(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切断工程では、前記絶縁層を加熱することにより前記絶縁層を(前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度+10℃)以上の温度にした状態で前記切断を実施する、請求項1に記載の絶縁放熱シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
まず、本実施形態の絶縁放熱シートの製造方法について説明する。
本実施形態の絶縁放熱シートの製造方法は、無機充填剤及び熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を支持シートに塗布することにより、無機充填剤及び熱硬化性樹脂を含有する絶縁層と、該絶縁層に積層された前記支持シートたる支持層とを有する原料シートを形成する原料シート形成工程と、原料シートを切断することより絶縁放熱シートを作製する切断工程と、を備える。
【0015】
前記原料シート形成工程で用いる前記樹脂組成物は、無機充填剤、熱硬化性樹脂、及び、該熱硬化性樹脂を溶解可能な有機溶媒を含有する。
【0016】
前記熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0017】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を単独または2種以上併用して採用することができる。
【0018】
フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が用いられる。
なかでも、トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、耐熱性において有利であり、フェノールアラルキル樹脂は、絶縁放熱シートを被着体に接着する場合には、被着体との間に良好なる接着性を示す点において好ましく用いられる。
【0019】
なお、前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を採用する場合には、熱硬化性樹脂に当該エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤をさらに加えて熱硬化性を調整してもよい。
硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
また、前記ノボラック型フェノール樹脂などもエポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として前記熱硬化性樹脂に含有させることができる。
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類や、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。
【0020】
一方で熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を採用する場合には、ヘキサメチレンテトラミン、各種の2官能以上のエポキシ化合物、イソシアネート類、トリオキサン及び環状ホルマール等を前記フェノール樹脂の硬化剤として含有させても良い。
【0021】
前記無機充填剤は、熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が高ければ特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、シリカ(二酸化珪素等)、酸化マグネシウム、ダイヤモンドなどの粒子が挙げられる。該シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、ゾルゲル法で得られたシリカ等が挙げられる。該ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル社製のアエロジル(登録商標)を用いることができる。
前記無機充填剤としては、ヒュームドシリカが好ましい。前記絶縁層におけるヒュームドシリカの含有量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、1.0〜10質量部であることがより好ましい。
【0022】
前記有機溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。
【0023】
前記原料シート形成工程では、前記樹脂組成物の材料を撹拌装置を用いて混合して樹脂組成物を作製する。
前記撹拌装置としては、ボールミル、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、三本ロールミル等が挙げられる。
