(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機化合物は、炭素総数が4〜16の直鎖状又は分岐状アルキル基である脂肪族炭化水素基と、一つ又は二つのアミノ基とを有する脂肪族炭化水素アミンである、請求項1に記載の導電性ペースト。
前記金属ナノ粒子の平均粒子径が70nm〜310nmであり、前記金属粒子の平均粒子径が1μm〜3μmである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の配索スペースの減少により、ワイヤーハーネス及びその周辺部品の小型化、薄型化、立体化等を達成することが可能なフレキシブルプリント配線板が求められている。特に、ルームミラーの近傍に設けられ、車室の前方中心にあるマップランプは薄型化が求められている。つまり、自動ブレーキ車両や自動運転車両の進化と共に、カメラやセンサモジュールの機能集約が進み、これらをマップランプの裏面へ設置することが求められるため、マップランプの薄型化が必須となる。そのため、マップランプを薄型化するために、上述のようなフレキシブルプリント配線板のニーズが高まっている。
【0003】
小型化、薄型化、立体化等の要求に対応するフレキシブルなプリント配線板として、電気絶縁性を持った薄く柔らかいベースフィルムと銅箔等の導電性金属とを貼り合わせた基材に、電気回路を形成したフレキシブルプリント配線板(FPC)が知られている。FPCの回路は、通常、サブトラクト法と呼ばれる方法で製造される。例えば、ポリイミドフィルムに銅等の金属箔を貼り合わせ、その金属箔をエッチングすることで回路を形成することができる。このようなサブトラクト法は、フォトリソグラフィ、エッチング、化学蒸着等の複雑で非常に長い工程を必要とし、スループットが非常に低いという問題がある。また、フォトリソグラフィ、エッチング等の工程においては、廃液等の環境に対する課題が常に問題視されている。
【0004】
上記課題を解決するために、サブトラクト法の逆で、絶縁板上に導体パターンを形成していくアディティブ法が検討されている。この方法の種類は複数存在し、メッキ、導電性ペースト等を印刷して構成するもの、基板の必要部分に金属を蒸着させるもの、ポリイミドで被覆された電線を基板上に接着布線するもの、予め形成したパターンを基板に接着するもの等が主として存在する。
【0005】
これらのアディティブ法の中でも最もスループットが高い工法として、印刷工法が挙げられる。印刷工法は、主にフィルムを基材とし、さらに導電性インクや導電性ペーストを導線材料として用い、そこに絶縁フィルムやレジスト等を合わせることで、電気回路を成立させている。このような導電性インクや導電性ペーストは、金属成分、有機溶剤、還元剤及び接着剤等で構成され、塗布後に焼成することで導体が形成され、導通を可能にしている。
【0006】
導電性ペーストとしては、粒子径が1μm未満の金属ナノ粒子を主成分として用いたものや、粒子径が1μmを超える金属マイクロ粒子を主成分として用いたものが存在する。ただ、金属ナノ粒子を主成分として用いた場合、導電性ペーストの塗布膜は厚みを維持できず、その結果、焼成後に得られる導体は薄膜となってしまう。また、金属マイクロ粒子を主成分とした場合、焼成したとしても緻密な焼結体と成り難いため、得られる導体の比抵抗が高まってしまう。そのため、従来の導電性ペーストでは導体を流れる電流量を高めることができず、自動車用の配線板に適用することが困難であった。したがって、粒子径が1μm未満の金属ナノ粒子と、粒子径が1μmを超える金属マイクロ粒子とを併用した導電性ペーストが開発されている。
【0007】
このような導電性ペーストとして、特許文献1では、(A)平均粒径が2〜20μm、所定のタップ密度、かつ、炭素含有化合物の含有割合が0.5質量%以下であるフレーク状銀粉と、(B)平均粒径が10〜500nmである銀ナノ粒子と、(C)熱硬化性樹脂とを含有するものが開示されている。また、特許文献2では、平均粒子径が100nm以下であり、その表面が所定の化合物により被覆されている金属超微粒子と、平均粒子径が0.5〜20μmの金属フィラーとを用い、加熱硬化する樹脂成分、有機の酸無水物又は有機酸、有機溶剤を含む導電性金属ペーストを開示している。特許文献3では、平均粒子径が0.001〜0.1μmの金属微粒子(A)と、平均円相当径が1〜20μm、平均厚さが0.01〜0.5μmの箔状金属粉(B)と、樹脂とを含む導電性インクを開示している。