、入力信号In(s)が通過する系のばらつきにより、ポール及びゼロ点の周波数が一致しない場合がある。
【0030】
波形整形フィルタの時定数が適切な時定数より大きいと、入力信号In(s)の微分成分が強調されすぎ、
図3に示すように、出力信号Out(s)にアンダーシュートが発生する。このような波形整形フィルタに、近接した入力信号In(s)が入力されると、
図4に示すように、アンダーシュートが発生している期間に入力された入力信号In(s)に対応する出力信号Out(s)が小さくなり、信号検出回路が入力信号In(s)の到来を検出できなくなる恐れがある。
【0031】
また、波形整形フィルタの時定数が適切な時定数より小さいと、入力信号In(s)の微分成分が十分に強調されず、
図5に示すように、出力信号Out(s)のパルス幅が十分に狭められない。このような波形整形フィルタに、近接した入力信号In(s)が入力されると、
図6に示すように、出力信号Out(s)がパイルアップし、信号検出回路が入力信号In(s)の到来を検出できなくなる恐れがある。
【0032】
そこで、制御回路3は、ポール及びゼロ点の周波数が一致し、ポール・ゼロキャンセルが正しく行われるように、波形整形フィルタの時定数を制御する。具体的には、制御部3は、出力信号Out(s)のアンダーシュートが検出された場合、波形整形フィルタの時定数を小さくし、アンダーシュートが検出されなかった場合、波形整形フィルタの時定数を大きくする。
【0033】
このような調整方法により、波形整形フィルタの時定数を適切な時定数に近づけることができる。したがって、入力信号In(s)のパルス幅を狭めつつ、出力信号Out(s)のオーバーシュートを抑制することができる。後段の信号検出回路は、出力信号Out(s)を利用することにより、入力信号In(s)の到来を精度よく検出できる。
【0034】
また、制御部3は、出力信号Out(s)と第1検出レベルとを比較する簡単な回路を用いてアンダーシュートを検出するため、サンプリング回路、サンプリングパルスを発生させる制御回路、及びAD変換器などが不要である。したがって、波形整形フィルタの回路規模を小さくすることができる。
【0035】
次に、波形整形フィルタの時定数の調整処理について、
図7〜
図12を参照して具体的に説明する。
図7は、時定数の調整処理の一例を示すフローチャートである。
図7の調整処理では、所定の終了条件を満たすまで、調整処理が繰り返し実行される。
【0036】
まず、ステップS1において、制御部3は、波形整形フィルタの時定数を初期値に設定する。初期値は、任意に設定可能であり、例えば、ノミナル値である。
【0037】
次に、ステップS2において、波形整形フィルタに入力信号In(s)を所定期間入力する。所定期間の間に、複数の入力信号In(s)が入力され、各入力信号In(s)に応じた出力信号Out(s)が出力される。比較部31は、各出力信号Out(s)を第1検出レベルと比較し、比較結果を制御信号生成部32に入力する。
【0038】
所定期間の経過後、ステップS3において、制御信号生成部32は、所定期間の間に比較部31がアンダーシュートを検出したか判定する。
【0039】
比較部31がアンダーシュートを検出していない、すなわち、所定期間の間に出力された全ての出力信号Out(s)にアンダーシュートが発生していない場合(ステップS3のNO)、処理はステップS4に進む。
【0040】
ステップS4において、制御信号生成部32は、前回の調整処理において、比較部31がアンダーシュートを検出したか判定する。比較部31が、前回アンダーシュートを検出していた場合(ステップS4のYES)、処理は終了する。一方、比較部31が、前回アンダーシュートを検出していない場合(ステップS4のNO)、処理はステップS5に進む。比較部31が前回アンダーシュートを検出していない場合には、調整処理が1回目の場合も含まれる。
【0041】
ステップS5において、制御信号生成部32は、制御信号により、波形整形フィルタの時定数を1ステップ大きくする。その後、処理はステップS2に進み、波形整形フィルタに再び入力信号In(s)が入力される。
【0042】
一方、ステップS3において、比較部31がアンダーシュートを検出した、すなわち、所定期間の間に出力された出力信号Out(s)の少なくとも1つにアンダーシュートが発生していた場合(ステップS3のYES)、処理はステップS6に進む。
【0043】
ステップS6において、制御信号生成部32は、今回の調整処理が1回目の調整処理であるか判定する。1回目の調整処理であった場合(ステップS6のYES)、処理はステップS7に進む。
【0044】
ステップS7において、制御信号生成部32は、制御信号により、波形整形フィルタの時定数を1ステップ小さくする。その後、処理はステップS2に進み、波形整形フィルタに再び入力信号In(s)が入力される。
【0045】
一方、ステップS6において、今回の調整処理が1回目の調整処理でなかった場合(ステップS6のNO)、処理はステップS8に進む。
【0046】
ステップS8において、制御信号生成部32は、前回の調整処理において、比較部31がアンダーシュートを検出したか判定する。比較部31が、前回アンダーシュートを検出していた場合(ステップS8のYES)、処理はステップS7に進む。一方、比較部31が、前回アンダーシュートを検出していない場合(ステップS8のNO)、処理はステップS9に進む。
【0047】
ステップS9において、制御信号生成部32は、制御信号により、波形整形フィルタの時定数を1ステップ小さくする。その後、処理は終了する。
【0048】
図8は、波形整形フィルタの時定数が適切な時定数(ポール及びゼロ点の周波数が一致する時定数)τ
0より大きい場合の出力信号Out(s)の一例を示す図である。この波形整形フィルタに上述の調整処理を実行すると、比較部31が、アンダーシュートを検出し、
図8に示すように、検出信号を出力する(ステップS3のYES)。そして、検出信号を受信した制御信号生成部32は、波形整形フィルタの時定数を1ステップ小さくする(ステップS7)。
【0049】
図9は、
図8の波形整形フィルタに1回目の調整処理を実施後の出力信号Out(s)を示す図である。時定数が小さくなったことにより、出力信号Out(s)のアンダーシュートが抑制されたことがわかる。しかしながら、この出力信号Out(s)にはアンダーシュートが発生しているため、波形整形フィルタの時定数は、2回目の処理で、再び1ステップ小さくされる(ステップS7)。以降、出力信号Out(s)のアンダーシュートが検出されなくなるまで、上記の処理が繰り返される。
【0050】
図10は、調整処理の終了時点における出力信号Out(s)を示す図である。
図10に示すように、調整処理によって、波形整形フィルタの出力信号Out(s)は、第1検出レベルを超えるアンダーシュートがなく、かつ、パルス幅を狭められた信号となる。
【0051】
これは、
図11に示すように、調整処理によって、時定数τ
0より大きい波形整形フィルタの時定数は、ステップS7で1ステップずつ小さくされ、最終的に、時定数τ
0に最も近い時定数τ
1に設定されるためである。
【0052】
波形整形フィルタの時定数が時定数τ
0より小さい場合も同様である。
図12に示すように、調整処理によって、波形整形フィルタの時定数は、ステップS5で1ステップずつ大きくされ、アンダーシュートが検出されると(ステップS8のNO)、ステップS9で1ステップ小さくされる。最終的に、波形整形フィルタの時定数は、時定数τ
0に最も近い時定数τ
1に設定される。したがって、出力信号Out(s)は、第1検出レベルを超えるアンダーシュートがなく、かつ、パルス幅を狭められた信号となる。
【0053】
以上説明した通り、
図7の調整処理によれば、波形整形フィルタの時定数を、適切な時定数τ
0に最も近い時定数τ
1に設定される。したがって、波形整形フィルタの出力信号Out(s)を、第1検出レベルを超えるアンダーシュートがなく、かつ、パルス幅を狭められた信号とすることができる。
【0054】
なお、以上の説明では、調整処理は、終了条件(ステップS8のNO又はステップS4のYES)を満たすことにより終了したが、終了回数を予め設定されていてもよい。また、時定数の1ステップは、任意に設定可能であり、小さくするほど、τ
1をτ
0に近づけることができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る波形整形フィルタについて、
図13を参照して説明する。
