(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体の詳細を説明する。
本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体は、支持シートと樹脂膜形成層とを含む樹脂膜形成用シートの樹脂膜形成層側に剥離シートを積層してなる。そして、剥離シートは、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周部に沿って切込部を有しない。樹脂膜形成用シート積層体の製造工程において、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周部に沿って剥離シートに切込部が形成されると、樹脂膜形成層がその外周部において剥離シートに噛み込む。その結果、
図1aから
図1dに示す、樹脂膜形成用シート積層体100の樹脂膜形成用シート10を被着体32に貼付する工程(以下、「被着体貼付工程」と記載することがある。)において剥離シート13から樹脂膜形成層用シート10を繰り出すことが困難となる。この問題は、
図1aから
図1dに示す被着体貼付工程によらずに、被着体に樹脂膜形成用シート積層体の樹脂膜形成用シートを貼付する場合(例えば、手作業にて樹脂膜形成用シート積層体の剥離シートを除去し、樹脂膜形成用シートを被着体に貼付する場合など)にも同様に起こる問題である。
【0020】
本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体によれば、樹脂膜形成用シート積層体の製造工程において、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周部に沿って剥離シートに切込部が形成されないために樹脂膜形成層が剥離シートの切込部に噛み込まず、
図1aから
図1dに示す被着体貼付工程や、例えば手作業による被着体への貼付工程においても、剥離シート13から樹脂膜形成用シート10を繰り出すことが容易となる。その結果、被着体32へ樹脂膜形成層12aの貼付を安定して行うことができる。なお、剥離シートが切込部を有しないことを確認する方法は、後述する実施例に記載の方法により行う。
【0021】
また、
図2から
図4に示すように、樹脂膜形成用シート積層体100において、支持シート11は、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周に沿って切込部D1を有し、切込部D1の切込深さd1は0μm以上であり支持シートの厚みの2/3以下であることが好ましく、0μm以上であり支持シートの厚みの1/2以下であることがより好ましく、0μm以上であり支持シートの厚みの1/3以下であることがさらに好ましく、0μm以上であり支持シートの厚みの1/4以下であることが特に好ましい。なお、切込部D1の切込深さd1が0μmの場合は、支持シート11は切込部D1を有しないことを意味する。また、
図2から
図4においては、支持シート11として基材11aと粘着剤層11bとからなる粘着シートを用いている。
所定深さの切込部D1を設けることで、支持シート11として粘着シートを用いる場合に、支持シート11の粘着剤層11bが基材11aに噛み込むことに起因して、樹脂膜形成用シート積層体100の製造工程や半導体装置の製造工程において、基材11aと粘着剤層11bとの間での層間剥離を防止できる。なお、本発明における切込部の切込深さは、光学顕微鏡により倍率300倍で切込部の断面観察を行い、任意の4点の切込部の切込深さを測定し、これを平均した値である。
【0022】
また、
図2から
図4に示すように、樹脂膜形成用シート積層体100において、剥離シート13は、樹脂膜形成層側の面から支持シート11の外周に沿って、切込深さd2の切込部D2を有してもよい。
【0023】
支持シート11として粘着シートを用いる場合、樹脂膜形成用シート積層体100の製造工程において切込部D2が形成されると、粘着剤層11bが剥離シート13に噛み込むことがある。その結果、被着体への貼付工程において、剥離シート13から樹脂膜形成用シート10を繰り出すことが困難になるおそれがある。しかし、一般に粘着剤層11bは樹脂膜形成層12aと比較して粘着力(接着力)が低いため、粘着剤層11bは剥離シート13に噛み込み難い。そのため、切込深さd2が剥離シート13の厚さの2/3以下であれば、粘着剤層11bの剥離シート13への噛み込みが最小限に抑えられ、被着体への貼付工程において剥離シート13から樹脂膜形成用シート10の繰り出しが困難になることはない。なお、基材のみからなる支持シートを用いる場合には、上記噛み込みの問題は生じない。
【0024】
また、剥離シート13の厚さの1/10以上の切込深さの切込部D2を設けることで、樹脂膜形成用シート10と剥離シート13との界面に剥離起点を作り出すことが容易になる。その結果、樹脂膜形成用シートの繰出し性が向上する。
【0025】
また、切込部D2を所定深さとすることで、被着体32への貼付工程中に剥離シート13の長手方向(流れ方向)にかかる応力に起因して剥離シート13が破断することを防止できる。
【0026】
また、切込部D2を形成することで、樹脂膜形成用シート積層体100の製造工程において樹脂膜形成用シート10を所定の形状に確実に切断できる。
【0027】
また、
図1aから
図1dに示す被着体32への貼付工程においては、剥離シート13にはその長手方向(流れ方向)に応力がかかる。剥離シート13に切込部D2が形成されていないと、該応力が樹脂膜形成層12aに伝播し、樹脂膜形成層12aが流れ方向に伸びることがある。樹脂膜形成層12aの変形(伸び)は、その厚み精度を低下させる。その結果、該樹脂膜形成層12aを用いて得られる半導体装置の信頼性を低下させる原因となることがある。剥離シート13に所定の深さの切込部D2を形成することで、樹脂膜形成層12aにかかる応力が緩和され、樹脂膜形成層12aの変形を抑制できる。
【0028】
このような観点から、切込部D2の切込深さd2は、剥離シート13の厚みの1/10以上2/3以下であることが好ましく、より好ましくは1/5以上3/5以下、さらに好ましくは1/2以上3/5以下、特に好ましくは1/2を超え、3/5以下である。
【0029】
支持シート11と樹脂膜形成層12aは、所望の平面形状に切断されており、剥離シート13上に部分的に積層されている。ここで、支持シート11や樹脂膜形成層12aにおける所望の平面形状とは、例えば
図2に示すように、剥離シート13上に支持シート11や樹脂膜形成層12aが部分的に積層された状態となる形状であれば特に限定されない。
【0030】
支持シート11の平面形状としては、後述する半導体装置の製造工程において用いられるリングフレーム等の治具への貼付が容易な形状であることが好ましく、例えば、円形、略円形、四角形、五角形、六角形、八角形、ウエハ形状(円の外周の一部が直線である形状)等が挙げられる。これらの中でも、リングフレームに貼付される部分以外の無駄な部分を少なくするために、円形やウエハ形状が好ましい。
【0031】
また、樹脂膜形成層12aの平面形状としては、半導体ウエハ等の被着体の平面形状に合致する形状であることが好ましく、例えば、円形、略円形、四角形、五角形、六角形、八角形、ウエハ形状(円の外周の一部が直線である形状)等の、被着体への貼付が容易な形状であることが好ましい。これらの中でも、被着体に貼付される部分以外の無駄な部分を少なくするために、円形やウエハ形状が好ましい。
【0032】
以下、樹脂膜形成用シート積層体の具体的な態様について説明する。
【0033】
(第1の態様)
図2は、本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体100の第1の態様を示す平面図であり、
図3は、
図2に示す樹脂膜形成用シート積層体100をA−A線に沿って切断した場合の略式断面図である。
【0034】
図2及び
図3に示すように、第1の態様に係る樹脂膜形成用シート積層体100は、支持シート11の直径が樹脂膜形成層12aの直径よりも大きい。また、支持シート11は、基材11aと粘着剤層11bとからなる粘着シートである。なお、後述するように、基材11aのみを支持シートとして用いることもできる。
【0035】
(第2の態様)
図4は、第2の態様の樹脂膜形成用シート積層体100の略式断面図である。第2の態様に係る樹脂膜形成用シート積層体100は、平面視において支持シート11の直径が樹脂膜形成層12aの直径よりも大きい。また、樹脂膜形成用シート10の外周部であって、剥離シート13と支持シート11との間に環状の治具接着層14が設けられている。また、剥離シート13は、環状の治具接着層14の内周に沿って切込部D3を有してもよい。
【0036】
切込部D3の切込深さd3は特に限定されず、切込部D2の切込深さd2と同じでも、大きくても、小さくてもよいが、剥離シートの厚さの1/10以上2/3以下であることが好ましく、剥離シートの厚さの1/10以上3/5以下であることがより好ましく、剥離シートの厚さの1/10以上1/2以下であることがさらに好ましい。
所定深さの切込部D3を設けることで、被着体貼付工程中に剥離シート13の長手方向(流れ方向)にかかる応力に起因する樹脂膜形成層12aの変形を抑制することがより容易になる。
【0037】
次に、樹脂膜形成用シート積層体100を構成する各層について説明する。
【0038】
(支持シート11)
支持シートとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。
【0039】
上記フィルムの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施してもよい。剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられ、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するため好ましい。このような剥離剤を用いてフィルムの表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布されたフィルムを常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させて剥離剤層を形成すればよい。
