特許第6574766号(P6574766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574766スロットルバルブ内の粉体及び堆積物の制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574766
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】スロットルバルブ内の粉体及び堆積物の制御
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20190902BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20190902BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/44 E
   F16K51/00 A
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-526837(P2016-526837)
(86)(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公表番号】特表2016-538719(P2016-538719A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014064268
(87)【国際公開番号】WO2015069848
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年10月26日
(31)【優先権主張番号】14/075,163
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505477121
【氏名又は名称】エムケイエス インストゥルメンツ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】ジーユー、ユーファン
(72)【発明者】
【氏名】グラウト、マシュー シー.
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−219971(JP,A)
【文献】 特開昭49−004825(JP,A)
【文献】 特開平09−144905(JP,A)
【文献】 特開昭54−001430(JP,A)
【文献】 米国特許第03570510(US,A)
【文献】 特公昭46−020776(JP,B1)
【文献】 特表2008−519212(JP,A)
【文献】 特開2000−058543(JP,A)
【文献】 特開2009−147379(JP,A)
【文献】 特開2008−227013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面(31)と、弁体(32)内の流路(30)の入口端(20)と出口端(22)との間に位置する閉弁部材(14)と、流路(30)の入口端(20)の周りで弁体(32)の中に延びる環状路(60)とにより形成された流路(30)とを有する弁体(32)と、
フレア状入口端部(64)を備えた円筒状延在部(70)と、環状の出口端(68)と、フレア状入口端部(64)の周りで径方向外側に延びる環状リムフランジ(62)とを有し、円筒状延在部(70)の直径が弁体(32)の内壁面(31)よりも小さいノズルインサート(50)と、
を備え、
環状路(60)を含む環状プレナム(46)は、ノズルインサート(50)が流路(30)の入口端(20)に挿入されてノズルインサート(50)のリムフランジ(62)が弁体(32)に隣接するときに環状路(60)を流路(30)から分離するノズルインサート(50)によって、流路(30)の周りに形成され、ノズルインサート(50)の環状の出口端(68)に環状プレナム(46)と接続された環状オリフィス(52)が形成され、
弁体(32)における補助ポート(44)は、流体が流れるように環状プレナム(46)に対して接続されている弁装置。
【請求項2】
ノズルインサート(50)の円筒状延在部(70)が流路(30)内で環状路(60)よりも延在して、環状プレナム(46)から環状オリフィス(52)に延在する環状ノズル(51)を内壁面(31)と円筒状延在部(70)との間に形成する請求項に記載の弁装置。
【請求項3】
弁体(32)は流路(30)の入口端(20)の周りに環状の接続フランジ(66)を備え、ノズルインサート(50)のフレア状入口端部(64)をとり囲む環状のリムフランジ(62)はノズルインサート(50)が流路(30)の入口端(20)に挿入されたとき環状の接続フランジ(66)に隣接する請求項に記載の弁装置。
【請求項4】
リムフランジに装着された環状シールを含む請求項に記載の弁装置。
【請求項5】
弁体の入口ポートと出口ポートとの間の弁体の内壁面によって規定される流路を有するとともに長軸に沿って延在する弁体と、流路内にある閉弁部材と、を有する弁内の粉体及び固体堆積物を制御する方法であって、
内壁面に沿って、かつ閉弁部材に向かって、長軸と平行かつ同心にクリーニングガスの少なくとも1つの環状流を流室内へ指向させることを含み、少なくとも1つの環状流は、少なくとも1つの環状プレナムを通してクリーニングガスを流すことで形成され、少なくとも1つの環状プレナムは、流路を取り囲み、流路の周りで弁体の端部内に延在する環状路を備え、少なくとも1つの環状ノズルに向かってノズルインサートにより囲まれ、かつノズルインサートにより囲まれて閉弁部材の片側で弁体の内壁面に隣接して位置付けられている方法。
【請求項6】
環状ノズルにクリーニングガスを流して、閉弁部材の上流に位置付けられた環状オリフィスから流出させることを含む請求項に記載の方法。
【請求項7】
環状ノズルにクリーニングガスを流して、閉弁部材の下流に位置付けられた環状オリフィスから流出させることを含む請求項に記載の方法。
【請求項8】
環状ノズル内に狭流状態を作ることを含む請求項に記載の方法。
【請求項9】
閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの2つの環状流を対向方向に、互いに向かって、かつ内壁面に沿って指向させることを含む請求項に記載の方法。
【請求項10】
クリーニングガスが未反応ガスである請求項に記載の方法。
【請求項11】
クリーニングガスが反応ガスである請求項に記載の方法。
【請求項12】
内壁面に沿ってかつ閉弁部材に向かってクリーニングガスの少なくとも1つの環状流を流室内へ指向させながら、流路内で閉弁部材を開位置と閉位置との間で前後に動かすことを含む請求項に記載の方法。
【請求項13】
弁体の入口端における入口ポートと弁体の出口端における出口ポートとの間の弁体の内壁面によって規定される流路を有する弁体と、流路内にある閉弁部材と、を有する弁装置において、
