特許第6574583号(P6574583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574583
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20190902BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20190902BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H02G3/22
   H01B17/58 C
   B60R16/02 622
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-54967(P2015-54967)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-178720(P2016-178720A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小湊 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真吾
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−358315(JP,A)
【文献】 特開2008−310989(JP,A)
【文献】 特開2003−32854(JP,A)
【文献】 特開2006−87286(JP,A)
【文献】 特開2009−16182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの貫通孔の内周縁に係合するパネル係合部を外周に備えた大径筒部と、
前記パネルの貫通孔に通される電線の外周に密着嵌合する小径筒部と、
外周縁が前記大径筒部に結合されると共に内周縁が前記小径筒部に結合されることで、前記大径筒部と前記小径筒部との間の環状の空間を遮蔽する環状の連結遮蔽壁と、
を有する弾性材料よりなるグロメットであって、
前記連結遮蔽壁の壁面上に、該連結遮蔽壁を部分的に補強する凸状のリブが、該連結遮蔽壁と一体に突設され、
前記連結遮蔽壁が、前記大径筒部側から前記小径筒部側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、
前記テーパ筒状の連結遮蔽壁の外表面に、前記リブが複数、前記外表面の母線方向に沿ってそれぞれ帯状に延在するように設けられると共に、前記連結遮蔽壁の周方向に間隔をおいて設けられ、
前記テーパ筒状の連結遮蔽壁の内表面にも、前記リブが、前記内表面の母線方向に沿って帯状に延在するように設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
各前記リブの前記母線方向に対し直交する断面の断面積を前記母線方向に沿って変化させたことを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記連結遮蔽壁の外表面の母線方向に沿ってそれぞれ延在する帯状の各リブを、前記小径筒部に近い位置から前記大径筒部に近い位置に行くほど幅広となる扇状に形成し、前記リブの断面積を、前記小径筒部に近い位置から前記大径筒部に近い位置に行くほど大きくなるように変化させたことを特徴とする請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記小径筒部が、前記大径筒部の軸線方向の両側に互いに離間して設けられると共に、
前記連結遮蔽壁が、2つの前記小径筒部に対応して軸線方向に離間して設けられ、
各前記連結遮蔽壁は、前記大径筒部側から前記小径筒部側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、2つの前記連結遮蔽壁によって、前記小径筒部に前記電線を通した際に、該電線と前記大径筒部との間に、密閉した空気室を画成するよう構成されており、
2つの前記連結遮蔽壁のうちの少なくともいずれか一方の壁面上に、前記リブが形成されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の車室内側と車室外側とを仕切る車体パネル(ダッシュパネルやリアパネル等)を貫通するようにワイヤーハーネス(電線)を配索する場合に、ワイヤーハーネスのパネル貫通部の保護のために、あるいは、車室内の静粛性や気密性などを確保するために、パネルの貫通孔に嵌合させて用いられるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のグロメットは、自動車の車室内側と車室外側とを仕切る車体パネルに設けられた貫通孔と電線(ワイヤーハーネス)の間に取り付けて、車室内の気密性や静粛性を確保するものである。最近では特に車室内の静粛性が強く求められるようになってきており、遮音性能を高めたグロメットが開発されている。
