特許第6574798号(P6574798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000002
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000003
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000004
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000005
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000006
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000007
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000008
  • 特許6574798-レバー式コネクタ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574798
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   H01R13/629
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-36757(P2017-36757)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-142479(P2018-142479A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新味 義史
【審査官】 山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−303440(JP,A)
【文献】 特開2011−023127(JP,A)
【文献】 特開2009−093930(JP,A)
【文献】 特開2012−238472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56 − 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な第1ハウジング及び第2ハウジングと、前記第2ハウジングに装着されると共に嵌合開始位置から嵌合完了位置まで移動可能なレバーと、を備えたレバー式コネクタであって、
前記第1ハウジングは、
第1端子を収容可能な第1端子収容室と、前記嵌合時に該第1ハウジングと共に嵌合方向に移動するカムボスと、を有し、
前記第2ハウジングは、
第2端子を収容可能な第2端子収容室を有し、
前記レバーは、
前記カムボスを受け入れ可能なカム溝を有し、前記嵌合時に前記カム溝に沿って前記カムボスを移動させながら前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを互いに引き寄せることにより、前記第1端子と前記第2端子とを押圧接触させることが可能であり、
前記レバーは、
前記第2ハウジングの表面から離れる第1の向きへの弾性変形が可能なレバー側係止部であって、該レバーが前記嵌合開始位置にあるときに前記第2ハウジングに設けられたハウジング側係止部に係止する、レバー側係止部を有し、
前記第1ハウジングは、
前記嵌合時に該第1ハウジングと共に嵌合方向に移動する押圧部であって、前記レバー側係止部を前記第1の向きに押圧して弾性変形させることにより、前記レバー側係止部と前記ハウジング側係止部との係止を解除する、押圧部を有し、
前記第2ハウジングは、
前記ハウジング側係止部に隣接する案内斜面であって、前記押圧部に押圧されて前記ハウジング側係止部との係止が解除された前記レバー側係止部を受け入れると共に、前記レバー側係止部が弾性回復して該案内斜面を押圧したときに前記レバーが前記嵌合完了位置に向けて移動するように傾斜した、案内斜面を有し、
該レバー式コネクタは、
前記嵌合時、前記第1端子と前記第2端子とが押圧接触する前に、前記カムボスと前記カム溝とが接触するように、且つ、前記レバー側係止部の前記案内斜面上の移動により前記レバー側係止部が完全に弾性回復するときに、前記第1端子と前記第2端子とが押圧接触開始するように、構成された、
レバー式コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のレバー式コネクタにおいて、
