(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造分野の製造ラインで用いられるパイプや継手には、耐薬品性、耐熱性、高いクリーン度などが要求されている。これらの要求を満足するパイプや継手としては、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)などのフッ素樹脂が最も適している。これらのパイプや継手を接合して半導体製造プロセスの管路を構成するに際しては、パイプや継手を溶着して管路を構成している。
【0003】
熱可塑樹脂製チューブ継手同士を溶着する方法としては、チューブ端部を加熱手段で溶融するまで加熱し、その後、溶融したチューブ端部同士を所定の圧力で突き合わせて溶着する溶着方法が一般に知られている。
【0004】
この溶着方法で熱可塑樹脂製チューブ同士を溶着した場合、溶融させたチューブ端部同士を押し付け時に、チューブの内周方向に溶融した樹脂がはみ出して溶融ビード(以下、内面ビードという)が発生するおそれがある。チューブ溶着部位の内周面に内面ビードが発生すると、パーティクル(汚染物質)の付着/堆積による液体の純度の低下や、流路面積の減少による液量の低下、液体の乱れによるマイクロバブルの発生等の不具合が生じることになる。
【0005】
この内面ビードの発生を防止する溶着方法として、特許文献1が提案されている。同文献1は、溶融し合ったチューブ端部同士を押付け機構により圧接して溶融接合させ、この接合状態を一定時間加圧保持した後、引伸ばし機構でチューブの片方若しくは両方を押付け方向とは逆方向に引き伸ばしてチューブ溶着部位の内周面に発生した内面ビードを滑らかな状態に減少させ、その後、そのまま冷却させることにより内面ビードの発生を防ぐ溶着方法である。
【0006】
この溶着方法により熱可塑樹脂製チューブ同士を溶着すると、チューブ同士を強固に接合することができるとともに内面ビードの発生を防止することができるので、溶着部位の流路面積の減少及びマイクロバブルの発生を抑制することが可能となり、半導体製造プロセスに求められる高度な要求を満たして熱可塑樹脂製チューブ同士を溶着することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、PFAなどの熱可塑樹脂は加熱すると膨張し、冷却すると収縮する特性を有しているため、特許文献1に開示された溶着方法により熱可塑樹脂製継手のチューブ端部同士を溶着すると溶着部位の内周面に内面ビードの発生を抑制することはできるが、溶融接合させた継手同士を引き伸ばして内面ビードを滑らかな状態に減少させた後にそのまま冷却させる工程において、チューブの溶着部位が収縮することによるV字ノッチや肉薄部が発生するおそれがあるため、常時、最適な内面ビード状態に製作するのが困難であり、よって、その再現性と量産に供する溶着方法と溶着機の改善が求められていた。
【0009】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、熱可塑樹脂製チューブ継手同士を高精度に接合することができるとともに、チューブ同士の溶着部位に平坦な内面ビードを形成することができ、V字ノッチ、肉薄部の発生を防止することができる熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方
法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、熱可塑樹脂製チューブ同士の端部を溶融させて溶着する溶着方法であって、
溶融前のチューブ端部同士が当接する位置を記録する工程と、チューブ端部同士を離間させて非接触状態のヒータでチューブ端部を溶融させる溶融工程と、溶融したチューブを溶融前のチューブ端部同士が当接する位置まで移動させた状態からチューブ端部同士を押し込む押し込み工程と、この工程を経た後にチューブ同士を引き延ばす引き伸ばし工程とからなり、前記引き伸ばし工程の引き伸ばし量を前記押し込み工程の押し込み量より大きくしたことを特徴とする熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方法である。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記熱可塑性樹脂製チューブ同士を熱可塑性樹脂製のクランプ部材により把持してクランプするようにした熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記クランプ部材は
