特許第6574588号(P6574588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574588
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20190902BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01L21/302 101C
   H01L21/31 C
   H01L21/302 101G
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-66049(P2015-66049)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186976(P2016-186976A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】白濱 裕規
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−008239(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/124845(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0218043(US,A1)
【文献】 特開2014−175606(JP,A)
【文献】 特開2009−164608(JP,A)
【文献】 特開2007−012663(JP,A)
【文献】 米国特許第07648578(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、
前記処理容器の内部に設けられ、被処理物を載置する載置部と、
前記処理容器の内部にプロセスガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
整流板と、
前記整流板を着脱自在に支持するとともに、前記整流板の回転方向における位置を変化させる移動部と、
を備え、
前記整流板は、前記移動部に支持されたときに前記載置部が内部に位置する孔部を有し、
前記整流板の中心と、前記孔部の中心と、は離隔していて、
前記移動部は、前記整流板の回転方向における位置を変化させることで、前記処理容器の内部における排気速度の分布を制御するプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記孔部の中心を回転中心として、前記整流板の回転方向における位置を変化させる請求項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記整流板の中心を回転中心として、前記整流板の回転方向における位置を変化させる請求項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記整流板の前記移動部と対向する領域には、N極に磁化された部分と、S極に磁化された部分とが交互に複数設けられ、
前記移動部の前記整流板と対向する領域には、前記N極に磁化された部分および前記S極に磁化された部分のそれぞれに対向する複数の電磁石が設けられている請求項1〜のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記移動部を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、予め求められたプラズマ処理の条件と、前記整流板の回転方向における位置との関係と、対象となる前記プラズマ処理の条件とから、前記整流板の回転方向における位置を求め、前記求められた位置に基づいて、前記整流板の回転方向における位置を変化させる請求項1〜のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記移動部の前記整流板側とは反対側に設けられ、前記移動部を昇降させる昇降部をさらに備えた請求項1〜のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用したドライプロセス(プラズマ処理)は、半導体の製造、金属部品の表面硬化、プラスチック部品の表面活性化、無薬剤殺菌など、幅広い技術分野において活用されている。
プラズマ処理においては、被処理物における処理の面内分布の均一性が高いことが望まれている。
そのため、例えば、プラズマ処理装置に設けられた処理容器を円筒状とし、処理容器の内部に載置された被処理物の中心が、処理容器の中心軸と重なるようにして、被処理物に対する処理空間の対称性が得られるようになっている。
ところが、被処理物に対する処理空間の対称性を高めるだけでは、処理の面内分布の均一性を向上させることができない場合がある。
処理の面内分布の均一性に影響を与える要因には、処理容器の内部における排気速度の分布がある。
