(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
煙道又は煙突の本体部と、該本体部との間に緩衝空間を介在させて、該本体部を覆って外周部分に構築された外周コンクリート躯体とからなる煙道又は煙突構造物において、前記外周コンクリート躯体の前記緩衝空間に面した内周面の状況を、煙道又は煙突を稼働させたまま赤外線サーモグラフィー装置を用いて調査する煙道又は煙突の調査方法であって、
前記外周コンクリート躯体の外周面から前記緩衝空間に向けて貫通させて、少なくとも2箇所の調査孔を削孔形成し、形成した前記調査孔を一旦閉塞した後に、選択された前記調査孔を開放し、開放された前記調査孔を介して前記赤外線サーモグラフィー装置を前記緩衝空間に挿入し、開放された前記調査孔から前記緩衝空間に流入する外気によって前記緩衝空間の内部の温度が低下する際の、前記外周コンクリート躯体の内周面の温度の変化を前記赤外線サーモグラフィー装置の赤外線カメラよって得られる画像から把握して、前記外周コンクリート躯体の内周面の状況を調査する煙道又は煙突の調査方法。
前記赤外線サーモグラフィー装置は、可視カメラを備えており、選択された前記調査孔に光源装置を挿入して前記緩衝空間を照らした状態で、前記可視カメラよって得られる画像からも、前記外周コンクリート躯体の内周面の状況を調査する請求項1又は2記載の煙道又は煙突の調査方法。
前記赤外線サーモグラフィー装置は、筐体部と管体部とからなる防護体の前記筐体部に収容された状態で、前記緩衝空間に挿入されるようになっており、前記管体部を介して前記筐体部に冷気を送り込みながら、前記赤外線カメラ及び/又は前記可視カメラによる画像によって、前記外周コンクリート躯体の内周面の状況を調査する請求項1〜3の何れか1項記載の煙道又は煙突の調査方法。
【背景技術】
【0002】
高温の煙やガスが通過する構造物である煙道や煙突は、例えば高炉設備等を備えるプラントにおいて、コークス炉から煙突の放出口に向けて燃焼排ガスを送り込むための、燃焼排ガスの流通路となる部分であり、流通する燃焼排ガスは、例えば200〜300℃程度の高温の状態となっている。このため、煙道や煙突を構成する煙道又は煙突構造物は、例えば耐火レンガを用いて形成された本体部と、本体部を覆って外周部分に構築された外周コンクリート躯体とからなる2重構造を備えるように形成されていると共に、本体部と外周コンクリート躯体との間には、緩衝空間を設けて、流通する高温の燃焼排ガスの温度が煙道又は煙突構造物の外部に伝わらないようにする工夫がなされている。
【0003】
このような煙道又は煙突構造物では、構築されてから例えば数十年以上経過して、老朽化が進んでいるものもあり、特に、煙道又は煙突構造物の緩衝空間は高温かつ狭隘な空間のため、変状調査を行うことが困難である。そのため、外周コンクリート躯体の緩衝空間に面した内面に重大な変状が確認された時点では、操業に支障を来すケースが多いことから、円滑な操業を確保するためにも、適切な構造物の補修や補強が必要であり、そのため、高温でかつ狭隘な空間での調査、診断技術の確立は重要な課題である。
【0004】
また、煙道又は煙突構造物の内部の状況を調査するには、高炉設備等の稼働を一旦停止して、調査を行う必要があるが、高炉設備等の稼働を一旦停止すると、再稼働させるまでに多くの時間と労力を要することになり、稼働効率が低下して、多大な損失を被ることになる。このため、煙道や煙突を稼働させたままの状態で、これらの煙道又は煙突構造物の内部の状況を調査することを可能にする技術の開発が要望されている。
【0005】
一方、赤外線サーモグラフィー装置を用いた赤外線法によって、コンクリートの表層部分に生じた浮き、剥離等による変状部を、離れた位置から非接触で検出できるようにした調査方法(変状部検出方法)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の調査方法では、日照等によりコンクリートの表層部分が加熱された際に、コンクリートの表層部分に浮き、剥離等があると、これらの裏側の空気層が断熱層となって、コンクリートの表面温度に温度差が生じることを利用したものである。