【0024】
前記原料シート形成工程で用いる前記支持シートは、その材質等が特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂フィルム、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔などの金属箔などとすることができる。
なかでも、前記支持シートには、外形加工性がよく、安価であるという点において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いることが好ましい。
前記支持シートは、前記樹脂組成物を塗布する面に粗化処理、離型処理などの処理がされていてもよく、未処理の状態であってもよい。
前記支持シートとしては、原料シートを連続的に効率良く製造する上において長尺帯状のものが好ましい。
【0025】
前記原料シート形成工程では、長尺帯状の支持シートを巻き取った支持シートロールをコーティング装置に装着する。前記コーティング装置としては、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター等が挙げられる。
次に、連続的に支持シートに樹脂組成物を塗布する。
そして、前記樹脂組成物が塗布された支持シートを乾燥炉に導入して、有機溶媒を除去することにより、樹脂組成物の乾燥被膜を支持シート上に形成し、原料シートを作製する。この有機溶媒の除去は、例えば、樹脂組成物が塗布された帯状の支持シートを一般的な加熱乾燥炉中を所定の時間を掛けて通過させることで実施することができる。
【0026】
前記切断工程では、前記絶縁層を加熱して前記切断を実施することが重要である。前記切断工程では、前記絶縁層を加熱して前記切断を実施するので、原料シートの絶縁層の熱硬化性樹脂を常温(例えば23℃)よりも軟化させた状態で前記切断を実施することになり、原料シートを切断した際に、絶縁放熱シートや原料シートの絶縁層に割れや欠けが生じ難くなり、更に、該絶縁層の切り粉が生じ難くなる。
【0027】
なお、前記絶縁層を加熱することで絶縁層が過度に軟化するのを抑制するという観点から、前記無機充填剤としてヒュームドシリカを用いることが好ましい。ヒュームドシリカは他の無機充填剤に比べ粒子径が小さいので、前記無機充填剤としてヒュームドシリカを用いることにより、前記絶縁層が加熱された際に前記絶縁層の粘度が低下するのを抑制することができる。その結果、絶縁層が過度に軟化するのを抑制することができる。
特に、フェノール樹脂はガラス転移温度が比較的低いので、前記絶縁層にフェノール樹脂が含まれる場合には絶縁層が軟化しやすくなる。従って、前記絶縁層にフェノール樹脂が含まれる場合には、ヒュームドシリカによって絶縁層の軟化を抑制する効果が発揮されやすくなる。
前記ヒュームドシリカが少ないと絶縁層が過度に軟化しやすくなり、一方で、ヒュームドシリカが多いと熱硬化性樹脂に混ぜ難くなるので、ヒュームドシリカは、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、1.0〜10質量部であることがより好ましい。
【0028】
前記切断工程では、前記絶縁層を加熱することにより前記絶縁層を(前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度+10℃)以上の温度にした状態で前記切断を実施することが好ましく、前記原料シートを(前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度+20℃)以上の温度にした状態で前記切断を実施することがより好ましい。なお、ガラス転移温度は、JIS K7121:2012における中間点ガラス転移温度を意味する。また、前記絶縁層の温度は、前記絶縁層の切断しようとする箇所の温度を意味する。また、絶縁層の温度は、サーモグラフィーで測定することができる。
前記切断工程では、前記絶縁層を(前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度+10℃)以上の温度にした状態で前記切断を実施することにより、熱硬化性樹脂が十分に軟化した状態で前記切断を実施することができる。
また、前記切断工程では、前記絶縁層を加熱することにより前記絶縁層を(前記熱硬化性樹脂の硬化開始温度−20℃)以下の温度にした状態で前記切断を実施することが好ましい。なお、硬化開始温度とは、熱硬化性樹脂を加熱した際に粘度が上昇し始める温度を意味する。
前記切断工程では、前記絶縁層を(前記熱硬化性樹脂の硬化開始温度−20℃)以下の温度にした状態で前記切断を実施することにより、熱硬化性樹脂の硬化が進むのを抑制でき、熱硬化性樹脂が軟化した状態で前記切断を実施することができる。