【0003】
図5は、遮音性能を高めるために内部に空気室を確保した従来のグロメットの一例を示している。
このグロメット110は、ゴム等の弾性材料で一体に成形されており、車体パネルPの貫通孔Paの内周縁に係合するパネル係合溝112を外周に備えた大径筒部111と、電線(ワイヤーハーネス)Wを挿通する第1小径筒部113及び第2小径筒部114と、外周縁が大径筒部111に結合され内周縁が第1小径筒部113及び第2小径筒部114にそれぞれ結合されたテーパ筒状(漏斗状)の第1の連結遮蔽壁115及び第2の連結遮蔽壁116と、を一体に有している。
【0004】
第1小径筒部113及び第2小径筒部114は、電線Wの外周に密着嵌合するように形成されている。また、第1の連結遮蔽壁115及び第2の連結遮蔽壁116は、大径筒部111と小径筒部113、114との間の環状の空間をそれぞれ遮蔽して、両小径筒部113、114に電線Wを通した際に電線Wと大径筒部111との間に密閉した空気室Rを画成するようになっている。
【0005】
このグロメット110をパネルPの貫通孔Paに取り付ける場合は、第1小径筒部113と電線Wとをテープで巻き付け固定すると共に、第2小径筒部114と電線Wもテープで巻き付け固定する。これにより、グロメット110の内部に密閉した空気室Rが確保される。従って、2つの連結遮蔽壁115、116及び空気室Rの存在により、遮音性が確保される。
【0006】
上述した図5に示したグロメット110において、車室外OUTからの入射音(音波F)は、主に車室外OUT側の第2の連結遮蔽壁116を通過し、空気室Rを介して、第1の連結遮蔽壁115を通過した上で、車室内IN側に透過音(音波F)として到達する。
【0007】
因みに、図6に示すように、入射音(音波)が壁130を透過する場合は、まず、入射側の空気の振動(音波)により、壁130が振動する(図中符号140は振動を示している)。次に、振動した壁130が、反対側の空気を振動させることで、反対側に透過音が生じる。従って、壁130の振動を抑制すれば、透過音を減らすことができる。
【0008】
そこで、図5に示すような従来のグロメットでは、遮音性を高めるために、一番簡単な方法として、連結遮蔽壁115、116の肉厚を増やすことが行われている。
【0009】
なお、この種のグロメットの類似例については、例えば、特許文献1などにおいて知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−27641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、遮音性を高めるために、連結遮蔽壁115、116の肉厚を増やすと、連結遮蔽壁115、116の柔軟性が低下してしまう。連結遮蔽壁115、116の柔軟性が低下すると、特に小径筒部113、114に電線Wを通す際の拡径作業が大変になる可能性がある。また、連結遮蔽壁115、116の肉厚を増加させた場合、材料コストがアップする課題もある。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、材料コストを抑えながら、遮音性の向上と組付性の向上の両立を図ることのできるグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係るグロメットは、下記(1)〜()を特徴としている。
(1) パネルの貫通孔の内周縁に係合するパネル係合部を外周に備えた大径筒部と、
前記パネルの貫通孔に通される電線の外周に密着嵌合する小径筒部と、
外周縁が前記大径筒部に結合されると共に内周縁が前記小径筒部に結合されることで、前記大径筒部と前記小径筒部との間の環状の空間を遮蔽する環状の連結遮蔽壁と、
を有する弾性材料よりなるグロメットであって、
前記連結遮蔽壁の壁面上に、該連結遮蔽壁を部分的に補強する凸状のリブが、該連結遮蔽壁と一体に突設され、
前記連結遮蔽壁が、前記大径筒部側から前記小径筒部側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、
前記テーパ筒状の連結遮蔽壁の外表面に、前記リブが複数、前記外表面の母線方向に沿ってそれぞれ帯状に延在するように設けられると共に、前記連結遮蔽壁の周方向に間隔をおいて設けられ、
前記テーパ筒状の連結遮蔽壁の内表面にも、前記リブが、前記内表面の母線方向に沿って帯状に延在するように設けられていること。
(2) 上記(1)の構成のグロメットにおいて、
各前記リブの前記母線方向に対し直交する断面の断面積を前記母線方向に沿って変化させたこと。
