特許第6574592号(P6574592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧 ▶ 株式会社演算工房の特許一覧

<>
  • 特許6574592-ベルト探傷装置 図000002
  • 特許6574592-ベルト探傷装置 図000003
  • 特許6574592-ベルト探傷装置 図000004
  • 特許6574592-ベルト探傷装置 図000005
  • 特許6574592-ベルト探傷装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574592
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ベルト探傷装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B65G43/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-77507(P2015-77507)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-196351(P2016-196351A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】久田 英貴
(72)【発明者】
【氏名】内村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】前川 泰光
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030952(JP,A)
【文献】 特開2007−131457(JP,A)
【文献】 特開2007−230706(JP,A)
【文献】 特表2002−503802(JP,A)
【文献】 実開昭57−007727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/02
B65G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアの運転時に前記ベルトコンベアのベルトの損傷を探知するベルトコンベア探傷装置であって、
被搬送物を搬送する前記ベルトと、
前記ベルトの搬送方向に沿って間隔をおいて前記ベルトに設けられ、個別の識別子を格納した複数のRFタグと、
前記運転時及びその後の検査時において前記ベルトを駆動する駆動部と、
前記運転時において前記ベルトの所定箇所を連続的に撮像し、それら撮像画像を順次出力する撮像部と、
前記運転時に前記撮像部によって出力された撮像画像中のベルト損傷領域の有無を判定する損傷領域判定部と、
前記運転時及び前記検査時において前記ベルトの搬送により前記所定箇所を順次通過するRFタグの識別子を読み取るリーダーと、
前記運転時において、前記損傷領域判定部によってベルト損傷領域の存在が判定された場合に、前記リーダーによって読み取られた最新の識別子を記憶部に記録する記録部と、
前記検査時において前記リーダーによって読み取られた識別子と前記記憶部に記録された識別子とを対比して、これら識別子が一致するか否かを判定する対比部と、
前記検査時において前記対比部によって識別子の一致が判定された場合に、前記駆動部による前記ベルトの駆動速度を低速にするようよう前記駆動部を制御し、前記検査時において前記対比部によって識別子の一致が判定されなかった場合に、前記駆動部による前記ベルトの駆動速度を高速にするよう前記駆動部を制御する速度制御部と、
を備えることを特徴とするベルト探傷装置。
【請求項2】
前記記録部は前記損傷領域判定部によってベルト損傷領域の存在が判定された撮像画像を前記最新の識別子に対応づけて前記記憶部に記録することを特徴とする請求項1に記載のベルト探傷装置。
【請求項3】
警報器と、
前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積を所定閾値と比較する比較部と、
前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積が前記所定閾値以上であると前記比較部によって判定された場合に、前記警報器を作動させる警告処理部と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト探傷装置。
【請求項4】
