特許第6574777号(P6574777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6574777-磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサー 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574777
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサー
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20190902BHJP
   F04D 17/00 20060101ALI20190902BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20190902BHJP
   F04D 29/058 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F16C32/04 Z
   F04D17/00
   F04D29/056 A
   F04D29/058
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-541785(P2016-541785)
(86)(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公表番号】特表2016-536543(P2016-536543A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】CN2014085827
(87)【国際公開番号】WO2015035871
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年4月20日
【審判番号】不服2018-4080(P2018-4080/J1)
【審判請求日】2018年3月24日
(31)【優先権主張番号】201310419738.7
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516074621
【氏名又は名称】グリーン リフリッジレイション エクィップメント エンジニアリング リサーチ センター オブ ズーハイ グリー シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Green Refrigeration Equipment Engineering Research Center of Zhuhai Gree Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,フイ
(72)【発明者】
【氏名】フー,ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ドンスーオ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,シャオボー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ジェンニン
【合議体】
【審判長】 大町 真義
【審判官】 小関 峰夫
【審判官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−5163(JP,A)
【文献】 実開平2−46116(JP,U)
【文献】 実開平5−52346(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと電磁装置を含む磁気浮上軸受であって、
前記電磁装置は、前記シャフトの外周に配置され、前記シャフトとの間に間隙を有し、前記シャフトの位置を調節するために用いられ、
前記電磁装置は、巻線溝を有する鉄心と、巻線を含み、前記巻線が巻線溝内に配置され、
さらに、
前記シャフト上に固定されるスラスト板が前記電磁装置の鉄心に衝突することを防止するために用いられる保護機構を含み、
前記保護機構が前記電磁装置上に固定され、
前記保護機構前記スラスト板に対向するように設けられ
前記保護機構が、支持体とオーバーコート層を含み、
前記オーバーコート層が前記支持体の外表面上に固定され、
前記オーバーコート層が耐摩耗性を有する非磁性材料で製造されたものであり、
前記スラスト板と前記巻線の間が空間のみで構成される、
ことを特徴とする磁気浮上軸受。
【請求項2】
前記保護機構によって前記スラスト板と前記鉄心の間の間隙がLに維持され、
更にL>0である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気浮上軸受。
【請求項3】
前記保護機構が、前記鉄心の内側、外側又は前記巻線溝内に固定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気浮上軸受。
【請求項4】
前記保護機構が前記鉄心の内側に固定されるものであり、
前記鉄心の内側壁上に位置決め溝が配置され、前記溝が前記保護機構を軸方向に位置決めするために用いられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気浮上軸受。
【請求項5】
前記保護機構が焼き嵌め、接着又は組立方式によって固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気浮上軸受。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気浮上軸受を含むことを特徴とする遠心コンプレッサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許の出願は、2013年9月13日に出願された、出願番号201310419738.7、名称「磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサー」の中国特許出願の優先権を主張するものであり、参考のため、その全文を引用する。
【0002】
