特許第6574690号(P6574690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 内橋エステック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6574690-保護素子 図000002
  • 特許6574690-保護素子 図000003
  • 特許6574690-保護素子 図000004
  • 特許6574690-保護素子 図000005
  • 特許6574690-保護素子 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574690
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/175 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   H01H85/175
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-232872(P2015-232872)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-102999(P2017-102999A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225337
【氏名又は名称】内橋エステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】窪田彰博
(72)【発明者】
【氏名】村永陽介
(72)【発明者】
【氏名】冨高康彦
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−035338(JP,A)
【文献】 特開2012−174598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76 , 69/02
H01H 85/00 − 87/00
H05K 5/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する導電体と、
前記導電体を収容するケースと、
前記導電体と共に前記ケース内に収容され、前記導電体を前記ケース内に固定する固定用合成樹脂とを備える保護素子であって、
前記ケースが、
前記導電体および前記固定用合成樹脂が収容される収容空間を形成する外殻部と、
前記外殻部に力がかかったときに前記外殻部の変形を抑える補強部とを有しており、
前記外殻部が、
前記収容空間に対向する対向面部と、
前記対向面部から突出するよう前記対向面部に固定され前記収容空間を取り囲む包囲面部とを有しており、
前記補強部が、
前記外殻部の前記対向面部から突出し前記包囲面部のうち前記収容空間を挟んで対向する箇所同士をつなぐように設けられる対向箇所連結部と、
前記外殻部の対向面部から突出し前記対向箇所連結部のうち前記包囲面部に直接つながる箇所とは異なる箇所を前記包囲面部のうち前記対向箇所連結部が直接つながる箇所とは別の箇所につなぐよう設けられる別箇所連結部とを有しており、
前記対向箇所連結部が、前記外殻部の前記対向面部からそれぞれ突出し前記包囲面部のうち前記収容空間を挟んで対向する箇所同士をそれぞれつなぐように設けられる複数の対向箇所連結片を有しており、
前記別箇所連結部が、前記外殻部の前記対向面部からそれぞれ突出し前記複数の対向箇所連結片それぞれを前記包囲面部のうち前記複数の対向箇所連結片のいずれかが直接つながる箇所とは別の箇所につなぐよう設けられる複数の別箇所連結片を有しており、
前記複数の対向箇所連結片のうち少なくとも2つが互いに対向しており、
前記補強部が、互いに対向する前記対向箇所連結片の間に挟まれる補強板をさらに有していることを特徴とする保護素子。
【請求項2】
前記複数の別箇所連結片のうち少なくとも2つが、前記複数の対向箇所連結片のうち1つを前記包囲面部のうち前記複数の対向箇所連結片のいずれかが直接つながる箇所とは別の箇所につなぐよう設けられ、かつ、前記複数の対向箇所連結片のうち1つの延びる方向に沿って並ぶことを特徴とする請求項に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電流ヒューズといった保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電流ヒューズを開示する。この電流ヒューズは導電体を備える。導電体の周囲はフラックスでもって覆われる。この電流ヒューズにおいて、導電体はケースに収容される。