特許文献4では、有機保護コロイドで覆われた金属ナノ粒子と、銀フィラーと、分散媒を少なくとも含有し、有機保護コロイドと分散媒は、分解温度あるいは沸点が70〜250℃である低温焼成型銀ペーストを開示している。特許文献5では、塩基性窒素原子を含有する有機化合物で保護された平均粒子径1〜50nmの金属ナノ粒子と、平均粒子径100nmを越えて5μmの金属粒子と、金属ナノ粒子の脱保護剤と、有機溶剤とを含有するスクリーン印刷用導電性ペーストを開示している。特許文献6では、脂肪族炭化水素アミンを含む保護剤で表面が被覆された銀ナノ粒子と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と、分散溶剤とを含む銀粒子塗料組成物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1乃至6の導電性ペーストを用いたとしても、得られる導体は比抵抗が高い。そのため、当該導体に流すことができる電流量が小さいことから、自動車用途向けの配線板に使用することが困難であった。
【0010】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、得られる導体の低抵抗化及び厚膜化が可能であり、当該導体に流れる電流量を高めることができる導電性ペースト及び当該導電性ペーストを用いた配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る導電性ペーストは、アミノ基を含有する有機化合物で保護され、平均粒子径が30nm〜400nmである金属ナノ粒子と、高級脂肪酸で保護され、平均粒子径が1μm〜5μmである金属粒子と、有機溶剤と、樹脂成分とを含有する。そして、導電性ペーストを焼成してなる導体は、膜厚が30μm以上であり、かつ、比抵抗が5.0×10
−6Ω・cm以下である。
【0012】
本発明の第2の態様に係る導電性ペーストは、第1の態様に係る導電性ペーストに関し、有機化合物は、炭素総数が4〜16の直鎖状又は分岐状アルキル基である脂肪族炭化水素基と、一つ又は二つのアミノ基とを有する脂肪族炭化水素アミンである。
【0013】
本発明の第3の態様に係る導電性ペーストは、第1又は第2の態様に係る導電性ペーストに関し、高級脂肪酸は、炭素総数が12〜24である飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の少なくとも一方である。
【0014】
本発明の第4の態様に係る導電性ペーストは、第1乃至第3のいずれか態様に係る導電性ペーストに関し、金属ナノ粒子の平均粒子径が70nm〜310nmであり、金属粒子の平均粒子径が1μm〜3μmである。
【0015】
本発明の第5の態様に係る導電性ペーストは、第1乃至第4のいずれか態様に係る導電性ペーストに関し、有機溶剤は、炭素総数が8〜16であり、ヒドロキシル基を有し、さらに沸点が280℃以下である。
【0016】
本発明の第6の態様に係る導電性ペーストは、第1乃至第5のいずれか態様に係る導電性ペーストに関し、樹脂成分は熱可塑性樹脂からなる。
【0017】
本発明の第7の態様に係る配線板は、第1乃至第6のいずれか態様に係る導電性ペーストより得られる導体を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の導電性ペーストは、焼成して得られる導体の膜厚が30μm以上であり、かつ、比抵抗が5.0×10
−6Ω・cm以下となる。そのため、得られる導体を低抵抗化し、流れる電流量を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[導電性ペースト]
本実施形態に係る導電性ペーストは、アミノ基を含有する有機化合物で保護され、平均粒子径が30nm〜400nmである金属ナノ粒子と、高級脂肪酸で保護され、平均粒子径が1μm〜5μmである金属粒子とを含有している。
【0020】
