【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下に示す換気システムによって達成される。
【0007】
本発明における換気システムは、一方では、機械的な換気を行うデバイス、他方では、ECLSデバイスによって体外血液ガス交換を行い、特に、酸素付加および換気を行うことによって、協調して自動的に機械的な呼吸の補助を行い、患者の血液循環系におけるガス交換を補助するように構成されている。具体的に、このシステムは、集中治療される患者に用いるために構成され、特に、患者の集中治療中に行われる機械的な換気において、機械的な換気だけでは患者の肺機能を十分に補助することができない状況や、あるいは、肺機能を十分に補助するために、機械的な換気の換気パラメータの設定を、肺および気道、ならびに/または、心臓血管系を損傷させる恐れがあるような設定にする必要がある状況になり始めたときに、肺機能および血液ガス交換を、それぞれ補助するように構成されている。
【0008】
本発明によれば、ECLSデバイスは、体外血液ガス交換、特に、酸素付加/換気におけるレベルを設定し、機械的な換気を行うデバイスは、ECLSデバイスによって設定された体外血液ガス交換のレベルに基づいて、あるレベルの機械的な呼吸補助に自動的に適応する。
【0009】
提案される機械的な換気を行うデバイスは、現在、機械的な換気において散見されるように、陽圧換気デバイスとして実現することができる。陽圧換気の場合、吸息中に外部から気道に陽圧を印加することにより、場合によっては、酸素、および/または、その他の添加物が加わった空気を肺に送り込む効果がある。ほとんどの場合、呼息は、周囲の圧力が気道出口に印加され、肺内部の圧力が周囲の圧力に対して解放されて受動的に起こる。呼息中に何らかの機械的な補助を設けることも任意に選択することができる。機械的な換気の場合、血液ガスの適切な交換、特に、静脈血中のO
2の富化、および、静脈血中のCO
2の除去は、それぞれが基本的に肺の内部で行われる。機械的な換気を行うデバイスは自発的な呼吸補助の形態から完全に機械で制御された換気の形態までの範囲を網羅するような、複数の異なる換気モードを可能にする。機械的な換気を行うデバイスは、例えば、換気モードを変化させて、換気の侵襲性を患者の状態に応じて連続的に適応させることができる。
【0010】
患者の状態は、例えば、機械的な換気でよく行われる、吸気中のO
2および呼気中のCO
2の含有量(例えば呼息の終端におけるPetCO
2)の特定、または、パルス・オキシメトリによる血液中の酸素飽和度の測定(SpO
2)、あるいは、肺の粘性抵抗およびコンプライアンス(肺のやわらかさ)の測定など、特有のパラメータのそれぞれを検出するための様々なセンサ、または、測定手順によって検出することができる。さらに、一般に換気中に散発的にのみ、または、手動によってのみ検出されるパラメータ、特に、対応する化学的な分析、または、光学的な測定によって血液中の呼吸ガスの含有量(PaO
2、PaCO
2)を検出することも可能である。これらの測定手順は全て、すなわち医師または看護師による処置を必要とすることなく自動的に実行することができる。
【0011】
機械的な換気を行うデバイスは、特定の換気パラメータに従って動作する。これらのパラメータには、特に、肺に供給される呼気中の酸素濃度(FiO
2)、毎分あたりの呼吸数である呼吸頻度、1呼吸あたり肺に送り込まれる空気の体積である1回換気量(呼吸量とも呼ばれる)、呼息を行っている途中の空気流である呼息流(これは、1呼息を行っている途中に実際に変化する可能性があり、通常は変化するものである)、呼息を行っている途中の気道入口における空気の最大圧力である最大呼息圧力、呼息の終了時に肺胞の一部のつぶれを相殺するために換気中に気道入口に絶えず印加される陽圧である呼気終末陽圧(いわゆるPEEP)が含まれる。PEEPは、一般に、呼息の終了時の気道出口における圧力として特定することができる。
【0012】
機械的な換気を行うデバイスは、FiO