【0003】
特許文献1に開示された電流ヒューズによれば、導電体の表面の酸化を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−213852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電流ヒューズには、導電体における断線が生じやすい場合があるという問題点がある。本発明は、このような問題を解決するものである。本発明の目的は、導電体における断線が生じ難い保護素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面を参照し本発明の保護素子を説明する。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためであって内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、保護素子は、導電体54と、ケース12と、固定用合成樹脂14とを備える。導電体54はジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する。ケース12は導電体54を収容する。固定用合成樹脂14は、導電体54と共にケース12内に収容される。固定用合成樹脂14は、導電体54をケース12内に固定する。ケース12が、外殻部30と補強部32とを有する。外殻部30は収容空間90を形成する。収容空間90には導電体54および固定用合成樹脂14が収容される。補強部32は外殻部30に力がかかったときに外殻部30の変形を抑える。外殻部30が、対向面部36と包囲面部38とを有している。対向面部36は収容空間90に対向する。包囲面部38は対向面部36から突出するよう対向面部36に固定される。包囲面部38は収容空間90を取り囲む。補強部32が、対向箇所連結部42と別箇所連結部44とを有している。対向箇所連結部42は、外殻部30の対向面部36から突出する。対向箇所連結部42は、包囲面部38のうち収容空間90を挟んで対向する箇所同士をつなぐように設けられる。別箇所連結部44は外殻部30の対向面部36から突出する。別箇所連結部44は対向箇所連結部42のうち包囲面部38に直接つながる箇所とは異なる箇所を包囲面部38のうち対向箇所連結部42が直接つながる箇所とは別の箇所につなぐよう設けられる。
【0008】
固定用合成樹脂14が導電体54と共にケース12内に収容される場合、導電体54が歪むことがある。導電体54が歪む原因には、例えばケース12の変形がある。そのような変形の原因は、例えば固定用合成樹脂14への加熱および加圧がある。固定用合成樹脂14への加熱および加圧は、本発明にかかる保護素子の製造の際、固定用合成樹脂14の硬化のために必要である。導電体54が歪むことは、導電体54の断線の原因となる。対向箇所連結部42は、外殻部30の対向面部36から突出する。対向箇所連結部42は、包囲面部38のうち収容空間90を挟んで対向する箇所同士をつなぐように設けられる。包囲面部38は対向面部36から突出するよう対向面部36に固定される。これにより、例えば固定用合成樹脂14への加圧があってもケース12の変形が抑えられる。ケース12の変形が抑えられるとケース12に固定されている導電体54の変形が抑えられる。別箇所連結部44が外殻部30の対向面部36から突出する。別箇所連結部44が、対向箇所連結部42のうち包囲面部38に直接つながる箇所とは異なる箇所を包囲面部38のうち対向箇所連結部42が直接つながる箇所とは別の箇所につなぐ。これにより、補強部32が別箇所連結部44を有していない場合に比べ、ケース12の変形が抑えられる。ケース12の変形が抑えられるとケース12に固定されている導電体54の変形が抑えられる。導電体54の変形が抑えられると、導電体54の断線も抑えられる。その結果、導電体54における断線が生じ難い保護素子を提供できる。
【0009】
また、上述した対向箇所連結部42が次に述べられる複数の対向箇所連結片100を有している。それらの対向箇所連結片100は、外殻部の対向面部36から突出する。それらの対向箇所連結片100は、包囲面部38のうち収容空間90を挟んで対向する箇所同士をそれぞれつなぐように設けられる。この場合、別箇所連結部44が、次に述べられる複数の別箇所連結片120を有している。それらの別箇所連結片120は、外殻部30の対向面部36から突出する。それらの別箇所連結片120は、複数の対向箇所連結片100それぞれを包囲面部38のうち複数の対向箇所連結片100のいずれかが直接つながる箇所とは別の箇所につなぐよう設けられる。