閉弁部材の上流の内壁面に隣接して位置付けられ、かつ内壁面に沿って閉弁部材に指向された上流環状ノズルに対して、クリーニングガスの第一部分を分配する上流環状プレナムを含み、上流環状プレナムは、流路の周りで弁体の入口端内に延在する環状路を備えるとともに、環状路が、上流環状プレナムを形成するように流路の周りで上流ノズルインサートに囲まれており、
閉弁部材の下流の内壁面に隣接して位置付けられ、かつ内壁面に沿って閉弁部材に指向された下流環状ノズルに対して、クリーニングガスの第二部分を分配する下流環状プレナムを含み、下流環状プレナムは、流路の周りで弁体の出口端内に延在する環状路を備えるとともに、環状路が、下流環状プレナムを形成するように流路の周りで下流ノズルインサートに囲まれている弁装置。
【請求項14】
上流環状ノズルは、上流環状プレナムと上流環状オリフィスとの間で延在し、上流環状プレナムから上流環状オリフィスにクリーニングガスの第一部分を流し、
下流環状ノズルは、下流環状プレナムと下流環状ノズルとの間で延在し、下流環状プレナムから下流環状オリフィスにクリーニングガスの第二部分を流す請求項13に記載の弁装置。
【請求項15】
上流環状ノズルは、弁が稼働する真空パラメータ及びクリーニングガスが供給される圧力パラメータにおいて上流環状ノズル内に狭流状態を作りだす広さの断面積を有し、
下流環状ノズルは、弁が稼働する真空パラメータ及びクリーニングガスが供給される圧力パラメータにおいて下流環状ノズル内に狭流状態を作りだす広さの断面積を有する請求項14に記載の弁装置。
【請求項16】
弁体の入口端における入口ポートと弁体の出口端における出口ポートとの間の弁体の内壁面によって規定される流路を有する弁体と、流路内にある閉弁部材と、を有するスロットルバルブ内の粉体及び固体堆積物を制御する方法であって、
上流環状プレナム内にクリーニングガスの第一部分を流すことを含み、上流環状プレナムは、弁体の入口端内に延在する環状路を備えるとともに、流路の周りで上流ノズルインサートに囲まれており、上流ノズルインサートは、入口端から流路内に延在して閉弁部材の上流の内壁面に隣接して位置付けられた上流環状ノズルを形成し、上流環状プレナムは内壁面に沿って閉弁部材に向かってクリーニングガスの第一部分を分配し、
下流環状プレナム内にクリーニングガスの第二部分を流すことを含み、下流環状プレナムは、弁体の出口端内に延在する環状路を備えるとともに、流路の周りで下流ノズルインサートに囲まれており、下流ノズルインサートは、出口端から流路内に延在して閉弁部材の下流の内壁面に隣接して位置付けられた下流環状ノズルを形成し、下流環状プレナムは内壁面に沿って閉弁部材に向かってクリーニングガスの第二部分を分配する方法。
【請求項17】
上流環状プレナムから上流環状ノズルを介して、閉弁部材に向かって指向された上流ノズルインサートの端部により形成された上流環状オリフィスの外にクリーニングガスの第一部分を流すことと、
下流環状プレナムから下流環状ノズルを介して、閉弁部材に向かって指向された下流ノズルインサートの端部により形成された下流環状オリフィスの外にクリーニングガスの第二部分を流すこととを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上流環状ノズル内に狭流状態を作ることと、下流環状ノズル内に狭流状態を作ることと、を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの第一部分及び第二部分を対向方向に、互いに向かって、内壁面に沿って、かつ間欠的に指向させることを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの第一部分及び第二部分を対向方向に、互いに向かって、内壁面に沿って、かつパルス状に流れるように指向させることを含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの第一部分及び第二部分を対向方向に、互いに向かって、内壁面に沿って、かつ定常的に流れるように指向させることを含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
クリーニングガスが未反応ガスである請求項17に記載の方法。
【請求項23】
クリーニングガスが反応ガスである請求項17に記載の方法。
【請求項24】
閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの2つの環状流を対向方向に、互いに向かって、かつ内壁面に沿って指向させながら、流路内で閉弁部材を開位置と閉位置との間で前後に動かすことを含む請求項17に記載の方法。
【請求項25】
排出ガス中に粉末粒子を生成するCVDシステムの真空ポンプライン内の排出ガスの流れを調整するためのスロットルバルブ装置であって、
弁体の内壁面によって規定され、長軸に沿って入口ポートから出口ポートに延在する流路を有する弁体と、
入口ポートと出口ポートとの間の流路内に位置付けられた調整閉弁部材と、
調整閉弁部材に面して、内壁面に隣接する環状オリフィスと、
弁体内に位置し、流体が流れるように環状オリフィスに対して接続された環状プレナムと、
環状プレナムと環状オリフィスとの間に位置する環状ノズルと、
流体が流れるように環状プレナムに対して接続され、クリーニングガスの供給源と接続するよう適合された弁体内の補助ダクトと、
を備え、
環状ノズルが、環状オリフィスを介して長軸と平行でかつ同心である弁体の内壁面に沿う流路内に調整閉弁部材に向けてクリーニングガスの環状流を注入するように配向され、環状プレナムが、弁体の入口端内に延在する環状路を備えるとともに、環状路が、環状プレナムを形成するように流路の周りでノズルインサートに囲まれているスロットルバルブ装置。
【請求項26】
補助ポート内へのクリーニングガスの流れを制御するために、補助ポート接続されたクリーニングガス供給弁を含む請求項25に記載のスロットルバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応室からの排ガス、より詳細には、凝縮性成分を含み、粉末粒子が充満している排ガスの流れを調整するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業プロセスでは、固体粉状の副生成物を形成すると共に、そのプロセスの排出物を流出させ、かつ、その流出を制御している。例えば、多種多様な化学蒸着(CVD)プロセスにおいて、気体状の化学物質/前駆物質が真空反応室内に供給され、そこで反応して、化合物又は単体の材料から成る固体状の膜又は被膜を基板上に堆積させる。このようなCVDプロセスには、固体粉状の副生成物が生成するものもあり、このような粉状副生成物の排出が、排出パイプ(真空CVDシステムにおいてしばしば真空ポンプラインと呼ばれ、時にフォアラインと呼ばれる)、弁、真空ポンプ、反応室より下流に位置するその他の流れ調整部品及び器材において問題となり得る。特に問題となるのは、CVDプロセスにおいて、処理室の真空状態が比較的低く、即ち、処理圧力が比較的高く(例えば、10〜800torrの範囲)、気体分子間の平均自由行程が短いため気相反応が大半を占める場合である。他の蒸着プロセスでは、蒸着室から未反応ガスを排出し、次いで、下流において反応させて、真空ポンプライン、弁、ポンプ、及びその他の部品又は器材内に固体又は液体状の蓄積物を形成することもある。
