特許第6574722号(P6574722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574722支管接続口及びその支管接続口を備えた雨水ます
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574722
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】支管接続口及びその支管接続口を備えた雨水ます
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20190902BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20190902BHJP
   F16L 41/08 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   E03F5/10 A
   F16L41/02
   F16L41/08
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-32145(P2016-32145)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-150191(P2017-150191A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−056083(JP,A)
【文献】 特開2003−041648(JP,A)
【文献】 特開2006−022555(JP,A)
【文献】 特開2010−270871(JP,A)
【文献】 米国特許第06406067(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/10
F16L 41/02
F16L 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円管の側壁に設けた開口部へ取り付けられる支管接続口であって、前記支管接続口は、
前記円管の前記開口部を挿通する差し口と、前記差し口外周部に固着されており、且つ前記円管の一方の側の側壁に沿うように湾曲したスピゴットフランジとを有している、前記円管の一方の側の側壁に取り付けられるスピゴットと、そして
前記スピゴットの前記差し口と嵌合する受け口と、前記受け口外周部に固着されており、且つ前記円管の一方の側とは反対側の他方の側の側壁に沿うように湾曲したソケットフランジとを有している、前記円管の他方の側の側壁に取り付けられるソケットと
から構成されており、
前記スピゴットの前記差し口外周部において、前記スピゴットフランジの付根近傍の領域は、前記スピゴットフランジの付根近傍以外の領域の外径よりも拡径されている段付き部を備えており、且つ前記段付き部の外径は、前記ソケットの前記受け口の内径よりも拡径されていることを特徴とする支管接続口。
【請求項2】
切管可能な立上り部と、そして
前記立上り部の下部に接続される泥溜め部とを備えた雨水ますにおいて、
前記円管は、前記立上り部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の支管接続口。
【請求項3】
切管可能な立上り部と、
前記立上り部の下部に接続される泥溜め部と、そして
前記泥溜め部の中に着脱自在に収容されるバケットとを備えた雨水ますであって、
前記立上り部の側壁に設けた開口部へ取り付けられる支管接続口は、
前記立上り部の前記開口部を挿通する差し口と、前記差し口外周部に固着されており、且つ前記立上り部の一方の側の側壁に沿うように湾曲したスピゴットフランジとを有している、前記立上り部の一方の側の側壁に取り付けられるスピゴットと、そして
前記スピゴットの前記差し口と嵌合する受け口と、前記受け口外周部に固着されており、且つ前記立上り部の一方の側とは反対側の反対側の他方の側の側壁に沿うように湾曲したソケットフランジとを有している、前記立上り部の他方の側の側壁に取り付けられるソケットとから構成されており、
前記スピゴットの前記差し口外周部において、前記スピゴットフランジの付根近傍の領域は、前記スピゴットフランジの付根近傍以外の領域の外径よりも拡径されている段付き部を備えていることを特徴とする雨水ます。
【請求項4】
前記支管接続口は、外部から雨水ますへ連通する流入口および/または雨水ますから外部へ連通する流出口である、請求項3に記載の雨水ます。
【請求項5】
前記バケットを前記泥溜め部の中へ装着した時、前記バケットの外部側壁と前記泥溜め部の内部側壁との間に所定の隙間を形成するように前記バケットの外部側壁の周囲に配置される案内部と、前記立上り部と前記泥溜め部を接続する時、前記立上り部と前記泥溜め部の間に挟み込まれることよって前記ます本体の内部に固定される掛かり部とを有するバケットガイドをさらに含んでいることを特徴とする請求項3又は4のいずれか1項に記載の雨水ます。
【請求項6】
前記掛かり部は、前記立上り部側壁の下端面および/または前記泥溜め部側壁の上端面と当接可能なフランジ形状であることを特徴とする請求項5に記載の雨水ます。
【請求項7】
前記案内部は、前記バケットの外部側壁とスライド可能に当接するガイド面を有していることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の雨水ます。
【請求項8】
前記案内部は、前記ます本体の周方向に延びたリング状であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の雨水ます。
【請求項9】
前記案内部は、前記ます本体の放射方向に延びた複数の舌部から構成されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の雨水ます。
【請求項10】
前記案内部は、断面視において、下向きのコの字断面形状または下向きのUの字断面形状を有していることを特徴とする請求項5ないし9のいずれか1項に記載の雨水ます。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円管の側壁の一方の側から、側壁に設けた開口部へ取り付けられるスピゴットと、側壁の他方の側から、前記開口部へ取り付けられるソケットとを備えており、前記スピゴットの差し口外周部は、スピゴットフランジの付根近傍の領域において、スピゴットフランジの付根近傍以外の領域の外径よりも拡径されている段付き部を含んだ支管接続口及びその支管接続口を備えた雨水ますに関する。
【0002】
