特許第6574770号(P6574770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュランの特許一覧

特許6574770サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ
<>
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000002
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000003
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000004
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000005
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000006
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000007
  • 特許6574770-サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574770
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】サイドウォール部に特定のテクスチャを有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B60C13/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-532341(P2016-532341)
(86)(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公表番号】特表2016-527143(P2016-527143A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014066645
(87)【国際公開番号】WO2015018763
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】1357851
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌由
(72)【発明者】
【氏名】デボルドー エロイーズ
(72)【発明者】
【氏名】フラッパール アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ミュールホフ オリヴィエ
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−512584(JP,A)
【文献】 特開2013−141927(JP,A)
【文献】 特開2013−071635(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0032265(US,A1)
【文献】 特開2013−071572(JP,A)
【文献】 再公表特許第2008/096879(JP,A1)
【文献】 特開2013−035313(JP,A)
【文献】 特開2013−103631(JP,A)
【文献】 特開平11−321242(JP,A)
【文献】 特開昭57−167805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部(3)と、該サイドウォール部の全部又は一部にわたって広がるテクスチャ(5)とを含むゴム状物質製のタイヤであって、前記テクスチャは、該テクスチャにおいて規則的に繰り返される図形要素(7)を含み、各図形要素(7)は、直径20mm以下の円の内部に内接することができ、各図形要素(7)は、前記タイヤの前記サイドウォール部から突出し、ショルダーゾーン(8)と、前記サイドウォール部の最大幅ゾーン(10)とを含む前記タイヤでは、前記テクスチャ(5)が、前記ショルダーゾーン(8)と、前記サイドウォール部の前記最大幅ゾーン(10)との間に存在し、前記サイドウォール部(3)は、該サイドウォール部から突出する高さHのマーキング(11)を含み、前記テクスチャ(5)は、前記マーキング(11)の前記高さHの20%〜80%の高さ(h)を有する、ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記図形要素(7)は、文字、数字、符号を含む一群の図形要素から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記図形要素(7)は、複合体である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記図形要素(7)は、文字Mである、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
断面図で見ると、前記図形要素の断面(S)は全体的に湾曲している、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記図形要素は、少なくとも1つの減少した幅Wのゾーンを含む、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記図形要素(7)は、前記テクスチャ(5)において繰り返された時に異なる配向を有する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