本実施形態における金属ナノ粒子は、平均粒子径が30nm〜400nmである。通常、金属粒子の径が小さくなるに従って粒子表面に存在する金属原子数が多くなるため、金属の融点が低下する。そのため、導電性ペーストにこのような金属ナノ粒子を用いることにより、比較的低温で導体を形成することが可能となる。また、金属ナノ粒子の平均粒子径が30nm〜400nmであることにより、金属粒子の隙間を金属ナノ粒子で充填することができる。そのため、導電性ペーストを焼成することにより、金属ナノ粒子と金属粒子が焼結することで緻密な焼結体となるため、得られる導体の導電性を高めることが可能となる。なお、より緻密な焼結体を形成し、導電性を高める観点から、金属ナノ粒子の平均粒子径は70nm〜310nmであることがより好ましい。また、本明細書において、金属ナノ粒子の平均粒子径は、動的光散乱法で測定したメディアン径(50%径、D50)をいう。
【0021】
金属ナノ粒子を構成する金属は、金、銀、銅及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、金、銀、銅及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなることがより好ましい。これらの金属からなる金属ナノ粒子を用いることにより、微細な配線を形成することができる。さらに焼成後の導体の抵抗値を低減でき、導体の表面平滑性も高めることが可能となる。これらの金属の中でも、導電性ペーストの焼成により容易に還元されて緻密な焼結体を形成し、得られる導体の比抵抗を低減できる観点から、銀を用いることが好ましい。
【0022】
金属ナノ粒子は、微細化されることにより表面エネルギーが増加しているため、金属ナノ粒子同士の凝集及び沈殿が生じ易くなっている。そのため、金属ナノ粒子同士の凝集及び沈殿を抑制するために、金属ナノ粒子の表面はアミノ基(−NH
2)を含有する有機化合物で保護されている。このような有機化合物としては、炭素総数が4〜16の直鎖状又は分岐状アルキル基である脂肪族炭化水素基と、一つ又は二つのアミノ基とを有する脂肪族炭化水素アミンを用いることがより好ましい。これらのアミン化合物は、金属ナノ粒子の高分散状態を維持しつつも、焼成工程により容易に除去することが可能であるため、金属ナノ粒子の低温焼結を促進することができる。このような有機化合物としては、n−ブチルアミン、n−ヘキシル及びn−オクチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、金属ナノ粒子の凝集を抑制する観点から、有機化合物の添加量は、金属ナノ粒子1molに対して1〜3molであることが好ましい。
【0023】
本実施形態に係る導電性ペーストは、上述の金属ナノ粒子に加え、高級脂肪酸で保護され、平均粒子径が1μm〜5μmである金属粒子を含有している。このような金属粒子を用いることにより、焼成後の導体を緻密化し、比抵抗を低減することができる。また、金属ナノ粒子と金属粒子を併用することで、得られる導体の厚みを高めることが可能となる。
【0024】
金属粒子は、平均粒子径が1μm〜5μmであることが好ましい。金属粒子の平均粒子径がこの範囲内であることにより、得られる導体を厚膜にし、導体の導電性を高めることが可能となる。また、後述するように、導電性ペーストをスクリーン印刷法により絶縁基板に塗布する場合でも、スクリーン印刷のメッシュに金属粒子が詰まる恐れが少ないため、微細な回路を効率的に形成することが可能となる。なお、金属ナノ粒子と共により緻密な焼結体を形成し、導電性を高める観点から、金属粒子の平均粒子径は1μm〜3μmであることがより好ましい。また、本明細書において、金属粒子の平均粒子径は、動的光散乱法で測定したメディアン径(50%径、D50)をいう。
【0025】
金属粒子を構成する金属は、金属ナノ粒子と同様に、金、銀、銅及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、金、銀、銅及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなることがより好ましい。これらの金属からなる金属粒子を用いることにより、焼成後の導体の抵抗値を低減でき、導体の表面平滑性も高めることが可能となる。これらの金属の中でも、導電性ペーストの焼成により容易に還元されて緻密な焼結体を形成し、得られる導体の比抵抗を低減できる観点から、銀を用いることが好ましい。
【0026】