また、本発明は、上述の支管接続口を備えた雨水ますが、立上り部と、前記立上り部の下部に接続される有底の泥溜め部と、前記泥溜め部の中に着脱自在に収容されるバケットとを備えた雨水ます又は雨水浸透ます(以下、これらをまとめて、単に「雨水ます」ともいう。)であり、特にバケットを泥溜め部の中の所定の位置に配置するために、立上り部と泥溜め部との間に固定されるバケットガイドを有している雨水ますを含んでいる。
【背景技術】
【0003】
一般に、建物の屋根等に降った雨水は、宅地内の雨水ます等によって集められる。雨水には、泥、枯葉等の異物が混入していることがある。このため、例えば特開平8−86007号公報(特許文献1)や特開2013−19218号公報(特許文献2)に記載されているように、雨水ますの外部に泥等の異物が流出しないように、ます本体の下部へ、異物を捕捉するための有底の泥溜め部が設けられ、さらに泥溜め部の中には泥溜め容器(バケット)が着脱自在に取り付けられた高機能の雨水ますが知られている。このように、前記雨水ますは、所定の方向へ向けて複数の排水管接続口を備えたます本体と、その下部に取り付けられた泥溜め部と、泥溜め部の中に装着される泥溜め容器とを主な構成要素とする複雑な構造および形状を有しているという特徴がある。
【0004】
一方、近年では雨水ますの普及に伴い、様々な設置場所、設置環境、使用方法に適した雨水ますが求められている。ところが、上述のような高機能の雨水ますの場合、設置場所等に合わせて多品種の雨水ますを成形していたのでは、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0005】
このため、汎用品の利用を拡大することにより、専用品の部品点数を抑え、高機能を維持しながら低コストの雨水ますを提供することが考えられる。例えば、複数の排水管接続口を備えたます本体については、ます本体に代えて汎用の円管を利用し、そして排水管の接続口については、特開2000−8475号公報(特許文献3)や特開2006−266075号公報(特許文献4)に記載されているような接続口の後付け技術を利用して、汎用の円管に設けた開口部へ汎用の接続口を後付けすることが考えられる。また、汎用の円管の下部に取り付けられる泥溜め部とバケットについては、排水中の異物を捕捉するという高機能を維持するため、汎用の円管サイズ(規格)に合わせることにより、限定された種類(サイズ)の専用品のみを製造することが考えられる。
【0006】
上述のように、汎用の円管および汎用の接続口と、専用の泥溜め部およびバケットとを組み合わせた場合、様々な設置場所、設置環境、使用方法に対して汎用品の利用を拡大することができ、さらに汎用品の規格(サイズ)に合わせることにより、製造しなければならない専用品の部品点数も抑えることができるので、高機能を維持しながら低コストの雨水ますを提供することができる。また、排水管の接続口は、施工現場の排水管の位置に合わせて、汎用の円管の自由な位置(高さ、方向)に任意の方向へ向けて複数個取り付けられるので、専用品の部品点数を増大させることなく、様々な設置場所、設置環境、使用方法に対して汎用品の利用を拡大させることができようになる。
【0007】
ところが、雨水ますにおいて、ます本体に代えて汎用の円管と汎用の接続口とを利用し、汎用の円管の下部には、バケットが装着される泥溜め部を設けた場合、以下に述べるような問題が生じることが判った。
【0008】
[第1の問題点]
専用品であるます本体を汎用の円管に置き換えた場合、排水管の接続口は、円管の周壁に開口を設けて汎用の接続口が後付けされる。このため、ホールソー等を用いて円管の周壁に設けられる開口は、円滑な挿通性を考慮して、前記開口へ挿通される接続口の差し口の外径よりも若干大き目に開口される。
【0009】
ところが、円管の開口が接続口の差し口の外径よりも大きいと、開口と差し口との間に隙間が生じて、接続口取付け部分の止水性が低下してしまうという問題があった。また、接続口の差し口にパッキン等を配置することも考えられるが、この場合は部品点数が増加し、パッキン等を固定するための差し口の形状も複雑となって、後付けの接続口を使用する雨水ますが高価となってしまう問題があった。さらに、排水ますの内側で、接続口のフランジの凹凸等を利用してバケットを装着するタイプの雨水ますの場合、接続口が円管の開口に対して芯ズレ(ガタツキ)を生じることにより、バケットを雨水ます内の適正な位置に設置できなくなるという問題もあった。
【0010】
[第2の問題点]
次に、泥溜め部に装着されるバケットは、雨水や雨水に含まれる異物を確実に捕捉し、そして泥溜め部との間に一定の隙間を保持することにより、バケットから泥溜め部への雨水等の排出性(浸透性)を保持し、上部点検口からのバケットの出し入れを容易にする必要がある。このため、バケットは、泥溜め部との間に一定の隙間を形成し、バケットの中心軸と雨水ますの中心軸とが一致するように整列させて装着されなければならない。このため、従来の雨水ますでは、ます本体が専用品であったため、ます本体の内壁面には、バケットの装着位置を案内するためのリング状のガイドが設けられていた(特許文献1,2)。
【0011】
なお、リング状のガイドは、バケットの側壁と雨水ますの側壁との間の隙間を埋めることになるため、ガイド上部には異物が堆積しないように、可能な限りバケットの上部縁部付近に当接するように配置されることが望ましい。
【0012】
ところが、専用品のます本体を汎用の円管に置き換えた場合、円管の内壁面に予めリング状のガイドを設けておくことができなくなるため、バケットを、バケットの中心軸と雨水ますの中心軸とが一致するように整列させて配置することができないという問題があった。また、汎用の円管は、施工現場において適当な長さに切管され、そして円管の周壁には、任意の位置に開口を設けて汎用の接続口が取り付けられるため、この観点からも円管の内壁面に予めリング状のガイドを設けておくことができないという問題があった。
【0013】
また、バケットを案内するためのリング状のガイドを、泥溜め部の内壁面やバケット自体の上部縁部などに設けておくことも考えられる。しかしながら、前者の場合は、泥溜め部の壁面の高さをバケットの高さと同じかそれ以上の高さとしなければならないため、雨水ますの全高が高く(全長が長く)なり、その分だけ地面等を深く掘削し、雨水ますを深く埋設しなければならなくなるか、逆に汎用の円管の高さが低く(長さが短く)抑えられて、排水管の接続口を汎用の円管の自由な位置(高さ、方向)に取り付けられなくなるという問題があった。また、後者の場合は、バケットを点検口からスムーズに出し入れ出来なくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−86007号公報
【特許文献2】特開2013−19218号公報
【特許文献3】特開2000−8475号公報
