【実施例】
【0053】
(実施例1)
ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)からの真核細胞溶解物を使用した、無細胞翻訳系における細胞質タンパク質の発現へのカスパーゼ阻害剤の影響
【0054】
はじめに、最大達成可能タンパク質収量へのカスパーゼ阻害剤の影響を、細胞質タンパク質SII−eYFPの発現に基づき調べた。このモデルタンパク質は、アフィニティタグ(Strep−Tag、SII−Tag)でN末端に結合され、ベクターpIX3.0(キアゲン)に存在する強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)である。
【0055】
モデルタンパク質の発現を、48時間にわたって、バッチシステムおよび透析システム(50μlの反応チャンバー;1000μlの供給チャンバー;膜のカットオフ=10kDa)において分析した。翻訳混合物をバッチシステムおよび透析システムにおいて、各々、昆虫細胞小胞(V)有り(+)及び無し(−)、並びにカスパーゼ阻害剤(CI)有り(+)及び無し(−)で、各々インキュベートした(27℃、600rpm)。高温TCA沈殿及びシンチレーション測定による新たに合成された標的タンパク質の量を決定ことができるように、タンパク質合成を放射性標識されたアミノ酸
14C−ロイシンの存在下で実施した。
【0056】
翻訳反応は、特定の時点で中断し(0時間、2時間、4時間、24時間および48時間)、以下のように分析した:5μlの混合物を、各ケースで高温TCA又は氷冷アセトンにおいて沈殿させた。さらに5μlを、25μlのPBSに再懸濁させた。残ったサンプルを、上清液(SN)および小胞画分(VF)に、遠心分離工程によって、分離した。これらの画分の5μlの分量を、各々、25μlのPBSで希釈した。
【0057】
TCA沈殿後、サンプルを、真空駆動ろ過システムにより、遊離の放射性アミノ酸から分離し、シンチレーション測定を行った。乾燥させた後、アセトン中で沈殿したタンパク質を、還元サンプル緩衝液中に回収し、電気泳動で分離した。
【0058】
PBS中に再懸濁させたサンプルを、蛍光強度のためのphosphorimager system(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)において調べた。この目的のために、25μlのサンプルをIbidiスライドの各孔にピペットで移して測定し、サンプルの励起は488nmで行い、発光は526nmで測定された。
【0059】
図1に示された結果は、カスパーゼ阻害剤の添加無しでは、バッチシステムと比較して、透析システムでは、タンパク質量の中程度の増加(約50%)が達成された(48時間後のバッチシステム、−V、−CI=17.5μg/ml;48時間後の透析システム、−V、−CI=27.1μg/ml)。これに対して、翻訳混合物へのカスパーゼ阻害剤の添加は、標的タンパク質の17.3μg/ml(48時間後のバッチシステム、−V、+CI)から90.8μg/mlに達成された、非常に大きく増加した(約400%)最大タンパク質収量をもたらした(
図1A)。サンプルの蛍光の記録は、同じような傾向を示した。カスパーゼ阻害剤の存在下で透析システムにおいて合成された翻訳混合物から検出された蛍光シグナルは、他のサンプルと異なっていた(
図1C)。これらのサンプルの濃度測定において、透析システム+CI(48時間後、−V)と比較して、透析システム−CI(48時間後、−V)において発現されたサンプルでは、3.7倍以上の強度の蛍光がみられた(
図1D)。
【0060】
(実施例2)
ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)から真核細胞の抽出物を使用した、無細胞翻訳系における膜タンパク質の発現に対するカスパーゼ阻害剤の影響
【0061】
ここでは、真核生物の翻訳系における異なる膜タンパク質の発現に対するカスパーゼ阻害剤の影響を、より詳しく検証した。この目的のため、3つの異なるモデルタンパク質を選択した:エンドセリンB受容体(ETB)は、7つの膜貫通領域を有するGタンパク質共役受容体であり、それはベクターpIX3.0(キアゲン社)にクローンされている。さらに、N末端がメリチンシグナル配列に結合され、C末端がeYFPに結合され、ベクターpIX3.0に存在するI型膜貫通タンパク質のヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)を発現に用いた。加えて、7つの膜貫通領域を有し、ベクターpMA(ジーンアート社)に存在する膜タンパク質バクテリオロドプシンの発現を調べた。
【0062】
3つのタンパク質を、48時間、