【0003】
多種多様な方法及び器材が、下流排出部品におけるこのような固体状蓄積物の凝縮又は化学反応を防止又は少なくとも最小限に抑えるために開発されており、程度の差はあるものの効果を奏している。例えば、1998年2月3日に発行された特許文献1に図示・記載されているようなパイプヒーターを使用して、真空ポンプラインやその他のパイプにおける温度をより高温に維持し、凝縮を防止又は最小限化することが可能である。特別な形態のこのようなヒーターを使用して、例えば、2012年6月12日に発行された特許文献2の遮断弁に例示されるような、弁、真空ポンプライン、及びその他の器材を少なくとも部分的に加熱することができる。1998年10月27日に発行された特許文献3に図示・記載されるアセンブリのようなノズルアセンブリを使用して、真空ポンプラインやその他のパイプの内面に沿って不活性ガス又は未反応ガスから成る層流を生じさせて、気体状の化学物質の表面反応によりそのパイプの内面に固体蓄積物が形成されることを防止し得る。このような凝縮性ガス又は反応ガスを排出物の流れから除去するための様々な捕捉器、反応器、フィルター、及びその他の器材が開発されている。これらの例として、1998年10月13日に発行された特許文献4、2001年3月6日に発行された特許文献5、2002年12月3日に発行された特許文献6、及び2008年11月25日に発行された特許文献7が挙げられる。
【0004】
上述の関連技術の例及びこれらに関する限定は、説明を意図するものであり、他の例を排除するものではない。関連技術のその他の限定及び例は、当業者であれば明細書を読み、図を検討することにより明らかとなろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,714,738号明細書
【特許文献2】米国特許第8,196,893号明細書
【特許文献3】米国特許第5,827,370号明細書
【特許文献4】米国特許第5,820,641号明細書
【特許文献5】米国特許第6,197,119号明細書
【特許文献6】米国特許第6,488,745号明細書
【特許文献7】米国特許第7,455,720号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、スロットルバルブ内の粉体及び堆積物を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、実施形態及びその態様を、システム、用具及び方法と共に記述し説明するが、これらは、範囲を限定するものではなく例として説明することを意味している。様々な実施形態及び実施例において、前述の1つ以上の問題が緩和又は解消される。他の実施形態においては他の改良及び利点を対象としている。
【0008】
一つの弁装置は、流路を有する弁体であって、この流路は弁体の入口ポートと出口ポートとの間の弁体の内壁面によって規定される、弁体と、流路内にある閉弁部材と、クリーニングガスの環状流を内壁面に沿って閉弁部材に指向させる環状オリフィスとを有する。1つの実施形態において、2つの環状オリフィスによって、閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの2つの環状流を対向方向に、互いに向かって、かつ、内壁面に沿って指向する。他の例示された実施形態において、このような弁装置は、閉弁部材の上流の内壁面に隣接して位置付けられかつ内壁面に沿って閉弁部材に指向された上流環状ノズルと、閉弁部材の下流の内壁面に隣接して位置付けられかつ内壁面に沿って閉弁部材に指向された下流環状ノズルとを含んでもよい。他の例示された実施形態において、このような弁装置は、クリーニングガスの第一部分を上流環状ノズルに分配する上流環状プレナムと、クリーニングガスの第二部分を下流環状ノズルに分配する下流環状プレナムとを含んでもよい。他の例示された実施形態において、このような弁装置は、上流環状プレナムと上流環状オリフィスとの間で延在し、上流環状プレナムから上流環状オリフィスにクリーニングガスの第一部分を流す上流環状ノズルと、下流環状プレナムと下流環状ノズルとの間で延在し、下流環状プレナムから下流環状オリフィスにクリーニングガスの第二部分を流す下流環状ノズルとを含んでもよい。他の例示された実施形態において、上流環状ノズルは狭流状態が作られるほどの広さの断面積を有してもよく、下流環状ノズルは狭流状態が作られるほどの広さの断面積を有してもよい。
【0009】
流路を有する弁体であって、この流路は、弁体の入口ポートと出口ポートとの間の弁体の内壁面によって規定される、弁体と、流路内にある閉弁部材とを有する弁内の粉体又は固体堆積物を制御する方法は、内壁面に沿ってかつ閉弁部材に向かってクリーニングガスの少なくとも1つの環状流を指向させることを含んでもよい。1つの例示された方法において、このような弁内の粉体又は固体堆積物の制御には、閉弁部材の両側からそれぞれクリーニングガスの2つの環状流を対向方向に、互いに向かって、かつ、内壁面に沿って指向させることを含んでもよい。他の例示された実施形態において、方法は、閉弁部材の上流又は閉弁部材の下流又は両方の内壁面に隣接して位置付けられかつ内壁面に沿って閉弁部材に指向された少なくとも1つの環状ノズルからクリーニングガスを流すことによって、クリーニングガスの1つ又は2つの環状流を流室内に指向させることを含んでもよい。他の実施形態において、少なくとも1つの環状ノズル内に狭流状態を作ることを含んでもよい。このようなクリーニングガスの流室内への流れ方の例として、間欠的、周期的、定常的、他の流れタイミング、又は所望の特徴が挙げられる。クリーニングガスは、反応しないものでも反応するものでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法及び装置によれば、スロットルバルブ内の粉体及び堆積物を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】化学蒸着システムにおけるスロットルバルブの粉体及び堆積物を制御する要素の例示された適用例を説明する概略フロー図である。
図2】粉体を制御するように構成された例示のバタフライ型スロットルバルブの等角図である。
図3図2に例示されたスロットルバルブの正面図である。
図4図2に例示されたスロットルバルブの側面図である。
図5図4の断面線5−5に沿った、図2に例示されたスロットルバルブの拡大断面図である。
図6図3の断面線6−6に沿った、図2に例示されたスロットルバルブの拡大断面図である。
図7】例示されたほぼ閉じた調整状態の閉弁部材を説明する図6に類似の例示されたスロットルバルブの拡大断面図である。
図8図2〜6に例示されたスロットルバルブのノズル挿入部品の別の拡大断面図である。
図9図2〜7に例示されたスロットルバルブの部品分解図である。
