特許第6574599号(P6574599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574599新規ニッケルベースの組成物、およびオレフィンのオリゴマー化のための該組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574599
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】新規ニッケルベースの組成物、およびオレフィンのオリゴマー化のための該組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20190902BHJP
   C07F 9/46 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 2/32 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 2/24 20060101ALI20190902BHJP
   C07F 15/04 20060101ALN20190902BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   B01J31/22 Z
   C07F9/46
   C07C11/08
   C07C11/107
   C07C11/02
   C07C2/32
   C07C2/24
   !C07F15/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-90217(P2015-90217)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2015-214540(P2015-214540A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2018年4月16日
(31)【優先権主張番号】1453816
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(73)【特許権者】
【識別番号】515114588
【氏名又は名称】ウニフェルシテイト ファン アムステルダム
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ブーレン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール−アラン ブルイユ
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト レーク
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ オリヴィエ−ブルビグ
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02062906(EP,A1)
【文献】 特開平07−165821(JP,A)
【文献】 特表2004−531378(JP,A)
【文献】 特開2001−064211(JP,A)
【文献】 特公昭56−047887(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 31/22
C07C 2/24
C07C 2/32
C07C 11/02
C07C 11/08
C07C 11/107
C07F 9/46
C07B 61/00
C07F 15/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−(0)または(+II)の酸化数を有するニッケルの少なくとも1種の前駆体と
−式1a)、1b)または1c)
【化1】
[式中、
−AおよびA’は、同一である場合も異なっている場合もあり、独立に、O、S、NRまたはリン原子と炭素原子の間の単結合であり、
−基Rは、水素原子、または環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、または置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基のいずれかであり、
1aおよびR1bは、相互に同一であるかまたは異なっており、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるが、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択され、
−基Rは、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択される]
を有する少なくとも1種の配位子と
を含む、オレフィン供給原料をオリゴマー化するための触媒組成物であって、
該組成物において(+II)の酸化数を有するニッケルの前駆体が使用される場合には、還元剤の存在下で、またはブレンステッド塩基の存在下で使用されるという条件を有する、組成物。
【請求項2】
さらなるルイス塩基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらなるルイス塩基が、P(AR’1a)(A’R’1b)(A’’R’1c)型のホスフィンまたは(R’1a)(R’1bA’)P−NH(R’)もしくは(R’1a)(R’1bA’)P−NH−S(O)(R’)型のホスフィンアミン[式中、
−A、A’およびA’’は、同一である場合も異なっている場合もあり、独立に、O、S、NR、またはリン原子と炭素原子の間の単結合であり、
−基Rは、水素原子、または環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、または置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基のいずれかであり、