プラズマ処理装置は、処理容器の内部に導入したプロセスガスに電磁波や電界を印加することでプラズマを発生させ、発生させたプラズマでイオンやラジカルなどの反応生成物を生成する。そして、生成された反応生成物を被処理物の表面に衝突、または接触させることでプラズマ処理が行われる。
ここで、ガスの密度の分布が被処理物の面の中心に対して対称となるようにプロセスガスを導入しても、排気速度の分布が処理容器内部において不均一だと、ガスの密度の分布の対称性が損なわれるおそれがある。ガスの密度の分布の対称性が損なわれると、発生したプラズマの密度が被処理物の主面近傍において不均一なものとなる。
この場合、被処理物の処理に用いられる反応生成物の分布も不均一となり、処理の面内分布が不均一なものとなる。
また、プラズマの密度が被処理物の主面近傍においてばらつかないようにプラズマを発生させたとしても、被処理物の主面近傍のガスの流れが不均一だと、生成された反応生成物が、不均一なガスの流れに沿って被処理物の面に接触し、その後に排気される。そのため、処理に用いられる反応生成物の量の分布が、被処理物の面内において不均一となるおそれがある。反応生成物の量の分布が被処理物の面内において不均一となると、処理の面内分布が不均一となる。
そこで、処理容器の内部に整流板を設け、整流板により排気速度の分布を規定して、処理の面内分布の均一性を高めるようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
また、処理容器の内部に、円筒体の遮蔽体を設け、遮蔽体をプラズマ処理時に処理空間を覆うように上昇させて処理の面内分布の均一化を図る技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
しかし、このような整流板や遮蔽体は、被処理物の中心軸に対して同芯に配置され、かつ円筒形となっている。そのため、排気を行う排気口が1つ配置されたり、排気口が被処理物の中心軸に対して非対称に配置されたりした場合には、遮蔽体などと被処理物の間を流れて排気されるガスの排気速度の分布が被処理物の面内において不均一となるおそれがある。ガスの排気速度の分布が不均一となると、処理の面内分布の均一性が維持できなくなる。
またさらに、整流板や遮蔽体の水平方向における位置は固定されているため、1種類の整流板により1種類の排気速度の分布が設定されることになる。
ところが、排気速度の分布を一度設定しても、圧力やプロセスガスの流量などのプラズマ処理の条件(プロセス条件)が変わると、処理の面内分布の均一性が維持できなくなる場合がある。
そこで、プラズマ処理の条件に応じて排気速度の分布を制御することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−164608号公報
【特許文献2】特開2007−012663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、プラズマ処理の条件に応じて排気速度の分布を制御することができるプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るプラズマ処理装置は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、前記処理容器の内部に設けられ、被処理物を載置する載置部と、前記処理容器の内部にプロセスガスを供給するガス供給部と、前記処理容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、整流板と、前記整流板を着脱自在に支持するとともに、前記整流板の回転方向における位置を変化させる移動部と、を備えている。
前記整流板の中心と、前記孔部の中心と、は離隔していて、
前記移動部は、前記整流板の回転方向における位置を変化させることで、前記処理容器の内部における排気速度の分布を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、プラズマ処理の条件に応じて排気速度の分布を制御することができるプラズマ処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係るプラズマ処理装置1を例示するための模式断面図である。
図2】排気制御部8を例示するための模式断面図である。
図3】整流板80の移動部81と対向する領域を例示するための模式斜視図である。
図4】移動部81の整流板80と対向する領域を例示するための模式斜視図である。
図5】他の実施形態に係る排気制御部18を例示するための模式断面図である。
図6】他の実施形態に係る排気制御部28を例示するための模式断面図である。
図7】他の実施形態に係る排気制御部28を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。
なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。 また、以下においては、一例として、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いたプラズマ処理装置を例示する。