金属粒子は、金属ナノ粒子と比較して表面エネルギーが小さく、金属粒子同士の凝集及び沈殿が生じ難くなっている。しかし、金属粒子同士の凝集及び沈殿を抑制する観点から、金属粒子の表面は高級脂肪酸で保護されている。高級脂肪酸は、炭素総数が12〜24である飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の少なくとも一方であることが好ましい。具体的には、高級脂肪酸として、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸、並びにこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、金属粒子の凝集を抑制する観点から、高級脂肪酸の添加量は、金属粒子1molに対して1〜3molであることが好ましい。
【0027】
本実施形態の導電性ペーストにおいて、金属ナノ粒子と金属粒子との割合は特に限定されないが、例えば質量比で3:7〜7:3であることが好ましい。金属ナノ粒子と金属粒子との割合がこの範囲内であることにより、緻密な焼結体からなり導電性が向上した導体を得ることが可能となる。なお、金属ナノ粒子の割合がこの範囲よりも低い場合には、得られる導体の比抵抗を満足することが難しくなる可能性がある。逆に、金属ナノ粒子の割合がこの範囲よりも高い場合には、導電性ペーストの粘度が低下し、加工性を満足することが困難になる可能性がある。
【0028】
本実施形態の導電性ペーストは、アミノ基を含有する有機化合物で保護された金属ナノ粒子及び高級脂肪酸で保護された金属粒子を高分散させるために、有機溶剤を含有している。有機溶剤としては、金属ナノ粒子及び金属粒子を高分散させ、さらに後述する樹脂成分を溶解することが可能なものであれば特に限定されない。有機溶剤としては、炭素総数が8〜16であり、ヒドロキシル基を有し、さらに沸点が280℃以下であるものを使用することが好ましい。具体的には、有機溶剤として、ターピネオール(C10、沸点219℃)、ジヒドロターピネオール(C10、沸点220℃)、テキサノール(C12、沸点260℃)、2,4−ジメチル−1,5−ペンタジオール(C9、沸点150℃)、及びブチルカルビトール(C8、沸点230℃)からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。また、有機溶剤として、イソホロン(沸点215℃)、エチレングリコール(沸点197℃)、及びブチルカルビトールアセテート(沸点247℃)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(C16、沸点280℃)からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることもできる。
【0029】
導電性ペーストにおける有機溶剤の添加量は特に限定されないが、導電性ペーストをスクリーン印刷法などにより塗布することが可能な粘度となるように調整することが好ましい。具体的には、アミノ基を含有する有機化合物で保護された金属ナノ粒子及び高級脂肪酸で保護された金属粒子の合計100質量部に対し、2〜10質量部とすることが好ましく、3〜8質量部とすることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の導電性ペーストは、得られる導体を厚膜化して比抵抗を低下させるために、樹脂成分を含有している。樹脂成分を添加することにより、導電性ペーストの塗布膜を厚くし、焼成後に得られる導体の膜厚が30μm以上にすることが可能となる。
【0031】
樹脂成分は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エラストマー系(スチレン系、オレフィン系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、エステル系、アミド系)樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。具体的には、エンジニアリングプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、エチレンアクリレート樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂が挙げられる。さらに、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート樹脂等も挙げられる。熱可塑性樹脂は、これらのうちの一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