基R’1a、R’1bおよびR’1cは、相互に同一であるか、または異なっており、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるが、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択され、
−基R’は、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択される]
である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR1aおよびR1b、ならびに、同一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR’1a、R’1bおよびR’1cが、独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、1〜15個の炭素原子を含有するアルキル基および5〜20個の炭素原子を含有する芳香族基から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR1aおよびR1b、ならびに、同一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR’1a、R’1bおよびR’1cが独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンチル基から、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、メシチル、3,5−ジメチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、4−メトキシ−,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル、ベンジル、ナフチル、ビスナフチル、ピリジル、ビスフェニル、フラニルおよびチオフェニル基から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
同一である場合も異なっている場合もある基Rおよび基R’が、独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、1〜15個の炭素原子を含有するアルキル基および5〜20個の炭素原子を含有する芳香族基から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
同一である場合も異なっている場合もある基Rおよび基R’が、独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンチル基から、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、メシチル、3,5−ジメチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジt−ブチル−4−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、ベンジル、ナフチル、ビスナフチル、ピリジル、ビスフェニル、フラニルおよびチオフェニル基から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ニッケル前駆体が、酸化数(0)を有する場合に、ニッケル(0)ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)、ニッケル(0)ビス(シクロオクタ−1,3−ジエン)、ニッケル(0)ビス(シクロオクタテトラエン)、ニッケル(0)ビス(シクロオクタ−1,3,7−トリエン)、ビス(o−トリルホスファイト(tolylphosphito))ニッケル(0)(エチレン)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスファイト)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)およびニッケル(0)ビス(エチレン)から選択され、単独でまたは混合物として使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
酸化数(+II)を有するニッケル前駆体が、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(ジメトキシエタン)クロリド(II)、ニッケル(II)ブロミド、ニッケル(II)(ジメトキシエタン)ブロミド、ニッケル(II)フルオリド、ニッケル(II)ヨーダイド、ニッケル(II)スルフェート、ニッケル(II)カーボネート、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)ヒドロキシド、ニッケル(II)ヒドロキシアセテート、ニッケル(II)オキサレート、例えばニッケル(II)2−エチルヘキサノエートなどのニッケル(II)カルボキシレート、ニッケル(II)フェナート、ニッケル(II)アセテート、ニッケル(II)トリフルオロアセテート、ニッケル(II)トリフレート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、アリルニッケル(II)クロリド、アリルニッケル(II)ブロミド、メタリルニッケル(II)クロリド二量体、アリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスフェート、メタリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスフェート、ビスシクロペンタジエニルニッケル(II)、ビスアリルニッケル(II)およびビスメタリルニッケル(II)から選択され、その水和または非水和形態であり、単独でまたは混合物として使用されるものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、トリス(ヒドロカルビル)アルミニウム化合物、塩素含有または臭素含有ヒドロカルビルアルミニウム化合物、アルミノキサン、有機ホウ素化合物および、プロトンを供与または受容できる有機化合物によって形成される群から選択され、単独でまたは混合物として使用される活性化剤を含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