少なくとも2つの隣接する図形要素が、ゴム状物質のブリッジによって結合される、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部に特定のテクスチャを有する自動車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォール部を特別なテクスチャで覆うことが知られている。従って、米国特許出願公開第2003/0230370号には、タイヤのサイドウォール部上の複数のリブを含むテクスチャが開示されている。これらのリブは、均等に間隔を空け、タイヤのサイドウォール部の全体的な視認性を改善する。
【0003】
タイヤの製造中、このタイヤのサイドウォール部は、金型内で成形されて加硫処理される。この作業中、これらのサイドウォール部のリブは、リブとは形状が逆の金型部品に付着する。従って、リブをタイヤのサイドウォール部から突出させる場合、金型部品は、リブを成形するための凹部を有する。ところで、サイドウォール部の成形中、これらの凹部は、一方の金型と、他方のリブの上面との間に捕捉された空気を保持して離さないことがある。この空気の存在により、成形時にリブの上面に凸凹が生じる。リブの場合、これらの凸凹による欠陥は、一般的な円周方向においてリブの中心に集まる傾向にあり、これによってタイヤを車両に装着した際に、これらの凸凹がタイヤを観察する第三者にさらに一層見えやすくなってしまうことが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、製造が容易でタイヤに心地良い外観を与えるタイヤのサイドウォール部のテクスチャを提案することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
定義
「タイヤ」は、内圧を受けているか否かに関わらず、全てのタイプの弾性ケーシングを意味する。
【0006】
タイヤの「トレッド部」は、外側面と、一方がタイヤの走行時に道路に接触するように意図された2つの主要面とによって区切られる多くのゴム状物質を意味する。
【0007】
タイヤの「サイドウォール部」は、タイヤのトレッド部と、このタイヤのビード部との間に位置するタイヤの外側面を意味する。
【0008】
サイドウォール部上の「テクスチャ」は、このサイドウォール部の組織的表面仕上げを意味する。
【0009】
タイヤのサイドウォール部上の「マーキング」は、技術的及び法的情報を提供するように、又は消費者が製品の出所を識別できるように意図された、このサイドウォール部上の表示を意味する。
【0010】
「図形要素」は、知覚単位を形成する視覚要素を意味する。
【0011】
「サイドウォール部の最大幅ゾーン」は、このサイドウォール部の軸方向最外部に存在する全ての地点を意味する。換言すれば、この最大幅ゾーン内の各地点は、タイヤを膨張させ、ETRTOによって推奨されるリムに装着して子午線断面で見た時に、赤道面から軸方向に測定した最大距離にある。
【0012】
本発明は、サイドウォール部と、このサイドウォール部の全部又は一部にわたって広がるテクスチャとを含むゴム状物質製のタイヤに関する。テクスチャは、このテクスチャ内で規則的に繰り返される図形要素を含む。各図形要素は、直径20mm以下の円の内部に内接することができ、タイヤのサイドウォール部から突出する。ショルダーゾーン及びサイドウォール部の最大幅ゾーンを含むタイヤでは、このショルダーゾーンとサイドウォール部の最大幅ゾーンとの間にテクスチャが存在する。
【0013】
タイヤのサイドウォール部の成形中、製造欠陥は、サイドウォール部の滑らかな表面上よりもむしろテクスチャの図形要素に集中する。これらの製造欠陥は、サイドウォール部における図形要素の規則的な繰り返し及びそのサイズに起因してテクスチャ内で全体として「消失」し、従って観察者による検出がより一層困難になる。本発明者らは、ショルダーゾーンとサイドウォール部の最大幅ゾーンとの間では、観察者に製造欠陥が見えやすいことも発見した。このショルダーゾーンとサイドウォール部の最大幅ゾーンとの間のみにテクスチャを位置付けることにより、サイドウォール部の最も有用な部分、すなわちサイドウォール部の潜在的に最もよく見える部分の欠陥が隠れるようになる。従って、サイドウォール部上のテクスチャの表面積が制限されるので、テクスチャを成形するための金型部品のコスト、特に製造時間が最適化される。
【0014】
1つの代替実施形態では、図形要素が、少なくとも文字、数字、記号を含む一群の図形要素から選択される。
【0015】
従って、サイドウォール部のテクスチャに、サイドウォール部上の図形要素の領域におけるさらに多くのあらゆる潜在的欠陥を隠す審美的に魅力ある外観が与えられる。
【0016】
別の代替実施形態では、図形要素が複合体である。複合体である図形要素が意味するものは、この図形要素が、互いに0°よりも大きく180°よりも小さな角度を成す少なくとも2つの部分を含むということである。
【0017】
サイドウォール部の成形中に金型内に存在する空気は、図形要素の上面にわたってランダムに分布する凸凹を生じる。テクスチャ内に複合図形要素を形成することにより、テクスチャを通じた凸凹のランダムな分布さらに改善される。
【0018】
別の代替実施形態では、図形要素が文字Mである。
【0019】
本発明者らは、複合文字Mを使用すると、この文字の特定の形状に起因してテクスチャの成形欠陥がより一層見えにくくなることを発見した。
【0020】
