(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574630
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】二重管式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20190902BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20190902BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20190902BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20190902BHJP
F25B 40/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28F1/40 N
F25B43/00 T
F25B1/00 331Z
F25B40/00 V
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-146997(P2015-146997)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-26248(P2017-26248A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】峯 北斗
【審査官】
五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−224670(JP,A)
【文献】
特開平05−066075(JP,A)
【文献】
特開2007−071433(JP,A)
【文献】
特開2003−185304(JP,A)
【文献】
実開平03−013074(JP,U)
【文献】
実開昭59−018254(JP,U)
【文献】
特開2005−009851(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0062631(KR,A)
【文献】
特開平08−111400(JP,A)
【文献】
特開平08−189731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00−13/00
F25B 40/00
F25B 43/00
F28F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備え、外管と内管との間の間隙が第1冷媒流路となるとともに内管内が第2冷媒流路となっており、内管の内周面に沿って、波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結する連結部からなり、かつ波頂部および波底部が第2冷媒流路での冷媒流れ方向を向いたコルゲート状フィンが配置され、フィンの波頂部が内管内周面に接合され、フィンの連結部に冷媒通過穴が形成されている二重管式熱交換器であって、
内管内におけるフィンよりも内管の径方向内側部分に空隙が形成されており、当該空隙内に、通気性および通液性を有する材料からなりかつ乾燥剤が入れられた乾燥剤容器が配置されている二重管式熱交換器。
【請求項2】
乾燥剤容器が、不織布でつくられかつ周囲が閉鎖された袋状である請求項1記載の二重管式熱交換器。
【請求項3】
乾燥剤容器が、網状物でつくられかつ両端が開口した筒状体と、網状物でつくられかつ筒状体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなる請求項1記載の二重管式熱交換器。
【請求項4】
コンプレッサ、凝縮部と過冷却部とを有するコンデンサ、エバポレータ、減圧器、気液分離器、コンデンサとエバポレータとの間に配置され、かつコンデンサの過冷却部から出てきた高温の冷媒とエバポレータから出てきた低温の冷媒とを熱交換させる中間熱交換器、および冷媒から水分を除去する乾燥剤を備えた冷凍サイクルであって、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載の二重管式熱交換器が中間熱交換器として用いられ、乾燥剤容器内の乾燥剤が、冷媒から水分を除去する乾燥剤となっている冷凍サイクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は二重管式熱交換器に関し、さらに詳しくは、外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備えている二重管式熱交換器に関する。
【0002】
この明細書において、「コンデンサ」という用語には、通常のコンデンサの他に凝縮部および過冷却部を有するサブクールコンデンサを含むものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、カーエアコンに用いられる冷凍サイクルとして、コンプレッサ、凝縮部と過冷却部とを有するコンデンサ、エバポレータ、減圧器としての膨張弁、気液分離器、およびコンデンサとエバポレータとの間に配置され、かつコンデンサの過冷却部から出てきた高温の冷媒とエバポレータから出てきた低温の冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えたものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1記載の冷凍サイクルにおいては、コンデンサの過冷却部において過冷却された冷媒が、中間熱交換器において、エバポレータから出てきた低温低圧の冷媒によりさらに冷却され、これによりエバポレータの冷却性能が向上させられるようになっている。