樹脂成分としては、繊維を形成する鎖状高分子物質(繊維系樹脂)を用いることが好ましく、例えばセルロース誘導体を用いることが好ましい。セルロース誘導体としては、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースエーテルエステルなどが挙げられるが、セルロースエーテルを用いることが好ましい。セルロースエーテルは、セルロースへ一種のエーテル基が結合したセルロース単独エーテルと、二種以上のエーテル基が結合したセルロース混合エーテルがある。セルロース単独エーテルの具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。セルロース混合エーテルの具体例として、メチルエチルセルロース、メチルプロピルセルロース、エチルプロピルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。セルロースエーテルは、これらのうちの一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
導電性ペーストにおける樹脂成分の添加量は特に限定されないが、導電性ペーストの塗布膜を厚くすることが可能となるように調整することが好ましい。具体的には、アミノ基を含有する有機化合物で保護された金属ナノ粒子及び高級脂肪酸で保護された金属粒子の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部とすることが好ましい。
【0034】
本実施形態の導電性ペーストは、ペーストの分散安定性や焼成後の導体の性能に悪影響を与えない範囲内で、消泡剤、界面活性剤、レオロジー調整剤等の印刷特性や導体特性を改善する添加剤を含有させることができる。
【0035】
次に、本実施形態の導電性ペーストの調製方法について説明する。まず、アミノ基を含有する有機化合物で保護された金属ナノ粒子を調製する。被覆剤により保護された金属ナノ粒子の調製方法は特に限定されず、例えば粉末状の金属ナノ粒子と当該有機化合物とを直接混合することにより、得ることができる。また、粉末状の金属ナノ粒子と当該有機化合物とを有機溶剤を用いて混合した後、乾燥させることでも得ることができる。乾燥方法も特に限定されず、減圧乾燥や凍結乾燥により有機溶剤を除去することができる。
【0036】
同様に、高級脂肪酸で保護され金属粒子を調製する。被覆剤により保護された金属粒子の調製方法も特に限定されず、例えば粉末状の金属粒子と高級脂肪酸とを直接混合することにより、得ることができる。また、粉末状の金属粒子と高級脂肪酸とを有機溶剤を用いて混合した後、乾燥させることでも得ることができる。
【0037】
そして、アミノ基を含有する有機化合物で保護された金属ナノ粒子と、高級脂肪酸で保護された金属粒子と、有機溶剤と、樹脂成分と、必要に応じて添加剤とを混合する。混合方法は特に限定されず、例えば自転公転遠心分離機を用いて混合することが好ましい。また、必要に応じて得られた混合物の脱泡処理を行う。このような工程により、本実施形態の導電性ペーストを得ることができる。
【0038】
このように、本実施形態の導電性ペーストは、アミノ基を含有する有機化合物で保護され、平均粒子径が30nm〜400nmである金属ナノ粒子と、高級脂肪酸で保護され、平均粒子径が1μm〜5μmである金属粒子と、有機溶剤と、樹脂成分とを含有する。そして、導電性ペーストを焼成することにより得られる導体は、厚膜化した緻密な焼結体となるため、流れる電流量を高めることが可能となる。つまり、得られる導体は、膜厚が30μm以上であり、かつ、比抵抗が5.0×10
−6Ω・cm以下であるため、銀バルクと同等の比抵抗となり、自動車用の配線板に適用することが可能となる。
【0039】
[配線板]
本実施形態に係る配線板は、上述の導電性ペーストより得られる導体を備えている。上述のように、本実施形態の導電性ペーストより得られる導体は、膜厚が30μm以上であり、かつ、比抵抗が5.0×10
−6Ω・cm以下である。そのため、流れる電流量を高めることができ、得られる配線板を自動車用として好適に用いることができる。
【0040】
本実施形態の配線板は、基材上に導電性ペーストを所望の形状に塗布した後、焼成することにより得ることができる。配線板に用いることができる基材は特に限定されず、電気絶縁性のフィルム又は板材を用いることができる。このような基材は屈曲性があり、使用箇所に応じて折り曲げなどに対応することができる。基材の材料は特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