【0040】
また、上記フィルムの表面には、易接着処理を施してもよい。易接着処理としては特に制限はないが、例えば、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0041】
上記フィルムの厚さは、通常は30〜300μm、好ましくは50〜200μm程度である。
【0042】
また、
図2から
図4に示すように、支持シート11として、基材11aと粘着剤層11bとからなる粘着シートを用いることもできる。
【0043】
支持シート11として粘着シートを用いる場合には、樹脂膜形成用シート10上で被着体にダイシング等の所要の加工を施すことが容易になる。この態様においては、樹脂膜形成層12aは、基材11a上に設けられた粘着剤層11bに積層される。基材11aとしては、支持シートとして例示した上記のフィルムが挙げられる。
【0044】
また、後述するように、粘着剤層11bを紫外線硬化型粘着剤で形成し、粘着剤を硬化するために照射するエネルギー線として紫外線を用いる場合には、基材11aは、紫外線に対して透明である基材が好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には、基材11aは透明である必要はない。上記のフィルムの他、これらを着色した透明フィルム、不透明フィルム等を用いることができる。
【0045】
粘着剤層11bは、その上に形成される樹脂膜形成層12aが剥離可能であれば、特に限定はされず、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の再剥離性粘着剤が用いられる。また、粘着剤層11bと樹脂膜形成層12aとの界面剥離を容易にするために、エネルギー線硬化型、加熱発泡型や水膨潤型の粘着剤も用いることができる。これらの粘着剤は、所定の操作により粘着力が低下するので、粘着剤層11bから樹脂膜形成層12aを剥離することが容易になる。エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化等)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤層11bの厚さは、通常は1〜100μm、好ましくは2〜80μm程度である。粘着剤層11bを形成するための粘着剤として紫外線硬化
型粘着剤を用いる場合には、樹脂膜形成層12aを粘着剤層11b上に積層する前に粘着剤層11bに紫外線照射を行ってもよいし、樹脂膜形成層12aを粘着剤層11b上に積層した後に粘着剤層11bに紫外線照射を行ってもよい。
【0046】
また、支持シートとして粘着シートを用いる場合には、上述した切込部D1に起因した効果を確実にする観点から、基材の厚みと粘着剤層の厚みとの比は、(基材の厚み):(粘着剤層の厚み)で、好ましくは1:1〜200:1、より好ましくは2:1〜150:1である。
【0047】
(樹脂膜形成層12a)
支持シート11上には、樹脂膜形成層12aが剥離可能に積層される。
樹脂膜形成層の破断伸度は1000%以下であることが好ましく、かつ、樹脂膜形成層の破断強度は10N/mm
2以下であることが好ましい。樹脂膜形成層の破断伸度と破断強度を上記範囲とすることで、後述する樹脂膜形成用シート積層体の製造工程において、樹脂膜形成層の割断が容易となる。このような観点から、樹脂膜形成層の破断伸度は、より好ましくは0.5〜1000%、さらに好ましくは0.5〜800%であり、破断強度は、より好ましくは0.1〜10N/mm
2、さらに好ましくは0.1〜5N/mm
2である。樹脂膜形成層の破断伸度と破断強度は、例えば、後述する重合体成分(A)の含有量やその重量平均分子量、硬化性成分(B)の重量平均分子量(具体的には、エポキシ化合物(B11)の重量平均分子量や熱硬化剤(B12)の重量平均分子量等)により制御できる。なお、樹脂膜形成層の破断伸度と破断強度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0048】
樹脂膜形成層に少なくとも要求される機能は、(1)シート形状維持性、(2)初期接着性および(3)硬化性である。
【0049】
樹脂膜形成層には、バインダー成分の添加により(1)シート形状維持性および(3)硬化性を付与することができ、バインダー成分としては、重合体成分(A)および硬化性成分(B)を含有する第1のバインダー成分、または(A)成分および(B)成分の性質を兼ね備えた硬化性重合体成分(AB)を含有する第2のバインダー成分を用いることができる。
なお、樹脂膜形成層を硬化までの間、被着体に仮着させておくための機能である(2)初期接着性は、感圧接着性であってもよく、熱により軟化して接着する性質であってもよい。(2)初期接着性は、通常バインダー成分の諸特性や、後述する無機フィラー(C)の配合量の調整などにより制御される。
【0050】
(第1のバインダー成分)
第1のバインダー成分は、重合体成分(A)と硬化性成分(B)を含有することにより、樹脂膜形成層にシート形状維持性と硬化性を付与する。なお、第1のバインダー成分は、第2のバインダー成分と区別する便宜上、硬化性重合体成分(AB)を含有しない。
【0051】
(A)重合体成分
重合体成分(A)は、樹脂膜形成層にシート形状維持性を付与することを主目的として樹脂膜形成層に添加される。
上記の目的を達成するため、重合体成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常20,000以上であり、20,000〜3,000,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定される場合の値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8120GPC」に、高速カラム「TSK gurd column H
XL−H」、「TSK Gel GMH
XL」、「TSK Gel G2000 H
XL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる(以下、同じ)。
なお、後述する硬化性重合体成分(AB)と区別する便宜上、重合体成分(A)は後述する硬化機能官能基を有しない。
【0052】
重合体成分(A)としては、アクリル系重合体、ポリエステル、フェノキシ樹脂(後述する硬化性重合体成分(AB)と区別する便宜上、エポキシ基を有しないものに限る。)、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等を用いることができる。また、これらの2種以上が結合したもの、たとえば、水酸基を有するアクリル系重合体であるアクリルポリオールに、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを反応させることにより得られるアクリルウレタン樹脂等であってもよい。さらに、2種以上が結合した重合体を含め、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(A1)アクリル系重合体
重合体成分(A)としては、アクリル系重合体(A1)が好ましく用いられる。アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、より好ましくは−50〜40℃、さらに好ましくは−40〜30℃の範囲にある。アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度が高いと樹脂膜形成層の接着性が低下し、被着体に転写できなくなることや、転写後に被着体から樹脂膜形成層または樹脂膜形成層を硬化して得られる樹脂膜が剥離する等の不具合を生じることがある。また、アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度が低いと樹脂膜形成層と支持シートとの剥離力が大きくなって樹脂膜形成層の転写不良が起こることがある。
【0054】
アクリル系重合体(A1)の重量平均分子量は、好ましくは100,000〜2,000,000、より好ましくは300,000〜1,500,000である。アクリル系重合体(A1)の重量平均分子量が高いと樹脂膜形成層の接着性が低下し、被着体に転写できなくなることや、転写後に被着体から樹脂膜形成層または樹脂膜が剥離する等の不具合を生じることがある。また、アクリル系重合体(A1)の重量平均分子量が低いと樹脂膜形成層と支持シートとの接着性が高くなり、樹脂膜形成層の転写不良が起こることがある。アクリル系重合体(A1)の重量平均分子量を上記範囲とすることで、樹脂膜形成層の破断伸度や破断強度を所定範囲とすることが容易となる。
【0055】
アクリル系重合体(A1)は、少なくとも構成する単量体に、(メタ)アクリル酸エステルを含む。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、後述する水酸基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体や、アミノ基を有する単量体として例示するもののうち、(メタ)アクリル酸エステルであるものを例示することができる。
【0056】
なお、本明細書で(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの両者を包含する意味で用いることがある。
【0057】
アクリル系重合体(A1)を構成する単量体として、水酸基を有する単量体を用いてもよい。このような単量体を用いることで、アクリル系重合体(A1)に水酸基が導入され、樹脂膜形成層が別途エネルギー線硬化性成分(B2)を含有する場合に、これとアクリル系重合体(A1)との相溶性が向上する。水酸基を有する単量体としては、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