14C−ロイシンの存在下で、カスパーゼ阻害剤(CI)の添加無し(−)および有り(+)で、バッチおよび透析システムにおいて各々発現させ(27℃、600rpm、Eppendorf Thermomixer Comfort)、実施例1と同様に分析した。シンチレーション測定により達成されたタンパク質収量の決定は、最大達成可能タンパク質収量に対するカスパーゼ阻害剤の明確な影響を示した。3つの膜タンパク質(ETB、49.3kDa;Hb−EGF、51kDa;バクテリオロドプシン、26.9kDa)の各々の発現は、カスパーゼ阻害剤の添加によって、透析システムにおいて約100%増加し得た(透析バッチ+CIおよび−CIの比較)。
【0063】
(実施例3)
真核細胞抽出物を使用し、カスパーゼ阻害剤を添加した、最大達成可能タンパク質収量に対する還元剤ジチオスレイトール(DTT)の影響
【0064】
細胞抽出物および翻訳バッファーにDTTといった還元剤を添加することは、従来、保存可能期間を延長するのに役立っていた。しかしながら、ジスルフィド架橋を有するタンパク質の無細胞発現に対する調査は、還元剤が標的タンパク質においてジスルフィド架橋の形成を阻害し得ることを明らかにした(Katzen,F.,G.Chang and W.Kudlicki,Trends Biotechnol.,2005,23(3):pp.150−156)。ジスルフィド架橋が多くのタンパク質において、タンパク質に安定性を与えタンパク質の折り畳みに重要な貢献をする、重要な翻訳後修飾を代表するため、種々の実験が所定の酸化還元電位を用いた翻訳系を開発するために行われてきた。この目的のために、ほとんどの場合、溶解物または翻訳バッファーへの還元剤の添加が省略されている。
【0065】
ここに記載された無細胞翻訳系は、複雑な真核生物のタンパク質が合成され得るプラットフォームを提供するように意図されている。したがって、本発明の方法がジスルフィド架橋を有するタンパク質の合成に有利に用いられ得るかを決定し、最適化の可能性を明らかにすることは、特に関心のあることであった。
【0066】
この目的のために、還元剤DTTの、異なるモデルタンパク質を有するバッチおよび透析システムの合成パフォーマンスに対する影響を調べた。
【0067】
糖タンパク質のエリスロポエチン(N末端がメリチンのシグナル配列に結合されている;Mel−EPO;20.9kDa、非グリコシル化)ならびにETB(49.3kDa)、ルシフェラーゼ(60.6kDa)、Mel−Hb−EGF−eYFP(51kDa)およびバクテリオロドプシン(26.9kDa)の合成を、48時間、27℃、600rpmで、
14C−ロイシンの存在下で、翻訳バッファーにおいて、DTTの添加無し(−)および有り(+)で、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK)を添加して、バッチ(B)および透析システム(D)で行った。
【0068】
図3は、バッチシステムおよび透析システムで合成されたタンパク質のオートラジオグラフを示す。コントロール=DNA鋳型の添加無しでの翻訳混合物。
【0069】
DTTの非存在下では、サイトゾルタンパク質(ルシフェラーゼ、SII−eYFP;両方とも発現ベクターpIX3.0(キアゲン社)に存在する)および膜タンパク質(ETB、Mel−Hb−EGF−eYFP、バクテリオロドプシン)を含む、異なるモデルタンパク質の発現に負の影響を与えないことは明らかである。
【0070】
グリコシル化タンパク質のエリスロポエチン(N末端がメリチンシグナル配列に結合されている;Mel−EPO)の場合、しかし、標的タンパク質の完全なグリコシル化がDTTの存在下のみで達成されたことが見出された。
【0071】
(実施例4)
真核細胞抽出物を使用し、カスパーゼ阻害剤を添加した、I型膜貫通型タンパク質Mel−Hb−EGF−eYFPの発現の検証
【0072】
タンパク質合成反応にカスパーゼ阻害剤を添加すると、平均で約100%、透析システムにおいて膜タンパク質の最大達成可能収量を増加させることは、上記のデータから明らかである。膜タンパク質Mel−Hb−EGF−eYFPに対して、20.5μg/ml(透析48時間、−CI)から47.6μg/ml(透析48時間、+CI)の総タンパク量の増加が達成された(=130%)。バッチシステムの透析システムとの比較において、12.1μg/ml(透析48時間、+CI)から47.6μg/ml(透析48時間、+CI)の総タンパク量の増加が達成された(=300%)(
図2)。
【0073】
ここでは、その意図は、総タンパク量の増加がまた、小胞の脂質層に移行され組み入れられた膜タンパク質量の増加に関連するかどうかを調査することである。この目的のため、Mel−Hb−EGF−eYFPの翻訳混合物を、遠心分離工程によって、上清液(SN)および小胞画分(VF)に分離した。これらのサンプル(5μl)を、新たに合成されたタンパク質の量を決定するために使用し、蛍光特性に関して調べた(