【0041】
導電性ペーストを基材上に塗布する方法は特に限定されず、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷等、従来公知の方法により行うことができる。
【0042】
導電性ペーストを基材上に塗布した後の焼成方法も特に限定されない。例えば、導電性ペーストを塗布した基材を150℃以上の熱風に晒すことが好ましい。これにより、導電性ペースト中の有機化合物、高級脂肪酸、有機溶剤及び樹脂成分が除去され、金属ナノ粒子及び金属粒子が焼結するため、高導電性の導体を得ることができる。なお、導電性ペーストを塗布した基材を250℃以上の熱風に晒すことがより好ましい。焼成温度を上げることにより、得られる焼結体がより緻密になるため、更なる低抵抗化を図ることが可能となる。なお、焼成方法は上述の熱風焼成に限定されず、例えばプラズマ焼成、光焼成、パルス波焼成も適用することができる。
【0043】
導電性ペーストより得られる導体を備えた配線板は、導体の表面を覆って保護するための絶縁カバー材を備えていてもよい。絶縁カバー材としては、絶縁フィルムやレジストを用いることができる。絶縁カバー材は、粘着剤を片面に有するポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)等を用いることが好ましい。また、レジストは、熱硬化性レジスト、UV硬化性レジストを用いることが好ましく、特にエポキシ系レジスト、ウレタン系レジストを用いることが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
[試料の調製]
まず、表1乃至表3に示すように、メディアン径が30nm、70nm、150nm、240nm、310nm、600nmである銀ナノ粒子と、n−ヘキシルアミン又はn−ブチルアミンとを混合することにより、アルキルアミンで保護された銀ナノ粒子を得た。なお、銀ナノ粒子とn−ヘキシルアミン又はn−ブチルアミンとの質量比は、1:1とした。また、メディアン径が310nmである銀ナノ粒子と、n−ヘキシルアミン及びn−ブチルアミンとを混合することにより、アルキルアミンで保護された銀ナノ粒子を得た。なお、銀ナノ粒子とn−ヘキシルアミンとn−ブチルアミンとの質量比は、1:0.5:0.5とした。
【0046】
さらに、表1乃至表3に示すように、メディアン径が0.8μm、1μm、2.3μm、2.9μm、5μm、7μmである銀粒子と、ステアリン酸又はオレイン酸とを混合することにより、高級脂肪酸で保護された銀粒子を得た。なお、銀粒子とステアリン酸又はオレイン酸との質量比は、1:1とした。また、メディアン径が1.8μmであり、高級脂肪酸により処理していない銀粒子を準備した。
【0047】
そして、上述のようにして得られた銀ナノ粒子及び銀粒子と、表1乃至表3に示す有機溶剤及び樹脂成分とを、自転公転遠心分離機を用い、各表に示す配合比で攪拌することにより、各例の導電性ペーストを調製した。なお、有機溶剤及び樹脂成分は下記のものを使用した。
【0048】
(有機溶剤)
・テキサノール(2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート) イーストマンケミカル社製
・ターピネオール(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-オール) 米山薬品工業株式会社製
・シクロヘキサン 出光興産株式会社製
・メチルエチルケトン 丸善石油化学株式会社製
(樹脂成分)
・エチルセルロース ダウ・ケミカル・カンパニー製、エトセル(登録商標)STD10
・エポキシ樹脂 三菱化学株式会社製、jER(登録商標)主剤828/硬化剤ST11
・ウレタン樹脂 荒川化学工業株式会社製、ユリアーノ(登録商標)
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
[評価]
上述のようにして得られた実施例1〜12及び比較例1〜5の導電性ペーストを焼成して得られた導体の膜厚及び比抵抗、並びに導電性ペーストの粘度及び塗布した際の外観を下記のように評価した。評価結果を表1乃至表3に合わせて示す。
【0053】
(導体の膜厚)
導体の膜厚は、日本工業規格JIS H8501(めっきの厚さ試験方法)を参考に、触針走査法により測定を行った。なお、装置は、接触式膜厚測定器(KLA Tencor社製Alpha-Step D-500)を用いた。