(3) 上記(2)の構成のグロメットにおいて、
前記連結遮蔽壁の外表面の母線方向に沿ってそれぞれ延在する帯状の各リブを、前記小径筒部に近い位置から前記大径筒部に近い位置に行くほど幅広となる扇状に形成し、前記リブの断面積を、前記小径筒部に近い位置から前記大径筒部に近い位置に行くほど大きくなるように変化させたこと。
) 上記(1)〜()のいずれかのグロメットにおいて、
前記小径筒部が、前記大径筒部の軸線方向の両側に互いに離間して設けられると共に、
前記連結遮蔽壁が、2つの前記小径筒部に対応して軸線方向に離間して設けられ、
各前記連結遮蔽壁は、前記大径筒部側から前記小径筒部側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、2つの前記連結遮蔽壁によって、前記両小径筒部に前記電線を通した際に、該電線と前記大径筒部との間に、密閉した空気室を画成するよう構成されており、
2つの前記連結遮蔽壁のうちの少なくともいずれか一方の壁面上に、前記リブが形成されていること。
【0014】
上記(1)の構成のグロメットによれば、連結遮蔽壁の全体の肉厚を厚くしないで、リブのあるところだけ(例えば、振動しやすいところだけ)、連結遮蔽壁の剛性を部分的に高めることができる。従って、剛性を高めた部分における振動を抑制することができ、連結遮蔽壁を透過する透過音を低減させることができて、防音性の向上が図れる。また、リブのない箇所やリブの断面寸法を小さくした箇所は、連結遮蔽壁の前述の剛性が高い部分に対して剛性を低く設定することができるので、剛性の高い箇所つまり振動を抑えたい箇所と、剛性の低い箇所つまり弾性変形しやすい箇所を意図的に作り分けることができる。それにより、例えば、パネルや電線にグロメットを組み付けるために強制的に弾性変形させる必要のある箇所については、リブを無くしたり、リブの断面寸法を小さくしたりして剛性を低めに抑えておくことにより、パネルへの組付性や電線の挿通作業性の向上が図れる。また、成形の際には、リブのある箇所の材料が増えるだけであるから、連結遮蔽壁の全体の肉厚を増やす場合に比べて、材料コストが少なくてすむ。
更に、上記(1)の構成のグロメットによれば、連結遮蔽壁の外表面に、その母線方向に沿って帯状にリブが形成されているので、連結遮蔽壁の肉厚があまり大きくない場合であっても、連結遮蔽壁の剛性を高めることができ、連結遮蔽壁の振動を有効に抑制することができる。特に、リブを帯状に形成してあるので、帯の幅(リブの幅寸法)を変化させるだけで、補強効果を及ぼす範囲や補強の度合を容易に調整することができる。
上記(2)の構成のグロメットによれば、各リブの断面積を変化させることにより、リブによる連結遮蔽壁に対する補強の度合を、連結遮蔽壁の半径方向の位置に応じて変化させることができる。したがって、振動を抑制する必要のある箇所については、リブの断面積が大きくなるように帯状のリブの幅寸法や肉厚寸法を設定し、組付等のために弾性変形させる必要のある箇所については、リブを無くすか、リブの断面積が小さくなるように帯状のリブの幅寸法や肉厚寸法を設定すればよく、使用条件などに応じて自由に設計することができる。つまり、帯状のリブの幅やリブの肉厚の調整により、連結遮蔽壁の各部の剛性の大きさを自由に設定することができる。
上記(3)の構成のグロメットによれば、各リブを小径筒部に近い位置から大径筒部に近い位置に行くほど幅広となる扇状に形成し、リブの断面積を、小径筒部に近い位置から大径筒部に近い位置に行くほど大きくなるように変化させているので、大径筒部に近い位置の連結遮蔽壁の剛性を高めることができると共に、小径筒部に近い位置の連結遮蔽壁の剛性を低めに設定することができる。従って、小径筒部を、電線を通すために弾性変形させながら拡径する際の挿通作業性の向上が図れる。また、大径筒部側の剛性が高まることにより、パネルに対するグロメットの嵌合強度を高めることができ、パネルからグロメットが脱落しにくくなる。
上記()の構成のグロメットによれば、テーパ筒状の2つの連結遮蔽壁に挟まれた空間を空気室とすることができるので、大きな空気室を確保することができ、2枚の連結遮蔽壁による遮音作用と共に透過音を一層減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連結遮蔽壁の壁面上に、連結遮蔽壁を部分的に補強する凸状のリブを該連結遮蔽壁と一体に突設したことにより、材料コストを抑えながら、遮音性の向上と組付性の向上の両立を図ることができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るグロメットの側断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るグロメットの構成図で、(a)は全体構成を示す外観斜視図、(b)はリブの断面積を説明するための部分横断面図、(c)はリブの肉厚と連結遮蔽壁の肉厚の関係を説明するための部分側断面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係るグロメットの構成図で、(a)は全体構成を示す外観斜視図、(b)はリブの断面積を説明するための部分側断面図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態に係るグロメットの全体構成を示す外観斜視図である。