前記カムボスが、
嵌合方向に沿って長径が延びた楕円状の断面形状を有する、
レバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに嵌合可能な第1ハウジング及び第2ハウジングと、第2ハウジングに装着されたレバーと、を備えたレバー式コネクタ、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オスハウジングとメスハウジングとの嵌合を補助するレバーを備えたレバー式コネクタが提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照。)。
【0003】
例えば、従来のレバー式コネクタの一つ(以下「従来コネクタ」という。)では、一方のハウジングにレバーが回動可能に装着され、他方のハウジングに突出ピンが設けられる。そして、レバーのカム孔に突出ピンを挿入した状態にてレバーを回動させることにより、双方のハウジングが互いに引き寄せられ、双方のハウジングが嵌合するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117059号公報
【特許文献2】特開2012−238472号公報
【特許文献3】特開2008−034336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来コネクタのレバー式コネクタは、一般に、嵌合の際、レバーを回動させて双方のハウジングを引き寄せながら、一方のハウジングに収容された端子(例えば、オス端子)を他方のハウジングに収容された端子(例えば、メス端子)に押圧接触させるようになっている。そのため、嵌合の際、双方のハウジングを引き寄せるための力(例えば、ハウジング同士の摺動時の摩擦力、及び、端子同士の摺動時の摩擦力)と、双方の端子を押圧接触(例えば、圧入)させるための力と、の双方をレバーに及ぼすことが求められる。このように嵌合の際にレバーに及ぼすべき力を、以下、便宜上、「嵌合力」と称呼する。
【0006】
特に、ハウジングに収容される端子の数が多い場合(極数が多い場合)、多数の端子を押圧接触させる必要があることに加え、ハウジング自体も大型化することから、上述した嵌合力が大きくなる傾向がある。しかし、このような場合であっても、嵌合の作業性を出来る限り向上させることが望ましい。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、嵌合の作業性に優れたレバー式コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るレバー式コネクタは、下記(1)及び(2)を特徴としている。
(1)
互いに嵌合可能な第1ハウジング及び第2ハウジングと、前記第2ハウジングに装着されると共に嵌合開始位置から嵌合完了位置まで移動可能なレバーと、を備えたレバー式コネクタであって、
前記第1ハウジングは、
第1端子を収容可能な第1端子収容室と、前記嵌合時に該第1ハウジングと共に嵌合方向に移動するカムボスと、を有し、
前記第2ハウジングは、
第2端子を収容可能な第2端子収容室を有し、
前記レバーは、
前記カムボスを受け入れ可能なカム溝を有し、前記嵌合時に前記カム溝に沿って前記カムボスを移動させながら前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを互いに引き寄せることにより、前記第1端子と前記第2端子とを押圧接触させることが可能であり、
前記レバーは、
前記第2ハウジングの表面から離れる第1の向きへの弾性変形が可能なレバー側係止部であって、該レバーが前記嵌合開始位置にあるときに前記第2ハウジングに設けられたハウジング側係止部に係止する、レバー側係止部を有し、
前記第1ハウジングは、
前記嵌合時に該第1ハウジングと共に嵌合方向に移動する押圧部であって、前記レバー側係止部を前記第1の向きに押圧して弾性変形させることにより、前記レバー側係止部と前記ハウジング側係止部との係止を解除する、押圧部を有し、
前記第2ハウジングは、
前記ハウジング側係止部に隣接する案内斜面であって、前記押圧部に押圧されて前記ハウジング側係止部との係止が解除された前記レバー側係止部を受け入れると共に、前記レバー側係止部が弾性回復して該案内斜面を押圧したときに前記レバーが前記嵌合完了位置に向けて移動するように傾斜した、案内斜面を有し、
