特許第6574763号(P6574763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574763
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】熱交換器コア
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/30 20060101AFI20190902BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F28F1/30 D
   F28D1/053 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-523601(P2016-523601)
(86)(22)【出願日】2015年5月25日
(86)【国際出願番号】JP2015065704
(87)【国際公開番号】WO2015182782
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-109171(P2014-109171)
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】文後 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】坂井 耐事
(72)【発明者】
【氏名】植木 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】前川 一夫
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−050095(JP,A)
【文献】 特開昭63−131993(JP,A)
【文献】 特開2006−266574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00
F28D 1/053
F28F 1/30 〜 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通するフィンの幅方向に並列して、全てのルーバが同一方向に傾斜して切り起こし加工された多数のコルゲートフィンと、多数の偏平チューブとが交互に並列した熱交換器コアにおいて、
そのコアの両端には、前記偏平チューブの両端が貫通された一対のタンクが配置されており、
一対のタンク間の離間距離(一対のタンク間の空間部距離)である、コアの高さH(mm)と、流体の主たる流れ方向のルーバ切り起こし幅W(mm)と、ルーバ切り起こし角度θとが、
ルーバ切り起こし幅Wが6mm〜46mm、
ルーバ切り起こし角度θが20度〜35度の範囲で、
下記不等式(1)を満たすように設定されたことを特徴とする熱交換器コア。
H>Qup/(Qup−1)×ΔH (1)
Qup=Qup(W,θ)=α(W)+β(W,θ)+1 (2)
α(W)=η/(W−η) (3)
β(W,θ)=ξ/(W・tan2θ−ξ) (4)
ΔH=ΔH(W,θ)=j・W(sinθ+k・sinθ) (5)
η=0.3553(mm)
ξ=0.5447(mm)
j=0.1419
k=4.2789
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートフィン型熱交換器であって、そのフィンに形成されたルーバの向きを一方向のみに切り起こし形成したものに関する。
【背景技術】
【0002】
コルゲートフィン型熱交換器は、偏平チューブとコルゲートフィンとを交互に多数並列し、チューブ内に第1流体を流通し、チューブの外面側及びコルゲートフィンに第2流体を流通させるものである。
第2流体は、主として空気等の気体である。
このようなコルゲートフィン型熱交換器において、現在実用されているフィンは、中間に転向ルーバを配置し、その両側に傾斜の向きを、互いに逆向きにしたルーバを切り起こしたものである。
次に、ルーバの向きを一方向のみに限定したコルゲートフィン型熱交換器が下記特許文献1として提案されている。
この熱交換器は、空気流の流入方向に対して、鋭角の角度の一方向ルーバがそのコア幅の全長に渡って切り起こし形成されたものである。この発明によれば、コア幅全長に渡って一方向に切り起こしたフィンでは、そのコアの上端部及び下端部の空気流が淀むことが指摘されている。
そこで、この発明は、コアの上下に配置されたタンクと、フィンの端部との間に空隙部を形成するスペーサ部材を配置する。すると、その空隙部の存在によってフィン内の空気流の淀みがなくなり、通気抵抗を大幅に低減させることができると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−266574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の流体解析や実験等の検討によれば、一方向に切り起こされたコルゲートフィンからなるコアにおいては、そのコア高さ、コア幅及び切り起こし角度を調整して初めて、従来型フィンからなるコアよりも熱交換性能が向上することが明らかになった。