ただし、プラズマの発生方法は、誘導結合型プラズマによるものに限定されるわけではない。プラズマの発生方法は、例えば、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)や、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)などによるものであってもよい。
【0009】
図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置1を例示するための模式断面図である。 図1に示すように、プラズマ処理装置1には、処理容器2、載置部3、電源部4、電源部5、減圧部6、ガス供給部7、排気制御部8、および制御部9が設けられている。
【0010】
処理容器2は、本体部20、底部21、および窓部22を有する。
本体部20は、略円筒形状を呈している。
底部21は、板状を呈し、本体部20の一方の端部を塞ぐように設けられている。
窓部22は、板状を呈し、本体部20の他方の端部を塞ぐように設けられている。
処理容器2は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造となっている。
【0011】
本体部20および底部21は、例えば、アルミニウム合金などの金属から形成することができる。本体部20および底部21は、一体に形成することもできるし、溶接などで接合することもできる。
窓部22は、電磁場を透過させることができ、プラズマ処理を行った際にエッチングされにくい材料から形成されている。
窓部22は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0012】
処理容器2の内部には、被処理物100をプラズマ処理するための空間である処理空間23が設けられている。
被処理物100は、例えば、半導体ウェーハ、フォトマスク基板、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板などとすることができる。
【0013】
本体部20には、被処理物100を搬入搬出するための搬入搬出口20aが設けられている。
搬入搬出口20aは、ゲートバルブ20bにより気密に閉鎖できるようになっている。
ゲートバルブ20bは、扉20b1およびシール部材20b2を有する。
シール部材20b2は、例えば、O(オー)リングなどとすることができる。
扉20b1は、図示しないゲート開閉機構により開閉される。
扉20b1が閉まった時には、シール部材20b2が搬入搬出口20aの壁面に押しつけられ、搬入搬出口20aが気密に閉鎖されるようになっている。
【0014】
載置部3は、処理容器2の内部であって、底部21の上に設けられている。
載置部3の中心軸3aは、処理容器2の中心軸2aと重なっている。つまり、載置部3は、処理容器2と同芯となるように設けられている。
また、載置部3の中心軸3aは、被処理物100の中心と同芯となるように設けられている。被処理物100の中心は、被処理物100が円形であれば円の中心、被処理物100が回転対称の図形であれば回転対称軸を中心とすることができる。
載置部3において、少なくとも整流板80が設けられる部分(載置部3の上端近傍)の断面形状は、円形となっている(図2を参照)。
この場合、載置部3の形状は、例えば、円柱状とすることができる。
【0015】
載置部3は、処理空間23の下方に設けられている。載置部3は、被処理物100を載置する。載置部3の上面は被処理物100を載置するための載置面となっている。
載置部3の内部には、図示しない静電チャックなどの保持機構が設けられ、載置された被処理物100を保持することができるようになっている。
また、載置部3の側面を覆う図示しない絶縁リングを設けることもできる。絶縁リングは、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0016】
電源部4は、電極40、電源41、および整合器42を有する。
電源部4は、いわゆるバイアス制御用の高周波電源である。すなわち、電源部4は、載置部3に載置、保持された被処理物100に引き込むイオンのエネルギーを制御するために設けられている。
電極40、電源41、および整合器42は、配線により電気的に接続されている。
【0017】
電極40は、載置部3の内部に設けられている。
電極40は、板状を呈し、金属などの導電性材料から形成されている。
【0018】
電源41は、イオンを引き込むために適した比較的低い周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力を電極40に印加する。
整合器42は、電極40と電源41の間に設けられている。整合器42は、電源41側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路などを備えている。