該レバー式コネクタは、
前記嵌合時、前記第1端子と前記第2端子とが押圧接触する前に、前記カムボスと前記カム溝とが接触するように、且つ、前記レバー側係止部の前記案内斜面上の移動により前記レバー側係止部が完全に弾性回復するときに前記第1端子と前記第2端子とが押圧接触開始するように、構成された、
レバー式コネクタであること。
(2)
上記(1)に記載のレバー式コネクタにおいて、
前記カムボスが、
嵌合方向に沿って長径が延びた楕円状の断面形状を有する、
レバー式コネクタであること。
【0009】
上記(1)の構成のレバー式コネクタによれば、嵌合の際、第1端子と第2端子との押圧接触の前に、カムボスがレバーのカム溝に接触する。換言すると、端子同士の押圧接触が始まることに起因して嵌合力が増大するタイミングと、カムボス及びレバーの協働による第1ハウジングと第2ハウジングとの引き寄せに起因して嵌合力が増大するタイミングと、を異ならせる(ずらす)ことができる。そのため、双方のタイミングが一致する場合(端子同士の押圧接触のための力と、ハウジング同士の引き寄せのための力と、が同時に求められる場合)に比べ、嵌合力の増大度合い(増大率)を小さくすることができる。
【0010】
したがって、本構成のレバー式コネクタは、嵌合の作業性に優れる。
【0011】
上記(2)の構成のレバー式コネクタによれば、端子同士の押圧接触開始のタイミングと、ハウジング同士の引き寄せ開始のタイミングとを異ならせる(ずらす)ための一例として、カムボスの断面形状(カムボスの突出方向に直交する断面の形状)が、嵌合方向に沿って長径が延びる楕円状となっている。これにより、カムボスの断面形状が真円状である場合に比べ、カムボスがレバーのカム溝に接触するタイミングを早めることができる。
【0012】
よって、本構成のレバー式コネクタにより、カムボスの位置および端子収容室の構造などについて設計変更を要することなく、カムボスの形状の設計変更のみで双方のタイミングを異ならせる(ずらす)ことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嵌合の作業性に優れたレバー式コネクタを提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に係るレバー式コネクタを構成するオスハウジングを前方からみた場合の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すカムボスの周りを拡大した斜視図である。
図2図2(a)は、本発明の実施形態に係るレバー式コネクタを構成するレバーが装着されたメスハウジングを前方から見た場合の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すレバー側係止部の周りを拡大した斜視図である。
図3図3は、オスハウジングとメスハウジングとの嵌合開始状態を示す平面図である。
図4図4(a)は、図3のA−A断面図であり、図4(b)は、図3のB−B断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、オスハウジングとメスハウジングとの嵌合開始状態の前の段階における、カムボスとレバーとの位置関係、及びオス端子とメス端子との位置関係を示し、図5(c)及び図5(d)は、オスハウジングとメスハウジングとの嵌合開始状態における、カムボスとレバーとの位置関係、及びオス端子とメス端子との位置関係を示し、図5(e)及び図5(f)は、オスハウジングとメスハウジングとの嵌合開始状態の後の段階における、カムボスとレバーとの位置関係、及びオス端子とメス端子との位置関係を示す。
図6図6(a)は、図5(a)のC−C断面図であり、図6(b)は、図5(c)のD−D断面図であり、図6(c)は、図5(e)のE−E断面図である。
図7図7(a)は、図6(b)に示す状態をオスハウジング側からみた場合の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)に示すレバー側係止部の周りを拡大した斜視図である。
図8】オスハウジングとメスハウジングとの嵌合開始から嵌合完了までの嵌合力の推移の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るレバー式コネクタ1について説明する。
【0017】