本発明は係る知見に基づいて開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、流体が流通するフィンの幅方向に並列して、全てのルーバが同一方向に傾斜して切り起こし加工された多数のコルゲートフィン(以下、一方向フィン)と、多数の偏平チューブとが交互に並列した熱交換器コアにおいて、
そのコアの両端には、前記偏平チューブの両端が貫通された一対のタンクが配置されており、
一対のタンク間の離間距離(一対のタンク間の空間部距離)である、コアの高さH(mm)と、流体の主たる流れ方向のルーバ切り起こし幅W(mm)と、ルーバ切り起こし角度θとが、
ルーバ切り起こし幅Wが6mm〜46mm、
ルーバ切り起こし角度θが20度〜35度の範囲で、
下記不等式(1)を満たすように設定されたことを特徴とする熱交換器コアである。
H>Qup/(Qup−1)×ΔH (1)
Qup=Qup(W,θ)=α(W)+β(W,θ)+1 (2)
α(W)=η/(W−η) (3)
β(W,θ)=ξ/(W・tan2θ−ξ) (4)
ΔH=ΔH(W,θ)=j・W(sinθ+k・sinθ) (5)
η=0.3553(mm)
ξ=0.5447(mm)
j=0.1419
k=4.2789
【発明の効果】
【0006】
本発明は、コアの高さH(mm)と、流体の主たる流れ方向のルーバ切り起こし幅W(mm)およびルーバ切り起こし角度θとが、請求項1の不等式(1)を満たすものであり、
コアの高さHが、H>Qup/(Qup−1)×ΔHであるため、従来型フィンに比べて熱交換性能が高いものとなる。
具体的には、図6のW−H曲線で、各ルーバの切り起こし角度θにおいて、プロットされた各点を結ぶ曲線を超える範囲のコアHの高さを有する。なお、ここにルーバ切り起こし幅Wは、図3において、一方向ルーバが切り起こされた範囲をいう。
効果が得られる理由を以下に記す。
一方向フィンは、従来の転向ルーバフィンに対してデメリットおよびメリットがあり、
デメリットは、通風低下領域(伝熱低下領域)の増加ΔHであり、メリットは通風部における伝熱の向上(比)Qupである。
ここで、メリットがデメリットを上回るための条件は、
Qup×(H−ΔH)/H>1 であり、
この不等式を変形すると、
H>Qup/(Qup−1)×ΔH となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明のフィンによる空気流と、従来型熱交換器のフィンによる空気流を比較する説明図である。
図2(A)は本発明の空気流の流通状態を示す説明図、(B)は従来型熱交換器の空気流の流通状態を示す説明図である。
図3(A)は本発明の熱交換器コアのルーバの切り起こし説明図、(B)は従来型熱交換器コアのルーバの切り起こし説明図である。
図4は横軸にルーバ切り起こし幅Wをとり、本発明のコアと従来型コアにおける主たる伝熱領域(通風部)の熱伝達率の比を縦軸にとった実験データである。
図5は横軸にルーバ切り起こし幅Wをとり、従来型コアに対する本発明のコアの伝熱低下領域(通風低下領域)の増分ΔHを縦軸に表したグラフである。
図6は横軸にルーバ切り起こし幅Wをとり、従来型コアに対して、本発明のコアの効果のあるコア高さの下限を縦軸に表したグラフである。
図7は横軸にルーバ切り起こし幅Wをとり、本発明の熱交換器コアと従来型熱交換器コアとの熱交換量の比率を縦軸にとったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1図3は、本発明の熱交換器コアと、現在実用化されている従来型熱交換器コアとの比較を夫々表す。
図1はその熱交換器コアの縦断面説明図である。また、図2は(A)に本発明のルーバによる空気の流通路を示し、(B)に従来型コアの空気の流通路を示す。そして図3(A)(B)は、夫々の各ルーバの切り起こし状態を示す説明図である。
本発明の熱交換器コアは、偏平チューブとコルゲートフィンとを交互に並列してコアを形成する。そして、この例では上下に一対のタンク3を配置し、そのタンク3に偏平チューブの両端が貫通する。図1において、コア高さHは、上下一対のタンク3間の離間距離(一対のタンク3間の空間部高さ)である。そのコアのルーバ切り起こし幅Wは、図3のコア幅よりもフィンの平坦部長さ分、短い。
この例においては、図2(A),図3(A)に示す如く、コルゲートフィンに一方向フィンのみが傾斜してルーバ切り起こし幅Wの範囲に等間隔に切り起こされている。またルーバ切り起こし幅Wの両側には、平坦部6dが存在し、その平坦部6dには半ルーバ6cが形成されている。この半ルーバ6cの幅は、それ以外のルーバ6の幅の半分である。
そして図2(A)の如く、一方向フィン7に空気流1が流入すると、その一方向フィンの各ルーバ6に案内されて、その一方向の流路4が上流側から下流側に斜めの帯状に形成される。