配位子とニッケル前駆体の間のモル比が、0.05〜10の範囲にある、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
オレフィン供給原料をオリゴマー化するための方法における、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の触媒としての使用。
【請求項13】
オレフィン供給原料をオリゴマー化するための方法であって、前記供給原料を、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項14】
供給原料が、2〜10個の範囲の炭素原子を含有するオレフィンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応が、エチレンオリゴマー化反応である、請求項13または請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ニッケルベースの組成物に関する。本発明はまた、前記組成物の、化学変換反応のための触媒としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術:
化学の種々の分野におけるその適用のための遷移金属をベースとする触媒組成物の調製は、特に、ヒドロホルミル化、水素化、クロスカップリング、オレフィンオリゴマー化などといった触媒的変換の分野において公知である。
【0003】
この種の触媒組成物の調製は、金属の選択および適当な配位子に応じて変わる。これらの配位子の中でも、二座配位子は、種々の種類の触媒的変換のための遷移金属をベースとする触媒組成物の調製において使用される重要なクラスの配位子に相当する。
【0004】
文書特許文献1には、式:R−SO−NH−P(XRまたはR−SO−N=PH(XRまたはR−SO(OH)=NP(XR(式中、Xは独立に、O、S、NHまたは結合であり;RおよびRは独立に、置換されている場合も置換されていない場合もあるアルキル基および配位子の少なくとも1種の等価物が、ロジウム、イリジウム、白金、パラジウムおよびランタニドから選択される金属のうちの1種の等価物と錯体を形成しているアリール基から選択される)を有する多座配位子を含む配位錯体の系が記載されている。特許文献1は、配位錯体系が、ヒドロホルミル化、水素化、重合、異性化などのための触媒として使用され得ることを示す。
【0005】
本出願人は、その研究において新規ニッケルベース組成物を開発した。驚くべきことに、このような組成物は、興味深い触媒特性を有することがわかった。特に、これらの組成物は、オレフィンのオリゴマー化において、より正確には、1−ブテンを形成するエチレンの二量化において良好な触媒活性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP2220099B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、新規ニッケルベース組成物を提供することである。別の態様では、化学変換反応のための、特に、オレフィンのオリゴマー化のための、前記組成物を含む新規触媒系が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の組成物
本発明の触媒組成物は、
−酸化数(0)または(+II)を有するニッケルの少なくとも1種の前駆体と、
−式1a)、1b)または1c)
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、
−同一である場合も異なっている場合もあるAおよびA’は独立に、O、S、NRまたはリン原子と炭素原子の間の単結合であり、
−基Rは、水素原子または環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基または置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基のいずれかであり、
−R1aおよびR1bによって式で表される基Rは、R1aおよびR1bは、相互に同一であるか、または異なっており、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるが、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択され、
−基Rは、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択される]
を有する少なくとも1種の配位子と
を含み、
該組成物において(+II)の酸化数を有するニッケルの前駆体が使用される場合には、還元剤の存在下で、またはブレンステッド塩基の存在下で使用されるという条件を有する。
【0011】