、PTFE
であり、前記チューブは、PFAである熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方法である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記引き伸ばし工程の後に自然冷却工程を経るようにした熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方法である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記押し込み工程と前記引き伸ばし工程と前記自然冷却工程の各工程において、
前記チューブ同士
は、前記クランプ部材か
ら滑るよう
なすべり作用が付与される熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方法である。
【0016】
請求項
6に係る発明は、
前記熱可塑樹脂製チューブ継手が、チューブ、チーズ、エルボ、レデューサ、バルブの接続端、ジョイントに用いる熱可塑樹脂製チューブ継手
の溶着方法である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1
又は2に係る発明によると、非接触ヒータで加熱、溶融させるとチューブ端部が膨張する影響を考慮し、引き伸ばし工程の引き伸ばし量を押し込み工程の押し込み量より大きくしているため、チューブ端部同士を突合せ溶着した際に発生した内面ビードを十分引っ張って滑らかな状態に減少させることができるので、溶着部位の内周面における溶着ビードの発生を確実に抑制することができる。従って、この溶着方法によると、確実な再現性と量産に寄与した方法を提供することができる。
【0023】
しかも、溶融前のチューブ端部同士が当接する当接位置で所定のクランプ力を有するクランプ部材によりチューブ同士をクランプするため、その後に実施する押し込み工程及び引き伸ばし工程において、押し込み量、引き伸ばし量を計測する基準位置を正確に把握することができ、著しく再現性が良好である。
【0024】
請求項3に係る発明によると、摩擦力の小さいPTF
Eの樹脂材質でクランプ部材を形成することで、クランプ部材と
PFA製のチューブの間を滑りやすくしているため、クランプ部材の把持力を超えた外力や収縮力(内部応力)がチューブに作用した場合には、チューブ同士がクランプ部材からやや滑るので、所望の滑り作用を付与して確実な再現性を得ることができる。
【0025】
請求項4に係る発明によると、引き伸ばし工程の後に自然冷却工程を経るようにすることにより、残留応力の発生を低減させ、しかも自然冷却工程による滑り作用の付与により、内面ビードの発生をより抑制することができるとともに、溶着部位にV字ノッチや肉薄部が発生することを防止することができる。
【0026】
請求項5に係る発明によると、クランプ部材の把持力を超えた外力や収縮力(内部応力)がチューブに作用した場合には、チューブ同士がクランプ部材からやや滑るようにしているため、押し込み工程では、チューブ同士が衝突から逃げる方向に滑ることで急激な押し付けを緩和させて溶着部位での内面ビードの盛り上がりを抑制することができる。また、引き伸ばし工程では、チューブ同士が引張りから逃げる方向に滑ることで急激な引き伸ばしを緩和させて内面ビードを滑らかな状態に減少させるとともに、肉厚の薄い部分の発生を抑制することができる。さらに、自然冷却工程では、溶着部位の冷却によりチューブ同士が収縮する方向に滑って溶着部位の変形を緩和させ、溶着部位にV字ノッチや肉薄部が発生することを防止することができる。また、各工程にそれぞれ滑り作用を付与して内面ビードの抑制と再現性に寄与できる。
【0028】
請求項