図4)。
【0074】
図4A:Mel−Hb−EGF−eYFPの合成を、48時間、27℃、600rpmで、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK)を添加して、DTTの添加無し(−)および有り(+)で、バッチ(左)および透析システム(右)で行った。合成後、混合物を、上清液(SN)および小胞画分(VF)に、遠心工程によって分離した。サンプルの蛍光強度の分析のために、画分(5μl)を25μlのPBS中に各々希釈し、この混合物の25μlをIbidiスライドの各孔にピペットで移して測定した。サンプルの励起は、phosphorimager(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)を用いて488nmで行い、発光は526nmで測定された。
【0075】
図4Bは、バッチシステム(左)および透析システムにおいて分析された、48時間にわたる、翻訳混合物(TM)および小胞画分(VF)における、
14C−ロイシンの取り込みにより確立された、Mel−Hb−EGF−eYFPのタンパク質収量のグラフ表示を示す。
【0076】
図4Cは、
14C−ロイシンで標識されたMel−Hb−EGF−eYFPを表すオートラジオグラフを示す。タンパク質は、約51kDaの分子量を有する。
【0077】
これらのデータは、カスパーゼ阻害剤を含み、DTTを使用しない透析システムの使用は、溶解物の小胞画分中のMel−Hb−EGF−eYFPの割合の大幅な増加を引き起こすことを示す(バッチ 48時間−DTT+CI=6.5μg/ml;透析 48時間−DTT+CI=31.4μg/ml)。さらに、透析システムにおける小胞画分のサンプルの時間依存的な解析は、24時間以上にわたって、タンパク質の量の継続的な増加を示し、一方、バッチシステムにおいて、最大値に2時間後に到達した(
図4B、4C)。
【0078】
(実施例5)
ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)の昆虫細胞からの細胞抽出物を基礎とする真核生物翻訳系における合成パフォーマンスに対する不可逆的および可逆的カスパーゼ阻害剤の影響
【0079】
蛍光タンパク質SII−eYFPの例を使用して、異なる不可逆的カスパーゼ阻害剤(ZVAD−FMK、Ac−VAD−CMK、Ac−DEVD−CMK、Q−VD−OPh)および可逆的カスパーゼ阻害剤(Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHO)の合成に対する影響を、真核生物の透析の翻訳系において調べた。
【0080】
SII−eYFPの翻訳は、異なる不可逆的および可逆的カスパーゼ阻害剤の存在下で、バッチおよび透析の方式において、600rpm、27°Cで、48時間にわたって、DNA鋳型piX3.0−SII−eYFPを用いておこなわれた。すべて阻害剤は、30μMの濃度で使用された。翻訳完了後、異なる混合物を、蛍光強度のためのphosphorimager system(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)において調べた。この目的のため、5μlの各々の翻訳混合物を、25μlのPBSに再懸濁させた。続いて、このサンプルの25μlをIbidiスライドの各孔にピペットで移して測定し、サンプルの励起は、488nmで行い、発光は526nmで測定された。
【0081】
図5に示される結果は、すべての試験された不可逆的なカスパーゼ阻害剤は、阻害剤無しのコントロールの透析混合物に比して、122%の最大値まで(Ac−DEVD−CMK)、少なくとも77%(Q−VD−OPh)、合成収率を増加させることができたことを示す。試験された可逆的なカスパーゼ阻害剤Ac−AAVALLPAVLLALLAPDEVD−CHOは、阻害剤無しの透析溶液に比して53%、蛍光を発するタンパク質の収量の増加を引き起こした。
【0082】
記述されたデータに基づいて、原理的に、不可逆的および可逆的阻害剤の両方を伴うと、合成収率の増加が真核生物の透析システムで可能であると結論づけられる。
【0083】
(実施例6)
真核生物の翻訳系における新たに合成された膜タンパク質の安定性に対するカスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの影響
【0084】