本発明との関連で、用語「アルキル」とは、1〜15個の炭素原子、好ましくは、1〜10個を含有する直鎖または分岐炭化水素鎖を意味するものとする。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびt−ブチル基から選択されることが有利である。これらのアルキル基は、ヘテロ元素またはハロゲンもしくはアルコキシ基などのヘテロ元素を含有する基で置換されていてもよい。用語「アルコキシ」置換基は、アルキル−O−基を意味し、ここで、用語「アルキル」は、上記で示される意味を有する。アルコキシ置換基の好ましい例として、メトキシまたはエトキシ基がある。
【0012】
用語「環状アルキル」とは、3個を超える炭素原子、好ましくは、4〜24個、より好ましくは、6〜12個を含有する単環式炭化水素基、好ましくは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルもしくはシクロドデシル基または3個を超える炭素原子、好ましくは、4〜18個を含有する多環式(二環式または三環式)基、例えば、アダマンチルもしくはノルボルニル基などを意味する。
【0013】
用語「直鎖不飽和アルキル」または「環状不飽和アルキル」とは、少なくとも1つの不飽和結合を含有する直鎖または環状アルキル基を意味し、用語「アルキル」および「環状アルキル」は、上記で示される意味を有する。
【0014】
用語「芳香族」とは、単環式または多環式芳香族基、好ましくは、5〜20個の炭素原子を含有する単環式または二環式を意味する。基が多環式である、すなわち、2以上の環式環を含む場合には、環式環は、対になって縮合されるか、またはσ結合を介して対になって接続され得ることが有利である。本発明に従う芳香族基は、窒素、酸素または硫黄などのヘテロ元素を含有し得る。
【0015】
本発明において使用されるような用語「配位子」は、本発明の組成物を形成するよう使用される式1a)、1b)および/または1c)を有する制限形のうち1種以上を意味するよう無差別に使用される。
【0016】
2種の基R(R1aおよびR1b)は、相互に同一である場合も異なる場合もある。これら2種の基R1aおよびR1b はまた、一緒に結合されてもよい。このような場合には、2種の基R1aおよびR1bは、ビス−フェニルまたはビス−ナフチルなどの基に対応し得る。
【0017】
本発明の配位子は、溶媒中で、例えば、トリエチルアミンなどのブレンステッド塩基の存在下でのスルホンアミド、例えば、パラ−n−ブチルフェニルスルホンアミドと、PhPClなどのホスフィンハロゲン化物との縮合反応によって調製され得る。溶液中で、これらの配位子は、上記の3種の形態1a)、1b)または1c)で存在(共存)し得る。
【0018】
本発明の組成物はまた、さらなるルイス塩基を含み得る。本発明との関連で、用語「ルイス塩基」とは、その成分が1以上の遊離または非結合電子対を有する任意の化学物質を意味する。本発明のルイス塩基は、特に、遊離もしくは非結合電子対またはニッケルとη型配位を形成できるπ二重結合を有する酸素、窒素またはリン原子を含む任意の配位子に相当する。
【0019】
本発明の組成物のさらなるルイス塩基は、P(AR’1a)(A’R’1b)(A’’R’1c)型のホスフィンまたは(R’1a)(R’1bA’)P−NH(R’)もしくは(R’1a)(R’1bA’)P−NH−S(O)(R’)型のホスフィンアミン[式中、
−相互に同一である場合も異なっている場合もあるA、A’およびA’’は独立に、O、S、NRまたはリン原子と炭素原子の間の単結合であり、
−基Rは、水素原子または環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基または置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基のいずれかであり、
−基R’、すなわち、R’1a、R’1bおよびR’1cは、相互に同一であるか、または異なっており、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるが、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択され、
−基R’は、環状である場合も環状でない場合もある、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もあるアルキル基、および置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある芳香族基から選択される]
であり得る。
【0020】
本発明に従って、基R、すなわち、同一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR1aおよびR1bならびに基R’、すなわち、同一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR’1a、R’1bおよびR’1cは独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、1〜15個の炭素原子を含有するアルキル基、および5〜20個の炭素原子を含有する芳香族基から選択される。
【0021】
好ましくは、基R、すなわち、同一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR1aおよびR1bならびに基R’、すなわち、同一である場合も異なっている場合もあり、一緒に結合されている場合も結合されていない場合もあるR’1a、R’1bおよびR’1cは独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンチル基から、また置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、メシチル、3,5−ジメチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル、ベンジル、ナフチル、ビスナフチル、ピリジル、ビスフェニル、フラニルおよびチオフェニル基から選択される。基R、すなわち、同一である場合も異なっている場合もあるR1aおよびR1bが、一緒に結合されている場合には、これらの基は、ビス−フェニルまたはビス−ナフチルなどの基に相当し得る。同一である場合も異なっている場合もある基R’が一緒に結合されている場合には、これらの基は、ビス−フェニルまたはビス−ナフチルなどの基に相当し得る。