2、PEEP、または、最大呼息圧力など、予め一定に設定された換気パラメータに基づいて換気を実行することができる。その他の換気パラメータは、換気デバイスによって、可能な限り最良の換気状態を実現するように自動的にそれぞれ適応させることができる。これに関して、換気は、機械的な換気を行うデバイスが、所与の換気モードにおいて予め一定に設定された換気パラメータ、ならびに、自動的に検出されたフレキシブルな換気パラメータに基づいて、関連するフレキシブルな換気パラメータを自動的に設定する(例えば、それぞれの閉ループ制御システムによって)ように行うことができる。予め一定に設定される換気パラメータ、および、設定可能なフレキシブルな換気パラメータの種類および数は、換気モードの種類、例としてその一部のみを挙げると、圧力制御式換気、体積制御式換気、BiPAP換気などによって異なる。予め一定に決められた換気パラメータの数が少なくなるほど、換気デバイスは様々な影響に対してより柔軟に適応することができ、換気において必要となる手作業による処置の数が少なくなる。ただし、それに応じて閉ループ制御を行うために必要な処置も増加し、特に、肺に損傷を与えるような特定の換気パラメータの組合せが生じる危険性がある。これを回避するために、フレキシブルな換気パラメータについて、特定の基本条件を定義することができる。その場合、換気デバイスは、それぞれについて定義された範囲内でのみ、それぞれの換気パラメータを変化させることができる。
【0013】
また、機械的な換気を行うデバイスが、様々な換気モードを交換して行うことができる、または、複数の換気モードの中から、適当なそれぞれの換気モードを選択することができることも考えられる。これは、検出されたそれぞれの換気パラメータ、または、換気状態に特徴的なパラメータを評価することによって自動的に行うことができる。例として、例えば本出願人によって「S1」として市販されている機械的な換気を行うデバイスに含まれるASV(適応補助換気)として知られる、本出願人による換気システムを参照されたい。
【0014】
機械的な換気の他にも、血液ガスの交換、すなわち、血液における酸素の富化(酸素付加)、および/または、血液からのCO
2の除去(換気)が機械的に補助される、または、さらに完全に機械的に行われるという意味で、肺の機能を部分的に、または、完全に機械が引き継ぐ様々な体外式肺補助(ECLS)の方法がある。ECLSは、通常は、心臓外科手術において頻繁に利用される人工心肺装置と同様に、集中治療に使用される技術である。人工心肺装置の場合には、血液の循環を維持する心臓機能を機械によって完全に引き継がなければならないが、ECLSは、必ずというわけではなくとも、通常は、肺機能の置換、または、補助に集中している。静脈−静脈ECLSシステムは、通常、静脈系から血液を抜き取り、体外血液ガス交換の後で、この血液を静脈系に戻すことによって、肺機能を補助する。静脈−動脈ECLSシステムでは、静脈系から抜き取られた血液が体外血液ガス交換後に動脈系に戻され、さらに、心臓機能の機械的な補助の可能性も提供する。本発明とも関連して、静脈−静脈ECLSシステムも静脈−動脈ECLSシステムも両方とも利用することができる。ECLSは、肺胞における呼吸機能の確保が必要な程度まで、ガス交換を行うことができなくなるほど深刻に肺が損傷している患者に対して使用される。したがって、ECLSは、一種の体外器官置換方法である。
【0015】
例えば、いわゆる体外式膜型人工肺(ECMO)などのほとんどのECLS方法では、2本の太い血管(静脈−静脈タイプの場合には1本または2本の太い静脈、静脈−動脈タイプの場合には1本の太い静脈と1本の太い動脈)にカニューレを挿入して、例えば、血液からCO
2を除去し、血液中のO
2を富化し、そののち、このように処理した血液を患者の血液循環系に戻すECMO(体外式膜型人工肺)の場合の膜型酸素付加器など、体外酸素付加器を通して連続的に血液を送る。血液は、患者の静脈系に戻すことができるので(いわゆる静脈−静脈ECLS)、心臓機能は、依然として心臓によって維持されている。ただし、心臓をブリッジし、血液を心臓より下流側の動脈系に戻し、ポンプ回路によって心臓機能を補助する形態(いわゆる静脈−動脈ECLS)もある。膜型酸素付加器の代替として、例えば、肺胞酸素付加器など、その他の形態を使用することもできる。いくつかの場合、ECLSは、例えば、一体型ガス交換カテーテル(IGEC)を太い静脈に直接挿入することにより、侵襲性を最小限に抑えて実行することができる。その場合には、カテーテルの毛細管がO
2を供給してCO
2を除去することによって静脈内でガス交換が行われるので、患者から血液を抜き取る必要がない。
【0016】