前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積を所定閾値と比較する比較部と、
前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積が前記所定閾値以上であると前記比較部によって判定された場合に、前記駆動部を停止させる緊急停止部と、を備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のベルト探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアの運転中にそのベルトコンベアのベルトの損傷を探知するベルト探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工事の排土にはベルトコンベアが利用される。ベルトコンベアを断続的又は連続的に長時間運転すると、ベルトに傷或いは亀裂等が発生する虞があるので、ベルトを定期的に検査する。ベルトの検査時には、ベルトコンベアを低速で運転し、所定の位置でベルトの損傷を目視により探し出す。ところが、目視による検査は、ベルトコンベアの運転速度を低速にする必要があるので、検査時間が長期化してしまう。
【0003】
一方、目視による検査の長期化を抑えるべく、画像処理技術がベルトの損傷の検出に利用される(例えば、特許文献1参照)。具体的には、カメラにより撮影されたデジタル画像に対して二値化処理及びエッジ抽出処理が損傷部位検出部によって施されることによって、損傷部位が損傷部位検出部によって検出される。特許文献1に記載の技術では、このように検出された損傷部位の位置を特定するべく、金属からなる一つのマークがベルトに設けられているとともに、カメラの撮影箇所からベルトに沿って離れた位置にマーク検出部が設けられている。マークの検出時刻と損傷部位の検出時刻とベルトコンベアの停止時刻とがコンピューターによって特定され、マーク検出部から損傷部位までの距離がこれらの時刻の間の期間と所定の定数(ベルトの速度や、マーク検出部からカメラまでの距離)とに基づいてコンピューターによって算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−30952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ベルトがプーリーに掛けられており、ベルトとプーリーの間には滑りが生じる。そのため、損傷部位の位置特定のために利用したベルトの速度は実際のベルトの速度に一致せず、計算結果に誤差が生じてしまう。
また、一つだけのマークがベルトに設けられているので、損傷部位の位置を特定するために複雑な計算を要していた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。本発明は、損傷部位の位置をより正確且つ簡易に特定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するべく、本発明に係るベルト探傷装置は、ベルトコンベアの運転時に前記ベルトコンベアのベルトの損傷を探知するベルトコンベア探傷装置であって、被搬送物を搬送する前記ベルトと、前記ベルトの搬送方向に沿って間隔をおいて前記ベルトに設けられ、個別の識別子を格納した複数のRFタグと、前記運転時及びその後の検査時において前記ベルトを駆動する駆動部と、前記運転時において前記ベルトの所定箇所を連続的に撮像し、それら撮像画像を順次出力する撮像部と、前記運転時に前記撮像部によって出力された撮像画像中のベルト損傷領域の有無を判定する損傷領域判定部と、前記運転時及び前記検査時において前記ベルトの搬送により前記所定箇所を順次通過するRFタグの識別子を読み取るリーダーと、前記運転時において、前記損傷領域判定部によってベルト損傷領域の存在が判定された場合に、前記リーダーによって読み取られた最新の識別子を記憶部に記録する記録部と、前記検査時において前記リーダーによって読み取られた識別子と前記記憶部に記録された識別子とを対比して、これら識別子が一致するか否かを判定する対比部と、前記検査時において前記対比部によって識別子の一致が判定された場合に、前記駆動部による前記ベルトの駆動速度を低速にするようよう前記駆動部を制御し、前記検査時において前記対比部によって識別子の一致が判定されなかった場合に、前記駆動部による前記ベルトの駆動速度を高速にするよう前記駆動部を制御する速度制御部と、
を備える。
【0008】