ここに、無細胞で合成されたタンパク質の安定性に対するカスパーゼ阻害剤の正の影響が、内因性のチロシンキナーゼ活性を有し、ヒトのタンパク質であり、高分子量の膜貫通タンパク質である(上皮成長因子受容体)、EGF受容体の発現に基づき示される。EGF受容体をコードする配列を、メリチンシグナル配列(Mel)でN末端に結合させ、黄色蛍光タンパク質(eYFP)でC末端に結合させ、ベクターpIX3.0(キアゲン社)にクローニングした。モデルタンパク質は、Mel−hEGFR−eYFP(=163kDa)として以下に示される。メリチンシグナル配列は、膜タンパク質の真核細胞抽出物のミクロソームへの移行およびミクロソームの膜への実質的な取り込みを可能にする。Mel−hEGFR−eYFPは、9個の潜在的なN−グリコシル化部位を有し、それゆえ、標的タンパク質の移行に起因して、標的タンパク質のN−グリコシル化もまた無細胞系において可能となる。
【0085】
図6は、
14C−ロイシンの存在下でのSf21の昆虫細胞溶解物に基づくバッチベースの真核生物翻訳系におけるMel−hEGFR−eYFPの無細胞発現を示す。翻訳反応を、カスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK、プロメガ社、30μM)およびプロテアーゼ阻害剤混合物(「完全プロテアーゼ阻害剤カクテル」、ロシュ社)の非存在下および存在下で行い、各々、液体窒素中で翻訳反応の凍結によって示されたインキュベーション時間(1.5時間、5時間および24時間)で停止させた。新たに合成された標的タンパク質の分析を、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーを用いて行った。SDS−PAGEの実行のために、5μLの翻訳混合物を氷冷アセトン中に沈殿させた。乾燥後、タンパク質のペレットを還元サンプルバッファー中に回収し、10%SDS−PAGEで分離した。無細胞で合成され
14C−ロイシンで標識されたタンパク質の可視化を、phosphorimager system(Typhoon TRIO+ imager、GEヘルスケア社)を用いて行った。
【0086】
オートラジオグラフは、1.5時間のインキュベーション時間後の標的タンパク質の2つの別個のバンドを示す。標的タンパク質の配列における多数の潜在的なN−グリコシル化部位に起因して、より大きい分子量を有するバンドは、1または2以上の付加されたグリコシル化を有するタンパク質であると考えられる。したがって、低分子量を有するタンパク質のバンドは、糖基を有しない標的タンパク質に対応するであろう。カスパーゼ阻害剤の添加無しでは、5時間のインキュベーション時間後のMel−hEGFR−eYFPに対して、オートラジオグラフにおける標的タンパク質のバンドの強度が減弱するのが見られ得、低分子分解生成物が可視化される。それに対して、カスパーゼ阻害剤の存在下で合成されたタンパク質は、タンパク質分解のサインの減弱を示す。24時間のインキュベーション時間後でさえも、膜タンパク質のMel−hEGFR−eYFPは、オートラジオグラフにおいて完全な形で検出可能である。そのため、カスパーゼ阻害剤の特定の効果は、市販のプロテアーゼ阻害剤混合物(コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル、ロシュ社)がカスパーゼ阻害剤の効果の安定化を達成できなかった点において、明らかにされている。
【0087】
(実施例7)
真核生物翻訳系における新たに合成された膜タンパク質の安定性に対する異なる種類のカスパーゼ阻害剤の正の影響
【0088】
以下の実験において、異なる官能基(メチルケトン、フルオロメチルケトン、FMKまたはクロロメチルケトン、CMK)およびペプチド基を有する異なるカスパーゼ阻害剤(Z−VAD−FMK、プロメガ社;Ac−DEVD−CMK、サンタクルーズバイオテクノロジー社;Q−VD−OPh、Z−WEHD−FMK、Z−VDVAD−FMK、Z−DEVD−FMK、Z−YVAD−FMK、R&Dシステムズ社;すべて30μM)の、
14C−ロイシンの存在下、バッチの様式での、Sf21昆虫細胞溶解物に基づく無細胞の真核生物翻訳系における標的タンパク質Mel−hEGFR−eYFPの合成に対する影響を調べた。合成は、
図7において与えられるインキュベーション時間で停止された(1.5時間、24時間)。
【0089】
得られた結果は、使用されたすべての阻害剤が、長いインキュベーション時間(24時間)後でさえも、翻訳溶液における標的タンパク質の安定性を保証することを示す(
図7)。
【0090】
(実施例8)
ミクロソーム小胞における標的タンパク質の複数の合成を伴うカスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの使用
【0091】