図10図5に類似するが、堆積物及び粉体を制御するように構成された他の例示されたスロットルバルブの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述の例示の態様、実施形態、及び実施例に加えて、更なる態様、実施形態、及び実施例が、図面に精通し以下の記載を検討した当業者であれば明らかとなろう。
【0013】
本明細書に含まれ明細書の一部を成す添付図面により、幾つかの、唯一でも限定もされない例示された実施形態及び/又は要素を説明する。本明細書に開示した実施形態及び図面は、限定ではなく説明するものと見做されることを意図している。
【0014】
図1は、粉体制御要素を有する例示された化学蒸着(CVD)システム100を概略的に示す。この粉体制御要素は、粉体蓄積物を減じ、CVDシステム100の真空ポンプライン104のスロットルバルブ10の妨害物を減じるものである。例示されたCVDシステム100の部品、機能的要素、及び操作を以下詳細に説明するが、これらの記載及びその記載を説明するために使用される添付図面は、本発明の限定ではなく例示を意図することを理解されたい。それ故、本発明を限定又は制限することを意図することなく、このようなCVDシステム100は、反応室102を含んでもよい。反応室102では、供給ガスとも呼ばれる反応ガスが反応して、反応室102に位置付けられた基板108上に所望の薄膜106が堆積する。供給ガスとも呼ばれる反応ガスを、このようなガスの容器(例えば、容器FG1、FG2、又はFG3)から、反応室102内に同時に又は順次、所望の特定薄膜106生成物及び使用される特定のCVDプロセスに応じて流してもよい。幾つかのプロセスにおいて、サイクルの最後に反応室102から反応ガスをパージするための不活性パージガス、又は反応ガスを希釈するための不活性キャリアガスを、容器(例えば、容器PG)から反応室102を通過するように流出させてもよい。これらの容器に、適切な遮断弁110及び圧力レギュレーター112を設けてもよく、質量流量コントロ−ラー114を使用して、特に供給ガスの反応プロセスの品質管理のために流量を制御してもよい。全てのCVDプロセスにおいて不可欠となるわけではないが、典型的に、空気、水蒸気、及びその他の混入物となりえるものを反応室102から排気し、CVD蒸着プロセスの間このような真空状態を維持して、反応物の純度及び得られる薄膜106生成物の純度を維持する。パイプ104によって反応室102に接続された真空ポンプラインとも呼ばれる真空ポンプ116は、CVDプロセスの間操作され、反応室102内の真空状態を維持する。このように反応室102を保つことが望まれる間、真空ポンプライン104及びその他の部品から空気、水、及びその他の混入物を排除する。概して、商業的製造CVDシステムにおいて、真空状態が可能な限り維持される。これは、混入によってコスト的に望ましくない結果が生じるためであり、また、CVDシステムを再び排気するには長時間要し、その間、製品の製造を進めることが出来ないからである。
【0015】
真空ポンプ116によって、反応室102内で反応により生じる気体状の副生成物が、真空ポンプライン104を介して反応室102から導かれる。真空ポンプライン104のスロットルバルブ10は、実行中の特定のCVDプロセスにおける所望真空範囲で反応室102内圧力を維持するために必要とされる十分な限度で開閉される。スロットルバルブ10のモータードライブ12に接続されたモーターコントロ−ラー126と圧力トランスデューサー124との間のフィードバックシステム122によって、反応室102内を所望の圧力に維持するように設定されたスロットルバルブ10の自動制御が容易とする。このようなフィードバックシステムは当該分野においてよく知られており、本明細書においてより詳細な説明は要さない。幾つかのCVDプロセスでは、真空ポンプライン104内の固体状の粉末粒子に悩まされる。真空ポンプライン104のスロットルバルブの前に粉体捕捉器又はフィルター128が設けられても、このような固体状の粉末粒子は、スロットルバルブを含む部品の操作妨害や詰まりの原因となり得る。これは、反応室102内を特定の所望の圧力Pに維持するためにスロットルバルブの開口は極めて狭くてもよいからである。しかしながら、本例示のスロットルバルブ10は、以下より詳細に説明するように、粉体制御要素を有し、このようなスロットルバルブ10の操作の妨害及び詰まりを制御かつ減じるように構成されている。
【0016】
限定ではなく一例として、CVDシステム100内のスロットルバルブ10の粉体制御システムを説明する。CVDシステム100は、特にCVD処理室の真空状態が比較的低い場合(即ち、圧力が比較的高い場合)に、スロットルバルブを妨害しかつ詰まらせる固体微粒子状の粉体副生成物を生成するという悪評がある。窒化ガリウム(GaN)から成る薄膜106を基板108上に堆積させるために使用される有機金属化学蒸着(MOCVD)プロセスは、高温・真空状態でトリメチルガリウム(「TMG」、Ga(CH33)をアンモニア(NH3)及び大量の水素と反応させることを含んでもよい。TMG及びアンモニアは、相互に反応して、周囲温度においても非常に早く中間付加物Ga(CH33・NH3を形成できる。1000〜1200℃前後の温度で加熱されるウェハー表面上でこの中間付加物が解離して結晶性GaN化合物が形成される。比較的遅い解離プロセスによって、GaN原子がほぼ完全に配列した高品質の結晶性GaNの形成が可能となる;しかしながら、中間付加物の解離により炭素粉体及び液体ガリウムが生じてしまう。Ga(CH33・NH3付加物の分解によって形成された炭素粉体に加えて、反応室内の液体ガリウム(Ga)の存在により(ガリウムは30〜2200℃において液体形状を保つ)、部分的にガリウムが充填されたカーボンナノチューブ粒子が、処理室内、特に若干温度の低い反応室の内壁に形成する恐れがある。これは、液体ガリウムが液滴状でカーボンナノチューブの形成を助ける触媒として作用するからである。真空ポンプ116によって、このような粉末粒子は他の排ガスと共に反応室102から真空ポンプライン104内に導かれる。
【0017】
更に、処理室内圧力Pが高いほど、処理室102内の気体分子間の平均自由行程は短くなり、これにより気体分子が衝突する可能性が高くなる。この結果、表面反応と比較して気相反応が起こり易くなる。従って、処理室の圧力Pが比較的高いと、例えば、10〜800torrであると、気相化学反応が通常大半を占めることになる。気相反応は、表面反応よりも多くの粉状の固体副生成物を生成する傾向があることから、処理室の圧力Pが比較的高くなると、より高真空でより低圧のプロセスよりも多くの粉状の固体副生成物を生成する傾向にある。これらの複雑で寄生的な反応全てにより、処理室内に非常に多くの副生成物が生成され、真空ポンプラインに沿って粉体が蓄積する結果となる。同時に、スロットルバルブ10は、典型的に、必要とされる調整された(throttled)ガス流出効果を得て所望の室内圧力を維持するためにそのスロットルモードにおいて極めて狭い開弁設定で操作されている。このようにスロットルバルブを狭く開口させる場合、粉体による妨害及び詰まりに特に影響を受けやすく、このように極めて狭い弁の開口からガスの流出が促進させると、顕著な乱流及び劇的なガス冷却効果が生じてしまう。このようなガス流出による乱流と冷却とが組み合わさった効果によって、しばしば、スロットルバルブ10の内部及びその周り、特にスロットルバルブの下流に粉体がさらに深刻な状態で蓄積してしまう。例示されたGaN MOCVDにおいては、排出物中の凝縮性液体ガリウム副生成物が固体状の炭素粉末粒子に結合し、互いにくっ付き、スロットルバルブ表面上並びに真空ポンプライン104内(特にスロットルバルブ10直ぐ後ろのガス温度がより低く、深刻な乱流によって粒子が衝突し付着する可能性が高くなった箇所)に蓄積してしまう。