すなわち、このような温度差が生じている場合に、赤外線サーモグラフィー装置を用いてコンクリートの表面を撮影すると、その熱画像に、温度差を示す特異な温度分布が現れることとなり、このような特異な温度分布を介して、コンクリートの表層部分に生じた変状部を、客観的に特定できるようにするものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図10に示す本発明の好ましい一実施形態に係る煙道又は煙突の調査方法は、例えば煙道本体部20と、当該煙道本体部20との間に緩衝空間30を介在させて、煙道本体部20を覆ってこれの外周部分に構築された外周コンクリート躯体40とからなり、例えばコークス炉から煙突に向かって延設された煙道構造物10において、外周コンクリート躯体40の緩衝空間30に面した内周面40aの状況を調査するための方法として用いられる。本実施形態の煙道又は煙突の調査方法は、煙道12の稼働を一旦停止して調査を行うと、煙道12を再稼働させるまでに多くの時間と労力を要することになり、稼働効率が低下して、多大な損失を被ることになることから、煙道構造物10の本格的な修理等を行うのに先立って、煙道12を稼働させたまま、煙道構造物10の特に外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を、予め知っておくための方法として採用されたものである。
【0016】
本実施形態の煙道又は煙突の調査方法では、
図3に示すように、外周コンクリート躯体40の外周面40bから緩衝空間30に向けて少なくとも2箇所の調査孔(例えば、調査孔44a,45a)を削孔形成し、この調査孔44a,45aを介して流入する外気によって緩衝空間30の内部温度が低下する際の外周コンクリート躯体40の内周面40aの熱画像(
図9(a)及び
図10(a)参照)を、
図5に示すように、赤外線サーモグラフィー装置53で撮影することで、煙道12を稼働させたまま、予め外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を容易に把握できるようにする。
【0017】
そして、本実施形態の煙道又は煙突の調査方法は、
図1〜
図5に示すように、煙道又は煙突構造物として、例えば煙道本体部20と、煙道本体部20との間に緩衝空間30を介在させて、煙道本体部20を覆って外周部分に構築された外周コンクリート躯体40とからなる煙道構造物10において、外周コンクリート躯体40の緩衝空間30に面した内周面40aの状況を、煙道12を稼働させたまま赤外線サーモグラフィー装置53(
図2(a)〜(c)参照)を用いて調査する調査方法であって、外周コンクリート躯体40の外周面40bから緩衝空間30に向けて貫通させて、少なくとも2箇所の調査孔44a,45aを削孔形成し(
図3参照)、形成した調査孔44a,45aを一旦閉塞した後に、選択された調査孔44a,45aを開放し、開放された調査孔44a,45aを介して赤外線サーモグラフィー装置53を緩衝空間30に挿入し(
図5参照)、開放された調査孔44a,45aから緩衝空間30に流入する外気によって緩衝空間30の内部の温度が低下する際の、外周コンクリート躯体40の内周面40aの温度の変化を赤外線サーモグラフィー装置53の赤外線カメラ54よって得られる画像(
図9(a)及び
図10(a)参照)から把握することで、外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を調査するようになっている。
【0018】
また、本実施形態の又は煙突の煙道調査方法では、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、赤外線サーモグラフィー装置53は可視カメラ55を備えており、
図6に示すように、選択された調査孔44aに光源装置60を挿入して緩衝空間30を照らした状態で、可視カメラ55よって得られる画像(
図9(b)及び
図10(b))からも、外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を調査するようになっている。
【0019】
更に、本実施形態の煙道又は煙突の調査方法では、赤外線サーモグラフィー装置53は、筐体部57と管体部58とからなる耐熱防護体56(
図2(a)参照)の筐体部57に収容された状態で(
図2(b)参照)、緩衝空間30に挿入されるようになっており、管体部58を介して筐体部57に冷気を送り込みながら、赤外線カメラ54及び/又は可視カメラ55による画像(
図9(a)、(b)及び
図10(a)、(b)参照)によって、外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を調査するようになっている。
