【実施例】
【0050】
以下に実施例を示して、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0051】
実施例及び比較例において、反応成績を示すために用いたn−ブテン転化率及びブタジエン収率は次式で定義される。
n−ブテン転化率(%)=(反応したn−ブテンのモル数)/(供給したn−ブテンのモル数)×100
ブタジエン収率(%)=(生成したブタジエンのモル数)/(供給したn−ブテンのモル数)×100
反応ガスはガスクロマトグラフィー(島津製GC2010プラス、検出器:TCD、FID)によって分析した。
【0052】
実施例及び比較例における金属酸化物触媒の表面状態の評価は次のようにして行い、触媒の異形率として算出した。
【0053】
形状解析レーザー顕微鏡(型式:VK−X250、キーエンス製)の試料台に、触媒粉末(焼成粉末)を少量採取し、無作為に選択した触媒粒子100個について、それぞれの粒子表面の粗さ(粒子表面の凹凸の状態)を測定することにより、異形率を算出した。
測定は、触媒粒子を真上から観察し、20μm×20μmの面範囲を非接触式のレーザー光によって表面の凹凸を測定し、その測定値から、表面の粗さを表す指標であるSdrを用いて規定した。Sdrは、測定した領域を真上から見た時の面積を基準として、実際の表面積の増加の割合を表したものであり、Sdrの値が大きいほど粒子表面に凹凸を有する粒子であることを示す。
Sdrが10以上の粒子を「異形粒子」と定義し、無作為に選択した触媒粒子100個中の異形粒子の割合を「異形率」と定義した。
異形率(%)=(触媒粒子100個中の、触媒粒子の表面粗さの指標であるSdrが10以上である触媒粒子の個数)/触媒粒子100個)×100
【0054】
異形率は小さい方が好ましく、15%以下であるのが好ましい。異形率が15%以下であると、n−ブテンを酸化脱水素する反応によりブタジエンを製造する工程において優れたブタジエン収率を示す。また、触媒粒子を成型して用いる固定床反応の場合には、異形率が15%以下であると、触媒の成型性が向上し、より強度の高い成型触媒が得られる。
【0055】
<実施例1>
[触媒1の調製]
組成がMo
12Bi
0.6Fe
1.8Ni
5.0K
0.09Rb
0.05Mg
2.0Ce
0.75Si
43.2で表される金属酸化物触媒を次のようにして調製した。
【0056】
モリブデン酸アンモニウム・4水和物1095gを50℃の純水2955gに溶解した。この液に34質量%の平均粒子径12nmのSiO
2を含むシリカゾルを3922g加えた(Mo含有液。以降「A1液」と称す)。
【0057】
硝酸ビスマス・5水和物151g、硝酸セリウム・6水和物168g、硝酸第二鉄・9水和物374g、硝酸ニッケル・6水和物760g、硝酸マグネシウム・6水和物268g、硝酸カリウム4.7g、硝酸ルビジウム3.8gを、50℃の16.6質量%の硝酸液1053gに溶解した(Bi含有液。以降「B1液」と称す)。B1液のpHは1以下(25℃で測定)であった。
【0058】
50℃に保持した上記A1液に、50℃に保持した上記B1液を接触時間1.0分間で混合した。投入には定量送液ポンプ(以下、単に「ポンプ」ともいう。)を使用し、接触時間の間の送液速度が一定かつ連続(設定値±0%)となるように送液量を設定した。投入中は攪拌を行い、この間の接触温度は50℃であった。この操作によってスラリーを生成した。
【0059】
このスラリーを50℃に保持した温水浴中で更に1時間攪拌を続けた。次いで、スプレードライヤー(大川原化工機製、型式:OC−16)を用いてこのスラリーを噴霧乾燥し、乾燥粉末を得た。熱風入口温度は250℃、熱風出口温度140℃で行った。
【0060】
得られた乾燥粉末の一部を空気雰囲気下に350℃で2時間前焼成した後、空気雰囲気下に580℃で2時間焼成し触媒を得た(触媒1)。この触媒の平均粒子径は53μmであった。平均粒子径は粒度分布計(日機装株式会社製、型式:Microtrac MT3000)を用いて測定した。なお、実施例及び比較例における触媒1〜16の平均粒子径は45μm〜55μmの範囲内であった。
【0061】
この触媒粒子の一部を倍率1300倍の条件で電子顕微鏡(キーエンス製、型式:VE−9800)を用いて観察した観察像を
図1に示す。この
図1の触媒粒子は、粒子表面粗さがSdrで表して10未満(この粒子のSdrは6.5であった。)の滑らかな粒子表面を有する粒子であり、後述する粒子表面に凹凸を有する、Sdrが10以上である触媒13の触媒粒子(
図2参照)とは明らかに表面状態が異なることが示された。
この触媒粒子表面の凹凸を形状解析レーザー顕微鏡により測定し求めた異形率を、表1に示す。
【0062】