図13は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。本実施形態において、比較部31は、比較器Com1を備える。また、制御信号生成部32は、ラッチLT1を備える。他の構成は、
図1と同様である。
【0056】
比較器Com1(第1の比較器)は、第1入力端子から出力信号Out(s)を入力され、第2入力端子から第1検出レベルを入力される。比較器Com1は、比較結果に応じた1又は0の信号を出力する。以下では、比較器Com1は、出力信号Out(s)が第1検出レベルより小さい場合(アンダーシュートを検出した場合)に1を出力し、出力信号Out(s)が第1検出レベルより大きい場合(アンダーシュートを検出していない場合)に0を出力するものとする。この場合、比較器Com1が出力した1が、
図8及び
図9に示した検出信号となる。比較器Com1の出力信号は、制御信号生成部32に入力される。
【0057】
ラッチLT1(第1の保持回路)は、比較器Com1から入力された検出結果を保持する。制御信号生成部32は、ラッチLT1に保持された検出結果に基づいて、制御信号を生成する。
【0058】
このような構成により、サンプリング回路などを利用せずにアンダーシュートを検出することができる。したがって、波形整形フィルタの回路規模を小さくすることができる。
【0059】
また、ラッチLT1で、検出結果を保持することにより、
図7のような調整処理が可能となる。
図7の調整処理を行う場合、調整処理を1回実行する毎に、ラッチLT1をリセットすればよい。
【0060】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る波形整形フィルタについて、
図14〜
図17を参照して説明する。
図14は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。本実施形態において、制御信号生成部32は、ラッチLT2と、制御信号演算部33と、を備える。他の構成は、
図13と同様である。
【0061】
ラッチLT2(第2の保持回路)は、ラッチLT1が保持した検出結果を入力され、1回前の調整処理における検出結果を保持する。すなわち、本実施形態では、
図7の調整処理における、今回の検出結果はラッチLT1が保持され、前回の検出結果はラッチLT2に保持される。
【0062】
制御信号演算部33は、ラッチLT1から今回の検出結果を入力され、ラッチLT2から前回の検出結果を入力される。制御信号演算部33は、入力された2つの検出結果に基づいて、制御信号を生成する。
【0063】
具体的には、制御信号演算部33は、前回アンダーシュートが検出され、今回もアンダーシュートが検出された場合、時定数を小さくする制御信号を生成する。また、制御信号演算部33は、前回アンダーシュートが検出されず、今回もアンダーシュートが検出されなかった場合、時定数を大きくする制御信号を生成する。さらに、制御信号演算部33は、前回アンダーシュートが検出されず、今回アンダーシュートが検出された場合、時定数を小さくする制御信号を生成するとともに、調整処理を終了する調整終了信号を生成する。そして、制御信号演算部33は、前回アンダーシュートが検出され、今回アンダーシュートが検出されなかった場合、調整終了信号を生成する。
【0064】
制御信号演算部33が生成した制御信号により、波形整形フィルタの時定数が制御され、
図7の調整処理が実現される。
【0065】
図15は、制御信号演算部33の一例を示す図である。
図15に示すように、制御信号演算部33は、論理回路L1〜L4と、カウンタCNTと、温度計コード変換器34と、調整終了信号生成部35と、を備える。以下では、ラッチLT1は、今回アンダーシュートが検出された場合に1を出力し、検出されなかった場合に0を出力するものとする。また、ラッチLT2は、前回アンダーシュートが検出された場合に1を出力し、検出されなかった場合に0を出力するものとする。
【0066】
論理回路L1〜L4は、ラッチLT1及びラッチLT2の出力信号を入力される。論理回路L1〜L4は、たとえば、NAND回路やインバータ回路により構成される。
【0067】
論理回路L1は、ラッチLT1から0を入力され、かつ、ラッチLT2から0を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L1は、今回も前回もアンダーシュートが検出されなかった場合、1を出力する。
【0068】
論理回路L2は、ラッチLT1から0を入力され、かつ、ラッチLT2から1を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L2は、今回アンダーシュートが検出されず、前回アンダーシュートが検出された場合、1を出力する。
【0069】
論理回路L3は、ラッチLT1から1を入力され、かつ、ラッチLT2から0を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L3は、今回アンダーシュートが検出され、前回アンダーシュートが検出されなかった場合、1を出力する。
【0070】
論理回路L4は、ラッチLT1から1を入力され、かつ、ラッチLT2から1を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L4は、今回も前回もアンダーシュートが検出された場合、1を出力する。
【0071】
カウンタCNTは、波形整形フィルタに設定する時定数に応じたカウント値を保持する。カウンタCNTは、論理回路L1〜L4の出力信号を入力される。カウンタCNTのカウント値は、論理回路L1〜L4の出力信号により制御される。
【0072】
具体的には、カウント値は、論理回路L1から1を入力されると、1増加する。これにより、波形整形フィルタの時定数が1ステップ大きくなる(ステップS5)。また、カウント値は、論理回路L2から1を入力されると、変化しない。さらに、カウント値は、論理回路L3から1を入力されると、1減少する。これにより、波形整形フィルタの時定数が1ステップ小さくなる(ステップS9)。またさらに、カウント値は、論理回路L4から1を入力されると、1減少する。これにより、波形整形フィルタの時定数が1ステップ小さくなる(ステップS7)。
【0073】
温度計コード変換器34は、カウンタCNTのカウント値を温度計コードに変換する。温度計コードに変換されたカウント値が制御信号となる。制御信号は、フィルタ段1,2に入力される。これにより、波形整形フィルタの時定数が制御される。
【0074】
調整終了信号生成部35は、論理回路L2,L3の出力信号を入力され、論理回路L2又は論理回路L3から1を入力された場合、調整終了信号を生成する。すなわち、調整終了信号生成部35は、終了条件(ステップS8のNO又はステップS4のYES)を満たした場合に調整終了信号を生成する。調整終了信号生成部35が生成した調整終了信号は、調整処理を制御する外部装置(波形整形フィルタを搭載した装置)に入力され、
図7の調整処理を終了させる。調整終了信号生成部35は、例えば、OR回路により構成される。
【0075】
図16は、フィルタ段1,2が備える時定数調整回路の一例を示す図である。
図16の時定数調整回路は、並列に接続されたM+1個の抵抗R0〜RMと、抵抗R1〜RMをそれぞれ接続又は開放するM個のスイッチSWR1〜SWRMと、を備える。時定数は抵抗値に依存するため、制御部3は、制御信号によってスイッチSWR1〜SWRMの開閉を制御することにより、フィルタ段1,2の時定数を調整することができる。例えば、フィルタ段1,2がRC回路である場合、制御部3は、時定数調整回路の抵抗値を大きく(小さく)することで、波形整形フィルタの時定数を大きく(小さく)することができる。
【0076】
図17は、フィルタ段1,2が備える時定数調整回路の他の例を示す図である。
図17の時定数調整回路は、並列に接続されたM+1個の容量C0〜CMと、容量C1〜CMをそれぞれ接続又は開放するM個のスイッチSWC1〜SWCMと、を備える。時定数は容量値に依存するため、制御部3は、制御信号によってスイッチSWC1〜SWCMの開閉を制御することにより、フィルタ段1,2の時定数を調整することができる。例えば、フィルタ段1,2がRC回路である場合、制御部3は、時定数調整回路の容量値を大きく(小さく)することで、波形整形フィルタの時定数を大きく(小さく)することができる。
【0077】
このような構成により、サンプリング回路などを利用せずにアンダーシュートを検出することができる。したがって、波形整形フィルタの回路規模を小さくすることができる。
【0078】