【0020】
本実施形態では、煙道本体部20は、
図1にも示すように、コンクリート床版11の上に、複数の耐火レンガ21をアーチ状に積み上げ、隙間をモルタルで埋めながら接合することにより形成されており、複数の耐火レンガ21でアーチ状に形成された煙道本体部20の内部が、コークス炉等から排出される燃焼排ガスを流通させる煙道12を構成している。なお、ここでいう煙道12とは、燃焼排ガス等を流通させる空間をいう。
【0021】
煙道本体部20は、下部(コンクリート床版11側)における内径(内周面20aどうしの幅)Wが2150mm程度、コンクリート床版11から内周面20aまでの高さHが3300mm程度、厚さtが230mm程度の大きさに形成されており、不図示の煙突に向かう延設方向に連続して形成されている。また、煙道本体部20は、高温の燃焼排ガスが流通している状態(煙道12を稼働させたままの状態)においては、内部温度が200〜300℃程度になることから、耐熱温度が1300℃程度となるように形成されている。
【0022】
外周コンクリート躯体40は、煙道本体部20の外周面20bとの間に緩衝空間30を介在させて、煙道本体部20の外周面20bを覆うようにして、煙道本体部20の外周部分に構築されている。煙道本体部20の外周面20bと外周コンクリート躯体40の内周面40aとの間に介在する緩衝空間30は、50〜300mm程度の隙間となっている。緩衝空間30が介在していることで、燃焼排ガスが流通することで煙道本体部20の内部が高温になることによる、外周コンクリート躯体40の劣化を、効果的に抑制できるようになっている。本実施形態では、緩衝空間30は、煙道本体部20の下部及び頂部近傍において50mm程度、煙道本体部20の斜め上方において200〜300mm程度の隙間となっている。
【0023】
外周コンクリート躯体40は、鉄筋コンクリートにより形成されており、天井部41及び1対の側壁部42,43を有する、断面形状が略コの字形状となるように構築されている。天井部41は、500mm程度の厚さに形成されており、その上(外周面41b上)を作業員が歩行可能となるように、天面41bが平面状に形成されている。天井部41の内周面41aは、アーチ状に形成された煙道本体部20の外周面20bの形状に対応した凹状に形成されており、煙道本体部20の斜め上方位置の緩衝空間30が大きくなり過ぎないようになっている。具体的に天井部41の内周面41aの形状は、煙道本体部20の頂部と対向する中央部は天面41bと略平行な水平面形状に形成され、煙道本体部20の斜め上方部分と対向する両側部は、幅方向の両側に向かって下り傾斜する傾斜面状に形成されている。1対の側壁部42,43は、コンクリート床版11上に立設され、400mm程度の厚さに形成されている。1対の側壁部42,43は、煙道本体部20との隙間(緩衝空間30の幅方向の長さ)が50mm程度となるように、煙道本体部20の両側に配設されている。
【0024】
また、本実施形態では、外周コンクリート躯体40の緩衝空間30に面した内周面40aの状況は、撮像ユニット50の赤外線サーモグラフィー装置53によって撮像されるようになっている。
図2(a)に示すように、撮像ユニット50は、緩衝空間30に挿入して外周コンクリート躯体40の内周面40aを撮像する挿入撮像部51と、挿入撮像部51を操作する操作部52とを備えており、外周コンクリート躯体40に削孔形成される調査孔を介して挿入撮像部51を緩衝空間30に挿入し、操作部52で挿入撮像部51を操作して熱画像等を撮像する。
【0025】
挿入撮像部51は、熱画像及び可視画像を撮像する赤外線サーモグラフィー装置53(
図2(c)参照)と、赤外線サーモグラフィー装置53等を収容する耐熱防護体56(
図2(b)参照)とを有しており、耐熱防護体56に赤外線サーモグラフィー装置53を収容することで、例えば、緩衝空間30が、煙道本体部20の煙道12を流通する高温の燃焼排ガスにより例えば80℃程度の高温になった場合においても、赤外線サーモグラフィー装置53を故障させることなく使用することができるようになっている。
【0026】