アクリル系重合体(A1)を構成する単量体として、カルボキシル基を有する単量体を用いてもよい。このような単量体を用いることで、アクリル系重合体(A1)にカルボキシル基が導入され、樹脂膜形成層が、別途エネルギー線硬化性成分(B2)を含有する場合に、これとアクリル系重合体(A1)との相溶性が向上する。カルボキシル基を有する単量体としては、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。後述する硬化性成分(B)として、エポキシ系熱硬化性成分を用いる場合には、カルボキシル基とエポキシ系熱硬化性成分中のエポキシ基が反応してしまうため、カルボキシル基を有する単量体の使用量は少ないことが好ましい。
【0059】
アクリル系重合体(A1)を構成する単量体として、アミノ基を有する単量体を用いてもよい。このような単量体としては、モノエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0060】
アクリル系重合体(A1)を構成する単量体として、このほか酢酸ビニル、スチレン、エチレン、α−オレフィン等を用いてもよい。
【0061】
樹脂膜形成層には、樹脂膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、アクリル系重合体(A1)が、好ましくは1〜95質量部、より好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜60質量部、特に好ましくは10〜50質量部含まれる。アクリル系重合体(A1)の含有量を上記範囲とすることで、樹脂膜形成層の破断伸度や破断強度を所定範囲とすることが容易となる。
【0062】
アクリル系重合体(A1)は架橋されていてもよい。架橋は、架橋される前のアクリル系重合体(A1)が水酸基等の架橋性官能基を有しており、樹脂膜形成層を形成するための組成物中に架橋剤を添加することで架橋性官能基と架橋剤の有する官能基が反応することにより行われる。アクリル系重合体(A1)を架橋することにより、樹脂膜形成層の凝集力を調節することが可能となる。
【0063】
架橋剤としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。
【0064】
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0065】
有機多価イソシアネート化合物として、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネート、およびこれらの多価アルコールアダクト体が挙げられる。
【0066】
有機多価イミン化合物として、具体的には、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0067】
架橋剤は架橋する前のアクリル系重合体(A1)100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の比率で用いられる。
【0068】
本発明において、樹脂膜形成層を構成する成分の含有量の態様について、重合体成分(A)の含有量を基準として定める場合、重合体成分(A)が架橋されたアクリル系重合体であるときは、その基準とする含有量は、架橋される前のアクリル系重合体の含有量である。
【0069】
(A2)非アクリル系樹脂
また、重合体成分(A)として、ポリエステル、フェノキシ樹脂(後述する硬化性重合体成分(AB)と区別する便宜上、エポキシ基を有しないものに限る。)、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体またはこれらの2種以上が結合したものから選ばれる非アクリル系樹脂(A2)の1種単独または2種以上の組み合わせを用いてもよい。このような樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜100,000のものが好ましく、20,000〜80,000のものがさらに好ましい。
【0070】
非アクリル系樹脂(A2)のガラス転移温度は、好ましくは−30〜150℃、さらに好ましくは−20〜120℃の範囲にある。
【0071】
非アクリル系樹脂(A2)を、上述のアクリル系重合体(A1)と併用した場合には、樹脂膜形成用シートを用いて被着体へ樹脂膜形成層を転写する際に、支持シートと樹脂膜形成層との層間剥離をより容易に行うことができ、さらに転写面に樹脂膜形成層が追従しボイドなどの発生を抑えることができる。
【0072】
非アクリル系樹脂(A2)を、上述のアクリル系重合体(A1)と併用する場合には、非アクリル系樹脂(A2)の含有量は、非アクリル系樹脂(A2)とアクリル系重合体(A1)との質量比(A2:A1)において、通常1:99〜80:20、好ましくは1:99〜60:40、より好ましくは1:99〜55:45の範囲にある。非アクリル系樹脂(A2)の含有量がこの範囲にあることにより、上記の効果を得ることができる。
【0073】
(B)硬化性成分
硬化性成分(B)は、樹脂膜形成層に硬化性を付与することを主目的として樹脂膜形成層に添加される。硬化性成分(B)は、熱硬化性成分(B1)、またはエネルギー線硬化性成分(B2)を用いることができる。また、これらを組み合わせて用いてもよい。熱硬化性成分(B1)は、少なくとも加熱により反応する官能基を有する化合物を含有する。また、エネルギー線硬化性成分(B2)は、エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)を含有し、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する。これらの硬化性成分が有する官能基同士が反応し、三次元網目構造が形成されることにより硬化が実現される。硬化性成分(B)は、重合体成分(A)と組み合わせて用いるため、樹脂膜形成層を形成するための塗工用組成物の粘度を抑制し、取り扱い性を向上させる等の観点から、通常その重量平均分子量(Mw)は、10,000以下であり、100〜10,000であることが好ましい。
【0074】
(B1)熱硬化性成分
熱硬化性成分としては、たとえば、エポキシ系熱硬化性成分が好ましい。
エポキシ系熱硬化性成分は、エポキシ基を有する化合物(B11)を含有し、エポキシ基を有する化合物(B11)と熱硬化剤(B12)を組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0075】
(B11)エポキシ基を有する化合物
エポキシ基を有する化合物(B11)(以下、「エポキシ化合物(B11)」ということがある。)としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、多官能系エポキシ樹脂や、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
エポキシ化合物(B11)を用いる場合には、樹脂膜形成層には、重合体成分(A)100質量部に対して、エポキシ化合物(B11)が、好ましくは1〜1500質量部含まれ、より好ましくは3〜1200質量部含まれる。エポキシ化合物(B11)が少ないと、樹脂膜形成層の硬化後における接着性が低下する傾向がある。また、エポキシ化合物(B11)が多いと、樹脂膜形成層と支持シートとの剥離力が高くなり、樹脂膜形成層の転写不良が起こることがある。
【0077】
また、エポキシ化合物(B11)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100〜2,000、より好ましくは200〜1,500である。エポキシ化合物(B11)の重量平均分子量を上記範囲とすることで、樹脂膜形成層の破断伸度や破断強度を所定範囲とすることが容易となる。
【0078】
(B12)熱硬化剤
熱硬化剤(B12)は、エポキシ化合物(B11)に対する硬化剤として機能する。好ましい熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0079】
フェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ビフェニルフェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。
アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。
これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0080】
熱硬化剤(B12)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは100〜20,000、より好ましくは200〜20,000である。また、熱硬化剤(B12)は、好ましくは180℃以下で液状であり、より好ましくは160℃以下で液状であり、特に好ましくは常温(23℃)近傍で液状である。熱硬化剤(B12)の重量平均分子量を上記範囲とすることや、上記性状(軟化点)の熱硬化剤(B12)を用いることで、樹脂膜形成層の破断伸度や破断強度を所定範囲とすることが容易となる。なお、軟化点は、例えば、JIS K7234:1986に記載の環球法に準拠する方法により測定できる。
【0081】
熱硬化剤(B12)の含有量は、エポキシ化合物(B11)100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤の含有量が少ないと、硬化後における接着性が低下する傾向がある。
【0082】
(B13)硬化促進剤
硬化促進剤(B13)を、樹脂膜形成層の熱硬化の速度を調整するために用いてもよい。硬化促進剤(B13)は、特に、熱硬化性成分(B1)として、エポキシ系熱硬化性成分を用いるときに好ましく用いられる。