【0022】
本発明に従って、同一である場合も異なっている場合もある基Rおよび基R’は独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、1〜15個の炭素原子を含有するアルキル基および5〜20個の炭素原子を含有する芳香族基から選択される。
【0023】
好ましくは、同一である場合も異なっている場合もある基Rおよび基R’は独立に、置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンチル基から、また置換されている場合も置換されていない場合もある、ヘテロ元素を含有する場合も含有しない場合もある、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、メシチル、3,5−ジメチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジt−ブチル−4−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、ベンジル、ナフチル、ビスナフチル、ピリジル、ビスフェニル、フラニルおよびチオフェニル基から選択される。
【0024】
好ましくは、基Rは、水素原子またはアルキル基のいずれかである。
【0025】
本発明の組成物は、溶媒の存在下である場合も、存在下ではない場合もある。有機溶媒から、特に、エーテル、アルコール、塩素含有溶媒および飽和、不飽和、芳香族または非芳香族、環状または非環状炭化水素から選択される溶媒を使用することが可能である。好ましくは、溶媒は、純粋なまたは混合物およびイオン性液体としての、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ブタンまたはイソブタン、好ましくは、4〜20個の炭素原子を含有するモノオレフィンまたはジオレフィン;シクロオクタ−1,5−ジエン、ベンゼン、トルエン、オルト−キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、メタノール、エタノールから選択される。溶媒がイオン性液体の場合には、特許US6951831B2およびFR2895406B1に記載されるイオン性液体から選択されることが有利である。
【0026】
ニッケル前駆体が、酸化数(0)を有する場合には、単独でまたは混合物として使用される、ニッケル(0)ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)、ニッケル(0)ビス(シクロオクタ−1,3−ジエン)、ニッケル(0)ビス(シクロオクタテトラエン)、ニッケル(0)ビス(シクロオクタ−1,3,7−トリエン)、ビス(o−トリルホスファイト(tolylphosphito))ニッケル(0)(エチレン)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスファイト)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)およびニッケル(0)ビス(エチレン)から選択され得る。前記ニッケル前駆体は、任意選択で、ルイス塩基と錯体を形成していてもよい。
【0027】
ニッケル前駆体が、酸化数(+II)を有する場合には、単独でまたは混合物として使用される、その水和または非水和形態の、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(ジメトキシエタン)クロリド(II)、ニッケル(II)ブロミド、ニッケル(II)(ジメトキシエタン)ブロミド、ニッケル(II)フルオリド、ニッケル(II)ヨーダイド、ニッケル(II)スルフェート、ニッケル(II)カーボネート、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)ヒドロキシド、ニッケル(II)ヒドロキシアセテート、ニッケル(II)オキサレート、例えば、2−エチルヘキサノエートなどのニッケル(II)カルボキシレート、ニッケル(II)フェナート、ニッケル(II)アセテート、ニッケル(II)トリフルオロアセテート、ニッケル(II)トリフレート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、アリルニッケル(II)クロリド、アリルニッケル(II)ブロミド、メタリルニッケル(II)クロリド二量体、アリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスフェート、メタリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスフェート、ビスシクロペンタジエニルニッケル(II)、ビスアリルニッケル(II)およびビスメタリルニッケル(II)から選択され得る。前記ニッケル前駆体は、任意選択で、ルイス塩基と錯体を形成していてもよい。
【0028】
組成物において(+II)の酸化数を有するニッケル前駆体が使用される場合には、還元剤の存在下で、またはブレンステッド塩基の存在下で使用される。
【0029】
当業者に公知であるニッケルの還元をもたらす任意の薬剤を使用することが可能である。還元剤は、NaBH、LiAlH、AlEt、Na、K、KCおよび二水素から選択され得る。
【0030】
当業者に公知である任意のブレンステッド塩基が使用され得る。用語「ブレンステッド塩基」とは、例えば、トリエチルアミンなどのプロトンを受け取ることができる任意の分子実体または対応する化学種を意味する。