【0018】
上述のように、典型的に、スロットルバルブの詰まりを防止するために、粉体粒子がスロットルバルブ10に達する前に粉体粒子を捕捉するフィルター128が、スロットルバルブ10の上流の真空ポンプライン104に設けられる。しかしながら、ガス温度が比較的高く(処理温度が高い)、ガス流量が多く、かつこのような例示のMOCVDプロセスにおいて生成される粉末粒子が小さいために、フィルター媒体の孔径が1〜4μmほどの小ささでも、非常に多くの粉体が依然としてこのようなフィルターを通過してしまう。
【0019】
図2〜7に概略的に例示されたスロットルバルブ10は、限定されないが、内壁面31に隣接する環状ノズル51、151図5及び6に最も良く示される)を含む粉体制御要素を有している。内壁面31は、弁10内で流体流路30を形成する。以下、特に図5及び6の断面図を参照して、粉体制御要素を有する例示のスロットルバルブ10の部品、機能的要素、及び操作をより詳細に説明するが、これらの図面及び記載は本発明の限定ではなく例示を意図することを理解されたい。例示されたスロットルバルブ10は、バタフライ弁と通常呼ばれるものの一種であり、流体流路30内で弁軸16(バタフライシャフトとも呼ばれる)に装着された円板(フラッパーとも呼ばれる)形状の調整閉弁部材14(略して「閉弁部材」とも呼ばれる)を有している。弁軸16は、弁体32内で軸17周りを回転する。軸17は概して、流路30の長軸18を横断する。もっとも、他の種類の閉弁部材を有する他の種類の弁も使用できる。
【0020】
図2〜4に概して例示されたスロットルバルブ10は、従来のモーターアクチュエータ12を有し、このモーターアクチュエータ12は、(図5及び6に示すような)全開位置と(図4に示すような)全閉位置との間に関する所望の設定においても、例示のバタフライ閉弁部品(例えば、図5及び6に最も良く示される回転可能なバタフライシャフト16に装着された閉弁部材14)のスロットル位置を調節する。例えば上で説明したような反応室102内の圧力Pを制御するための、自動的に使用される典型的なアセンブリにおけるスロットルバルブ10を主に説明するためにモーターアクチュエータ12を図2〜4に示すが、モーターアクチュエータ12は本発明に不可欠であるわけではない。スロットルバルブ10は、手動的に、空気式に、又は任意の他の簡便な態様で操作し得る。モーターアクチュエータ12は、図5〜8には図示されていない。
【0021】
概して、図2〜6に例示されたスロットルバルブ10は、入口ポート20及び出口ポート22を有するため、図5及び6の流れ矢印34、36で示されるように流体が概して長軸18に沿って弁体32内の流路30を流れることができる。勿論、当業者であれば、流体が流路30を対向方向に流れ得ることも理解されよう。図5及び6に示すフランジコネクタ25を有する従来の入口パイプ24及びフランジコネクタ27を有する従来の出口パイプ26の部分が、それぞれ従来のフランジクランプ40、42によって弁体32に接続されている。入口パイプ24及び出口パイプ26は、スロットルバルブ10の内外に流体を誘導するものであり、図1に例示されたMOCVDシステム100における真空ポンプライン104の部品であってもよい。
【0022】
図5に最も良く示されるように、弁体32の補助ポート44は、クリーニングガス(ある用途では不活性ガス又は他の未反応ガスでもよく、他の用途では反応ガス又はエッチングガスでもよい)を分岐ダクト45、47に誘導するものであり、クリーニング流体は分岐ダクト45、47を経て上流及び下流プレナム46、146にそれぞれ指向される。流れ矢印48で示されるように、クリーニング流体の第一部分は分岐ダクト45を通って上流環状プレナム46に流入し、この上流環状プレナム46によってクリーニングガスが上流ノズルインサート50の外面付近に分配される。上流ノズルインサート50は、クリーニングガスを上流環状オリフィス52から流路30内に注入する。流れ矢印49で示されるように、クリーニング流体の第二部分は、分岐ダクト47を通って下流環状プレナム146に流入し、この下流環状プレナム146によってクリーニングガスが下流ノズルインサート150の外面付近に分配される。下流ノズルインサート150は、クリーニングガスを下流環状オリフィス152から流路30内に注入する。この文脈において、上流及び下流といった用語は、便宜上図5及び6の流れ矢印34、36の方向との関連で使用している。それ故、この文脈において、上流ノズルインサート50は、上流(入口)ポート20内にあり、上流(入口)ポート20は、下流(出口)ポート22内の下流ノズルインサート150との関係で上流にある。また、上流ノズルインサート50は、閉弁部材14との関係で上流にある。同様に、必要な変更を加えながら、下流ノズルインサート150は、下流(出口)ポート22内にあり、下流(出口)ポート22は、上流ノズルインサート50との関係で下流にある。また、下流ノズルインサート150は、閉弁部材14との関係で下流にある。環状オリフィス52、152のそれぞれは、(流れ矢印54、154で示されるように)クリーニングガスが弁体32の内壁面31に沿って流路30に環状に流入するように指向するように閉弁部材14に面している。
【0023】
反応室102内で薄膜106を堆積させる通常のCVDプロセスが行われている間(図1)、例えば、クリーニングガス供給弁132を閉めてクリーニングガスは遮断されていることから、クリーニングガスがCVDプロセス又は反応室102の生産性に対して影響又は妨害とならない。スロットルバルブ10内のクリーニングガスを用いた洗浄プロセスの頻度は、比較的少なくてもよく、特定のCVDプロセスにおけるスロットルバルブ10の清浄度に応じて、例えば1日1回〜週1回でもよい。また、洗浄プロセスは、非常に短くても、例えば2分未満でもよいが、所望される場合にはより長い時間行ってもよい。従って、スロットルバルブ10内の洗浄プロセスは、反応室102が未使用の間、例えば、ウェハー108の交換中に行うこともできる。従って、本明細書に説明されるようなクリーニングガスプロセスを用いてスロットルバルブ10を洗浄することは、CVDシステム100全般、又は特に反応室102、の生産性・稼働時間に対して影響はない。また、スロットルバルブ10の上流にある遮断弁118を洗浄プロセス中に閉めてもよく、これにより、環状ノズル51、151(図5〜7)からスロットルバルブ10内へ高圧でクリーニングガスを噴射して、スロットルバルブ10の内壁面31及び閉弁部材14上に堆積した粉末粒子を取り除くことができ、この際に、粉末粒子が上流及び反応室102(図1)内へ吹き戻されることなく、或いはCVDプロセスに悪影響を及ぼすことない。洗浄プロセスの間、ノズル51、151(図5〜7)からスロットルバルブ10内へのクリーニングガスの環状流としては、安定した流れでもクリーニングガスを間欠的に噴出させたものでもよい。また、以下より詳細に説明するように乱流でも層流でもよい。
