特許第6574595号(P6574595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574595
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】電動ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20190902BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F04C15/00 L
   F04C2/10 341H
   F04C15/00 K
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-84204(P2015-84204)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-205158(P2016-205158A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】本間 和博
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
(72)【発明者】
【氏名】小貫 俊裕
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160079(JP,A)
【文献】 特開2013−096283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/00
F04C 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータロータと、
前記モータロータの周囲に配置された金属製ステータと、
前記金属製ステータを覆う樹脂製モータモールドと、
ポンプ側アウターロータとポンプ側インナーロータを収納し、前記金属製ステータに少なくとも一部接触する金属製ポンプボディと、
前記樹脂製モータモールドと前記金属製ポンプボディとを固定するボルトと、
前記金属製ステータに設けられて、前記ボルトを挿入するボルト挿入部と、
を備え、
前記ボルトは、前記ボルト挿入部に挿入されて、前記樹脂製モータモールド、前記金属製ステータ及び前記金属製ポンプボディを締結する電動ポンプ装置。
【請求項2】
回転軸を備えるモータロータと、このモータロータの周囲に配置された金属製ステータと、
前記モータロータと金属製ステータの外周に配置され、前記金属製ステータの底面が露出するように前記金属製ステータの周囲を被覆する樹脂製モータモールドと、
前記回転軸に固定されたポンプ側インナーロータと、このポンプ側インナーロータの外周に配置されたポンプ側アウターロータと、
前記金属製ステータと少なくとも一部接触し、ポンプ側インナーロータとポンプ側アウターロータを収納する金属製ポンプボディと、
前記金属製ステータと前記金属製ポンプボディにおける、前記モータロータ、ポンプ側インナーロータ及びポンプ側アウターロータを避けた位置に、前記回転軸の軸方向に沿って設けられたボルト挿入部と、
前記樹脂製モータモールドにおける前記ボルト挿入部に対応する位置に設けられたボルト締結部と、
前記ボルト挿入部に挿入され、その先端のねじ部が前記ボルト締結部にねじ込まれているボルトを備え、
前記ボルトにより、前記樹脂製モータモールドと、前記金属製ステータと、前記金属製ポンプボディが固定されている電動ポンプ装置。
【請求項3】
前記樹脂製モータモールドに設けられたボルト締結部が、前記樹脂製モータモールドに固定されたインサートナットであり、前記金属製ポンプボディ側から前記ボルト挿入部に挿入したボルトのねじ部がこのインサートナットにねじ込まれている請求項2に記載の電動ポンプ装置。
【請求項4】
前記金属製ポンプボディ側からインサートナットにねじ込んだボルトが、電動ポンプ装置を固定する部材側から前記金属製ポンプボディ及び前記金属製ステータの前記ボルト挿入部を貫通して、その先端が樹脂製モータモールドのインサートナットにねじ込まれている請求項3に記載の電動ポンプ装置。
【請求項5】
回転軸を備えるモータロータと、このモータロータの周囲に配置された金属製ステータと、
前記モータロータと金属製ステータの外周に配置され、前記金属製ステータの底面が露出するように前記金属製ステータの周囲を被覆する樹脂製モータモールドと、
前記回転軸に固定されたポンプ側インナーロータと、このポンプ側インナーロータの外周に配置されたポンプ側アウターロータと、
前記金属製ステータと少なくとも一部接触し、ポンプ側インナーロータとポンプ側アウターロータを収納する金属製ポンプボディと、
前記金属製ステータと前記樹脂製モータモールドにおける、前記モータロータ、ポンプ側インナーロータ及びポンプ側アウターロータを避けた位置に、前記回転軸の軸方向に沿って設けられたボルト挿入部と、