ECLSは、数日または数週間にわたって十分な酸素付加および換気を保証することができるので、積極的な機械的な換気を行うことなく治癒する時間を肺に与える。にもかかわらず、ECLSが治療の最後の選択肢と考えられているのは、技術的および人員的な費用、コスト、および複雑さのリスク(例えば出血)が高いからである。
【0017】
通常、ECLSでは、体外酸素付加器に供給されるガスの組成(例えばO
2およびCO
2の含有量)、体外酸素付加器に供給されるガス流、体外酸素付加器を通る血流などのパラメータが影響を受ける可能性がある。
【0018】
本発明は、機械的な換気およびECLSが、わずかな肺への損傷のみで、可能な限り効率的な、機械的な換気が相互に協調して実行されるように構成されている換気システムに関する。この換気システムは、機械的な換気を行うデバイスとECLSデバイスとを備え、基本的には以下、本明細書で述べるようにそれぞれ構成することができる。
【0019】
従来通りに動作する機械的な換気、特に、陽圧換気を行うデバイスと、体外式肺補助ECLSのデバイス(特に体外式膜型人工肺ECMOのデバイス)との発明性のある組合せにより、ECLSデバイスは、パラメータ(例えば、体外回路内または体外酸素付加より下流側の静脈血内を流れるO
2の含有量などのECLSデバイスで特定されるパラメータ、または、機械的な換気で得られるパラメータなどとすることができる)を評価することにより機械的な換気の強度に対するECLSによる治療の強度を変化させるかどうかを判定する。所定のパラメータとして、ECLS治療の強度の相対比率を示す少なくとも1つのパラメータが機械的な換気を行うデバイスに転送される。次いで、機械的な換気を行うデバイスには、特定の状況に適応するか、または、少なくとも、特定の状態が得られるように適応しようとする。したがって、治療の過程に関しては、常にECLSデバイスが機械的な換気を行うデバイスにより優勢である。ECLSデバイスには、所定の補助レベルに予め設定される。機械的な換気を行うデバイスは、ECLSデバイスの補助レベルを予め設定されたファクタとして考慮し、適応する。
【0020】
治療のさらなる過程は、ECLSデバイスによって設定された補助レベルが、どの度合いまで維持されるか、または、変更されるか(通常は低下する)を検知することによって決定される。ECLSデバイスによる補助のレベルを低下させる場合には、機械的な換気の自動設定の新たな指定として機械的な換気を行うデバイスにECLSデバイスによる補助の新たなレベルを識別するためのパラメータが転送される。これは、例えば、ECLSデバイスが体外血液ガス交換のレベルの目標値を設定するように行うことができる。ECLSデバイスは、ECLSデバイスによって現在検出されている血液ガス値を考慮して、予め設定された目標値に接近しようとし、その後、到達したら目標値を維持することをターゲットとして動作する(閉ループ)制御機構を備える。機械的な換気は、その度にこの目標値への接近の過程において優勢であるECLSデバイスの各状態に適応し、したがって、また間接的に予め設定された目標値に一致する換気状態に向かう過程をたどる。
【0021】
可能な制御戦略は、ECLSデバイスが最初に可能な限り高い補助レベル、特にECLSデバイスが肺機能の必要な補助を完全に実施することができ、機械的な換気を行うデバイスによる補助が行われない補助レベル(すなわちECLSデバイスの補助レベルが100%)に設定されることにあることがある。その後、ECLSデバイスの補助レベルをどの程度まで低減することができるか、および、それに応じて機械的な換気を行うデバイスによる補助レベルをどの程度まで上昇させることができるかを、(通常はECLS制御ユニットによって)定期的に検知する。
【0022】
機械的な換気を行うデバイスは、ECLS回路内の血流、O
2およびその他のガスの酸素付加器に流れる総ガス流、酸素付加器のガスの組成などのパラメータによって特徴付けられるそれぞれのECLSデバイスの所与の設定について、ガス交換の所与の目標値が達成されるように機械的な換気を行うデバイスのパラメータを設定しようとする。この意味では、本発明による提案は、ECLSデバイスが機械的な換気を行うデバイスと比較して「優勢」であることを意味している。機械的な換気を行うデバイスは、ECLSデバイスによって設定される状態を所与の状態とみなし、この所与の状態に合わせて、機械的な換気を行うデバイスの適当な状態を設定しようとする。これに関連して、機械的な換気を行うデバイスは、特定の換気モードに応じた予め一定に設定される換気パラメータについての特定の要件に束縛され、また実際には、最大PEEP、最大気道圧力、または、供給される換気ガスの最大毎分換気量など設定可能な換気パラメータについての特定の基本条件にも束縛される。毎分換気量は、呼吸頻度と1回の呼吸の1回換気量との積である。