本発明は磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサーに関わるものであり、特に保護構造を有する磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサーに関わるものである。
【背景技術】
【0003】
磁気浮上軸受においては、巻線中に電流が流入する時に発生する磁場が鉄心とスラスト板の間に回路を形成し、鉄心とスラスト板の間に電磁吸引力を形成する。更に変位センサを利用してシャフトとステータの間のエアギャップの距離を測定し、軸受の巻線に流れる電流の大小を調節し、電磁力の作用を調節することによって、シャフトとステータの間のエアギャップの数値を制御し、安定的な磁気浮上という目的を実現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の磁気浮上軸受の保護システムは、一般に、磁気浮上軸受の多くは、ラジアル荷重を支持し、補助軸受の軸受半径方向に対する負荷が制御不能となった場合の保護に用いられるものであり、軸受の軸方向の保護については基本的に言及されていない。しかしながら、遠心コンプレッサーの分野において応用される磁気浮上軸受は、主に軸方向の荷重を支持するものである。
【0005】
図1を参照するに、図1は従来の磁気浮上軸受の断面を示す図であり、前記磁気浮上軸受100はシャフト110と、鉄心120と、スラスト板130と、巻線150を含む。
【0006】
前記スラスト板130は前記シャフト110上に固定され、前記スラスト板130と前記鉄心120の間は一定の距離Lを維持し、更にL>0である。磁気浮上軸受の通電後において、電磁力の吸引によって、制御精度が低くなり、又は制御システムが制御不能となった場合には、前記スラスト板130は前記鉄心120に向かって接近し、最終的に前記鉄心120に衝突し、前記鉄心120又は前記スラスト板130が損壊するおそれがある。上記の欠点を考慮し、長期間にわたる研究と実践の結果、発明者は本発明に至ったものである。
【0007】
上記の状況を考慮すれば、軸方向の力を受けることを防止する磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサーを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気浮上軸受は、シャフトと電磁装置を含み、電磁装置はシャフトの外周に配置され、シャフトとの間に間隙を有し、シャフトの位置を調節するために用いられ、
電磁装置は巻線溝を有する鉄心と、巻線を含み、巻線が巻線溝内に配置され、前記磁気浮上軸受は保護機構を更に含み、前記シャフトが前記電磁装置に衝突することを防止するために用いられる。
【0009】
実施形態の一つにおいて、前記磁気浮上軸受は、スラスト板を更に含み、
前記スラスト板は前記シャフト上に固定され、
前記保護機構は、前記電磁装置上に固定され、前記保護機構は前記スラスト板の外周に配置される。
【0010】
実施形態の一つにおいて、前記保護機構によって前記スラスト板と前記電磁装置の間の間隙がLに維持され、更にL>0である。
【0011】
実施形態の一つにおいて、前記保護機構は、支持体とオーバーコート層を含み、
前記オーバーコート層が前記支持体の外表面上に固定され、前記オーバーコート層が摩擦抵抗性を有する非磁性材料で製造されたものである。
【0012】
実施形態の一つにおいて、前記保護機構は、前記鉄心の内側、外側又は前記巻線溝内に固定される。
【0013】
実施形態の一つにおいて、前記保護機構は前記鉄心の内側に固定されるものであり、前記鉄心の内側壁上に位置決め溝が配置され、前記保護機構を軸方向に位置決めするために用いられる。
【0014】
実施形態の一つにおいて、前記磁気浮上軸受はベースを更に含み、前記ベースは前記シャフトと前記電磁装置を収納するために用いられ、前記保護機構は前記ベース上に固定される。
【0015】
実施形態の一つにおいて、前記保護機構は前記ベースの中央位置に配置される。
【0016】
実施形態の一つにおいて、前記保護機構は、焼き嵌め、接着又は組立方式にて固定される。
【0017】
また本発明の遠心コンプレッサーは、前記磁気浮上軸受を含む。
【発明の効果】
【0018】
従来の技術に比べ本発明は、以下の優位性を有する。磁気浮上軸受の保護機構によってスラスト板と鉄心の間を一定の距離が維持され、軸方向の荷重が制御不能である場合に、スラスト板が鉄心に衝突せず、避免スラスト板又は鉄心の損壊を防止する。スラスト板と鉄心は完全に密着し得ないことから、電源オフ後において、過剰な残留磁気により、スラスト板と鉄心が迅速に分離できない事態を防止する。保護機構は摩擦抵抗性を有する非磁性材料で製造されたものであるため、磁気経路の構造に影響を与えず、また支持力にも影響を及ぼさない。保護機構の取り付けと位置決めは容易で、実用性も高く、従来製品の改装や摩損後のメンテナンスに寄与する。前記磁気浮上軸受を採用する遠心コンプレッサーは、軸方向の保護が得られ、使用寿命も長いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1は従来の磁気浮上軸受の断面を示す図である。
図2は本発明の第一の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図である。
図3は本発明の第二の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図である。
図4は本発明の第三の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図である。
図5は本発明の第四の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
磁気浮上軸受の軸方向の保護が存在しないという課題を解決するため、軸方向の保護を実現する磁気浮上軸受及び遠心コンプレッサーを提供する。
【0021】
以下、図を参照し、本発明の上述及びそれ以外の技術的特徴と優位性について詳細に説明する。
【0022】
図2を参照するに、図2は本発明の第一の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図であり、前記磁気浮上軸受100は、シャフト110と、鉄心120と、スラスト板130と、保護機構140と、巻線150を含む。