6に係る発明によると、熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着において、チューブの内外部に特別な装置や部材を設置する必要がないので、チューブ、チーズ、エルボ、レデューサ、バルブの接続端、ジョイントに熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着が可能であり、複雑な形状の配管体を製作することができ、各種の継手に応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明における熱可塑樹脂製チューブ継手の溶着方法とその溶着継手並びに溶着機を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、
図2は本発明における溶着方法の各工程を説明する図であり、
図3は、本発明における溶着機の一実施形態を示す概略図である。
【0036】
本発明における溶着方法は、溶融工程、押し込み工程、引き伸ばし工程、自然冷却工程から構成されており、
図1においては溶融工程を、
図2においては押し込み工程、引き伸ばし工程及び自然冷却工程を説明している。
【0037】
次に、本発明における溶着方法をPTFE製のクランプ部材により、外径1インチのPFA製チューブ継手同士を溶着する場合を例にして具体的に説明する。
先ず、
図1の(a)に示すように、溶着しようとするPFA製チューブ継手のチューブ11、12をクランプ部材13、14により調芯状態で把持(クランプ)し、チューブ11の端部11aとチューブ12の端部12aが当接する当接位置にクランプ部材13、14を移動させ、この時のクランプ部材13、14の位置(以下、ゼロ位置という。)を記録する。この時のクランプ部材13、14がチューブ11、12を把持するクランプ力は、チューブ11、12の軸心方向に16〜17Nの力が作用するとクランプ部材13、14からチューブ11、12が滑り始める程度の大きさであり、16〜17Nの範囲である。
【0038】
次いで、
図1の(b)に示すように、クランプ部材13を矢印15の方向へ移動させてチューブ11の端部11aとチューブ12の端部12aとの間を離間させ、その間隙に溶融ヒータ16をセットする。チューブ11、12の端部11a、12aと溶融ヒータ16は非接触状態であることが重要である。チューブ11、12の端部11a、12aが溶融ヒータ16に接触すると、チューブ11、12の端部11a、12aが溶融ヒータ16に溶着する不具合が発生し、チューブ11、12の端面11a、12aと溶融ヒータ16とが近接しすぎると、端面11a、12aの温度が高くなり、分解ガスの発生量も増えることになる。チューブ11、12の端面11a、12aと溶融ヒータ16との隙間は、例えば、1.0〜1.2mm程度であることが望ましく、この場合には端面11a、12aの温度を400℃前後に加熱しやすくなる。
【0039】
溶融ヒータのセットが完了して後、溶融ヒータ16を加熱し、
図1の(c)に示すように、チューブ11、12の端部11a、12aを非接触状態で加熱して溶融させる。なお、溶融ヒータ16を加熱する熱源の種類は適宜に選択可能であるが、例えば、電気ヒータを使用すると溶融ヒータ16の温度コントロールが容易となる。
【0040】
チューブ11、12の端部11a、12aが溶融したことを確認した後、
図1の(d)に示すように、溶融ヒータ16を収容する。以上で溶融工程は完了し、次の工程へと移行する。
【0041】
溶融ヒータ16を収容したら、
図2の(a)に示すように、クランプ部材13を矢印17の方向にゼロ位置まで移動させる。ゼロ位置測定時には、チューブ11、12の端部11a、12aは丁度当接する位置にあったが、溶融ヒータ16によりチューブ11、12の端部11a、12aを加熱溶融させた結果、端部11a、12aには溶融に伴い熱膨張が生じており、クランプ部材13をゼロ位置まで移動させた時点で両端部11a、12aはある程度溶け合った状態となる。
【0042】
クランプ部材13をゼロ位置まで移動させた後、直ちに、