【0023】
ECLSデバイスによる体外血液ガス交換のレベルは、自動的に、または、手動で、予め選択することができる。特に注目すべきは、さらに一例を提示して詳細に説明するように、ECLSデバイスの設定戦略の範囲内においてECLSデバイスによる体外血液ガス交換のレベルを自動的に予め設定することができることである。
【0024】
例えば、機械的な換気を行うデバイスは、ECLSデバイスによる体外血液ガス交換のレベルに関するそれぞれの設定について、機械的な換気を行うデバイスによる呼吸補助が自動的に(開ループ/閉ループ)制御されるように構成することができる。例えば、機械的な換気を行うデバイスは、所定の換気パラメータの範囲内において、自動的に機械的な換気を行うデバイスによって設定される換気状態を選択し、機械的な換気を行うデバイスが選択した換気状態になる、または、少なくとも選択した換気状態にさせるように機械的な換気を行うデバイスを制御するように構成することができる。これは、特に、閉ループ制御システムを使用した機械的な換気を行うデバイスの形態で設けることができる。例えば、「ASV」(適応補助換気)として知られる換気モードを有する換気デバイスは、選択されるそれぞれの換気モードで十分なフレキシビリティを提供し、さらに、適当と判断される特定の換気モードを自動的に選択することができる。ASVは、閉ループ制御システムを用いた最適な換気モードの動的な計算と、換気モードの選択後には、選択された各換気モードの自由パラメータのうち、依然として自動設定が必要なものへの動的な計算とによる換気を実現するので、患者に与える影響を可能な限り小さくして、十分な呼吸補助を実現することができる。これを行う際には、可能な限り低い圧力で動作する肺保護のための処置戦略が好ましい。
【0025】
機械的な換気を行うデバイスで設定される換気パラメータは、ECLSデバイスによって設定される体外血液ガス交換のレベルから導出することができる。例えば、機械的な換気を行うデバイスにおける最大の呼気終末陽圧PEEPmax、機械的な換気を行うデバイスにおける最大の気道圧力(PEEP+Pinsp)、または機械的な換気を行うデバイスにおける最大の毎分換気量は、体外血液ガス交換のそれぞれの設定されたレベルによって決まることがある。
【0026】
例えば、ECLSデバイスによって設定される体外血液ガス交換のレベルに、酸素付加における、すなわち、血液中の酸素を富化するときの体外補助の度合いを割り当てることができる。酸素付加における体外補助の度合いは、特に、血液中の酸素の富化における体外酸素付加の総計、すなわち、体外酸素付加および機械的な換気を行うデバイスによって実現される血液中の酸素の富化の総計の比率に関する相対値とすることができる。この比率は、以下、%ECLS_O
2と記載する。酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2により、機械的な換気の最大の呼気終末陽圧PEEPmaxを特定することができる。最大の呼気終末陽圧(PEEPmax)は、その後、酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2が低下するにつれて増加する。このようにして、機械的な換気を行うデバイスの多数の換気モードにおいて換気強度の基本条件となる最大の呼気終末陽圧が、酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2が低下するほど、ますます高くなることが保証される。これにより、それに応じて、体外酸素付加による補助のレベルと比較して、血液中のO
2の富化における機械的な換気を行うデバイスによる補助のレベルが上昇することになる。酸素付加における体外補助の度合いが低下するにつれて、機械的な換気を行うデバイスの関連性はますます高くなる。したがって、機械的な換気を行うデバイスとECLSデバイスとを組み合わせて十分に動作させる期間が長くなるほど、血液中のO