また、ラッチLT1,LT2で検出結果を保持することにより、
図7のような調整処理が可能となる。
図7の調整処理を行う場合、調整処理を1回実行する毎に、ラッチLT1をリセットすればよい。
【0079】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る波形整形フィルタについて、
図18を参照して説明する。
図18は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。本実施形態において、比較部31は、カウンタCNT1と、第2比較器Com2と、カウンタCNT2と、判定部36と、を備える。他の構成は、
図1と同様である。
【0080】
カウンタCNT1(第1のカウンタ)は、第1比較器Com1がアンダーシュートを検出した回数をカウントする。カウンタCNT1のカウント値cnt1は、調整処理が1回行われる毎にリセットされる。すなわち、カウンタCNT1は、1回の調整処理で検出されたアンダーシュートの回数をカウントする。カウンタCNT1のカウント値cnt1は、判定部36に入力される。
【0081】
第2比較器Com2は、第1入力端子から出力信号Out(s)を入力され、第2入力端子から第2検出レベルを入力される。第2検出レベルは、上述の通り、入力信号In(s)の到来を検出するための閾値である。第2比較器Com2は、比較結果に応じた1又は0の信号を出力する。以下では、第2比較器Com2は、出力信号Out(s)が第2検出レベルより大きい場合(入力信号In(s)の到来を検出した場合)に1を出力し、出力信号Out(s)が第2検出レベルより小さい場合(入力信号In(s)の到来を検出していない場合)に0を出力するものとする。第2比較器Com2の出力信号は、カウンタCNT2に入力される。
【0082】
カウンタCNT2(第2のカウンタ)は、第2比較器Com2が入力信号In(s)の到来を検出した回数をカウントする。カウンタCNT2のカウント値cnt2は、調整処理が1回行われる毎にリセットされる。すなわち、カウンタCNT2は、1回の調整処理の間に入力された入力信号In(s)の回数をカウントする。カウンタCNT2のカウント値cnt2は、判定部36に入力される。
【0083】
判定部36は、カウンタCNT1のカウント値cnt1と、カウンタCNT2のカウント値cnt2と、を入力される。判定部35は、カウント値cnt1とカウント値cnt2との比(cnt1/cnt2)を計算し、所定の閾値と比較する。判定部36は、比較結果に応じた1又は0の信号を出力する。以下では、判定部1は、cnt1/cnt2が閾値より大きい場合に1を出力し、cnt1/cnt2が閾値より小さい場合に0を出力するものとする。本実施形態では、判定部36が出力した1が、
図8及び
図9に示した検出信号となる。判定部36の出力信号は、制御信号生成部32に入力される。
【0084】
上述の実施形態では、ステップS2の所定期間の間に1度でもアンダーシュートが検出されると、時定数が大きいと判定され、制御部3により時定数が1ステップ小さく設定された。この調整処理では、出力信号Out(s)にアンダーシュートが確実に発生しないように、時定数は調整される。これにより、出力信号Out(s)のアンダーシュートに起因して、入力信号In(s)を検出できなくなることを防ぐことができる。
【0085】
しかしながら、アンダーシュートが確実に発生しないように時定数を調整すると、出力信号Out(s)のパルス幅を十分に狭められず、結果として、入力信号In(s)の検出精度が低下する恐れがある(
図6参照)。
【0086】
そこで、本実施形態では、cnt1/cnt2が閾値より小さい場合、アンダーシュートは検出されなかったものとみなして、時定数を制御する。これにより、時定数の調整後の出力信号Out(s)には、わずかにアンダーシュートが発生する。このように、出力信号Out(s)のアンダーシュートを許容することにより、出力信号Out(s)のパルス幅を狭め、入力信号In(s)の検出精度を向上させることができる。
【0087】
なお、上記の閾値は、1/10や1/100など、任意に設定可能である。閾値を小さくするほど、アンダーシュートが抑制され、閾値を大きくするほど、パルス幅が狭められる。閾値は、要求される入力信号In(s)の検出精度や、入力信号In(s)の性質に応じて設定すればよい。
【0088】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る波形整形フィルタについて、
図19〜
図24を参照して説明する。
図19は、本実施形態に係る波形整形フィルタを示す図である。本実施形態において、波形整形フィルタは、増幅回路4と、利得制御部5と、を備える。他の構成は、
図1と同様である。
【0089】
増幅回路4は、加算部23と、出力端子Outputと、の間に接続され、フィルタ段2の出力信号を増幅する。
図19の例では、増幅回路4の出力信号が、波形整形フィルタの出力信号Out(s)となる。
【0090】
利得制御部5は、出力信号Out(s)に基づいて、増幅回路4の利得を制御する。
図19に示すように、利得制御部5は、振幅比較部51と、利得制御信号生成部52と、を備える。
【0091】
振幅比較部51は、出力信号Out(s)を入力される。比較部51は、出力信号Out(s)と第3検出レベルとを比較する。第3検出レベルは、出力信号Out(s)の振幅を所定の範囲内に設定するための閾値である。以下では、第3検出レベルが振幅の上限値である場合について説明するが、第3検出レベルは振幅の下限値であってもよい。第3検出レベルとして上限値を設定するか下限値を設定するかは、入力信号In(s)の向き(符号)によって決まる。振幅比較部51は、出力信号Out(s)と第3検出レベルとの比較結果、すなわち、出力信号Out(s)による第3検出レベルの超過の検出結果を、利得制御信号生成部52に入力する。
【0092】
利得制御信号生成部52は、振幅比較部31から入力された検出結果に基づいて、増幅回路4の利得を制御する制御信号を生成し、増幅回路4に入力する。利得制御部5は、この制御信号により、増幅回路4の利得を制御する。具体的には、利得制御信号生成部52は、超過が検出されていない(出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルより小さい)場合、増幅回路4の利得を大きくし、超過が検出されている(出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルより大きい)場合、増幅回路4の利得を小さくする。これにより、出力信号Out(s)の振幅を第3検出レベルより小さい範囲に設定することができる。
【0093】
次に、増幅回路4の利得の調整処理について、
図20〜
図24を参照して具体的に説明する。
図20は、利得の調整処理の一例を示すフローチャートである。利得の調整処理は、時定数の調整処理の終了後に行われる。
図20の調整処理では、所定の終了条件を満たすまで、調整処理が繰り返し実行される。
【0094】
まず、ステップS11において、利得制御部5は、増幅回路4の利得を初期値に設定する。初期値は、任意に設定可能であり、例えば、ノミナル値である。
【0095】
次に、ステップS12において、波形整形フィルタに入力信号In(s)を所定期間入力する。所定期間の間に、複数の入力信号In(s)が入力され、各入力信号In(s)に応じた出力信号Out(s)が出力される。振幅比較部51は、各出力信号Out(s)を第3検出レベルと比較し、比較結果(検出結果)を利得制御信号生成部52に入力する。
【0096】
所定期間の経過後、ステップS13において、利得制御信号生成部52は、所定期間の間に超過が検出されたか、すなわち、出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルを超過したか判定する。
【0097】
超過が検出されていない、すなわち、所定期間の間に出力された全ての出力信号Out(s)の振幅が第3検出レベルより小さい場合(ステップS13のNO)、処理はステップS14に進む。
【0098】
ステップS14において、利得制御信号生成部52は、前回の調整処理において、超過が検出されたか判定する。前回の調整処理において超過が検出されていた場合(ステップS14のYES)、処理は終了する。一方、前回の調整処理において超過が検出されていない場合(ステップS14のNO)、処理はステップS15に進む。前回の調整処理において超過が検出されていない場合には、調整処理が1回目の場合も含まれる。