本発明によれば、記憶部に記録された最新の識別子からベルト損傷領域の位置を特定することができる。ここで、リーダーがRFタグの最新の識別子を読み取った後にベルト損傷領域の存在が損傷領域判定部によって判定された場合に、その最新の識別子が記憶部に記録されるだけで、ベルト損傷領域の位置を特定できるので、ベルト損傷領域の位置の特定に複雑な計算を要さない。よって、ベルト損傷領域の位置の特定が簡易になる。また、複数のRFタグがベルトに設けられ、それら複数のRFタグのうちの何れかのRFタグの識別子が記憶部に記録されるので、ベルト損傷領域の位置を正確に特定することができる。
【0009】
好ましくは、前記ベルト探傷装置において、前記記録部は前記損傷領域判定部によってベルト損傷領域の存在が判定された撮像画像を前記最新の識別子に対応づけて前記記憶部に記録する。
【0010】
従って、記憶部に記録された撮像画像と最新の識別を参照して、ベルトを検査することができ、ベルトに生じた損傷を容易に発見することができる。
【0011】
好ましくは、前記ベルト探傷装置は、警報器と、前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積を所定閾値と比較する比較部と、前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積が前記所定閾値以上であると前記比較部によって判定された場合に、前記警報器を作動させる警告処理部と、を備える。
【0012】
従って、ベルトによる被搬送物の搬送が行われている時に大きな損傷がベルトに発生すれば、警報器が作動するので、大きな損傷の発生を作業者等に知らしめることができる。
【0013】
好ましくは、前記ベルト探傷装置は、前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積を所定閾値と比較する比較部と、前記運転時において前記損傷領域判定部によって存在が判定されたベルト損傷領域の面積が前記所定閾値以上であると前記比較部によって判定された場合に、前記駆動部を停止させる緊急停止部と、を備える。
【0014】
従って、ベルトによる被搬送物の搬送が行われている時に大きな損傷がベルトに発生すれば、ベルトが緊急停止するので、ベルトの切断等が発生する前にベルト補修等の安全対策を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、損傷部位の位置をより正確且つ簡易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ベルト探傷装置を示した図面である。
図2】ベルトの断面図である。
図3】ベルト探傷装置を示したブロック図である。
図4】ベルト探傷装置に備わる撮像装置によって撮像されたベルトの画像である。
図5図4に示す画像に対して画像処理を施すことによって得られた画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているので、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0018】
図1は、ベルト探傷装置10を示した概略図である。
このベルト探傷装置10は、地盤の掘削時に発生するずり(被搬送物)を搬送するベルトコンベア20の運転中にベルト29の損傷(傷や亀裂等)を探知するものである。ここでは、このベルト探傷装置10はシールド工法に採用されている。シールド工法では、シールドマシン1によって切羽2を掘削しつつ、シールドマシン1を逐次前進させ、シールドマシン1の後方にセグメントを組み立てることによってシールドトンネル3を構築する。切羽2の掘削により発生したずりをベルトコンベア20によってシールドトンネル3の坑口4まで搬送する。坑口4では、ベルトコンベア20によって搬送したずりをベルトコンベア9に載せ換え、そのずりをベルトコンベア9によって立坑等を通って地上まで搬出する。なお、ベルトコンベア20によって搬送する被搬送物がずりである場合、ベルト探傷装置10がシールド工法以外の地盤掘削工法に採用されてもよい。
【0019】
ベルト探傷装置10は、ベルトコンベア20、撮像装置30、照明装置40、コントロールユニット50及び警報器70を備える。更に、このベルト探傷装置10は、RFID(radio frequency identifier)技術を利用したリーダー80及び複数のRFタグ85を備える。
【0020】
・ベルトコンベア20について