昆虫細胞の小胞の管腔または膜における特定の標的タンパク質の濃度を増加させるための適切な方法は、複数の合成を行うことにある。この手順は、翻訳混合物中で新たに合成された標的タンパク質の滞留時間の延長をもたらす。成功した変換のために、それゆえ、翻訳混合物における比較的長いインキュベーション時間(>1.5時間)の後でさえも標的タンパク質の安定性を保証することが絶対に必要である。この目的のために、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKを翻訳反応に添加した。標的タンパク質の複数の合成を次のように行った:標準条件(27℃、1.5時間)下でインキュベートした翻訳混合物のミクロソームを、16,000gでの遠心分離工程によりペレット化し、ミクロソームを含まない翻訳活性のある細胞溶解物に再懸濁させて、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの存在下で、27°Cで、1.5時間、再びインキュベートした。本実験では、合成を4回繰り返した。各々の合成工程の後、翻訳混合物、上清および小胞画分における放射性標識されたタンパク質の収量を測定した。加えて、5μlの翻訳混合物をアセトン中で沈殿させ、その後に電気泳動的に分離した。関連するオートラジオグラフ(
図8A)は、翻訳混合物および翻訳混合物の小胞画分におけるMel−hEGFR−eYFPのタンパク質のバンドを示す。翻訳反応にカスパーゼ阻害剤を添加することで、合計6時間以上の標的タンパク質の合成が可能となった。
【0092】
得られたデータは、標的タンパク質の収量が、合成工程1から4に、各々、110%(翻訳混合物中の総タンパク質)および180%(小胞画分)増加したことを示す。
(付記)
(付記1)
核酸鋳型及び真核細胞溶解物を用いたインビトロ翻訳反応を含む、無細胞のタンパク質の合成方法であって、
前記翻訳反応は、カスパーゼ阻害剤の存在下で行われる、
ことを特徴とする方法。
(付記2)
前記カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に対する基質として機能するアミノ酸又はペプチド配列と、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に不可逆的又は可逆的に結合する官能基と、含むアミノ酸誘導体又はペプチド誘導体である、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
(付記3)
前記カスパーゼ阻害剤は、アミノ酸のアスパラギン酸塩を含む、アミノ酸のアスパラギン酸塩又はペプチド配列を含む、
ことを特徴とする付記2に記載の方法。
(付記4)
前記アミノ酸又はペプチド配列は、アスパラギン酸塩、バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(VAD)、アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸塩(DEVD;配列番号1)およびチロシン−バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(YVAD;配列番号2)からなる群より選択される、
ことを特徴とする付記3に記載の方法。
(付記5)
前記カスパーゼ阻害剤は、官能基として、メチルケトン基、例えば、カスパーゼタイプ1−14のすべてに不可逆的に結合するフルオロメチルケトン(FMK)又はクロロメチルケトン(CMK)を含む、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の方法。
(付記6)
前記カスパーゼ阻害剤は、少なくとも1つのアルデヒド基に結合したペプチドを表す、
ことを特徴とする付記2乃至4のいずれか1つに記載の方法。
(付記7)
前記カスパーゼ阻害剤は、反応混合物において、20μMから100μM、好ましくは25μMから50μMの濃度で存在する、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の方法。
(付記8)
前記真核細胞溶解物は、コムギ胚芽溶解物と、昆虫細胞溶解物、特に、Sf2l細胞溶解物と、網状赤血球溶解物と、ケラチノサイト溶解物と、CHO細胞、HeLa細胞、ハイブリドーマ細胞又は培養リンパ腫細胞からの細胞抽出物と、を含む群から選択される、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の方法。
(付記9)
前記細胞溶解物は、膜小胞を含む、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の方法。
(付記10)
前記膜小胞は、前記細胞溶解物として、同じ細胞株に由来する、
ことを特徴とする付記9に記載の方法。
(付記11)