赤外線サーモグラフィー装置53は、外周コンクリート躯体40の内周面40aの表面温度の熱画像を撮像する赤外線カメラ54と、外周コンクリート躯体40の内周面40aの可視状態を撮像する可視カメラ55とを含んでおり、1つの略直方体状の筐体53aの中に赤外線カメラ54と可視カメラ55とが撮像方向を同じにした状態で収容されている。赤外線カメラ54によって外周コンクリート躯体40の内周面40aの熱画像を撮像することで、外周コンクリート躯体40の内周面40aの剥離や浮き等の損傷個所が低温部となって把握できるようになる。また、可視カメラ55によって撮像することで、例えば、熱画像により確認された低温部を可視画像で確認することが可能になり、熱画像で低温部と判断された箇所に剥離や浮き等の損傷が発生しているかをさらに入念に調査することが可能になる。その結果、外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況調査の精度を向上させることができる。本実施形態では、上述した大きさの緩衝空間30内で撮像を行うことから、長手方向(撮像方向)の長さが60mm程度、縦横の長さが40mm程度の大きさの、略直方体形状を有する赤外線サーモグラフィー装置53が用いられている。
【0027】
赤外線カメラ54は、例えば7.5〜13μm程度の波長の赤外線(熱赤外線)を測定可能となっており、上述した大きさの緩衝空間30の中で、上述の外周コンクリート躯体40の内周面40aを撮像することから、焦点距離を例えば80cm程度に設定している。なお、焦点距離は80cmに限定されず、撮像箇所に基づいて変更することが好ましい。また、例えば、焦点距離を遠隔操作で調整できる赤外線カメラを用いる場合には、撮像箇所に応じて適宜焦点距離を変更することが好ましい。赤外線カメラ54と同様に、可視カメラ55も焦点距離が例えば80cm程度に設定されており、焦点距離が遠隔操作で調整できる可視カメラを用いた場合には、撮像箇所に応じて適宜焦点距離を変更することが好ましい。
【0028】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、耐熱防護体56は、赤外線サーモグラフィー装置53を収容する筐体部57と、筐体部57に接続された管体部58とを含んでいる。筐体部57には、管体部58を介して不図示の熱電対が配されており、熱電対により測定される温度に応じて、管体部58を介して筐体部57に冷気が送り込まれるようになっている。管体部58を介して筐体部57に冷気が送り込まれることで、筐体部57の内部温度が緩衝空間30の雰囲気温度によって上昇することが防止される。筐体部57は、接続ケーブル等を接続した状態の赤外線サーモグラフィー装置53を収容可能に形成されており、本実施形態では、長手方向の長さが120mm程度、縦横の長さが60mm程度の大きさの、略直方体状に形成されている。管体部58は、筐体部57の上面57aに連結されており、その内部に、筐体部57に収容された赤外線サーモグラフィー装置53の接続ケーブルや上述した熱電対等が配されると共に、筐体部57に冷気を送り込めるようになっている。本実施形態では、直径が60mm、長さが1000mmの管体部58が用いられている。
【0029】
また、耐熱防護体56は、耐熱シート59により被覆されており、緩衝空間30に挿入された際に、内部温度の上昇が低減されるようになっている。耐熱シート59は、耐熱防護体56の全部を被覆しても良く、筐体部57の全部及び管体部58の一部を被覆してもよい。例えば、筐体部57の全部と管体部58の2/3程度を被覆していることが好ましい。耐熱シート59としては、例えば、商品名「インサルテックステープ」(ニチアス株式会社製)等を用いることができる。
【0030】
操作部52は、赤外線サーモグラフィー装置53を操作する操作部本体52aと、赤外線サーモグラフィー装置53により撮像された熱画像及び可視画像を表示する不図示のモニタを有しており、作業者はモニタに映し出される熱画像又は可視画像を見ながら、挿入撮像部51を把持する作業員に赤外線サーモグラフィー装置53の撮像方向を指示し、操作部本体52aによる撮像を行うようになっている。本実施形態では、操作部本体52aは、赤外線カメラ54及び可視カメラ55により動画及び静止画を撮像できるようになっている。操作部52としては、赤外線サーモグラフィー装置53の操作プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0031】
本実施形態に係る煙道又は煙突の調査方法は、上述のような
図1に示す煙道構造物10の外周コンクリート躯体40の緩衝空間30に面した内周面40aの状態を、上述のような