【0083】
好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0084】
硬化促進剤(B13)は、エポキシ化合物(B11)および熱硬化剤(B12)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部の量で含まれる。硬化促進剤(B13)を上記範囲の量で含有することにより、高温度高湿度下に曝されても優れた接着性を有し、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高い信頼性を達成することができる。硬化促進剤(B13)を添加することで、樹脂膜形成層の硬化後の接着性を向上させることができる。このような作用は硬化促進剤(B13)の含有量が多いほど強まる。
【0085】
(B2)エネルギー線硬化性成分
樹脂膜形成層がエネルギー線硬化性成分を含有することで、多量のエネルギーと長い時間を要する熱硬化工程を行うことなく樹脂膜形成層の硬化を行うことができる。これにより、製造コストの低減を図ることができる。
エネルギー線硬化性成分は、エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)を単独で用いてもよいが、エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)と光重合開始剤(B22)を組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0086】
(B21)エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物
エネルギー線照射により反応する官能基を有する化合物(B21)(以下「エネルギー線反応性化合物(B21)」ということがある。)としては、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等のアクリレート系化合物が挙げられ、また、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびイタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物等の重合構造を有するアクリレート化合物であって、比較的低分子量のものが挙げられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有する。
【0087】
エネルギー線反応性化合物(B21)を用いる場合、樹脂膜形成層には、重合体成分(A)100質量部に対して、エネルギー線反応性化合物(B21)が、好ましくは1〜1500質量部含まれ、より好ましくは3〜1200質量部含まれる。
【0088】
(B22)光重合開始剤
エネルギー線反応性化合物(B21)に光重合開始剤(B22)を組み合わせることで、重合硬化時間を短くし、ならびに光線照射量を少なくすることができる。
【0089】
このような光重合開始剤(B22)として具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびβ−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(B22)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
光重合開始剤(B22)の配合割合は、エネルギー線反応性化合物(B21)100質量部に対して0.1〜10質量部含まれることが好ましく、1〜5質量部含まれることがより好ましい。
光重合開始剤(B22)の配合割合が0.1質量部未満であると光重合の不足で満足な硬化性が得られないことがあり、10質量部を超えると光重合に寄与しない残留物が生成し、不具合の原因となることがある。
【0091】
(第2のバインダー成分)
第2のバインダー成分は、硬化性重合体成分(AB)を含有することにより、樹脂膜形成層にシート形状維持性と硬化性を付与する。
【0092】
(AB)硬化性重合体成分
硬化性重合体成分は、硬化機能官能基を有する重合体である。硬化機能官能基は、互いに反応して三次元網目構造を構成しうる官能基であり、加熱により反応する官能基や、エネルギー線により反応する官能基が挙げられる。
硬化機能官能基は、硬化性重合体成分(AB)の骨格となる連続構造の単位中に付加していてもよいし、末端に付加していてもよい。硬化機能官能基が硬化性重合体成分(AB)の骨格となる連続構造の単位中に付加している場合、硬化機能官能基は側鎖に付加していてもよいし、主鎖に直接付加していてもよい。硬化性重合体成分(AB)の重量平均分子量(Mw)は、樹脂膜形成層にシート形状維持性を付与する目的を達成する観点から、通常20,000以上である。
【0093】
加熱により反応する官能基としてはエポキシ基が挙げられる。エポキシ基を有する硬化性重合体成分(AB)としては、高分子量のエポキシ基含有化合物や、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。高分子量のエポキシ基含有化合物は、たとえば、特開2001−261789に開示されている。
また、上述のアクリル系重合体(A1)と同様の重合体であって、単量体として、エポキシ基を有する単量体を用いて重合したもの(エポキシ基含有アクリル系重合体)であってもよい。エポキシ基を有する単量体としては、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
エポキシ基含有アクリル系重合体を用いる場合、その好ましい態様はエポキシ基以外についてアクリル系重合体(A1)と同様である。
【0094】
エポキシ基を有する硬化性重合体成分(AB)を用いる場合には、硬化性成分(B)としてエポキシ系熱硬化性成分を用いる場合と同様、熱硬化剤(B12)や、硬化促進剤(B13)を併用してもよい。
【0095】
エネルギー線により反応する官能基としては、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。エネルギー線により反応する官能基を有する硬化性重合体成分(AB)としては、ポリエーテルアクリレートなどの重合構造を有するアクリレート系化合物等であって、高分子量のものを用いることができる。
また、たとえば側鎖に水酸基等の官能基Xを有する原料重合体に、官能基Xと反応しうる官能基Y(たとえば、官能基Xが水酸基である場合にはイソシアネート基等)およびエネルギー線照射により反応する官能基を有する低分子化合物を反応させて調製した重合体を用いてもよい。
この場合において、原料重合体が上述のアクリル系重合体(A1)に該当するときは、その原料重合体の好ましい態様は、アクリル系重合体(A1)と同様である。
【0096】
エネルギー線により反応する官能基を有する硬化性重合体成分(AB)を用いる場合には、エネルギー線硬化性成分(B2)を用いる場合と同様、光重合開始剤(B22)を併用してもよい。
【0097】
第2のバインダー成分は、硬化性重合体成分(AB)と併せて、上述の重合体成分(A)や硬化性成分(B)を含有していてもよい。
【0098】
樹脂膜形成層には、バインダー成分のほか、以下の成分を含有させてもよい。
【0099】
(C)無機フィラー
樹脂膜形成層は、無機フィラー(C)を含有していてもよい。無機フィラー(C)を樹脂膜形成層に配合することにより、硬化後の樹脂膜における熱膨張係数を調整することが可能となり、被着体に対して硬化後の樹脂膜の熱膨張係数を最適化することで半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、硬化後の樹脂膜の吸湿性を低減させることも可能となる。
また、本発明における樹脂膜形成層を硬化して得られる樹脂膜を、被着体または被着体を個片化したチップの保護膜として機能させる場合には、保護膜にレーザーマーキングを施すことにより、レーザー光により削り取られた部分に無機フィラー(C)が露出して、反射光が拡散するために白色に近い色を呈する。そのため、樹脂膜形成層が後述する着色剤(D)を含有すると、レーザーマーキング部分と他の部分にコントラスト差が得られ、印字が明瞭になるという効果がある。
【0100】
好ましい無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。また、これらの無機フィラーの表面をエポキシ基や(メタ)アクリロイル基等の官能基で修飾することもできる。上記無機フィラー(C)は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上述の効果をより確実に得るための、無機フィラー(C)の含有量の範囲としては、樹脂膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは1〜80質量部、より好ましくは5〜75質量部、特に好ましくは10〜70質量部である。
【0101】
(D)着色剤
樹脂膜形成層には、着色剤(D)を配合することができる。着色剤を配合することで、半導体装置を機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等による半導体装置の誤作動を防止することができる。また、レーザーマーキング等の手段により樹脂膜に刻印を行った場合に、文字、記号等のマークが認識しやすくなるという効果がある。すなわち、樹脂膜が形成された半導体装置や半導体チップでは、樹脂膜の表面に品番等が通常レーザーマーキング法(レーザー光により保護膜表面を削り取り印字を行う方法)により印字されるが、樹脂膜が着色剤(D)を含有することで、樹脂膜のレーザー光により削り取られた部分とそうでない部分のコントラスト差が充分に得られ、視認性が向上する。
【0102】