この触媒粒子の摩耗強度(アトリッションロス)を次のように測定した。摩耗強度測定装置は、第一円筒部(直径35mm、長さ690mm、ステンレス製)がコーン部(長さ200mm、ステンレス製)を介してその上部の第二円筒部(直径110mm、長さ300mm、ステンレス製)とつながっており、第二円筒部は第二のコーン部(長さ100mm、ステンレス製)を介して出口部(内径19mm)とつながっている。出口部は樹脂製チューブによって触媒捕集部(直径66mm、筒状フィルター付きガラス製フラスコ)とつながっている。第一円筒部の底部には微孔(直径0.395mm、3個)を有する金属板が設けられており、この微孔から高速の空気を供給して、第一円筒部内で触媒粒子同士を衝突させた。その衝突によって摩耗・粉化した触媒を触媒捕集部で捕集し、その捕集量(粉化量)を測定した。
【0063】
具体的には、目開き32μm〜90μmの篩で整粒した触媒粒子50(g)を精秤後、摩耗強度測定装置の第一円筒部に充填し、微孔から空気5.8(L/min)を供給し、供給開始後、5時間から24時間までの粉化量(g)を測定した。その粉化量から下式(3)によってアトリッションロスを求めた。
アトリッションロス(%)=5時間から24時間までの粉化量(g)/触媒充填量(g)×100 (3)
アトリッションロスが小さい程、粉化が小さく、機械的強度が強いことを表す。流動床反応においては触媒粒子同士が衝突を起こしながら反応するため、この値が小さい程、触媒の粉化が起こり難く好適である。
触媒1のアトリッションロスを表2に示す。
【0064】
[触媒1を用いたブタジエンの製造(流動床反応)]
触媒1の27gを、内径25.4mmのパイレックスガラス製流動床反応管に充填した。この反応管に、n−ブテン含有ガスとして1−ブテンを、酸素含有ガスとして、酸素と窒素とを流してブタジエン製造反応を行った。反応温度は370℃、反応圧力は0.05MPa(ゲージ圧)であった。1−ブテン濃度は全原料ガスを基準として16体積%、接触時間は0.8〜1.0(g・sec/cc)であった。反応器出口の酸素濃度は0.8〜1.2体積%であった。この反応条件で24時間反応した時の反応成績(1−ブテン転化率とブタジエン収率)を表1に示す。
【0065】
<実施例2>
接触時間を10分間とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒2)。さらに、触媒1の代わりに触媒2を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒2の異形率及びブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒2のアトリッションロスを表2に示す。
【0066】
<実施例3>
Mo含有液(A1液)とBi含有液(B1液)の調製量をそれぞれ5倍とし、接触時間を24時間とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒3)。さらに、触媒1の代わりに触媒3を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒3の異形率及びブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒3のアトリッションロスを表2に示す。
【0067】
<実施例4>
Mo含有液(A1液)の温度を25℃とし、Bi含有液(B1液)の温度を25℃とし、このA1液へのB1液の投入時の接触温度を25℃とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒4)。さらに、触媒1の代わりに触媒4を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒4の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒4のアトリッションロスを表2に示す。
【0068】
<実施例5>
Mo含有液(A1液)の温度を98℃とし、Bi含有液(B1液)の温度を98℃とし、このA1液へのB1液の投入時の接触温度を98℃とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒5)。さらに、触媒1の代わりに触媒5を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒5の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒5のアトリッションロスを表2に示す。
【0069】
<実施例6>
Mo含有液(A1液)の温度を60℃とし、Bi含有液(B1液)の温度を60℃とし、接触時間を5.0分間とし、投入時の接触温度を60℃とし、生成したスラリーの攪拌温度を60℃、攪拌時間を30分間とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒6)。さらに、触媒1の代わりに触媒6を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒6の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒6のアトリッションロスを表2に示す。