【0024】
一般に、環状オリフィス52、152から流室30へクリーニングガスを環状に噴出させても、又はパージさせるために流入させても、互いに指向される。ここで、図5及び6の流れ矢印54、154で示されるように、これらの対向方向に指向される流れ54、154は、互いに向かい合流する場所で局所的に圧力を増加させ、これにより、流れ矢印54、154によっても示されるように、流れ54、154は、局所的な圧力がより低い長軸18に向かって径方向内側に再指向される。この流れ54、154は、概して、それぞれの閉弁部材14の対向面に沿うものであり、これにより、閉弁部材14に付着しているかもしれない粉末粒子を取り除き及びパージする傾向にある。そして、この粉末粒子は、噴出/パージ流56と共に出口ポート22からガスの流れ36に沿って導かれる。例えば、図7に示すように(閉弁部材14はスロットルバルブ30を通るガスの流れ34、36を調整している)閉弁部材14がほぼ閉じる状態まで回転すると、環状オリフィス52、152からの環状噴出/パージ流54、154は、閉弁部材14の周縁53及び周縁53に隣接する内壁面31の部分で指向されて、周縁53又は周縁53の上流及び下流両側に隣接する弁体32の内壁面31に蓄積しているかもしれない粉末粒子を吹き飛ばす。この洗浄プロセスは、ノズル51、151から流室30にクリーニングガスを流入させながら、スロットルバルブ10内で閉弁部材14をその開位置と閉位置との間で前後に動かすことによって向上できる。これにより、閉弁部材14に貼り付いた粉体を取り除くことに役立つだけでなく、取り除いた粉末粒子を真空ポンプ116(図1)により下流に移動させることも可能となる。
【0025】
ここで、主に図5〜8を参照すると、例示されたスロットルバルブ10の環状プレナム46には、ハウジング32の入口端20内に延在した環状路60と、環状路60に隣接しかつ同心となるように位置付けられたノズルインサート50とが組み合わせて設けられている。ノズルインサート50のフレア状入口端部64の周辺部で径方向外側に延在した環状リムフランジ62は、ノズルインサート50が弁体32の入口端20に挿入されると、路60に隣接する弁体32の接続フランジ66に接する。ノズルインサート50がこの位置にあると、ノズルインサート50の円筒状延在部70の出口端68は、路60を通って閉弁部材16に向かって延在する。円筒状延在部70の直径は十分に小さいので、円筒状延在部70は弁体32の内壁面31から径方向内側に離れている。こうして、延在部70と内面31との間に、狭い環状ノズル51が形成され、クリーニングガスが環状プレナム46から環状オリフィス52に流れる。環状ノズル51及び環状オリフィス52は、少なくとも始めは流路30の長軸18と概して平行でかつ同心であるクリーニングガスの環状射流において、弁体32の内壁面31に沿って流路30内にクリーニングガスを注入するように配向された構造となっている。リムフランジ62(図8に最も良く示される)は、その外周面に環状溝72を有し、シール74(例えば、図5〜7及び9に示すようなOリングシール)を受け止めて保持する。シール74は、図5及び6に示すように入口パイプ24がクランプ40によって弁体32に接続されると、弁体32の接続フランジ66と入口パイプ24の接続フランジ25との間で圧迫される。このスロットルバルブ構造の構造、原則、及び利点を理解した当業者であれば理解されるように、他の締結機構又は技術、例えば、ネジ山付き表面(図示せず)を、ノズルインサート50を弁体32内に締結するために設けることができる。適切な管76及び/又は管継手78が、適切なクリーニングガスの供給源に補助ダクト44を接続するために設けられる。
【0026】
同様に、例示されたスロットルバルブ10の環状プレナム146には、ハウジング32の出口端内に延在した環状路160と、路160に隣接しかつ同心となるように位置付けられたノズルインサート150とが組み合わせて設けられている。ノズルインサート150のフレア状入口端部164の周辺部付近で径方向外側に延在した環状リムフランジ162は、ノズルインサート150が弁体32の出口端22に挿入されると、路160に隣接する弁体32の接続フランジ166に接する。下流ノズル150は図8に示す上流ノズル50と類似するが、その大きさは、図5及び6に示すような内壁面31のプロファイルや下流出口22の大きさに応じて異なっていてもよい。ノズルインサート150がこの位置にあると、ノズルインサート150の円筒状延在部170の出口端168は、路160を通って閉弁部材16に向かって延在する。円筒状延在部170の直径は十分に小さいので、円筒状延在部170は弁体32の内壁面31から径方向内側に離れている。こうして、延在部170と内面31との間に環状ノズル151が形成され、クリーニングガスが環状プレナム146から環状オリフィス152に流れる。環状ノズル151及び環状オリフィス152は、上で説明したように、弁体32の内壁面31に沿って流路30内にクリーニングガスを注入するように配向された構造となっている。リムフランジ162は、その外周面付近に環状溝172を有し、シール174(例えば、図5、6、及び8に示すようなOリングシール)を受け止めて保持する。シール174は、図5及び6に示すように出口パイプ26がクランプ42によって弁体32に接続されると、弁体32の接続フランジ166と出口パイプ26の接続フランジ27との間で圧迫される。また、このスロットルバルブ構造の構造、原則、及び利点を理解した当業者であれば理解されるように、他の締結機構又は技術、例えば、ネジ山付き表面(図示せず)を、ノズルインサート150を弁体32内に締結するために設けることができる。
【0027】