図2に示す撮像ユニット50を用いて調査する。具体的には、本実施形態の調査方法を行うには、まず、少なくとも2箇所の調査孔が形成される外周コンクリート躯体40の天井部41において、鉄筋等の埋没物探査を行い、鉄筋等の埋没物の無い箇所を確認する。なお、ここでは2箇所の調査孔44a,45aをコア削孔するが、調査孔は2箇所以上、コア削孔しても良い。調査孔の数は、煙道構造物10の大きさや形状(例えば緩衝空間の大きさや形状)等に応じて適宜設定することが好ましい。また、外周コンクリート躯体40のコア削孔とは、外周コンクリート躯体40の外周面41bから緩衝空間30に向けて、外周コンクリート躯体40をくり抜くことをいう。
【0032】
埋没物探査によって天井部41における鉄筋等の埋没物の無い箇所を確認したら、天井部41においてコア削孔する箇所を例えば2箇所決定する。本実施形態では、
図3に示すように、煙道本体部20の頂部と対向する位置に、調査孔44aをコア削孔し、調査孔44aと幅方向(延設方向と直交する方向)に並んで所定距離離れた位置に、調査孔45aをコア削孔する。また本実施形態においては、直径が約200mm(φ200)の大きさとなるように調査孔44a,45aをコア削孔する。2箇所の調査孔44a,45aをコア削孔することで、調査孔44a,45aから緩衝空間30に外気が流入し易くなり、緩衝空間30の内部の温度を効果的に低下させることが可能になる。
【0033】
天井部41に対する2箇所のコア削孔が終了すると、
図4に示すように、コア削孔した2箇所の調査孔44a,45aに閉塞管4a,47を挿入して、調査孔44a,45aを一旦閉塞する。調査孔44a,45aを一旦閉塞することで、緩衝空間30の温度をコア削孔する前の温度に戻すことが可能になる。調査孔44a,45aを閉塞する閉塞管46,47は、下端が底板46c,47cで封止され、上端に矩形状の蓋体46a,47aが接続された、直径が約165mm(φ165)の管体46b,47bからなり、予め準備されたものである。管体46b,47bは断熱テープにより被覆されており、矩形状の蓋体46a,47aには天井部41に固定するための不図示の固定アンカーを挿通させる不図示の挿通孔が形成されている。閉塞管46,47は、不図示の固定アンカーを介して蓋体46a,47aが天井部41に固定されるようになっている。
【0034】
調査孔44a,45aを一旦閉塞したら、撮像ユニット50を準備する。撮像ユニット50による熱画像の撮像には、二人の作業員を必要とし、第1の作業員が調査孔45aに挿入した挿入撮像部51を操作し、第2の作業員が操作部52の操作部本体52aを操作すると共に、モニタを見ながら第1の作業員に挿入撮像部51による撮像位置を指示する。
【0035】
撮像ユニット50を準備したら、その後、選択された調査孔(本実施形態では、2箇所の調査孔44a,45a)を再び開放し、2箇所の調査孔44a,45aから緩衝空間30に外気を流入させる。2箇所の調査孔44a,45aから緩衝空間30に外気が流入すると、緩衝空間30の内部の温度が低下する。そして、
図5に示すように、第1の作業員が、調査孔45aに挿入撮像部51を挿入し、外周コンクリート躯体40の天井部41の内周面41aの熱画像を赤外線カメラ54で撮像する。例えば、第2の作業員がモニタに映し出される熱画像を見ながら、挿入撮像部51を把持する第1の作業員に赤外線カメラ54の撮像方向を指示し、操作部本体52aによる撮像を行う。
【0036】
このとき、外周コンクリート躯体40の内周面40aに剥離や浮き等の損傷個所がある場合、剥離や浮き部分の裏側の空気層が、断熱材としての役割を果たすことで、外周コンクリート躯体40の外周面40bから内周面40aに向かう熱の移動(温度熱の高い方から低い方へ向かう熱の移動)が遮断され、損傷個所が低温部となって現れる(
図9(a)参照)。一方、外周コンクリート躯体40に損傷個所が無い場合、
図10(a)に示すように、外周コンクリート躯体40の外周面40bから内周面40aに向かう熱の移動(温度の高い方から低い方へ向かう熱の移動)により、内周面40aに著しい低温部が現れない。このようにして外周コンクリート躯体40の内周面40aを赤外線カメラ54で撮像することで、煙道12を稼働したままの状態で、外周コンクリート躯体40の内周面40aの損傷箇所等の状況を把握することができる。
【0037】