着色剤としては、有機または無機の顔料および染料が用いられる。これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置の信頼性を高める観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。着色剤(D)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
着色剤(D)の配合量は、樹脂膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜35質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
【0103】
(E)カップリング剤
無機物と反応する官能基および有機官能基と反応する官能基を有するカップリング剤(E)を、樹脂膜形成層の被着体に対する貼付性、接着性および/または樹脂膜の凝集性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤(E)を使用することで、樹脂膜形成層を硬化して得られる樹脂膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上させることができる。このようなカップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらのうちでも、シランカップリング剤が好ましい。
【0104】
シランカップリング剤としては、その有機官能基と反応する官能基が、重合体成分(A)、硬化性成分(B)や硬化性重合体成分(AB)などが有する官能基と反応する基であるシランカップリング剤が好ましく使用される。
このようなシランカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0105】
シランカップリング剤は、重合体成分(A)、硬化性成分(B)および硬化性重合体成分(AB)の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。シランカップリング剤の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0106】
(F)汎用添加剤
樹脂膜形成層には、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤や剥離剤などが挙げられる。
【0107】
樹脂膜形成層は、たとえば上記各成分を適宜の割合で混合して得られる組成物(樹脂膜形成用組成物)を用いて得られる。樹脂膜形成用組成物は予め溶媒で希釈しておいてもよく、また混合時に溶媒に加えてもよい。また、樹脂膜形成用組成物の使用時に、溶媒で希釈してもよい。
かかる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ヘプタンなどが挙げられる。
【0108】
樹脂膜形成層は、初期接着性と硬化性とを有し、未硬化状態では常温または加熱下で被着体に押圧することで容易に接着する。また押圧する際に樹脂膜形成層を加熱してもよい。そして硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い樹脂膜を与えることができ、接着強度にも優れ、厳しい高温度高湿度条件下においても十分な信頼性を保持し得る。なお、樹脂膜形成層は単層構造であってもよく、また多層構造であってもよい。
【0109】
樹脂膜形成層の厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜90μm、特に好ましくは3〜80μmである。樹脂膜形成層の厚さを上記範囲とすることで、樹脂膜形成層が、被着体と基板や他のチップ等とを接着するための接着剤、あるいは、被着体の裏面を保護する保護膜として機能に優れる。
【0110】
(剥離シート13)
剥離シート13は、樹脂膜形成層12a側に積層される。剥離シート13は、樹脂膜形成用シート10の使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものであり、上述した支持シート11として例示したフィルムを用いることができる。
【0111】
剥離シートの樹脂膜形成層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が比較的低い剥離シートは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また剥離シートの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0112】
剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0113】
上記の剥離剤を用いて剥離シートの基体となるフィルム等の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布された剥離シートを常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させて剥離剤層を形成させればよい。
【0114】
また、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などによりフィルムの積層を行うことにより剥離シートの表面張力を調整してもよい。すなわち、少なくとも一方の面の表面張力が、上述した剥離シートの樹脂膜形成層と接する面のものとして好ましい範囲内にあるフィルムを、当該面が樹脂膜形成層と接する面となるように、他のフィルムと積層した積層体を製造し、剥離シートとしてもよい。
【0115】
剥離シートの厚さは特に限定されないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは30〜150μmである。
【0116】
(治具接着層)
治具接着層としては、粘着剤層単体からなる粘着部材、基材と粘着剤層から構成される粘着部材や、芯材を有する両面粘着部材を採用することができる。治具接着層は、例えば環状(リング状)であり、空洞部(内部開口)を有し、リングフレーム等の治具に固定可能な大きさを有する。具体的には、リングフレームの内径は、治具接着層の外径よりも小さい。また、リングフレームの内径は、治具接着層の内径よりも多少大きい。なお、リングフレームは、通常金属またはプラスチックの成形体である。
【0117】
粘着剤層単体からなる粘着部材を治具接着層とする場合、粘着剤層を形成する粘着剤としては特に制限されないが、たとえばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、またはシリコーン粘着剤からなることが好ましい。これらのうちで、樹脂膜形成用シートの外周部における、剥離シートの剥離力やリングフレームに対する粘着力、及びリングフレームからの再剥離性を考慮すると、上述したアクリル系重合体(A1)を含むアクリル系粘着剤が好ましい。なお、上記粘着剤は、単独で用いても、二種以上混合して用いてもよい。
【0118】
治具接着層を構成する粘着剤層の厚さは、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜15μm、さらに好ましくは4〜10μmである。粘着剤層の厚さが2μm未満のときは、十分な剥離力や粘着力が発現しないことがある。粘着剤層の厚さが20μmを超えるときは、剥離力や粘着力が高くなり、本発明の効果を発揮できないことや、リングフレームから剥離する際にリングフレームに粘着剤の残渣物が残り、リングフレームを汚染することがある。
【0119】
基材と粘着剤層から構成される粘着部材を治具接着層とする場合には、粘着部材を構成する粘着剤層と剥離シートとが積層される。
粘着剤層を形成する粘着剤としては、上記の粘着剤層単体からなる粘着部材における粘着剤層を形成する粘着剤と同様である。また、粘着剤層の厚さも同様である。
【0120】
治具接着層を構成する基材としては、特に制限されないが、たとえばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。これらのうちで、エキスパンド性を考慮するとポリエチレンフィルムおよびポリ塩化ビニルフィルムが好ましく、ポリ塩化ビニルフィルムがより好ましい。
【0121】
治具接着層を構成する基材の厚さは、好ましくは15〜200μm、より好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは40〜100μmである。
【0122】
また、芯材を有する両面粘着部材を治具接着層とする場合には、両面粘着部材は、芯材と、その一方の面に形成される積層用粘着剤層と、その他方の面に形成される固定用粘着剤層からなる。積層用粘着剤層は、支持シート11に貼付される側の粘着剤層である。また、固定用粘着剤層は、剥離シート13に貼付される側の粘着剤層であり、剥離シート13の除去後には治具の固定に用いられる。
【0123】
両面粘着部材の芯材としては、上記粘着部材の基材と同様のものが挙げられる。これらのうちで、エキスパンド性を考慮するとポリオレフィンフィルムおよび可塑化したポリ塩化ビニルフィルムが好ましい。
【0124】
芯材の厚さは、通常15〜200μm、好ましくは30〜150μm、より好ましくは40〜100μmである。
【0125】
両面粘着部材の積層用粘着剤層および固定用粘着剤層は、同じ粘着剤からなる層であっても異なる粘着剤からなる層であってもよい。
【0126】
固定用粘着剤層を構成する粘着剤は、樹脂膜形成用シートの外周部における、剥離シートの剥離力やリングフレームに対する粘着力が適切な範囲となるように、かつ、固定用粘着剤層とリングフレームとの接着力が、支持シートと積層用粘着剤層との接着力よりも小さくなるように適宜選択する。このような粘着剤としては、たとえばアクリル系粘着剤、 ゴム系粘着剤、シリコーン粘着剤が挙げられ、樹脂膜形成用シートの外周部における、剥離シートの剥離力やリングフレームに対する粘着力、及びリングフレームからの再剥離性を考慮すると、上述したアクリル系重合体(A1)を含むアクリル系粘着剤が好ましい。また、固定用粘着剤層を形成する粘着剤は、単独で用いても、二種以上混合して用いてもよい。