図2の(b)に示すように、クランプ部材13をこのゼロ位置から矢印18の方向に所定量だけ押し込む押し込み工程に移行する。外径1インチのPFA製チューブ継手の場合には、この押し込み量は0.2mmであるが、クランプ部材13、14が摩擦力の小さいPTFE等の樹脂により形成され、また、小さなクランプ力でチューブ11、12を把持しているため、クランプ部材13を押し込んだ際に、チューブ11は0.02mm矢印19の方向に、チューブ12は0.07mm矢印20の方向にクランプ部材から滑って衝突から逃げるので、クランプ部材13の押し込み量0.2mmに対するチューブ11のゼロ位置からの実質的な押し込み量は0.11mmである。このため、急激な押し込みの影響が緩和され、チューブ11、12の溶着部位21の内周に生じる内面ビード22の高さが低くなるとともに、V字ノッチ23の発生を抑制する効果がある。この押し込んだ状態を0.5秒間維持して押し込み工程を終了するが、この押し込んだ状態を維持した間にチューブ11、12の溶着部位21は若干冷却される。
【0043】
押し込み工程の終了後、
図2の(c)に示すように、クランプ部材13を押し込み位置から矢印24で示す押し込みの反対方向に、押し込み量の2倍だけ引き戻す引き伸ばし工程を実施する。外径1インチのPFA製チューブ継手の場合には、この引き戻し量は0.4mmである。このクランプ部材13が引き戻されるに伴って、クランプ13に把持されたチューブ11が引き伸ばされることにより、溶着部位21も引き伸ばされるが、押し込み工程において一定時間押し込み状態を維持していたことにより、溶着部位21の樹脂はある程度冷却されて粘度が増加するとともに固化が始まるため、クランプ部材13による引張りに抵抗する。
【0044】
従って、前記の押し込み工程と同様に、クランプ部材13を矢印24に示す方向に引き戻した際に、双方のチューブ11、12は矢印25、26で示す引き伸ばしから逃げる方向にクランプ部材13、14から滑ることになる。このため、押し込み位置から0.4mmだけクランプ部材13を引き戻した際に、チューブ11は矢印25の方向に0.06mm、チューブ12は矢印26の方向に0.09mmクランプ部材から滑って逃げるので、クランプ部材13の引き戻し量0.4mmに対するチューブ11の押し込み位置からの実質的な引き伸ばし量は0.25mmである。このため、急激な引き伸ばしの影響が緩和され、溶着部位21の内周に生じた内面ビード22の引き伸ばし量が少なくなるが、クランプ部材13を押し込み工程での押し込み量の2倍引き戻しているので、押し込み工程によりチューブ11、12の溶着部位21の内周に形成された内面ビード22を十分に引き伸ばして滑らかにすることができる。その一方で、押し込み量より引き伸ばし量が大きいことにより、溶着部位21に肉厚が薄くなる部分が発生する。
【0045】
引き伸ばし工程でクランプ部材13を引き戻した後は、
図2の(d)に示すように、その位置でクランプ部材13を固定し、チューブ11、12の溶着部位21を冷却させる自然冷却工程を実施する。この工程では、溶融ヒータ16による加熱後に溶着したチューブ11、12の溶着部位21が冷却されるため、溶着部位21の収縮が発生する。この収縮により、溶着部位21に生じた薄肉部を埋めるように矢印27、28で示す方向に周辺の樹脂が薄肉部に寄り集まり、薄肉状態を解消するとともに、V字ノッチ23を縮小しようとする。溶着部位21が冷却されて収縮するに従って溶着部位21には収縮力が作用するが、この収縮力はクランプ部材13、14がチューブ11、12を把持するクランプ力よりも大きいため、チューブ11、12は矢印29、30で示す方向にクランプ部材13、14から滑って溶着部位21を収縮させることができるので、薄肉部が解消され、V字ノッチ23も縮小する。
【0046】
また、クランプ部材13の押し込み量が0.2mm、引張り量が0.4mmであるのに対し、チューブがクランプ部材から滑ることによる実質的な押し込み量は0.11mm、実質的な引張り量は0.25mmであり、クランプ部材13の移動量よりも減少しているが、実質的な押し込み量と実質的な引張り量の比率は、略1:2である。
【0047】
以上説明したように、本発明の溶着方法では、溶融前のチューブ端部同士が当接する当接位置を基準のゼロ位置とし、その後にそのゼロ位置を基点に実施する押し込み工程及び引き伸ばし工程において、押し込み量、引き伸ばし量を正確に把握することができるので、再現性が著しく良好である。