【特許文献4】特開2006−266075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の一の目的は、泥溜め部の上部などに接続される汎用の円管の側壁に開口を設け、前記開口に汎用の接続口を取り付けた場合においても、接続口と円管の開口との間に芯ズレ(ガタツキ)を生じ難く、開口と接続口の差し口との間(接続口取付け部分)からの漏水防止及び止水性向上が図られた支管接続口及びその支管接続口を備えた雨水ますを提供することにある。
【0016】
さらに、本発明の他の目的は、上述の支管接続口を備えた雨水ますにおいて、排水中の異物を捕捉するための泥溜め部と、泥溜め部の中に装着されるバケットを備えた雨水ますにおいて、泥溜め部の上部に接続されるます本体(複数の接続口が設けられる部分)として汎用の円管を使用することができ、それでいて、バケットを、バケットの中心軸と雨水ますの中心軸とが簡単に一致するように整列させて装着できる雨水ますを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記2つの目的を達成するため、汎用の円管に設けられた開口部に取り付けられる汎用の接続口(以下、「支管接続口」ともいう。)と汎用の円管との接続構造や、或いは雨水中の異物を捕捉するための泥溜め部と、泥溜め部の中に装着されるバケットを備えた雨水ますであることを前提として、泥溜め部の上部に配置される汎用の円管からなる立上り部と泥溜め部との接続構造について鋭意検討を重ねた。その結果、支管接続口取付け部分の漏水防止については、支管接続口の差し口の所定の領域を拡径することにより、汎用の接続口を利用しながら、支管接続口と円管の開口部との間に生じる芯ズレ(ガタツキ)、および支管接続口取付け部分からの漏水を効果的に防止できることを見出し、そしてバケットの芯出し(バケットの中心軸と雨水ますの中心軸とを一致させること)については、立上り部と泥溜め部との間で支持されるバケットガイドを設けることにより、汎用の円管を利用しながらバケットの芯出しが可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明によれば、一の形態として円管の側壁に設けた開口部へ取り付けられる支管接続口であって、支管接続口は、円管の開口部を挿通する差し口と、差し口外周部に固着されており且つ円管の一方の側の側壁に沿うように湾曲したスピゴットフランジとを有している、前記円管の一方の側の側壁に取り付けられるスピゴットと、そしてスピゴットの差し口と嵌合する受け口と、受け口外周部に固着されており且つ円管の一方の側とは反対側の他方の側の側壁に沿うように湾曲したソケットフランジとを有している、前記円管の他方の側の側壁に取り付けられるソケットとから構成されており、スピゴットの差し口外周部において、スピゴットフランジの付根近傍の領域は、スピゴットフランジの付根近傍以外の領域の外径よりも拡径されている段付き部を備えていることを特徴とする支管接続口が提供される。
【0019】
また、本発明において、円管は、切管可能な立上り部と、そして立上り部の下部に接続される泥溜め部とを備えた雨水ますの前記立上り部を構成するものであってもよい。さらに、前述の支管接続口を備えた雨水ますが、立上り部と、前記立上り部の下部に接続される有底の泥溜め部と、前記泥溜め部の中に着脱自在に収容されるバケットとを備えた雨水ますであり、特にバケットを泥溜め部の中の所定の位置に配置するために、立上り部と泥溜め部との間に固定されるバケットガイドを有している雨水ますであってもよい。
【0020】
なお、本発明では、差し口を有する一の支管接続口部品をスピゴットと呼んでおり、受け口を有する他の支管接続口部品をソケットと呼んでいる。
【0021】
雨水ますの立上り部等の汎用の円管の側壁に設けた開口部へ取り付けられる支管接続口は、開口部を挿通する差し口を有しているスピゴットと、スピゴットの差し口と嵌合する受け口を有しているソケットから構成されており、そしてスピゴットの差し口外周部のスピゴットフランジの付根近傍の領域は、スピゴットフランジの付根近傍以外の領域の外径よりも拡径された段付き部を含んでおり、立上り部等の円管の側壁に設けられた開口部と略同じ直径を有している。
【0022】
また、本発明の支管接続口及び該支管接続口を備えた雨水ますは塩化ビニール樹脂からできていることが好ましく、その場合、拡径されたスピゴット差し口の段付き部(スピゴットフランジの付根近傍の領域)は、有機溶剤からなる接着剤を塗布により軟化するので、スピゴット差し口の段付き部と立上り部等の円管の開口部との間に隙間を生じさせることなく、スピゴットの差し口を立上り部等の円管の開口部へ容易に挿通させて密着させることができる。
【0023】
さらに、本発明の支管接続口を備えた雨水ますが、泥溜め部の中に着脱自在に収容されるバケットを備えている場合、スピゴットのフランジには、バケットの把手を嵌合する溝などを設けることによりバケットを取り付けることができる。この場合、スピゴット差し口と立上り部の開口部との間に隙間があると、バケットの泥溜め部への取付け位置にズレを生じたり、ガタ付きが生じ易くなる。ところが、本発明の支管接続口を備えた雨水ますでは、スピゴット差し口に設けた段付き部により、スピゴット差し口と立上り部の開口部との間に隙間を生じさせることなくスピゴットを立上り部へ取り付けることができるので、バケットの泥溜め部への取付け位置にズレを生じたり、ガタ付きを生じることがない。さらに、隙間がなくなることで、バケットに取り付けられるフィルターやオリフィスを備えている場合においても、フィルターやオリフィスも、流出口との間にズレが生じ難くなる。
【0024】
このように、上記の支管接続口は、スピゴットの差し口の高い挿通性を維持しながら、立上り部等の円管の開口部との間に生じる芯ズレ(ガタツキ)を防止し、さらに立上り部等の円管の開口部との間(支管接続口の取付け部分)からの漏水防止及び止水性向上を図ることができる。また、スピゴットの差し口のより高い挿通性を実現するためには、スピゴットの差し口の拡径された外周部(段付き部)の幅寸法を立上り部等の円管の肉厚と略同じにすればよい。この場合、湾曲したソケットフランジが、スピゴットの段付き部と立上り部等の円管の側壁の双方と当接するので、より支管接続口の取付け部分の隙間を生じ難くするという効果もある。
【0025】
なお、本発明において、スピゴット及びソケットは、立上り部等の円管の内部側壁又は外部側壁のいずれの側壁に取り付けられてもよく、例えばスピゴットが立上り部等の円管の内部側壁取り付けられる場合は、ソケットはその反対側の立上り部等の円管の外部側壁取り付けられ、逆にスピゴットが立上り部等の円管の外部側壁取り付けられる場合は、ソケットはその反対側の立上り部等の円管の内部側壁取り付けられる。
【0026】
