特許第6574809号(P6574809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574809
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】慢性疲労の治療用の組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4458 20060101AFI20190902BHJP
   A61K 31/221 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/385 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61K31/4458
   A61K31/221
   A61K31/198
   A61K31/16
   A61K31/385
   A61K31/145
   A61K31/4415
   A61K31/714
   A61K31/375
   A61K31/355
   A61K31/015
   A61K33/30
   A61K33/04
   A61P3/02
   A61P25/00
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-84218(P2017-84218)
(22)【出願日】2017年4月21日
(62)【分割の表示】特願2014-517211(P2014-517211)の分割
【原出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-149760(P2017-149760A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/500,869
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513323302
【氏名又は名称】ケー−パックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ディー・カイザー
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−534433(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/149802(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0142124(US,A1)
【文献】 特開平04−211614(JP,A)
【文献】 米国特許第06441038(US,B1)
【文献】 The American Journal of Medicine,2006年,Vol.119, No.2,p.167.e23-167.e30
【文献】 Human Psychopharmacology,2004年,Vol.19, No.1,p.63-64
【文献】 J. Natl. Compr. Canc. Netw.,2010年,Vol.8, No.8,p.933-942
【文献】 Psychosomatics,2008年,Vol.49, No.3,p.185-190
【文献】 Essays in Biochemistry,2008年,Vol.44,p.109-123
【文献】 Alternative Medicine Review,2001年,Vol.6, No.5,p.450-459
【文献】 Journal of Neurological Sciences,2004年,Vol.218, No.1-2,p.103-108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢神経系刺激薬;
アセチル−L−カルニチンおよびL−チロシンを含む、治療上有効な量の微量栄養素刺激成分;ならびに
N−アセチルシステインおよびアルファ−リポ酸を含む、治療上有効な量の微量栄養素抗酸化成分
を含み、中枢神経系刺激薬が0.75mg〜7.5mgの量のメチルフェニデートHClである、慢性疲労の治療用の経口投与組成物。
【請求項2】
アセチル−L−カルニチンは60〜250mgの範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
L−チロシンは50〜200mgの範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
N−アセチルシステインは60〜250mgの範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
アルファ−リポ酸は25〜100mgの範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
L−タウリン約25〜100mgを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンB6(ピリドキシン)およびビタミンB12のうちの1つまたはそれ以上を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ビタミンC、ビタミンE、ベータカロテン、亜鉛およびセレンのうちの1つまたはそれ以上を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