【0010】
対向箇所連結部42が複数の対向箇所連結片100を有していると、次に述べられる場合に比べ、包囲面部38においてそれらの対向箇所連結片100によりつながれる箇所が多くなる。その場合とは、それらの対向箇所連結片100の1つのみが包囲面部38のうち収容空間90を挟んで対向する箇所同士をつなぐ場合である。しかも、別箇所連結片120は、複数の対向箇所連結片100それぞれを包囲面部38のうち複数の対向箇所連結片100のいずれかが直接つながる箇所とは別の箇所につなぐ。外殻部30において対向箇所連結片100および別箇所連結片120によりつながれている箇所が多くなると、ケース12が変形し難くなる。ケース12が変形し難くなるとケース12に固定されている導電体54の変形が抑えられる。導電体54の変形が抑えられると、導電体54の断線も抑えられる。その結果、導電体54における断線が生じ難い保護素子を提供できる。
【0011】
上述した複数の対向箇所連結片100のうち少なくとも2つが互いに対向している。この場合、補強部32が補強板40をさらに備える。補強板40は、互いに対向している対向箇所連結片100の間に挟まれる。
【0012】
互いに対向している対向箇所連結片100の間に補強板40が挟まれると、それら対向箇所連結片100の間に補強板40が挟まれない場合に比べて、補強板40が挟まれた箇所におけるケース12の変形が抑えられる。ケース12の変形が抑えられると導電体54の変形が抑えられる。導電体54の変形が抑えられると、導電体54の断線も抑えられる。その結果、導電体54における断線が生じ難い保護素子を提供できる。
【0013】
もしくは、上述した複数の別箇所連結片120のうち少なくとも2つが、複数の対向箇所連結片100のうち1つを包囲面部38のうち複数の対向箇所連結片100のいずれかが直接つながる箇所とは別の箇所につなぐよう設けられることが望ましい。この場合、それら少なくとも2つの別箇所連結片120が、複数の対向箇所連結片100のうち1つの延びる方向に沿って並ぶことが望ましい。
【0014】
複数の別箇所連結片120のうち少なくとも2つが複数の対向箇所連結片100のうち1つを包囲面部38につなぐと、次に述べられる場合に比べ、その対向箇所連結片100の変形が抑えられる。その場合とは、その対向箇所連結片100につながる別箇所連結片120が1つの場合である。それらの別箇所連結片120が、その対向箇所連結片100の延びる方向に沿って並びその対向箇所連結片100につながると、次に述べられる場合に比べ、その対向箇所連結片100は変形し難くなる。その場合とは、それらの別箇所連結片120がその対向箇所連結片100の1か所につながる場合である。その対向箇所連結片100が変形し難くなると、その変形に起因するケース12の変形が抑えられる。ケース12の変形が抑えられると導電体54の変形が抑えられる。導電体54の変形が抑えられると、導電体54の断線も抑えられる。その結果、導電体54における断線が生じ難い保護素子を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電体における断線が生じ難い保護素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のある実施形態にかかる保護素子の平面図である。
図2】本発明のある実施形態にかかる保護素子の断面図である。
図3】本発明のある実施形態にかかる導電部の平面図である。
図4】本発明のある実施形態にかかるケースの斜視図である。
図5】本発明のある実施例にかかる保護素子と比較例にかかる保護素子との遮断試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。従って、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
[構成の説明]
図1は、本実施形態にかかる保護素子の平面図である。図1において、被覆樹脂22の一部と裏ロウ材66の一部とは取り除かれている。図2は、本実施形態にかかる保護素子の断面図である。図2において、本実施形態にかかる保護素子は、中央部分でリード線64に沿って切断されている。図1図2とに基づいて、本実施形態にかかる保護素子の構成が説明される。