スピゴットフランジ及びソケットフランジは、立上り部等の円管の側壁形状に沿うように湾曲しており、例えば立上り部等の円管の内部側壁に取り付けられるフランジは、内部側壁に沿って凸状に湾曲していることが好ましく、一方、立上り部等の円管の外部側壁に取り付けられるフランジは、外部側壁に沿って凹状に湾曲していることが好ましい。また、スピゴットフランジ及びソケットフランジは必ずしも面状である必要はなく、立上り部等の円管の側壁形状に沿って密着させることができるのであれば、格子状のように、複数の棒状部材を組み合わせたものや、棒状部材と面状部材とを組み合わせたものであってもよい。
【0027】
上述のように構成された支管接続口は、本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、施工現場の排水管の位置に合わせて、雨水ますの立上り部の自由な位置(高さ、方向)に任意の方向へ向けて複数個取り付けることができる。
【0028】
典型的には、本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、外部から雨水ますへ雨水等を流入させるための流入口として、外部から雨水ますへ連通する支管接続口と、および/または雨水ますから外部へ雨水等を流出させるための流出口として、雨水ますから外部へ連通する支管接続口とが、立上り部の自由な位置(高さ、方向)に任意の方向に向けて取り付けられる。
【0029】
さらに、本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、前記雨水ますは、他の形態として切管可能な立上り部と、立上り部の下部に接続される泥溜め部とから構成されるます本体と、泥溜め部の中に着脱自在に収容されるバケットと、そしてバケットを泥溜め部の中へ装着した時、バケットの外部側壁と泥溜め部の内部側壁との間に所定の隙間を形成するようにバケットの外部側壁の周囲に配置される案内部と、立上り部と泥溜め部を接続する時、立上り部と泥溜め部の間に挟み込まれることによってます本体の内部に固定される掛かり部とを有するバケットガイドとを備えているものであってもよい。
【0030】
本発明の雨水ますでは、バケットガイドを、立上り部や泥溜め部とは別個の独立した部品として構成し、立上り部と泥溜め部の間に挟み込むことによってます本体の内部に固定できるようにした。このため、立上り部が汎用の円管であっても、汎用の円管を泥溜め部の上部に接続することが可能となり、ます本体として使用することができる。
【0031】
また、バケットガイドは、立上り部と泥溜め部の間に挟み込まれる掛かり部と、バケットガイド本体から内側へ向けて突出した案内部を有している。このため、バケットを泥溜め部の中へ装着する時、バケットの外部側壁を案内部へスライド可能に当接させることにより、バケットは、バケットの中心軸と雨水ますの中心軸とが一致するように案内され、そして、バケットの外部側壁と泥溜め部の内部側壁との間に所定の隙間を形成される。
【0032】
バケットガイドの掛かり部は、立上り部と泥溜め部の間に簡単に挟み込むことができ、且つ立上り部と泥溜め部との接触(接続)面積を出来るだけ減少させないように、立上り部側壁の下端面および/または泥溜め部側壁の上端面と当接可能なフランジ形状であることが好ましい。このため、立上り部側壁の下部または泥溜め部側壁の上部のいずれか一方が差し口であり、泥溜め部側壁の上部または立上り部側壁の下部のいずれか一方が受け口である場合は、差し口の端面が当接する受け口の段部と当接可能なフランジ形状であってもよい。
【0033】
バケットガイドの案内部は、バケットを泥溜め部へ装着する時、バケットを雨水ます(泥溜め部)の中の正確な位置に案内するため、バケットの外部側壁とスライド可能に当接するガイド面を有していることが好ましい。
【0034】
このため、バケットガイドの案内部は、ます本体の周方向に延びたリング状であるか、若しくはます本体の放射方向に延びた複数の舌部から構成されていることが好ましい。バケットの案内部がリング状若しくはます本体の放射方向に延びた複数の舌部から構成されていると、バケットの外部側壁を略全方向からスライド可能に支持することができるので、バケットは雨水ます(泥溜め部)の中のより正確な位置へ案内され、そしてバケットの外部側壁と泥溜め部の内部側壁との間には所定の隙間が安定して形成される。
【0035】
バケットガイドの案内部は、案内部上部に異物が堆積しないように、可能な限りバケットの上部縁部近傍に当接するように配置されることが好ましく、一方、バケットガイドの掛かり部は、一般的にはバケットよりも高さの低い泥溜め部側壁の上端面および/または立上り部側壁の下端面近傍に配置されることが好ましい。
【0036】
このため、バケットガイドの案内部と掛かり部とは高さ方向に離間して配置される場合が多く、このため、バケットガイドの案内部は、離間した掛かり部と連結されるように、断面視において、下向きにコの字の断面形状または下向きにUの字の断面形状を有していることが好ましい。また、バケットガイドの案内部の断面形状が下向きのコの字形または下向きのUの字形であると、案内部の断面係数も増大するので、バケットガイド全体の剛性を高めることができるというメリットもある。
【0037】
泥溜め部は、泥溜め部の側壁に複数の透水孔または複数の透水スリットを有しており、そしてバケットは、バケットを泥溜め部の中へ装着した時、泥溜め部の透水孔または透水スリットの中で、最も高い位置の透水孔の上端または透水スリットの上端よりも高い位置に配置される複数の貫通孔または複数の貫通スリットを有していることが好ましい。
【0038】
本発明の雨水ますでは、雨水ますの下部には、バケットを囲むように、側壁に複数の透水孔等が設けられた有底筒状の泥溜め部が設けられており、泥溜め部の中にはバケットが着脱自在に装着される。支管接続口を通して流入した泥、枯葉等の異物を含む雨水はバケット内へ流入するが、バケットの下部領域には貫通孔等が設けられていないので、バケット内へ流入した雨水等はバケット内の下部領域において一旦滞留し、雨水等に含まれる異物はバケット内の下部領域に堆積する。そしてバケット内に雨水等が溜ってくると、バケット内に滞留した雨水等の上澄み液のみがバケットの上部領域に設けられた貫通孔等を通してバケットの外部へ排出され、バケットの外部へ排出された雨水等の上澄み液は、次いで泥溜め部に設けられ透水孔等を通して泥溜め部の外部へ排水されることになる。
【0039】
このため、上述のように泥溜め部の側壁に複数の透水孔等を設け、バケットには、泥溜め部の透水孔等よりも高い位置に複数の貫通孔等を設けると、雨水ますは浸透ますとしても機能し、そして雨水等に含まれる異物はバケット内の下部領域に残留することになるため、異物が雨水ますから、雨水ますの外部に敷き詰めた砕石槽へ向けて流出することがなくなり、前記砕石槽の目詰まりが防止される。
【0040】