【0127】
積層用粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されず、たとえばアクリル系粘着剤、 ゴム系粘着剤、シリコーン粘着剤が挙げられる。これらの中でも、支持シートとの接着力の制御が容易であるという観点から、上述したアクリル系重合体(A1)を含むアクリル系粘着剤が好ましい。また、積層用粘着剤層を形成する粘着剤は、単独で用いても、二種以上混合して用いてもよい。
【0128】
積層用粘着剤層および固定用粘着剤層の厚さは、上記粘着部材の粘着剤層の厚さと同様である。
【0129】
治具接着層を設けることで、樹脂膜形成用シートをリングフレーム等の治具に接着することが容易になる。
【0130】
上記のような各層を含む樹脂膜形成用シート積層体100は、剥離シート13を除去した後に、樹脂膜形成層12aを被着体32に貼付し、場合によっては、その後、被着体32にダイシング等の所要の加工が施される。そして、樹脂膜形成層12aを被着体32に固着残存させて支持シート11を剥離する。すなわち、樹脂膜形成層12aを、支持シート11から被着体32に転写する工程を含むプロセスに使用される。
【0131】
本発明において適用可能な被着体としては、その素材に限定はなく、たとえば半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、FPC等の有機材料基板、又は精密部品等の金属材料など種々の物品や、これらの物品を個片化したチップ等を挙げることができる。
【0132】
樹脂膜形成用シート積層体の形状は、長尺の剥離シート上に支持シートと樹脂膜形成層とを含む樹脂膜形成用シートを積層した帯状の形状とし、これを巻収することができる。特に、
図2に示すように、所望の形状にあわせて切り抜いた支持シート11と樹脂膜形成層12aとを含む樹脂膜形成用シート10を、長尺の剥離シート13上に剥離可能に一定間隔で積層した形態が好ましい。また、樹脂膜形成用シート積層体の形状を、枚葉の形状とすることもできる。
【0133】
所望の形状にあわせて切り抜いた支持シートと樹脂膜形成層とを含む樹脂膜形成用シートを、長尺の剥離シート上に剥離可能に一定間隔で積層した形態とした場合には、樹脂膜形成用シートが積層された部分と、樹脂膜形成用シートが積層されていない部分とで、樹脂膜形成用シート積層体の厚みが不均一になる。このような厚みが不均一な樹脂膜形成用シート積層体をロール状に巻き取ると、厚みが不均一になって巻圧が不均一となり、ロールの巻崩れが起こることがある。したがって、このような形態の樹脂膜形成用シート積層体においては、厚みを均一にすることが好ましい。このため、所望の形状にあわせて切り抜いた樹脂膜形成用シートの外側には、
図2に示すように、少し間隔を空け、長尺の剥離シート13の短手方向における両縁部17に沿って、樹脂膜形成用シート10と同じ程度の厚さの周辺テープ14が貼合されることが好ましい。ここで、樹脂膜形成用シート10と周辺テープ14との間隔は、1〜20mm程度であることが好ましく、2〜10mm程度であることが特に好ましい。周辺テープ14により、厚みの不均一を解消することで、上記の不具合を回避しやすくなる。
【0134】
樹脂膜形成用シート積層体の製造
次に、所望の形状にあわせて切り抜いた樹脂膜形成用シートを、長尺の剥離シート上に剥離可能に一定間隔で積層した形態の樹脂膜形成用シート積層体の製造方法について、
図3に示す第1の態様の樹脂膜形成用シート積層体を例に説明するが、本発明の樹脂膜形成用シート積層体は、このような製造方法により得られるものに限定されない。
【0135】
まず、
図5aに示すように、基材11aと粘着剤層11bとからなる粘着シート(支持シート11)の粘着剤層11b上に、第1剥離シート15が積層された積層体を用意する。そして、
図5bに示すように、第1の剥離シート15を所望の形状にハーフカットする。
【0136】
具体的には、長尺状の粘着シート(以下、「長尺粘着シート11」と記載することがある。)と長尺状の第1剥離シート15(以下、「第1長尺剥離シート15」と記載することがある。)との積層体を準備する。なお、第1長尺剥離シート15は、長尺粘着シート11の粘着剤層11b上に積層される。
【0137】
次いで、
図5bに示すように、第1長尺剥離シート15を所望の形状に完全に切り込み、長尺粘着シート11は完全に切り込まないように型抜き(ハーフカット)する。型抜きは、ダイカットなどの汎用の装置(ロータリー刃もしくは平刃)、方法により行う。この際の切込深さは、第1長尺剥離シート15を完全に切り込むことができれば特に限定されない。長尺粘着シート11も切り込む場合には、
図3や
図5bに示すように、切込深さd1の切込部D1が形成される。このように形成される切込部D1の切込深さd1やその効果は、上述したとおりである。
【0138】
次いで、第1長尺剥離シート15の長手方向に剥離用粘着テープ(図示しない)を貼付する。そして、剥離用粘着テープを除去することで、
図5cに示すように、所望の形状に型抜きされた剥離シート15bを除去し、第1長尺剥離シート15の残余部15aを長尺粘着シート11上に残存させ、所望の形状の開口部15cが形成された積層体(以下、「第1積層体」と記載することがある。)を得る。第1積層体は、第1長尺剥離シート15の残余部15aと長尺粘着シート11との積層体である。
【0139】
次いで、長尺状の剥離シート16(以下、「樹脂膜形成層転写用シート16」と記載することがある。)上に樹脂膜形成層12を有する積層体を準備する。該積層体の製造方法としては、予めフィルム状に製膜した樹脂膜形成層12を樹脂膜形成層転写用シート16に積層してもよく、また、樹脂膜形成層12を形成するための樹脂膜形成用組成物を、樹脂膜形成層転写用シート16に塗工、乾燥してもよい。
【0140】
そして、
図5dに示すように、樹脂膜形成層転写用シート16と樹脂膜形成層12を含む積層体の樹脂膜形成層12を、第1積層体の開口部15c側に貼付する。この工程により、樹脂膜形成層12の一部が開口部15cに嵌合する。
【0141】
次いで、
図5eに示すように、第1長尺剥離シート15の残余部15aと長尺粘着シート11との界面を剥離起点すると、樹脂膜形成層12が開口部15cに嵌合した形状に割断され、長尺粘着シート11の粘着剤層11b上に、所望の形状の樹脂膜形成層12aが残留する。樹脂膜形成層転写用シート16、樹脂膜形成層12の残余部12b及び第1長尺剥離シート15の残余部15aの積層体は、長手方向に連続しているため、該積層体の除去により、長尺粘着シート11の粘着剤層11b上に所望の形状の樹脂膜形成層12aが整列した積層体(長手方向に連続した樹脂膜形成用シート10)が得られる。樹脂膜形成層の破断伸度や破断強度を所定範囲とすることで、樹脂膜形成層の割断性をより向上させることができる。
【0142】
そして、
図5fに示すように、上記積層体の樹脂膜形成層12aを有する面に、長尺状の第2剥離シート13(以下、「第2長尺剥離シート13」と記載することがある。)を貼付し、第2長尺剥離シート13と長尺粘着シート11の間に樹脂膜形成層12aを有する積層体(以下、「第2積層体」と記載することがある。)を得る。そして、第2積層体の長尺粘着シート11を、長尺粘着シート11側から、リングフレームの内径以上であり外径以下の大きさの所望の形状に型抜きする。この際に、樹脂膜形成層12aの中心点と、型抜き後の長尺粘着シート11の中心点とが一致するように型抜きする。この際の切込深さは、長尺粘着シート11を完全に切り込むことができれば特に限定されない。第2長尺剥離シート13も切り込む場合には、
図3や
図5gに示すように、切込深さd2の切込部D2が形成される。このように形成される切込部D2の切込深さd2やその効果は、上述したとおりである。
【0143】
そして、所望の形状の粘着シート11を、第2長尺剥離シート13上に残存させ、残余の長尺粘着シートを除去する。この結果、第2長尺剥離シート13上に所望の形状の樹脂膜形成層12aと粘着シート(支持シート11)とを含む樹脂膜形成用シート10が積層された、本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体100が得られる。
【0144】
なお、上記において、長尺粘着シートの型抜きを行う際に、長尺粘着シートを所望の形状に切り込むとともに、該形状の長尺粘着シート11の外側に粘着シートから少しの間隔を空け、第2長尺剥離シート13の短手方向の両縁部17に沿って周辺テープ14としての粘着シートが残存するように型抜きすることが好ましい。その後、所望の形状の粘着シート11および周辺テープ14を、第2長尺剥離シート13上に残存させ、残余の粘着シートを除去することで、粘着シート11と樹脂膜形成層12aとを含む樹脂膜形成用シート10と、周辺テープ14とが、長尺の剥離シート13上に、連続して貼合された形態の樹脂膜形成用シート積層体100が得られる。
【0145】
半導体装置の製造方法
次に本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体の利用方法について、
図2及び
図3に示す第1の態様の樹脂膜形成用シート積層体を半導体装置の製造方法に適用した場合を例にとって説明する。
【0146】
第1の半導体装置の製造方法は、樹脂膜形成用シート積層体の樹脂膜形成層を被着体に貼着し、該被着体をダイシングしてチップとし、該チップのいずれかの面に該樹脂膜形成層を固着残存させて支持シートから剥離し、該チップを基板上、または他のチップ上に該樹脂膜形成層を介して載置する工程を含むことが好ましい。該樹脂膜形成層は、チップと基板またはほかのチップとの接着膜である。
【0147】
以下では、被着体としてシリコンウエハを用いた例で説明する。
【0148】
ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は50〜500μm程度である。
【0149】
その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。