【0019】
本実施形態にかかる保護素子は、導電部10と、ケース12と、固定用合成樹脂14とを備える。導電部10は電流が流れる部分である。ケース12は導電部10を収容する。固定用合成樹脂14は、導電部10をケース12内に固定する。
【0020】
図3は、本実施形態にかかる導電部10の平面図である。図3において、表ロウ材56の一部は切り欠かれている。図1ないし図3に基づいて、本実施形態にかかる導電部10の構成が説明される。本実施形態にかかる導電部10は、基板50と、一対の表電極52と、導電体54と、一対の表ロウ材56と、合金基部58と、低融点合金60と、一対の裏電極62と、一対のリード線64と、一対の裏ロウ材66とを有する。表電極52は、基板50のいずれかの面に配置される。本実施形態では、表電極52が配置されている面を基板50のおもて面とみなす。本実施形態の場合、表電極52として銅箔が基板50のおもて面に固定される。導電体54は、基板50のおもて面に配置される。ケース12の中において、導電体54はケース12の内周面に対向するように配置される。導電体54は電流が流れるとその電流のエネルギの一部を熱にする。導電体54はジュール熱積分値が所定の値以上になると自ずと溶断する。「ジュール熱積分値」は、ヒューズのエレメント(本実施形態の場合、導電体54が「ヒューズのエレメント」に相当する)に流れる電流の2乗とその電流が流れた時間との積で定義される。本実施形態の場合、導電体54は線材である。本実施形態の場合、導電体54の一端は表電極52の一方に接続されている。導電体54の他端は表電極52の他方に接続されている。本実施形態の場合、導電体54は錫メッキされた純銅製である。表ロウ材56は、表電極52と導電体54とを接続する。これにより、表電極52と導電体54との間が導通する。合金基部58は、基板50のおもて面に固定される。低融点合金60は、導電体54と同様に、基板50のおもて面に配置される。低融点合金60は、合金基部58を介して基板50に固定される。低融点合金60もケース12の内周面に対向する。本実施形態の場合、低融点合金60は導電体54の中央部分をまたぐようにして導電体54を覆っている。本実施形態の場合「低融点合金」とは、上述した導電体54が溶断する温度以下の融点であり、かつ、融解した状態であれば上述した導電体54が溶解する合金のことである。このような低融点合金は周知である。したがって、ここではその詳細な説明は繰返されない。裏電極62は、基板50の面のうち、上述したおもて面から見て裏にあたる面に配置される。本実施形態では、この面を基板50の裏面とみなす。本実施形態の場合、裏電極62は、表電極52と同様に銅箔である。一対の裏電極62のうち一方は、一対の表電極52のうち一方の裏にあたる位置に配置される。一対の裏電極62のうち他方は、一対の表電極52のうち他方の裏にあたる位置に配置される。一対のリード線64の一方が一対の裏電極62の一方に接続される。一対のリード線64の他方が一対の裏電極62の他方に接続される。リード線64はケース12の側壁を貫通する。裏ロウ材66は、裏電極62とリード線64とを接続する。これにより、裏電極62とリード線64との間が導通する。なお、上述されたように、本実施形態にかかる導電部10は導電体54を有する。上述されたように、固定用合成樹脂14は、導電部10をケース12内に固定する。これにより、固定用合成樹脂14は、導電体54をケース12内に固定することとなる。
【0021】
基板50はスルーホール70を有する。本実施形態の場合、基板50は4個のスルーホール70を有する。表電極52の一方と裏電極62の一方とは2個のスルーホール70において互いに接続されている。これにより、表電極52の一方と裏電極62の一方との間が導通する。表電極52の他方と裏電極62の他方とは他の2個のスルーホール70において互いに接続されている。しかも、これら4個のスルーホール70には、裏ロウ材66の一部が充填されている。表ロウ材56は、これらのスルーホール70の端部で、裏ロウ材66とつながっている。その端部で、表ロウ材56と裏ロウ材66とは一体となっている。その結果、リード線64の一方を流れた電流は、裏電極62の一方と表電極52の一方とを経て導電体54に流れる。導電体54に流れた電流は、裏電極62の他方と表電極52の他方とを経てリード線64の他方を流れる。
【0022】