アセチル−L−カルニチン、L−チロシン、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミン
B12、N−アセチルシステイン、アルファ−リポ酸、L−タウリン、ビタミンC、ビタミンEおよびベータカロテンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
枢神経系刺激薬、ならびに
1日当たり治療上有効な投与量の、アセチル−L−カルニチン、
L−チロシン、
N−アセチルシステイン、および
アルファ−リポ酸
を含む、ヒト患者における慢性疲労の治療のための医薬組成物であって、ここで
中枢神経系刺激薬が2.5〜40mg/日の量で投与するメチルフェニデートであり、
約100〜2000mg/日の範囲でアセチル−L−カルニチンを投与し、
約100〜2000mg/日の範囲でL−チロシンを投与し、
100〜2000mg/日の範囲でN−アセチルシステインを投与し、そして
50〜1000mg/日の範囲でアルファ−リポ酸を投与する、上記医薬組成物。
【請求項11】
慢性疲労は、慢性疲労症候群または線維筋痛症に関連する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
慢性疲労は、癌、HIV/AIDS、B型およびC型慢性肝炎、自己免疫疾患、ライム病、パーキンソン病、アルツハイマー病、精神的疾患(うつ病、ADDおよびADHDを含む)、多発性硬化症、鎌状赤血球貧血ならびにうっ血性心不全の群から選択される状態に関連する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
CNS刺激薬、アセチル−L−カルニチン、L−チロシン、N−アセチルシステインおよびアルファ−リポ酸を、配合剤形で、一緒に経口投与する、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年6月24日に出願した米国仮出願第61/500,869号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は慢性疲労の治療用の医薬組成物および方法に関し、該慢性疲労には、慢性疲労症候群(CFS)と、線維筋痛症、癌、AIDS、B型およびC型慢性肝炎、自己免疫疾患、ライム病、パーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む精神的障害、多発性硬化症、鎌状赤血球貧血ならびにうっ血性心不全等の別の状態を伴う慢性疲労とが含まれる。特に、本明細書においては、低用量の中枢神経系(CNS)刺激剤と複数の高力価の栄養素の群との組み合わせ、即ち慢性疲労を経験している患者の転帰を著しく向上させる戦略的組み合わせを利用する医薬組成物および治療レジメンが提供される。
【背景技術】
【0003】
慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)または筋痛性脳脊髄炎(ME)としても知られているCFSは、6カ月を超えて持続する抗し難い慢性疲労によって特徴付けられる疾患であり、慢性疲労は休息によって改善せず、身体的活動または精神的活動により悪化する可能性がある。CFS患者は一般的に、疾病の発症前に患者ができていたのに比べて著しく低いレベルの活発さで活動する。
【0004】
CFS患者は通常、衰弱、筋肉痛、運動後24時間を超えて持続する疲労、記憶および/または精神集中の低下、憂うつならびに不眠症を含む様々な症状を訴える。これらの症状は疲れることにより悪化することが多く、患者が起きている時間の大部分で痛みがある。慢性疲労症候群を経験している患者では、免疫系が機能不全であることが多く、そのため、多くのCFS患者が喉の痛み、悪寒およびインフルエンザ様症状も経験することが多い。一部の患者では良性のリンパ節膨張が発症する可能性もある。通常観察されるCFSの別の症状として、腹痛、アルコール不耐症、腹部膨満、胸痛、頭痛、慢性咳、下痢、めまい、眼または口の乾き、耳痛、不整脈、顎の痛み、朝のこわばり、吐き気、寝汗、精神的問題(憂うつ、過敏症、不安および/またはパニック発作)、息切れ、刺痛等の皮膚感覚ならびに体重減少が挙げられる。
【0005】
CFSの原因(単数または複数)は特定されていない。CFSは重度の多因子性の状態である。しかしながら、CFSの無数の症状プロファイルは、視床下部−下垂体−副腎ホルモン系の機能障害により衰えている可能性がある神経系、内分泌系および免疫系の協調の崩壊に端を発している。
【0006】
CFSと診断されるためには、患者は典型的には以下の2つの基準を満たす:(1)少なくとも6カ月にわたる重度の疲労(本明細書において「慢性疲労」と称する)が重要であり、別の既知の病状(その兆候は疲労を含む可能性がある)が臨床診断で除外されている、および(2)同時に以下の症状のうちの4つ以上:運動後の倦怠感、記憶または集中力の低下、良質でない眠り、筋肉痛、赤みまたは腫れを伴わない多関節痛、頸部または補助リンパ節の圧痛、喉の痛み、頭痛、発病後に連続して6カ月以上の間にそのような症状が持続または再発しており、および疲労に先行していない。アメリカ合衆国の約1%の住民がCFSと診断されていると推定されている。