【0004】
特許文献1記載の冷凍サイクルに用いられている中間熱交換器は、外管、および外管内に間隔をおいて配置された内管を備えており、内管の外周面に、管壁を変形させることにより内管の長さ方向にのびる溝が形成され、外管と内管との間の間隙がコンデンサから出てきた高温冷媒が流れる第1冷媒流路となり、内管内がエバポレータから出てきた低温の冷媒が流れる第2冷媒流路となっている二重管式熱交換器からなる。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の中間熱交換器に用いられている二重管式熱交換器の場合、第1冷媒流路と第2冷媒流路との間の伝熱面積が小さくなり、熱交換性能が不足するという問題がある。この問題を解決するには、二重管式熱交換器の長さを長くする必要があるが、この場合設置スペースが大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、第1冷媒流路を流れる冷媒と、第2冷媒流路を流れる冷媒との熱交換性能を向上させて、全体の長さを短くしうる二重管式熱交換器として、本出願人は、先に、内管の内周面に沿って、波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結する連結部からなり、かつ波頂部および波底部が第2冷媒流路での冷媒流れ方向を向いたコルゲート状フィンが配置され、フィンの波頂部が内管内周面に接合され、内管内におけるフィンよりも内管の径方向内側部分に空隙が形成されており、当該空隙内に、ねじり板からなりかつ前記空隙内を流れる冷媒をフィン側に偏流させる偏流部材が配置されている二重管式熱交換器を提案した(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の二重管式熱交換器においては、偏流部材が必要となり、二重管式熱交換器を中間熱交換器として用いている冷凍サイクルの専用部品の数が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−162241号公報
【特許文献2】特開2014−224670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、上記問題を解決し、二重管式熱交換器を中間熱交換器として用いている冷凍サイクルの専用部品の数を削減しうる二重管式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0011】
1)外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備え、外管と内管との間の間隙が第1冷媒流路となるとともに内管内が第2冷媒流路となっており、内管の内周面に沿って、波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結する連結部からなり、かつ波頂部および波底部が第2冷媒流路での冷媒流れ方向を向いたコルゲート状フィンが配置され、フィンの波頂部が内管内周面に接合され、フィンの連結部に冷媒通過穴が形成されている二重管式熱交換器であって、
内管内におけるフィンよりも内管の径方向内側部分に空隙が形成されており、当該空隙内に、通気性および通液性を有する材料からなりかつ乾燥剤が入れられた乾燥剤容器が配置されている二重管式熱交換器。
【0012】
2)乾燥剤容器が、不織布でつくられかつ周囲が閉鎖された袋状である上記1)記載の二重管式熱交換器。
【0013】
3)乾燥剤容器が、網状物でつくられかつ両端が開口した筒状体と、網状物でつくられかつ筒状体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなる上記1)記載の二重管式熱交換器。
【0014】
4)コンプレッサ、凝縮部と過冷却部とを有するコンデンサ、エバポレータ、減圧器、気液分離器、コンデンサとエバポレータとの間に配置され、かつコンデンサの過冷却部から出てきた高温の冷媒とエバポレータから出てきた低温の冷媒とを熱交換させる中間熱交換器、および冷媒から水分を除去する乾燥剤を備えた冷凍サイクルであって、
上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の二重管式熱交換器が中間熱交換器として用いられ、乾燥剤容器内の乾燥剤が、冷媒から水分を除去する乾燥剤となっている冷凍サイクル。
【発明の効果】
【0015】
上記1)〜3)の二重管式熱交換器によれば、内管内におけるフィンよりも内管の径方向内側部分に空隙が形成されており、当該空隙内に、通気性および通液性を有する材料からなりかつ乾燥剤が入れられた乾燥剤容器が配置されているので、乾燥剤容器内の乾燥剤により内管内を流れる冷媒から水分を除去することができることに加えて、次の効果を奏する。すなわち、内管の内周面に沿って、波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結する連結部からなり、かつ波頂部および波底部が第2冷媒流路での冷媒流れ方向を向いたコルゲート状フィンが配置され、フィンの波頂部が内管内周面に接合されている場合、内管内におけるフィンよりも内管の径方向内側部分に形成された空隙部分での通路抵抗は、フィンが存在する部分での通路抵抗に比べて小さくなるので、冷媒は、内管内の第2冷媒流路の前記空隙部分を流れやすくなって、フィンを設けたことによる第1冷媒流路を流れる冷媒と第2冷媒流路を流れる冷媒との熱交換効率向上効果が低下するおそれがある。しかしながら、前記空隙に乾燥剤容器が配置されていると、乾燥剤容器が抵抗となって、内管内の第2冷媒流路におけるフィンが存在する部分にも多くの冷媒が流れることになり、第1冷媒流路を流れる冷媒と第2冷媒流路を流れる冷媒との熱交換効率向上効果の低下を抑制することが可能になる。したがって、特許文献2記載の二重管式熱交換器のように偏流部材を必要とせず、しかも乾燥剤は二重管式熱交換器が中間熱交換器として用いられている冷凍サイクルに必須の部品であるから、当該冷凍サイクルの専用部品の数を削減することができる。