これに対して、従来型フィン8は、図2(B),図3(B)に示す如く、フィンの幅方向中央に転向ルーバ6bを有し、その両側にルーバの向きを変えたルーバ6aが並列されたものである。その転向ルーバ6bの両側には半ルーバが切り起こされている。
そして、従来型フィン8に空気流1が流入すると、図2(B)の如く、従来型フィンの流路5が山形に形成される。
このように本発明の対象である一方向フィン7と、従来型フィン8はその流路が、それぞれ一方向フィンの流路4及び従来型フィンの流路5の如く全く異なる。
それは、本発明の一方向フィン7と従来型フィン8との、構造状の違いに基づく。そして、次の差異が生じる。
先ず、一方向フィン7では従来型フィン8に比べてより多くのルーバ6の切り起こしが可能となる。これは、従来型フィン8の転向ルーバ6bに代えて、一方向ルーバを切り起こすことができるからである。その点で本発明のコアは、熱伝達率が向上する。
次に、転向ルーバ6bによって空気流1を完全に転向させることは困難であり、従来型フィン8では転向部下流直後に滞留域が生じていたが、本発明においてはそれが無くなる。この点でも熱伝達率が向上する。
図1において、左側から流入する空気流1は、一方向フィン7では、その実効コア高さHの範囲で熱交換器コア2内を斜めに流通する。
これに対し、従来型フィン8の場合は、従来型の実効コア高さHの範囲で熱交換器コア2内で山形の点線の如く流通する。図1から明らかなように、本発明の一方向フィンの実効コア高さHよりも、従来型の実効コア高さHの方が高い。そのため同図において、本発明では、一方向フィンとすることで、通風低下領域の増加ΔHが生じる。そして、このΔHの領域において熱伝達率は低下する。
そこで、先ず、本発明者は図1における一方向フィンの実効コア高さHにおける熱伝達率を、従来型フィン8に対する比として実験的に求めた。図4がその実験データであり、横軸にルーバ切り起こし幅Wをとり、縦軸に熱伝達率の比率をとる。そして、ルーバ角度、20度,30度,40度において夫々実験を試みた。
図4から明らかなように、何れの角度でも実効コア高さHの範囲においては、従来型ルーバの熱伝達率よりも高い熱伝達率の比率を示す。
また、図7はルーバ切り起こし幅Wとコア全体の熱交換量の比率を示したものである。
これらのデータを回帰分析すると、
Qup=Qup(W,θ)=α(W)+β(W,θ)+1を得る。
ここに、α(W)=η/(W−η)であり、η=0.3553(mm)である。そして、β(W,θ)=ξ/(W・tan2θ−ξ)であり、ξ=0.5447(mm)である。
α(W)はルーバ枚数増加の効果を、β(W,θ)は転向部下流滞留域消滅の効果を表している。
また、Qup=(通風部における一方向フィン1山あたりの熱交換量)/(通風部における従来型フィン1山あたりの熱交換量)である。
次に、本発明者は図1に示す如く、一方向フィンとすることにより、従来型の実効高さHに対してロスする領域ΔHを実験的に確認した。それが、図5である。図5において、横軸はコアのルーバ切り起こし幅Wであり、縦軸は一方向ルーバとしたことによる伝熱低下領域の増分ΔHであり、夫々単位はmmである。
そして、数値計算による流線を元に、各ルーバ角度θにおいて回帰分析をし、回帰式(5)
ΔH=ΔH(W,θ)=j・W・(sinθ+k・sinθ)
(j=0.1419, k=4.2789)
を得た。
ここで、一方向ルーバのメリットとデメリットとを従来型フィンと比較考慮すると、その効果の表れる範囲は、Qup×(H−ΔH)/H>1である。
そして、この式を変形すると、H>Qup/(Qup−1)×ΔHとなる。
図6に、この不等式から求めた、一方向ルーバの効果があるコア高さの下限(曲線a3〜c3)を示した。
一例として、ルーバ角度20度の場合は、ルーバ切り起こし幅Wに対するその下限の値はa3の曲線上にある。
この下限値以上のコア高さであれば、従来型のコアよりも高い熱交換性能を得ることができる。
ルーバ角度30度および40度の場合についても同様である。
従って、一方向ルーバの熱交換器コアは、そのHとWとθとを式(1)H>Qup/(Qup−1)×ΔH を満たすように設定すればよい。
なお、本発明は、ルーバ切り起こし幅Wが6〜46mm,ルーバ切り起こし角度θが20度〜35度,ルーバピッチが0.5〜1.5mm,フィンピッチが2〜5mmであって、流体を空気流とし、そのコア前面流速を2〜8m/sとした検討から得られたものである。
そして、より好ましい適用条件は、ルーバ切り起こし幅Wが6〜26mm,ルーバ切り起こし角度θが20度〜30度,ルーバピッチが0.5〜1.0mm,フィンピッチが2〜3mmであって、流体は空気流であり、そのコア前面流速は4〜8m/sである。
【符号の説明】
【0009】
1 空気流
1a 空気流
2 熱交換器コア
3 タンク
4 一方向フィンの流路
5 従来型フィンの流路
6 ルーバ
6a ルーバ
6b 転向ルーバ
6c 半ルーバ
6d 平坦部
7 一方向フィン
8 従来型フィン
H コア高さ
W ルーバ切り起こし幅
θ ルーバ切り起こし角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7