特許第6574796号(P6574796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000002
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000003
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000004
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000005
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000006
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000007
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000008
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000009
  • 特許6574796-バスバー保持構造 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574796
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】バスバー保持構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20190902BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/34 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-16297(P2017-16297)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-125157(P2018-125157A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】外山 昭人
(72)【発明者】
【氏名】江島 修平
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−035323(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/052699(JP,A1)
【文献】 特開2015−138604(JP,A)
【文献】 特開2011−040332(JP,A)
【文献】 特開2016−134275(JP,A)
【文献】 特開2013−062218(JP,A)
【文献】 特開2013−178969(JP,A)
【文献】 特開2012−199007(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/021614(JP,A1)
【文献】 特開2016−025013(JP,A)
【文献】 特開2000−333343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極端子を有する複数の単電池の隣り合う電極端子間を電気的に接続する複数のバスバーを絶縁樹脂製の電線配索体に保持するためのバスバー保持構造であって、
前記バスバーは、折り返し部に区切られた複数の板部が前記折り返し部により折り返されて重ね合わされることにより構成された板状の本体部と、前記本体部から延設されて電線の端末部に接続される電線接続部とが一体に形成されており、
前記電線配索体には、前記本体部の側縁部を係止してバスバー収容部に保持する係止部が形成され、
前記折り返し部の一部には、前記バスバー収容部の周壁と平行な垂直側面を有する切欠き部が形成され、
前記係止部が、前記切欠き部の前記垂直側面に直交する奥端縁を係止する
ことを特徴とするバスバー保持構造。
【請求項2】
前記バスバー収容部の周壁には、前記切欠き部に係合して前記バスバーの少なくとも位置決めをする係合突部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー保持構造。
【請求項3】
前記係止部が、前記係合突部に形成された係止アームである
ことを特徴とする請求項2に記載のバスバー保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池集合体の隣り合う単電池を電気的に接続するバスバのバスバー保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の単電池を備えた電池集合体は、各単電池の隣り合う電極端子間がバスバーによって電気的に接続される。
【0003】
図9に示すように、バスバーとしては、隣り合う電極端子間に架け渡される板状の本体部501と、本体部501から延設されて検知電線の端末部に接続される電線接続部502とを一体に備え、本体部501が、折り返し部503により区切られた第1板部504および第2板部505を折り返し部503により180度折り返して重ね合わせて二層構造とするものがある(特許文献1参照)。
このようなバスバーでは、折り返し部503と平行な第1板部504の長辺側側縁部504aに延出形成された係止片506が第2板部505の外面に沿うように屈曲されて第1板部504および第2板部505の開き止めが行われる。更に、バスバーは、第1板部504のうち折り返し部503を除く側縁部に、第1板部504および第2板部505が重ね合わされた状態において第2板部505の折り返し部503を除く側縁部に沿って立ち上がる側縁覆い部507を形成し、層間に異物が入り難くしている。