2を富化するための(生体)器官としての肺の機能の重要性は高くなる。これは、機械的な換気を行うデバイスの補助とECLSデバイスの補助とを組み合わせて十分に行う期間が長くなるほど、機械的な換気を行うデバイスにおいて設定される呼気終末陽圧PEEPがとる最大値が大きくなる可能性があるという事実と整合している。呼気終末陽圧が高くなると、呼息中の肺胞のつぶれを、より良好に抑制することができるため、機械的な換気を行うデバイスの効率が高くなるが、一方では、肺組織にかかる負荷が大きくなることも意味している。
【0027】
体外血液ガス交換のレベルの変化は、体外血液ガス交換の比率と比較して機械的な換気を行うデバイスの比率が強制的に変更されることの直接の結果である。
【0028】
酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2が、ECLSデバイスによって患者から抜き取られる血流の最大値を特定するので、体外血液ガス交換のレベルの変更を直接得ることもできる。これに関連して、酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2が増大するにつれて、ECLSデバイスによって患者から抜き取られる血流の最大値が増大するようにすることもできる。この方法を、前述した最大の呼気終末陽圧と酸素付加における体外補助の度合いとの間の関係性の代わりに使用することもできる。ただし、この方法は、付加的に利用すると特に効率的である。
【0029】
これに加えて、または別の方法として、換気における、すなわち、血液からCO
2を除去するときの体外補助の度合いを、体外血液ガス交換のレベルに割り当てることもできる。また、換気における体外補助の度合いは、特に、血液からCO
2を除去する際の体外換気の総計、すなわち、体外換気および機械的な換気(人工呼吸)によって実現される血液からのCO
2の除去の総計の比率に関する相対値とすることができる。この比率は、以下では%ECLS_CO
2とも呼ぶ。
【0030】
換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2は、酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2から独立していることもある。
【0031】
換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2により、機械的な換気を行うデバイスにおける最大の毎分換気量を特定することができる(毎分換気量は、1回換気量と呼吸頻度の積として定義される)。特に、最大の毎分換気量は、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2が低下するにつれて増加することができる。これに加えて、または別の方法として、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2により、機械的な換気を行うデバイスにおける最大の気道圧力を特定することもできる(気道圧力は、呼気終末陽圧PEEPと吸息および呼息中に優勢な圧力の和として定義され、最大の気道圧力は、通常は吸息の終了時に得られる)。特に、最大の気道圧力は、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2が低下するにつれて増加することができる。これは、特に、最大の気道圧力が換気における体外補助の度合いから導出されるだけでなく酸素付加における体外補助の度合いからも導出される、特に、この2つの度合いのうちの高い方から導出されるときに好ましいことが分かっている。例えば、機械的な換気を行うデバイスにおける最大の気道圧力を導出するために、酸素付加における体外補助(%ECLS_O
2)および換気における体外補助(%ECLS_CO
2)の最大値の度合いが減少するにつれて増大する最大の気道圧力との関係を利用することができる。
【0032】
このようにして得られる効果は、場合によっては、酸素付加における体外補助の度合いをさらに考慮して、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2が低下するにつれて、最大の気道圧力、および/または、最大の毎分換気量(これらのパラメータも、機械的な換気を行うデバイスの多くの換気モードにおいて換気強度の基本条件となる)が増大し続けることである。したがって、機械的な換気を行うデバイスによってCO