【0031】
本発明に従って、式1a)、1b)または1c)を有する配位子(単数または複数)とニッケル前駆体の間のモル比は、0.05〜10の範囲に、好ましくは、0.5〜3の範囲にあることが有利である。
【0032】
本発明に従って、ルイス塩基とニッケル前駆体の間のモル比は、0.05〜10の範囲、好ましくは、0.5〜3の範囲にあることが有利である。
【0033】
本発明の組成物の調製に適している可能性がある配位子の包括的でないリストが、以下に表わされている。配位子は、ここで、その制限形1a)および1b)で表されている。
【0034】
【化2a】
【0035】
【化2b】
【0036】
本発明の組成物の使用
本発明の組成物は、水素化、ヒドロホルミル化、クロスカップリングまたはオレフィンオリゴマー化反応などの化学変換反応において触媒として使用され得る。特に、これらの複合体は、有利には、2〜10個の炭素原子を含有するオレフィン供給原料のオリゴマー化のための方法において使用される。
【0037】
好ましくは、オリゴマー化方法は、エチレンの1−ブテンへの二量化のための方法である。
【0038】
本発明の組成物はまた、活性化剤として知られる化合物も含み得る。前記活性化剤は、単独でまたは混合物として使用される、トリス(ヒドロカルビル)アルミニウム化合物、塩素含有または臭素含有ヒドロカルビルアルミニウム化合物、アルミニウムハロゲン化物、アルミノキサン、有機ホウ素化合物、およびプロトンを供与または受容できる有機化合物によって形成される群から選択されることが有利である。
【0039】
トリス(ヒドロカルビル)アルミニウム化合物、塩素含有または臭素含有ヒドロカルビルアルミニウム化合物およびアルミニウムハロゲン化物は、好ましくは、一般式Al(式中、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリルまたはシクロアルキルなどの、例えば、最大12個の炭素原子を含有する一価の炭化水素基を表し、Wは、例えば、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子を表し、Wは、好ましくは、塩素原子であり、xは、1〜2の値をとり、yおよびzは、0〜3の値をとる)を有する。記載され得るこの種の化合物の例として、エチルアルミニウムセスキクロリド(EtAlCl)、メチルアルミニウムジクロリド(MeAlCl)、エチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl)、イソブチルアルミニウムジクロリド(iBuAlCl)、ジエチルアルミニウムクロリド (EtAlCl)、トリメチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムおよびトリエチルアルミニウム(AlEt)がある。
【0040】
前記活性化剤が、アルミノキサンから選択される場合には、前記活性化剤は、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサンおよび修飾メチルアルミノキサン(MMAO)から選択されることが有利である。これらの活性化剤は、単独でまたは混合物として使用され得る。
【0041】
好ましくは、前記活性化剤Cは、ジクロロエチルアルミニウム(EtAlCl)およびメチルアルミノキサン(MAO)から選択される。
前記活性化剤が、有機ホウ素化合物から選択される場合には、前記活性化剤は、トリス(ペルフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペルフルオロナフチル)ボラン、トリス(ペルフルオロビフェニル)ボランおよびその誘導体などのトリス(アリール)ボラン型のルイス酸およびトリフェニルカルベニウムカチオンと結合(associated)している(アリール)ボレートまたはトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートもしくはトリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートなどの三置換アンモニウムカチオンから選択されることが好ましい。
【0042】
前記活性化剤が、プロトンを供与しやすい有機化合物から選択される場合には、前記活性化剤は、式HY(式中、Yはアニオンを表す)を有する酸から選択されることが好ましい。
【0043】
前記活性化剤が、プロトンを受容しやすい有機化合物から選択される場合には、前記活性化剤は、ブロンステッド塩基から選択されることが好ましい。
【0044】
オリゴマー化方法のための溶媒は、有機溶媒から、好ましくは、エーテル、アルコール、塩素含有溶媒および飽和、不飽和、芳香族または非芳香族、環状または非環状炭化水素から選択され得る。特に、前記溶媒は、純粋なまたは混合物およびイオン性液体としての、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ブタンまたはイソブタン、好ましくは、4〜20個の炭素原子を含有するモノオレフィンもしくはジオレフィン、ベンゼン、トルエン、オルト−キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、メタノールおよびエタノールから選択される。前記反応溶媒がイオン性液体である場合には、特許US6951831B2およびFR2895406B1に記載されるイオン性液体から選択されることが有利である。
【0045】
オリゴマー化は、モノマー単位の、一般式C2p(4≦p≦80、好ましくは、4≦p≦50、より好ましくは、4≦p≦26、高度に好ましくは、4≦p≦14)を有する化合物または化合物の混合物への変換と定義される。
【0046】