別の代替実施形態では、断面図で見ると、図形要素の断面が全体的に湾曲している。
【0021】
これにより、図形要素の成形欠陥がさらに良好に隠れると同時に、テクスチャが全体的に強固になる。
【0022】
別の代替実施形態では、図形要素が、少なくとも1つの減少した幅のゾーンを有する。
【0023】
本発明者らは、この減少した幅のゾーンが、成形欠陥を図形要素上に集中させることを発見した。従って、このような減少した幅のゾーンを形成することにより、成形欠陥を図形要素の特定の部分に集中させることができ、従ってテクスチャの欠陥の隠蔽を改善することが可能になる。
【0024】
別の代替実施形態では、図形要素が、テクスチャ内で繰り返された時に異なる配向を有する。
【0025】
テクスチャ内の図形要素の配向を修正することにより、テクスチャを通じた欠陥の分布のランダム性が改善され、これらの欠陥が観察者にとってより一層見えにくくなる。
【0026】
別の代替実施形態では、サイドウォール部が、このサイドウォール部から突出する高さHのマーキングを含む。テクスチャは、マーキングの高さHの20%〜80%の高さhを有する。
【0027】
このようにして、マーキングとサイドウォール部のテクスチャとの間のコントラストが生み出される。これにより、このサイドウォール部上のマーキングの視認性が全体的に向上する。
【0028】
別の代替実施形態では、少なくとも2つの隣接する図形要素が、ゴム状物質のブリッジによって結合される。
【0029】
これにより、テクスチャ内の図形要素の剛性が高まり、従ってこのテクスチャの耐久性が向上する。
【0030】
添付図面を参照しながら非限定的な例として示す以下の説明より、本発明のその他の特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】タイヤのサイドウォール部、及びこのサイドウォール部上に存在するテクスチャの概略斜視図である。
図2図1のテクスチャの拡大図である。
図3図2のA−A’におけるテクスチャの断面図である。
図4】第2の代替実施形態による、図1のテクスチャの図形要素を示す図である。
図5】第3の代替実施形態による、図1のテクスチャを示す図である。
図6】マーキングに隣接する図1のテクスチャの断面図である。
図7】第4の代替実施形態による、図1のテクスチャの図形要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明では、実質的に同一又は同様の要素を同一の参照符号によって示す。
【0033】
図1は、タイヤ1の斜視図である。このタイヤ1は、トレッド部2と、このトレッド部の側面に位置するサイドウォール部3とを含む。さらに詳細には、サイドウォール部3は、ここではサイドウォール部3のほんの一部に示すテクスチャ5を含む。さらに詳細には、テクスチャ5は、ショルダーゾーン8と、サイドウォール部の最大幅ゾーン10との間に存在する(ゾーンについては点線で部分的に示す)。
【0034】
図2は、テクスチャ5の拡大図である。このテクスチャ5は、テクスチャ内に均等に配置された突出する複数の図形要素7を含む。ここでは、各図形要素が、一般的な基本図形要素に由来する。この基本図形要素は、少なくとも文字、数字、記号を含む一群の図形要素から選択される。図2の例では、図形要素が、文字Mに対応する複合図形要素である。複合図形要素とは、図形要素が複数の部分12、14を含むことを意味する。これらの部分12、14は、互いに0°よりも大きく180°よりも小さな角度βを成す。
【0035】
図形要素7は、限られたサイズであり、ここではこれらの要素の各々を直径20mm以下の円8の内部に内接することができる。同様に、図形要素7は、最小サイズを有し、これらの図形要素を内接することができる円は、1mm以上の直径を有する。図2の例では、2つの隣接する円8間の距離Dが40mm以下であり、テクスチャ5における図形要素の良好な密度を可能にしている。
【0036】
図3に、テクスチャ3を図2のA−A’における断面図で示す。この図では、図形要素7が、全体的に湾曲した断面Sを有する。
【0037】
図4には、第2の代替実施形態による、減少した幅Wのゾーン9を含む図形要素7を示す。
【0038】
図5には、第3の代替実施形態によるテクスチャ5を示す。この代替形態では、基本図形要素がテクスチャ5内で様々な配向で繰り返されている。図5の例では、特定の要素7について、基本図形要素が90°の回転で繰り返されている。
【0039】
図6には、マーキング11に隣接するテクスチャ5の断面図を示す。ここでは、テクスチャ5の高さhが、マーキング11の高さHの20%〜80%である。
【0040】
図7には、第4の代替実施形態による図形要素7を示す。この代替形態では、図形要素7が、ゴム状物質のブリッジ13によって結合されている。
【0041】
本発明は、説明し図示した例に限定されるものではなく、その範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。
【0042】
従って、代替実施形態では、図形要素が異なる高さを有することができる。
【0043】
別の代替実施形態では、テクスチャが、異なる基本図形要素に由来する図形要素を含む。
【符号の説明】
【0044】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
5 テクスチャ
8 ショルダーゾーン
10 サイドウォール部の最大幅ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7