前記金属製ポンプボディにおける、前記ボルト挿入部に対応する位置に設けられたボルト締結部と、
前記ボルト挿入部に挿入され、その先端のねじ部が前記ボルト締結部にねじ込まれているボルトを備え、
前記ボルトにより、前記樹脂製モータモールドと、前記金属製ステータと、前記金属製ポンプボディが固定されている電動ポンプ装置。
【請求項6】
前記樹脂製モータモールドに第1のボルト締結部が設けられ、前記金属製ポンプボディ側から前記ボルト挿入部に挿入した第1のボルト先端のねじ部がこの第1のボルト締結部にねじ込まれ、
前記金属製ポンプボディに第2のボルト締結部が設けられ、前記樹脂製モータモールド側から前記ボルト挿入部に挿入した第2のボルト先端のねじ部が第2のボルト締結部にねじ込まれている請求項1に記載の電動ポンプ装置
【請求項7】
前記金属製ステータの前記回転軸の軸方向と直交する断面が円環状であり、
前記断面が円環状の金属製ステータの外周には、前記回転軸の径方向に向かって突出部が設けられ、
この突出部に、前記ボルト挿入部が設けられている請求項1から請求項6のいずれかに記載の電動ポンプ装置。
【請求項8】
前記金属製ステータの前記回転軸の軸方向と直交する断面が円環状であり、
前記金属製ポンプボディの前記回転軸の軸方向と直交する断面が四角形であり、
前記金属製ポンプボディの四角形のコーナー部分における前記金属製ステータの外周よりも張り出した部分に、前記ボルト挿入部またはボルト締結部が設けられ、
前記樹脂製モータモールド及び金属製ステータにおける回転軸の径方向外側には、前記金属製ポンプボディの四角形のコーナー部分に対応して前記突出部が設けられ、
前記突出部に、前記ボルト挿入部またはボルト締結部が設けられている請求項7に記載の電動ポンプ装置。
【請求項9】
前記樹脂製モータモールドに電子部品を装着した基板が固定され、
この基板に、前記電動ポンプ装置に加わる加速度が伝達された状態において、基板との接合部に応力が加わる電子部品が装着されている請求項1から請求項8のいずれかに記載の電動ポンプ装置。
【請求項10】
前記ボルト挿入部、これに対応するボルト締結部、及び前記ボルト挿入部を通ってボルト締結部にねじ込まれている前記ボルトが、前記回転軸の周方向の異なる位置に少なくとも3箇所設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の電動ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオイルの通流を制御する電動オイルポンプと使用される電動ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機などにオイルを供給するポンプとして電動オイルポンプが主流になりつつある。電動オイルポンプは、例えば、特許文献1、特許文献2に示すように、モータ部とポンプ部とから構成され、モータの回転軸にポンプのインナーロータを固定し、モータによりインナーロータを回転させる仕組みである。
【0003】
モータ部は、ステータとロータを主要部品としたモータ本体と、その軸方向一端側に設けられた基板を備え、この基板上にモータの駆動回路を搭載する電子部品を実装している。モータ本体と基板は、金属や樹脂のケースで覆われている。特に、最近ではこのケースとして、その主要部分を樹脂成形品のカバーにより構成し、基板と外部とを電気的に接続するコネクタをこの樹脂製カバーに一体化したものも提案されている。
【0004】
他方、ポンプ部は、モータの回転軸に固定されたインナーロータと、その周囲に配置されたアウターロータとを備え、これらインナーロータとアウターロータが金属製のポンプボディ内に収納されている。樹脂製モータモールドは、その底面が開口したカップ状の部材であり、前記金属製ポンプボディはその上面が開口したカップ状の部材であって、その開口部が向き合うように両者を組み合わせて固定することで、モータ部とポンプ部が樹脂製モータモールドと金属製ポンプボディによって密封される。
【0005】
この場合、樹脂製モータモールドにはモータのステータがモールド成型により固定され、樹脂製モータモールドにおけるステータの外側にはインサートナットが固定されている。このインサートナットに対して、ポンプボディー側から挿入したボルトの先端をねじ込むことで、樹脂製モータモールドと金属製ポンプボディとが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−126005号公報
【特許文献2】特開2012−241593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の電動オイルポンプは、車両の自動変速機などに使用されることが多いため、10年以上もの長期間にわたって振動を受けることから、優れた耐振動性能が要求される。通常、金属製ポンプボディを貫通するボルトの先端を樹脂製モータモールドのインサートナットに締結することで、樹脂製モータモールドと金属製ポンプボディの固定を行っていた。