図4は、本実施形態にかかるケース12の斜視図である。図1図2図4とに基づいて、本実施形態にかかるケース12の構成が説明される。ケース12は、外殻部30と補強部32とを有する。外殻部30は収容空間90を形成する。収容空間90には導電体54が収容される。補強部32は外殻部30に力がかかったときに外殻部30の変形を抑える。
【0023】
本実施形態の場合、外殻部30は合成樹脂製である。本実施形態の場合、外殻部30は一体に形成されている。外殻部30は対向面部36と包囲面部38とを有する。これらは外殻部30の内周面に配置されている。対向面部36は、外殻部30の内周面の底となる部分である。したがって、対向面部36は収容空間90に対向する。包囲面部38は対向面部36の縁から突出する。本実施形態の場合、外殻部30が一体に形成されているので、包囲面部38は対向面部36に固定されていることとなる。包囲面部38は収容空間90を取り囲む。
【0024】
図1から明らかなように、補強部32は放熱体兼補強板40と対向箇所連結部42と別箇所連結部44とを有する。本実施形態の場合、放熱体兼補強板40はアルミナ製である。本実施形態の場合、放熱体兼補強板40はアルミナを焼結したものである。したがって、本実施形態の場合、放熱体兼補強板40は合成樹脂製の外殻部30よりも熱伝導率が高い。放熱体兼補強板40は、吸収した熱を、ケース12の外へ放出する。本実施形態の場合、放熱体兼補強板40は直方体状である。本実施形態の場合、放熱体兼補強板40は、外殻部30の内周面のうち対向面部36に、周知のシリコーン樹脂によって接着される。これにより、放熱体兼補強板40のうち最も面積が大きい面が導電体54と対向する。対向箇所連結部42は外殻部30の対向面部36から突出する。別箇所連結部44も外殻部30の対向面部36から突出する。本実施形態の場合、図4から明らかなように、対向箇所連結部42と別箇所連結部44とによって、複数の区画130が形成される。
【0025】
図1から明らかなように、本実施形態の場合、対向箇所連結部42は、2枚の対向箇所連結片100を有している。図4から明らかなように、それらの対向箇所連結片100は、外殻部30の対向面部36から突出する。それらの対向箇所連結片100は、包囲面部38のうち収容空間90を挟んで対向する箇所同士をそれぞれつなぐように設けられる。図4から明らかなように、本実施形態の場合、対向箇所連結片100は、端部110と、間部112とを有している。端部110は対向箇所連結片100の両端部分である。対向箇所連結片100のうち端部110が包囲面部38に直接つながる。間部112は端部110の間の部分である。本実施形態の場合、対向面部36から見た間部112の突出高さは、そこから見た端部110の突出高さより低い。
【0026】
図4から明らかなように、本実施形態の場合、別箇所連結部44は、4枚の別箇所連結片120を有している。それらの別箇所連結片120のうち2枚は、対向箇所連結片100の1枚を包囲面部38につないでいる。それらの別箇所連結片120のうち残る2枚は、対向箇所連結片100の残る1枚を包囲面部38につないでいる。本実施形態の場合、別箇所連結片120は、対向箇所連結片100の端部110につながる。本実施形態の場合、それらの別箇所連結片120が延びる方向は、それらがつながる対向箇所連結片100が延びる方向と直交している。これにより、別箇所連結片120が対向箇所連結片100をつなぐ箇所は、包囲面部38のうち、対向箇所連結片100が包囲面部38に直接つながる箇所とは別の箇所となる。すなわち、対向箇所連結片100は、別箇所連結片120を介してつながる箇所と自らが直接つながる2箇所とによって包囲面部38につながっている。本実施形態の場合、同一の対向箇所連結片100につながる別箇所連結片120は、その対向箇所連結片100の延びる方向に沿って並んでいる。その結果、それらの別箇所連結片120は、互いに異なる場所において対向箇所連結片100につながっている。
【0027】
図1図2とに基づいて、本実施形態にかかる固定用合成樹脂14が説明される。本実施形態にかかる固定用合成樹脂14は、接触樹脂20と被覆樹脂22とを有する。接触樹脂20は、導電部10と共にケース12内に収容される。接触樹脂20は、導電体54とケース12内周面との間に充填される。被覆樹脂22は、ケース12に収容された導電部10を被覆する。導電部10は、接触樹脂20と被覆樹脂22とによって、ケース12に固定されることとなる。
【0028】
