特許第6574652号(P6574652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574652屋根ユニット及び屋根ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574652
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】屋根ユニット及び屋根ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/20 20060101AFI20190902BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20190902BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20190902BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   E04B7/20 521C
   E04B7/20 521A
   E04B1/348 L
   E04B1/80 100Q
   E04B1/94 R
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-178680(P2015-178680)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-102395(P2016-102395A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-231624(P2014-231624)
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 敬二
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−203168(JP,A)
【文献】 特開2014−066119(JP,A)
【文献】 特開2013−032694(JP,A)
【文献】 特開2001−241134(JP,A)
【文献】 特開2013−036321(JP,A)
【文献】 米国特許第04882883(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/20,7/22
E04B 1/348
E04B 1/80,1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、前記断熱材よりも上に配置される押さえボードと、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通し、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する固定具と、
前記デッキプレートにおける複数の山部又は複数の谷部に架け渡され、前記複数の山部のうち少なくとも二つ以上の山部又は前記複数の谷部のうちの少なくとも二つ以上の谷部に対して固定される第1の補強プレートと、を備え、
前記押さえボードは、前記断熱材よりも高い剛性を有し、
前記断熱材は、前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されている、屋根ユニット。
【請求項2】
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には建物の躯体に対する接合部、又は、隣接して設けられる他の前記屋根ユニットに対する接合部が形成されている、請求項1に記載の屋根ユニット。
【請求項3】
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部の上方に向かって持ち出されるように、前記山部に対して固定される第2の補強プレートをさらに備える、請求項1又は2に記載の屋根ユニット。
【請求項4】
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には、前記断熱材及び前記押さえボードを下方から支える支持材が設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の屋根ユニット。
【請求項5】
前記断熱材及び前記押さえボードは、前記デッキプレートの外縁の少なくとも一辺から後退して設けられており、前記デッキプレートの山部の一部が露出している、請求項1〜のいずれか一項に記載の屋根ユニット。
【請求項6】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、前記断熱材よりも上に配置される押さえボードと、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通し、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する固定具と、を備え、
前記押さえボードは、前記断熱材よりも高い剛性を有し、
前記断熱材は、前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されており、
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には建物の躯体に対する接合部、又は、隣接して設けられる他の前記屋根ユニットに対する接合部が形成されている、屋根ユニット。
【請求項7】
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部の上方に向かって持ち出されるように、前記山部に対して固定される第2の補強プレートをさらに備える、請求項6に記載の屋根ユニット。
【請求項8】
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には、前記断熱材及び前記押さえボードを下方から支える支持材が設けられている、請求項6又は7に記載の屋根ユニット。
【請求項9】
前記断熱材及び前記押さえボードは、前記デッキプレートの外縁の少なくとも一辺から後退して設けられており、前記デッキプレートの山部の一部が露出している、請求項6〜8のいずれか一項に記載の屋根ユニット。
【請求項10】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、前記断熱材よりも上に配置される押さえボードと、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通し、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する固定具と、を備え、
前記押さえボードは、前記断熱材よりも高い剛性を有し、
前記断熱材は、前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されており、
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部の上方に向かって持ち出されるように、前記山部に対して固定される第2の補強プレートをさらに備える、屋根ユニット。