図1に例示されたCVDシステム100において、スロットルバルブ10の補助ダクト44は、供給パイプ130を介してパージガス供給源である容器PGに接続されている。GaNを蒸着するための例示されたMOCVDシステムでは、パージガスは、窒素(N2)ガスでもよく、クリーニングガスの他の容器又は供給源に接続することもできる。1つの例示された実施例において、適切なクリーニングガス供給弁132を、スロットルバルブ10よりも上流の供給パイプに設けて、スロットルバルブ10内へのクリーニングガスの流れを制御できる。例えば、限定されないが、クリーニングガスの流れを、クリーニングガス供給弁132によって制御して、間欠的に、周期的に、又は定常的にクリーニングガスをスロットルバルブ10内に流してもよい。クリーニングガスを1つの所望の流量又は異なった流量でスロットルバルブ10内に流れるように制御してもよい。他の特徴及び機能を発揮するためのガス供給弁132として適切に使用される弁は、商業的に入手可能であり、当業者に知られている。例えば、限定されないが、間欠的又は周期的にクリーニングガスをパルス状スロットルバルブ内へ流すために、クリーニングガス供給弁132は、全開(流す)状態と全閉(流さない)状態とを素早くかつ力強く切り替え可能な遮断弁を含んでもよい。この例示された実施例において、クリーニングガスをスロットルバルブ内に時間間隔及び期間に関してパルス状に送り、環状オリフィス52、152からクリーニングガスをパルス状に噴出させて、弁体32の内面31又は閉弁部材14に貼り付いているかもしれない粉末粒子を緩めかつ吹き飛ばしてもよい。或いは、このような遮断弁を制御して、クリーニングガスを所望の場合には間欠的に又は定常的に流してスロットルバルブ10に供給することもできる。このような遮断弁は当業者よく知られており、このような当業者であれば、間欠的、周期的、又は定常的な流れのためのこのような弁の開閉制御の仕方も理解している。例えば、電気ソレノイド制御弁134を使用して空気作動弁132を操作し、所望の流下・非流下期間及び間隔でクリーニングガスがスロットルバルブ10内へ望むように流すことができる。このようなソレノイド制御弁及び空気作動式遮断弁はよく知られており、容易に商業的に入手可能である。別の例として、電気ソレノイドを用いて遮断弁132を電気作動でき、これも当業者によく知られている。
【0028】
上流及び下流環状オリフィス52、152からのクリーニングガスを互いに独立させて(例えば、異なるタイミング、異なる期間、又は異なる質量流量で)流すことが望まれる場合、図10に例示されたスロットルバルブ210の実施形態として示すように、各上流及び下流環状オリフィス52、152に別個のダクトからクリーニングガス(又は異なるクリーニングガス)を供給できる。図10に例示されたスロットルバルブ210は、前述の図2〜9に例示されたスロットルバルブ10とほぼ同じであるため、例示された弁10の部品及び要素と同じ例示されたスロットルバルブ210の部品及び要素は、同じ部品番号で示す。もっとも、図10に例示されたスロットルバルブ210は、各環状プレナム46、146内にクリーニングガスを別々に誘導するための別個のダクト245、247を有する。2つの別個のダクト245、247にそれぞれ接続された別個の管276、277及び管継手278、279を使用して、別個のダクト245、247をそれぞれ別個のクリーニングガス供給弁(図示せず)に接続でき、これにより、クリーニングガスが別々に独立して各環状プレナム46、146に供給される。従って、クリーニングガスを上流環状プレナム46から上流環状オリフィス52を通過させてスロットルバルブの流路30内に単一の態様で(例えば、間欠的に、周期的に、又は定常的に)流しながら、同じ又は異なるクリーニングガスを下流環状プレナム146から下流環状オリフィス152を通過させてスロットルバルブの流路30内に同じ又は異なる態様で流すことができる。上流及び下流において、クリーニングガスを、同時に又は異なるタイミング、異なる間隔、又は異なる期間で流すことができる。例えば、限定されないが、閉弁部材14の上流よりも多くの副生成物粉体を下流に堆積させてもよく、この場合、下流環状オリフィス152からクリーニングガスをより力強く噴出又は流してこの下流粉体堆積物を取り除いて除去しながら、上流オリフィス52からクリーニングガスをより緩やかに流してこのように取り除かれた粉体堆積物をスロットルバルブの流室30を通過させて出口22に押し流すことに役立たせることが有益となり得る。勿論、他の例示されたスロットルバルブ(図示せず)に、以下のうち、両方ではなく、いずれか一方を設けることができる:(i)上流ダクト245、上流環状プレナム46、及び上流環状オリフィス;又は(ii)下流ダクト247、下流環状プレナム146、及び下流環状オリフィス152。本明細書で説明した例示のスロットルバルブにクリーニングガスを適用させる原則に精通した当業者であれば、他の例示された実施例及び変形例を認識されよう。
【0029】
幾つかの実施例において、クリーニングガスは、不活性ガス又は未反応ガスではなく反応ガスでもよい。例えば、図5〜7で例示されたスロットルバルブ10の環状ノズル51、151及びオリフィス52、152(又は図10で例示されたスロットルバルブ210の環状ノズル51、151及びオリフィス52、152のうちの一方又は両方)から流路30内に反応ガスを流して、例えば、スロットルバルブ10(又は210)を化学物質によって洗浄できる。例えば、ある状況及び条件において、あるCVDプロセスの特定の排出物によって、不活性なガスの高圧噴射又は物理的な加熱のいずれかでは洗浄又は除去できない固体状の膜又は被膜(例えば、酸化物膜)が、スロットルバルブ10(又は210)内又はその直ぐ下流に堆積しかねない。反応ガス(例えば、三フッ化塩素(ClF3)又はフッ化水素酸(HF)といったエッチングガス)を前述のように環状ノズル51、151及びオリフィス52、152のうち一方又は両方から流路30内に注入すると、このような固体膜堆積物を蒸気状の副生成物にでき、これによりスロットルバルブ10(又は210)を清潔に保てる。
【0030】
勿論、プレナム46、146へクリーニングガスを流入させる際の圧力が高いほど、その速度は速くなり、クリーニングガスが環状オリフィス52、152から流出する力も強くなる。しかしながら、圧力が高過ぎると、真空システムが充満され、ポンプ性能に悪影響を及ぼし、又はシステムの真空完全性さえも阻害されかねない。従って、多くの用途において、ガス入口圧力を、例えば(限定されないが)、35psig以下又は約2barに制限することが適切である。
【0031】
また、正圧及び粉末粒子を吹き飛ばすことによって、このような粒子が反応室102(図1)内に逆流しかねず、これにより、反応室102内に堆積した薄膜106に粒子が混入し、薄膜106が劣化されかねない。その上、反応室102内の混入によって、洗浄とその後の再排気のためのシステムを解体する時間及び失った製造物に関するコストが甚大となる。このような混入を防止するために、真空ポンプライン104の遮断弁118を閉めて、スロットルバルブ10内をクリーニングガスでパージ又は洗浄する間、反応室102の真空状態を遮断及び維持できる。しかしながら、このような正圧によって、スロットルバルブ10自体のシール、真空ポンプ116のシール、及び真空ポンプライン104において他のシール接続された箇所のシールも破壊されかねない。
【0032】