【0070】
<実施例7>
Mo含有液(A1液)の温度を70℃とし、Bi含有液(B1液)の温度を70℃とし、接触時間を5時間とし、投入時の接触温度を70℃とし、生成したスラリーの攪拌温度を70℃、攪拌時間を10分間とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒7)。さらに、触媒1の代わりに触媒7を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒7の異形率及びブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒7のアトリッションロスを表2に示す。
【0071】
<実施例8>
[触媒8の調製]
組成がMo
12Bi
0.6Fe
1.8Ni
2.0Co
3.0K
0.09Rb
0.05Mg
2.0Ce
0.8Si
28.9で表される金属酸化物触媒を次のようにして調製した。
【0072】
モリブデン酸アンモニウム・4水和物1310gを50℃の純水3358gに溶解した。この液に34質量%の平均粒子径12nmのSiO
2を含むシリカゾルを1569gと40質量%の平均粒子径30nmのSiO
2を含むシリカゾルを1332g加え、更に、硝酸カリウム5.6g、硝酸ルビジウム4.6gを純水100gに溶解させた液を加えた(A2液)。
【0073】
硝酸ビスマス・5水和物181g、硝酸セリウム・6水和物215g、硝酸第二鉄・9水和物447g、硝酸ニッケル・6水和物364g、硝酸コバルト・6水和物547g、硝酸マグネシウム・6水和物321gを50℃の16.6質量%の硝酸水溶液1060gに溶解した(B2液)。B2液のpHは1以下(25℃で測定)であった。
【0074】
50℃に保持した上記A2液(Mo含有液)に、50℃に保持した上記B2液(Bi含有液)を接触時間1.0分間で投入した。投入にはポンプを使用し、投入中は攪拌を行い、投入時の接触温度は50℃であった。この操作によってスラリーを生成した。
このスラリーのその後の調製は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒8)。さらに、触媒1の代わりに触媒8を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒8の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒8のアトリッションロスを表2に示す。
【0075】
<実施例9>
B2液とA2液との添加順序を、B2液(Bi含有液)にA2液(Mo含有液)を投入するように変更した以外は、実施例8と同様に行い触媒を得た(触媒9)。さらに、触媒1の代わりに触媒9を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。
触媒9の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒9のアトリッションロスを表2に示す。
【0076】
<実施例10>
組成がMo
12Bi
0.5Fe
2.0Ni
2.0Co
3.0K
0.09Rb
0.05Mg
1.8Ce
0.9Si
23.0で表される金属酸化物触媒を次のようにして調製した。
【0077】
モリブデン酸アンモニウム・4水和物1426gを70℃の純水2908gに溶解した。この液に34質量%の平均粒子径12nmのSiO
2を含むシリカゾル2718gを加えた(A3液)。
【0078】
硝酸ビスマス・5水和物164g、硝酸セリウム・6水和物263g、硝酸第二鉄・9水和物541g、硝酸ニッケル・6水和物396g、硝酸コバルト・6水和物596g、硝酸マグネシウム・6水和物314g、硝酸ルビジウム4.9g、硝酸カリウム6.1gを70℃の16.6質量%の硝酸水溶液1065gに溶解した(B3液)。B3液のpHは1以下(25℃で測定)であった。
【0079】
70℃に保持した上記A3液(Mo含有液)に、70℃に保持した上記B3液(Bi含有液)を接触時間10分間で投入した。投入にはポンプを使用し、投入中は攪拌を行い、投入時の接触温度は70℃であった。この操作によってスラリーを生成した。生成したスラリーを更に70℃で30分間攪拌した。このスラリーのその後の調製は、実施例1と同様に行って触媒を得た(触媒10)。さらに、触媒1の代わりに触媒10を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒10の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒10のアトリッションロスを表2に示す。