外周コンクリート躯体40の内周面40aの、赤外線カメラ54により撮像された熱画像に基づく調査が終わると、次に、熱画像に基づく調査により得られた低温部の確認調査が行われる。低温部の確認調査を行うことで、低温部が、剥離や浮き等の損傷により現れたものであるか、それ以外の影響により現れたものであるかについてさらに詳細に確認することが可能になって、外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を、さらに精度良く調査することが可能になる。
【0038】
低温部の確認調査は、三人の作業員を必要とし、例えば、第1の作業員が調査孔45aに挿入された挿入撮像部51の可視カメラ55の向き等を操作し、第2の作業員が操作部52の操作部本体52aを操作すると共に、モニタを見ながら挿入撮像部51の可視カメラ55による撮像位置を指示する。そして、第3の作業員が調査孔44aから光源装置60を挿入し、撮像箇所を光源装置60によって照射する。第3の作業員による光源装置60の照射方向も、第2の作業員による指示により行われる。光源装置60で緩衝空間30を照らした状態で、可視カメラ55で低温部を撮像することにより、
図9(a)に示す低温部が、
図9(b)に示すひび割れ等の損傷であることや、
図10(a)に示す低温部が、
図10(b)に示すように損傷個所でないことを、容易に確認することができる。このように、光源装置60で緩衝空間30を照らした状態で緩衝空間30の低温部を撮像することによって、低温部が損傷個所であるか否かについて容易に確認することが可能になり、これによって外周コンクリート躯体40の内周面40aの調査の精度を、さらに向上させることが可能になる。
【0039】
調査孔44a,45aを使用した外周コンクリート躯体40の天井部41の内周面41aの調査が終わると、上述と同様にして、
図7に示すように、側壁部42に別の調査孔44b,45bを削孔形成し、同様の調査を行うことができる。更に、
図8に示すように、天井部41に別の調査孔45cを削孔形成して、同様の調査を行うことができる。なお、本実施形態では、天井部41の内周面41aと一対の側壁部42,43の内周面42a,43aとについて、別々に調査を行うことができるが、例えば、天井部41及び一対の側壁部42,43のそれぞれに、調査孔をコア削孔し、それぞれの調査孔を一旦閉塞した後に、選択した調査孔を開放し、開放された調査孔を介して挿入撮像部51を挿入して、赤外線カメラ54及び/又は可視カメラ55により、外周コンクリート躯体40の内周面40aの熱画像や可視画像を撮像することで、外周コンクリート躯体40の内周面40aの状況を調査しても良い。
【0040】
そして、上述した本実施形態の煙道調査方法よれば、緩衝空間30を介在させて、煙道本体部20を覆ってこれの外周部分に構築された外周コンクリート躯体40の緩衝空間30に面した内周面40aの状況を、煙道12を稼働させたまま、容易に調査することが可能になる。
【0041】
すなわち、本実施形態の煙道又は煙突の調査方法によれば、外周コンクリート躯体40の外周面である天面40bから緩衝空間30に向けて貫通させて、少なくとも2箇所の調査孔44a,45aを削孔形成し、形成した調査孔44a,45aを一旦閉塞した後に、選択された調査孔44a,45aを開放し、開放された調査孔44a,45aを介して赤外線サーモグラフィー装置53を緩衝空間30に挿入し、開放された調査孔44a,45aから緩衝空間30に流入する外気によって緩衝空間30の内部の温度が低下する際の、外周コンクリート躯体40の内周面40aの温度の変化を赤外線サーモグラフィー装置53の赤外線カメラ54よって得られる画像から把握して、外周コンクリート躯体40の内周面の状況を調査するようになっている。これによって、外周コンクリート躯体40の内周面40aに剥離や浮き等の損傷個所が生じている場合に、損傷個所が、赤外線カメラ54よって得られる画像に低温部となって現れるので、外周コンクリート躯体40の内周面40aを赤外線カメラ54で撮像して低温部を探すことで、外周コンクリート躯体40の内周面40aの損傷個所を、容易に把握して調査することが可能になる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の煙道又は煙突の調査方法によって外周コンクリート躯体の緩衝空間に面した内周面の状況が調査される煙道又は煙突構造物は、煙突の放出口に向けて燃焼排ガスを流通させる流通路を形成するものであれば良く、緩衝空間を介在させた煙突本体部と外周コンクリート躯体とによって構成される、煙突自体を煙道又は煙突構造物として、本発明の煙道又は煙突の調査方法を適用することもできる。