【請求項11】
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には、前記断熱材及び前記押さえボードを下方から支える支持材が設けられている、請求項10に記載の屋根ユニット。
【請求項12】
前記断熱材及び前記押さえボードは、前記デッキプレートの外縁の少なくとも一辺から後退して設けられており、前記デッキプレートの山部の一部が露出している、請求項10又は11に記載の屋根ユニット。
【請求項13】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、前記断熱材よりも上に配置される押さえボードと、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通し、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する固定具と、を備え、
前記押さえボードは、前記断熱材よりも高い剛性を有し、
前記断熱材は、前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されており、
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には、前記断熱材及び前記押さえボードを下方から支える支持材が設けられている、屋根ユニット。
【請求項14】
前記断熱材及び前記押さえボードは、前記デッキプレートの外縁の少なくとも一辺から後退して設けられており、前記デッキプレートの山部の一部が露出している、請求項13に記載の屋根ユニット。
【請求項15】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、前記断熱材よりも上に配置される押さえボードと、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通し、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する固定具と、を備え、
前記押さえボードは、前記断熱材よりも高い剛性を有し、
前記断熱材は、前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されており、
前記断熱材及び前記押さえボードは、前記デッキプレートの外縁の少なくとも一辺から後退して設けられている、前記デッキプレートの山部の一部が露出している、屋根ユニット。
【請求項16】
前記デッキプレートと前記断熱材との間には不燃材が配置されている請求項1〜15のいずれか一項に記載の屋根ユニット。
【請求項17】
前記デッキプレートの下面には不燃材が配置されている請求項1〜16のいずれか一項に記載の屋根ユニット。
【請求項18】
陸屋根の水勾配を形成するための勾配材が前記断熱材の下若しくは上に配置されている、又は、陸屋根の水勾配が前記断熱材に形成されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の屋根ユニット。
【請求項19】
前記水勾配は、屋根ユニットごとに寄棟状となるように成形される、請求項18に記載の屋根ユニット。
【請求項20】
請求項18に記載の屋根ユニットが複数配置されて、陸屋根全体で一つの寄棟状の水勾配が形成された、屋根構造。
【請求項21】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、前記デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、前記断熱材よりも上に配置される押さえボードと、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通し、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する固定具と、を備え、
前記押さえボードは、前記断熱材よりも高い剛性を有し、
前記断熱材は、前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されており、
陸屋根の水勾配を形成するための勾配材が前記断熱材の下若しくは上に配置されている、又は、陸屋根の水勾配が前記断熱材に形成されており、
前記水勾配は、屋根ユニットごとに寄棟状となるように成形される、屋根ユニット。
【請求項22】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットの製造方法であって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートよりも上に断熱材を配置し、前記断熱材よりも上に、前記断熱材よりも高い剛性を有する押さえボードを配置する工程と、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通する固定具によって、前記断熱材が前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されるように、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する工程と、
前記デッキプレートにおける複数の山部又は複数の谷部に第1の補強プレートを架け渡し、前記複数の山部のうち少なくとも二つ以上の山部又は前記複数の谷部のうちの少なくとも二つ以上の谷部に対して前記第1の補強プレートを固定する工程と、を備える、屋根ユニットの製造方法。
【請求項23】
建物の陸屋根を形成する屋根ユニットの製造方法であって、
山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートよりも上に断熱材を配置し、前記断熱材よりも上に、前記断熱材よりも高い剛性を有する押さえボードを配置する工程と、
前記押さえボードから前記デッキプレートまでを貫通する固定具によって、前記断熱材が前記デッキプレートと前記押さえボードとによって挟持されるように、前記押さえボード、前記断熱材及び前記デッキプレートを互いに固定する工程と、を備え、