【0048】
本発明の溶着方法を外径1インチのPFA製チューブ継手同士を溶着する場合を例にして説明したが、外径が異なる継手を溶着する場合には、押し込み量、押し込み維持時間、引き戻し量等を適切に設定することにより、本発明の溶着方法により、チューブ同士の溶着部位に平坦な内面ビードを形成するとともに、V字ノッチ、肉薄部の発生を防止し、再現性を良好に溶着することができる。
また、上記の溶着方法の説明においては、一方のクランプ部材13のみを移動させて押し込み工程、引張工程を実施するように説明したが、双方のクランプ部材13、14を移動させて押し込み工程、引張工程を実施しても、本発明の溶着方法を実施することができる。
【0049】
本発明における溶着方法では、チューブを単にクランプ部材で把持するのみで、チューブの内外部に特別な装置や部材を配置する必要がなく、またチューブを把持するクランプ力も小さいので、熱可塑樹脂製チューブ継手同士の溶着だけでなく、熱可塑樹脂製チューブ継手にチューブ、チーズ、エルボ、レデューサ、バルブの接続端、ジョイント等を、平坦な内面ビードを形成するとともに、V字ノッチ、肉薄部の発生を防止し、再現性を良好に溶着することが可能となった。
【0050】
次いで、本発明における溶着機について説明する。
図3においては、溶着機の概略図を示している。溶着機は、熱可塑樹脂製チューブ継手同士を突合せ溶着により接合するものである。
【0051】
同図において、溶着機本体31は、溶着機本体31にチューブ同士11、12をクランプするクランプ部材13、14と、チューブ端部11a、12aを非接触状態で溶融させる溶融ヒータ16と、この溶融ヒータ16の退避機構32と、前記クランプ部材13、14を着脱する着脱機構33、34と、前記クランプ部材13、14を移動させる移動機構35a、35bを有している。
【0052】
クランプ部材13、14は、例えば、PTFE等の摩擦力の小さい樹脂材質により形成されており、
図4(a)に示すように、円盤を上下半分に分割した形状の上側クランプ部材13a、14a及び下側クランプ部材13b、14bを一組として構成されている。上側クランプ部材13a、14a及び下側クランプ部材13b、14bの中心側にはクランプ穴36が形成されており、このクランプ穴36の内周面37がクランプ面となってチューブを把持する。このクランプ穴36の径は把持するチューブの外径に対応して決定される。
図4(b)に示すように、上側クランプ部材13a、14a及び下側クランプ部材13b、14bの中心側には、突出した半円形の嵌入突部38、38が形成されており、後述する着脱機構に設けた装着孔に着脱自在になっている。また、上側クランプ部材13a、14aの嵌入突部38外周の最上部位置、下側クランプ部材13b、14bの嵌入突部38外周の最下部位置には、後述するクランプの装着突部に装着するための着脱孔39、39が設けられている。
【0053】
退避機構32は、ハンドル41、ヒータ取付け部42を有し、このヒータ取付け部42に溶融ヒータ16を取付け可能になっている。退避機構32は、棒状のガイド部43に対して横移動並びに枢着回転可能に取付けられ、棒状のガイド部43を介して定位置に設置された状態で微調整でき、棒状のガイド部43を介して任意の位置まで横移動させ、ハンドル41を手動で操作回転することでクランプ部材13、14に把持されたチューブ11、12の間に溶融ヒータ16を持ち上げて配置し、或は、このチューブ11、12の間から溶融ヒータ16を退避させて溶着機本体31に形成された図示しない収納ボックスに収納可能になっている。退避機構32の回転操作は、ハンドル41による手動だけでなく、自動操作機構により行っても良い。
【0054】
着脱機構33は、
図5(b)に示すように、上側クランプ45及び下側クランプ46、並びに上側クランプ45及び下側クランプ46にそれぞれ設けられた装着突部48、48により構成されている。上側クランプ45及び下側クランプ46にはクランプ部材13を装着するための円形段部49が形成されており、上側クランプ45には円形段部49の上側半分49aが、下側クランプ46には円形段部49の下側半分49bがそれぞれ形成されている。