前記切断工程では、所定の温度に保たれた加熱炉に原料シートを導入して、絶縁層を加熱する。この加熱は、例えば、原料シートを一般的な加熱炉中を所定の時間を掛けて通過させることで実施することができる。
【0029】
前記切断は、ポンチ及びダイスを用いたパンチングプレス等で行うことができる。
原料シートをきれいに切断することが可能であるという観点から、前記切断で用いる刃の温度は、前記絶縁層の温度よりも低いであることが好ましく、(前記絶縁層の温度−10℃)以下であることがより好ましい。
【0030】
前記切断工程では、台の上にダイシングテープを敷き、ダイシングテープの上に原料シートを置いて、上側から原料シートを切断する。ダイシングテープを用いることにより、原料シートの切断の際に、原料シートが台からずれて、切断すべき個所からずれた箇所を切断してしまうのを抑制することができる。
前記切断工程では、ダイシングテープの上に原料シートに置く際に、絶縁層が上側となるようにする。これにより、支持層にバリが生じるのを抑制することできるという利点がある。
【0031】
なお、切断の際には、原料シートは、支持層とは反対側の前記絶縁層の面にシート状のセパレータが設けられた状態となっていても良く、すなわち、支持層、絶縁層、セパレータの順に積層された状態となっていてもよく、この場合には、前記切断工程でダイシングテープの上に原料シートを置く際に、支持層が上側となるようにすることが好ましい。これにより、セパレータが切断の際の遊び(切断代)となり、確実に支持層及び絶縁層を切断することができるという利点がある。また、絶縁層を覆う支持層側から原料シートを切断することになるので、刃に絶縁層を構成する熱硬化性樹脂が付着するのを抑制することができるという利点もある。この場合には、支持層にバリが生じるのを抑制するという観点から、支持層となる支持シートとしては、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂フィルムが好ましい。
また、セパレータがダイシングテープに接着されているので、原料シートを切断した後に、得られた絶縁シートを容易にセパレータから剥がすことができるという利点もある。
シート状のセパレータとしては、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂フィルム等が挙げられる。
【0032】
本実施形態の絶縁放熱シートの製造方法で作製した絶縁放熱シートは、前記絶縁層が半硬化(Bステージ化)状態にあるため、前記絶縁層の硬化反応を利用して被着体に優れた接着力で接着させることができるという利点を有する。前記絶縁層が半硬化状態にあるかどうかは、示差走査熱量測定(DSC)を行った際に硬化反応に伴う発熱ピークが観測されることで確認可能であり、例えば、十分に熱を加えて熱硬化させた絶縁層のDSCチャートと熱を加える前の絶縁層のDSCチャートとを比較して明確な発熱ピークが観察されるかどうかで判断することができる。
【0033】
また、前記絶縁放熱シートは、硬化することで、体積抵抗率が、好ましくは、1.0×10
13Ωcm以上、より好ましくは1.0×10
14〜1.0×10
16Ωcmとなる。
なお、体積抵抗率は、JIS C 2139:2008に準じて測定した値を意味する。
【0034】
次に、本実施形態の原料シートについて説明する。
本実施形態の原料シートは、切断することにより絶縁放熱シートを作製するための原料シートである。また、本実施形態の原料シートは、無機充填剤及び熱硬化性樹脂を含有する絶縁層と、該絶縁層に積層された支持層とを有する。前記切断は、前記絶縁層を加熱して実施される。
【0035】
次に、本実施形態の半導体モジュールの製造方法について説明する。
本実施形態の半導体モジュールの製造方法では、半導体素子と、該半導体素子を外部から電気的に絶縁するための絶縁層とを備えた半導体モジュールを製造する。また、本実施形態の半導体モジュールの製造方法では、本実施形態の絶縁放熱シートの製造方法で得られた絶縁放熱シートで前記絶縁層を形成する。
【0036】
図1に、半導体モジュールの断面を示した概略図を示す。
図1に示すように、本実施形態の半導体モジュール100は、半導体素子30が樹脂モールドされてなるモジュール本体100xと前記半導体素子30が発する熱を放熱するための放熱用部材20との間に絶縁放熱シート10が介装されて構成されている。
【0037】
前記モジュール本体100xは、前記半導体素子30と、該半導体素子30のヒートシンクとして機能する金属板40とを有し、平置き配置された前記金属板40の上面側にハンダ50によって固定された状態で前記半導体素子30を有している。