接触樹脂20が説明される。接触樹脂20の一部は、ケース12の放熱体兼補強板40と導電部10との間に充填される。これにより、接触樹脂20は導電体54とケース12内周面との間に充填されることとなる。接触樹脂20の他の一部は、対向箇所連結部42の間部112と導電部10との隙間を介して導電体54の両端方向へ及んでいる。本実施形態の場合、接触樹脂20は、シリコーンゴム80を主成分とする。本実施形態の場合、接触樹脂20は、粒子状のアルミナ82を添加物として含む。なお、漏電が発生しない程度の電気抵抗を接触樹脂20が有することは言うまでもない。
【0029】
図1図2とに基づいて、本実施形態にかかる被覆樹脂22が説明される。被覆樹脂22は、ケース12内の空間のうち導電部10から包囲面部38の縁までの部分に充填される。これにより、上述したように、被覆樹脂22は、ケース12に収容された導電部10を被覆することとなる。被覆樹脂22の一部は、ケース12の包囲面部38を伝って導電部10と対向面部36との間の空間に進入している。本実施形態の場合、被覆樹脂22は、エポキシ樹脂を主成分とする。本実施形態の場合、被覆樹脂22は、粒子状のアルミナを添加剤として含む。
【0030】
[製造方法の説明]
本実施形態にかかる保護素子の製造方法は、導電部形成工程と、混合物塗布工程と、ケース収容工程と、被覆工程とを備える。導電部形成工程において導電部10が形成される。導電部10を形成するための具体的な工程は、基板上に形成される周知の保護素子と同様なのでここではその詳細な説明は繰返されない。混合物塗布工程において、導電部10の導電体54にシリコーンゴムと粒子状のアルミナとの混合物が塗布される。ケース収容工程において、まず、ケース12の外殻部30に放熱体兼補強板40が固定される。外殻部30は射出成型によって予め製造されている。放熱体兼補強板40が固定された外殻部30がケース12である。ケース12は、導電部10に被せられる。これにより、放熱体兼補強板40が配置された区画130では、混合物塗布工程において塗布された混合物が、導電体54と放熱体兼補強板40とに接触する。その区画130の隣の区画130においては、対向箇所連結部42によってその混合物の進入が抑えられるので、空間が形成される。その後、混合物塗布工程において塗布された混合物は硬化させられる。硬化したその混合物が、接触樹脂20となる。被覆工程において、粒子状のアルミナとまだ硬化していないエポキシ樹脂との混合物がケース12内に充填される。これにより、ケース12内の導電部10は被覆される。その後、その充填されたエポキシ樹脂は硬化させられる。エポキシ樹脂が硬化した後の混合物が被覆樹脂22となる。
【0031】
[使用方法の説明]
本実施形態にかかる保護素子の使用方法は、周知の電流ヒューズと同一である。すなわち、本実施形態にかかる保護素子は、図示されない回路に接続される。予め定められていた範囲の大きな電流が導電体54に流れると、導電体54の温度は所定の温度を超える。導電体54はジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する。導電体54が溶断するまで、接触樹脂20は導電体54の熱を吸収する。放熱体兼補強板40は接触樹脂20の熱を吸収する。放熱体兼補強板40はケース12の外殻部30にその熱を伝える。ケース12の外殻部30はその熱を保護素子の外へ放出する。導電体54の溶断後アークが発生する場合は保護素子内部で消弧される。これにより、保護素子が接続されていた回路において電流が遮断される。
【0032】
[実施例の説明]
(実施例1)
上述した保護素子を作成した。この保護素子において導電部10の定格電流は4アンペアであった。この保護素子に対する遮断試験を行った。遮断試験は、この保護素子に対して電流値が50アンペアである直流電流を流し、正常に電流を遮断するか否かを観察するというものである。遮断試験の結果、電圧値が500ボルト以下であれば、この保護素子は正常に電流を遮断した。
【0033】
(実施例2)
導電体54の断面積が異なる点を除き実施例1と同一構造の保護素子を作成した。導電体54の断面積が実施例1と異なるため、導電部10の定格電流は8アンペアであった。この保護素子に対し、実施例1と同様の方法で遮断試験を行った。その結果、電圧値が490ボルト以下であれば、この保護素子は正常に電流を遮断した。
【0034】
(比較例1)