【0150】
回路形成および裏面研削に次いで、ウエハの裏面に樹脂膜形成用シート積層体の樹脂膜形成層を貼付する。貼付方法は特に限定されず、例えば、
図1aから
図1dに示す工程で、樹脂膜形成層を半導体ウエハに貼付する。
【0151】
図1aから
図1dは、樹脂膜形成用シート10を被着体32である半導体ウエハに貼り付ける作業を行う一連の工程図である。
図1aに示すように、樹脂膜形成用シート積層体100は、剥離シート13がキャリアフィルムの役割を果たしており、2つのロール62及び66と、ピールプレート64とに支持されながら、その一端が円柱状の巻芯44に接続された状態で巻回され第1のロール42を形成し、他端が円柱状の巻芯54に接続された状態で巻回され第2のロール52を形成している。そして、第2のロール52の巻芯54には、当該巻芯54を回転させるための巻芯駆動用モータ(図示せず)が接続されており、樹脂膜形成用シート10が剥離された後の剥離シート13が所定の速度で巻回されるようになっている。
【0152】
まず、巻芯駆動用モータが回転すると、第2のロール52の巻芯54が回転し、第1のロール42の巻芯44に巻回されている樹脂膜形成用シート積層体100から樹脂膜形成用シート10が第1のロール42の外部に引き出される。そして、引き出された樹脂膜形成用シート10は、移動式のステージ
36上に配置された円板状の半導体ウエハ32及びそれを囲むように配置されたリングフレーム34上に導かれる。
【0153】
次に、剥離シート13から、樹脂膜形成用シート10が剥離される。このとき、
図1aに示すように、樹脂膜形成用シート10の剥離シート13側からピールプレート64を当ててもよい。
また、
図1bに示すように、切込部D2が形成されている場合には、剥離シート13はピールプレート64側へ切込部D2を起点に折り曲げられ、剥離シート13と樹脂膜形成用シート10との間に剥離起点が容易に作り出されることとなる。更に、剥離起点がより効率的に作り出されるように、剥離シート13と樹脂膜形成用シート10との境界面にエアを吹き付けてもよい。その結果、樹脂膜形成用シート10の繰り出しがさらに容易になる。
【0154】
次いで、
図1cに示すように、樹脂膜形成用シート10がリングフレーム34及び半導体ウエハ32と密着するように、樹脂膜形成用シート10の貼り付けが行われる。このとき、ロール68によって樹脂膜形成用シート10は半導体ウエハ32に圧着されることとなる。そして、
図1dに示すように、半導体ウエハ32上への樹脂膜形成用シート10の貼り付けが完了し、樹脂膜形成用シート付半導体ウエハが得られる。
【0155】
以上のような手順により、半導体ウエハ32への樹脂膜形成用シート10の貼り付けを、自動化された工程で連続して行うことができる。このような半導体ウエハ32への樹脂膜形成用シート10の貼り付け作業を行う装置としては、例えば、リンテック(株)製のRAD−2500(商品名)等が挙げられる。
【0156】
そして、このような工程により、樹脂膜形成用シート10を半導体ウエハ32に貼り付ける場合、本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体100を用いることにより、剥離シート13から樹脂膜形成用シート10を容易に繰り出すことができる。
【0157】
樹脂膜形成層が室温ではタック性を有しない場合は適宜加温してもよい(限定するものではないが、40〜80℃が好ましい)。
【0158】
また、樹脂膜形成層にエネルギー線反応性化合物(B21)やエネルギー線により反応する官能基を有する硬化性重合体成分(AB)が配合されている場合には、樹脂膜形成層に支持シート側からエネルギー線を照射し、樹脂膜形成層を予備的に硬化し、樹脂膜形成層の凝集力を上げ、樹脂膜形成層と支持シートとの間の接着力を低下させておいてもよい。
【0159】
その後、ダイシングソーなどの切断手段を用いて、上記の半導体ウエハを切断し半導体チップを得る。この際の切断深さは、半導体ウエハの厚みと、樹脂膜形成層の厚みとの合計およびダイシングソーの磨耗分を加味した深さにする。また、切断手段としては、レーザー光を用いることもできる。
なお、エネルギー線照射は、半導体ウエハの貼付後、半導体チップの剥離(ピックアップ)前のいずれの段階で行ってもよく、たとえばダイシングの後に行ってもよく、また下記のエキスパンド工程の後に行ってもよいが、半導体ウエハの貼付後であってダイシング前に行うことが好ましい。さらにエネルギー線照射を複数回に分けて行ってもよい。
【0160】
次いで必要に応じ、樹脂膜形成用シートのエキスパンドを行うと、半導体チップ間隔が拡張し、半導体チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。この際、樹脂膜形成層と支持シートとの間にずれが発生することになり、樹脂膜形成層と支持シートとの間の接着力が減少し、半導体チップのピックアップ性が向上する。このようにして半導体チップのピックアップを行うと、切断された樹脂膜形成層を半導体チップ裏面に固着残存させて支持シートから剥離することができる。
【0161】
また、半導体ウエハを切断し半導体チップを得る方法として、いわゆる先ダイシング法を用いることもできる。具体的には、回路が表面に形成された半導体ウエハ表面からそのウエハ厚さよりも浅い切込み深さの溝を形成し、該回路形成面に、本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体の樹脂膜形成用シートを表面保護シートとして貼付する。その後、上記半導体ウエハの裏面研削をすることでウエハの厚みを薄くするとともに、最終的には個々のチップへの分割を行う。樹脂膜形成層をチップサイズに切断する方法は特に限定されないが、例えば、レーザーダイシング法を適用できる。
【0162】
次いで樹脂膜形成層を介して半導体チップを、基板上または他の半導体チップ(下段チップ)表面に載置する(以下、チップが搭載される基板または下段チップ表面を「チップ搭載部」と記載する)。
【0163】
載置するときの圧力は、通常1kPa〜200MPaである。また、チップ搭載部は、半導体チップを載置する前に加熱するか載置直後に加熱されてもよい。加熱温度は、通常は80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、通常は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜3分である。
【0164】
半導体チップをチップ搭載部に載置した後、必要に応じさらに加熱を行ってもよい。この際の加熱条件は、上記加熱温度の範囲であって、加熱時間は通常1〜180分、好ましくは10〜120分である。
【0165】
また、載置後の加熱処理は行わずに仮接着状態としておき、パッケージ製造において通常行われる樹脂封止での加熱を利用して樹脂膜形成層を硬化させてもよい。このような工程を経ることで、樹脂膜形成層が硬化し、半導体チップとチップ搭載部とが強固に接着された半導体装置を得ることができる。樹脂膜形成層はダイボンド条件下では流動化しているため、チップ搭載部の凹凸にも十分に埋め込まれ、ボイドの発生を防止でき半導体装置の信頼性が高くなる。
【0166】
また、第2の半導体装置の製造方法は、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、樹脂膜形成用シートの樹脂膜形成層を貼付し、その後、裏面に樹脂膜を有する半導体チップを得ることが好ましい。該樹脂膜は、半導体チップの保護膜である。また、第2の半導体装置の製造方法は、好ましくは、以下の工程(1)〜(3)をさらに含み、工程(1)〜(3)を任意の順で行うことを特徴としている。
工程(1):樹脂膜形成層を硬化し樹脂膜を得る、
工程(2):樹脂膜形成層または樹脂膜と、支持シートとを剥離、
工程(3):半導体ウエハと、樹脂膜形成層または樹脂膜とをダイシング。
【0167】
まず、半導体ウエハの裏面に、樹脂膜形成用シートの樹脂膜形成層を貼付する。当該工程は、上記第1の半導体装置の製造方法における貼付工程と同様である。
【0168】
その後、工程(1)〜(3)を任意の順で行う。例えば、工程(1)〜(3)を工程(2)、(1)、(3)の順、工程(1)、(2)、(3)の順、工程(1)、(3)、(2)の順、工程(3)、(1)、(2)の順、または工程(3)、(2)、(1)の順のいずれかの順序で行う。このプロセスの詳細については、特開2002−280329号公報に詳述されている。一例として、工程(2)、(1)、(3)の順で行う場合について説明する。
【0169】
まず、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、樹脂膜形成用シートの樹脂膜形成層を貼付する。次いで樹脂膜形成層から支持シートを剥離し、半導体ウエハと樹脂膜形成層との積層体を得る。
次いで樹脂膜形成層を硬化し、ウエハの全面に樹脂膜を形成する。樹脂膜形成層に、エポキシ化合物(B11)やエポキシ基を有する硬化性重合体成分(AB)を含む場合には、熱硬化により樹脂膜形成層を硬化する。樹脂膜形成層に、エネルギー線反応性化合物(B21)やエネルギー線により反応する官能基を有する硬化性重合体成分(AB)が配合されている場合には、樹脂膜形成層の硬化を、エネルギー線照射により行うことができる。また、エポキシ化合物(B11)やエポキシ基を有する硬化性重合体成分(AB)と、エネルギー線反応性化合物(B21)やエネルギー線により反応する官能基を有する硬化性重合体成分(AB)とを併用する場合には、加熱およびエネルギー線照射による硬化を同時に行ってもよく、逐次的に行ってもよい。照射されるエネルギー線としては、紫外線(UV)または電子線(EB)等が挙げられ、好ましくは紫外線が用いられる。この結果、ウエハ裏面に硬化樹脂からなる樹脂膜が形成され、ウエハ単独の場合と比べて強度が向上するので、薄くなったウエハの取扱い時の破損を低減できる。また、ウエハやチップの裏面に直接樹脂膜用の塗布液を塗布・被膜化するコーティング法と比較して、樹脂膜の厚さの均一性に優れる。