また、泥溜め部の中に装着されるバケットは、上述のように着脱自在であるため、堆積した異物を除去する際も、バケットをます本体から抜き出して、バケット内の異物を廃棄するといった極めて簡単な作業で済ませることができるので、雨水ますのメンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0041】
本発明の支管接続口は、拡径されたスピゴットの差し口(スピゴットフランジの付根近傍の領域)を有しているので、スピゴットの差し口と立上り部等の円管の開口部との間に隙間を生じることなく、スピゴットの差し口を立上り部等の円管の開口部へ容易に挿通させて密着させることができる。その結果、本発明の支管接続口は、スピゴットの差し口の高い挿通性を維持しながら、立上り部等の円管の開口部との間に生じる芯ズレ(ガタツキ)を防止し、さらに立上り部等の円管の開口部との間からの漏水を効果的に防止することができる。
【0042】
本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、本発明の支管接続口は、差し口を備えたスピゴットと、スピゴットの差し口と嵌合する受け口を備えたソケットとを有しており、雨水ますの立上り部等の円管に設けた開口部へ後付けできるため、施工現場の排水管の位置に合わせて、立上り部等の円管の自由な位置(高さ、方向)に任意の方向へ向けて複数個取り付けることができる。このため、本発明の支管接続口は、雨水ますにおいて立上り部として使用される円管に限られず、基本的に他の汎用の円管にも使用することができる。
【0043】
本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、雨水に含まれている泥、枯葉等の異物を捕捉するために、ます本体の下部に有底の泥溜め部と、泥溜め部の中に着脱自在に取り付けられるバケットとを備えた高機能の雨水ますであることができる。それにも拘らず、本発明の雨水ますは立上り部に汎用の円管を使用することができ、そして立上り部と泥溜め部との接続部においてバケットガイドを支持させることができるので、バケットを泥溜め部へ装着する時、バケットは、バケットガイドによってバケットの中心軸と雨水ますの中心軸とが一致するように案内され、そして、バケットの外部側壁と泥溜め部の内部側壁との間には所定の隙間が形成される。
【0044】
本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、泥溜め部の側壁に複数の透水孔等が設けられており、バケットには、泥溜め部の透水孔等よりも高い位置に複数の貫通孔等が設けられているので、雨水ますを浸透ますとして機能させることもでき、そして雨水等に含まれる異物はバケット内の下部領域に残留することになるため、異物が雨水ますから、雨水ますの外部に敷き詰めた砕石槽へ向けて流出することがなくなり、前記砕石槽の目詰まりを防止することができる。
【0045】
本発明が支管接続口を備えた雨水ますである場合、泥溜め部と、泥溜め部の中に着脱自在に取り付けられるバケット以外は、汎用の円管および改良された汎用の接続口を、立上り部および支管接続口として利用しているので、高機能を維持しながら低コストの雨水ますを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の支管接続口及び該支管接続口を備えた雨水ますの一の実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示される本発明の支管接続口及び該支管接続口を備えた雨水ますを分解した態様を示す斜視図である。
図3図1に示される本発明の支管接続口及び該支管接続口を備えた雨水ますをA−A断面で切り取った断面図である。
図4】バケットガイドの上面図及び側面図である。
図5】本発明の支管接続口のスピゴットを示す斜視図である。
図6図5に示されるスピゴットをB−B断面で切り取った断面図(a)及びC−C断面で切り取った断面図(b)である。
図7】本発明の支管接続口のソケットを示す斜視図である。
図8図7に示されるソケットをD−D断面で切り取った断面図(a)及びE−E断面で切り取った断面図(b)である。
図9】本発明の支管接続口を備えた他の雨水ますの実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の一実施形態に係る支管接続口及び該支管接続口を備えた雨水ますについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0048】
図1〜3を用いて、本発明の一実施形態に係る支管接続口7及び該支管接続口7を備えた雨水ます1の主な構成を説明する。図1には、本実施形態に係る支管接続口7及び該支管接続口7を備えた雨水ます1の上方から見た斜視図が示されている。図2には、図1に示された支管接続口7及び該支管接続口7を備えた雨水ます1を分解した態様を示す斜視図が示されている。そして、図3には、図1に示される本実施形態の支管接続口7及び該支管接続口7を備えた雨水ます1をA−A断面で切り取った断面図が示されている。
【0049】
図1〜3を参照して理解されるように、本実施形態の雨水ます1は、円筒形の立上り部3と、立上り部3の下部に接続される泥溜め部4とからなるます本体2と、泥溜め部4の中に着脱自在に収容されるバケット5と、立上り部3と泥溜め部4との接続部分に固定されるバケットガイド6と、そして立上り部3の側壁に取り付けられた2つの支管接続口7を備えており、これらの部品の成形性、取り扱いの容易性等を考慮して、塩化ビニール樹脂からできている。
【0050】
立上り部3は、雨水ます1の高さを調節するため、任意の高さ(長さ)に切断することが可能であり、規格化された汎用の円管を使用することができる。このため、本実施形態の雨水ます1は、施工現場において、設置環境に合わせて様々な深さの設置場所へ設置することができる。
【0051】
立上り部3の下には、後述するバケットガイド6を挟み込んで専用の泥溜め部4が接続される。泥溜め部4は有底の筒状体であり、泥溜め部4の上部には立上り部3の下端部を受け入れるため、立上り部3の外径と略同じ大きさの内径を有する受け口40が形成されている。このため、本実施形態の泥溜め部4は、雨水ます1の専用の部品であるが、立上り部3の規格に対応した数の受け口40を有する泥溜め部4を準備すれば足りるので、製作しなければならない泥溜め部4の種類の数を抑えることができる。
【0052】
泥溜め部4の中に収容されるバケット5は有底の筒状体であり、バケット5に滞留させた雨水を泥溜め部4へ排出させるために泥溜め部4の内径より小さな外径を有しており、泥溜め部4との間に隙間が形成されている。また、図2に示されているように、本実施形態のバケット5は、上部点検口20からの出し入れを容易にするため、バケット5の上端部に一体的に形成された把手50を含んでいる。