前記デッキプレートの外縁のうち前記溝の方向に平行な外縁には前記谷部が形成されており、該谷部には建物の躯体に対する接合部、又は、隣接して設けられる他の前記屋根ユニットに対する接合部が形成されている、屋根ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根ユニット及び屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物躯体に据え付けられることで屋根を構成する屋根ユニットが知られている。例えば、特許文献1には、平面視梯子形状を呈するパネルフレームの上に波形のデッキプレートが設置され、その上に断熱ボードが設置され、さらにその上に防水シートが張られた状態で、これらが一体化された屋根パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−293508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された屋根パネルでは、デッキプレートと断熱ボードとを支える為にパネルフレームが必須であった。更に、パネルフレームは、屋根パネルの面外剛性を担保するために鉄骨とする必要があり、これによって屋根パネルの重量が増加していた。その結果、屋根パネルの施工性や搬入性が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、従来に比し、施工性や搬入性が向上した屋根ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の陸屋根を形成する屋根ユニットであって、山部と谷部とが繰り返し形成されて一方向に延びる溝が複数形成されたデッキプレートと、デッキプレートよりも上に配置される断熱材と、断熱材よりも上に配置される押さえボードと、押さえボードからデッキプレートまでを貫通し、押さえボード、断熱材及びデッキプレートを互いに固定する固定具と、を備え、押さえボードは、断熱材よりも高い剛性を有し、断熱材は、デッキプレートと押さえボードとによって挟持されている。
【0007】
この屋根ユニットでは、押さえボードとデッキプレートとが断熱材を挟持した状態で、押さえボードからデッキプレートまでを固定具が貫通している。この場合、所定の剛性を備えた押さえボードとデッキプレートと一体化され、従来のような鉄骨のフレームを付加せずとも、屋根ユニット全体での面外剛性を向上させることができる。したがって、屋根ユニットが軽量化され、施工性や搬入性が向上する。
【0008】
また、デッキプレートにおける複数の山部又は複数の谷部に架け渡され、複数の山部のうち少なくとも二つ以上の山部又は複数の谷部のうちの少なくとも二つ以上の谷部に対して固定される第1の補強プレートをさらに備えてもよい。このような第1の補強プレートを備えることで、屋根ユニットの面外剛性をさらに向上させることができる。
【0009】
また、デッキプレートの外縁のうち溝の方向に平行な外縁には谷部が形成されており、この谷部には建物の躯体に対する接合部、又は、隣接して設けられる他の屋根ユニットに対する接合部が形成されていてもよい。接合部がデッキプレートの外縁の谷部に形成されているため、ボルト等の接合部材が山部側に設けられた断熱材等に干渉することがなく、施工性が向上する。また、デッキプレートの接合部が建物の躯体または他の屋根ユニットと接合され、躯体と複数の屋根ユニットとが一体化されることで、屋根の面剛性が高められる。
【0010】
また、デッキプレートの外縁のうち溝の方向に平行な外縁には谷部が形成されており、この谷部の上方に向かって持ち出されるように、山部に対して固定される第2の補強プレートをさらに備えてもよい。また、この谷部には、断熱材及び押さえボードを下方から支える支持材が設けられてもよい。屋根ユニットの外縁に歩行等による荷重が加わった場合であっても、押さえボード等の端部が沈み込むことを抑制できる。
【0011】
また、断熱材及び押さえボードは、デッキプレートの外縁の少なくとも一辺から後退して設けられており、デッキプレートの山部の一部が露出していてもよい。他の部材を露出した山部に支持させながら、他の部材を山部に接合できるので施工性を向上できる。
【0012】
また、デッキプレートと断熱材との間には不燃材が配置されていてもよい。また、デッキプレートの下面には不燃材が配置されていてもよい。不燃材を配置することで、耐火性を向上できる。また、不燃材として断熱材よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利となる。
【0013】
また、陸屋根の水勾配を形成するための勾配材が断熱材の下若しくは上に配置されている、又は、陸屋根の水勾配が断熱材に形成されてもよい。また、このような屋根ユニットが複数配置されて形成される屋根構造では、陸屋根全体で一つの寄棟状の水勾配が成形されてもよい。このように形成されることで、雨水の排水を速やかに行うことができる。
【0014】
また、水勾配は、屋根ユニットごとに寄棟状となるように成形されてもよい。一つの陸屋根内に水勾配の谷部が多く形成されることで、雨水の排水及び蒸発を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来に比し、施工性や搬入性が向上した屋根ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る屋根ユニットを備えて構成された屋根の平面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図であり、(a)は屋根ユニットを組み付ける手前の分解図であり、(b)は屋根ユニットを組み付けた状態を示す図である。
図3】屋根ユニット同士の接合部分を説明するための分解図である。
図4】(a)は屋根ユニットの端部に配置された支持材を示す断面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面図である。
図5】パラペットユニット及び屋根ユニットの建物との接合部分を説明するための分解図である。
図6】屋根ユニットの勾配を示す平面図である。
図7】第2の実施形態に係る屋根ユニットの断面図であり、(a)は屋根ユニットを組み付ける手前の分解図であり、(b)は屋根ユニットを組み付けた状態を示す図である。
図8】第3の実施形態に係る屋根ユニットの断面図であり、(a)は屋根ユニットを組み付ける手前の分解図であり、(b)は屋根ユニットを組み付けた状態を示す図である。
図9】屋根ユニットとジョイント部ユニットとの接合部分を説明するための分解図である。
図10】第4の実施形態に係る屋根ユニット同士の接合部分を説明するための分解図である。
図11】第5の実施形態に係る屋根ユニット同士の接合部分を説明するための分解図である。
図12】屋根ユニット同士の接合部分の変形例を説明するための分解図である。
図13】屋根ユニットとジョイント部ユニットとの接合部分の変形例を説明するための分解図である。
図14】屋根構造における屋根ユニットの組み合わせの変形例を示す平面図である。
図15】屋根ユニットの勾配の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0018】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る屋根ユニットを備えて構成された陸屋根の平面図(伏図)である。鉄骨造の建物100は、陸屋根を形成する屋根構造101Aを備えている。屋根構造101Aは、外縁B同士が互いに接合されて組み合わされた複数の屋根ユニット1Aと、組み合わされた屋根ユニット1Aの周囲を囲むパラペットユニット30とによって形成されている。なお、屋根ユニット1Aは予め工場等で製作されたものであり、トラック等によって工場等から現場へ搬送され、クレーン等により吊り上げられて建物に取付けられる。また、屋根ユニット1Aとして、同じ大きさのものを図示しているが、屋根ユニット1Aの大きさは後述するように設計される屋根の形状や大きさによって適宜変更されるものである。また、パラペットユニット30は、配置される場所によって異なる平面形状を有しているが、基本的な構成は共通している。また、本実施形態における建物100は、所定の平面モジュールを有している。この平面モジュールとは、建築において設計上の基準となる基本寸法を意味し、建物100は、平面的寸法(隣り合う柱の中心間の距離など)が平面モジュールの整数倍となるように構成される。