本発明の実施形態に係るレバー式コネクタ1は、図1に示すオスハウジング100と、オスハウジング100を収容する(オスハウジング100が内挿される)ようにオスハウジング100と嵌合する図2に示すメスハウジング200と、メスハウジング200に回動可能に装着される図2に示すレバー300と、を備える。
【0018】
以下、図1及び図2に示すように、「嵌合方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」、「下」、及び、レバー300の「回動方向」を定義する。「嵌合方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交する。更に、「オスハウジング100とメスハウジング200との嵌合時」を単純に「嵌合時」とも称呼する。図2は、レバー300が仮係止位置(嵌合開始位置)にある状態を示しており、レバー300は、仮係止位置(嵌合開始位置)から回動方向の前方に回動することにより、本係止位置(嵌合完了位置)に向けて移動する。
【0019】
図1(a)に示すように、オスハウジング100は、樹脂製であり、幅方向に長い角筒状の本体周壁部101と、本体周壁部101の下端部から幅方向に一体に延在するステー部102と、を備える。本体周壁部101の内部には、複数(本例では、8本)の電線W1の端部にそれぞれ接続された複数のオス端子T1(図4(a)を参照)をそれぞれ収容する複数の端子収容室103(図4(a)を参照)が嵌合方向に沿って形成されている。
【0020】
本体周壁部101の上面の幅方向両端付近には、一対の上面リブ104が形成されている。一対の上面リブ104は、上方向に突出し、且つ、本体周壁部101の嵌合方向のほぼ全域に亘って互いに平行に嵌合方向に延びている。本体周壁部101の両側面の上側部分及び下側部分には、それぞれ、上側リブ105及び下側リブ106が形成されている。上側リブ105及び下側リブ106は、幅方向の外側に突出し、且つ、本体周壁部101の後端部付近から嵌合方向中央より若干前方側の位置まで互いに平行に嵌合方向に延びている。
【0021】
本体周壁部101の両側面には、それぞれ、カムボス107が形成されている。カムボス107は、上側リブ105及び下側リブ106の前端部同士の間の位置に形成され、上側リブ105及び下側リブ106より大きく幅方向外側に突出している。図1(b)に示すように、カムボス107の断面形状(カムボス107の突出方向に直交する断面の形状)は、嵌合方向に沿って長径が延びる楕円状の形状となっている(図4他も参照。)。
【0022】
図2(a)に示すように、メスハウジング200は、樹脂製であり、幅方向に長い角筒状の本体周壁部201を備える。嵌合時、本体周壁部201の内周面とオスハウジング100の本体周壁部101の外周面とが重なるように、オスハウジング100とメスハウジング200とが嵌合する(図3及び図4も参照)。本体周壁部201の内部には、複数(本例では、8本)の電線W2の端部にそれぞれ接続された複数のメス端子T2(図4(a)を参照)をそれぞれ収容する複数の端子収容室202(図4(a)を参照)が嵌合方向に沿って形成されている。
【0023】
本体周壁部201の上壁の内側面の幅方向両端付近には、一対の上面溝部203が形成されている。一対の上面溝部203は、上方向に窪み、且つ、本体周壁部101の前端から後側に向けて互いに平行に嵌合方向に延びている。本体周壁部201の両側壁には、それぞれ、嵌合方向に延びる窓(貫通孔)204が形成されている。窓204の上縁面205及び下縁面206は、本体周壁部101の前端から後側に向けて互いに平行に嵌合方向に延びている。本体周壁部201の両側壁の内側面の前端部には、それぞれ、窓204の上縁面205及び下縁面206の前端部と連続し、且つ、幅方向外側に窪んだ側面溝部207が形成されている。
【0024】
嵌合時、オスハウジング100の一対の上面リブ104が一対の上面溝部203に挿入・案内され、オスハウジング100の一対のカムボス107が一対の側面溝部207を通過し、オスハウジング100の一対の上側リブ105及び下側リブ106が一対の窓204の上縁面205及び下縁面206にそれぞれ当接・案内される。
【0025】
本体周壁部201の両側面の後側における所定位置には、それぞれ、幅方向外側に突出する回動軸208が形成されている。この一対の回動軸208には、レバーの一対の孔303(レバー300とメスハウジング200との連結部)が嵌合される。これにより、レバー300は、一対の回動軸208を中心に回動可能にメスハウジング200に装着されることになる。
【0026】