【0004】
このようなバスバーは、電池集合体に取り付けられる絶縁樹脂製の絶縁保持部材(電線配索体)におけるバスバー収容部に、係止部により保持され、複数の単電池の隣り合う電極端子間を電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−91772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の上記バスバーの側縁部には、折り返し部503及び側縁覆い部507が形成されている。バスバーは、この、折り返し部503や側縁覆い部507が、電線配索体の係止部に係止されてバスバー収容部に保持される。これら折り返し部503や側縁覆い部507は、プレス加工により曲げ加工されるので、係止部が折り返し部503などの曲げR部に引っ掛かって止まる(係止する)こととなる。このため、係止部の係り代が減り、保持力が低下する。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の板部が折り返し部により折り返されて重ね合わされたバスバーに対し、電線配索体の係止部による保持力を向上させることができるバスバー保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 正極及び負極の電極端子を有する複数の単電池の隣り合う電極端子間を電気的に接続する複数のバスバーを絶縁樹脂製の電線配索体に保持するためのバスバー保持構造であって、前記バスバーは、折り返し部に区切られた複数の板部が前記折り返し部により折り返されて重ね合わされることにより構成された板状の本体部と、前記本体部から延設されて電線の端末部に接続される電線接続部とが一体に形成されており、前記電線配索体には、前記本体部の側縁部を係止してバスバー収容部に保持する係止部が形成され、前記折り返し部の一部には、前記バスバー収容部の周壁と平行な垂直側面を有する切欠き部が形成され、前記係止部が、前記切欠き部の前記垂直側面に直交する奥端縁を係止することを特徴とするバスバー保持構造。
(2) 前記バスバー収容部の周壁には、前記切欠き部に係合して前記バスバーの少なくとも位置決めをする係合突部が形成されていることを特徴とする上記(1)に記載のバスバー保持構造。
(3) 前記係止部が、前記係合突部に形成された係止アームであることを特徴とする上記(2)に記載のバスバー保持構造。
【0009】
上記(1)の構成のバスバー保持構造によれば、電線配索体の係止部は、バスバー収容部の周壁と平行な垂直側面を有する切欠き部の周縁を係止するので、係り代を確保することができる。そこで、係止部は、折り返し部が形成されたバスバーの側縁部を確実に係止することができ、保持力が向上する。
上記(2)の構成のバスバー保持構造によれば、バスバーは、バスバー収容部の係合突部により切欠き部が係合されて位置決めされるので、周囲の側縁部をバスバー収容部の周壁により位置決めする必要がなくなる。
そこで、バスバー収容部の寸法精度を緩和でき、電線配索体の成形コスト(金型費)を低減できる。
上記(3)の構成のバスバー保持構造によれば、バスバーをバスバー収容部に位置決めする係合突部に形成された係止アームは、バスバーの本体部を確実に係止することができる。即ち、係止アームは、本体部の位置決めされた部分を係止するので、確実に係止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバスバー保持構造によれば、複数の板部が折り返し部により折り返されて重ね合わされたバスバーに対し、電線配索体の係止部による保持力を向上させることができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るバスバー保持構造を備えたバスバーモジュールの一部の平面図である。
図2図2は、図1に示したバスバーの斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係るバスバーの加工工程を説明する図であって、(a)及び(b)は、それぞれバスバーの加工工程毎の斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係るバスバー保持構造を備えたバスバーモジュールの一部の平面図である。
図5図5は、図4のA−A断面図である。
図6図6は、折り返し部が係止されるバスバー保持構造を備えたバスバーモジュールの一部の平面図である。
図7図7は、図6のB−B断面図である。
図8図8は、本実施形態の変形例に係るバスバーの加工工程を説明する図であって、(a)〜(c)は、それぞれバスバーの加工工程毎の斜視図である。
図9図9は、従来のバスバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るバスバー保持構造を備えたバスバーモジュール51は、電源装置を構成する電池集合体に重ねて取り付けられる。電源装置としては、電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータを併用して走行するハイブリッド自動車等に搭載されて用いられ、それらの電動モータに動力を供給するものがある。
【0014】