【0019】
電源部5は、電極50、電源51、および整合器52を有する。
電源部5は、プラズマPを発生させるための高周波電源である。すなわち、電源部5は、処理空間23において高周波放電を生じさせてプラズマPを発生させるために設けられている。
本実施の形態においては、電源部5が、処理容器2の内部にプラズマPを発生させるプラズマ発生部となる。
電極50、電源51、および整合器52は、配線により電気的に接続されている。
【0020】
電極50は、処理容器2の外部であって、窓部22の上に設けられている。
電極50は、板状を呈し、金属などの導電性材料から形成されている。
また、電極50は、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部(コンデンサ)とを有したものとすることもできる。
電源51は、100KHz〜100MHz程度の周波数を有する高周波電力を電極50に印加する。この場合、電源51は、プラズマPの発生に適した比較的高い周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力を電極50に印加することができる。
また、電源51は、出力する高周波電力の周波数を変化させるものとすることもできる。
整合器52は、電極50と電源51の間に設けられている。整合器52は、電源51側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路などを備えている。
【0021】
減圧部6は、ポンプ60および圧力制御部61を有する。
減圧部6は、処理容器2の内部が所定の圧力となるように減圧する。
ポンプ60は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
ポンプ60と圧力制御部61は、配管を介して接続されている。
【0022】
圧力制御部61は、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2の内圧が所定の圧力となるように制御する。
圧力制御部61は、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
圧力制御部61は、配管を介して、底部21に設けられた排気口21aに接続されている。
【0023】
ガス供給部7は、ガス収納部70およびガス制御部71を有する。
ガス供給部7は、処理容器2の内部の処理空間23にプロセスガスGを供給する。
ガス収納部70は、プラズマ処理に用いるプロセスガスGを収納する。
ガス収納部70は、例えば、プロセスガスGを収納した高圧ボンベなどとすることができる。
プロセスガスGは、プラズマ処理の種類などに応じて適宜選択することができる。
ガス収納部70とガス制御部71は、配管を介して接続されている。
【0024】
ガス制御部71は、ガス収納部70から処理容器2の内部にプロセスガスGを供給する際に流量や圧力などを制御する。
ガス制御部71は、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。
ガス制御部71は、配管を介して、本体部20に設けられたガス供給口20cに接続されている。
【0025】
なお、ガス収納部70およびガス制御部71を複数組設け、切換弁などにより処理容器2の内部に供給するプロセスガスGの種類を切り換えるようにすることもできる。
例えば、エッチング処理を行う際には、処理容器2の内部にエッチング処理に用いられるプロセスガスGを供給する。そして、クリーニング処理を行う際には、切換弁などによりクリーニング処理に用いられるプロセスガスGに切り換えて、処理容器2の内部にクリーニング処理に用いられるプロセスガスGを供給する。
【0026】
排気制御部8は、整流板80および移動部81を有する。
以下、整流板80を回転方向に移動させる実施形態について例示する。
整流板80は、移動部81に対して着脱自在に設けられている。
移動部81は、整流板80を回転方向に移動させる。
排気制御部8は、整流板80の回転方向における位置を変化させることで、処理容器2の内部における排気速度の分布を制御する。
なお、排気制御部8に関する詳細は後述する。
【0027】
制御部9は、プラズマ処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
制御部9は、例えば、ゲートバルブ20bに設けられた図示しないゲート開閉機構を制御して、扉20b1を開閉させる。
制御部9は、例えば、載置部3に設けられた図示しない保持機構を制御して、載置された被処理物100の保持と解放を行わせる。
制御部9は、例えば、電源41および整合器42を制御して、バイアス制御用の高周波電力を電極40に印加させる。
制御部9は、例えば、電源51および整合器52を制御して、プラズマP発生用の高周波電力を電極50に印加させる。
制御部9は、例えば、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、圧力制御部61を制御して、処理容器2の内部が所定の圧力となるように減圧させる。