図5図5は、従来のグロメットの一構成例を示す側断面図である。
図6図6は、壁を音が透過する原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のグロメットの側断面図、図2は同グロメットの構成図である。図2(a)は全体構成を示す外観斜視図、(b)はリブの断面積を説明するための部分横断面図、(c)はリブの肉厚と連結遮蔽壁の肉厚の関係を説明するための部分側断面図である。
【0020】
図1及び図2(a)に示すように、このグロメット10は、自動車の車室側(室内側)INと室外側OUTとを仕切る車体パネルPに設けた貫通孔Paに通す電線(ワイヤハーネス)WとパネルPの貫通孔Paとの間に取り付けられるものであり、ゴムまたはエストラマー等の弾性材料で一体に成形されている。
【0021】
このグロメット10は、パネルPの貫通孔Paの内周縁に係合する環状のパネル係合部12を外周に備えた厚肉の大径筒部11と、大径筒部11の軸線方向の両側に互いに離間して配置され、貫通孔Paに通される電線Wの外周にそれぞれ密着嵌合する2つの小径筒部13、14と、外周縁が大径筒部11に結合されると共に内周縁が小径筒部13、14に結合され、大径筒部11と各小径筒部13、14との間の環状の空間をそれぞれ遮蔽する、2つの軸方向に互いに離間した連結遮蔽壁15、16と、を有している。
【0022】
各連結遮蔽壁15、16は、大径筒部11側からそれぞれ小径筒部13、14側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成されている。それにより、これら2つの連結遮蔽壁15、16によって、両小径筒部13、14に電線Wを通した際に、電線Wと大径筒部11との間に、密閉した空気室Rが画成されるようなっている。
【0023】
テーパ筒状の連結遮蔽壁15、16の外表面(壁面上)には、当該連結遮蔽壁15、16を部分的に補強する凸状のリブ25、26が、連結遮蔽壁15、16と一体に突設されている。各リブ25、26は、複数、外表面の母線方向YSに沿ってそれぞれ帯状に延在するように設けられており、且つ、連結遮蔽壁15、16の周方向XRに一定間隔をおいて設けられている。つまり、複数のリブ25が、テーパ筒状の連結遮蔽壁15の外表面に放射状に設けられている。リブ25、26の個数は複数であれば任意であるが、3つ以上であるのが望ましい。本実施形態では、周方向XRに等間隔に8つ設けられている。
【0024】
なお、連結遮蔽壁16側については、連結遮蔽壁16の内表面(壁面上)にも、同様の役目を果たすリブ28が設けられている。
【0025】
ここでは、一方の連結遮蔽壁15の外表面のリブ25だけを代表して述べる。
他方の連結遮蔽壁16の外表面のリブ26については、一方の連結遮蔽壁15の外表面のリブ25と同様の構成を採用してもよいし、特に限定されるものではない。また、他方の連結遮蔽壁16の内表面のリブ28についても、特に限定されるものではない。
【0026】
一方の連結遮蔽壁15側の各リブ25は、母線方向YSに対し直交する断面における断面積Uが、母線方向YSに沿って変化するように設けられている。特に、リブ25の断面積Uは、リブ25の幅寸法Sや肉厚寸法Tを変化させることにより、小径筒部13に近い位置から大径筒部11に近い位置に行くほど大きくなるように変化している。ここで、リブ25の断面積Uは、図2(b)に示すように、およそリブ25の幅寸法Sと肉厚寸法Tの積で求められる(U≒S×T)。
【0027】
更に具体的に述べると、帯状の各リブ25は、小径筒部13に近い位置から大径筒部11に近い位置に行くほど幅広となる扇状に形成されており、帯状のリブ25の幅寸法Sは、小径筒部13に結合された位置が最小寸法S1とされ、大径筒部11に結合された位置が最大寸法S2とされている。また、帯状のリブ25の肉厚寸法(高さ寸法)Tは、小径筒部13に結合された位置がほぼ最小寸法T1とされ、大径筒部11に結合された位置がほぼ最大寸法T2とされている。ここで、連結遮蔽壁15のリブ25の無い位置における肉厚をT0とすると、例えば、T1<T0<T2となっている。なお、肉厚Tについては、図2(c)に示すように、上の説明では、連結遮蔽壁15の外表面に垂直な方向の寸法Tを採用しているが、グロメット10の軸線方向に平行な方向の寸法を肉厚寸法T’として採用してもよい。