【0053】
また、バケット5の開口位置(上部開口縁の高さ)は、図3に示されているように、雨水流入側の支管接続口7に位置する領域(図3の向かって左側)と、雨水流出側の支管接続口7に位置する領域(図3の向かって右側)のそれぞれの開口位置(上部開口縁)の高さが異なっている。別言すると、本実施形態では、雨水流入口側のバケット5の開口位置(上部開口縁)は、雨水流出口側のバケット5の開口位置(上部開口縁)よりも低く設定されている。
【0054】
上述のように、雨水流入口側のバケット5の開口位置(上部開口縁)を雨水流出口側のバケット5の開口位置(上部開口縁)よりも低くすると、雨水流入側の支管接続口7において、内部側の支管接続口部品70にフランジを設けた場合においても、該フランジとバケット5の開口位置(上部開口縁)との干渉を回避できるので、内部側の支管接続口部品70の取り付けが容易になると共に、多様な形状や大きさのフランジを有する内部側の支管接続口部品70であっても、その取り付けを許容できる。また、雨水流入口に面するバケット5の開口位置(上部開口縁)を低くし、流入した雨水が衝突する側のバケット5の開口位置(上部開口縁)を高くしたことで、雨水がよりスムーズにバケット5内へ導かれるという効果も奏する。
【0055】
把手50は下向きコの字形状を有しており、把手50の縦部材に着脱自在に取り付けられるフィルター支持部51と、フィルター支持部51に交換可能に取り付けられる、金網でできたドーム状のフィルター52を含んでいる。把手50の2つの付け根の間に位置するバケット5の開口位置(上部開口縁)には、外方へ略水平方向に突出した半円弧状のフランジが形成されているので(図2)、フィルター支持部51を、把手50の上部から下方へ向けてスライドさせて挿入する時、該フランジはストッパーとして機能し、フィルター支持部51の下端部がバケット5上部のフランジへ当接することにより、フィルター支持部51及びフィルター52を把手50の所定の位置へ正確に固定する。
【0056】
立上り部3と泥溜め部4との間には、リング状のバケットガイド6が取り付けられる。図4を参照して理解されるように、バケットガイド6は、立上り部3や泥溜め部4から独立した別個の部品として構成されており、バケット5を泥溜め部4の中へ装着する時、バケット5を泥溜め部4の中の所定の位置に案内するための案内部60と、バケットガイド6をます本体2へ固定するための掛かり部61と、案内部60と掛かり部61とを相互に連結する連結部62とを含んでいる。
【0057】
図4には、バケットガイド6の上面図及び側面図が示されている。バケットガイドの6の案内部60は、バケット5の外部側壁を囲むことができるように配置されており、バケット5の外部側壁とスライド可能に当接するガイド面63を有している。ガイド面63は、泥溜め部4の中へバケット5を装着した時、バケット5の外部側壁と略平行に配置された円筒状の面または線状面であってよく、或いは下方へ向かうほどバケット5の外部側壁に近づくように(下方へ向かうほど縮径するように)傾斜した面であってもよい。
【0058】
本実施形態では、案内部60のガイド面63は、バケット5を泥溜め部4の中の所定の位置に案内するために、下方へ向かうほどバケット5の外部側壁に近づくように(下方へ向かうほど縮径するように)傾斜した第1のガイド面64と、バケット5を泥溜め部4の中の所定の位置に保持するために、バケット5の外部側壁と略平行に配置された円筒状の第2のガイド面65とを含んでいる。また、図示しないが、第2のガイド面65は、第1のガイド面64と同様に、バケット5を挿入する方向へ従って縮径する傾斜面を有していてもよい。この場合は、バケット5は挿入し易くなり、また取り外しも容易になる。
【0059】
バケットガイド6の案内部60は、泥溜め部4の中へ装着したバケット5をその外側から拘束できる形状であればよいので、図2,4に示されているように、ます本体2の周方向に延びたリング状である他、周方向への変形に対する柔軟性を付与するため、例えば周方向に延びたリング状のバケットガイドの一部に切り込み(スリット)を設けたり、或いは、例えばます本体2の放射方向に延びた複数の舌部から構成することもできる(図示せず)。案内部60が複数の舌部で構成されている場合、バケット5を少なくとも三方向から支持できれば拘束することができるので、この場合、舌部は周方向に120°の間隔を開けてます本体2の周方向に均等に並ぶように配置されることが好ましい。
【0060】
このため、バケットガイド6を介してバケット5を泥溜め部4の中へ装着すると、バケット5の外部側壁が案内部60のガイド面63によってスライド可能に案内されるので、バケット5は、バケット5の中心軸Xと雨水ます1の中心軸Yとが一致するように案内され、そして、バケット5の外部側壁と泥溜め部4の内部側壁との間に所定の隙間を安定して形成させることができる(図3参照)。
【0061】
バケットガイド6の掛かり部61は、連結部62から外方向へ突出したフランジ形状を有しており、立上り部3と泥溜め部4を接続する時、立上り部3と泥溜め部4の間に挟み込まれることによって、バケットガイド6全体をます本体2の内部に固定する役目を果たしている。
【0062】
掛かり部61は、立上り部3と泥溜め部4の接続部に簡単に挟み込むことができる形状であればフランジ形状に限定されるものではないが、本来(バケットガイド6を取り付けていない時)の立上り部3と泥溜め部4との接続(接触)面積を出来るだけ減少させないようにするために、立上り部3側壁の下端面および/または泥溜め部4側壁の上端面と当接可能又は挟み込み可能なフランジ形状とすることが有利である(図3参照)。
【0063】
また、本実施形態の雨水ます1のように、立上り部3側壁が差し口として機能し、泥溜め部4側壁の上部が、差し口としての立上り部3を受け入れるための受け口40として機能する場合、掛かり部61は、立上り部3の差し口の端面と、立上り部3の差し口の端面が当接する、泥溜め部4の受け口40の段部と当接可能又は挟み込み可能なフランジ形状であればよい。図示しないが、逆に立上り部3側壁が受け口として機能し、泥溜め部4側壁の上部が、受け口としての立上り部3の受け口へ挿入される差し口として機能する場合、掛かり部61は、泥溜め部4の差し口の端面と、泥溜め部4の差し口の端面が当接する、立上り部3の受け口の段部と当接可能又は挟み込み可能なフランジ形状であればよい。
【0064】
このように、本実施形態の雨水ます1では、バケットガイド6を、立上り部3や泥溜め部4とは別個の独立した部品として構成し、立上り部3と泥溜め部4の間に挟み込むことによってます本体2の内部に固定できるようにしたので、立上り部3にバケットガイド6を設ける必要がなくなり、汎用の円管であっても、雨水ます1の立上り部3として利用し、泥溜め部4の上部に接続することができる。