制御部9は、例えば、ガス制御部71を制御して、処理空間23に供給するプロセスガスGの流量や圧力など変化させる。
制御部9は、例えば、後述する移動部81の電磁石81nsを制御して、整流板80の回転方向における位置を変化させる。
【0028】
次に、排気制御部8についてさらに説明する。
図2は、排気制御部8を例示するための模式断面図である。
なお、図2は、図1におけるA−A線断面図である。
図1および図2に示すように、整流板80は、板状を呈し、厚み方向を貫通する孔部80aを有する。
孔部80aの形状は、円形とすることができる。
孔部80aの内部には、載置部3の上端近傍が設けられている。すなわち、整流板80は、載置部3が孔部80aの内部に位置し、載置部3の上端近傍が整流板80の上面近傍に位置するように設けられている。
整流板80は、載置部3の側面を囲むように設けられている。
図2に示すように、整流板80の中心80bと、孔部80aの中心80a1(処理容器2の中心軸2a、載置部3の中心軸3a)とは離隔している。
そのため、孔部80aの中心80a1から最も遠い側における整流板80の外周面と、処理容器2(本体部20)の内壁との間の距離L1は、孔部80aの中心80a1から最も近い側における整流板80の外周面と、処理容器2(本体部20)の内壁との間の距離L2よりも短くなっている。
すなわち、載置部3の周辺において、処理容器2の内壁と整流板80の外周面との間に、開口寸法が異なる領域を形成することができる。
この場合、整流板80の外周面と、処理容器2(本体部20)の内壁との間の距離が短くなるほど流路抵抗が大きくなるので、排気速度が遅くなる。
そのため、載置部3の周辺において、排気速度が異なる領域を形成することができる。
また、整流板80は、後述するように、載置部3に設けられた移動部81に対して着脱自在に設けられている。すなわち、整流板80は、載置部3に対して着脱自在に設けられているので、載置部3に対する位置の移動が可能であり、載置部3の周辺に形成される領域の開口寸法を可変とすることができる。その結果、載置部3の周辺に形成される開口寸法を変化させることで、載置部3の周辺における排気速度の分布を調整することができる。
なお、整流板80の中心軸80bと、孔部80aの中心軸80a1(中心軸2a、3a)の間隔は、例えば、実験やシミュレーションなどにより予め求められたプラズマの密度分布に基づいて決定することができる。
また、平面視において、発生させたプラズマPの密度が最も高い位置(プラズマPの中心)が、被処理物100の中心とずれている場合(水平面内において、プラズマPの中心と被処理物100の中心とずれている場合)、被処理物100における処理の面内分布の均一性が維持できなくなる場合がある。
この様な場合には、プラズマ密度が最も高い位置(プラズマPの中心)と被処理物100の中心とのずれが少なくなるように、整流板80の中心軸80bと、孔部80aの中心軸80a1との間の距離を変更すればよい。すなわち、水平面内において、整流板80の位置を適宜ずらせばよい。
なお、整流板80の中心軸80bは、整流板80が円形であれば円の中心、整流板80が回転対称の図形であれば回転対称軸を中心とすることができる。孔部80aの中心軸80a1も同様である。
【0029】
移動部81は、載置部3に設けられている。
移動部81は、孔部80aの中心80a1を回転中心として、整流板80の回転方向における位置を変化させる。
ここで、整流板80を回転移動させる際に、移動部81と整流板80とが接触するとパーティクルが発生するおそれがある。
そのため、移動部81と、整流板80が対向する部分には、磁力の斥力を利用して隙間が設けられている。
また、整流板80の回転移動は、磁力の引力を利用して行われる。
【0030】
図3は、整流板80の移動部81と対向する領域を例示するための模式斜視図である。 図3に示すように、整流板80における、移動部81と対向する領域は、N極に磁化された部分80nと、S極に磁化された部分80sとが交互に複数設けられている。
図4は、移動部81における、整流板80と対向する領域を例示するための模式斜視図である。
図4に示すように、移動部81の整流板80と対向する領域には、部分80nおよび部分80sのそれぞれに対向する複数の電磁石81nsが設けられている。
少なくとも、部分80nに対向する電磁石81nsがN極となるか、部分80sに対向する電磁石81nsがS極となれば、斥力により移動部81と整流板80との間に隙間を設けることができる。
そして、制御部9により、電磁石81nsにおける極性を切り換えることで、整流板80を回転方向に移動させることができるようになっている。
また、制御部9により、電磁石81nsに印加する電流を制御することで、移動部81と整流板80との間の隙間量や移動速度などを制御することができるようになっている。
【0031】
ここで、整流板80により排気速度の分布を規定すれば、被処理物100における処理の面内分布の均一性を高めることができる。