【0028】
このように幅寸法Sと肉厚寸法Tを変化させることにより、断面積Uが、母線方向YSに沿って変化している。従って、リブ25による連結遮蔽壁15に対する補強の度合が、連結遮蔽壁15の半径方向の位置に応じて変化している。
【0029】
また、連結遮蔽壁15は、内周側から外周側に行くほど壁面の面積が大きくなるので、それに対応させたリブ25を設けるのが望ましく、この点、本実施形態のグロメット10では、外周側に行くほどリブ25の面積が大きくなるように帯状のリブ25を扇形に形成している。
【0030】
なお、実際には、連結遮蔽壁15の外周部と内周部は大径筒部11と小径筒部13に結合されているので、連結遮蔽壁15の撓みの条件は、両端支持梁モデルとなる。つまり、連結遮蔽壁15の外周部と内周部の中間領域(図2のハッチング領域B)が一番振動しやすく、この領域Bを通って透過音が車室内に進入しやすいと考えられる。そこで、この領域Bの補強効果を十分に考慮しながらリブ25の寸法を決めるのがよい。
【0031】
このグロメット10を使用する場合は、室内側INの小径筒部13と室外側OUTの小径筒部14に電線Wを挿通させ、小径筒部13、14と電線Wとをテープやバンドなどで固定する。こうすることで、グロメット10の内部に、連結遮蔽壁15、16に挟まれた空気室Rが確保される。その後、グロメット10をパネルPの貫通孔Paに挿入して、グロメット10の大径筒部11の外周のパネル係合部12を、パネルPの貫通孔Paの内周縁に係合させる。以上により取り付けが完了する。
【0032】
このように取り付けたグロメット10においては、連結遮蔽壁15の全体の肉厚を厚くしないで、リブ25のあるところだけ(例えば、振動しやすいところだけ)、連結遮蔽壁15の剛性を部分的に高めることができる。従って、剛性を高めた部分における振動を抑制することができ、連結遮蔽壁15を透過する透過音を低減させることができて、防音性の向上が図れる。また、リブ25のない箇所やリブ25の断面寸法を小さくした箇所は、リブ25を有しており剛性が高い部分に対して連結遮蔽壁15の剛性を低めに設定することができるので、剛性の高い箇所つまり振動を抑えたい箇所と、剛性の低い箇所つまり弾性変形しやすい箇所とを意図的に作り分けることができる。それにより、例えば、電線Wにグロメット10を組み付けるために強制的に弾性変形させる必要のある箇所(小径筒部13の周囲)については、リブ25を無くしたり、リブ25の断面寸法を小さくしたりして剛性を低めに抑えておくことにより、電線Wの挿通作業性の向上が図れる。また、成形の際には、リブ25のある箇所の材料が増えるだけであるから、連結遮蔽壁15の全体の肉厚を増やす場合に比べて、材料コストが少なくてすむ。
【0033】
また、このグロメット10によれば、連結遮蔽壁15の外表面に、その母線方向YSに沿って帯状にリブ25を形成しているので、連結遮蔽壁15の肉厚T0があまり大きくない場合であっても、連結遮蔽壁15の剛性を高めることができ、連結遮蔽壁15の振動を有効に抑制することができる。特に、リブ25を帯状に形成してあるので、帯の幅(リブの幅寸法S)を変化させるだけで、補強効果を及ぼす範囲や補強の度合を容易に調整することができる。
【0034】
また、このグロメット10によれば、各リブ25の断面積を変化させることにより、補強の度合を変化させるので、振動を抑制する必要のある箇所については、リブ25の断面積Uが大きくなるように帯状のリブ25の幅寸法Sや肉厚寸法Tを設定し、組付等のために弾性変形させる必要のある箇所については、リブ25を無くすか、リブ25の断面積Uが小さくなるように帯状のリブ25の幅寸法Sや肉厚寸法Tを設定すればよく、使用条件などに応じて自由に設計することができる。つまり、帯状のリブ25の幅寸法Sやリブ25の肉厚寸法Tの調整により、連結遮蔽壁15の各部の剛性の大きさを自由に設定することができる。
【0035】
特にこのグロメット10では、各リブ25を小径筒部13に近い位置から大径筒部11に近い位置に行くほど幅広となる扇状に形成し、リブ25の断面積Uを、小径筒部13に近い位置から大径筒部11に近い位置に行くほど大きくなるように変化させているので、大径筒部11に近い位置の連結遮蔽壁15の剛性を高めることができると共に、小径筒部13に近い位置の連結遮蔽壁15の剛性を低めに設定することができる。従って、小径筒部13を、電線Wを通すために弾性変形させながら拡径する際の挿通作業性の向上が図れる。また、大径筒部11側の剛性が高まることにより、パネルPに対するグロメット10の嵌合強度を高めることができ、パネルPからグロメット10が脱落しにくくなる。