【0080】
<実施例11>
組成がMo
12Bi
0.5Fe
2.0Ni
1.8Co
2.5Rb
0.20Cr
0.02Mg
1.8Ce
0.9Si
200で表される金属酸化物触媒を次のようにして調製した。
【0081】
モリブデン酸アンモニウム・4水和物390gを70℃の純水1194gに溶解した。この液に34質量%の平均粒子径12nmのSiO
2を含むシリカゾル6464gを加えた(A4液)。
【0082】
硝酸ビスマス・5水和物45g、硝酸セリウム・6水和物72g、硝酸第二鉄・9水和物148g、硝酸ニッケル・6水和物98g、硝酸コバルト・6水和物136g、硝酸マグネシウム・6水和物86g、硝酸クロム・9水和物1.5g、硝酸ルビジウム5.4gを70℃の16.6質量%の硝酸水溶液1027gに溶解した(B4液)。B4液のpHは1以下(25℃で測定)であった。
【0083】
70℃に保持した上記A4液(Mo含有液)に、70℃に保持した上記B4液(Bi含有液)を接触時間10分間で投入した。投入にはポンプを使用し、投入中は攪拌を行い、投入時の接触温度は70℃であった。この操作によってスラリーを生成した。生成したスラリーを更に70℃で30分間攪拌した。このスラリーのその後の調製は、実施例1と同様に行い、触媒を得た(触媒11)。
この触媒11を用いて、反応温度を390℃とし、1−ブテン濃度を14体積%とした以外は、実施例1と同様にしてブタジエンの製造を行った。触媒11の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒11のアトリッションロスを表2に示す。
【0084】
<実施例12>
実施例1と同様にスラリーを調製し、撹拌まで行った。このスラリーをスプレードライヤー(大川原化工機製、型式:OC−16)を用いて噴霧乾燥し、乾燥粉末を得た。熱風入口温度は320℃、熱風出口温度230℃で行った。
得られた乾燥粉末の一部を空気雰囲気下に400℃で2時間前焼成した後、空気雰囲気下に600℃で2時間焼成し触媒を得た(触媒12)。さらに、触媒1の代わりに触媒12を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒12の異形率及びブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒12のアトリッションロスを表2に示す。
【0085】
<実施例13>
[触媒1を用いたブタジエンの製造(固定床反応)]
触媒1をリング状に打錠成型機を用いて成型した(高さ4mm、外径5mm、内径2mm)。このリング状成型触媒の圧壊硬度は5.5kgであり工業的使用にも十分耐え得る硬度を有していた。圧壊硬度は木屋式硬度計を用いて常法により測定した。その成型触媒25gを、内径25.4mmのパイレックスガラス製固定床反応管に充填した。この反応管に1−ブテン、酸素、窒素から成る原料ガスを流し、ブタジエン製造反応を行った。反応温度は360℃、反応圧力は0.05MPa(ゲージ圧)であった。1−ブテン濃度は全原料ガスを基準として6体積%、接触時間は0.8〜1.0(g・sec/cc)であった。反応器出口の酸素濃度は0.8〜1.2体積%であった。この反応条件で24時間反応した時の反応成績を表1に示す。
【0086】
<実施例14>
n−ブテン原料を1−ブテンが10体積%、2−ブテンが2体積%とし、反応温度を380℃とし、触媒1の代わりに触媒8を用いた以外は、実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。ブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。
【0087】
<実施例15>
触媒1の50gを、内径25.4mmのパイレックスガラス製流動床反応管に充填した。この反応管に、反応管下部から1−ブテン、空気、ヘリウムを流してブタジエン製造反応を行った。反応温度は350℃、反応圧力は0.05MPa(ゲージ圧)であった。1−ブテン濃度は全原料ガスを基準として12体積%、接触時間は3.0(g・sec/cc)であった。反応器出口の酸素濃度は0.3体積%であった。この反応条件で24時間反応した時の反応成績を表1に示す。
【0088】
<実施例16>
触媒3を用いた以外は、実施例15と同様にしてブタジエンを製造した。ブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。
【0089】
<実施例17>