2を除去する際の補助のレベルは、それに応じて、体外換気による補助のレベルと比較して増大する。機械的な換気を行うデバイスの重要性は、換気における体外補助の度合いが低下するほど、高くなる。したがって、この場合も、換気における体外補助の度合いが低下するほど、血液からCO
2を除去するための(生体)器官としての肺の機能の重要性は高くなる。これは、気道圧力、および/または、毎分換気量の最大限界値が大きな機械的な換気を行うデバイスほど、より大きな総負荷が再度肺組織に作用することにはなるが、より効率的な呼息を実現する傾向があるという事実と整合する。
【0033】
この場合も、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2が、ECLSデバイスが患者の血液循環系から抜き取られた血液に供給する酸素化ガス流の最大値が特定するときに、体外血液ガス交換のレベルの変更を直接実施することもできる。特に、ECLSデバイスが患者の血液循環系から抜き取られた血液に供給する酸素化ガス流の最大値は、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2が増大するにつれて増大することができる。別の方法として、またはこれに加えて、酸素化ガスの組成を変化させることも可能である。この方法も、最大の気道圧力、および/または、一方では最大の毎分換気量と、他方では、換気における体外補助の度合いとの間の以下に示す相関の代わりに利用することができる。ただし、この方法は、付加的に利用すると特に効率的である。
【0034】
相当の度合いまで、自動的に、望ましくは、完全に自動的に、高い信頼性で動作する換気システムにおいて、通常、体外血液ガス交換のレベルの設定値を有するECLSデバイスは、所定の期間の満了時に、その体外血液ガス交換のレベルの設定値に関して、機械的な換気を行うデバイスおよびECLSデバイスの協働によって血液ガス交換の所定の目標状態が達成されるかどうかを検知する。
【0035】
血液ガス交換の所定の目標状態は、例えば、血液循環系内のO
2の含有量について特徴的なパラメータによって表現することができる。この目的のために、基本的には、血液中のO
2の含有量を表現することができる、全ての一般的な方法またはパラメータを使用することができる。特に、以下のパラメータのうちの1つを使用すると容易である。すなわち、SpO
2(パルス・オキシメトリによって特定される静脈血中のO
2の飽和度値であり、この目的のためには、特に使いやすい指先プローブが利用できる)、SaO
2(化学的分析または光学的方法によって特定される血液中の酸素の飽和度値)、または、PaO
2(血液中のO
2の分圧)である。これらの値は、機械的な換気を行うデバイス内で(例えばパルス・オキシメトリによって)、またはECLSデバイス内で(これは、いずれにしても血液流が患者の血管系から分岐するので、血液ガス分析で有用である)測定することができる。測定プローブの位置は、基本的には、血液ガス交換が行われる位置の下流側または上流側とすることができる。
【0036】
これに加えて、または別の方法として、対応する方法で、血液循環系内のCO
2の含有量を定義するパラメータによって、血液ガス交換の所定の目標状態を特徴付けることができる。この場合も、例えば、PaCO
2(血液中のCO
2の分圧)、PetCO
2(呼息の終了時に測定される呼気中のCO
2の含有量)など、血液中のCO
2の含有量または濃度を表現するのに適した全ての既知の方法またはパラメータを利用することができる。また、CO
2に関する血液ガス交換の測定は、機械的な換気を行うデバイス(例えばPetCO
2)またはECLSデバイス(例えばPaCO
2)の両方で行うことができる。O
2の含有量に関する上記の説明は、同様に当てはまる。
【0037】
特に好都合な経過としては、ECLSデバイスは、所定の目標状態に到達した後で、体外血液ガス交換のレベルを低下させる。これは、ECLSデバイスが、機械的な換気を行うデバイスによって行われる血液ガス交換を優先し、体外血液ガス交換のレベルを、初期のレベルから継続的に連続して低下させる固有の傾向を有することを意味する。その結果、この換気システムは、体外血液ガス交換からの固有のウィーニング効果を含む。すなわち、体外血液ガス交換は、機械的な換気を行うデバイスが所与のレベルの体外血液ガス交換で所定の目標状態が得られる状態に適応することができる限り、低下し続ける傾向がある。既に説明したように、所定の目標状態は、特に、血液中の酸素の富化、および/または、血液からのCO