【0099】
ステップS15において、利得制御信号生成部52は、制御信号により、増幅回路4の利得を1ステップ大きくする。その後、処理はステップS12に進み、波形整形フィルタに再び入力信号In(s)が入力される。
【0100】
一方、ステップS13において、超過が検出された、すなわち、所定期間の間に出力された出力信号Out(s)の少なくとも1つの振幅が第3検出レベルを超過していた場合(ステップS13のYES)、処理はステップS16に進む。
【0101】
ステップS16において、利得制御信号生成部52は、今回の調整処理が1回目の調整処理であるか判定する。1回目の調整処理であった場合(ステップS16のYES)、処理はステップS17に進む。
【0102】
ステップS17において、利得制御信号生成部52は、制御信号により、増幅回路4の利得を1ステップ小さくする。その後、処理はステップS12に進み、波形整形フィルタに再び入力信号In(s)が入力される。
【0103】
一方、ステップS16において、今回の調整処理が1回目の調整処理でなかった場合(ステップS16のNO)、処理はステップS18に進む。
【0104】
ステップS18において、利得制御信号生成部52は、前回の調整処理において、超過が検出されたか判定する。前回の調整処理において超過が検出されていた場合(ステップS18のYES)、処理はステップS17に進む。一方、前回の調整処理において超過が検出されていない場合(ステップS18のNO)、処理はステップS19に進む。
【0105】
ステップS19において、利得制御信号生成部52は、制御信号により、増幅回路4の利得を1ステップ小さくする。その後、処理は終了する。
【0106】
図21は、出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルより大きい場合の出力信号Out(s)の一例を示す図である。この波形整形フィルタに上述の調整処理を実行すると、振幅比較部51が、出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルを超過したことを検出し、
図21に示すように、検出信号を出力する(ステップS13のYES)。そして、検出信号を受信した利得制御信号生成部52は、増幅回路4の利得を1ステップ小さくする(ステップS17)。
【0107】
図22は、調整処理の終了時点における出力信号Out(s)を示す図である。
図22に示すように、調整処理によって、波形整形フィルタの出力信号Out(s)の最大振幅は、第3検出レベルより小さい範囲で最大となる。
【0108】
これは、最大振幅が第3検出レベルより大きい場合、ステップS17で利得が1ステップずつ小さくされ、最終的に、最大振幅が第3検出レベルより小さく、かつ、最大振幅が第3検出レベルに最も近い利得に設定されるためである。
【0109】
最大振幅が第3検出レベルより小さい場合も同様である。調整処理によって、増幅回路4の利得は、ステップS15で1ステップずつ大きくされ、最大振幅が第3検出レベルより大きくなると(ステップS18のNO)、ステップS19で利得が1ステップ小さくされる。最終的に、増幅回路4の利得は、最大振幅が第3検出レベルより小さく、かつ、最大振幅が第3検出レベルに最も近い利得に設定される。したがって、出力信号Out(s)の最大振幅は、第3検出レベルより小さい範囲で最大となる。
【0110】
以上説明した通り、
図22の調整処理によれば、増幅回路4の利得を、出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルと略一致するように設定することができる。したがって、波形整形フィルタの後段の回路(AD変換器など)の入力範囲の上限値を第3検出レベルに設定することにより、出力信号Out(s)を後段の回路の入力範囲内の振幅に調整することができる。
【0111】
なお、以上の説明では、調整処理は、終了条件(ステップS18のNO又はステップS14のYES)を満たすことにより終了したが、終了回数を予め設定されていてもよい。また、利得の1ステップは、任意に設定可能であり、小さくするほど、最大振幅を第3検出レベルに近づけることができる。
【0112】
ここで、
図23は、利得制御部5の一例を示す図である。
図23において、振幅比較部51は、比較器Com3を備える。また、利得制御信号生成部52は、ラッチLT3と、ラッチLT4と、利得制御信号演算部53と、を備える。他の構成は、
図19と同様である。
【0113】
比較器Com3(第2の比較器)は、第1入力端子から出力信号Out(s)を入力され、第2入力端子から第3検出レベルを入力される。比較器Com3は、比較結果に応じた1又は0の信号を出力する。以下では、比較器Com3は、出力信号Out(s)が第3検出レベルより大きい(超過を検出した)場合に1を出力し、出力信号Out(s)が第3検出レベルより小さい(超過を検出していない)場合に0を出力するものとする。この場合、比較器Com3が出力した1が、
図21に示した検出信号となる。比較器Com3の出力信号は、利得制御信号生成部52に入力される。
【0114】
ラッチLT3(第3の保持回路)は、比較器Com3の出力信号を入力され、今回の調整処理における検出結果を保持する。
【0115】
ラッチLT4(第4の保持回路)は、ラッチLT3が保持した検出結果を入力され、1回前の調整処理における検出結果を保持する。
【0116】
利得制御信号演算部53は、ラッチLT3から今回の検出結果を入力され、ラッチLT4から前回の検出結果を入力される。利得制御信号演算部33は、入力された2つの検出結果に基づいて、制御信号を生成する。
【0117】
具体的には、利得制御信号演算部53は、前回超過が検出され、今回も超過が検出された場合、利得を小さくする制御信号を生成する。また、利得制御信号演算部53は、前回超過が検出されず、今回も超過が検出されなかった場合、利得を大きくする制御信号を生成する。さらに、利得制御信号演算部53は、前回超過が検出されず、今回超過が検出された場合、利得を小さくする制御信号を生成するとともに、調整処理を終了する利得調整終了信号を生成する。そして、利得制御信号演算部53は、前回超過が検出され、今回超過が検出されなかった場合、利得調整終了信号を生成する。
【0118】
利得制御信号演算部53が生成した制御信号により、増幅回路4の利得が制御され、
図20の調整処理が実現される。
【0119】
図24は、利得制御信号演算部53の一例を示す図である。
図24に示すように、利得制御信号演算部53は、論理回路L5〜L8と、カウンタCNTと、温度計コード変換器54と、利得調整終了信号生成部55と、を備える。以下では、ラッチLT3は、今回超過が検出された場合に1を出力し、検出されなかった場合に0を出力するものとする。また、ラッチLT4は、前回超過が検出された場合に1を出力し、検出されなかった場合に0を出力するものとする。
【0120】
論理回路L5〜L8は、ラッチLT3及びラッチLT4の出力信号を入力される。論理回路L5〜L8は、たとえば、NAND回路やインバータ回路により構成される。
【0121】
論理回路L5は、ラッチLT3から0を入力され、かつ、ラッチLT4から0を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L5は、今回も前回も超過が検出されなかった場合、1を出力する。
【0122】
論理回路L6は、ラッチLT3から0を入力され、かつ、ラッチLT4から1を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L6は、今回超過が検出されず、前回超過が検出された場合、1を出力する。
【0123】
論理回路L7は、ラッチLT3から1を入力され、かつ、ラッチLT4から0を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L7は、今回超過が検出され、前回超過が検出されなかった場合、1を出力する。
【0124】
論理回路L8は、ラッチLT3から1を入力され、かつ、ラッチLT4から1を入力された場合、1を出力し、それ以外の場合0を出力する。すなわち、論理回路L8は、今回も前回も超過が検出された場合、1を出力する。
【0125】
カウンタCNTは、増幅回路4に設定する利得に応じたカウント値を保持する。カウンタCNTは、論理回路L5〜L8の出力信号を入力される。カウンタCNTのカウント値は、論理回路L5〜L8の出力信号により制御される。
【0126】