Mo含有液(A1液)の温度を40℃とし、Bi含有液(B1液)の温度を40℃とし、このA1液へのB1液の投入時の接触温度を40℃とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒16)。さらに、触媒1の代わりに触媒16を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒16の異形率及びブタジエン製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒16のアトリッションロスを表2に示す。
【0090】
<比較例1>
Mo含有液(A1液)にBi含有液(B1液)を投入する接触時間を30秒間とした以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒13)。触媒13の平均粒子径は53μmであった。
【0091】
触媒13中の触媒粒子の一部を倍率1300倍の条件で電子顕微鏡を用いて観察した観察像を
図2に示す。
図2の触媒粒子は、粒子表面に顕著な凹凸を有し、Sdrが10以上(この粒子のSdrは12.5であった。)の触媒粒子であり、前述した滑らかな表面状態を有する触媒1の粒子とは表面状態において明らかに劣ることが示された。
【0092】
さらに、触媒1の代わりに触媒13用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒13の異形率及びブタジエンの製造における反応成績の結果を表1に示す。触媒13のアトリッションロスを表2に示す。
【0093】
<比較例2>
Mo含有液(A1液)にBi含有液(B1液)を投入する接触時間を30時間とした以外は、実施例1と同様にしてスラリーの作製を行った。しかしながら、A1液にB1液を投入し始めてから30時間付近で急激にスラリーの粘度が上昇してしまい、噴霧乾燥器に送液できず噴霧乾燥ができなかった。
【0094】
<比較例3>
Mo含有液(A1液)にBi含有液(B1液)を投入する接触時間を30秒間としてスラリーを作製し、このスラリーを温水浴中で70℃まで昇温し更に5時間攪拌を続けた以外は、実施例1と同様に行い触媒を得た(触媒14)。さらに、触媒1の代わりに触媒14を用いた以外は実施例1と同様にしてブタジエンを製造した。触媒14の異形率及びブタジエンの製造反応の結果を表1に示す。触媒14のアトリッションロスを表2に示す。
【0095】
<比較例4>
組成がMo
12Bi
0.5Fe
2.0Ni
2.0Co
3.0K
0.09Rb
0.05Mg
1.8Ce
0.9Si
3.0で表される金属酸化物触媒を次のようにして調製した。
【0096】
モリブデン酸アンモニウム・4水和物2040gを70℃の純水4243gに溶解した。この液に34質量%のSiO
2を含むシリカゾル510gを加えた(A5液)。
【0097】
硝酸ビスマス・5水和物235g、硝酸セリウム・6水和物376g、硝酸第二鉄・9水和物774g、硝酸ニッケル・6水和物567g、硝酸コバルト・6水和物852g、硝酸マグネシウム・6水和物450g、硝酸カリウム8.7g、硝酸ルビジウム7.1gを70℃の16.6質量%の硝酸水溶液1087gに溶解した(B5液)。B5液のpHは1以下(25℃で測定)であった。
【0098】
70℃に保持した上記A5液(Mo含有液)に、70℃に保持した上記B5液(Bi含有液)を接触時間10分間で投入した。投入にはポンプを使用し、投入中は攪拌を行い、投入時の接触温度は70℃であった。この操作によってスラリーを生成した。生成したスラリーは更に70℃で30分間攪拌した。このスラリーのその後の調製は、実施例1と同様に行い触媒を調製した(触媒15)。触媒15の異形率を表1に示す。実施例1と同様にブタジエンの製造反応を行ったが、数時間で触媒が粉化し反応が継続できなかった。また、触媒15はアトリッションロス測定を5時間まで行った時点で触媒の粉化が激しく測定を継続できなかった。
【0099】
<比較例5>
[触媒13を用いたブタジエンの製造(固定床反応)]
触媒13を用いて実施例13と同様にリング状に成型した(高さ4mm、外径5mm、内径2mm)。このリング状成型触媒の圧壊硬度を前述と同様に測定したところ、3.6kgであった。その成型触媒を用いて実施例13と同様にブタジエンの製造を行った。24時間反応した時の反応成績を表1に示す。
【0100】
実施例1〜17のように、式(1)で表される触媒組成を有し、Mo含有液とBi含有液とを接触させる時間を1.0分から24時間とした場合は、触媒の異形率が低く、触媒の機械的強度が強く、高い収率でブタジエンを製造できることが示された。
【0101】
一方、Mo含有液とBi含有液とを接触させる時間が1.0分から24時間の範囲を外れている場合(比較例1〜3及び5)や、触媒が式(1)で表される組成を満たさない場合(比較例4)には、触媒の異形率が高く、触媒の機械的強度が弱く、ブタジエンの製造も収率が低いか、製造不可能になることが示された。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】