バスバーモジュール51は、絶縁樹脂製の電線配索体52を備えている。電線配索体52は、枠状に形成された複数のバスバー収容部56を有しており、このバスバー収容部56にバスバー11が単電池の電圧を検知する検知用の電線15とともにそれぞれ収容されて保持される。
【0015】
図2に示すように、本実施形態に係るバスバー11は、本体部12と、電線接続部13とを有している。バスバー11は、導電性の金属板にプレス加工が施されるなどして得られる。本体部12は、電池集合体を構成する単電池の隣り合う電極端子間を電気的に接続するために、長方形の板状に形成されて隣り合う電極端子間に架け渡される。電線接続部13は、本体部12から延設されて電線15の端末部に接続される。
【0016】
本体部12は、略長方形状に形成されており、互いに隣り合う単電池の正極及び負極の電極端子が通される一対の接続孔21を、板面を貫通して有している。これら一対の接続孔21は、本体部12の長手方向に沿って、互いに隣り合う単電池の正極及び負極の電極端子との間隔と同じ間隔をあけて配置されている。
【0017】
本体部12は、ほぼ同一外形(長辺側側縁部31a,32a及び短辺側側縁部31c,32cをそれぞれ有する略長方形状)の複数の板部31,32を有しており、下層(最下層)の板部31に対して上層(最上層)の板部32が重ね合わされている。本実施形態において、本体部12は、二層構造とされている。それぞれの板部31,32は、その一方の長辺側側縁部31aと長辺側側縁部32aが折り返し部35によって連結されている。折り返し部35は、長手方向に間隔をあけて形成されており、板部31,32は、折り返し部35に区切られている。板部31,32は、折り返し部35により折り返されて重ね合わされている。板部31,32は、それぞれ孔部(接続孔)31b,32bを有しており、互いに重ね合わされることで、これらの孔部31b,32bが連通されて本体部12の接続孔21とされている。
【0018】
また、本体部12には、折り返し部35側の長辺側側縁部31a,32aと短辺側側縁部31c,32cとの角部に面取り部38が形成されている。
【0019】
電線接続部13は、本体部12における板部31,32の連結箇所と反対側に延設されている。この電線接続部13の端部には、電線15が電気的に接続される。これにより、バスバー11は、電線接続部13に接続された電線15を介して、図示しないECU(Electronic Control Unit)が備える電圧検出回路に接続される。そして、ECUが、電圧検出回路によって検出された各単電池における一対の電極との電位差(電圧)に基づいて、各単電池の残量や充放電状態等を検出する。
【0020】
電線15は、導電性の芯線16と、この芯線16を被覆した絶縁被覆17とを有する周知の被覆電線である。電線15は、その端部において、絶縁被覆17が皮剥きされて芯線16が露出している。
【0021】
電線接続部13は、下層の板部31における折り返し部35と反対側の側縁部に形成されている。電線接続部13は、下層の板部31から延びる連結部40に設けられており、一対の導体圧着片41と、一対の電線かしめ片42とを有している。電線15は、その端部において、絶縁被覆17の部分が電線かしめ片42にかしめられて固定され、芯線16が導体圧着片41に圧着されている。これにより、電線15は、電線接続部13に電気的に接続される。なお、電線接続部13は、圧着機による電線15の圧着に適した板部31より薄い所定の厚さに形成されている。
【0022】
更に、本体部12には、折り返し部35の一部に、バスバー収容部56の周壁と平行な垂直側面53(図5参照)を有する切欠き部45が形成される。切欠き部45は、一方の長辺側側縁部31a,32aの長手方向の中央部に形成される。その結果、本体部12の一方の長辺側側縁には、この切欠き部45を挟んで一対の折り返し部35が部分的に設けられている。
【0023】
上述のように、本実施形態に係るバスバー11は、本体部12を複数の板部31,32を重ね合わせた構造とすることで、電線接続部13の大型化を抑えつつ本体部12での電気抵抗を極力小さくすることができる。
【0024】
次に、図3の(a),(b)に基づいて上記構成のバスバー11の加工手順について説明する。
図3の(a)に示すように、まず、金属板に対してプレス加工を施すことで、曲げ加工前のバスバー11の展開形状に形成する。このとき、折り返し部35の延在方向の中央部には、切欠き部45を形成するための矩形状の開口部47が打ち抜かれる。電線接続部13の形成箇所は、プレスによって所定厚さに形成する。また、導体圧着片41における芯線16のかしめの内側となる部分には、セレーション41aを加工する。なお、曲げ加工前のバスバー11は、連鎖状端子材から形成されることが好ましい。
【0025】
図3の(b)に示すように、曲げ加工を施すことで、折り返し部35で上層の板部32が折り返されて下層の板部31に重ね合わされる。このとき、本体部12は、開口部47を二分する位置で折り返し部35により折り曲げられることで、一方の長辺側側縁に切欠き部45が形成される。また、電線接続部13では、電線15を圧着する圧着機へセットすることができるように、導体圧着片41及び電線かしめ片42が立ち上げられる。
【0026】
このようにして、2枚の板部31,32が重ね合わされた本体部12と、電線15が接続可能な電線接続部13とを有するバスバー11が得られる。
【0027】
図4は、本実施形態に係るバスバー保持構造を備えたバスバーモジュール51の一部の平面図、図5図4のA−A断面図である。
