【文献】
小林 孝次 Koji Kobayashi,位相限定相関法の原理とその応用 Principles of Phase Only Correlation and Its Applications,テレビジョン学会技術報告 Vol.20 No.41 ITEJ Technical Report Vol.20 No.41,日本,社団法人テレビジョン学会 The Institute of Television Engineers of Japan,1996年 7月16日,第20巻,p.1−p.6
【文献】
飯塚 智 Satoshi Iitsuka,位相限定相関法に基づく一般画像照合アルゴリズムに関する検討,FIT2009 第8回情報科学技術フォーラム 講演論文集 第3分冊 査読付き論文・一般論文 画像認識・メディア理解 グラフィクス・画像 ヒューマンコミュニケーション&インタラクション 教育工学・福祉工学・マルチメディア応用,日本,社団法人情報処理学会 社団法人電子情報通信学会,2009年 8月20日,第3分冊,p.143−p.148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態におけるパターン照合装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、分割数M=4とした量子化について説明するための説明図である。
【
図3】
図3は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=2とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【
図4】
図4は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=4とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【
図5】
図5は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=8とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【
図6】
図6は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=16とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【
図7】
図7は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=32とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【
図8】
図8は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=64とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【
図9】
図9は、信号長をN=128,量子化の分割数をM=128とした場合の位相限定相関関数の比較を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態におけるパターン照合装置の構成を示す構成図である。このパターン照合装置は、パターンデータ取得部101、記憶部102、量子化演算部103、インデックス計算部104、相関関数演算部105、照合部106を備える。
【0011】
パターンデータ取得部101は、照合対象の第1パターンのデータである第1パターンデータおよび第2パターンのデータである第2パターンデータを取得する。パターンは、例えば画像であり、パターンデータ取得部101は、例えば、スキャナやカメラである。また、パターンデータは例えば音声であり、パターンデータ取得部101は録音機である。
【0012】
記憶部102は、第1パターンデータもしくは第2パターンデータのサイズによって定まる複数のインデックスおよびインデックス毎に対応付けられた値を記憶している。記憶部102に記憶している値は、予め求められている。量子化演算部103は、第1パターンデータと第2パターンデータとの位相限定相関関数における位相差を所定の分割数で量子化して離散値を求める。
【0013】
インデックス計算部104は、量子化演算部103が求めた各離散値から各々のインデックスを求める。相関関数演算部105は、インデックス計算部104が求めた各インデックスに等しいインデックスに対応する値を記憶部102より読み出し、読み出した値を加算することで第1パターンデータと第2パターンデータとの位相限定相関関数の値を求める。照合部106は、相関関数演算部105が求めた位相限定相関関数の値が極大を取る極大値の大きさおよび位置により、第1パターンと第2パターンとの照合を行う。また、照合部106は、照合結果を、図示しない表示部などに表示出力する。
【0014】
ここで、極大値の位置を限定して上述した計算を実施することで、計算量が低減でき、照合を効率的に実施することができる。例えば、指紋などによる生体認証の場合、パターンデータである画像を正規化して2つの画像位置を合わせてから上述した処理をする場合が多い。この場合、極大値の位置は原点付近となるので、極大値の位置を限定して計算することが可能である。