具体的には、カウント値は、論理回路L5から1を入力されると、1増加する。これにより、増幅回路4の利得が1ステップ大きくなる(ステップS15)。また、カウント値は、論理回路L6から1を入力されると、変化しない。さらに、カウント値は、論理回路L7から1を入力されると、1減少する。これにより、増幅回路4の利得が1ステップ小さくなる(ステップS19)。またさらに、カウント値は、論理回路L8から1を入力されると、1減少する。これにより、増幅回路4の利得が1ステップ小さくなる(ステップS17)。
【0127】
温度計コード変換器54は、カウンタCNTのカウント値を温度計コードに変換する。温度計コードに変換されたカウント値が制御信号となる。制御信号は、増幅回路4に入力される。これにより、増幅回路4の利得が制御される。
【0128】
利得調整終了信号生成部55は、論理回路L6,L7の出力信号を入力され、論理回路L6又は論理回路L7から1を入力された場合、利得調整終了信号を生成する。すなわち、利得調整終了信号生成部55は、終了条件(ステップS18のNO又はステップS14のYES)を満たした場合に利得調整終了信号を生成する。利得調整終了信号生成部55が生成した利得調整終了信号は、利得の調整処理を制御する外部装置(波形整形フィルタを搭載した装置)に入力され、
図20の調整処理を終了させる。利得調整終了信号生成部55は、例えば、OR回路により構成される。
【0129】
このような構成により、出力信号Out(s)の最大振幅が第3検出レベルと略一致するように設定することができる。したがって、波形整形フィルタの後段の回路(AD変換器など)の入力範囲の上限値を第3検出レベルに設定することにより、出力信号Out(s)を後段の回路の入力範囲内の振幅に調整することができる。
【0130】
なお、以上の説明において、増幅回路4は、フィルタ段2の後段に接続されたが、フィルタ段1とフィルタ段2との間に接続されてもよいし、フィルタ段1に含まれてもよいし、フィルタ段2に含まれてもよい。
【0131】
また、第1検出レベル、第2検出レベル、及び第3検出レベルは、増幅回路4の負入力端子の電圧に基づいて設定されるのが好ましい。増幅回路4の負入力端子の電圧は、無信号時(入力信号In(s)が到来していないとき)の電圧となるため、これを基準に各検出レベルを設定することにより、素子ばらつきの影響を低減することができる。
【0132】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る波形整形フィルタについて、
図25〜
図34を参照して説明する。本実施形態では、波形整形フィルタのフィルタ段1,2として利用されるフィルタ回路の具体例について説明する。
【0133】
図25は、フィルタ回路の第1の実施例を示す図である。
図25のフィルタ回路は、電圧電流変換増幅器Gmと、低域通過フィルタLPFと、電流源ILSと、を備える。
【0134】
入力端子は、ノードN
1に接続されている。入力端子からは、入力信号として、入力電流Isingal(s)が入力される。入力端子は、出力端子としても機能し、入力端子の電圧がこのフィルタ回路の出力信号となる。
【0135】
電圧電流変換増幅器Gmは、出力端子をノードN
1に接続され、負入力端子をノードN
2に接続され、正入力端子を電源線に接続されている。ノードN
1は、フィルタ回路の入力端子に接続される。フィルタ回路の入力端子からは、入力信号として、電流Isignal(s)が入力される。また、フィルタ回路の入力端子は、フィルタ回路の出力端子としても利用される。フィルタ回路の出力信号として、フィルタ回路の入力端子の電圧Vout(s)が出力される。
図25において、電圧電流変換増幅器Gmは、トランジスタM4により構成されている。
【0136】
トランジスタM4は、PチャネルMOSトランジスタ(以下、「PMOS」という)であり、ドレイン端子をノードN
1に接続され、ゲート端子をノードN
2に接続され、ソース端子を電源線に接続されている。トランジスタM4のドレイン端子、ゲート端子、及びソース端子は、電圧電流変換増幅器Gmの出力端子、負入力端子、及び正入力端子としてそれぞれ機能する。
【0137】
低域通過フィルタLPFは、入力端子をノードN
1に接続され、出力端子をノードN
2に接続されている。
図25において、低域通過フィルタLPFは、抵抗R3と、抵抗Rdcと、容量C3aと、容量C3bと、を備える。
【0138】
抵抗R3は、一端をノードN
1に接続され、他端をノードN
2に接続されている。
【0139】
抵抗Rdcは、一端をノードN
2に接続され、他端をノードN
3に接続されている。
【0140】
容量C3aは、一端をノードN
2に接続され、他端をノードN
3に接続されている。
【0141】
容量C3bは、一端をノードN
3に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0142】
電流源ILSは、定電流源であり、一端をノードN
2に、他端を電源線に接続されている。
【0143】
ここで、
図25のフィルタ回路の動作について説明する。以下では、低域通過フィルタLPFの伝達関数をHLPF(s)、電圧電流変換増幅器Gmの電圧電流変換係数をGmとする。また、HLPF(s)=1/(1+sτ)とする。τは、低域通過フィルタLPFの時定数であり、τ=C3×R3である。ただし、C3=C3a×C3b/(C3a+C3b)である。このとき、出力電圧Vout(s)は以下のように表される。
【0145】
式(2)からわかるように、
図25のフィルタ回路により、ゼロ点を1つ有するフィルタ特性を実現できる。このフィルタ回路の時定数を可変にする場合、抵抗R3の代わりに
図16の時定数調整回路を接続したり、容量C3a,C3bの代わりに
図17の時定数調整回路を接続したりすればよい。
【0146】
また、ノードN
3の電圧V
CRは、第1検出レベルとして利用できる。電圧V
CRは、ノードN
2(電圧電流変換増幅器Gmの負入力端子)の電圧に基づいて、抵抗Rdc,R3と、容量C3a,C3bと、電流源ILSにより設定される。
【0147】
具体的には、電圧V
CRの直流成分は、ノードN
2の電圧をILS×R3だけシフトした電圧となり、交流成分は、ノードN
2の電圧を容量C3aと容量C3bとで分圧した電圧となる。
【0148】
なお、式(2)に示すように、
図25のフィルタ回路は、入力電流Isignal(s)を1/Gm倍した比例信号と、微分成分Isignal(s)×sをτ/Gm倍した微分信号と、を加算した出力電圧Vout(s)を出力する。すなわち、
図25のフィルタ回路により、微分信号生成部、比例信号生成部、及び加算部の機能が実現されている。
【0149】
図26は、
図25のフィルタ回路の変形例である。
図26において、電流源ILSは、一端をノードN
3に接続され、他端を電源線に接続されている。他の構成は
図25と同様である。
図26のフィルタ回路では、電圧V
CR(第1検出レベル)の直流成分は、ノードN
2の電圧をILS×(R3+Rdc)だけシフトした電圧となる。
【0150】
図27は、
図25のフィルタ回路の変形例である。
図27のフィルタ回路は、容量C3a,C3bの代わりに、容量C3,Cdcを備える。他の構成は、
図25と同様である。
【0151】
容量C3は、一端をノードN
2に接続され、他端を接地線に接続されている。容量C3は、
図25の容量C3aと容量C3bと、からなる直列容量に相当する。つまり、C3=C3a×C3b/(C3a+C3b)である。また、容量Cdcは、一端をノードN
3に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0152】
図27において、抵抗Rdcの抵抗値Rdcは十分大きいものとする。ノードN
3の電圧V
CRは、第1検出レベルとして利用できる。電圧V
CRは、ノードN
2(電圧電流変換増幅器Gmの負入力端子)の電圧に基づいて、抵抗Rdc、R3と、容量Cdcと、電流源ILSと、により設定される。
【0153】
具体的には、電圧V
CRの直流成分は、ノードN
2の電圧をILS×R3だけシフトした電圧となり、交流成分は、ノードN
2の電圧を抵抗Rdcと容量Cdcとで構成する低域通過フィルタLPFを通した電圧となる。
【0154】
図28は、フィルタ回路の第2の実施例を示す図である。
図28のフィルタ回路は、増幅器A4と、低域通過フィルタLPFと、電流源ILSと、を備える
【0155】
入力端子は、増幅器A4の正入力端子に接続されている。入力端子からは、入力信号として、入力電圧Vsignal(s)が印加される。
【0156】
出力端子は、ノードN