オリゴマー化方法において使用されるオレフィンは、2〜10個の炭素原子を含有するオレフィンである。好ましくは、前記オレフィンは、純粋なまたは希釈された、単独または混合物として、エチレン、プロピレン、n−ブテンおよびn−ペンテンから選択される。
【0047】
前記オレフィンが希釈される場合には、前記オレフィンは、接触分解または水蒸気分解などの石油精製方法から得られる「留分」中に見られるものなどの1種以上のアルカンで希釈される。
【0048】
好ましくは、オリゴマー化方法において使用されるオレフィンは、エチレンである。
【0049】
前記オレフィンは、バイオマスなどの非化石供給源から得られ得る。一例として、本発明のオリゴマー化方法または二量化方法において使用されるオレフィンは、アルコールから、特に、アルコールの脱水によって製造され得る。
【0050】
触媒溶液中のニッケルの濃度は、1×10−8〜1mol/Lの範囲に、好ましくは、1×10−6〜1×10−2mol/Lの範囲にあることが有利である。
【0051】
オリゴマー化方法は、大気圧と20MPaの間の範囲の、好ましくは、0.1〜8MPaの範囲の全圧で、−40℃〜+250℃の範囲の、好ましくは、−20℃〜150℃の範囲の温度で作動されることが有利である。
【0052】
反応によって生じる熱は、当業者に公知の任意の手段を使用して排除され得る。
【0053】
オリゴマー化方法は、1以上の反応段階を有し、閉鎖系で、半開放系でまたは連続して実施され得る。試薬(単数または複数)と触媒系の間の良好な接触を確実にするために、激しい撹拌が実施されることが有利である。
【0054】
オリゴマー化方法は、不連続的に実施され得る。この場合には、本発明の組成物を含む溶液の選択される容量が、通常の撹拌、加熱および冷却装置とともに提供される反応器中に導入される。
【0055】
オリゴマー化方法はまた、連続して実施され得る。この場合には、本発明の組成物を含む溶液は、所望の温度を維持しながら、従来の機械的手段を使用して、または外部再循環によって撹拌される反応器中にオレフィンと同時に注入される。
【0056】
触媒組成物は、当業者に公知の任意の通常の手段によって破壊され、次いで、反応生成物ならびに溶媒が、例えば、蒸留によって分離される。変換されなかったオレフィンは、反応器に再循環され得る。
【0057】
本発明の方法は、1以上の反応段階を順次用い、反応器において実施され得、オレフィン供給原料および/または触媒組成物は、事前準備されており、第1段階にまたは第1と任意のその他の段階のいずれかに連続的に導入される。反応器出口では、触媒組成物は、例えば、アンモニアおよび/または水酸化ナトリウムの水溶液および/または硫酸の水溶液を注入することによって不活性化され得る。次いで、供給原料中に存在する未変換のオレフィンおよび任意のアルカンが、蒸留によってオリゴマーから分離される。
【0058】
本方法の生成物は、例えば、自動車の燃料成分として、アルデヒドおよびアルコールの合成のためのヒドロホルミル化方法における供給原料として、化学物質、医薬品もしくは香料工業の成分として、および/または例えば、プロピレンの合成のためのメタセシス方法における供給原料として適用を見出し得る。
【0059】
以下の実施例は、その範囲を制限せずに本発明を例示する。
【実施例】
【0060】
【実施例1】
【0061】
配位子L1の合成
文献:F.G.Terrade、Eur. J. Inorg. Chem. 2014、1826-1835に記載される方法を使用して、配位子L1を合成した。
本発明の組成物の調製
組成物C1の調製
配位子L1(4−nBu−C−SO−NH−PPh、22mg、40μmol、1当量)、トリメチルホスフィン(トルエン中の1M溶液、88μL、40μmol、1当量)およびNi(COD)(31.8mg、40μmol、1当量)を、トルエン10mL中に懸濁し、30分間撹拌した。次いで、この溶液5mL(すなわち、20μmolのNi)を取り出し、反応器中に注入した。
組成物C2の調製
配位子L1(4−nBu−C−SO−NH−PPh、31.8mg、80μmol、2当量)およびNi(COD)(11mg、40μmol、1当量)を、トルエン(10mL)中に溶解し、混合物を30分間撹拌した。2実験を並行して実施し、異なる組成の前記組成物C2を有する2種の溶液、20μmolのNiという濃度を有する一方の溶液と100μmolのNiという濃度を有するもう一方、を反応器において評価した。
【実施例2】
【0062】
エチレンのオリゴマー化
エチレンオリゴマー化反応を、組成物C1およびC2を用いて評価した。得られた結果は、表1に報告されている。
【0063】
250mLの反応器を真空下、130℃で2時間乾燥させ、次いで、0.5MPaのエチレンを用いて加圧した。温度を20℃に低下させ、次いで、エチレンの過剰の圧力を排除して、0.1MPaを得た。溶媒を添加し(トルエン45mL)、内部温度を設定した(40℃または80℃)。ひとたび、内部温度が安定すると、触媒組成物C1または触媒組成物C2の一部を導入した(20μmolのNiまたは100μmolのNi)。次いで、反応器を3MPaのエチレンを用いて加圧した。撹拌(1000rpm)を開始した(t=0)。予め設定された反応時間の後、混合物を撹拌しながら30℃に冷却し、反応器を減圧し、液体およびガス相をガス相クロマトグラフィー(GC)によって分析した。
【0064】
生産性(goligo/(gNi.h)は、1時間あたりに使用されるニッケルの単位質量あたりに生産されるオリゴマーの質量(グラムで)として表される。
【0065】
【表1】
【0066】
GCによって決定される重量パーセンテージ(オリゴマーのすべてに対する、C、CおよびC留分の重量パーセンテージ)。
【0067】
留分中の1−ブテンの重量パーセンテージ。
【0068】
上記の実施例は、本発明の複合体が、エチレンのオリゴマー化において良好な活性を示すことを実証する。