本体周壁部201の上面の幅方向中央部には、上側に向けて突出するロックビーク209が形成されている(図4(a)も参照)。ロックビーク209は、本係止位置にあるレバー300を本係止位置に保持するために設けられている(詳細は後述される)。
【0027】
本体周壁部201の両側面の前側領域には、それぞれ、窓204の下縁面206から下側且つ幅方向内側に向けて傾斜して延びる案内斜面210が形成されている(図4(b)、図5図6を参照)。案内斜面210の機能等については後述される。
【0028】
図2(a)に示すように、レバー300は、樹脂製であり、一対の側板部301と、一対の側板部301の一端同士を繋ぐ繋ぎ部302と、を有する略U字状の形状を有する。一対の側板部301には貫通孔である一対の孔303が形成されている。一対の孔303にメスハウジング200の一対の回動軸208が挿入されることにより、レバー300は、一対の側板部301がメスハウジング200の両側面を挟んだ状態にて、メスハウジング200に対して(一対の回動軸208を中心に)回動可能となっている。
【0029】
一対の側板部301の他端部(自由端部)近傍には、それぞれ、幅方向内側に突出するレバー側係止部304が一体に形成されている。図2(a)及び図2(b)に示すように、レバー300が仮係止位置にある状態にて、一対のレバー側係止部304が、メスハウジング200の一対の窓204に進入すると共に、一対のレバー側係止部304が上縁面205と下縁面206とに挟まれるように係止されている。レバー側係止部304の係止によって、レバー300が仮係止位置に係止されると共に、レバー300の本係止位置への移動が禁止される。
【0030】
各レバー側係止部304には、幅方向内側に突出する突出部305が形成されている。嵌合時、一対の突出部305が、オスハウジング100の一対のカムボス107の近傍に位置する下側リブ106の前端部106a(図1(b)を参照)によって押圧されて下側リブ106の頂部に乗り上がることにより、一対のレバー側係止部304が幅方向外側に弾性変形する(図6(b)の矢印を参照)。その結果、レバー側係止部304の下縁面206による係止が解除され、レバー300が仮係止位置から本係止位置に向けて回動方向の前方に移動し得るようになる。
【0031】
一対の側板部301の幅方向内側面にはそれぞれ、カム溝306が形成されている(例えば、図4(b)等を参照)。一対のカム溝306は、嵌合時、レバー300の仮係止位置から本係止位置までの回動に伴ってオスハウジング100の一対のカムボス107をカム溝306の入口部307から最奥部308まで引き寄せるために設けられている(詳細は後述される)。なお、各カム溝306は、回動方向の前方に位置する側壁309と、側壁309と連続すると共に回動方向の後方に位置する側壁310と、によって画成されている。
【0032】
レバー300の繋ぎ部302の回動方向の前端部の幅方向中央部には、ロックビーク保持部311が形成されている(図2(a)及び図4(a)を参照)。ロックビーク保持部311は、メスハウジング200のロックビーク209(図2(a)及び図4(a)を参照)と協働し、本係止位置にあるレバー300を本係止位置に保持するために設けられている。
【0033】
具体的には、レバー300が仮係止位置から本係止位置に達すると、ロックビーク保持部311がロックビーク209に当接・保持される。この結果、本係止位置にあるレバー300が本係止位置に保持される。一方、この状態にてロックビーク保持部311によるロックビーク209の保持を解除すると、レバー300が本係止位置から仮係止位置に向けて(回動方向の後方に)移動可能となる。
【0034】
以下、図3図7を参照しながら、メスハウジング200に対してオスハウジング100を嵌合させる際の動作について説明する。
【0035】
先ず、レバー300が仮係止位置に係止されたメスハウジング200とオスハウジング100との前面同士を対向配置すると共に、図5(a)及び図5(b)に示すように、メスハウジング200に対してオスハウジング100を挿入する。図5(a)及び図5(b)は、嵌合開始状態の前の段階を示す。
【0036】
図5(a)及び図5(b)に示す段階では、レバー300の一対のレバー側係止部304の突出部305がオスハウジング100の一対の下側リブ106の前端部106a(図1(b)を参照)によって未だ押圧されていない。そのため、図6(a)に示すように、一対のレバー側係止部304(の下面)が、メスハウジング200の一対の窓204の下縁面206に係止されており、レバー300の本係止位置への移動が禁止されている。また、この段階では、図5(b)に示すように、オス端子T1の先端部T11が、メス端子T2の弾性変形部T21に未だ押圧接触されていない。