【0015】
以下、より詳細に説明する。はじめに、1次元信号の場合について説明する。
【0016】
まず、位相限定相関関数の定義について説明する。信号長をNとし、時間領域のインデックスをnとし(n=0,1,2,・・・,N−1の整数値)、周波数領域のインデックスをkとする(k=0,1,2,・・・,N−1の整数値)。また、第1パターンデータである一方の入力信号1×1(n)とこの離散フーリエ変換X1(k)とし、照合対象となる第2パターンデータである他方の入力信号2×2(n)とこの離散フーリエ変換X2(k)とすると、各々は、以下の式(1),式(2)で示されるものとなる。また、振幅と位相は、以下の式(3),式(4)となる。
【0018】
なお、A1(k)はX1(k)の振幅、θ1(k)はX1(k)の位相を表す。また、A2(k)はX2(k)の振幅、θ2(k)はX2(k)の位相を表す。
【0019】
従って、第1パターンデータと第2パターンデータとの位相限定相関関数は、以下の式(5)となる。
【0021】
なお、「θ(k)=θ1(k)−θ2(k)」であり、2つのパターンデータの位相差を表している。ただし、位相の循環性(位相は0〜2πの区間で循環する)については無視した表現となっている。
【0022】
次に、量子化演算部103で上述した位相限定相関関数における位相差θ(k)を量子化することにより、離散フーリエ変換の式が簡単化することについて説明する。位相差を量子化することにより、式(5)のΣの中身を離散化した値に表現できる。Σの中身に着目すると以下の式(6)ように変形することができる。ここで、式(6)の右辺の一部である以下の式(7)で示される部分は、離散値となる。
【0024】
従って、式(6)の右辺の「e
jθ(k)」を量子化した離散値として表現すれば、式(6)全体が離散値として表現できるようになる。このようにすることで、式(6)は、複素数の加算、乗算、三角関数の演算などが含まれる式であったが、単純な複素数の加算のみで計算できるようになる。
【0025】
「e
jθ(k)」の量子化分割数は任意に決めることができるが、計算効率を考えると信号長NもしくはNの約数で分割するとよい。ここで、スケーリング係数sと量子化の分割数Mとにより、N=sMとする。M状態に量子化された位相をθq(k)とおくと、位相限定相関関数は以下のように変形できる。
【0027】
ここで、m(k)は、1,2,・・・,M−1の値を取る。また、「e
jθq(k)」は、以下の式(9)で示されるものとする。
【0029】
ここで、以下の式(10)は、N個の状態しか取りえないため、予め計算しておき、計算結果を記憶部102に記憶し、記憶している計算結果を相関関数演算部105で用いることで、三角関数などの計算が不要になる。
【0031】
予めの計算については、以下のようなLUT(LookUpTable)用いればよい。
【0033】
記憶部102に、式(11)の値を予め計算しておき、この値をインデックスl毎に、記憶部102に記憶しておけばよい。式(11)によるLUTを利用して式(8)を書きなおすと以下のようになる。なお、式(12)において、mod(A,B)はAをBで割ったときの余りを表す。
【0035】
相関関数演算部105は、インデックス計算部104が求めた各インデックスに等しいインデックスに対応する、憶部102に記憶してある式(11)による値を用い、式(12)により位相限定相関関数の値を求める。このように、実施の形態によれば、位相限定相関関数の値が、加算により求めることができるようになる。
【0036】
以上に説明したように、位相を量子化することによって離散フーリエ変換を簡単化することができる。
【0037】
以下、量子化の分割数について説明する。まず、第1に、LUT(LookUpTable)を計算する。計算結果は、インデックスl毎に記憶部102に記憶しておけばよい。ここで、信号長Nに変更がない限り、再計算することはない。そのため、連続で同一長さ信号の演算をする場合には再利用可能である。
【0038】
第2に、量子化を行う。例えば、量子化の分割数M=4とした場合は、
図2に示すようになる。
【0039】
第3に、量子化の分割数を決定する。量子化の分割数は、信号長Nの約数として決定する。N=sMを満たすMを量子化の分割数とする。ここでsとMはそれぞれ整数である。なお、Mを小さくすることで、位相限定相関関数の計算精度は落ちるものの、量子化された位相のデータ量は削減方向になる。
図3,
図4,
図5,
図6,
図7,
図8,
図9に、信号長をN=128,量子化の分割数をM=2,4,8,16,32,64,128と変化させた場合の位相限定相関関数の比較を示す。なお、いずれにおいても(a)が、量子化せずに計算した結果、(b)が量子化して計算した結果、(c)が両者の差分を示している。
【0040】
図3〜
図9より、M=16ぐらいではほとんど誤差がなくなっていることがわかる。従って、分割数M=16とすれば、量子化しない場合とほとんど変わらない照合結果が得られるものと考えられる。
【0041】