【0016】
上記4)の冷凍サイクルによれば、上述したように、当該冷凍サイクルの専用部品の数を削減することができる。しかも、通常、冷媒から水分を除去する乾燥剤は、冷凍サイクルの気液分離器内に配置されるが、この場合、気液分離器が大型化するが、気液分離器の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明による二重管式熱交換器の全体構成を示す長さ方向の中間部を省略しかつ一部を切り欠いた正面図である。
【
図3】
図1の二重管式熱交換器の外管、内管および乾燥剤容器の構成を部分的に示す斜視図である。
【
図4】
図1の二重管式熱交換器を中間熱交換器として用いた冷凍サイクルを示す図である。
【
図5】この発明による二重管式熱交換器に用いられる乾燥剤容器の変形例を示す
図2相当の図である。
【
図6】この発明による二重管式熱交換器に用いられる乾燥剤容器の変形例を示す
図3相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0021】
図1はこの発明による二重管式熱交換器の全体構成を示し、
図2および
図3はその要部の構成を示す。
図4は
図1の二重管式熱交換器を中間熱交換器として用いた冷凍サイクルを示す。
【0022】
図1〜
図3において、二重管式熱交換器(1)は、横断面円形のアルミニウム押出形材製外管(2)、および外管(2)内に間隔をおいて同心状に配置された横断面円形のアルミニウム押出形材製内管(3)を備えており、外管(2)と内管(3)との間の間隙が第1冷媒流路(4)となり、内管(3)内が第2冷媒流路(5)となっている。内管(3)の両端部は外管(2)の両端部よりも外側に突出しており、両突出端部にそれぞれ管継手部材(6)が接合されている。
【0023】
外管(2)の両端寄りの部分に、それぞれ第1冷媒流路(4)に通じるように拡管部(7)(8)が形成されている。外管(2)における一方の拡管部(7)の管壁には冷媒入口(9)が形成され、同他方の拡管部(8)の管壁には冷媒出口(図示略)が形成されている。冷媒入口(9)には第1冷媒流路(4)に通じるアルミニウム製高圧冷媒流入パイプ(11)の一端部が挿入されて拡管部(7)にろう付されている。また、冷媒出口には第1冷媒流路(4)に通じるアルミニウム製高圧冷媒流出パイプ(12)の一端部が挿入されて拡管部(8)にろう付されている。高圧冷媒流入パイプ(11)および高圧冷媒流出パイプ(12)の他端部には、それぞれ管継手部材(13)が接合されている。高圧冷媒流入パイプ(11)がろう付された拡管部(7)は、高圧冷媒流入パイプ(11)から送り込まれた冷媒を第1冷媒流路(4)の全周にわたって分流させる分流部となり、高圧冷媒流出パイプ(12)がろう付された拡管部(8)は、第1冷媒流路(4)を流れてきた冷媒を合流させて高圧冷媒流出パイプ(12)に送り出す合流部となっている。また、外管(2)における両拡管部(7)(8)よりも長さ方向の外側部分に縮管部(14)が形成されるとともに、当該縮管部(14)が内管(3)にろう付されており、これにより両拡管部(7)(8)の外端、すなわち第1冷媒流路(4)の両端が閉鎖されている。縮管部(14)は、両端寄りの部分に、両拡管部(7)(8)よりも長い拡管部が形成されている外管(2)を用意し、当該外管(2)内に内管(3)を挿入した後に、外管(2)における両拡管部(7)(8)となる部分よりも長さ方向の外側部分を、外周側から力を加えて塑性変形させることにより形成されたものである。
【0024】
第1冷媒流路(4)が存在する部分、すなわち外管(2)の両縮管部(14)間の部分において、内管(3)の内周面に沿ってアルミニウム製のコルゲート状フィン(15)が配置されている。フィン(15)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを用いて形成されたものであって、第2冷媒流路(5)での冷媒流れ方向に延びる波頂部(15a)、第2冷媒流路(5)での冷媒流れ方向に延びる波底部(15b)、および波頂部(15a)と波底部(15b)とを連結する連結部(15c)からなり、波頂部(15a)が内管(3)内周面にろう付(接合)されている。フィン(15)の連結部(15c)には、波頂部(15a)から波底部(15b)に向かう方向(内管(3)の径方向)にのびる複数のルーバ(16)が第2冷媒流路(5)での冷媒流れ方向に間隔をおいて設けられており、これにより連結部(15c)に複数の冷媒通過穴(図示略)が形成されている。フィン(15)の連結部(15c)に設けられた全てのルーバ(16)は、第2冷媒流路(5)での冷媒流れ方向に対して同一方向に傾斜している。フィン(15)は、通常の製造方法によって、連結部(15c)が1直線上に並ぶように形成された後円筒状に丸められ、この状態で内管(3)内に配置される。
【0025】
内管(3)内の第2冷媒流路(5)におけるフィン(15)の波底部(15b)よりも内管(3)の径方向内側部分には空隙(17)が形成されており、当該空隙(17)内に、通気性および通液性を有する材料からなりかつ乾燥剤(19)が入れられた乾燥剤バッグ(18)(乾燥剤容器)が配置されている。乾燥剤バッグ(18)は、不織布でつくられかつ周囲が閉鎖された袋状である。
【0026】