電線配索体52は、電線配索溝部57と、連結溝部58とを有している。電線配索溝部57には、電線15が収容されており、連結溝部58には、電線15が接続されたバスバー11の電線接続部13が収容されている。
【0028】
バスバー収容部56に収容されたバスバー11には、本体部12の接続孔21に、単電池の電極端子(図示略)が挿通され、この電極端子にナット(図示略)が螺合される。そして、このナットを締め付けることで、バスバー11が電極端子に締結固定される。
【0029】
バスバーモジュール51は、電池集合体に取り付けられてバスバー11がナットにより電極端子に締結固定される前に、バスバー11がバスバー収容部56に収容された状態で、搬送や輸送により移送される場合がある。このため、バスバー収容部56には、本体部12の側縁部を係止して、本体部12をバスバー収容部56に保持するための係止部が形成される。
【0030】
バスバー収容部56は、極柱の配列方向に沿う方向の周壁である電線導出側壁部65と、反導出側壁部67と、を有する。電線導出側壁部65は、折り返し部35と反対側の長辺側側縁部31a,32aに対向し、反導出側壁部67は、折り返し部35側の長辺側側縁部31a,32aに対向する。電線導出側壁部65と、反導出側壁部67とは、一対の隔壁69により長方形のバスバー収容部56を画成し、本体部12を包囲する。
【0031】
本実施形態に係る係止部は、一対の係止アーム56aと、一つの係止アーム73と、からなる。一対の係止アーム56aは、電線導出側壁部65に、連結溝部58を挟んで設けられ、折り返し部35と反対側の長辺側側縁部31a,32aを係止する。係止アーム56aは、電線導出側壁部65からバスバー収容部56の内側に向かって突出し、上面が傾斜面となって、バスバー11の取り付けを容易としている(図7参照)。
【0032】
バスバー収容部56の周壁(反導出側壁部67)には、切欠き部45に係合してバスバー11の少なくとも位置決めをする係合突部75が形成されている。係合突部75は、裾拡がりとなる一対の脚部77を有して三角板状となって反導出側壁部67から突出している。切欠き部45は、垂直側面53がこの係合突部75の表面に対向し、極柱配列方向に離間する一対の切り込み面79(図2参照)が一対の脚部77の外側に対向する。バスバー11は、矩形状の切欠き部45が係合突部75に係合することにより、極柱配列方向の移動が規制されて、位置決めされる。
【0033】
係合突部75の一対の脚部77の間には、係止部である係止アーム73が形成される。係止アーム73は、切欠き部45の垂直側面53に直交する周縁(奥端縁81)を係止する。係止アーム73は、基端が反導出側壁部67に接続して先端が自由端となって垂下する片持ち梁状に形成されている。これにより、係止アーム73は、先端がバスバー収容部56に対する内外方向に弾性的に変位自在となる。係止アーム73の先端には係止爪83が形成され、係止爪83は上面が傾斜面となって、バスバー11の取り付けを容易としている(図5参照)。
【0034】
なお、上記係合突部75は、必須の構成要件とはならない。係合突部75が形成されない場合、係止アーム73は、切欠き部45に係止する形状で、反導出側壁部67に直接形成される。
【0035】
次に、上記した構成の作用を説明する。
先ず、図6に基づいて本実施形態の構成と異なり、折り返し部35が係止される比較例のバスバー保持構造について説明する。このバスバー保持構造では、切欠き部45を有しないバスバー511とバスバーモジュール551が用いられる。バスバー511は、折り返し部535側の長辺側側縁部31a,32aが一対の係止アーム56bにより係止される。この場合、長辺側側縁部31a,32aの先端から係止アーム56bの係止先端までの重なり距離Lは、本実施形態の構成と同一とする。重なり距離Lが本実施形態の構成と同一であっても、長辺側側縁部32a,32aの端が折り返し部535であると、R部87が存在し、バスバー収容部556における係止アーム56bの係り代hがR部87の略半径r分減ってh=L−rとなる。
【0036】
これに対し、本実施形態に係るバスバー保持構造では、電線配索体52の係止部(係止アーム73)は、バスバー収容部56の反導出側壁部67と平行な垂直側面53を有する切欠き部45の周縁(奥端縁81)を係止するので、図5に示すように、奥端縁81の先端からの係止爪83の係止先端までの重なり距離Lの全てを係り代Hとして確保することができる。そこで、本実施形態に係る係止部は、折り返し部35が形成されたバスバー11の側縁部(長辺側側縁部31a,32a)を確実に係止することができるようになり、2層構造のバスバー11であっても保持力を向上させることができるようになる。
【0037】
また、本実施形態のバスバー保持構造では、複数の板部31,32が折り返し部35により折り返される前に、切欠き部45が開口部47として形成されることにより、折り返し部35を折り返す際の曲げ荷重が減り、加工費を低減させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るバスバー11は、バスバー収容部56の係合突部75により切欠き部45が係合されて位置決めされるので、周囲の側縁部(長辺側側縁部31a,32a、短辺側側縁部31c,32c)をバスバー収容部56の周壁により位置決めする必要がなくなる。
そこで、バスバー収容部56の寸法精度を緩和でき、電線配索体52の成形コスト(金型費)を低減できる。
【0039】