1つの例示された実施例において、環状オリフィス52、152にそれぞれ繋がる環状ノズル51、151内に狭流状態を作る程度に十分に高い圧力でクリーニングガスを供給して、環状ノズル51、151及び環状オリフィス52、152を通るクリーニングガスの質量流量を制限する。環状オリフィス52、152からスロットルバルブ10の流路30内へのクリーニングガスの質量流量をこのように制限することによって、下流圧力(即ち、スロットルバルブ10及び真空ポンプライン104内の圧力)が自動的に制限される。従って、このような狭流状態が利用されれば、クリーニングガスを環状ノズル51、151内に流すための複雑な流れ制御は不要となる。概して、単純な圧力レギュレーター136及びオン/オフクリーニングガス制御弁134だけで十分となる。各環状オリフィス52、152における環状ノズル51、151の出口圧力と各環状ノズル51、151の入口圧力との圧力比が0.528未満のときに、狭流が環状ノズル51、151内で起こる。典型的に、環状オリフィス52、152からスロットルバルブ10の流路30内にクリーニングガスをパルス状に送る又は流す洗浄サイクル中に、真空ポンプ116を操作してもよい。従って、本明細書で説明した例示のスロットルバルブ10の原則及び要素を理解した当業者であれば理解されるように、適切な寸法(例えば、直径)の円筒状延在部70、170を有する上流及び下流ノズルインサート50、150を設けること、適切な大きさ(例えば、断面積)の上流及び下流環状ノズル51、151を形成すること、クリーニングガスを供給するための圧力パラメータが比較的小さいCVDプロセスにおいてスロットルバルブ10が稼働する典型的な真空パラメータにおいて環状ノズル51、151内に狭流状態を作ることは比較的容易である。例えば、プロトタイプの環状ノズルについての試験では、圧力が35psiの供給源から窒素ガス(N2)を1〜2分間流したところ、スロットルバルブ、真空ポンプライン、及び真空ポンプの圧力がたった約7torrまで上昇したことが示されている。これは、圧力比が0.528よりも有意に高いことから、狭流状態が達成されていることを明確に示唆している。また、7torrの圧力では、スロットルバルブ10やシステムの他の部品のシールが損傷されるものではない。
【0033】
前述のようにスロットルバルブ10内の固体膜堆積物又は被膜を洗浄するために環状オリフィス52、152から反応ガスを流す場合、入口圧力をさらに低く(例えば、周囲圧力より若干低く)保ってもよい。これは、反応ガスを化学的に反応させる際(例えば、エッチングガスを固体薄膜材料と反応させる際)、環状オリフィス52、152から反応ガスが流出する速度は、反応ガスの温度よりも重要度が劣るからである。このような反応ガスエッチング又は洗浄操作は、反応ガス及びスロットルバルブ10を加熱することにより向上できる。
【0034】
所望の場合、通常のCVD操作の間、供給ライン130をスロットルバルブ10から遮断したり、スロットルバルブ10を修理又は交換のため除去しなければならないときに供給ライン130を遮断したりする洗浄のための他の部品(例えば、図1に示すような他の遮断弁138)をクリーニングガス供給ライン130に設けることができる。供給ライン130内でクリーニングガスが1つの方向(即ち、スロットルバルブ10方向)のみに流れることを保証するために、逆止弁140も随時設けることができる。
【0035】
他の実施例において、クリーニングガスを、供給ライン130からスロットルバルブ10の環状プレナム46、146に流入させ、進行中のCVD蒸着操作と同時に環状オリフィス52、152から流出させてもよい。このような例示された実施例において、排ガス流及び排ガス流中の粉末粒子がスロットルバルブ10の内壁面31に接触して貼り付くことを妨げる態様で、環状オリフィス52、152からクリーニングガスが流出する環状層流を生じさせるように圧力を制御してクリーニングガスを流すことが好ましい場合もある。
【0036】
他の例示された実施例において、CVD蒸着プロセスを短時間停止でき、遮断弁118を閉めて、スロットルバルブ10及び真空ポンプ116を含む真空ポンプライン104の部品並びに真空ポンプライン104から反応室102を遮断することができる。制御弁132を開けて、クリーニングガスの供給ライン130からスロットルバルブ10の環状プレナム46、146内への流れを、パルス状に噴出させる態様、定常的に流れる態様、又は上で説明したような他の変形した態様で開始させることができる。次に、このクリーニングガスの流れは、環状オリフィス52、152を流れる。そして、弁体32の内面31、閉弁部材14、又はスロットルバルブ10の他の内部部品に貼り付いているかもしれない粉末粒子を取り除き、この粉末粒子を出口22から吹き飛ばす。この洗浄操作を、前述のようなMOCVD GaN蒸着操作中に例えば1日約1〜2分行えば、洗浄のためにCVDシステムを解体し真空ポンプライン104からスロットルバルブ10を取り外さなければならなくなるスロットルバルブ10の使用可能期間を(このような粉体制御要素を有しないMOCVD GaN蒸着システムにおいて必要とされる典型的な2カ月の洗浄間隔と比較して)12〜18ヵ月に延長するものと考えられる。
【0037】
前述のクリーニングガス注入要素の構造及び機能は、閉弁部材の特定の設定にも調整機能をもたらす閉弁部材の能力にも依存していない。従って、前述の例示された弁10、210はスロットルバルブの例であり、これらの例における閉弁部材14を調整閉弁部材として説明してきたが、本明細書で説明したクリーニングガス注入要素を、他の弁においても適用できる。例えば、限定されないが、オン/オフ弁(図示せず)において、閉弁部材は、開位置と閉位置との間で可動となるが、開位置と閉位置との間の設定も調節もされることはない。
【0038】
上述の説明は、以下の要素によって規定される本発明の原則を説明する例を示すものである。当業者が本発明を理解すれば、重要ではないが多くの修正及び変更を容易に行うことができるので、以上図示し記述したままの例示の構造及びプロセスに本発明が限定されるのは望ましくない。それ故、これらの要素によって規定される本発明の範囲内となる全ての適切な組み合わせ、部分的組み合わせ、修正、及び均等物も望まれる。本明細書で使用される場合、要素を含むという意味の「備える」及び「含む」という用語は、言及された要素、完全な製品、部品、又は工程の存在を特定することを意図するものであるが、1つ以上の他の要素、完全な製品、部品、工程、又はこれらの組み合わせの存在や追加を排除するものではない。
【符号の説明】
【0039】
10、210 スロットルバルブ
20 上流ポート
22 下流ポート
30 流体流路
31 内壁面
32 弁体
44 補助ポート
46 上流環状プレナム
50 上流ノズルインサート
51、151 環状ノズル
52 上流環状ノズル
60、160 環状路
68、168 出口端
70、170 円筒状延在部
72、172 環状溝
100 CVDシステム
146 下流環状プレナム
150 下流ノズルインサート
152 下流環状ノズル(オリフィス)
図1
図2
図3
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図5
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図10