補強部32が別箇所連結部44を有していない点を除き実施例1と同一構造の保護素子を作成した。この保護素子において導電部10の定格電流は4アンペアであった。この保護素子に対し、実施例1と同様の方法で遮断試験を行った。その結果、電圧値が440ボルト以下であれば、この保護素子は正常に電流を遮断した。
【0035】
(比較例2)
導電体54の断面積が異なる点を除き比較例1と同一構造の保護素子を1個作成した。導電体54の断面積が比較例1と異なるため、導電部10の定格電流は8アンペアであった。この保護素子に対し、実施例1と同様の方法で遮断試験を行った。その結果、電圧値が380ボルト以下であれば、この保護素子は正常に電流を遮断した。
【0036】
図5は、実施例1と比較例1との間における遮断試験の結果と実施例2と比較例2との間における遮断試験の結果とを示す図である。図5から明らかな通り、補強部32が別箇所連結部44を有することで、正常に電流を遮断できる電圧の上限値は大きく異なる。
【0037】
[効果の説明]
本実施形態にかかる保護素子は、1枚の放熱体兼補強板40と2枚の対向箇所連結片100と4枚の別箇所連結片120とを有している。4枚の別箇所連結片120のうち2枚が対向箇所連結片100のうち1枚を対向面部36につなぐ。4枚の別箇所連結片120のうち残る2枚が対向箇所連結片100のうち残る1枚を対向面部36につなぐ。これにより、例えば接触樹脂20が硬化する際の加圧に起因するケース12の変形が抑えられる。ケース12の変形が抑えられると導電体54の変形が抑えられる。導電体54の変形が抑えられると、導電体54の断線も抑えられる。
【0038】
また、本実施形態にかかる保護素子では、接触樹脂20が硬化する際の加圧以外の原因によってケース12が力を受けた場合でも、ケース12の変形が抑えられる。例えば、導電体54を溶断させる熱に起因する力をケース12が受けた場合に、その変形は抑えられる。ケース12の変形が抑えられると、その変形に起因する導電体54の断線が抑えられる。このことは、上述された実施例1と実施例2と比較例1と比較例2とからも裏付けられる。
【0039】
また、導電体54に電流が流れると、導電体54はその電流のエネルギの一部を熱にする。本実施形態にかかる保護素子では、接触樹脂20および放熱体兼補強板40を介して導電体54が発生させた熱をケース12に伝えることができる。これにより、気体を介さずに導電体54が発生させた熱をケース12に伝えることができるので、そうでない場合に比べ、通電により導電体54で発生した熱が容易に導電体54の外へ流出しやすくなる。熱が外へ流出しやすいので、そうでない場合に比べ、導電体54が溶断した後においてアークが早く冷やされる。アークが早く冷やされるので、ケース12の容積を小さくできる。その結果、保護素子を小型化できる。
【0040】
また、導電体54が発生させた熱は、接触樹脂20の粒子状のアルミナ82とシリコーンゴム80と低融点合金60とに伝わる。粒子状のアルミナ82を伝って、熱は接触樹脂20全体に拡がる。これにより、導電体54の周囲に長期にわたり熱がたまることによる導電体54の温度上昇を抑制できる。これにより、所定のジュール熱積分値より小さなジュール熱積分値によって導電体54が溶断する可能性は、接触樹脂20が粒子状のアルミナ82を含まない場合に比べて低くなる。導電体54が溶断する可能性が低くなるので、導電体54の断面のうち電流が流れる方向に直交する面の断面積を大きくする必要がなくなる。その必要がなくなると、その断面積を小さくできない場合に比べ、ジュール熱積分値が所定の値以上になった場合に、導電体54は溶断しやすくなる。溶断しやすくなるので、熱が接触樹脂20に十分流出できないほど短時間にジュール熱積分値が所定の値以上になっても導電体54が溶断しない可能性は低くなる。すなわち、動作の迅速さが向上する。
【0041】
接触樹脂20がシリコーンゴム80を含むので、他の耐熱性が悪い合成樹脂が接触樹脂20に含まれる場合に比べ熱による接触樹脂20の劣化を抑制できる。また、接触樹脂20が粒子状のアルミナ82を含むので、熱による接触樹脂20の劣化をさらに抑制できる。
【0042】
また、保護素子がアルミナ製の放熱体兼補強板40を備えていると、接触樹脂20全体に伝わった熱の一部が放熱体兼補強板40に伝わることとなる。これにより、放熱体兼補強板40がない場合に比べ、接触樹脂20の温度上昇速度が低くなる。温度上昇速度が低くなるので、所定のジュール熱積分値より小さなジュール熱積分値で導電体54が溶断する可能性は、放熱体兼補強板40がない場合に比べ、低くなる。また、保護素子がアルミナ製の放熱体兼補強板40を備えていると、そうでない場合に比べ、放熱体兼補強板40の引っ張り強さと圧縮強さと曲げ強さとが強くなる。これらが強くなるので、導電体54が溶断した際に発生するアークによってケース12が破損する可能性は低くなる。