ベルトコンベア20は、プーリー21〜26、ベルトストッカー27、モーター28及びベルト29を有する。プーリー23が切羽2近傍に設けられ、プーリー24が坑口4に設けられ、プーリー25がプーリー24よりも切羽2寄りに設けられ、プーリー22がプーリー25よりも切羽2寄りに設けられ、プーリー26がプーリー25の下方に設けられ、プーリー21がプーリー22の下方に設けられている。ベルトストッカー27がシールドトンネル3の外(例えば、立坑の上部)に設けられている。ベルトストッカー27から引き出されたベルト29は、プーリー21,22によって切羽2近傍まで案内され、更にプーリー23によって坑口4側へ折り返され、プーリー24によってプーリー25側へ折り返され、プーリー26,27によってベルトストッカー27に案内されている。モーター28はプーリー24を回転させる。モーター28はモータードライバ28a(図3参照)によって駆動される。なお、他のプーリー21〜23,25,26がモーター28によって駆動されてもよい。
【0021】
ベルト29は無端ベルトであり、モーター28が作動すると、ベルト29が循環する。そのベルト29はベルトストッカー27に一時的に貯留された後にベルトストッカー27から繰り出される。ベルト29が循環している時に、切羽2で発生したずりをプーリー23の位置でベルト29に載せ、そのずりをベルト29によってプーリー23からプーリー24へと搬送する。ベルトコンベア9がプーリー24の下方から地上にまで配されており、ベルト29がプーリー24で折り返されることによってずりがベルト29からベルトコンベア9へ載せ換えられる。
【0022】
プーリー24の外周面にはスクレイパー24aが設けられている。プーリー24によって折り返されるベルト29がスクレイパー24aに摺接し、ベルト29に付着したずりがスクレイパー24aによって除去される。
【0023】
・撮像装置30について
撮像装置30は、プーリー24よりも下流側且つベルトストッカー27よりも上流側において、ベルト29のずり搭載面に対向配置されている。この撮像装置30は、ベルト29の所定箇所を連続的に撮像し、ベルト29の撮像画像(静止画)を順次コントロールユニット50に出力する。ここで、撮像装置30は、エリア型の固体撮像素子と、ベルト29の一部の像を固体撮像素子に結像する光学レンズと、固体撮像素子によって撮像(光電変換)されたベルト29の一部の像をデジタルの撮像画像に変換する画像処理部と、を備える。撮像装置30による撮像のインターバル(フレームレート)は、或る撮像タイミングの撮像範囲と次の撮像タイミングの撮像範囲が部分的に重なるように設定されているか、それらの撮像範囲が途切れずに連なるように設定されていることが好ましい。
【0024】
・照明装置40について
照明装置40は、プーリー24よりも下流側且つベルトストッカー27よりも上流側において、ベルト29のずり搭載面に向けて斜めに光を照射することによって、撮像装置30による撮像範囲を照明する。撮像装置30の光軸と照明装置40の光軸はベルト29のずり搭載面において交差することが好ましい。照明装置40の光源は、発光ダイオード、有機EL素子、放電管、蛍光管又はフィラメントである。
【0025】
ここで、照明装置40から出射された光はベルト29のずり搭載面によって反射されるが、ベルト29に損傷が発生していると、その損傷によって照射光が乱反射される。また、損傷がベルト29を貫通した亀裂である場合、照射光が亀裂を通過するとともにその亀裂の縁によって乱反射される。そのため、撮像装置30による撮像画像では損傷が黒つぶれした状態で写る(図4参照)。以下では、撮像画像中に写ったベルト29の損傷部位(撮像画像中の黒つぶれ領域)をベルト損傷領域という。図4はベルト損傷領域が写った撮像画像の一例であり、黒つぶれの領域90がベルト損傷領域である。
【0026】
・RFタグ85について
ベルト29には、複数のRFタグ85がベルト29の搬送方向に沿って一定間隔で配列されている。好ましくは、これらRFタグ85がベルト29の縁部に設けられている。
【0027】
図2は、ベルト29の断面図である。図2に示すように、RFタグ85はベルト29に埋め込まれている。具体的には、ベルト29の縁部に穴29aが形成され、RFタグ85が穴29aに収容され、その穴29aがゴム弾性体等の充填剤29bによって充填されて、RFタグ85が充填剤29bに埋設されている。従って、RFタグ85の脱落を防止することができるとともに、ずりによるRFタグ85の損傷も防止することができる。更に、RFタグ85がプーリー21〜26に直接接触することがなく、RFタグ85はベルト29の走行に悪影響を及ぼさない。