ところが、圧力やプロセスガスGの流量などのプラズマ処理の条件(プロセス条件)が変わると、被処理物100における処理の面内分布の均一性が維持できなくなる場合がある。
そのため、プラズマ処理の条件と、整流板80の回転方向における位置(排気速度の分布)との関係を実験やシミュレーションなどにより予め求め、求められた関係に基づいて、整流板80の回転方向における位置を制御するようにする。
より具体的には、まず、被処理物100における処理レートの面内分布と、プラズマ処理の条件との関係を実験やシミュレーションなどを行うことにより予め求める。そして、被処理物100における処理レートが高い側に、整流板80の外周面において孔部80aの中心80a1から最も遠い部分が位置するように、整流板80の回転方向における位置を制御するようにする。
すなわち、処理レートが高い側において排気速度が遅く(処理レート低い側において排気速度が低く)なる排気速度の分布となるように、整流板80の回転方向における位置を制御するようにする。
この様に、制御部9は、予め求められたプラズマ処理の条件と、整流板80の回転方向における位置との関係と、対象となるプラズマ処理の条件とから、整流板80の回転方向における位置を求める。そして、制御部9は、求められた位置に基づいて、整流板80の回転方向における位置を変化させる。
この場合、求められた位置に整流板80を移動させた後、電磁石81nsへの電流の印加を停止し、整流板80の移動を停止させる。この様にすれば、所定のプラズマ処理の条件において、整流板80と処理容器2の内壁との間の開口寸法が適切となる位置に整流板80を移動させてプラズマ処理を行うことができる。
本実施の形態に係るプラズマ処理装置1によれば、プラズマ処理の条件に応じて排気速度の分布を制御することができる。そのため、プラズマ処理の条件が変わったとしても、被処理物100における処理の面内分布の均一性を維持することができる。
【0032】
図5は、他の実施形態に係る排気制御部18を例示するための模式断面図である。
図5に示すように、排気制御部18は、整流板180および移動部181を有する。
整流板180は、円板状を呈し、厚み方向を貫通する孔部180aを有する。
孔部180aの形状は、円形とすることができる。
整流板180は、載置部3の側面を囲むように設けられている。
孔部180aの内部には、載置部3が設けられている。
孔部180aの中心180a1と、整流板80の中心180b(処理容器2の中心軸2a、載置部3の中心軸3a)とは離隔している。
【0033】
そのため、中心180b(処理容器2の中心軸2a、載置部3の中心軸3a)から遠い側における孔部180aの内周面と、載置部3の側面との間の距離L3は、中心180bから近い側における孔部180aの内周面と、載置部3の側面との間の距離L4も長くなっている。
【0034】
すなわち、載置部3の周辺において、整流板80と処理容器2の内壁との間の開口寸法が異なる領域を形成することができる。
この場合、孔部180aの内周面と、載置部3の側面との間の距離が短くなるほど流路抵抗が大きくなるので、排気速度が遅くなる。
そのため、載置部3の周辺において、排気速度が異なる領域を形成することができる。
【0035】
図2に例示をした排気制御部8の移動部81は、載置部3に設けられていたが、本実施の形態においては、移動部181は処理容器2(本体部20)の内壁に設けられている。 移動部181は、整流板180の中心180b(処理容器2の中心軸2a、載置部3の中心軸3a)を回転中心として、整流板180の回転方向における位置を変化させる。
【0036】
移動部181と、整流板180が対向する部分には、磁力の斥力を利用して隙間が設けられている。
また、整流板180の回転移動は、磁力の引力を利用して行われる。
そのため、整流板180の移動部181と対向する領域にも、前述した部分80nと、部分80sとが交互に複数設けられている。
また、移動部181の整流板180と対向する領域には、部分80nおよび部分80sのそれぞれに対向する複数の電磁石81nsが設けられている。
なお、部分80n、部分80s、および電磁石81nsは前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
ただし、整流板180の回転方向における位置の制御については、前述した整流板80の場合とは異なる。整流板180の場合は、被処理物100における処理レートが高い側に、整流板80の内周面において孔部180aの中心180bから最も近い部分が位置するように、整流板180の回転方向における位置を制御するようにする。
すなわち、処理レートが高い側において排気速度が遅く(処理レート低い側において排気速度が低く)なる排気速度の分布となるように、整流板180の回転方向における位置を制御するようにする。
【0037】
図6および図7は、他の実施形態に係る排気制御部28を例示するための模式断面図である。