【0008】
しかし、従来技術において、金属製ポンプボディに締結されているのはインサートナットのみであり、したがって電動オイルポンプの機械的強度を担っているのは樹脂製モータモールドである。特に、重量が大きい金属製のステータがモータモールドの樹脂によってのみ支えられているので、電動オイルポンプに加速度が加わると、ステータの慣性をモータモールドの樹脂が支えきれずにモータモールドの亀裂や破損の原因となったり、樹脂製モータモールドに振動や騒音が発生するおそれがあった。
【0009】
特に、モータ部に設けられている基板は、電動オイルポンプを固定している車両などから離れた位置にあり、しかも、電子部品は基板に対してピン状の端子などを介して片持ち式で接合されていることが多いため、樹脂製モータモールドに対して長期間振動が加わると、電子部品と基板との接合部や端子が破断することもあった。
【0010】
このような問題点は、電動オイルポンプに限らず、他の流体を送出する電動ポンプにも同様に生じるものであり、より優れた耐振動性能が要求されていた。
【0011】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、ステータを樹脂モールドする構造を維持しつつ、耐振動性能を向上させた電動ポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電動ポンプ装置は、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)モータロータ。
(2)前記モータロータの周囲に配置された金属製ステータ。
(3)前記金属製ステータを覆う樹脂製モータモールド。
(4)ポンプ側アウターロータとポンプ側インナーロータを収納し、前記金属製ステータに少なくとも一部接触する金属製ポンプボディ。
(5)前記樹脂製モータモールドと前記金属製ポンプボディとを固定するボルト。
(6)前記金属製ステータに設けられて、前記ボルトを挿入するボルト挿入部。
(7)前記ボルトは、前記ボルト挿入部に挿入されて、前記樹脂製モータモールド、前記金属製ステータ及び前記金属製ポンプボディを締結する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂製モータモールドと金属製ステータとを固定した状態で、金属製ステータと金属製ポンプボディとをボルト締めにより固定しているので、金属製ステータが樹脂製モータモールドの強度部材として作用し、その結果、樹脂製モータモールドの耐振性を向上させることができる。また、金属製ステータと金属製ポンプボディを締結することで、金属部材同士を強固に締結することができるので、装置全体の耐振性を向上させることができる。
特に、金属製ステータと金属製ポンプボディを直接接触させた場合には、金属同士の接触面積が増え、より強固に締結させることができ、耐振性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の電動ポンプ装置の分解斜視図である。
図2】第1実施形態の樹脂製モータモールド部分を断面した正面図である。
図3】第1実施形態のインサートナット部分の拡大断面図である。
図4】第1実施形態における樹脂製モータモールドを除去した斜視図である。
図5】第1実施形態と従来技術とを比較した斜視図である。
図6】第1実施形態と従来技術の共振点を比較したグラフである。
図7】第1実施形態と従来技術の加速度を比較したグラフである。
図8】第2実施形態の樹脂製モータモールドを除去した状態の斜視図。
図9】第2実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.第1実施形態]
[1.1 構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態において軸とは回転軸1の長手方向に向かい回転軸1の中央を通る軸をいい、単に周方向あるいは軸方向と言った場合は、回転軸1の周方向あるいは回転軸1の軸方向を示す。また、図2の断面図は、本実施形態の内部構造を分かり易く示すために、回転軸1部分の断面と、ボルト7部分の断面を1つの図に示したものである。
【0016】
図1の分解斜視図に示すように、本実施形態の電動ポンプ装置は、モータ部Mとポンプ部Pを有する。モータ部Mは、電動ポンプ装置の中心に設けられた1本の回転軸1に固定された円柱状のモータロータ2と、このモータロータ2の周囲に配置された金属製ステータ3(以下、ステータ3という)とを有する。モータロータ2とステータ3は、樹脂製モータモールド4(以下、モータモールド4という)の内部に収納される。
【0017】