【0019】
図2に示されるように、屋根ユニット1Aは、デッキプレート2と、勾配材3と、断熱材5と、押さえボード6と、防水シート7とを備えている。デッキプレート2は、建物100の平面モジュールに対応した平面サイズを備えた鋼板部材である。デッキプレート2には、一方向(図1の溝方向D参照)に延びる複数の溝2aが一定の間隔で連続して形成されている。溝2aは、例えば75mm程度の深さであり、底部に向かって幅が狭くなっている。これにより、デッキプレート2は、側面視台形状の山部2bと、側面視逆台形状の谷部2cとが繰り返し形成される略波形状を呈する。デッキプレート2において、溝方向D(図1参照)に平行な端部B1,B2は、谷部2cで終わっている。
【0020】
勾配材3は、屋根ユニット1Aの上面に所定の勾配をつけるためのものである。勾配材3は、例えば、1/50〜1/100程度の水勾配が形成された板状部材である。本実施形態では、勾配材3は断熱機能を有するポリスチレンフォームによって形成されている。勾配材3は、デッキプレート2よりも上に配置されている。
【0021】
断熱材5は、屋根ユニット1Aに要求される断熱性能を付与するためのものである。断熱材5は、厚さが均一な板状部材であり、例えばフェノールフォームである。本実施形態では、断熱材5が2層重ねて設けられている。なお、断熱材5は、屋根ユニット1Aに要求される断熱性能に応じて、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。断熱材5は、デッキプレート2よりも上に配置されるものであり、本実施形態では、勾配材3の上に配置されている。なお、勾配材3が所望の断熱性を有し断熱材としても機能する場合は、断熱材5を省略してもよい。
【0022】
押さえボード6は、断熱材5よりも上に配置される板状部材である。押さえボード6は、少なくとも断熱材5よりも高い剛性を備えるものであり、例えば、セメント系ボード(ケイカル板、パルプ混入セメント板、スラグ石膏ボード、硬質木片セメント板、繊維混入スレート等)、木材、木質ボード(合板、パーティクルボード、MDF、OSB、ハードボード、CLT、集成材、樹脂木材等)等によって形成される。
【0023】
防水シート7は、屋根ユニット1Aに防水性を付与するためのものであり、屋根ユニット1Aの最上層に配置される。防水シート7は、例えばポリ塩化ビニルによって形成されるシート材である。また、防水シート7の材料としては、ポリ塩化ビニル以外に、アスファルト系シート、ゴムアスファルト系シート、ゴム系シート、ブチルゴム系シート、アクリルゴム系シート等の種々のシートを用いてもよい。なお、以下の説明では、防水シート7の固定態様として、主に全面接着工法による接着を例示するが、例えば、機械固定工法(例えば、絶縁工法、浮かし張り工法)、接着と機械固定の混合工法等による固定であってもよい。さらに、防水シート7に代えて、押さえボード6の上面にウレタン系塗膜防水を施してもよい。
【0024】
また、本実施形態では、デッキプレート2の周縁において、デッキプレート2と勾配材3との間に、適宜に補強プレート11,12が配置されている。補強プレート(第1の補強プレート)11(図1参照)は、デッキプレート2の溝方向Dに直交する帯状のプレートであり、例えば、補強プレート11は、デッキプレート2の溝方向Dの両端に配置される。補強プレート11は、少なくとも複数の山部2bに架け渡され、当該複数の山部2bのうち少なくとも二つ以上の山部2bに対して固定されることで、デッキプレートが撓むことを抑制する。補強プレート11は、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類(鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等)であってもよい。
【0025】
また、図1図3に示されるように、補強プレート(第2の補強プレート)12は、溝方向Dに延びる帯状のプレートであり、デッキプレート2の溝方向Dに平行な外縁Bにおいて、他の屋根ユニット1Aと接合される端部B1に設けられている。補強プレート12は、少なくとも、端部B1の谷部2cに隣接した山部2bに固定されるものであり、その山部2bに沿って延在している。特に図3に示されるように、補強プレート12における、端部B1側の端縁12aは、外縁の谷部2cの上方に向かって持ち出されている。
【0026】
屋根ユニット1Aは、デッキプレート2の上面に補強プレート11,12が配置され、その上に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。屋根ユニット1Aには、押さえボード6からデッキプレート2までが密着した状態で、押さえボード6側からビス(固定具)14が打ち込まれている。ビス14は、頭抜け防止のために断面がL形のワッシャー15を介して打ち込まれている。これにより、押さえボード6、断熱材5、勾配材3、補強プレート11,12及びデッキプレート2は一体的に固定される。この際、断熱材5及び勾配材3は、押さえボード6とデッキプレート2とによって挟持される。このように一体的に固定された押さえボード6の上面には、粘着剤7aによって防水シート7が接着される。粘着剤7aは、防水シート7を押さえボード6に密着させるために、ゴム系粘着剤が望ましい。例えば、ネオプレーン系、クロロプレーン系、ニトリルゴム系、天然ゴム系の粘着剤が使用される。なお、ビス14の頭抜け防止のために使用されるワッシャーは、上述のような断面がL形のワッシャーに限定されるものではなく、平面視で円形状の平ワッシャー(後述するワッシャー32と同形状)でもよい。
【0027】
図3に示されるように、本実施形態における屋根ユニット1Aでは、他の屋根ユニット1Aと接合される側の端部B1において、防水シート7、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びデッキプレート2の端縁が揃っている。この端部B1では、図4に示されるように、デッキプレート2の谷部2cに支持材16が配置される。支持材16は、谷部2cの形状に対応して設けられる上面16a、斜面16b及び底面16cと、上面16a、斜面16b及び底面16cに直交する側面16dとを備える。支持材16は、例えば鋼製からなり、断熱材5及び押さえボード6を下方から支持するものである。支持材16は、谷部2cの溝方向に沿って、所定の間隔(例えば300mm程度)で配置される。
【0028】