なお、図6は、排気制御部28が上昇端にある場合である。
図7は、排気制御部28が下降端にある場合である。
また、煩雑となるのを避けるために、排気制御部28の周辺に設けられる要素を選択して描いている。
図6に示すように、排気制御部28は、整流板180、移動部281a、移動部281b、昇降部282、およびカバー283を有する。
【0038】
整流板180は、移動部281aに対して着脱自在に設けられている。すなわち、整流板180は、載置部3に対して着脱自在に設けられている。
移動部281aは、前述した移動部181と同様に、整流板180の中心180b(処理容器2の中心軸2a、載置部3の中心軸3a)を回転中心として、整流板180の回転方向における位置を変化させる。
図5に例示をした移動部181は処理容器2(本体部20)の内壁に設けられていたが、本実施の形態においては、移動部281aは昇降部282により昇降方向(上下方向)に移動する。
【0039】
移動部281bは、処理容器2(本体部20)の外壁に設けられている。
移動部281bは、磁力の斥力を利用して、整流板180およびカバー283と、処理容器2(本体部20)の内壁との間に隙間が設けられるようにする。
なお、整流板180、移動部281a、および移動部281bにも、前述した部分80n、部分80s、および電磁石81nsが設けられている。
また、カバー283に前述した部分80nおよび部分80sを設けることもできる。
【0040】
昇降部282は、移動部181の整流板180側とは反対側に設けられている。
昇降部282は、棒状を呈し、処理容器2の外部に設けられた昇降装置により、処理容器2の内部を昇降方向に移動するものとすることができる。
そのため、昇降部282は、移動部181を昇降させることができる。
カバー283は、円筒状を呈し、整流板180の移動部281a側とは反対側に設けられている。
また、カバー283は、金属(例えば、ステンレスやアルミニウム合金など)などの導電体から形成されている。この場合、プラズマ生成物による損傷を抑制するために、カバー283の表面に、例えば、フッ素樹脂処理やイットリア(Y)コート処理などを施すこともできる。
カバー283は、処理空間23においてプラズマの拡がりを抑制するとともに安定化を図ったり、搬入搬出口20aに設けられた扉20b1の開閉時に発生するパーティクルを処理空間23内に侵入させないようにしたり、プラズマ処理における反応生成物や副生成物などが処理容器2(本体部20)の内壁に到達するのを抑制したりするために設けられている。
【0041】
次に、プラズマ処理装置1の作用について例示する。
まず、一例として、排気制御部8が設けられたプラズマ処理装置1を用いて、被処理物100にエッチング処理を施す場合について例示する。
まず、予め求められたプラズマ処理の条件と、整流板80の回転方向における位置(排気速度の分布)との関係と、対象となるエッチング処理の条件(プラズマ処理の条件)とから、適正な整流板80の回転方向における位置を求める。
そして、制御部9は、移動部81の電磁石81nsを制御して、整流板80の回転方向における位置が適切なものとなるようにする。
この様にすれば、プラズマ処理の条件に応じて排気速度の分布を制御することができる。そのため、プラズマ処理の条件が変わったとしても、被処理物100における処理の面内分布の均一性を維持することができる。
【0042】
次に、被処理物100にエッチング処理を施す。
ゲートバルブ20bの扉20b1を、図示しないゲート開閉機構により開く。
図示しない搬送部により、搬入搬出口20aから被処理物100を処理容器2内に搬入する。搬入された被処理物100は載置部3上に載置され、載置部3に内蔵された図示しない静電チャックなどにより保持される。
図示しない搬送部を処理容器2の外に退避させる。
図示しないゲート開閉機構によりゲートバルブ20bの扉20b1を閉じる。
減圧部6により処理容器2内が所定の圧力となるように減圧される。この際、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2内が所定の圧力となるように圧力制御部61により制御される。
【0043】
次に、ガス供給部7から処理容器2内の処理空間23にエッチング処理に用いられるプロセスガスGを供給する。この際、ガス制御部71により供給するプロセスガスGの流量や圧力などが制御される。エッチング処理に用いられるプロセスガスGとしては、例えば、CF、CHF、NFなどやこれらの混合ガスなどを例示することができる。
【0044】
次に、電源51により所定の周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力が電極50に印加される。また、電源41により所定の周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力が載置部3に印加される。
【0045】