【0043】
また、対向箇所連結片100と別箇所連結片120とによって、ケース12の内周面に複数の区画130が設けられる。それらの区画130のうち、導電体54とケース12とに接触樹脂20が接触している区画130の隣の区画において空間が形成されている。これらにより、導電体54が溶断した際のアーク発生による衝撃をその空間が緩和できる。接触樹脂20が導電体54とケース12とに接触している区画130と空間が形成されている区画130とは、間部112によって仕切られている。対向面部36から見た間部112の突出高さは、そこから見た端部110の突出高さより低い。接触樹脂20が導電体54とケース12とに接触している区画130と空間が形成されている区画130とが間部112によって仕切られているので、そうでない場合に比べ、接触樹脂20が変形したときその変形によって空間が塞がれてしまう可能性は低くなる。空間が塞がれてしまう可能性が低くなるので、その空間による衝撃緩和能力が損なわれる可能性も低くなる。
【0044】
〈変形例の説明〉
上述した保護素子は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述した保護素子は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0045】
例えば、対向箇所連結片100において別箇所連結片120がつながる箇所は特に限定されない。ただしその箇所はその対向箇所連結片100が包囲面部38に直接つながる箇所ではない。
【0046】
また、対向箇所連結部42において別箇所連結部44がつながる箇所は特に限定されない。ただしその箇所は対向箇所連結部42のうち包囲面部38に直接つながる箇所ではない。包囲面部38において別箇所連結部44がつながる箇所は特に限定されない。ただしその箇所は対向箇所連結部42が直接つながる箇所ではない。
【0047】
また、対向箇所連結部42がつなぐ箇所の対は特に限定されない。ただし、その箇所は、包囲面部38のうち収容空間90を挟んで対向する箇所の対である。
【0048】
また、本発明にかかる保護素子は、接触樹脂20および被覆樹脂22に代えて、これらの合成樹脂の機能を兼ねる固定用合成樹脂を備えていてもよい。
【0049】
また、上述した放熱体兼補強板40の形状及び素材は特に限定されない。すなわち放熱体兼補強板40はアルミナ以外の金属酸化物を焼結したものであってもよい。放熱体兼補強板40は焼結以外の方法により製造されたものでもよい。
【0050】
また、上述した接触樹脂20は、繊維状のアルミナを含んでもよい。アルミナ以外の金属酸化物を接触樹脂20は含んでもよい。アルミナ以外の金属酸化物の例には、ケイ砂と酸化チタンとがある。この場合、アルミナ以上の熱伝導率の金属酸化物であれば、接触樹脂20全体に素早く熱を伝えることができる。接触樹脂20は金属酸化物を含まなくてもよい。
【0051】
また、上述した接触樹脂20が含む物質はシリコーンゴム80に限定されない。例えば、シリコーンゴム80以外のシリコーン樹脂でもよい。シリコーン樹脂以外の重合体でもよい。接触樹脂20が重合体と金属酸化物とを含む場合、それらの比率は限定されない。接触樹脂20が重合体と金属酸化物とを含む場合、重合体の体積%よりも金属酸化物の体積%が高い方が好ましい。接触樹脂20の組成にかかわらず、金属酸化物は50質量%以上含まれていることが好ましい。
【0052】
また、上述した導電部10の構成及び形態は上述したものに限定されない。
【符号の説明】
【0053】
10…導電部、
12…ケース、
14…固定用合成樹脂、
20…接触樹脂、
22…被覆樹脂、
30…外殻部、
32…補強部、
36…対向面部、
38…包囲面部、
40…放熱体兼補強板、
42…対向箇所連結部、
44…別箇所連結部、
50…基板、
52…表電極、
54…導電体、
56…表ロウ材、
58…合金基部、
60…低融点合金、
62…裏電極、
64…リード線、
66…裏ロウ材、
70…スルーホール、
80…シリコーンゴム、
82…粒子状のアルミナ、
90…収容空間、
100…対向箇所連結片、
110…端部、
112…間部、
120…別箇所連結片、
130…区画、
図1
図2
図3
図4
図5