【0007】
CFS専用の処方薬は開発されていない。症状は通常、経時的に、および患者間で、大幅に変化する。この要因は治療プロセスを複雑にする可能性があり、この要因により、患
者および医療従事者が彼らの治療戦略を常にチェックして見直すことが概して求められる。CFSを治療するための現在の治療法は、最も衰弱させる症状(即ち、痛み、不眠症および憂うつ)を緩和しようとすることに主眼を置いている。これまでのところ、CFSを著しく改善または治療するアメリカ合衆国食品医薬品局(「FDA」)承認の治療法または一般に認められている治療法はない。
【0008】
同様に、「線維筋痛症」はCFSと重複する症状のリストを含む状態であり、疲労、慢性筋骨格痛、慢性的なインフルエンザ様症状、憂うつおよび認知機能障害を含むことが多い。線維筋痛症は、広範囲にわたる筋肉痛および疲労により主に特徴付けられる。
【0009】
線維筋痛症はまた、異常痛覚の進行、睡眠障害、慢性疲労により特徴付けられ、大きな精神的苦痛を伴うことが多い。線維筋痛症を経験している患者はまた、別の症状を有する可能性があり、別の症状として、朝のこわばり、手足の刺痛またはしびれ、偏頭痛を含む頭痛、過敏性腸症候群、思考および記憶の問題(「頭にかかったもや(brain fog)」と
称されることもある)、痛みを伴う月経期ならびにその他の疼痛症候群が挙げられる。アメリカ合衆国における線維筋痛の有病率は2%と推定されており、2005年では500万人の成人に及んでいる。有病率は男性より女性がはるかに高い(3.4%対0.5%)(女性:男性比7:1)。
【0010】
線維筋痛症の治療用にリリカ(プレガバリン・カプセル)がFDAに認可されている。線維筋痛症は通常、別の目的で開発および承認された様々な薬剤でも治療され、別の目的で開発および承認された薬剤として、鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、抗うつ薬、三環系抗うつ薬、選択的セレトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、混合型再取り込み阻害剤およびベンゾジアゼピンが挙げられる。
【0011】
慢性疲労はまた、別の病状によって引き起こされる可能性がある。この病状として特に、癌、AIDS、B型およびC型慢性肝炎、自己免疫疾患、ライム病、パーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む精神的疾患、多発性硬化症、鎌状赤血球貧血ならびにうっ血性心不全が挙げられる。アメリカ合衆国において、一般住民の24%で疲労が2週以上持続しており、これらの人々の59%〜64%では疲労の医学的原因が特定されていないことが報告されている。ある研究において、一次医療診療所の患者の24%が(1カ月を超える)長期疲労を有していることが報告されている。長期疲労がある多くの患者では疲労が6カ月を超えて持続しており、疲労の医学的原因が特定されていない。
【0012】
したがって、CFS、線維筋痛症、神経−内分泌−免疫系の崩壊に起因するまたはその崩壊を伴う慢性疲労、および別の病状に起因する慢性疲労を患っている患者にとって、慢性疲労の治療用の組成物および方法の必要性は高い。本開示は、この必要性を満たすことを目的としており、慢性疲労が主な症状である患者の健康管理において大きな利点をもたらすと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本明細書で述べる組成物および治療レジメンは、CFSと別の重度の病状(線維筋痛症、癌、AIDS、B型およびC型慢性肝炎、自己免疫疾患、ライム病、パーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、注意力障害(ADD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む精神的疾患、多発性硬化症、鎌状赤血球貧血ならびにうっ血性心不全等)を伴う慢性疲労とを治療するために、低用量の中枢神経系(CNS)刺激剤と4種の特定の栄養素の高力価の群との組み合わせを含む。本組成物および本方法は、現在の治療レジメンの使用に比べて著しく良い、慢性疲労からの短期間および長期間の患者転帰を提供すると考
えられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本開示は、慢性疲労の治療用の経口投与組成物を提供し、斯かる組成物は、治療上有効な低投与量の中枢神経系刺激剤、アセチル−L−カルニチン約60〜250mg、L−チロシン約50〜200mg、N−アセチルシステイン約60〜250mgおよびアルファ−リポ酸約25〜100mgを含む。
【0015】
別の態様において、本開示は、1日当たり低投与量の中枢神経系刺激剤と、治療上有効な1日当たりの投与量のアセチル−L−カルニチン、L−チロシン、N−アセチルシステインおよびアルファ−リポ酸とを投与することによる、ヒト患者における慢性疲労の治療方法を提供する。好ましい実施形態において、1日当たりの投与として、アセチル−L−カルニチン約1400mg〜1600mgおよびL−チロシン約350mg〜1400mgの微量栄養素刺激成分;ならびにN−アセチルシステイン約250mg〜1250mgおよびアルファ−リポ酸約150mg〜600mgの抗酸化微量栄養素成分が挙げられる。