すると、電極50が誘導結合型電極を構成するので、窓部22を介して電磁場が処理容器2の内部に導入される。そのため、処理容器2の内部に導入された電磁場により処理空間23にプラズマPが発生する。発生したプラズマPによりエッチング処理に用いられるプロセスガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などの反応生成物が生成される。生成された反応生成物は、処理空間23内を下降して被処理物100の表面に到達し、エッチング処理が施される。
【0046】
次に、排気制御部28が設けられたプラズマ処理装置1を用いて、被処理物100にエッチング処理を施す場合について例示する。
まず、予め求められたプラズマ処理の条件と、整流板180の回転方向における位置(排気速度の分布)との関係と、対象となるエッチング処理の条件(プラズマ処理の条件)とから、適正な整流板180の回転方向における位置を求める。
そして、制御部9は、移動部281aの電磁石を制御して、整流板180の回転方向における位置が適切なものとなるようにする。
そして、制御部9は、以下の動作を行なわせる。
まず、図6に示すように、昇降部282によりカバー283を上昇させる。
続いて、搬入搬出口20aの扉20b1を、図示しない開閉機構により開く。このとき、扉20b1やシール部材20b2に付着したパーティクルや汚染物が飛散することがあるが、カバー283により処理空間23が分離されるので、これらパーティクルや汚染物が処理空間23に拡散されることがない。
続いて、図7に示すように、カバー283を下降させる。この場合、扉20b1が開いたときに飛散したパーティクルが沈降した後に、カバー283を下降させるようにすれば、処理空間23にパーティクルなどが侵入することを防止できる。
続いて、図示しない搬送手段により、搬入搬出口20aから被処理物100を処理容器2内に搬入する。被処理物100は載置台3に載置され、保持される。
続いて、図示しない搬送手段を処理容器2の外に退避させる。
続いて、昇降部282によりカバー283を上昇端位置まで上昇させる。
続いて、扉20b1を閉じる。扉20b1が閉じたときにパーティクルなどの汚染物が発生することがあるが、カバー283により処理空間23が分離されているので、カバー293の外側に存在するパーティクルなどの汚染物が処理空間23に混入することがない。この後、被処理物100に対して、エッチングや薄膜堆積などのプラズマ処理を開始する。プラズマ処理については前述した実施例と同様なので省略する。
【0047】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、プラズマ処理装置1に設けられた各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
例えば、前述の実施例では、排気制御部8の移動部81に設けられた電磁石81nsを制御して、整流板80の回転方向における位置を移動させる例を例示した。しかしながら、プラズマ処理が開始する前に、手動あるいは処理容器2の外部に設けられた図示しない搬送装置によって、予め設定された整流板80の回転方向における位置となるように、整流板80を移動部81に載置してもよい。この場合、移動部81には電磁石81nsを設ける必要はなく、移動部81は整流板80を移動させる機能は有さずに支持する部材であればよい。そして、整流板80は移動部81、181に対して着脱自在に支持されていればよい。また、排気制御部18、28も同様とすることができる。
また例えば、前述の実施例では、回転移動によって整流板80、181を移動する例を例示したが、水平移動によって整流板80を移動させることもできる。
この場合、排気制御部8に設けられた整流板80の孔部80aの内径寸法、排気制御部18に設けられた整流板180の外径寸法、および、排気制御部28に設けられた整流板180の外径寸法は、水平移動を行う距離を考慮して設定することができる。また、この場合においても、移動部81は磁力を印加するものではなく、整流板80、180を支持する部材とすることができる。そして、プラズマ処理が開始する前に、手動あるいは処理容器2の外部に設けられた図示しない搬送装置によって、整流板80、180を移動部181、281aに載置することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 プラズマ処理装置、2 処理容器、2a 中心軸、3 載置部、3a 中心軸、4 電源部、5 電源部、6 減圧部、7 ガス供給部、8 排気制御部、9 制御部、18 排気制御部、28 排気制御部、40 電極、41 電源、50 電極、51 電源、80 整流板、80a 孔部、80a1 中心、80n 部分、80s 部分、81 移動部、81ns 電磁石、100 被処理物、180 整流板、180a 孔部、180a1 中心、180b 中心、181 移動部、281a 移動部、281b 移動部、282 昇降部、283 カバー、G プロセスガス、P プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7