図2及び図3に示されるように、隣接する屋根ユニット1A間では、デッキプレート2同士がジョイントプレート17によって接合される。屋根ユニット1Aのデッキプレート2は、その端縁が谷部2cとなっている。この谷部2cには、溝方向Dにそって所定のピッチで接合部18aが形成されている(図4(b)参照)。接合部18aは、例えば予めデッキプレート2に溶接されたナットからなる。ジョイントプレート17は、デッキプレート2の溝方向Dの長さと略同じ長さに形成された板状の鋼材である。ジョイントプレート17には、長さ方向に沿ってボルト貫通用の孔部17a,17bが、接合部18aと同じピッチで形成されている。孔部17a,17bは、接続対象となる2つのデッキプレート2にそれぞれ対応したものである。隣接した屋根ユニット1Aにおけるデッキプレート2に、ジョイントプレート17がボルト17c,17dによって固定されることで、屋根ユニット1A同士が接合される。
【0029】
また、隣接する屋根ユニット1Aの上面側では、防水シート7間に生じる間隙が防水シート7と同一材料からなる防水テープ20によって塞がれる。図3に示されるように、まず、ビス14や、ワッシャー15によって防水シート7が損傷しないように、屋根ユニット1Aの押さえボード6に目地テープ21が接着される。そして、目地テープ21の上に防水シート7の端部を両側から被せた後、防水シート7と防水テープ20が溶着される。なお、押さえボード6に目地テープ21が接着されるためには、図3に示されるように、防水シート7の端部の目地テープ21と重なる領域が、工場等での製作時点で押さえボード6に接着されていない必要がある。
【0030】
図2図5に示されるように、屋根ユニット1Aでは、他の屋根ユニット1Aと接合されない側の端部(パラペットユニット30と接合される側の端部)B2において、デッキプレート2の端縁が防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3の各端縁よりも飛び出している。換言すると、デッキプレート2よりも防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3が後退している。図示例では、防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3の端縁がデッキプレート2の外縁寄りの山部2bの中央で揃っている。これにより、デッキプレート2における外縁の谷部2cと、外縁寄りの山部2bの一部とが露出している。
【0031】
デッキプレート2の端部B2は、谷部2cとなっている。この谷部2cには、溝方向にそって所定のピッチで接合部18bが形成されている。接合部18bは、例えばボルト貫通用の孔部である。この孔部と、建物100の梁105に予め設けられた孔部105aとがボルト19a及びナット19bによって接合されることで、屋根ユニット1Aが建物100に接合される。本実施形態では、谷部2cが露出しているため、デッキプレート2の上面側からボルト19aを挿通してナット19bと締結し、屋根ユニット1Aを建物100の梁105に接合することができる。なお、梁105の上フランジの下面側からボルト19aを挿通してナット19bと締結し、屋根ユニット1Aを建物100の梁105に接合してもよい。屋根ユニット1Aが接合された梁105は、外壁取付部材(図示省略)を介して建物100の外壁110を支持している。図2に示されるように、屋根ユニット1Aの端部B2と外壁110との間には、パラペットユニット30が配置される。
【0032】
パラペットユニット30は、プレート31と、勾配材3と、断熱材5と、押さえボード6と、防水シート7とを備えている。勾配材3、断熱材5、押さえボード6及び防水シート7は、屋根ユニット1Aと同様の構成である。プレート31は、側面視略Z形状の板状部材であり、上面部31a、及び底面部31bと、上面部31aと底面部31bとに垂直に連続する側面部31cとを有する。プレート31は、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類(鉄、ステンレス、アルミ、銅等)、木材、木質ボード(合板、パーティクルボード、MDF、OSB、ハードボード、CLT、集成材、樹脂木材等)、セメント系ボード(ケイカル板、パルプ混入セメント板、スラグ石膏ボード、硬質木片セメント板、繊維混入スレート板等)であってもよい。
【0033】
パラペットユニット30は、プレート31における底面部31bの上面に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。プレート31の側面部31cの上側、及び、プレート31の上面部31aは、押さえボード6よりも上方に突出している。押さえボード6からプレート31までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してビス14が打ち込まれている。これにより、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びプレート31は一体的に固定される。このように一体的に固定された押さえボード6の上面には、粘着剤7aによって防水シート7が接着される。防水シート7は、プレート31の側面部31c及び上面部31aにも接着される。プレート31の上面部31aと防水シート7との間には、笠木35が設けられる。
【0034】
パラペットユニット30は、一方の側縁側(一端側)が梁105に設けられたZ型の金属プレートであるパラペット下地115に支持され、他方の側縁側(他端側)が屋根ユニット1Aのデッキプレート2に支持される。パラペットユニット30の一端側には、プレート31の上面部31aに重なるように、防水シート7、及び笠木35が配置され、更に、上面部31a、防水シート7、及び笠木35を貫通するように孔部36が形成されている。この孔部36には、パラペット下地115の上面に予め固定されているボルト115aが通され、更にナット115bで締結されて、パラペットユニット30がパラペット下地115に接合される。また、パラペットユニット30のプレート31の側面部31cはパラペット下地115の内側壁面に当接しており、底面部31bは、パラペット下地115に固定された断面L字状のアングル116に支持されている。
【0035】
パラペットユニット30の他端側は、屋根ユニット1Aのデッキプレート2における露出した山部2bに支持される。この状態で、ビス14は、パラペットユニット30における押さえボード6側から、屋根ユニット1Aにおけるデッキプレート2までを貫通して接合するように打ち込まれる。なお、パラペットユニット30と屋根ユニット1Aとの隙間は、上面側から貼り付ける目地テープ21及び防水テープ20によって塞がれる。
【0036】
屋根構造101Aは、上述の通り、屋根ユニット1Aとパラペットユニット30とが接合されることで形成される。屋根構造101Aは、勾配材3によって所定の勾配が形成されている。本実施形態では、例えば図6に示されるように、屋根ユニット1Aごとに寄棟状の勾配が形成されている。この例では、隣接する屋根ユニット1A間が勾配の谷部Eとなる。各屋根ユニット1Aに振った雨水は、屋根ユニット1Aの勾配によって谷部Eまで流れ、さらに谷部Eを流れることでパラペットユニット30まで流れる。この流れによる排水と、谷部Eに水溜りとして残存する雨水の蒸発により、屋根ユニット1Aに降った雨水が速やかに処理される。
【0037】
(第2の実施形態)