前記半導体素子30は、前記金属板40の上面の面積に比べて小さなものであり、本実施形態においては、ベアチップの状態で金属板40上に搭載されている。
【0038】
本実施形態のモジュール本体100xは、その外殻をなす角筒状のケース60を有し、該ケース60は、平面視における形状が前記金属板40よりも一回り大きく、且つ、正面視における形状が、絶縁放熱シート10、金属板40、及び、半導体素子30の厚みを足し合わせた高さよりも高く形成されている。
即ち、前記ケース60は、絶縁放熱シート10、金属板40、及び、半導体素子30の全てを内包可能な大きさを有している。
そして、モジュール本体100xは、前記金属板40を包囲するように前記ケース60を配置させており、該ケース60の側壁を貫通してケースの内外に延びるリードフレーム70をさらに備えている。
【0039】
また、該モジュール本体100xは、前記リードフレーム70のケース内における端部と前記半導体素子30とがボンディングワイヤ80によって電気的に接続され、且つ、前記ケース内の空きスペースに封止樹脂が充填されてなるモールド部90が形成されている。
本実施形態における該モールド部90は、半導体素子30、及び、金属板40を埋設させている。
そして、本実施形態の絶縁放熱シート10は、前記半導体素子30が搭載されている側とは逆側となる金属板40の下面に配されている。
本実施形態の絶縁放熱シート10は、平面視における形状が金属板40の下面に相当する形状となっており、金属板40の下面外縁40eと絶縁層11の外縁とを揃えた状態で当該金属板40の下面に接着されている。
また、本実施形態の絶縁放熱シート10は、前記モールド部90に上面側を埋設させ且つ前記放熱用部材20が無い状態においては、その下面側が露出するように半導体モジュール100の形成に用いられている。
即ち、本実施形態の半導体モジュール100は、モールド部90の下面が絶縁放熱シート10の前記支持層12の下面と略面一な状態となるように形成されている。
【0040】
なお、本実施形態においては、前記放熱用部材20として、上面が前記金属板40の下面よりも大きな平坦面となった板状の基板部21と該基板部21の下面から複数のフィンを垂下させてなるフィン部22とを有する放熱フィンが採用されている。
【0041】
なお、本実施形態の半導体モジュール100は、Bステージ化された絶縁層11の上面を前記金属板40の下面に接着させるのに際して前記モールド部90を形成させる際の封止樹脂の熱と圧力とが利用されている。
即ち、前記モールド部90の形成前には金属板40と絶縁放熱シート10とは仮接着程度、又は、全く接着されていない状態で実質的に接着された状態とはなっておらず、絶縁放熱シート10は、前記モールド部90を形成させるべく加熱溶融された封止樹脂がケース内に加圧充填されることによって前記絶縁層11と金属板40の下面とが加熱状態で圧接されて金属板40に接着固定されている。
【0042】
また、絶縁放熱シート10は、このモールド部90を形成させる際の熱、及び、必要に応じて行われる追加加熱によって最終的には絶縁層11をCステージ化させて半導体モジュール100に備えられている。
このようにして半導体モジュール100の一部分を構成している前記絶縁放熱シート10は、ここでは支持層12の下面側のみをモジュール本体100xの下面において露出させている。
本実施形態の絶縁放熱シート10は、該支持層12を金属箔によって形成させており、該金属箔の露出面がモジュール本体100xから前記放熱用部材20への主たる放熱面として利用されるべく当該半導体モジュール100に備えられている。
【0043】
そして、本実施形態の絶縁放熱シート10は、前記のように絶縁層11の接着性を利用してモジュール本体100xに接着されている一方で、支持層12が接着性を示すものではないので、前記モジュール本体100xに対して前記放熱用部材20が接着固定されることによって放熱用部材20に当接されている。
より具体的には、本実施形態の絶縁放熱シート10は、間に放熱グリスを介在させて放熱用部材20の基板部21の上面に当接されている。
【0044】
前記のように本実施形態の半導体モジュール100は、この金属板40に半導体素子30が直接搭載されており、半導体素子30と金属板40とが略同電位となっている。
従って、前記絶縁放熱シート10は、金属板40から前記放熱用部材20までの間に良好なる伝熱経路を形成させるとともに金属板40と放熱用部材20とを電気的な接続が遮断された状態となすべく半導体モジュール100に備えられている。
【0045】
本実施形態の絶縁放熱シート10には切り粉がほとんど付着しておらず、また、絶縁放熱シート10の絶縁層11には割れや欠けがほとんど生じていないので、本実施形態の絶縁放熱シート10は、優れた電気絶縁性と熱伝導性を有する。よって、半導体モジュール100の動作時における半導体素子30のジャンクション温度が過度に上昇することを抑制させることができ、半導体モジュール100の故障を防いで耐用期間を長期化させ得る。