2の除去に関する所望の状態である。
【0038】
所望のウィーニング効果は、ECLSデバイスが、目標状態に到達することができる、特に、血液循環系内のO
2濃度の設定値に到達することができると判定した後で、酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2を、第1の所定の量だけ低下させる点で、特に、簡潔に実現することができる。上記に説明したように、これは、血液ガス交換の補助、特に、血液中の酸素の富化における機械的な換気を行うデバイスの比率が酸素付加における体外補助の比率を犠牲にしてさらに上昇するという効果を有する。ECLSデバイスおよび機械的な換気を行うデバイスの協働による血液ガス交換、特に、酸素付加における補助の全体的なレベルは、必ずしも変化する必要はない。むしろ、このレベルは、多くの場合、全体としての必要とされる補助レベルが変化していないことから一定のままである。ただし、施される補助における機械的な換気の全体の比率は、時間経過とともに増加するように変化する。これは、例えば、体外膜型人工肺による補助の度合い%ECLS_O
2が低下するにつれて最大の呼気終末陽圧が上昇するので、機械的な換気を行うデバイス全体が、例えば呼気終末陽圧PEEPなどの次第に緩くなる境界条件の範囲内で起こる可能性があることによるものである。体外膜型人工肺による補助の度合い%ECLS_O
2が低下するにつれて患者から抜き取られる血液の最大流が次第に少なくなることも、1つの要因である。
【0039】
したがって、別の方法として、または、これに加えて、ECLSデバイスは、目標状態に到達することができる、特に、血液循環系内のCO
2濃度の設定値に到達することができると判定した後で、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2を第2の所定の量だけ低下させることが可能である。酸素付加における体外補助の度合い%ECLS_O
2に関連する上記の説明は、この場合にも同様に当てはまる。つまり、血液ガス交換の補助、特に、血液からの二酸化炭素の除去における機械的な換気を行うデバイスの比率は、換気における体外補助の比率を犠牲にしてさらに上昇する。血液ガス交換、特に、ECLSデバイスおよび機械的な換気を行うデバイスの協働による換気における補助の全体的なレベルは、必ずしも変化する必要はない。むしろ、このレベルは、多くの場合、全体としての必要とされる補助レベルが変化していないことから、一定のままである。ただし、施される補助における機械的な換気全体の比率は、時間経過とともに増加するように変化する。体外換気による補助の度合い%ECLS_CO
2が低下するにつれて最大の気道圧力、および/または、最大の1回換気量が上昇するので、機械的な換気は、例えば最大の気道圧力、および/または、最大の1回換気量などの次第に緩くなる境界条件の範囲内で起こる可能性がある。体外換気による補助の度合い%ECLS_CO
2が低下するにつれて患者から抜き取られる血液に供給される酸化ガスの最大流が次第に少なくなることも、1つの要因である。
【0040】
所定の目標値を超えないように、ECLSデバイスが体外酸素付加のレベルを低下させるようにすることができる。特に、ECLSデバイスが、血液循環系内のO
2濃度の所定の値を超えると、ECLSデバイスによって患者の血液循環系から抜き取られる血流を低減させる、かつ/または、酸素付加における体外補助の度合いを低下させるようにすることができる。特に、ECLSデバイスは、血液循環系内のCO
2濃度の所定の値を超えたときに、ECLSデバイスによって患者の血液循環系から抜き取られる血液に供給される酸素化ガス流を低減させる、かつ/または、換気における体外補助の度合い%ECLS_CO
2を低下させるようにすることができる。酸素付加における体外補助の度合いまたは換気における体外補助の度合いは、特に、それぞれの所定の目標値に実際に到達したが超えてはいない場合より大きく低下させることができる。
【0041】