4に接続されている。出力端子の電圧Vout(s)がこのフィルタ回路の出力信号となる。
【0157】
増幅器A4は、正入力端子をフィルタ回路の入力端子に接続され、出力端子をノードN
4に接続され、負入力端子をノードN
5に接続されている。フィルタ回路の入力端子からは、入力信号として、電圧Vsignal(s)が印加される。また、ノードN
4は、フィルタ回路の出力端子に接続される。フィルタ回路の出力信号として、ノードN
4の電圧Vout(s)が出力される。
【0158】
低域通過フィルタLPFは、入力端子をノードN
4に接続され、出力端子をノードN
5に接続されている。
図28において、低域通過フィルタLPFは、抵抗R5と、抵抗Rdcと、容量C5aと、容量C5bと、を備える。
【0159】
抵抗R5は、一端をノードN
4に接続され、他端をノードN
5に接続されている。
【0160】
抵抗Rdcは、一端をノードN
5に接続され、他端をノードN
6に接続されている。
【0161】
容量C5aは、一端をノードN
5に接続され、他端をノードN
6に接続されている。
【0162】
容量C5bは、一端をノードN
6に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0163】
電流源ILSは、定電流源であり、一端をノードN
5に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0164】
ここで、
図28のフィルタ回路の動作について説明する。以下では、増幅器A4の利得は十分大きく、抵抗Rdcの抵抗値Rdcも十分大きいものとする。また、低域通過フィルタLPFの伝達関数をHLPF(s)=1/(1+sτ)とする。τは、低域通過フィルタLPFの時定数であり、τ=C5×R5である。ただし、C5=C5a×C5b/(C5a+C5b)である。このとき、出力電圧Vout(s)は以下のように表される。
【0166】
式(3)からわかるように、
図28のフィルタ回路により、ゼロ点を1つ有するフィルタ特性を実現できる。このフィルタ回路の時定数を可変にする場合、抵抗R5の代わりに
図16の時定数調整回路を接続したり、容量C5a,C5bの代わりに
図17の時定数調整回路を接続したりすればよい。
【0167】
また、ノードN
6の電圧V
CRは、第1検出レベルとして利用できる。電圧V
CRは、ノードN
5(増幅器A4の負入力端子)の電圧に基づいて、抵抗Rdc,R5と、容量C5a,C5bと、電流源ILSにより設定される。
【0168】
具体的には、電圧V
CRの直流成分は、ノードN
5の電圧をILS×R5だけシフトした電圧となり、交流成分は、ノードN
5の電圧を容量C5aと容量C5bとで分圧した電圧となる。
【0169】
なお、式(3)に示すように、
図28のフィルタ回路は、入力電圧Vsignal(s)を1倍した比例信号と、微分成分Vsignal×sをC5×R5倍した微分信号と、を加算した出力電圧Vout(s)を出力する。すなわち、
図28のフィルタ回路により、微分信号生成部、比例信号生成部、及び加算部の機能が実現されている。
【0170】
図26の場合と同様、電流源ILSの位置を変更し、電流源ILSをノードN
6と接地線との間に接続してもよい。このとき、電圧V
CR(第1検出レベル)の直流成分は、ノードN
5の電圧をILS×(R5+Rdc)だけシフトした電圧となる。
【0171】
図29は、
図28のフィルタ回路の変形例である。
図29のフィルタ回路は、容量C5a,C5bの代わりに、容量C5,Cdcを備える。他の構成は、
図28と同様である。
【0172】
容量C5は、一端をノードN
5に接続され、他端を接地線に接続されている。容量C5は、
図28の容量C5aとC5bとからなる直列容量に相当する。つまり、C5=C5a×C5b/(C5a+C5b)である。また、容量Cdcは、一端をノードN
6に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0173】
図29において、抵抗Rdcの抵抗値Rdcは十分大きいものとする。ノードN
6の電圧V
CRは、第1検出レベルとして利用できる。電圧V
CRは、ノードN
5(電圧電流変換増幅器Gmの負入力端子)の電圧に基づいて、抵抗Rdc、R5と、容量Cdcと、電流源ILSと、により設定される。
【0174】
具体的には、電圧V
CRの直流成分は、ノードN
5の電圧をILS×R5だけシフトした電圧となり、交流成分は、ノードN
5の電圧を抵抗Rdcと容量Cdcとで構成する低域通過フィルタを通した電圧となる。
【0175】
図30は、フィルタ回路の第3の実施例を示す図である。
図30のフィルタ回路は、増幅器A3と、抵抗R4と、容量C4と、抵抗R5と、電流源ILSと、を備える
【0176】
増幅器A3は、出力端子をノードN
8に接続され、正入力端子からバイアス電圧Vcを印加され、負入力端子をノードN
9に接続されている。ノードN
8は、フィルタ回路の出力端子に接続される。フィルタ回路の出力信号として、ノードN
8の電圧Vout(s)が出力される。
【0177】
抵抗R4は、一端をノードN
7に接続され、他端をノードN
9に接続されている。ノードN7は、フィルタ回路の入力端子に接続される。フィルタ回路の入力端子からは、入力信号として、電圧Vsignal(s)が印加される。
【0178】
容量C4は、一端をノードN
7に接続され、他端をノードN
9に接続されている。
【0179】
抵抗R5は、一端をノードN
8に接続され、他端をノードN
9に接続されている。
【0180】
電流源ILSは、定電流源であり、一端をノードN
9に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0181】
ここで、
図30のフィルタ回路の動作について説明する。以下では、増幅器A3の利得は十分大きいものとする。このとき、出力電圧Vout(s)は以下のように表される。
【0183】
式(4)からわかるように、
図30のフィルタ回路により、ゼロ点を1つ有するフィルタ特性を実現できる。このフィルタ回路の時定数はC4×R4となる。このフィルタ回路の時定数を可変にする場合、抵抗R4の代わりに
図16の時定数調整回路を接続したり、容量C4の代わりに
図17の時定数調整回路を接続したりすればよい。
【0184】
また、ノードN
9(増幅器A3の負入力端子)の電圧V
CRは、第1検出レベルとして利用できる。電圧V
CRは、ノードN
8(増幅器A3の出力端子)の電圧に基づいて、抵抗R5と、電流源ILSにより設定される。具体的には、電圧V
CRは、ノードN
8の電圧をILS×R5だけシフトした電圧となる。なお、
図30のフィルタ回路では、仮想接地により、増幅器A3の負入力端子の電圧と正入力端子の電圧とは略等しくなるため、増幅器A3の正入力端子の電圧(バイアス電圧Vc)を第1検出レベルとして利用してもよい。
【0185】
なお、式(4)に示すように、
図30のフィルタ回路は、入力電圧Vsignal(s)をR5/R4倍した比例信号と、微分成分Vsignal×sをC4×R5倍した微分信号と、を加算した出力電圧Vout(s)を出力する。すなわち、
図30のフィルタ回路により、微分信号生成部、比例信号生成部、及び加算部の機能が実現されている。
【0186】
図31は、
図30のフィルタ回路の変形例である。
図31のフィルタ回路は、抵抗RLSを備える。抵抗RLSは、一端をノードN
9に接続され、他端をノードN
10に接続されている。電流源ILSは、一端をノードN
10に接続され、他端を接地線に接続されている。他の構成は、
図30と同様である。
【0187】
図31のフィルタ回路では、ノードN
10の電圧V
CRを、第1検出レベルとして利用してもよい。このとき、電圧V
CRは、ノードN
9(増幅器A3の負入力端子)の電圧を、ILS×Rdcだけシフトした電圧となる。
【0188】
図32は、フィルタ回路の第4の実施例を示す図である。
図32のフィルタ回路は、抵抗Rgainと、電流源ILS2と、を備える。抵抗Rgainは、一端をノードN
9に接続され、他端をノードN
11に接続されている。電流源Rgainは、定電流源であり、一端をノードN
11に接続され、他端を電源線に接続されている。他の構成は、
図30と同様である。
【0189】
図32のフィルタ回路では、ノードN
11の電圧Vgainは、第3検出レベルとして利用できる。電圧Vgainは、ノードN
9(増幅器A3の負入力端子)の電圧に基づいて、抵抗Rgain及び電流源ILS2により設定される。具体的には、電圧Vgainは、ノードN