次に図7を参照して第2の実施形態に係る屋根構造101Bについて説明する。本実施形態に係る屋根構造101Bは、屋根ユニット1Aとは異なる屋根ユニット1Bを用いる点と、パラペットユニット30ではなくパラペット部分を備えた屋根ユニット1Pを用いる点で、第1の実施形態に係る屋根構造101Aと相違する。以下、主として第1の実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
【0038】
屋根ユニット1Bは、第1の実施形態における屋根ユニット1Aと基本的な構成は同じである。すなわち、屋根ユニット1Bは、デッキプレート2の上面に補強プレート11,12が配置され、その上に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。押さえボード6からデッキプレート2までは、密着した状態で、押さえボード6側から平面視で円形状のワッシャー32を介してビス14が打ち込まれている。
【0039】
この屋根ユニット1Bでは、デッキプレート2の溝方向D(図1参照)に平行な両側の端部B1において、防水シート7、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びデッキプレート2の端縁が揃っている。そのため、第1の実施形態における屋根ユニット1Aでは、一方の外縁における谷部2cのみに支持材16が設けられていたが、本実施形態の屋根ユニット1Bでは、いずれの外縁においても谷部2cに支持材16が設けられている。また、デッキプレート2における溝方向Dに平行な外縁の谷部2cには、隣接する屋根ユニット1Pと接合するための接合部18aが設けられている。
【0040】
また、上述のように、本実施形態では、パラペット部分を備えた屋根ユニット1Pが用いられる。屋根ユニット1Pは、パラペット部分を備えている点を除き、基本的な構成は屋根ユニット1Aと同様である。すなわち、屋根ユニット1Pは、デッキプレート2の上面に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。この屋根ユニット1Pは、屋根ユニット1Aと異なり、補強プレート11,12を備えておらず、代わりにパラペット部分を形成するためのプレート41を備えている。
【0041】
プレート41は、第1の実施形態に係るパラペットユニット30におけるプレート31の底面部31bが屋根ユニット1Pの端部まで延在した形状となっている。そのため、プレート41は、補強プレート11とプレート31の2つの機能を兼ね備えている。押さえボード6からデッキプレート2までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してビス14が打ち込まれている。また、デッキプレート2における梁105に接合される側の端部の谷部2cには、溝方向Dにそって所定のピッチで接合部18bが形成されている。なお、プレート41の底面部が屋根ユニット1Pの端部まで延在した形状ではなく、屋根ユニット1Pにおける最もパラペットに近い山部2bまで延在した形状であってもよい。
【0042】
屋根ユニット1Pにおける屋根ユニット1Bに接合される側の端部では、防水シート7、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びデッキプレート2の端縁が揃っている。一方で、反対側の端部は、防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3が、デッキプレート2よりも突出し、パラペット部分を形成している。プレート41は、側面視略Z形状に屈曲しており、上面部41aと防水シート7との間には、パラペットユニット30と同様に、笠木35が設けられる。
【0043】
屋根ユニット1Bと屋根ユニット1Pとの接合は、第1の実施形態における屋根ユニット1A同士の接合と同様であり、ジョイントプレート17が用いられる(図3参照)。屋根ユニット1B,1Pの上面側では、防水シート7間に生じる間隙が目地テープ21及び防水テープ20によって塞がれる。また、屋根ユニット1Pとパラペット下地115との接合は、第1の実施形態におけるパラペットユニット30とパラペット下地115との接合と同様である(図5参照)。屋根ユニット1Pにおけるデッキプレート2の接合部18bと梁105との接合は、ボルト19aを梁105側から締結する点において、第1の実施形態と相違する。
【0044】
(第3の実施形態)
次に図8図9を参照して第3の実施形態に係る屋根構造101Cについて説明する。屋根構造101Cでは、屋根ユニット1Aとは異なる屋根ユニット1Cを用いる点で、第1の実施形態に係る屋根構造101Aと相違しており、つまり、隣接する屋根ユニット1C間の納まりのみが第1の実施形態と相違している。以下、主として第1の実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
【0045】
屋根ユニット1Cは、第1の実施形態における屋根ユニット1Aと基本的な構成は同じである。すなわち、屋根ユニット1Cは、デッキプレート2の上面に補強プレート11,12が配置され、その上に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。押さえボード6からデッキプレート2までは、密着した状態で、押さえボード6側からビス14が打ち込まれている。
【0046】
屋根ユニット1Cでは、隣接する他の屋根ユニット1Cと接合されない側の端部B2は、第1の実施形態と同様のパラペットユニット30と接合される。屋根ユニット1Cとパラペットユニット30の接合及びパラペットユニット30と梁105との接合は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
一方、他の屋根ユニット1Cと接合される側の端部B2では、防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3の各端縁よりもデッキプレート2の端縁が飛び出している。この構成は、パラペットユニット30に接合される側の端部B2と同様である。なお、屋根ユニット1C同士の接合は、ジョイントプレート17によってなされるため、他の屋根ユニット1Cと接合される側の端部B2には、ジョイントプレート17と接合するための接合部18aが形成されている。図示例における屋根ユニット1C同士の接合では、ボルトが上側から挿通されるため、接合部18aは例えばデッキプレート2の下面に設けられる。
【0048】
隣接する屋根ユニット1C同士は、第1の実施形態と同様に、デッキプレート2の谷部2c同士がジョイントプレート17によって接合される。そして、当該接合部分の上方にジョイント部ユニット50が配置される。図9に示されるように、ジョイント部ユニット50は、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3が、両面テープ(図示省略)によって接着されている。また、押さえボード6の上面には、防水シート7が粘着剤7aで接着されている。ジョイント部ユニット50は、屋根ユニット1Cにおける露出した山部2bに載置された状態で、押さえボード6側打ち込まれるビス14によって隣接する屋根ユニット1Cのデッキプレート2に固定される。屋根ユニット1C及びジョイント部ユニット50の上面側では、防水シート7間に生じる間隙は目地テープ21及び防水テープ20によって塞がれる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に図10を参照して第4の実施形態に係る屋根構造101Dについて説明する。屋根構造101Dでは、屋根ユニット1Aとは異なる屋根ユニット1Dを用いる点で、第1の実施形態に係る屋根構造101Aと相違している。但し、屋根ユニット1Dの納まりは、基本的に、第1の実施形態と共通する。更に、屋根ユニット1Dは、屋根ユニット1Aと同一の部材や要素を備えているので、以下の説明では、主として第1の実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