【0036】
また、このグロメット10によれば、テーパ筒状の2つの連結遮蔽壁15、16に挟まれた空間を空気室Rとすることができるので、大きな空気室Rを確保することができ、2枚の連結遮蔽壁15、16による遮音作用と共に透過音を一層減らすことができる。
【0037】
なお、反対側の連結遮蔽壁16のリブ26、28についても、同様の作用効果を期待できるので、グロメット全体の遮音性を大幅に向上させることができる。
【0038】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態のグロメットの構成図で、(a)は全体構成を示す外観斜視図、(b)はリブの断面積を説明するための部分側断面図である。
【0039】
上記第1実施形態では、複数のリブ25が、テーパ筒状の連結遮蔽壁16の外表面の母線方向YSに沿って帯状に延びる場合を説明したが、図3(a)に示すように、この第2実施形態のグロメット10Bのように、テーパ筒状の連結遮蔽壁15の外表面に、リブとして、周方向に連続または非連続に延在する環状リブ35を設けてもよい。この場合の環状リブ35は、連結遮蔽壁15の母線方向に間隔をおいて複数(図示例では3本)同心状に設けられている。
【0040】
この第2実施形態のグロメット10Bでは、テーパ筒状の連結遮蔽壁15の外表面に環状リブ35を設けているので、連結遮蔽壁15の肉厚寸法T0があまり大きくない場合であっても、連結遮蔽壁15の剛性を高めることができ、連結遮蔽壁15の振動を有効に抑制することができる。特に、環状リブ35であるから、環状リブ35の配置位置や図3(b)に示すように環状リブ35の幅寸法Sや高さ寸法H(肉厚寸法Tに相当)を変化させるだけで、補強効果を及ぼす範囲や補強の度合を容易に調整することができる。
【0041】
この第2実施形態のグロメット10Bにおいても、連結遮蔽壁15の全体の肉厚を厚くしないで、環状リブ35のあるところだけ(例えば、振動しやすいところだけ)、連結遮蔽壁15の剛性を部分的に高めることができる。従って、剛性を高めた部分における振動を抑制することができ、連結遮蔽壁15を透過する透過音を低減させることができて、防音性の向上が図れる。また、環状リブ35のない箇所や環状リブ35の断面寸法を小さくした箇所は、連結遮蔽壁15の剛性を低めに設定することができるので、剛性の高い箇所つまり振動を抑えたい箇所と、剛性の低い箇所つまり弾性変形しやすい箇所とを意図的に作り分けることができる。それにより、例えば、電線Wにグロメット10を組み付けるために強制的に弾性変形させる必要のある箇所(小径筒部13の周囲)については、環状リブ35を無くしたり、環状リブ35の断面寸法を小さくしたりして剛性を低めに抑えておくことにより、電線Wの挿通作業性の向上が図れる。また、成形の際には、環状リブ35のある箇所の材料が増えるだけであるから、連結遮蔽壁15の全体の肉厚を増やす場合に比べて、材料コストが少なくてすむ。
【0042】
この場合も、小径筒部13に近い位置から遠い位置に向けて、複数の環状リブ35の断面積Uを変化させれば、連結遮蔽壁15の補強効果を半径方向で異ならせることができる。なお、環状リブ35の幅寸法Sや高さ寸法Hは、リブの無い位置の連結遮蔽壁15の肉厚寸法T0に応じて決定すればよい。また、高さ寸法H(肉厚寸法T)については、上の説明では、連結遮蔽壁15の外表面に垂直な方向の寸法Tを採用しているが、グロメット10の軸線方向に平行な方向の寸法を肉厚寸法T’0、H’(T’)として採用してもよい。
【0043】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態のグロメットの構成を示す外観斜視図である。
この実施形態のグロメット10Cは、第1実施形態のリブ25と第2実施形態の環状リブ35とを組み合わせて設けた例である。ここでは、環状リブ35は1本だけ設けられているが、複数本設けてもよい。
【0044】
この第3実施形態のグロメット10Cによれば、第1実施形態と第2実施形態の組み合わせの効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、他方の連結遮蔽壁16にもリブ26、28が設けられている場合を示したが、いずれか一方の連結遮蔽壁15、16だけにリブ25、35が設けられていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、テーパ筒状の連結遮蔽壁15、16にリブ25、35が設けられている場合を示したが、連結遮蔽壁はテーパ筒状でなくてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、2つの連結遮蔽壁15、16を有し、2つの連結遮蔽壁15、16の間に空気室Rを確保するグロメット10について述べたが、2つの連結遮蔽壁がないタイプのグロメットにも本発明は適用することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、一方の連結遮蔽壁15の外表面にリブ25、35が設けられている場合を示したが、外表面と内両面の両方にリブが設けられていてもよい。また、内表面にのみリブが設けられていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、2つの連結遮蔽壁15、16によって画成される空気室Rに吸音材を充填すれば、更に遮音性能を高めることができる。