【0065】
バケットガイド6の案内部60は、案内部60上部に異物が堆積しないように、可能な限りバケット5の上部縁部付近に当接できるように配置されることが好ましい。一方、バケットガイド6の掛かり部61は、一般にバケット5の高さよりも低い位置に存在する、泥溜め部4と立上り部3の接続部分に固定されるので、案内部60と掛かり部61とは高さ方向に離間して配置される場合が多い。
【0066】
このため、バケットガイド6の連結部62は、離間した案内部60と掛かり部61とを相互に連結する役目を果たしており、本実施形態では、取付け後のバケットガイド6のガタツキ防止を考慮して、立上り部3の内周面に摺接できる円筒形状を有している。そして、バケットガイド6の案内部60および連結部62は一体となって、断面視において下向きにコの字の断面形状または下向きにUの字の断面形状を形成しており、案内部60および連結部62の断面係数も増大するので、バケットガイド6全体の剛性を高めることができる。
【0067】
なお、連結部62は、離間した案内部60と掛かり部61とを相互に連結できるものであれば円筒形状などに限定されるものではなく、例えば、案内部60と掛かり部61を複数個所において部分的に連結する、梯子状に配置された棒状部材などであってもよい。さらに、案内部60と掛かり部61とが近接している場合は、連結部62を省略して、案内部60と掛かり部61とを直接連結させてもよい。
【0068】
図2,3を参照して理解されるように、本実施形態の泥溜め部4は有底の筒状体であって、泥溜め部4の側壁に複数の透水孔41を有している。図示しないが、透水孔41は複数のスリット又は透水孔41とスリットとの組み合わせたものへ置き換えてもよい。そして本実施形態の雨水ます1では、バケット5は、バケット5を泥溜め部4の中へ装着した時、泥溜め部4の透水孔41の中で、最も高い位置の透水孔41の上端よりも高い位置に配置される複数の貫通孔53を有している(図3参照)。また、図示しないが、貫通孔53も、複数の貫通スリット又は貫通孔53と貫通スリットとの組み合わせたものへ置き換えてもよい。
【0069】
本実施形態の雨水ます1では、雨水ます1の下部には、バケット5を囲むように、側壁に複数の透水孔41が設けられた有底筒状の泥溜め部4が設けられており、泥溜め部4の中にはバケット5が着脱自在に装着される。支管接続口7を通して流入した泥、枯葉等の異物を含む雨水はバケット5内へ流入するが、バケット5の下部領域には貫通孔53が設けられていないので、バケット5内へ流入した雨水等はバケット5内の下部領域において一旦滞留し、雨水等に含まれる異物はバケット5内の下部領域に堆積する。そしてバケット5内に雨水等が溜ってくると、バケット5内に滞留した雨水等の上澄み液のみがバケット5の上部領域に設けられた貫通孔53を通してバケット5の外部へ排出され、バケット5の外部へ排出された雨水等の上澄み液は、次いで泥溜め部4に設けられ透水孔41を通して泥溜め部4の外部へ排水される。
【0070】
このため、上述のように泥溜め部4の側壁に複数の透水孔41を設け、バケットには、泥溜め部4の透水孔41よりも高い位置に複数の貫通孔53を設けると、雨水ます1は浸透ますとしても機能し、そして雨水等に含まれる異物はバケット5内の下部領域に残留することになるため、異物が雨水ますから、雨水ます1の外部に敷き詰めた砕石槽(図示せず)へ向けて流出することがなくなり、前記砕石槽の目詰まりを防止することができる。
【0071】
また、泥溜め部4の中に装着されるバケット5は、上述のように着脱自在であるため、堆積した異物を除去する際も、バケット5をます本体2の点検口20から抜き出して、バケット5内の異物を廃棄するといった極めて簡単な作業で済ませることができるので、雨水ます1のメンテナンス性が向上する。
【0072】
なお、本実施形態の雨水ます1では、泥溜め部4の透水孔41またはバケット5の貫通孔53のいずれか一方を省略してもよく、或いは透水孔41および貫通孔53の両方を省略してもよい。泥溜め部4の透水孔41を省略した場合、雨水ます1は浸透ますとして機能しなくなるが、通常の雨水ます1として使用することができる。
【0073】
図5には、ます本体2の立上り部3の内壁に取り付けられる本実施形態の支管接続口7のスピゴット70を示す斜視図が示されている。図6には、図5に示されたスピゴット70をB−B断面で切り取った断面図(a)及びC−C断面で切り取った断面図(b)が示されている。また、図7には、ます本体2の立上り部3の外壁に取り付けられる本実施形態の支管接続口7のソケット71を示す斜視図が示されている。図8には、図7に示されたソケット71をD−D断面で切り取った断面図(a)及びE−E断面で切り取った断面図(b)が示されている。
【0074】
図1〜3に示されているように、本実施形態の雨水ます1は、外部から雨水ますへ雨水等を流入させるための流入口として、外部から雨水ますへ連通する本実施形態の支管接続口7(図1〜3の左側)と、雨水ます1から外部へ雨水等を流出させるための流出口として、雨水ますから外部へ連通する本実施形態の支管接続口7(図1〜3の右側)とが、立上り部3の同じ高さに、水平方向に180°向きを変えて取り付けられている。本実施形態の支管接続口7は、立上り部3の側壁に設けた開口部30に後付けされるので、立上り部3の自由な位置(高さ、方向)に任意の方向に向けて取り付けることができる。なお、立上り部3の開口部30は、施工現場等にて、ホールソー等を用いて立上り部3の側壁をくり貫くことにより、立上り部3の側壁の任意の位置に設けることができる。
【0075】
図2,3に示されているように、本実施形態の支管接続口7は、差し口72を有し、立上り部3側壁の内面に取り付けられるスピゴット70と、スピゴット70の差し口72と嵌合する受け口74を有し、立上り部3側壁の外面に取り付けられるソケット71とから構成されている。
【0076】
本実施形態では、差し口を有する一の支管接続口7部品をスピゴットと呼んでおり、受け口を有する他の支管接続口7部品をソケットと呼んでいる。このため、図示しないが、スピゴット70およびソケット71は、立上り部3側壁の内面、外面に関し、それぞれの取り付け位置を入れ換えることも可能であり、具体的には、差し口72有するスピゴット70を立上り部3側壁の外面に取り付け、受け口74を有するソケット71を立上り部3側壁の内面に取り付けることができる。
【0077】
図5,6を参照してよく理解されるように、スピゴット70は、立上り部3の開口部30を挿通する差し口72と、差し口72外周部に固着されており且つ立上り部3の内側の側壁に沿うように湾曲したスピゴットフランジ73とを有している。また、スピゴット70の差し口72は、差し口72外周部において、スピゴットフランジ73の付根近傍の領域に、スピゴットフランジ73の付根近傍以外の領域の外径よりも拡径されている段付き部76を含んでいる。