所定の目標値に到達していない場合、プロセスの停止、または、特定の反転を実現することができる。これは、ECLSデバイスが体外酸素付加のレベルおよび体外換気のレベルをそれぞれ所定の量だけ上昇させることによって実現することができる。このシナリオでも、それぞれの目標値から明らかにずれている、かつ/または、それぞれの目標値に近づく傾向が全く確認されないときには、体外酸素付加のレベルおよび体外換気のレベルを、それぞれ明らかに、より大きな量だけ増加させることによって、危険な状況を考慮することができる。
【0042】
機械的な換気を行うデバイスの比率が可能な限り高く、体外血液ガス交換の比率が必要なだけの高さである状態に、ほぼ自律的に適応する換気システムは、特に、ECLSデバイスが、機械的な換気を行うデバイスおよびECLSデバイスの協働によるそれぞれの体外血液ガス交換のレベルの設定値で、血液ガス交換の所定の目標値に到達することができるかどうかを、一定の時間間隔で検知する点で実現することができる。この検知は、上記で概説した方法で行うことができ、上記に示した結果を有することがある。
【0043】
ECLSデバイスによる検知の時間間隔は、「可能な限り短く、必要なだけ長く」という原則に従って選択しなければならない。これに関連して、機械的な換気を行うデバイスが非常に短い時間のなかで変化後の状況に適応することができることを利用することができる。これに対して、体外血液ガス交換は、明らかにより強い介入を必要とし、このことは、患者に対する強い影響があることを予想しなければならないことも意味している。したがって、体外血液ガス交換のパラメータを可能な限りゆっくりと、かつ、可能な限り連続的に一致させることが望ましい。これは、ECLSデバイスによる検知の時間間隔を、機械的な換気を行うデバイスの時定数、すなわち、機械的な換気を行うデバイスが予め設定されたパラメータの変化に適応するために、平均して必要とする時間よりも明白に大きくなるように選択することによって、対応することができる。治療の過程の大部分を定義する部分システムであるECMOと、それに適応する部分システムである機械的な換気を行うデバイスとの協調によって提案される組合せでは、この手法が本質的に、ECLSデバイスによる検知の時間間隔をより長く、いずれの場合でも機械的な換気を行うデバイスの時定数よりはるかに長くなるように選択することを可能にすることから、この手法が好まれる。例えば、機械的な換気を行うデバイスは、各呼吸の度に新たな設定を提供する、すなわち、呼吸するごとに制御を実行するように構成することができる。
【0044】
基本的に、この手順は、ECLSデバイスが予め設定された体外における酸素付加/換気のレベルの開始値から始動し、次いで機械的な換気を行うデバイスと協働して、ほぼ自律的に、すなわち、手動による介入を必要とせずに、両部分システムがほぼ最適に動作する状態に至るようにすることができる。この状態も、例えば機械的な換気、および/または、体外血液ガス交換の適応を必要とする患者の状態の変化があるときに、治療の過程で変化する可能性がある。これは、開始値が体外における酸素付加/換気のレベルの最大レベルに対応するときに、特に好都合である。次いで、血液ガス交換がほぼ完全にECLSデバイスによって行われ、機械的な換気を行うデバイスが用いられない状態から開始する。この状態から開始して、換気システムは、体外血液ガス交換および機械的な換気のレベルを段階的に設定し、体外血液ガス交換の比率をますます低下させ、機械的な換気の比率をそれに応じて段階的に上昇させる。
【0045】
これは、換気システムが、開始値を、将来的な過程における体外の酸素付加/換気のレベルの低下および上昇の参照値として使用するときに好都合である。
【0046】
これに加えて、本発明は、患者の肺の機械的な換気を行うデバイスおよび患者の血液の体外血液ガス交換を行うECLSデバイスを協調して動作させる方法であって、一方の機械的な換気を行うデバイスによる機械的な呼吸補助および他方のECLSデバイスによる体外血液ガス交換を、協調して自動的に実行し、患者の血液循環系におけるガス交換を補助する方法にも関する。この方法では、ECLSデバイスが、体外血液ガス交換のレベルを設定し、機械的な換気を行うデバイスが、ECLSデバイスによって設定された体外血液ガス交換のレベルに基づいてあるレベルの機械的な呼吸補助に自動的に適応する。この方法は、上述のように、好ましい展開でさらに展開させることができる。
【0047】
以下、図面に示す実施形態に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明する。