また、内管(3)の外周面には、長さ方向にのびる複数の凸条(3a)が周方向に間隔をおいて一体に設けられている。図示は省略したが、凸条(3a)における縮管部(14)と対応する部分は、外管(2)の拡管部(7)(8)に縮管部(14)を形成する際に圧潰され、縮管部(14)の内周面と内管(3)における隣り合う圧潰された凸条(3a)どうしの間の間隙がろう材で埋められている。なお、内管(3)の凸条(3a)は必ずしも必要としない。
【0027】
図示は省略したが、外管(2)および内管(3)は、全体が直線状になっている場合と、少なくとも1箇所で曲げられている場合とがある。
【0028】
図4は、上述した二重管式熱交換器(1)を中間熱交換器として用いた冷凍サイクルを示す。
【0029】
図4において、冷凍サイクルは冷媒として、たとえばフロン系の冷媒を用いるものであり、コンプレッサ(20)と、凝縮部(22)、気液分離器としての受液器(23)および過冷却部(24)を有するコンデンサ(21)と、エバポレータ(25)と、減圧器としての膨張弁(26)と、コンデンサ(20)から出てきた冷媒とエバポレータ(25)から出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器としての二重管式熱交換器(1)とを備えており、乾燥剤バッグ(18)内の乾燥剤(19)が、冷凍サイクルを循環する冷媒から水分を除去する乾燥剤となるとともに、受液器(23)内には乾燥剤は配置されていない。
【0030】
二重管式熱交換器(1)の外管(2)に接続された高圧冷媒流入パイプ(11)にコンデンサ(20)の過冷却部(24)からのびる配管が接続され、同じく外管(2)に接続された高圧冷媒流出パイプ(12)に膨張弁(26)にのびる配管が接続される。また、二重管式熱交換器(1)の内管(3)における高圧冷媒流出パイプ(12)側の端部に、エバポレータ(25)からのびる配管が接続され、同じく内管(3)における高圧冷媒流入パイプ(11)側の端部に、コンプレッサ(20)にのびる配管が接続される。冷凍サイクルは、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。
【0031】
冷凍サイクルの稼働時には、コンプレッサ(20)で圧縮された高温高圧の気液混相の冷媒は、コンデンサ(21)の凝縮部(22)で冷却されて凝縮させられた後、受液器(23)内に流入して気液2相に分離され、ついで過冷却部(24)に流入して過冷却される。過冷却された液相冷媒は、高圧冷媒流入パイプ(11)を通って二重管式熱交換器(1)の外管(2)の拡管部(7)内に流入し、拡管部(7)を経て第1冷媒流路(4)内に入る。拡管部(7)内に流入した液相冷媒は、拡管部(7)の働きにより、第1冷媒流路(4)の全周にわたって分流させられる。一方、エバポレータ(25)から出てきた気相冷媒は、二重管式熱交換器(1)の第2冷媒流路(5)内に流入する。そして、液相冷媒が第1冷媒流路(4)内を流れる間に第2冷媒流路(5)内を流れる比較的低温の気相冷媒によりさらに冷却される。
【0032】
このとき、第2冷媒流路(5)内に流入した冷媒は、乾燥剤バッグ(18)内の乾燥剤(19)に接触し、冷媒に含まれる水分は乾燥剤(19)により除去される。また、第2冷媒流路(5)内の空隙(17)に乾燥剤バッグ(18)が配置されているので、乾燥剤バッグ(18)が抵抗となって、第2冷媒流路(5)におけるフィン(15)が存在する部分にも多くの冷媒が流れることになる。しかも、フィン(15)の連結部(15c)に設けられたルーバ(16)および冷媒通過穴の働きによって、冷媒は、内管(3)内の第2冷媒流路(5)を、内管(3)の軸線の周りに旋回しつつ流れるので、第2冷媒流路(5)内を流れる冷媒が効果的に攪拌される。したがって、第1冷媒流路(4)を流れる冷媒と第2冷媒流路(5)を流れる冷媒との熱交換効率が効果的に向上する。
【0033】
図5および
図6は上述した二重管式熱交換器(1)に用いられる乾燥剤容器の変形例を示す。
【0034】
図5および
図6において、通気性および通液性を有する材料からなりかつ乾燥剤(19)が入れられるとともに、第2冷媒流路(5)の空隙(17)内に配置された乾燥剤容器(30)は、金属製や合成樹脂製の網状物でつくられかつ両端が開口した筒状体(31)と、網状物でつくられかつ筒状体(31)の両端開口を閉鎖する閉鎖部材(32)とよりなる。筒状体(31)および閉鎖部材(32)は、フィルタとして働く。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明による二重管式熱交換器は、コンプレッサ、凝縮部と過冷却部とを有するコンデンサ、エバポレータ、減圧器としての膨張弁、気液分離器、およびコンデンサとエバポレータとの間に配置され、かつコンデンサの過冷却部から出てきた高温の冷媒とエバポレータから出てきた低温の冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えたカーエアコンを構成する冷凍サイクルにおいて、中間熱交換器として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
(1):二重管式熱交換器
(2):外管
(3):内管
(4):第1冷媒流路
(5):第2冷媒流路
(15):フィン
(15a):波頂部
(15b):波底部
(15c):連結部
(17):空隙
(18):乾燥剤バッグ(乾燥剤容器)
(19):乾燥剤
(20):コンプレッサ
(21):コンデンサ
(22):凝縮部
(23):受液器(気液分離器)
(24):過冷却部
(25):エバポレータ
(26):膨張弁(減圧器)
(30):乾燥剤容器
(31):筒状体
(32);閉鎖部材