【0023】
前記シャフト110は高速回転シャフトであって、前記スラスト板130は前記シャフト110の一端に固定され、前記鉄心120上には巻線溝が備えられ、前記巻線溝内には前記巻線150が配置され、前記巻線150は電気回路と接続される。
【0024】
前記保護機構140は非磁性材料で製造され、これにより前記保護機構140を取り付けても磁気経路の構造に影響を与えず、前記磁気浮上軸受100の支持力に対しても影響を及ぼさない。前記保護機構140は支持体とオーバーコート層(図示せず)を含み、前記オーバーコート層は前記支持体の外表面を覆うように固定され、前記オーバーコート層は摩擦抵抗性を有する非磁性材料で製造されたものである。
【0025】
前記保護機構140は円筒形であって、前記磁気浮上軸受100中における前記保護機構140の数は少なくとも一つである。
【0026】
前記保護機構140によって前記スラスト板130と前記鉄心120の間が一定の距離Lに維持され、更にL>0である。
【0027】
前記巻線150の通電時に、前記スラスト板130が電磁吸引力の作用を受け、制御システムは前記磁気浮上軸受100が中央の位置で動作するように制御する。この時の距離LをL0とし、規定値とする。
【0028】
前記巻線150の通電後、前記スラスト板130が電磁吸引力の作用を受けることから、距離Lが最小値Lminに達するまで前記スラスト板130が前記鉄心120に向かって接近する。なおL0>Lmin>0とする。Lmin=(0.5〜0.8)Lである時には、前記磁気浮上軸受100は良好な保護効果を実現し、かつ前記磁気浮上軸受100の内部配置に間隙は認められない。
【0029】
前記磁気浮上軸受100の通電後、電磁力による吸引を受けて、前記スラスト板130が前記鉄心120に向かって接近する。前記保護機構140が存在することから、軸方向の荷重が制御不能である場合に、前記スラスト板130は前記鉄心120に衝突することなく、前記スラスト板130又は前記鉄心120の損壊を防止することができる。
【0030】
また、前記保護機構140が存在することから、前記スラスト板130と前記鉄心120が完全に密着し得ず、前記磁気浮上軸受100の電源オフ後において、電源オフ後の過剰な残留磁気により、スラスト板130と鉄心120が迅速に分離できない事態を防止する。
【0031】
前記保護機構140は焼き嵌め、接着又は組立方式によって固定され、取り付けと位置決めが容易で、実用性も高く、従来製品の改装や摩損後のメンテナンスに寄与する
【0032】
本実施例において、前記保護機構140は前記鉄心120の内側に固定され、前記鉄心120の内側壁上に位置決め溝122が設置され、前記保護機構140を軸方向に位置決めするために用いられる。前記磁気浮上軸受100の磁気経路と磁気漏れに影響を及ぼさないように、前記位置決め溝122は可能な限り小さくしなければならないが、支持力及び前記保護機構140の構造強度に関する要求事項を満たすものでなければならない。
【0033】
図3を参照するに、図3は本発明の第二の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図であり、前記保護機構140は前記鉄心120の外側に固定される。図4を参照するに、図4は本発明の第三の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図であり、前記保護機構140は前記鉄心120の巻線溝内に固定される。
【0034】
前記保護機構140は前記鉄心120の内側、外側又は前記鉄心120の巻線溝内に固定され、前記スラスト板130と前記鉄心120の間の距離がLminである時に、前記スラスト板130が前記保護機構140に接触する。
【0035】
前記保護機構140は、前記磁気浮上軸受100の軸方向の荷重が制御不能である場合に、高速回転する前記スラスト板130と前記保護機構140を接触させ、前記鉄心120には接触しないようにすることで、両者の衝突を防止し、前記スラスト板130と前記鉄心120を保護する作用を発揮して、前記スラスト板130と前記鉄心120の機械的構造を万全なものとし、使用寿命を延長させることを保証する。
【0036】
好ましくは、前記保護機構140の支持体がより大きな軸方向の力を支持するための高い剛性を有し、前記保護機構140のオーバーコート層が衝突を和らげる目的を果たすための一定の弾性を有する。
【0037】
図5を参照するに、図5は本発明の第四の実施例に関わる磁気浮上軸受の断面を示す図であり、前記磁気浮上軸受100はベース160を更に含み、前記鉄心120は前記スラスト板130と前記ベース160の間に配置される。
【0038】
前記保護機構140は前記ベース160上に固定され、好ましくは、前記保護機構140が前記ベース160の中央位置に固定される。前記スラスト板130と前記鉄心120の間の距離がLminである時、前記シャフト110の端部が前記保護機構140に接触する。
【0039】
前記シャフト110の直径は前記スラスト板130の直径より小さく、前記シャフト110の線速度が小さくなるため、前記シャフト110の端部が前記保護機構140に接触する時には、前記保護機構140に対する摩擦力は相対的に小さいものとなり、前記保護機構140が前記ベース160の中央に近付けば近付くほど摩擦力は小さくなる。
【0040】
また本発明は前記磁気浮上軸受100を含む遠心コンプレッサーを提供するものであり、実際の使用において、前記磁気浮上軸受100を有効に保護し、使用寿命を延長させ、電源オフ後に迅速な分離を実現できる。
【0041】
以上の実施例は、本発明の幾つかの実施形態について説明したものに過ぎず、その説明は具体的かつ詳細であるが、これにより本特許の範囲が限定されるものではない。本分野の一般的な技術者ならば、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、若干の変更と改良を加えることができるのは明らかであり、これらは全て本発明の保護の範囲に含まれることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5