モータモールド4は、本実施形態では四角い筒形の部材であり、その下部には図2の断面図に示すように、下面が開口した第1の空間部5が設けられ、この第1の空間部5にモータロータ2及びステータ3が収納される。ステータ3は、その下面とモータモールド4の下面とが同一平面になるように、モータモールド4内に収納される。ステータ3はモータモールド4に対してモールド成形により埋め込んでも良いし、ステータ3とモータモールド4を接着剤で固定しても良い。また、第1の空間部5の内側に圧入したり、嵌め込んでも良い。ステータ3はその内側にモータロータ2が回転自在に配置されるものであり、ステータ3内周面とモータロータ2の外周面との間には、両者が接触することなく回転できるような隙間が残される。
【0018】
ステータ3の外周形状は、モータロータ2の外周形状に合わせて円環状になっているが、本実施形態では、四角形としたモータモールド4の四隅の形状に合わせて、円環状の表面から径方向外側に向かって突出部6が設けられる。各突出部6には、モータ部Mとポンプ部Pを固定するためのボルト7を挿入するためのボルト挿入部8が、回転軸1と平行に貫通している。モータモールド4におけるボルト挿入部8に相当する位置には、図3の拡大図に示すように、本発明のボルト締結部に相当するインサートナット9が回転軸1と同方向に埋め込まれる。このインサートナット9は、モータモールド4の金型内に金属製のナットを配置しておき、モータモールド4を成形加工する場合に樹脂内部に金属製のナットを埋め込む成型方法、すなわちインサート成型法によりモータモールド4内に埋め込まれる。
【0019】
支持板10の上方には、上面が開口した第2の空間部12が設けられる。第2の空間部12の上面開口部を塞ぐように基板13が固定される。この基板13の下面にはモータ部Mの制御用電子部品14などが設けられ、基板13の表面から突出した電子部品14は第2の空間部12に収納される。図1では、電子部品14の一例として、基板13の下面に実装されたコンデンサを示している。
【0020】
基板13は、そこに設けた複数の貫通孔15に止めねじ(図示せず)を挿入し、この止めねじの先端を支持板10から立ち上げた円柱状の基板13支持部に設けたねじ穴17にねじ込むことで、モータモールド4に固定される。基板13の上面には、基板13と共に第2の空間部12を密封するインバータカバー18が設けられている。このインバータカバー18は、図示しない止めねじを、モータモールド4の上部外周に設けたねじ穴19にねじ込むことで、モータモールド4に固定される。
【0021】
ポンプ部Pは、図2の断面図に示すように、回転軸1に固定されたインナーロータ20とその外側に配置されたアウターロータ21とを備え、これらアウターロータ21とインナーロータ20は金属製ポンプボディ22(以下、ポンプボディ22という)内に収納されている。本実施形態において、ポンプボディ22は、その外周が四角形で、その内側に上下が開口した円筒状のロータ収納部23を備え、このロータ収納部23の内部に、外周が円周状になったアウターロータ21が回転可能に収納されている。図示しないが、アウターロータ21の内周にはポンプの圧縮室の外壁を構成する内ギヤが形成され、この内ギヤに対して、アウターロータ21の内側に挿入されたインナーロータ20の外ギヤが噛み合って回転する。
【0022】
ポンプボディ22の底部には四角いブロック状のポンプカバー24が固定され、このポンプカバー24によりロータ収納部23が密封されている。ポンプカバー24におけるポンプの圧縮室に対抗する箇所にはポンプ内部にオイルを流通させるための一対のポート25が開口している。このポンプカバー24は、本実施形態ではポンプボディ22と別体に設けられているが、ポート25の位置やポンプの形状に応じて、ポンプボディ22と一体に作製することもできる。
【0023】
四角形をしたポンプボディ22の四隅には、ステータ3に設けた4箇所の突出部6に設けたボルト挿入部8の位置に合わせて、ボルト挿入部26が回転軸1と同方向に貫通している。ポンプカバー24に設けたポート25の外側には、ポンプボディ22のボルト挿入部26の位置に合わせて、回転軸1と同方向に伸びる4箇所のボルト挿入部27が設けられる。ポンプカバー24の底面には、ボルト挿入部27の位置に合わせて、ボルト7の頭部を隠すための4箇所の凹部28が設けられる。
【0024】
モータ部Mとポンプ部Pは、ボルト7によって固定されている。具体的には、ステータ3の四隅の突出部6がポンプボディ22の四隅に向き合うようにして、内部にステータ3とロータを収納したポンプカバー24をポンプボディ22に重ね合わせ、ポンプボディ22の下面をポンプカバー24で塞ぎ、ポンプカバー24の底面から4本のボルト7を、ポンプカバー24のボルト挿入部27、ポンプボディ22のボルト挿入部26及びステータ3のボルト挿入部8内に順次を通して、ボルト7の先端をインサートナット9にねじ込む。
【0025】
この場合、組み立ての順番は特に限定がなく、例えば、次のように行う。