【0078】
本実施形態の支管接続口7のスピゴット70およびソケット71は、塩化ビニール樹脂からできている。そのため、拡径されたスピゴット70の差し口72の段付き部76(スピゴットフランジ73の付根近傍の領域)へ有機溶剤からなる接着剤を塗布すると軟化するので、スピゴット70の差し口72と立上り部3の開口部30との間に隙間を生じさせることなく、スピゴット70の差し口72を立上り部3の開口部30へ容易に挿通させて密着させることができる。
【0079】
このため、本実施形態の支管接続口7は、スピゴット70の差し口72の高い挿通性を維持しながら、立上り部3の開口部30との間に生じる芯ズレ(ガタツキ)を防止し、さらに立上り部3の開口部30との間(支管接続口7の取付け部分)からの漏水防止及び止水性向上を図ることができる。また、本実施形態では、段付き部76の過剰な挿通長さを排除し、スピゴット70の差し口72のより高い挿通性を可能にするため、スピゴット70の差し口72の拡径された段付き部76(スピゴットフランジ73の付根近傍の領域)の幅寸法を立上り部3の肉厚と略同じにしている(図3参照)。この場合、湾曲したソケットフランジ75が、スピゴット70の段付き部76と立上り部3の側壁の双方と当接するので、より支管接続口7の取付け部分の隙間を生じ難くするという効果もある。
【0080】
スピゴットフランジ73は、スピゴットフランジ73の外郭を形成する棒状の第1の骨部材730と、スピゴットフランジ73をスピゴット70の差し口72へ接合するために、スピゴット70の差し口72の段付き部76を囲むように形成された棒状の第2の骨部材731と、そしてスピゴットフランジ73を補強し、立上り部3との接着面積を増大させるために、第1の骨部材730および第2の骨部材731と接合された面状部材732を含んでいる。また、第1の骨部材730の左右の縦骨部材の内側には、バケット5の把手50の縦部材とスライド可能に当接することにより、点検口20からのバケット5の出し入れを容易にするための把手ガイド溝733が形成されている。
【0081】
スピゴットフランジ73は、全体として立上り部3の内部側壁形状に沿うように凸状に湾曲している。ただし、スピゴットフランジ73は必ずしも完全な面状体である必要はなく、立上り部3の側壁形状に沿って密着させることができるものであれば、本実施形態のように棒状部材730,731と面状部材732とを組み合わせたもの、又は複数の棒状部材を格子状等に組み合わせたものであってもよい。本実施形態のスピゴット70では、棒状部材730,731と面状部材732とを組み合わせることにより、スピゴットフランジ73全体の軽量化と必要な強度保証を両立させている。
【0082】
また、本実施形態において、スピゴット70を立上り部3側壁の外面に取り付ける場合は、スピゴットフランジ73を、全体として立上り部3の外部側壁形状に沿うように凹状に湾曲させればよい。
【0083】
図7,8を参照してよく理解されるように、ソケット71は、スピゴット70の差し口72と嵌合する受け口74と、受け口74外周部に固着されており且つ立上り部3の外側の側壁に沿うように湾曲したソケットフランジ75とを有している。このため、ソケット71の受け口74の内径は、スピゴット70の差し口72の外径と略同じである。また、ソケット71の受け口74の内部には、スピゴット70の差し口72の先端を当接させることにより、接合部のシール性向上およびスピゴット70の差し口72の過度な挿入を防止するためのストッパー710が、受け口74内面から内側へ向けて突出するようにリング状に形成されている。
【0084】
ソケットフランジ75は、立上り部3の外部側壁形状に沿うように凹状に湾曲した板状部材から形成されているが、必ずしも板状、完全な面状である必要はなく、立上り部3の側壁形状に沿って密着させることができるものであれば、スピゴットフランジ73のように、棒状部材と面状部材とを組み合わせたものや、格子状に複数の棒状部材を組み合わせたものであってもよい。
【0085】
また、本実施形態において、ソケット71を立上り部3側壁の内面に取り付ける場合は、ソケットフランジ75を、全体として立上り部3の内部側壁形状に沿うように凸状に湾曲させればよい。
【0086】
図9には、本発明の支管接続口7を備えた他の実施形態に係る雨水ます1aの断面図が示されている。図9は、図3と同様に、図1に示される他の実施形態(図1においては、本実施形態と共通の外観を有している)の雨水ます1aをA−A断面で切り取った断面図が示されている。
【0087】
図9図3と対比して理解されるように、他の実施形態に係る雨水ます1aは、バケット5の把手50に着脱自在に取り付けられる、フィルター52付きのフィルター支持部51(図3)を、円錐状の形をしたオリフィス54へ置き替えたこと以外は、図1〜3に示されている本発明の一実施形態に係る雨水ます1と同じ構造を有している。このため、他の実施形態に係る雨水ます1aは、フィルター52の機能以外は本実施形態の雨水ます1と同じ効果を奏することができ、さらに、他の実施形態のオリフィス54も、バケット5の下向きコの字形状を有している把手50の縦部材に着脱自在に取り付けることができる。
【0088】
オリフィス54は、バケット5の把手50への取付け部分から先端へ向けて先細りとなる円錐形状を有しており、先端部分を、鋸またはハンドグラインダー等を用いてオリフィス54の軸に対して垂直に切り取ることにより、任意の大きさのオリフィス孔55を設けることができる。このため、本発明の他の実施形態に係る雨水ます1aでは、雨水ます1aから流出させる雨水等の流量を任意且つ容易に調節することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,1a・・・雨水ます
2・・・・・・ます本体
20・・・・・点検口
3・・・・・・立上り部
30・・・・・開口部
4・・・・・・泥溜め部
40・・・・・受け口
41・・・・・透水孔
5・・・・・・バケット
50・・・・・把手
51・・・・・フィルター支持部
52・・・・・フィルター
53・・・・・貫通孔
54・・・・・オリフィス
55・・・・・オリフィス孔
6・・・・・・バケットガイド
60・・・・・案内部
61・・・・・掛かり部
62・・・・・連結部
63,64,65・・・ガイド面
7・・・・・・支管接続口
70・・・・・スピゴット
71・・・・・ソケット
710・・・・ストッパー
72・・・・・差し口
73・・・・・スピゴットフランジ
730,731・・・骨部材
732・・・・面状部材
733・・・・把手ガイド溝
74・・・・・受け口
75・・・・・ソケットフランジ
76・・・・・段付き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9