【0055】
上側クランプ45と下側クランプ46の円形段部49a、49bの内周側には、上側クランプ部材13a及び下側クランプ部材13bの嵌入突部38、38を嵌入させるための装着孔50、50が形成されている。これに加え、上側クランプ45の円形段部49aの最上部位置と下側クランプ46の円形段部49bの最下部位置には、装着突起48、48が設けられており、装着突起48、48の外周にはOリング51、51が装着されている。この装着突起48を上側クランプ45及び下側クランプ46に取付ける方法としては、装着突起48にオネジ部を形成して上側クランプ45及び下側クランプ46に設けたネジ穴に螺着しても良いし、上側クランプ45及び下側クランプ46に設けた穴に装着突起48を締り嵌めで装着しても良く、その他適宜の方法によることができる。
【0056】
図5(a)の断面図に示す状態のクランプ部材13を、
図5(c)に示すように、上側クランプ45及び下側クランプ46の円形段部49にクランプ部材13を装着すると、上側クランプ部材13aの着脱孔39に上側クランプ45の装着突起48が、下側クランプ部材13bの着脱孔39に下側クランプ46の装着突起48が嵌入される。このとき、装着突起48の外周に装着されたOリング51も着脱孔39内に嵌入されるが、Oリングの外径は着脱孔の半径よりも大きいため、着脱孔39内に嵌入されることによってOリングは圧縮され、その弾性力により上側クランプ部材13aに対しては矢印53の方向に、下側クランプ部材13bに対しては矢印54の方向に押圧力が作用する。この押圧力により上側クランプ部材13a及び下側クランプ部材13bがクランプ穴36の中心方向に押されることにより、クランプ部材13はチューブを把持することができる。
【0057】
着脱機構33はこのように構成されているため、上側クランプ部材13a及び下側クランプ部材13bを簡単かつ自在に着脱することができる。従って、外径の異なるチューブを溶着する場合には、事前に準備しておいた適合するクランプ穴径を備えたクランプ部材に交換するだけで良く、着脱機構の上側クランプ、下側クランプを交換する必要がないので、溶着作業を極めて効率的に実施することができる。
【0058】
以上、着脱機構33について説明したが、着脱機構34も着脱機構33と同一の構成、作用を有しているので、着脱機構34についての説明は省略する。
【0059】
移動機構35aは、ボールネジ57、モータ58を備え、モータ58により回転するボールネジ57を介して、棒状のガイド部43に沿って一体となって前進或は後退可能に設けられている。移動機構35aには着脱機構33が取り付けられており、モータ58を回転させて移動機構35aを前進、後退させることにより、クランプ部材13の位置を調整することができるようになっている。また、移動機構35aと対向する移動機構35bには着脱機構34が取り付けられており、手動により棒状のガイド部43に沿って前後に移動させることにより、クランプ部材14の位置を調整することができるようになっている。ストッパ59、59は、移動機構35a、35bを棒状のガイド43に沿って移動させた際に任意の位置で締め付け、移動機構35a、35bを固定することが可能になっている。
【0060】
以上のように構成された溶着機本体31を用いてチューブ11、12を溶着する場合には、予め、図示しないヒータ電源スイッチを溶着作業前にオンにして溶融ヒータ16を適切な温度に加熱するとともに、クランプ部材13、14にチューブ11、12を調芯状態で取付ける。その後、移動機構35a、35bの位置を調整して、チューブ11、12の端面11a、12aを当接させ、ストッパ59、59を締付けて移動機構35a、35bを棒状のガイド部43に固定するとともに、着脱機構33、34のガイド部43上の位置であるゼロ位置を測定する。着脱機構33、34はクランプ部材13、14を装着しているので、この位置はクランプ部材13、14のゼロ位置になる。
【0061】