【0050】
屋根ユニット1Dは、補強プレート12と断熱材5との間、より詳しくは、補強プレート12と勾配材3との間に不燃材51が配置されている。不燃材51は、例えば、通常の火災時における火熱により燃焼しない性能を有する材料であり、建築基準法第2条第9号に定められる不燃材料のほか、建築基準法施行令第1条第5号に基いて認定された準不燃材料が含まれる。不燃材51は、ALC板、石膏ボード、ケイカル板、木毛セメント板、木片セメント板、硬質木片セメント板等であってもよい。不燃材51を用いることで、耐火性を向上できる。また、不燃材51として、断熱材5や勾配材3よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利である。
【0051】
(第5の実施形態)
次に図11を参照して第5の実施形態に係る屋根構造101Eについて説明する。屋根構造101Eでは、屋根ユニット1Aとは異なる屋根ユニット1Eを用いる点、及びデッキプレート2の下面に不燃材52が配置されている点で、第1の実施形態に係る屋根構造101Aと相違している。但し、屋根ユニット1Eの納まりは、基本的に、第1の実施形態と共通する。更に、屋根ユニット1Eは、屋根ユニット1Aと同一の部材や要素を備えているので、以下の説明では、主として第1の実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
【0052】
屋根ユニット1Eは、補強プレート12と断熱材5との間、より詳しくは、補強プレート12と勾配材3との間に不燃材51が配置されている。不燃材51は、ALC板、石膏ボード、ケイカル板、木毛セメント板、木片セメント板、硬質木片セメント板等であってもよい。不燃材51を用いることで、耐火性を向上できる。また、不燃材51として、断熱材5や勾配材3よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利である。
【0053】
また、屋根ユニット1Eのデッキプレート2の下面には不燃材52が配置されている。不燃材52は、不燃材51と同様に、不燃材料のほか、準不燃材料が含まれる。不燃材52は、ALC板、石膏ボード、ケイカル板、木毛セメント板、木片セメント板、硬質木片セメント板等であってもよい。不燃材52と不燃材51とは同材質の板材であっても良いし、異なる材質の板材であっても良い。
【0054】
不燃材52は、基本的には予め工場等においてデッキプレート2に固定されているが、施工現場においてデッキプレート2に固定されてもよい。また、屋根ユニット1Eに対する不燃材52の配置は任意に設定できる。例えば、予め工場等においてデッキプレート2の下面に対してジョイントプレート17を避けた範囲に不燃材52を配置しておき、施工現場においてジョイントプレート17を用いて屋根ユニット1E同士を接合した後に、ジョイントプレート17を覆う範囲に更に不燃材52を配置してもよい。
【0055】
不燃材52を用いることで、特に、室内側(下方)からの耐火性を向上できる。また、不燃材52として、断熱材5や勾配材3よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利である。
【0056】
また、第5の実施形態に係る屋根構造101Eでは、不燃材51と不燃材52との両方を用いた場合を例示したが、不燃材51を省略し、不燃材52のみを用いることも可能である。
【0057】
以上、各実施形態に示された屋根ユニット1A,1B,1C,1P,1D,1Eでは、押さえボード6とデッキプレート2とが断熱材5を挟持した状態で、押さえボード6からデッキプレート2までをビス14が貫通している。このような構成により、所定の剛性を備えた押さえボード6とデッキプレート2とが一体化され、従来のような鉄骨のフレームを付加せずとも、屋根ユニット全体での面外剛性を向上させることができる。したがって、屋根ユニット1A,1B,1C,1P,1D,1Eが軽量化され、施工性や搬入性が向上する。
【0058】
また、屋根ユニット1A,1B,1C,1D,1Eでは、デッキプレート2における複数の山部2bに架け渡され、複数の山部2bのうち少なくとも二つ以上の山部2bに対して固定される補強プレート11を備えることで、面外剛性をさらに向上させることができる。同様に、屋根ユニット1Pでは、プレート41を備えることで、面外剛性をさらに向上させることができる。
【0059】
また、屋根ユニット1A,1B,1C,1P,1D,1Eでは、デッキプレート2の外縁のうち溝方向Dに平行な外縁の谷部2cに接合部18a、18bが形成されているため、接合部18a、18bのボルト又はナットが山部2b側に設けられた断熱材5等に干渉することがなく、施工性が向上する。また、デッキプレート2の接合部18a、18bが建物の躯体又は他の屋根ユニット1A,1B,1C,1Pと接合され、躯体と複数の屋根ユニットとが一体化されることで、屋根の面剛性が高められる。これにより屋根構面の水平ブレースが省略できるので、施工性及びコストが改善される。
【0060】
また、屋根ユニット1A,1B,1D,1Eでは、外縁に形成された谷部2cの上方に向かって持ち出されるように固定される補強プレート12や、谷部2cに設けられる支持材16によって、屋根ユニットの外縁に歩行等による荷重が加わった場合であっても、押さえボード6等の端部が沈み込むことを抑制できる。
【0061】
また、屋根ユニット1A,1C,1D,1Eでは、外縁の少なくとも一辺において、断熱材5、押さえボード6等が外縁から後退して設けられている。デッキプレート2の外縁の少なくとも1辺で山部2bの一部を露出させることで、デッキプレート2を備えないパラペットユニット30やジョイント部ユニット50等の他の部材を露出した山部2bに支持させながら、他の部材を山部2bに接合できるので施工性を向上できる。
【0062】
また、屋根ユニット1A,1B,1C,1P,1D,1Eでは、勾配材3によって、屋根ユニットごとに寄棟状の水勾配が成形されることで、一つの陸屋根内に水勾配の谷部2cが多く形成される。これにより、雨水の排水及び蒸発を効率的に行うことができる。
【0063】