【0037】
次いで、図5(c)及び図5(d)に示すように、メスハウジング200に対してオスハウジング100を嵌合方向に更に押圧して嵌合開始状態まで挿入する(図3図4も参照)。嵌合開始状態では、図5(c)に示すように、オスハウジング100の一対のカムボス107が、レバー300の一対のカム溝306の入口部307に位置すると共に、カム溝306の側壁310に接触開始している。
【0038】
嵌合開始状態では、図7(a)及び図7(b)に示すように、一対のレバー側係止部304の突出部305が一対の下側リブ106の前端部106aによって押圧されて一対の下側リブ106の頂部に乗り上がることにより、図6(b)に示すように、一対のレバー側係止部304が幅方向外側に弾性変形している(図6(b)の矢印を参照)。よって、レバー側係止部304の下縁面206による係止が解除され、レバー300が仮係止位置から本係止位置に移動可能な状態となっている。なお、図7(b)に示すように、一対のレバー側係止部304の突出部305は、一対の下側リブ106の頂部を点接触しながら擦動する。そのため、面接触する場合と比べて摩擦抵抗力が小さいので、擦動に起因するオスハウジング100のメスハウジング200に対する押圧力の増大を抑制することができる。
【0039】
また、嵌合開始状態では、図5(d)に示すように、オス端子T1の先端部T11が、メス端子T2の弾性変形部T21に未だ押圧接触されていない。換言すれば、オス端子T1の先端部T11がメス端子T2の弾性変形部T21に押圧接触されるよりも前に、カムボス107がカム溝306の側壁310に接触している。これは、カムボス107の断面形状が嵌合方向に沿って長径が延びる楕円形状であることにより、カムボス107の断面形状が円形である場合に比べ、カムボス107がカム溝306の側壁310に接触するタイミングが早くなったことに起因する。
【0040】
嵌合開始状態では、上述のように、レバー300が仮係止位置から本係止位置に移動可能な状態となっている。そのため、嵌合開始状態にて、メスハウジング200に対してオスハウジング100を嵌合方向に更に押圧すると、カムボス107がカム溝306の側壁310を押圧することで、レバー300が仮係止位置から本係止位置に向けて回動開始する。
【0041】
なお、嵌合開始状態にて、レバー側係止部304の突出部305が、下側リブ106の頂面における下側且つ幅方向内側に向けて傾斜する斜面部分に接触する構成となっている場合、既に弾性変形しているレバー側係止部304の突出部305が下側リブ106の頂面(の斜面部分)を押圧する際、突出部305が下向きの反力を受ける。この反力を受けて、レバー300が仮係止位置から本係止位置に向けて自動的に回動開始する。この場合、レバー300を仮係止位置から本係止位置に向けて回動開始させるために、メスハウジング200に対してオスハウジング100を嵌合方向に押圧する必要がない。
【0042】
このように、レバー300を仮係止位置から本係止位置に向けて回動開始すると、図5(e),図5(f)及び図6(c)に示すように、弾性変形している一対のレバー側係止部304の突出部305が、メスハウジング200の一対の案内斜面210(図4(b)、図5図6も参照)上に移動し、弾性回復しながら案内斜面210を押圧するようになる。
【0043】
ここで、上述したように、案内斜面210は、下側且つ幅方向内側に向けて傾斜して延びている。そのため、弾性変形しているレバー側係止部304の突出部305が案内斜面210を弾性回復しながら押圧する際、突出部305が下向きの反力を受ける。この反力を受けて、レバー300は、回動方向前方側の(本係止位置への)力を受ける。換言すれば、レバー側係止部304の下縁面206による係止解除の直後から、案内斜面210によるレバー300の回動の補助効果が得られる。この回動補助効果により、レバー300が仮係止位置から本係止位置に向けて回動開始した直後の操作フィーリングが向上する。
【0044】
レバー300が仮係止位置から本係止位置に向けて回動開始した後、上記の回動補助効果を受けながら、レバー300を本係止位置に向けて回動させていく。これにより、カム溝306の側壁309がカムボス107をメスハウジング200の後方へ向けて押圧することにより、レバー300の回動の進行に応じ、カムボス107(ひいては、オスハウジング100)が、メスハウジング200の後方へ向けて引き寄せられていく(図5(e)を参照)。