【0028】
RFタグ85にはメモリー、制御回路及び送信機等が内蔵されており、そのメモリーにはRFタグ85ごとに個別に与えられた識別子(識別番号、識別符号等)が格納されている。好ましくは、RFタグ85は、電源を内蔵するとともにその電源の電力を利用して識別子を発信するアクティブ型タグである。そのため、後述のリーダー80とRFタグ85の交信距離が長くなり、リーダー80によるRFタグ85の識別子の読み取りミスを防止することができる。そのため、ベルト29を高速走行させても、RFタグ85とリーダー80との間の交信を行うことができる。
【0029】
・リーダー80について
図1に示すように、リーダー80は、プーリー24よりも下流側且つベルトストッカー27よりも上流側に設けられており、より好ましくは撮像装置30の上流側に配置されている。
【0030】
リーダー80はアンテナ及び制御回路等を有する。そして、リーダー80の近傍をRFタグ85が通過する時に、リーダー80がRFタグ85によって発信された識別子を読み取る。そして、リーダー80が読み取った識別子をコントロールユニット50に転送する。リーダー80とRFタグ85の交信方式は、電波方式又は電磁誘導方式である。なお、RFタグ85が電源を内蔵しないパッシブ方式であってもよいが、その場合にRFタグ85はリーダー80から受信した電磁波をエネルギー源として動作する。
【0031】
・警報器70について
警報器70は、坑口4の近傍(例えば、立坑)やシールドトンネル3内に設けられている。警報器70は、警告灯、警告表示器又は警告スピーカーである。
【0032】
・コントロールユニット50について
図3は、ベルト探傷装置10の構成を示したブロック図である。
コントロールユニット50は、CPU、GPU、ROM、RAM及びハードウェアインタフェース等を有するコンピューターである。このコントロールユニット50には、撮像装置30、警報器70、リーダー80及びモータードライバ28aのほか、操作部51、記憶部52及び表示部53が接続されている。
【0033】
操作部51は、スイッチ、キーボード、ポインティングデバイス等の入力装置である。
記憶部52は、半導体メモリー又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置である。記憶部52は、コントロールユニット50にとって読み書き可能なものである。記憶部52はコントロールユニット50の筐体に内蔵されてもよいし、外付けであってもよい。
表示部53は、画面表示を行うディスプレイである。表示部53はコントロールユニット50と一体型であってもよいし、別体型であってもよい。なお、ディスプレイ以外の出力装置(例えば、プリンター)がコントロールユニット50に接続されてもよい。
【0034】
記憶部52には、コントロールユニット50によって実行可能なプログラム52aが格納されている。なお、プログラム52aは、コントロールユニット50のROMに格納されていてもよい。
【0035】
・コントロールユニット50の処理・機能について
ベルトコンベア20の運転中に、つまりモーター28がモータードライバ28aによって駆動されている時にコントロールユニット50がプログラム52aに基づいて実行する処理について以下に具体的に説明する。
【0036】
プログラム52aがコントロールユニット50に識別子一時的記憶処理を実行させ、コントロールユニット50が識別子一時的記憶部として機能する。つまり、コントロールユニット50は、リーダー80によって読み取られた識別子をリーダー80から取得する。そして、コントロールユニット50は、その取得した識別子を、次にリーダー80から識別子を取得するまでの間、一時的に記憶する。従って、コントロールユニット50によって一時的に記憶される識別子は、コントロールユニット50がリーダー80から識別子を取得するごとに、最新の識別子に更新される。
【0037】
また、プログラム52aがコントロールユニット50に画像取得処理を実行させ、コントロールユニット50が画像取得部として機能する。つまり、コントロールユニット50は、撮像装置30から転送された撮像画像を取得する。
【0038】