(1) ポンプカバー24の上にポンプボディ22を載せる。
(2) その内側にアウターロータ21を嵌め込む。
(3) 回転軸1にインナーロータ20とモータロータ2が固定された状態でアウターロータ21内にインナーロータ20を組み込む。
(4) モータロータ2の外側にステータ3を嵌め込む。
(5) その外側から予め基板13とインバータカバー18を組み付けておいたモータモールド4を被せる。
(6) 4本のボルト7の先端を、ポンプカバー24、ポンプボディ22及びステータ3を通して、インサートナット9にねじ込む。
【0026】
ボルト7によってモータ部Mとポンプ部Pとを固定した後は、ポンプカバー24の四隅に設けられた挿入孔29内に、ポンプカバー24の表面側(ポンプボディ22側)から固定ボルトを挿入し、この固定ボルトを電動ポンプ装置を固定する部材、例えば、車体に固定する。
【0027】
[1.2 作用効果]
上記のような構成を有する第1実施形態の作用効果は、以下のとおりである。
【0028】
(1)本実施形態では、モータモールド4とステータ3とを固定した状態で、ステータ3とポンプボディ22とをボルト締めにより固定しているので、金属製のステータ3がモータモールド4の強度部材として作用し、その結果、モータモールド4の耐振性を向上させることができる。また、ステータ3とポンプボディ22を締結することで、金属部材同士を強固に締結することができるので、装置全体の耐振性を向上させることができる。
【0029】
(2)本実施形態では、ステータ3とポンプボディ22を直接接触させているので、金属同士の接触面積が増え、より強固に締結させることができ、耐振性をより向上させることができる。
【0030】
(3)本実施形態では、周方向に所定の間隔を保って配置された3本以上、具体的には電動ポンプ装置の対角に配置された4本のボルト7によって、モータモールド4、ステータ3及びポンプボディ22の3部材を締結するので、電動ポンプ装置の周方向の各部において均等に締め付け力を与えることができ、締結強度も高く、装置の各部で締結に基づく歪みが生じない利点がある。
【0031】
(4)断面が円形のステータ3の外周には、回転軸1の周方向に向かって突出部6が設けられ、この突出部6にボルト挿入部8が設けられているため、ステータ3全体を大径化することなく、締結用のボルト7を配置することができ、装置の小型化が可能となる。また、突出部6以外の部分にはモータモールド4の樹脂を充填するスペースができるので、全体を小型化しながら、樹脂の肉厚を大きくして、その強度を向上させることができる。
【0032】
(5)本実施形態では、ポンプボディ22の四角形のコーナー部分に対応して突出部6が設けられ、この突出部6にボルト挿入部26が設けられているため、円形をしたステータ3と四角形のポンプボディ22形状の差から生じるスペースを有効に利用して、装置全体を締結することができ、装置の小型化に繋がる。
【0033】
(6)本実施形態では、モータモールド4に電子部品14を装着した基板13が固定され、基板13との接合部に応力が加わる電子部品14が装着されているが、ポンプボディ22にステータ3を直接ボルト締めしているので、電動ポンプ装置に大きな加速度が加わっても、モータモールド4がポンプボディ22に対して振動することがなく、モータモールド4やその内部に配置した基板13に大きな振動が加わることがない。その結果、基板13上に実装された電子部品14における基板13との接合部分に大きな応力が加わることがないので、接合部分の破壊されるおそれがない。特に、車載用の電動ポンプ装置のように、長期間にわたって振動が加わる電動ポンプ装置においても、電子部品14の端子が折損したり、はんだの溶着部が剥離する故障が低減する。
【0034】
(7)ポンプカバー側から挿入したボルト7を、ポンプボディ22を通してモータモールド4に締結しているため、電動ポンプ装置を車両側に固定しない状態において、モータモールド4、ステータ3及びポンプボディ22の3部材を締結するので、車両への固定前に電動ポンプ装置の組み立てが完了する利点がある。特に、モータモールド4とポンプボディ22によって内部の装置を密封できるので、装置の保管、輸送時に異物の混入がなく、また、車両への取り付け時において装置内部の部品の脱落や損傷もない。
【0035】
[1.3 比較例]
図5(a)に示す本実施形態と、図5(b)に示す従来技術の電動ポンプ装置に対して、XYZの3方向から加速度を加えて加振した場合の共振周波数を比較すると、下記の表1及び図6のグラフのとおりである。測定点は、図1に示すモータモールド4に設けられた基板13の中央に実装された電子部品14の箇所である。
【表1】
【0036】
この表1から分かるように、本実施形態の電動ポンプ装置では、1次共振周波数がX軸、Y軸の2方向について増加している。一般に車両に電動ポンプ装置を搭載した場合、1次共振周波数が2kHzに近いと車両の走行振動に電動ポンプ装置が共振することから、本実施形態のように1次共振周波数が増加することで、振動を抑制することが可能になる。