【0045】
レバー300の回動の進行に伴い、レバー側係止部304の突出部305は案内斜面210上を擦動していく。このとき、図6(c)に示すように、突出部305は、案内斜面210を点接触しながら擦動する。そのため、面接触する場合と比べて摩擦抵抗力が小さいので、擦動に起因するオスハウジング100のメスハウジング200に対する押圧力の増大を抑制することができる。
【0046】
上記の回動補助効果は、レバー300の回動方向前方側への回動の進行に伴ってレバー側係止部304の弾性変形量が減少していくことにより、次第に減少していく。本例では、図5(e)及び図6(c)に示すように、レバー300の回動方向前方側への回動が進行してレバー側係止部304が完全に弾性回復した頃(即ち、回動補助効果が消滅した頃)に、図5(f)に示すように、オス端子T1の先端部T11が、メス端子T2の弾性変形部T21に押圧接触される。
【0047】
オス端子T1の先端部T11がメス端子T2の弾性変形部T21に押圧接触された後もなお、レバー300を本係止位置に向けて更に回動させていくと、カム溝306の側壁309がカムボス107をメスハウジング200の後方へ向けて更に押圧することにより、レバー300の回動の進行に応じ、カムボス107(ひいては、オスハウジング100)が、メスハウジング200の後方へ向けて更に引き寄せられていく。
【0048】
そして、レバー300が本係止位置に到達すると、カムボス107がカム溝306の最奥部308(図4及び図5を参照)に達してオスハウジング100が嵌合完了状態となると共に、上述したように、レバー300のロックビーク保持部311(図4(a)を参照)がメスハウジング200のロックビーク209(図4(a)を参照)に当接・保持される。これにより、オスハウジング100とメスハウジング200とにそれぞれ設けられているオス端子T1とメス端子T2との導通接続が完了すると共に(図4(a)を参照)、レバー300が本係止位置に保持される。
【0049】
以下、図8を参照しながら、嵌合時における、オスハウジング100とメスハウジング200との前面同士の嵌合方向の位置が一致した状態からのオスハウジング100の嵌合方向の移動量(以下、「ストローク」と呼ぶ)と、メスハウジング200に対するオスハウジング100の嵌合方向の移動に要する押し込み力(嵌合力)と、の関係の一例について付言する。
【0050】
図8において、ストロークaは、レバー側係止部304の突出部305がオスハウジング100の下側リブ106の前端部106a(図1(b)を参照)によって押圧開始される(即ち、レバー側係止部304が弾性変形開始する)タイミングに相当する。ストロークbは、上記嵌合開始状態(レバー側係止部304の弾性変形量が増大してレバー側係止部304の下縁面206による係止が解除され、且つ、カムボス107がカム溝306に接触開始する状態)に相当する。ストロークcは、レバー側係止部304が完全に弾性回復し、且つ、オス端子T1の先端部T11がメス端子T2の弾性変形部T21に押圧接触されるタイミングに相当する。ストロークdは、オス端子T1の先端部T11の圧入によりメス端子T2の弾性変形部T21の弾性変形量が最大になるタイミングに相当する。ストロークeは、ロックビーク保持部311によるロックビーク209の保持動作が開始されるタイミングに相当する。ストロークfは、ロックビーク保持部311によるロックビーク209の保持動作が完了するタイミング(即ち、上記嵌合完了状態)に相当する。
【0051】
図8に示すように、ストロークa以前でも、ハウジング同士の摺動時の摩擦力(本体周壁部101と本体周壁部201との摺動時の摩擦力)等により、押し込み力は徐々に増大するように推移する。ストロークaからストロークbまでは、レバー側係止部304の弾性変形量の増大に応じてオスハウジング100が受ける幅方向内向きの反力の大きさが増大することによって、押し込み力が増大していく。ストロークbからストロークcまでは、上述した回動補助効果に起因して押し込み力が減少していく。ストロークcからストロークdまでは、オス端子T1の先端部T11の圧入によるメス端子T2の弾性変形部T21の弾性変形量の増大に応じて圧入抵抗が増大することによって、押し込み力が増大していく。ストロークdからストロークeまでは、カムボス107とカム溝306との間の擦動抵抗がカム溝306の形状等に起因して減少していくこと等によって、押し込み力が減少していく。そして、ストロークeからストロークfまでは、ロックビーク保持部311によるロックビーク209の保持動作に伴う抵抗力が増大することによって、押し込み力が増大していく。