次に、移動機構35aを作動させて着脱機構33を移動(後退)させ、チューブ11、12の端面11a、12aの間に、溶融ヒータ16を配置可能な間隙を設ける。ハンドル41を手動で操作回転して溶融ヒータ16を持ち上げてこの間隙に配置した後、溶融ヒータ16とチューブ12の端面12aとの隙間を調整し、その後、移動機構35aを作動させて溶融ヒータ16とチューブ11の端面11aとの隙間を調整する。
【0062】
溶融ヒータ16によりチューブ11、12の端面11a、12aが溶着に適した状態に溶融したことを確認した後、ハンドル41の操作によりチューブ11、12の端面11a、12aの間から溶融ヒータ16を退避させ、溶融工程を完了する。
【0063】
続いて、移動機構35aにより着脱機構33をゼロ位置まで移動させ、チューブ11、12の端面11a、12a同士を密着させる。
【0064】
着脱機構33をゼロ位置まで移動させたら、直ちに移動機構35aにより着脱機構33を着脱機構34に向けて所定量だけ押し込み(前進させ)、押し込み後に移動機構35aの作動を止め、一定時間押し込み状態を保つ押し込み工程に移行する。クランプ部材13、14は、摩擦力の小さいPTFE等の樹脂により形成され、装着突起48の外周に装着されたOリング51の弾性力による小さなクランプ力でチューブ11、12を把持しているため、着脱機構33を押し込んだ際に、双方のチューブ11、12は、衝突から逃げる方向にクランプ部材13、14からやや滑るため、チューブ11、12に対する実質的な押し込み量は、着脱機構33の押し込み量よりも少なくなる。このため、急激な押し込みの影響が緩和され、チューブ11、12の溶着部位21の内周に生じる内面ビード22の高さが低くなるとともに、V字ノッチ23の発生を抑制する効果がある。
【0065】
押し込み工程に続く引き伸ばし工程では、移動機構35aを作動させ、前工程での押し込み量の2倍の量だけ着脱機構33を押し込み方向とは反対方向に引き戻す(後退させる)。このとき、チューブ11、12の溶着部位21も引き伸ばされるが、押し込み工程において一定時間押し込み状態を保っていたことにより、溶着部位21の樹脂はある程度冷却されて粘度が高くなるとともに固化が始まっているので、着脱機構33が移動することによる引き伸ばしに抵抗する。このため、双方のチューブ11、12は引き伸ばしから逃げる方向にクランプ部材13、14からやや滑り、チューブ11、12に作用する実質的な引き伸ばし量は、着脱機構33の移動量よりも少なくなる。これにより、急激な引き伸ばしの影響が緩和され、溶着部位21の内周に生じた内面ビード22の急激な引き伸ばしが緩和されるが、押し込み工程での押し込み量の2倍量を引き伸ばしているので、押し込み工程によりチューブ11、12の内周に形成された内面ビード22を十分に引き伸ばして滑らかにすることができる。
【0066】
引き伸ばし工程の終了後、移動機構35aの作動を止め、チューブ11、12の溶着部位21の樹脂を冷却する自然冷却工程を実施する。この工程では、チューブ11、12の溶着部位21が自然冷却されるため、溶着部位21が収縮を起こす。この収縮により、引き伸ばし工程で溶着部位21に生じた薄肉部を埋めるように周辺の樹脂が薄肉部に寄り集まり、薄肉状態を解消させるとともに、V字ノッチ23を縮小させようとする。この時、溶着されたチューブ11、12には収縮力が作用し、この収縮力はクランプ部材13、14がチューブ11、12を把持するクランプ力よりも大きいので、チューブ11、12はクランプ部材13、14からやや滑って溶着部位21を収縮させ、薄肉部が解消されるとともに、V字ノッチ23も縮小される。
【0067】
所定の時間自然冷却させた後、溶着された継手をクランプ部材13、14から取り外すと溶着作業が完了する。
【0068】
上記の溶着機による溶着作業においては、制御機構により移動機構35aの動作を制御し、着脱機構33が所定の速度で所定量移動するようにすると、より高精度に状態でチューブ11、12を溶着することができ、再現性も向上する。また、上記の説明では、移動機構35aにより着脱機構33のみを前後に移動させて押し込み工程、引張り工程を実施するように説明したが、移動機構35a、35bにより着脱機構33、34を同時に作動させる構成とした溶着機であっても、これらの工程を実施することができるのは勿論である。