9の電圧をILS2×Rgainだけシフトした電圧となる。
【0190】
図33は、フィルタ回路の第5の実施例を示す図である。
図33のフィルタ回路は、フィルタ段1と、フィルタ段2と、を備える。各フィルタ段は、いずれも
図30のフィルタ回路である。
【0191】
フィルタ段1は、増幅器A3a、抵抗R4a、容量C4a、及び抵抗R5aを備える。フィルタ段1の各構成は、
図30のフィルタ回路の増幅器A3、抵抗R4、容量C4、及び抵抗R5と、それぞれ対応する。
【0192】
フィルタ段2は、増幅器A3b、抵抗R4b、容量C4b、抵抗R5b、及び電流源ILSを備える。フィルタ段2の各構成は、
図30のフィルタ回路の増幅器A3、抵抗R4、容量C4、抵抗R5、及び電流源ILSと、それぞれ対応する。
【0193】
ここで、
図33のフィルタ回路の動作について説明する。以下では、
図33のフィルタ回路の入力信号を電圧Vsignal(s)、出力信号を電圧Vout(s)とする。また、増幅器A3a,A3bの利得が十分大きいものとする。このとき、出力電圧Vout(s)は、以下のように表される。
【0195】
式(5)からわかるように、
図33のフィルタ回路により、ゼロ点を2つ有するフィルタ特性を実現できる。このフィルタ回路の時定数は、C4a×R4a及びC4b×R4bとなる。このフィルタ回路の時定数を可変にする場合、抵抗R4a,R4bの代わりに
図16の時定数調整回路を接続したり、容量C4a,C4bの代わりに
図17の時定数調整回路を接続したりすればよい。
【0196】
また、
図30のフィルタ回路と同様、増幅器A3bの負入力端子の電圧や、正入力端子の電圧Vcを、第1検出レベルとして利用できる。
【0197】
図34は、フィルタ回路の第6の実施例を示す図である。
図34のフィルタ回路は、フィルタ段1と、フィルタ段2と、電流電圧変換回路Gmと、抵抗Rdcと、電流源ILSと、抵抗Rgainと、電流源ILS2と、を備える。
【0198】
フィルタ段1は、抵抗R1と、トランジスタM1と、反転増幅器A1と、容量C1と、抵抗R1aと、を備える。
【0199】
抵抗R1は、一端をノードN
12に接続され、他端をノードN
13に接続されている。ノードN
13は、フィルタ段1(フィルタ回路)の入力端子に接続される。フィルタ回路の入力端子からは、入力信号として、電流Isignal(s)が入力される。入力電流Isignal(s)は、抵抗R1によって電圧に変換される。
【0200】
トランジスタM1は、NチャネルMOSトランジスタ(以下、「NMOS」という)であり、ソース端子をノードN
12に接続され、ゲート端子を反転増幅器A1の出力端子に接続され、ドレイン端子をノードN
14に接続されている。ノードN
14は、フィルタ段1の出力端子となる。フィルタ段1の出力端子からは、出力信号として、トランジスタM1のドレイン電流I1(s)が出力される。
【0201】
反転増幅器A1は、負入力端子をノードN
13に接続され、出力端子をトランジスタM1のゲート端子に接続されている。
【0202】
容量C1は、一端をノードN
12に接続され、他端を抵抗R1aの一端に接続されている。
【0203】
抵抗R1aは、一端を容量C1の他端に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0204】
フィルタ段1は、反転増幅器A1の出力が、トランジスタM1及び抵抗R1を介して反転増幅器A1の入力に帰還される構成となっているため、反転増幅器A1の負入力端子は仮想接地点となり、フィルタ段1の入力端子(ノードN
13)からみた入力インピーダンスは、(1+gm1×R1)/{gm1×(1+A1)}となる。gm1は、トランジスタM1のトランスコンダクタンス、A1は反転増幅器A1の利得である。一般に、A1は非常に大きいため、上記の入力インピーダンスは非常に小さくなり、反転増幅器A1の入力電圧は略一定となる。
【0205】
このため、トランジスタM1のソース端子の電圧は、Isingal(s)×R1となり、容量C1に流れる電流は、Isignal×sC1×R1/(1+sC1×R1a)となる。トランジスタM1のドレイン電流I1(s)は、容量C1に流れる電流と、電流Isignal(s)と、の和となり、以下のように表される。
【0207】
式(6)からわかるように、
図34のフィルタ段1により、ゼロ点を1つ有するフィルタ特性を実現できる。フィルタ段1の時定数は、C1×(R1+R1a)となる。このフィルタ段1の時定数を可変にする場合、抵抗R1,R1aの代わりに
図16の時定数調整回路を接続したり、容量C1の代わりに
図17の時定数調整回路を接続したりすればよい。
【0208】
また、
図34の例では、抵抗R1にかかる電圧を低減し、より低い電源電圧でもフィルタ回路が動作するように、抵抗R1aと容量C1とを直列に接続しているが、フィルタ段1は、抵抗R1aを備えない構成も可能である。この場合、容量C1の一端をノードN
12に接続し、他端を接地線に接続すればよい。
【0209】
なお、式(6)に示すように、
図34のフィルタ段1は、入力電流Isignal(s)から生成された比例信号及び微分信号を加算した出力電流I1(s)を出力する。すなわち、
図34のフィルタ段1により、微分信号生成部11、比例信号生成部12、及び加算部13の機能が実現されている。
【0210】
フィルタ段2は、抵抗R2と、トランジスタM2と、非反転増幅器A2と、容量C2と、トランジスタM3と、を備える。
【0211】
抵抗R2は、一端をノードN
14に接続され、他端をノードN
15に接続されている。ノードN
14は、フィルタ段2の入力端子となる。フィルタ団2の入力端子からは、入力信号として、ドレイン電流I1(s)が入力される。ドレイン電流I1(s)は、抵抗R2によって電圧に変換される。
【0212】
トランジスタM2は、PMOSであり、ドレイン端子をノードN
15に接続され、ゲート端子をノードN
16に接続され、ソース端子を電源線に接続されている。
【0213】
非反転増幅器A2は、負入力端子をノードN
14に接続され、出力端子をノードN
16に接続されている。
【0214】
容量C2は、一端をノードN
15に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0215】
トランジスタM3は、PMOSであり、ドレイン端子をノードN
17に接続され、ゲート端子をノードN
16に接続され、ソース端子を電源線に接続されている。ノードN
17は、フィルタ段2の出力端子となる。フィルタ段2の出力端子から、出力信号として、トランジスタM3のドレイン電流I3(s)が出力される。
【0216】
トランジスタM3は、トランジスタM2とともにカレントミラー回路を構成しているため、トランジスタM3のドレイン電流I3(s)は、トランジスタM2のドレイン電流I2(s)のデバイスサイズ比倍の電流となる。
【0217】
フィルタ段2は、非反転増幅器A2の出力が、トランジスタM2及び抵抗R2を介して非反転増幅器A2の入力に帰還される構成となっているため、非反転増幅器A2の負入力端子は仮想接地点となり、フィルタ段2の入力端子(ノードN
14)からみた入力インピーダンスは、(1/gm2)/A2となる。gm2は、トランジスタM2のトランスコンダクタンス、A2は非反転増幅器A2の利得である。一般に、A2は非常に大きいため、上記の入力インピーダンスは非常に小さくなり、非反転増幅器A2の入力電圧は略一定となる。
【0218】
このため、トランジスタM2のドレイン端子の電圧は、I1(s)×R2となり、容量C2に流れる電流は、I(s)×sC2×R2となる。トランジスタM2のドレイン電流I2(s)は、容量C2に流れる電流と、電流I1(s)と、の和となり、以下のように表される。
【0220】
トランジスタM2とトランジスタM3のデバイスサイズが同じ場合、I2(s)=I3(s)となる。このとき、フィルタ段2が出力するドレイン電流I3(s)は、以下のように表される。
【0222】
式(8)からわかるように、フィルタ段1,2によりゼロ点を2つ有するフィルタ特性を実現できる。フィルタ段2の時定数は、C2R2となる。このフィルタ段2の時定数を可変にする場合、抵抗R2の代わりに
図16の時定数調整回路を接続したり、容量C2の代わりに
図17の時定数調整回路を接続したりすればよい。
【0223】
なお、式(8)に示すように、
図34のフィルタ段2は、入力電流I1(s)から生成された比例信号及び微分信号を加算した出力電流I3(s)を出力する。すなわち、
図34のフィルタ段2により、微分信号生成部21、比例信号生成部22、及び加算部23の機能が実現されている。