【0052】
以上、本発明の実施形態に係るレバー式コネクタ1によれば、嵌合時、オス端子T1のメス端子T2への圧入の前に、オスハウジング100のカムボス107がレバー300のカム溝306に接触する。換言すると、オス端子T1の押圧接触開始に起因して嵌合に要する力の大きさが増大するタイミングと、カムボス107によるレバー300の回動開始に起因して嵌合に要する力の大きさが増大するタイミングとを異ならせることができる。そのため、オス端子T1の押圧接触と、カムボス107によるレバー300の回動開始と、が同じタイミングとなる態様と比べて、嵌合に要する力が一時に増大する大きさを低減することができる。
【0053】
したがって、本実施形態に係るレバー式コネクタ1は、嵌合に要する力の大きさが大きく変動することを抑制でき、嵌合の作業性を向上できる。
【0054】
加えて、カムボス107の断面形状が、嵌合方向に沿って長径が延びる楕円形状となっている(図1(b)を参照)。これにより、カムボス107の断面形状が円形である場合に比べ、カムボス107がレバー300のカム溝306に接触するタイミングを早めることができる。この結果、カムボス107の位置を変えることなく、オス端子T1の押圧接触のタイミングと、カムボス107によるレバー300の回動開始のタイミングと、を異ならせることができる。
【0055】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
例えば、上記実施形態では、レバー300のレバー側係止部304の突出部305が、メスハウジング200の案内斜面210を点接触しながら擦動している(図6(c)を参照)。これに対し、レバー300のレバー側係止部304の突出部305が、メスハウジング200の案内斜面210を線接触しながら擦動するように突出部305の形状を設計してもよい。これによっても、面接触する場合と比べて摩擦抵抗力を小さくすることができ、この結果、擦動に起因するオスハウジング100のメスハウジング200に対する押圧力の増大を抑制することができる。
【0057】
ここで、上述した本発明に係るレバー式コネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)及び(2)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
互いに嵌合可能な第1ハウジング(100)及び第2ハウジング(200)と、前記第2ハウジングに装着されたレバー(300)と、を備えたレバー式コネクタ(1)であって、
前記第1ハウジング(100)は、
第1端子(T1)を収容可能な第1端子収容室(103)と、前記嵌合時に該第1ハウジングと共に嵌合方向に移動するカムボス(107)と、を有し、
前記第2ハウジング(200)は、
第2端子(T2)を収容可能な第2端子収容室(202)を有し、
前記レバー(300)は、
前記カムボスを受け入れ可能なカム溝(306)を有し、前記嵌合時に前記カム溝に沿って前記カムボスを移動させながら前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを互いに引き寄せることにより、前記第1端子と前記第2端子とを押圧接触させることが可能であり、
該レバー式コネクタ(1)は、
前記嵌合時、前記第1端子(T1)と前記第2端子(T2)とが押圧接触する前に、前記カムボス(107)と前記カム溝(306)とが接触するように、構成された、
レバー式コネクタ。
(2)
上記(1)に記載のレバー式コネクタにおいて、
前記カムボス(107)が、
嵌合方向に沿って長径が延びた楕円状の断面形状を有する、
レバー式コネクタ。
【符号の説明】
【0058】
1 レバー式コネクタ
100 オスハウジング(第1ハウジング)
103 端子収容室(第1端子収容室)
107 カムボス
200 メスハウジング(第2ハウジング)
202 端子収容室(第2端子収容室)
300 レバー
306 カム溝
T1 オス端子(第1端子)
T2 メス端子(第2端子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8