透析膜により分離された少なくとも2つのコンパートメントを備える装置において行われ、
前記翻訳反応は、少なくとも1つの第一のコンパートメント、反応コンパートメントにおいて行われ、前記翻訳反応の間、i)反応物は、前記透析膜を通って、少なくとも1つのさらなるコンパートメント、給排コンパートメントから、反応コンパートメントに拡散し、ii)反応生成物は、前記透析膜を通って、反応コンパートメントから給排コンパートメントに拡散する、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つ項に記載の方法。
(付記12)
最大タンパク質収量は、少なくとも30μg/mL、好ましくは少なくとも50μg/mL、100μg/mL又は150μg/mLである、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つに記載の方法。
(付記13)
真核細胞溶解物を用いたタンパク質の合成のための無細胞の一連のプロセスにおけるタンパク質収量を増加させるためのカスパーゼ阻害剤の使用。
(付記14)
反応培地のμg/mLで測定された最大タンパク質収量は、少なくとも2倍、特に少なくとも5または10倍増加する、
ことを特徴とする付記13に記載の使用。
(付記15)
真核細胞溶解物を用いたタンパク質の合成のための無細胞の方法における合成されたタンパク質の安定性を増加させるカスパーゼ阻害剤の使用。
(付記16)
タンパク質合成のための無細胞の方法は、少なくとも下記の工程:
a)標的タンパク質をコードする核酸鋳型、膜小胞及びカスパーゼ阻害剤を含有する細胞溶解物を含む反応媒体においてインビトロ翻訳反応によって標的タンパク質を合成する工程、
b)媒体から合成された標的タンパク質を含む膜小胞を分離する工程、
c)標的タンパク質をコードする核酸鋳型、膜小胞及びカスパーゼ阻害剤を含有しない細胞溶解物を含む第二の反応媒体に、分離された膜小胞を移し、第二の反応媒体においてカスパーゼ阻害剤の存在下、インビトロ翻訳を行い、第二の反応媒体から、増加した量の合成された標的タンパク質を含む膜小胞を分離する工程であって、1回又は複数回繰り返され得る工程、
を含む、
ことを特徴とする付記15に記載の使用。
(付記17)
インビトロ翻訳反応が行われ、少なくとも1つの真核細胞溶解物と、ポリメラーゼと、核酸鋳型と、アミノ酸と、ATP、GPT等といった高エネルギー物質と、を含む反応混合物を含む少なくとも1つの反応コンパートメント;及び
前記反応コンパートメントから半透過性透析膜によって分離され、アミノ酸、高エネルギー物質及び反応副産物を含む少なくとも1つの給排コンパートメント、
の少なくとも2つの異なる分離したコンパートメントを含み、
少なくとも前記反応コンパートメントはまた、カスパーゼ阻害剤を含む、
ことを特徴とする無細胞のタンパク質合成を行うための装置。
(付記18)
前記カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に対する基質として機能するアミノ酸又はペプチド配列と、カスパーゼ、特に1又は2以上のカスパーゼタイプ1−14に不可逆的又は可逆的に結合する官能基と、を含むアミノ酸誘導体又はペプチド誘導体である、
ことを特徴とする付記13乃至16のいずれか1つに記載の使用又は付記17に記載の装置。
(付記19)
前記カスパーゼ阻害剤は、アミノ酸のアスパラギン酸塩を含む、アミノ酸のアスパラギン酸塩又はペプチド配列を含む、
ことを特徴とする付記18に記載の使用又は装置。
(付記20)
前記アミノ酸又はペプチド配列は、アスパラギン酸塩、バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(VAD)、アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸塩(DEVD)およびチロシン−バリン−アラニン−アスパラギン酸塩(YVAD)からなる群より選択される、
ことを特徴とする付記19に記載の使用又は装置。
(付記21)
前記カスパーゼ阻害剤は、官能基として、メチルケトン基、例えば、カスパーゼタイプ1−14のすべてに不可逆的に結合するフルオロメチルケトン(FMK)又はクロロメチルケトン(CMK)を含む、
ことを特徴とする付記18乃至20のいずれか1つに記載の使用又は装置。
(付記22)
前記カスパーゼ阻害剤は、少なくとも1つのアルデヒド基に結合したペプチドを表す、
ことを特徴とする付記18乃至20のいずれか1つに記載の使用又は装置。
(付記23)
前記カスパーゼ阻害剤は、反応混合物において、20μMから100μM、好ましくは25μMから50μM、特に好ましくは約30μMの濃度で存在する、
ことを特徴とする付記18乃至22のいずれか1つに記載の使用又は装置。