また、屋根ユニット1A,1B,1C,1Pでは、デッキプレート2と断熱材5との間、またはデッキプレート2と勾配材3との間に不燃材は配置されていない。また、デッキプレート2の下面に不燃材は配置されていない。しかしながら、デッキプレート2と断熱材5との間、特に、デッキプレート2と勾配材3との間に、上記の不燃材51を配置してもよい。また、デッキプレート2の下面に不燃材52を配置しても良い。不燃材51,52を配置することにより、耐火性を向上できる。また、不燃材51,52として、断熱材5や勾配材3よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利である。なお、屋根構造においてパラペットユニット30及びジョイント部ユニット50が用いられている場合には、当然のことながら、例えばパラペットユニット30及びジョイント部ユニット50の勾配材3の下面にも不燃材52が配置され得る。これにより、屋根構造全体の耐火性が向上する。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0065】
例えば、図3に示されるように、隣接する屋根ユニット1A同士の上面側に対して、防水シート7間に生じる間隙を防水テープ20及び目地テープ21のみによって塞ぐ例を示したが、これに限定されない。例えば、隣接する屋根ユニット1Aを接合させた場合には、隣接する断熱材5間に間隙が生じることがある。この場合、断熱材5間の間隙を塞ぐように気密テープ25を接着することで屋根の断熱性及び気密性を高めることができる。気密テープ25は、断熱材5の上面に接着されるものである。そのため、気密テープ25を用いる場合には、図12に示されるように、屋根ユニット1Aの押さえボード6を、予め断熱材5よりも後退させて形成しておく必要がある。これにより、断熱材5の上面が露出するため、この断熱材5の露出した部分に気密テープ25を接着することができる。この場合、施工現場において気密テープ25を接着した後に、気密テープ25の上から押さえボード61を固定する。そして、押さえボード61の上から目地テープ21が接着された後に、防水シート7と防水テープ20とが溶着されるものである。押さえボード61は、ビス14が打ち込まれることで固定される。ビス14は、補強プレート12まで貫通する。なお、押さえボード61は、断熱材5の露出した部分を被覆するサイズとなるように、予め加工されたものである。
【0066】
また、図9に示されるように、屋根ユニット1C及びジョイント部ユニット50の上面側に対して、防水シート7間に生じる間隙を防水テープ20及び目地テープ21のみによって塞ぐ例を示したが、これに限定されない。隣接する断熱材5間の間隙を塞ぐように気密テープ25を接着してもよい。この場合、例えば、図13に示されるように、屋根ユニット1Cの押さえボード6は、予め断熱材5よりも後退させるように形成されている。また、ジョイント部ユニット50の押さえボード62と断熱材5とは分離されている。これにより、屋根ユニット1C及びジョイント部ユニット50の断熱材5の上面が露出するため、この断熱材5の露出した部分に気密テープ25を接着することができる。押さえボード62は、屋根ユニット1Cの押さえボード6が後退した分だけ端部側が突出している。この場合、施工現場において気密テープ25を接着した後に、気密テープ25の上から押さえボード62をビス14で固定し、さらに目地テープ21及び防水テープ20を接着するものである。
【0067】
また、図7に示された例では、一つの屋根ユニット1Bにおける両端部B1にそれぞれ屋根ユニット1Pが接合されているが、これに限定されない。例えば、屋根ユニット1Bを複数連続して配置してもよい。端部B1同士が接合されるように複数の屋根ユニット1Bを配置することにより、屋根構造101Bを溝方向Dに平行な方向に拡張することができる。また、同様に、図8に示された例では、屋根ユニット1Cを複数連続して配置してもよい。この場合、隣り合う屋根ユニット1Cの間には、ジョイント部ユニット50が配置される。このように、屋根ユニット1Cとジョイント部ユニット50とが繰り返し配置されることで、屋根構造101Cを溝方向Dに平行な方向に拡張することができる。
【0068】
また、上述した第1〜5の各実施形態においては、屋根ユニット1A〜1Eのうちいずれか一種類のみが使用されているが、これに限定されず、屋根ユニット1A〜1Eのうち複数の種類を併用することができる。例えば、図14は、屋根ユニット1A及び屋根ユニット1Bが併用されて形成された屋根構造101Fを示す平面図である。この例では、図面の左端と右端とにそれぞれ屋根ユニット1Aが配置されており、周囲にパラペットユニット30が配置されている。そして、左右の屋根ユニット1A間に複数の屋根ユニット1Bが配置されている。図示例では、大きさの異なる2種類の屋根ユニット1Aと,大きさの異なる2種類の屋根ユニット1Bとが使用されており、さらに4つの屋根ユニット1Bに囲まれた位置に屋根ユニット1Baが配置されている。この屋根ユニット1Baは、屋根ユニット1Bと同じ層構造を備えるものである。屋根ユニット1Aと屋根ユニット1Bとは、互いに端部B1同士が対向する。また、屋根ユニット1B同士も互いに端部B1同士が対向する(屋根ユニット1Bと屋根ユニット1Baとの関係も含む)。このため、屋根構造101Fでは、屋根ユニット間の接続のためにジョイント部ユニットを必要とすることなく、屋根ユニット1Bを増設することによって、屋根構造を溝方向Dに平行な方向(図面の左右方向)に拡張することができる。
【0069】
また、図6において、屋根ユニットごとに寄棟状の勾配が形成される例を示したがこれに限定されない。例えば、図15に示されるように、陸屋根の屋根構造101(屋根構造101A〜101Eと同様の構成、又は、屋根構造101Fのように異なる屋根ユニットを組み合わせた構成)全体で寄棟状の勾配が形成されてもよい。この場合、屋根ユニット1(屋根ユニット1A〜1Eのいずれかの構成を備えている)における勾配材3の配置は、当該屋根ユニット1が屋根構造101のどこに配置されるかで変わることになる。屋根ユニット1に振った雨水は、矢印で示されるように、勾配に従ってそのままパラペットPまで流れることになる。このように形成されることで、排水を速やかに行うことができる。
【0070】
また、第1の補強プレート11が少なくとも二つ以上の山部2b間にわたって固定される例を示したがこれに限定されない。例えば、第1の補強プレート11は、少なくとも二つ以上の谷部2c間にわたって固定されてもよい。この場合、第1の補強プレート11は、デッキプレート2の下面側に配置され、第1の補強プレート11側からデッキプレート2に向かってビスが打ち込まれることになる。
【0071】
また、勾配材3がデッキプレート2と断熱材5との間に配置されている例を示したが、これに限定されない。例えば、勾配材3を断熱材5と押さえボード6との間に配置してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1A〜1C,1P,1D,1E…屋根ユニット、2…デッキプレート、2a…溝、2b…山部、2c…谷部、3…勾配材、5…断熱材、6…押さえボード、11…第1の補強プレート、12…第2の補強プレート、14…ビス(固定具)、18a,18b…接合部、51…不燃材、52…不燃材、101(101A〜101E)…屋根構造。
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