【0224】
電流電圧変換回路Gmは、ドレイン電流I3(s)を電圧に変換して出力する。電流電圧変換回路Gmは、抵抗Rvと、トランジスタM5と、非反転増幅器A5と、を備える。
【0225】
抵抗Rvは、一端をノードN
17に接続され、他端をノードN
18に接続されている。ノード18は、このフィルタ回路の出力端子に接続される。出力端子からは、出力信号として、電圧Vout(s)が出力される。抵抗Rvは、ドレイン電流I3(s)を電圧に変換して、出力電圧Vout(s)を生成する。
【0226】
トランジスタM5は、NMOSであり、ドレイン端子をノードN
18に接続され、ゲート端子を非反転増幅器A5の出力端子に接続され、ソース端子を接地線に接続されている。トランジスタM5は、ソース接地増幅回路として動作する。ソース接地増幅回路は、反転増幅回路である。
【0227】
非反転増幅器A5は、正入力端子をノードN
17に接続され、出力端子をトランジスタM5のゲート端子に接続されている。非反転増幅回路A5とトランジスタM5によるソース接地増幅回路とは、縦続接続されており、全体で反転増幅回路を形成している。よって、非反転増幅器A5の正入力端子は、全体を反転増幅回路として見た時の負入力端子となっている。
【0228】
電流電圧変換回路Gmは、前述のように、非反転増幅回路A5とトランジスタM5とで反転増幅回路を形成しており、この反転増幅回路の出力であるトランジスタM5のドレイン端子から、抵抗Rvを介して非反転増幅器A5の入力に帰還される構成となっているため、非反転増幅器A5の正入力端子は仮想接地点となり、フィルタ段2の出力端子(ノードN
17)からみた入力インピーダンスは、(1/gm5)/A5となる。gm5は、トランジスタM5のトランスコンダクタンス、A5は非反転増幅器A5の利得である。一般に、A5は非常に大きいため、上記の入力インピーダンスは非常に小さくなり、非反転増幅器A5の入力電圧は略一定となる。
【0229】
このため、トランジスタM5のドレイン端子の電圧Voutは、ノードN
17の電圧を、I3(s)×Rvだけシフトした電圧となる。
【0230】
抵抗Rdcは、一端をノードN
17に接続され、他端を電流源ILSの一端に接続されている。
【0231】
電流源ILSは、定電流源であり、一端を抵抗Rdcの他端に接続され、他端を電源線に接続されている。
【0232】
抵抗Rgainは、一端をノードN
17に接続され、他端を電流源ILS2の一端に接続されている。
【0233】
電流源ILSは、定電流源であり、一端を抵抗Rgainの他端に接続され、他端を接地線に接続されている。
【0234】
図34のフィルタ回路では、抵抗Rdcの他端の電圧V
CRを、第1検出レベルとして利用することができる。電圧V
CRは、ノードN
17(非反転増幅器A5の負入力端子)の電圧を、ILS×Rdcだけシフトした電圧となる。
【0235】
また、抵抗Rgainの他端の電圧Vgainを、第3検出レベルとして利用することができる。電圧Vgainは、ノードN
17(非反転増幅器A5の負入力端子)の電圧を、ILS2×Rgainだけシフトした電圧となる。
【0236】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係る集積回路について、
図35を参照して説明する。本実施形態に係る集積回路は、同一チップ上に、上述の波形整形フィルタを複数集積したものである。
図35に示すように、集積回路は、複数の波形整形フィルタと、アンド回路ANDと、を備える。
図35において、各波形整形フィルタは、フィルタ段1,2を備える。しかしながら、上述の通り、波形整形フィルタは、2段以上のフィルタ段を備えればよい。
【0237】
アンド回路ANDは、各波形整形フィルタの制御部3から、アンダーシュートの検出結果を入力される。アンド回路ANDは、アンダーシュートの検出結果が全て同じ場合、制御信号を出力し、各々の波形整形フィルタの全フィルタ段の時定数の制御を実行する。検出結果が全て同じ場合とは、全ての波形整形フィルタでアンダーシュートが検出された場合、或いは、全ての波形整形フィルタでアンダーシュートが検出されなかった場合のことである。
【0238】
図35の例では、アンド回路ANDが出力した制御信号は、各波形整形フィルタのフィルタ段1,2に入力されている。しかしながら、アンド回路ANDは、制御信号を各波形整形フィルタの制御部3に入力し、制御部3により時定数の制御を実行させてもよい。
【0239】
ここで、
図35の集積回路の動作について説明する。集積回路上の各波形整形フィルタは、入力信号In(s)を入力されると、出力信号Out(s)のアンダーシュートを検出し、時定数を1ステップずつ調整する。このため、
図35のように、集積回路が複数の波形整形フィルタを備え、各波形整形フィルタがフィルタ段1およびフィルタ段2を備える場合、各フィルタ段の時定数を調整する必要があるので、調整処理の回数が増え、調整処理に時間がかかる。
【0240】
一般に、同一チップ上では、抵抗値や容量値の相対的なばらつきは小さいが、絶対値のばらつきが大きい。このため、アンダーシュートの検出結果が、同一チップ内で全て同じとき、各波形整形フィルタの時定数のずれには、集積回路の抵抗値や容量値の絶対値のずれに起因するずれが含まれる、と考えられる。
【0241】
そこで、本実施形態に係る集積回路は、アンダーシュートの検出結果が全て同じ場合に、各々の波形整形フィルタのフィルタ段1及びフィルタ段2の時定数を同時に制御する。これにより、上記の絶対値のずれに起因した時定数のずれが調整される。
【0242】
このように時定数を制御することにより、制御部3による調整処理の回数を減らし、調整処理の時間を短縮することができる。
【0243】
なお、
図35では、アンド回路ANDは、波形整形フィルタと同一チップ上に集積されているが、別チップに集積されてもよい。また、アンド回路ANDによる処理は、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0244】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係る放射線検出装置について、
図36を参照して説明する。
図36は、本実施形態に係る放射線検出装置を示す図である。
図36に示すように、放射線検出装置は、光子検出器と、上述の波形整形フィルタと、を備える。
【0245】
光子検出器は、入射した放射線光子のエネルギーに比例した電荷量を、パルス性の信号電流Isignalとして出力する。
図36に示すように、光子検出器は、シンチレータと、光電子増倍器と、を備える。
【0246】
シンチレータは、入射した放射線光子のエネルギーに応じたシンチレーション光を発生させる。シンチレータは、シンチレーション光の減衰時間に起因した低域通過特性を有する。以下では、シンチレータの時定数をτ1とし、低域通過特性を1/(1+sτ1)とする。
【0247】
光電子増倍器(SiPM)は、シンチレータが発生させたシンチレーション光のエネルギーに応じた電荷量を、パルス性の信号電流Isignalとして出力する。一般に、光電子増倍器は、低域通過特性を有する。以下では、光電子増倍器の時定数をτ2とし、低域通過特性を1/(1+sτ2)とする。
【0248】
波形整形フィルタは、入力信号In(s)として、信号電流Isignalを入力され、信号電流Isignalに応じた出力信号Out(s)を出力する。
【0249】
例えば、
図36の放射線検出装置のように、光子検出器が、時定数τ1のシンチレータと、時定数τ2の光電子増倍器と、を備える場合、波形整形フィルタは、時定数τ1を有する1段目のフィルタ段1と、時定数τ2を有する2段目のフィルタ段2と、を備えるのが好ましい。
【0250】
このような構成により、信号電流Isignalが有する低域通過特性を、波形整形フィルタのフィルタ特性によって相殺し、低域通過特性によって鈍った(パルス幅が拡大した)信号電流Isignalの鈍りを除去し、パルス幅を狭めることができる。
【0251】
なお、1段目のフィルタ段1の時定数をτ2とし、2段目のフィルタ段2の時定数をτ1としても同様の効果を得られる。また、信号電流Isignalの低域通過特性が、1つ又は3つ以上の時定数を有する場合、波形整形フィルタは、当該時定数の数と同数のフィルタ段を備え、各フィルタ段の時定数を、低域通過特性の時定数に合わせればよい。
【0252】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。