また、プログラム52aがコントロールユニット50に損傷領域判定処理を実行させ、コントロールユニット50が損傷領域判定部として機能する。つまり、コントロールユニット50は、画像取得処理によって取得した撮像画像に対して各種の画像処理(例えば、二値化処理、エッジ検出処理等)を行うことによって、その撮像画像中のベルト損傷領域の有無を判定する。例えば、コントロールユニット50は、各種の画像処理(例えば、エッジ検出処理等の特徴抽出処理)によって撮像画像中のベルト損傷領域を認識し、その認識したベルト損傷領域の面積(つまり、画素数)を算出し、その算出した面積を所定の第一閾値と比較する。そして、その面積が第一閾値以上であれば、ベルト損傷領域の存在がコントロールユニット50によって判定され、その面積が第一閾値未満であれば、ベルト損傷領域の不在がコントロールユニット50によって判定される。そのため、第一閾値は、ベルト損傷領域の存在と不在を区別するための境となる値である。
この損傷領域判定処理は、コントロールユニット50によって画像取得処理が実行されるたびに実行される。
【0039】
図5は、図4に示す撮像画像を損傷領域判定処理中の画像処理することによって得られた画像を示す。図4に示すベルト損傷領域90が画像処理によって鮮明化され、画像処理後のベルト損傷領域90がコントロールユニット50によって認識される。
【0040】
図3に示すプログラム52aがコントロールユニット50に記録処理を実行させ、コントロールユニット50が記録部として機能する。つまり、損傷領域判定処理においてベルト損傷領域の存在が判定された場合、コントロールユニット50は、画像取得処理により取得した撮像画像と、損傷領域判定処理により画像処理した処理画像とを記憶部52に記録する。この際、コントロールユニット50は、一時的に記憶した最新の識別子を撮像画像及び処理画像に対応づけて記憶部52に記録する。そのため、或るRFタグ85がリーダー80を通過してそのRIタグ85の識別子がコントロールユニット50に一時的に記憶されてから、次のRFタグ85がリーダー80を通過するまでの間は、先のRFタグ85の識別子が撮像画像及び処理画像に対応づけられて記憶部52に記録される。ここで、複数のベルト損傷領域の存在が順次判定された場合、複数の撮像画像、処理画像及び識別子が記憶部52に蓄積され、これら撮像画像及び処理画像のそれぞれに識別子が対応づけられる。
【0041】
以上のように記憶部52に記録された識別子からベルト29の損傷の位置を特定することができる。ここで、所定の箇所から損傷までの距離や損傷の位置を算出するのではなく、ベルト損傷領域の存在が判定された場合に、リーダー80によって最後に読み取られた最新の識別子が記憶部52に記録されるだけで、ベルト損傷領域の位置が特定される。そのため、ベルト損傷領域の位置の特定に複雑な計算を要せず、ベルト損傷領域の位置の特定が簡易になる。また、ベルト29に設けられた複数のRFタグ85のうちの何れかのRFタグ85の識別子が記憶部52に記録されるので、ベルト損傷領域の位置を正確に特定することができる。なお、ベルト29に設けられるRFタグ85の数が多く、これらRFタグ85間のピッチが短ければ、ベルト損傷領域の位置をより正確に特定することができる。
【0042】
また、プログラム52aがコントロールユニット50に比較処理(中損傷・大損傷判定処理)を実行させ、コントロールユニット50が比較部として機能する。つまり、コントロールユニット50は、損傷領域判定処理の画像処理によって算出したベルト損傷領域の面積を所定の第二閾値及び第三閾値と比較する。ここで、第二閾値は、上述の第一閾値を超え、第三閾値未満の値である。比較の結果、ベルト損傷領域の面積が第二閾値以上、第三閾値未満であれば、コントロールユニット50がベルト損傷領域を中規模の損傷として判定する。また、比較の結果、ベルト損傷領域の面積が第三閾値以上であれば、コントロールユニット50がベルト損傷領域を大規模の損傷として判定する。
【0043】
また、プログラム52aがコントロールユニット50に警告処理を実行させ、コントロールユニット50が警告処理部として機能する。つまり、比較処理においてベルト損傷領域の面積が第二閾値以上、第三閾値未満である場合(中規模の損傷が判定された場合)、コントロールユニット50が警報器70を作動させる。そうすると、警報器70が警告灯であれば、警報器70が点灯又は点滅し、警報器70が警報スピーカーであれば、警報器70から警告音が発せられ、警報器70が警告表示器であれば、警報器70によって警告が表示される。これにより、作業者に警告を報知することができる。
【0044】