【0046】
このような効果を発揮するのは、必ずしも
図1に例示した態様のみならず、
図2に例示するような半導体モジュールにおいても同じである。
このことを
図2を参照しつつ説明する。
なお、
図2も
図1と同様に半導体モジュールの断面を示した概略図であり、
図2において
図1と同じ数値の符号が付されている構成部分は
図1と同様であるため、ここでは必要以上に繰り返して説明は行わない。
【0047】
この
図2に示した半導体モジュール100’は、絶縁放熱シートの支持層を有していない点において
図1の半導体モジュール100と異なっている。
【0048】
また、該半導体モジュール100’は、絶縁放熱シートの絶縁層11’がケース60’の平面形状と同等に形成されており、且つ、前記モールド部90’が金属板40’の下面と略面一となるように形成されている点においても
図1の半導体モジュール100と異なっている。
【0049】
そして、前記絶縁層11’は、当該絶縁層11’を除いた半導体モジュール100’の主要部分たるモジュール本体100x’の下面に接着させて用いられ、前記金属板40’に対する絶縁を施して半導体モジュール100’を構成させるべく用いられる。
【0050】
また、該絶縁層11’は、
図2に示すように、前記モジュール本体100x’と放熱用部材20’との間に介装させて用いられている。
【0051】
なお、前記絶縁放熱シートを用いて
図2に示すような半導体モジュール100’を形成させる場合は、該絶縁放熱シートの絶縁層11’をモジュール本体側に先に接着させた後に前記絶縁層11’を使ってさらに放熱用部材20’を接着させるようにしても良く、逆に一旦絶縁層11’を放熱用部材20’の基板部21’の上面に接着させて絶縁層付放熱用部材を作製した後で、該絶縁層付放熱用部材をモジュール本体100x’に接着させるようにしてもよい。
さらには、モジュール本体100x’と放熱用部材20’との間に絶縁層11’を挟んで熱プレスするなどして絶縁層11’をモジュール本体100x’と放熱用部材20’とに同時に接着させるようにしてもよい。
【0052】
このような場合も、Cステージ化された絶縁放熱シート10’が優れた電気絶縁性と熱伝導性を発揮することから該絶縁放熱シート10’を構成部材として備えた半導体モジュール100’は、その耐用期間を長期化させ得る。
ここではこれ以上に詳細な説明を繰り返すことは行わないが、例えば、
図2に例示した態様において、絶縁層以外に支持層を有するものとしたりすることも可能である。
また、本発明の熱伝導性シートについては、従来公知の技術事項を本発明の効果が著しく損なわれない範囲において適宜採用することが可能なものである。
【0053】
なお、本発明においては、絶縁放熱シートの形成材料とした樹脂組成物は、前記モールド部90,90’や前記ケース60,60’などの形成にも利用可能なものである。
【0054】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、実施の形態の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0055】
<原料シート>
無機充填剤としての窒化ホウ素、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂及びフェノール樹脂、及び、硬化促進剤としてのトリフェニルフォスフェイト(TPP)を含有する絶縁層(厚み:150μm)と、該絶縁層に積層された支持層(銅箔、厚み:70μm)とからなる原料シート(縦100mm×横100mm×厚み220μm)を用意した。
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、45℃であった。
【0056】
<切断試験>
台の上にダイシングテープを敷いた。絶縁層が上側となるように原料シートをダイシングテープの上に置いた。原料シートにドライヤーで熱風を吹き付けることにより、原料シートの切断しようとする箇所が表1の温度になったことを確認し、刃物で絶縁層側から横方向に原料シートを切断し、縦10mm×横100mmの絶縁シートを得た。
そして、切り粉が生じた量を目視で確認した。切り粉や欠けが少ない順に、「◎」、「○」、「△」、「×」と判断した。結果を表1に示す。
なお、絶縁層の切断しようとする箇所の温度は、サーモグラフィーで確認した。
また、表1の温度での絶縁層の粘度は、以下の条件で測定した。
粘度:レオメーター
昇温:1℃/min(30〜200℃の範囲)
測定モード:トーション(歪み:0.03%)
試料:原料シート(縦10mm×横50mm×厚み150μm)
【0057】
【表1】