次に、2次元信号の場合について説明する。基本的には前述した1次元信号の場合と同様である。2次元信号は、例えば画像データである。
【0042】
まず、位相限定相関関数の定義について説明する。画像データの縦のサイズをN1とし、画像の横のサイズをN2とする。縦方向の空間領域のインデックスをn1(n1=0,1,2,・・・,N1−1の整数値)とし、横方向の空間領域のインデックスをn2(n2=0,1,2,・・・,N2−1)とする。
【0043】
また、画像データの縦に対応する周波数領域のインデックスをk1(k1=0,1,2,・・・,N1−1の整数値)とし、画像データの横に対応する周波数領域のインデックスをk2(k2=0,1,2,・・・,N2−1の整数値)とする。
【0044】
第1パターンデータである一方の入力画像1×1(n1,n2)とこの離散フーリエ変換X1(k1,k2)とし、照合対象となる第2パターンdたである他方の入力画像2x2(n1,n2)とこの離散フーリエ変換X2(k1,k2)とすると、各々は、以下の式(13),式(14)で示されるものとなる。また、振幅および位相は、以下の式(15)および式(16)となる。
【0046】
なお、A1(k1,k2)はX1(k1,k2)の振幅、θ1(k1,k2)はX1(k1,k2)の位相を表す。また、A2(k1,k2)はX2(k1,k2)の振幅、θ2(k1,k2)はX2(k1,k2)の位相を表す。
【0047】
従って、第1パターンデータと第2パターンデータとの位相限定相関関数は、以下の式(17)となる
【0049】
なお、「θ(k1,k2)=θ1(k1,k2)−θ2(k1,k2)」であり、2つのパターンデータの位相差を表す。ただし位相の循環性については無視した表現となっている。
【0050】
次に、上述した位相限定相関関数における位相差θ(k1,k2)を量子化することにより、離散フーリエ変換の式が簡単化することについて説明する。位相差を量子化することにより、以下の式(18)に示すΣの中身を離散化した値に表現できる。
【0052】
以下、位相差θ(k1,k2)を量子化することにより、離散フーリエ変換の式を簡単化することを以下に記載する。位相差を量子化することにより、数式(10)のΣの中身を離散化した値に表現できる。はじめに、N1とN2の最小公倍数Nを計算する。N=s1*N1,N=s2*N2を満たす。s1,s2は整数とする。式(18)を書きなおすと以下の式(19)となる。
【0054】
また、Σの中身に着目すると以下のように変形することができる。
【0056】
ここで、以下の式(21)は、離散値となる。
【0058】
従って、「e
jθ(k1,k2)」を離散値として表現すれば、式(20)全体が離散値として表現できるようになる。これにより、式(20)は、複素数の加算、乗算、三角関数の演算などが含まれる式であったが、単純な複素数の加算のみで計算できるようになる。
【0059】
「e
jθ(k1,k2)」の量子化分割数は任意に決めることができるが、計算効率を考えるとNもしくはNの約数で分割するとよい。ここで、スケーリング係数sと量子化の分割数Mとにより、N=sMとする。M状態に量子化された位相をθq(k1,k2)とおくと、位相限定相関関数は以下のように変形できる。
【0061】
ここで、m(k1,k2)は、0,1,2,・・・,M−1の値を取る。また、「ejθq(k1,k2)は、以下の式(23)で示される関係となる。
【0063】
ここで、以下の式(24)の値は、はN個の状態しか取りえないため、インデックス毎に予め計算して求めておき、記憶部102に記憶しておくことで、三角関数などの計算が不要になる。
【0065】
予めの計算については、以下のようなLUT(LookUpTable)を用いればよい。
【0067】
式(25)によるLUTを利用して式(22)を書きなおすと、以下のようになる。なお、以下の式において、演算子mod(A,B)は、AをBで割ったときの余りを表す。
【0069】
相関関数演算部105は、インデックス計算部104が求めた各インデックスに等しいインデックスに対応する、憶部102に記憶してある式(25)による値を用い、式(26)により位相限定相関関数の値を求める。このように、2次元信号においても、位相限定相関関数の値が、加算により求めることができるようになる。
【0070】
以上に説明したように、2次元信号においても、前述した1次元信号と同様に、位相を量子化することによって離散フーリエ変換を簡単化することができる。
【0071】
以上に説明したように、本発明によれば、照合対象の第1パターンデータと第2パターンデータとの位相限定相関関数における位相差を所定の分割数で量子化して離散値とした量子化位相差を用い、第1パターンデータと第2パターンデータとの位相限定相関関数の値を、量子化位相差の加算により求めるようにしたので、フーリエ変換を用いた照合技術における演算コストが低減できるようになる。例えば、照合対象のパターンデータを、複数の照合元パターンデータと照合する場合、非常に多くの照合計算を実施することになるが、演算コストの低減効果が特に大きいものとなる。
【0072】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。