【0170】
その後、半導体ウエハと樹脂膜との積層体を、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングする。ダイシングは、ウエハと樹脂膜をともに切断するように行われる。ウエハのダイシングは、ダイシングシートを用いた常法により行われる。この結果、裏面に樹脂膜を有する半導体チップが得られる。
【0171】
次いで、樹脂膜にレーザー印字することもできる。レーザー印字はレーザーマーキング法により行われ、レーザー光の照射により保護膜の表面を削り取ることで保護膜に品番等をマーキングする。なお、レーザー印字は、樹脂膜形成層を硬化させる前に行うこともできる。
【0172】
最後に、ダイシングされたチップをコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、裏面に樹脂膜を有する半導体チップが得られる。そして、半導体チップをフェースダウン方式で所定の基台上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、裏面に樹脂膜を有する半導体チップを、基板または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することで、半導体装置を製造することもできる。このような本発明に係る樹脂膜形成用シート積層体を用いた半導体装置の製造方法によれば、厚みの均一性の高い樹脂膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、ダイシング工程やパッケージングの後のクラックが発生しにくくなる。
【0173】
なお、半導体ウエハの裏面に、樹脂膜形成用シートの樹脂膜形成層を貼付した後、工程(3)を工程(2)の前に行う場合、樹脂膜形成用シートがダイシングシートとしての役割を果たすことができる。つまり、ダイシング工程の最中に半導体ウエハを支持するためのシートとして用いることができる。この場合、樹脂膜形成用シートの内周部に樹脂膜形成層を介して半導体ウエハが貼着され、樹脂膜形成用シートの外周部がリングフレーム等の他の治具と接合することで、半導体ウエハに貼付された樹脂膜形成用シートが装置に固定され、ダイシングが行われる。
【0174】
また、工程(3)、(2)、(1)の順で行う場合には、裏面に樹脂膜形成層を有する半導体チップをフェースダウン方式で所定のチップ搭載部上に実装後、パッケージ製造において通常行われる樹脂封止での加熱を利用して樹脂膜形成層を硬化させることもできる。
【実施例】
【0175】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明において採用した測定、評価方法は次のとおりである。
【0176】
<切込部の確認>
樹脂膜形成用シート積層体の剥離シートにおいて、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周部に沿って切込部を有さないことの確認は、樹脂膜形成層の外周部に沿った任意の4点について、剥離シート表面を光学顕微鏡により倍率300倍で観察することにより行った。
【0177】
<樹脂膜形成層の破断伸度>
樹脂膜形成層の破断伸度は、万能引張試験機(オリエンテック社製テンシロンRTA-T-2M)を用いて、JIS K 7161:1994(ISO 527−1:1993)に準拠して、23℃、湿度50%の環境下において引張速度200mm/分で測定した。
【0178】
<樹脂膜形成層の破断強度>
樹脂膜形成層の破断強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。
【0179】
<樹脂膜形成層の粘着剤層への転写性>
樹脂膜形成層が、開口部の外周に沿って所望の形状に割断され、粘着剤層へ転写できた場合を「A」と評価した。また、粘着剤層へ転写できたが、樹脂膜形成層の端部(外周部)に割断に起因した欠け等が目視できた場合を「B」と評価した。一方、粘着剤層へ転写できなかった場合を「C」と評価した。
【0180】
樹脂膜形成用組成物の調製
下記の各成分を表1に記載の量で配合し、樹脂膜形成用組成物1〜5を
調製した。
(AB)アクリル系重合体:ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート20質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部からなるアクリル系重合体(重量平均分子量:800,000、ガラス転移温度:−28℃)
(A1)アクリル系重合体:メチルアクリレート95質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部からなるアクリル系重合体(トーヨーケム社製 重量平均分子量:1,200,000、ガラス転移温度:8℃)
(A2)非アクリル系樹脂:ポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロン220)
(B11−1)エポキシ化合物:エポキシ樹脂(DIC社製 EPICLON EXA−4850−150)
(B11−2)エポキシ化合物:エポキシ樹脂(日本化薬社製 EPPN−502H)
(B11−3)エポキシ化合物:エポキシ樹脂(日本化薬社製 CNA−147)
(B12−1)熱硬化剤:フェノール樹脂(明和化成社製 MEH−7851−4H)
(B12−2)熱硬化剤:フェノール樹脂(三井化学社製 ミレックスXLC−4L)
(B13)硬化促進剤:四国化成工業社製 2PHZ−PW
(C−1)無機フィラー:シリカフィラー(アドマテックス社製 SC2050−MA、粒径:500nm)
(C−2)無機フィラー:シリカフィラー(アドマテックス社製 YA050C−MJA)
(E−1)カップリング剤:シランカップリング剤(信越化学工業社製 KBM403)
(E−2)カップリング剤:シランカップリング剤(信越化学工業社製 KBE403)
(E−3)カップリング剤:シランカップリング剤(信越化学工業社製 X−41−1056)
(E−4)カップリング剤:シランカップリング剤(三菱化学社製 MKCシリケートMSEP2)
架橋剤:芳香族多価イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製 コロネートL)
【0181】
【表1】
【0182】
(実施例1)
得られた樹脂膜形成用組成物1のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度61重量%)を、剥離処理された樹脂膜形成層転写用シート(リンテック社製 SPPET381031)の剥離処理面上に塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃、1分間)し、樹脂膜形成層転写用シート上に厚み7μmの樹脂膜形成層を形成した。
【0183】
次に、支持シートとして粘着シート(リンテック社製 D−175、粘着剤層厚み:10μm、基材厚み:80μm)を用意し、粘着剤層上に第1剥離シート(SPPET381031、厚み:38μm)を積層し、支持シートと第1剥離シートの積層体を得た。次いで、該積層体の第1剥離シート側から、切込深さ60μmで、直径330mmの円形状に型抜きを行った。これにより、支持シートには切込深さd1が約20μmの切込部D1が形成された。
【0184】
次いで、上記積層体の剥離シート側に、剥離用粘着テープを貼付し、その後、剥離用粘着テープを除去した。これにより、直径330mmの円形状の第1剥離シートが除去され、粘着シート上に第1剥離シートの残余部を積層し、開口部を有する第1積層体を得た。
【0185】
次いで、第1積層体の開口部側に、上記で得た樹脂膜形成層転写用シートと樹脂膜形成層との積層体の樹脂膜形成層を貼付し、樹脂膜形成層を開口部に嵌合させた。
【0186】
その後、第1剥離シートの残余部と粘着シートとの界面を剥離起点として剥離すると、樹脂膜形成層が開口部に嵌合した形状に割断され、粘着シートの粘着剤層上に直径330mmの円形状の樹脂膜形成層が残留した。そして、樹脂膜形成層の粘着剤層への転写性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0187】
そして、粘着シートの樹脂膜形成層を有する面に、第2剥離シート(SPPET381031、厚み:38μm)を貼付し、第2剥離シートと粘着シートとの間に樹脂膜形成層を有する第2積層体を得た。
【0188】
次いで、第2積層体の粘着シート側から、切込深さ110μmで、樹脂膜形成層の中心点と一致するように、直径370mmの円形状に型抜きを行った。これにより、第2剥離シートには切込深さd2が約20μmの切込部D2が形成された。最後に、直径370mmの円形状の粘着シートを第2剥離シート上に残存させ、残余の粘着シートを除去することで、
図3の態様の樹脂膜形成用シート積層体を得た。
実施例1の樹脂膜形成用シート積層体の剥離シート(第2剥離シート)は、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周に沿って切込部を有しないことが確認できた。
【0189】
(実施例2〜5)
実施例1において用いた樹脂膜形成用組成物1の代わりに、樹脂膜形成用組成物2〜5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂膜形成用シート積層体を得た。
実施例2〜5の樹脂膜形成用シート積層体の剥離シートは、樹脂膜形成層側の面から樹脂膜形成層の外周に沿って切込部を有しないことが確認できた。
【0190】
【表2】
【0191】
実施例4,5の樹脂膜形成用シート積層体においては、樹脂膜形成層の粘着剤層への転写性の評価が「B」であった。樹脂膜形成層の端部(外周部)に欠け等が目視される場合には、端部における樹脂膜形成層の被着体への貼付性が低下することから、半導体装置の生産性に劣ることがある。