【0051】
ここで、上述した本発明に係るグロメットの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] パネル(P)の貫通孔(Pa)の内周縁に係合するパネル係合部(12)を外周に備えた大径筒部(11)と、
前記パネルの貫通孔(Pa)に通される電線(W)の外周に密着嵌合する小径筒部(13、14)と、
外周縁が前記大径筒部(11)に結合されると共に内周縁が前記小径筒部(13、14)に結合されることで、前記大径筒部(11)と前記小径筒部(13、14)との間の環状の空間を遮蔽する環状の連結遮蔽壁(15、16)と、
を有する弾性材料よりなるグロメット(10)であって、
前記連結遮蔽壁(15、16)の壁面上に、該連結遮蔽壁(15、16)を部分的に補強する凸状のリブ(25、35)が、該連結遮蔽壁(15、16)と一体に突設されていることを特徴とするグロメット(10、10B、10C)。
[2] 前記連結遮蔽壁(15、16)が、前記大径筒部(11)側から前記小径筒部(13、14)側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、
前記テーパ筒状の連結遮蔽壁(15、16)の外表面に、前記リブ(25)が複数、前記外表面の母線方向(YS)に沿ってそれぞれ帯状に延在するように設けられると共に、前記連結遮蔽壁(15、16)の周方向(XR)に間隔をおいて設けられていることを特徴とする上記[1]に記載のグロメット(10、10C)。
[3] 各前記リブ(25)の前記母線方向(YS)に対し直交する断面の断面積(U)を前記母線方向(YS)に沿って変化させることを特徴とする上記[2]に記載のグロメット(10、10C)。
[4] 前記連結遮蔽壁(15、16)の外表面の母線方向(YS)に沿ってそれぞれ延在する帯状の各リブ(25)を、前記小径筒部(13、14)に近い位置から前記大径筒部(11)に近い位置に行くほど幅広となる扇状に形成し、前記リブ(25)の断面積(U)を、前記小径筒部(13、14)に近い位置から前記大径筒部(11)に近い位置に行くほど大きくなるように変化させたことを特徴とする上記[3]に記載のグロメット(10、10C)。
[5] 前記連結遮蔽壁(15、16)が、前記大径筒部(11)側から前記小径筒部(13、14)側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、
前記テーパ筒状の連結遮蔽壁(15、16)の外表面に、前記リブとして、周方向に連続または非連続に延在する環状リブ(35)が設けられていることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載のグロメット(10B)。
[6] 前記小径筒部(13、14)が、前記大径筒部(11)の軸線方向の両側に互いに離間して設けられると共に、
前記連結遮蔽壁(15、16)が、2つの前記小径筒部(13、14)に対応して軸線方向に離間して設けられ、
各前記連結遮蔽壁(15、16)は、前記大径筒部(11)側から前記小径筒部(13、14)側に向けて徐々に小径となるテーパ筒状に形成され、2つの前記連結遮蔽壁(15、16)によって、前記両小径筒部(13、14)に前記電線(W)を通した際に、該電線(W)と前記大径筒部(11)との間に、密閉した空気室(R)を画成するよう構成されており、
2つの前記連結遮蔽壁(15、16)のうちの少なくともいずれか一方の壁面上に、前記リブが形成されていることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載のグロメット(10、10B、10C)。
【符号の説明】
【0052】
10、10B、10C グロメット
11 大径筒部
12 パネル係合部
13、14 小径筒部
15、16 連結遮蔽壁
25、26、28 リブ
35 環状リブ
P パネル
Pa 貫通孔
W 電線(ワイヤーハーネス)
YS 母線方向
XR 周方向
R 空気室
U 断面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6