また、プログラム52aがコントロールユニット50に緊急停止処理を実行させ、コントロールユニット50が緊急停止部として機能する。つまり、比較処理においてベルト損傷領域の面積が第三閾値以上である場合(大規模の損傷が判定された場合)、コントロールユニット50がモータードライバ28aをオフにして、モーター28を停止させる。これにより、ベルトコンベア20が停止する。モーター28の停止と併せて、コントロールユニット50が警報器70を作動させ、作業者に警告が報知される。
【0045】
続いて、ベルトコンベア20の運転後の検査時にコントロールユニット50がプログラム52aに基づいて実行する処理について以下に具体的に説明する。
【0046】
プログラム52aは、コントロールユニット50に入力処理を実行させる。つまり、作業者が操作部51を操作すると、コントロールユニット50は操作部51の操作に従った指示を入力する。
【0047】
また、プログラム52aは、コントロールユニット50に出力処理を実行させる。つまり、コントロールユニット50は、操作部51から指示を入力すると、撮像画像及び処理画像とそれらに対応づけられた識別子とを記憶部52から読み取る。そして、コントロールユニット50は、読み取った撮像画像、処理画像及び識別子を対応付けした状態でこれら撮像画像、処理画像及び識別子を表示部53に表示させる。ここで、記憶部52に格納された撮像画像が複数ある場合、コントロールユニット50はこれら撮像画像を表示部53に順次表示させるか、或いは一括表示させる。複数の撮像画像が順次表示又は一括表示される場合でも、それぞれの撮像画像に処理画像及び識別子が対応付けされた状態で表示部53に表示される。
なお、コントロールユニット50は、撮像画像、処理画像及び識別子を対応付けした状態でこれらの出力(印刷)をプリンターに行わせてもよい。
【0048】
識別子が表示部53に表示されるので、ベルト29の検査時に作業者が損傷位置を把握することができる。つまり、作業者は、表示部53に表示された識別子が格納されたRFタグ85と、次のRFタグ85との間に損傷が存在することを把握することができる。
【0049】
ベルト29の検査時には、ずり搬送時のモーター28の回転方向と同一方向にモーター28を作動させて、作業者が所定の位置(例えば、撮像装置30又はリーダー80の設置位置やその近傍)でベルト29を目視により損傷の有無を検査する。ここで、記憶部52に記憶された識別子(表示部53に表示された識別子)に対応づけられたRFタグ85が作業者の前を通過した時に、モーター28を低速運転すれば、作業者が損傷を容易に探し出すことができるとともに、損傷の見落としもない。一方、記憶部52に記憶されていない識別子(表示部53に表示されていない識別子)に対応づけられたRFタグ85が作業者の前を通過した時に、モーター28を高速運転すれば、検査時間の短縮が図れる。
【0050】
なお、検査時において、コントロールユニット50がプログラム52aに従って動作中のモーター28の速度を制御してもよい。具体的には、コントロールユニット50は、リーダー80から取得した識別子(リーダー80を通過したRFタグ85から読み取られた識別子)を記憶部52に記憶された識別子と対比する。そして、リーダー80から取得した識別子が記憶部52に記憶された識別子と一致する場合には、コントロールユニット50がモーター28を低速度に制御する。一方、リーダー80から取得した識別子が記憶部52に記憶された識別子と一致しない場合には、コントロールユニット50がモーター28を高速度に制御する。そのため、作業者が撮像装置30又はリーダー80の近傍でベルト29を目視で検査している場合、損傷を見落とすことなく容易に探し出すことができるとともに、検査時間の短縮も図ることができる。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0052】
上記実施形態では、ベルト29によって搬送される被搬送物がずりであったが、ずりに限るものではない。つまり、ベルトコンベア20の用途は排土に限るものではない。
【符号の説明】
【0053】
1…シールドマシン, 2…切羽, 3…シールドトンネル, 4…坑口, 9…ベルトコンベア, 10…ベルト探傷装置, 20…ベルトコンベア, 21〜26…プーリー, 24a…スクレイパー, 27…ベルトストッカー, 28…モーター(駆動部), 28a…モータードライバ, 29…ベルト, 29a…穴, 29b…充填剤, 30…撮像装置(撮像部), 40…照明装置, 50…コントロールユニット(損傷領域判定部、記録部、比較部、警告処理部、緊急停止部), 51…操作部, 52…記憶部, 52a…プログラム
図1
図2
図3
図4
図5