【0054】
具体的には、まず、ポリイミド基板上に、幅1mm長さ10cmの導電性ペーストの回路と、幅5mm長さ10cmの導電性ペーストの回路とをスクリーン印刷機で印刷した。導電性ペーストを印刷した基板を30分間室温で放置した後、150℃で30分間熱風で焼成することにより、各例のサンプルを作製した。
【0055】
次に、得られたサンプル上のAg薄膜の膜厚を、両端から各1cmの部分と中心の5cmの部分の3点で測定した。なお、測定時の針の速度は0.1mm/s、針圧は15mgで、回路に対して垂直方向に針を動かし測定を行った。3箇所の膜厚の平均値を各例の評価結果とした。
【0056】
(導体の比抵抗)
導体の比抵抗は、JIS K7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)を参考に測定を行った。装置は、4探針抵抗測定器(エヌピイエス株式会社製 抵抗率測定器Sigma-5+)を用いた。
【0057】
具体的には、まず、ポリイミド基板上に、幅2mm長さ10cmの導電性ペーストの回路をスクリーン印刷機で印刷した。導電性ペーストを印刷した基板を30分間室温で放置した後、150℃で30分間熱風で焼成することにより、各例のサンプルを作製した。
【0058】
次に、得られたサンプル上のAg薄膜に対し、両端から各1cmの部分と中心の5cmの部分の3点で表面抵抗を測定した。なお、表面抵抗は、針を回路に対して平行に置いた状態で測定を行った。
【0059】
(導電性ペーストの粘度)
導電性ペーストの粘度は、JIS K5600−2−3(塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第3節:粘度(コーン・プレート粘度計法))を参考に測定を行った。装置は、回転式粘度計(HAKKE社製 レオメータRS100-CS)を用いた。
【0060】
具体的には、まず、各例の導電性ペーストを作製後、常温(25℃)で放置し、温度を一定とした。なお、粘度測定時も温度コントローラーを用い、導電性ペーストの温度25℃に制御した。そして、測定部のコーンとプレートと間に導電性ペーストを満たし、指定のせん断速度になるように回転させ、そのときの粘度を測定した。この際、せん断速度を0S
−1から100S
−1に5分間かけて変化させながら粘度を測定し、せん断速度が10S
−1のときの値を各例の粘度として用いた。
【0061】
(導電性ペーストの塗布外観)
上述の導体の膜厚を測定する際、スクリーン印刷後において、導電性ペーストに擦れ等が無く、均一に塗布されているか否かを目視で確認した。そして、導電性ペーストの擦れが無く、均一に塗布されている場合を「○」と評価した。
【0062】
表1及び表2に示すように、本実施形態に係る実施例1〜12の導電性ペーストは、得られる導体の膜厚が30μm以上であり、かつ、比抵抗が5.0×10
−6Ω・cm以下である。そのため、自動車用の配線板に好適に用いることができる。
【0063】
これに対し、表3に示すように、比較例1の導電性ペーストは銀粒子を添加していないため、厚膜化が難しく、スクリーン印刷を行うことができなかった。また、比較例2の導電性ペーストは銀ナノ粒子の平均粒子径が400nmを超えているため、比抵抗が悪化する結果となった。これは、銀ナノ粒子が過大であるため、銀粒子間の隙間に充填することができず、緻密な導体が形成できなかったためと推測される。
【0064】
比較例3の導電性ペーストは銀粒子の平均粒子径が1μmを下回るため、比抵抗が悪化する結果となった。これは、銀ナノ粒子を使用したとしても銀粒子が過小であるため、緻密な導体が形成できなかったためと推測される。比較例4の導電性ペーストは銀粒子の平均粒子径が5μmを上回るため、比抵抗が悪化する結果となった。そのため、金属粒子の平均粒子径は5μm以下であることが好ましいことが分かる。
【0065】
比較例5の導電性ペーストは銀粒子の表面が高級脂肪酸で保護されていないため、比抵抗が悪化する結果となった。これは、銀粒子の表面に保護剤が存在しないため銀粒子が凝集してしまい、たとえ銀ナノ粒子を使用したとしても緻密な導体が形成できなかったためと推測される。
【0066】
以上、本発明を実施例及び比較例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。