また、バスバー11をバスバー収容部56に位置決めする係合突部75に形成された係止アーム73は、バスバー11の本体部12を確実に係止することができる。即ち、係止アーム73は、本体部12の位置決めされた部分を係止するので、相対変位が生じにくい係止構造にでき、バスバー11を確実に係止できる。
【0040】
次に、変形例に係るバスバーについて説明する。
なお、上記実施形態と同一構成部分は同一符号を付して説明を省略する。
図8は本実施形態の変形例に係るバスバーの加工工程を説明する図であって、(a)〜(c)は、それぞれバスバーの加工工程毎の斜視図である。
図8の(a)に示すように、変形例に係るバスバー11Aは、本体部12Aが中間層の板部33を備えており、板部31が最下層、板部32が最上層とされる。この中層の板部33は、長辺側側縁部33a及び短辺側側縁部33cを有して板部32とほぼ同じ略長方形状に形成されており、最上層の板部32における最下層の板部31と反対側に連結されている。板部32,33は、その長辺側側縁部32a,33aが折り返し部35Aによって連結されている。折り返し部35Aは、長手方向に間隔をあけて形成されており、板部32,33は、折り返し部35Aにより折り返されて重ね合わされる。更に、中間層の板部33にも、本体部12Aの接続孔21を構成する孔部33bが形成されている。
【0041】
この変形例の場合も、金属板に対してプレス加工を施すことで、曲げ加工前のバスバー11Aを作製する。
次に、図8の(b)に示すように、曲げ加工を施すことで、折り返し部35Aで板部33を折り返して板部32に重ね合わせる。
【0042】
さらに、図8の(c)に示すように、曲げ加工を施すことで、重ね合わせた板部32,33を折り返し部35で折り返して板部31に重ね合わせる。本体部12Aは、開口部47を二分する位置で折り返し部35,35Aにより折り曲げられることで、一方の長辺側側縁に切欠き部45が形成される。また、電線接続部13の導体圧着片41及び電線かしめ片42が立ち上げられる。
【0043】
このようにして、3枚の板部31,32,33が重ね合わされた本体部12Aと、電線15が接続可能な電線接続部13とを有するバスバー11Aが得られる。
この変形例に係るバスバー11Aのように、本体部12Aは、板部31,32,33が重ね合わされた3層であってもよい。なお、本体部12Aは、中間層の板部を複数備えた4層以上であってもよい。
【0044】
従って、本実施形態に係るバスバー保持構造によれば、複数の板部31,32,33が折り返し部35,35Aにより折り返されて重ね合わされたバスバー11,11Aに対し、電線配索体52の係止部(係止アーム73)による保持力を向上させることができる。
【0045】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば上記の構成例では、ナットによって単電池の電極端子へバスバーの本体部を固定したが、本発明の構成は、バスバーの本体部を電極端子へ溶接して固定してもよい。また、バスバーの電線接続部への電線の接続構造としては、圧着接続によるものに限らず、例えば、電線を圧接刃に食い込ませて接続する圧接接続や電線の芯線を溶接して接続する溶接接続でもよい。また、上記の構成例では、バスバーの本体部が長方形の板状に形成されて隣り合う電極端子間に架け渡される場合を説明したが、本体部は長方形に限らず、正方形、長円形、或いは四角形以上の多角形としてもよい。
【0047】
ここで、上述した本発明に係るバスバー保持構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 正極及び負極の電極端子を有する複数の単電池の隣り合う電極端子間を電気的に接続する複数のバスバー(11,11A)を絶縁樹脂製の電線配索体(52)に保持するためのバスバー保持構造であって、前記バスバー(11,11A)は、折り返し部(35,35A)に区切られた複数の板部(31,32,33)が前記折り返し部(35)により折り返されて重ね合わされることにより構成された板状の本体部(12,12A)と、前記本体部(12,12A)から延設されて電線(15)の端末部に接続される電線接続部(13)とが一体に形成されており、前記電線配索体(52)には、前記本体部(12,12A)の側縁部(長辺側側縁部31a,32a)を係止してバスバー収容部(56)に保持する係止部(係止アーム73)が形成され、前記折り返し部(35)の一部には、前記バスバー収容部(56)の周壁(反導出側壁部67)と平行な垂直側面(53)を有する切欠き部(45)が形成され、前記係止部(係止アーム73)が、前記切欠き部(45)の周縁(奥端縁81)を係止することを特徴とするバスバー保持構造。
[2] 前記バスバー収容部(56)の周壁(反導出側壁部67)には、前記切欠き部(45)に係合して前記バスバー(11,11A)の少なくとも位置決めをする係合突部(75)が形成されていることを特徴とする上記[1]に記載のバスバー保持構造。
[3] 前記係止部が、前記係合突部(75)に形成された係止アーム(73)であることを特徴とする上記[2]に記載のバスバー保持構造。
【符号の説明】
【0048】
11…バスバー
12…本体部
13…電線接続部
15…電線
31…板部
32…板部
31a…長辺側側縁部(側縁部)
32a…長辺側側縁部(側縁部)
35…折り返し部
45…切欠き部
52…電線配索体
53…垂直側面
56…バスバー収容部
67…反導出側壁部(周壁)
73…係止アーム(係止部)
75…係合突部
81…奥端縁(周縁)
H…係り代
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9