【0037】
同様に、XYZの3方向から所定の加速度を加えて加振した場合における前記測定点での2kHzの加速度を比較すると、下記の表2及び図7のグラフのとおりである。
【表2】
【0038】
この表2から分かるように、本実施形態の電動ポンプ装置では、いずれの方向(特に、X軸、Y軸の2方向)に対しても加速度が低減していることが分かる。
【0039】
[2.第2実施形態]
第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。第2実施形態は、第1のボルト7及び第2のボルト31を用いて、モータモールド4、ステータ3及びポンプボディ22の3部材を両側から締結したものである。
【0040】
本実施形態では、モータモールド4の対角の2箇所には、第1のボルト締結部であるインサートナット9が埋め込まれ、ポンプカバー24の底面から挿入した第1のボルト7をポンプボディ22及びステータ3に挿通して、モータモールド4のインサートナット9にねじ込んで固定する。ポンプボディ22の残る対角の2箇所には第2のボルト締結部であるねじ穴19が設けられ、モータモールド4の上側から挿入した第2のボルト31をステータ3に挿通して、ポンプボディ22のねじ穴19にねじ込んで固定する。
【0041】
第1のボルト7及び第2のボルト31によって固定された本実施形態の電動ポンプ装置は、第1実施形態と同様に、ポンプカバー24の四隅に設けられたられた挿入孔29内に、ポンプカバー24の表面側から固定ボルトを挿入し、この固定ボルトを車体などに締結する。
【0042】
このような構成を有する本実施形態によれば、複数のボルト7及びボルト31を用いて、モータモールド4、ステータ3及びポンプボディ22の3部材を両側から締結するので、予めモータモールド4側からのボルト31で3者を一体化しておき、その後、ポンプボディ22側からのボルト7で電動ポンプ装置を車両側に固定することが可能になる。その結果、車両に対する電動ポンプ装置の取り付けが簡単になる。
【0043】
本実施形態では、モータモールド4、ステータ3及びポンプボディ22の3部材を両側から締結するため、4箇所のボルト締結部を、モータモールド4のインサートナット9と、ポンプカバー24のねじ穴19とに分散させることができる。その結果、1つの部材に設けるねじ穴や凹部28などの空隙部が少なくなり、モータモールド4やポンプカバー24の肉厚を十分確保することができ、優れた締め付け強度を確保することができる。
【0044】
[3.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。以下、その一例を示す。
【0045】
(1)ステータ3やポンプボディ22に設けるボルト挿入部は、図示の実施形態のように、周囲が閉じた円形の貫通孔でも良いが、その他U字形断面のように、一部に切り欠きを有するものでも良い。モータ部Mとポンプ部Pを固定するボルト7及び/またはボルト31の本数や場所は、図示の実施形態に限定されず、より少なくても、多くても良い。
【0046】
(2)全てのボルト31をモータモールド4側から挿入して、モータモールド4、ステータ3、ポンプボディ22及びポンプカバー24を固定し、ポンプカバー24と車両などの固定は別のボルトCで行う。このようにすると、インサートナット9を使用する必要がなくなり、樹脂製のモータモールド4の成型加工が簡単になる。ボルト締結部も金属製のポンプボディ22やポンプカバー24にねじを切るだけで良いので、部品点数の削減になる。
【0047】
(3)モータモールド4にインサートナット9を設けてポンプカバー24側からボルト7で締結する場合に、このボルト7とポンプカバー24と車両とを締結するボルトと兼用すれば、装置の組み立てと車両への固定作業を少ないボルト数と締め付け工数により実施できる。また、ポンプカバー24を車体などの部材によって兼用し、車体などの部材からボルト7を挿入したり、車体などの部材にボルト締結部を設けることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1…回転軸、2…モータロータ、3…ステータ、4…モータモールド、5…第1の空間部、6…突出部、7…ボルト、8…ボルト挿入部、9…インサートナット、10…支持板、12…第2の空間部、13…基板、14…電子部品、15…貫通孔、16…基板支持部、17…ねじ穴、18…インバータカバー、19…ねじ穴、20…インナーロータ、21…アウターロータ、22…ポンプボディ、23…ロータ収納部、24…ポンプカバー、25…ポート、26…ボルト挿入部、27…ボルト挿入部、28…凹部、29…挿入孔、31…ボルト。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9