【0016】
更に別の態様において、本発明は、低投与量の中枢神経系刺激剤、アセチル−L−カルニチン約100mg〜2000mg、L−チロシン約1000mg〜2000mg;N−アセチル−システイン約100mg〜2000mgおよびアルファ−リポ酸約50mg〜1000mgを毎日経口投与することによる、ヒト患者におけるCFSと別の病状を伴う慢性疲労との治療方法を提供する。微量栄養素抗酸化成分は、例えばL−タウリン(約50〜1000mg、100〜500mgまたは200〜400mg等)を更に含むことができる。
【0017】
本明細書に述べるように治療上有効な低投与量が提供される限り、また本明細書の例証によって提示される例および教示内容を考慮して当業者が求めることができる限り、中枢神経系刺激剤は任意の適切なCNS剤であることができ、CNS剤としては、特に、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート、モダフィニル、アルモダフィニル、アンフェタミンおよびアトモキセチンHClが挙げられるが、それらに限定されない。
【0018】
一態様において、組成物および治療法は、治療上有効な量のアセチル−L−カルニチン、L−チロシン、N−アセチルシステインおよびアルファ−リポ酸と一緒に配合されて経口摂取用の丸剤、カプセル、錠剤、または液状の剤形とされた、低投与量のCNS剤を利用する。例えば、メチルフェニデートHClに関して、1つの丸剤、錠剤、カプセル剤または液状の剤形の組成物は、メチルフェニデートHCl約0.75〜7.5mg、1.25〜5mgまたは2〜3mgを通常は含有するが、別の量のメチルフェニデートHClを含有することができる。同様に、モダフィニルまたはアルモダフィニルに関して、組成物は、モダフィニルまたはアルモダフィニル約4〜40mg、6〜25mgまたは10〜20mgを通常は含有するが、別の量を含有することができる。デクスメチルフェニデートHClに関して、組成物は約0.5〜5mg、0.6〜3mgまたは0.2〜2mgを通常は含有するが、別の量のデクスメチルフェニデートHClを含有することができる。アンフェタミンに関して、組成物はアンフェタミン1〜10mg、1.2〜6mgまたは0.4〜4mgを通常は含有するが、別の量を含有することができる。アトモキセチンHClに関して、組成物は2〜20mg、3〜18mgまたは5〜10mgを通常は含有するが、別の量のアトモキセチンHClを含有することができる。カフェインに関して、組成物は約15〜200mg、30〜125mgまたは50〜100mgを通常は含有するが、別の量のカフェインを含有することができる。また、慢性疲労を治すためにまたは著しく緩和するために、日常的に摂取する剤形で、そのような組成物および方法を、広範囲のマルチビタミンおよびマルチミネラルサプリメントまたはそれらの混合剤と共に提供する
ことができ、または同時に投与することができる。
【0019】
したがって、好ましい実施形態は、比較的低い用量のCNS刺激薬剤に少なくとも一部において依拠する。CNS刺激剤の介入により、慢性疲労またはCFSの患者にとって長期の経験および予後への持続した有益な効果をもたらすことができることを示している研究はこれまでない。更に、いくつかのCFS症状に対処するために薬剤がうまく投与される場合であっても、CFS患者の大部分は、全面的な改善には達せず、標準では状態の規則的な再発を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本明細書に開示した組成物および方法の一態様に従って経時的に個人的体力チェックリスト(Checklist Individual Strength、CIS)で測定した患者の疲労を示すグラフである。
図2】本明細書に開示した組成物および方法の一態様に従って経時的に視覚的アナログ・スケール(VAS)により測定した患者の疲労を示すグラフである。
図3】本明細書に開示した組成物および方法の一態様に従って経時的にCISで測定した患者の疲労および集中力障害を示すグラフである。
図4】本明細書に開示した組成物および方法の一態様に従って経時的にVASで測定した患者の集中力障害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
長期のストレスおよび/または感染後に神経系、内分泌系および免疫系の細胞がエネルギーを消耗している場合、これらの系の間のバランスの崩壊が起こる可能性がある。(視床下部−下垂体−副腎ホルモン系の機能障害によりおそらく衰えている)神経系、内分泌系および免疫系の協調の崩壊は、CFSの一般的な病因であると考えられる。結果として生じる症状プロファイルはほとんどの場合、相当なレベルの慢性疲労および/または慢性疼痛を常に含有しており、および患者によって異なることが多い。
【0022】
理論に拘束されることを望むものではないが、大きく消耗した、および弱体化した神経系および内分泌系を患っている患者への、標準的な投与量のCNS刺激剤のみによる治療は、既に疲弊している神経系を過剰に刺激し、最善の状況下では一時的に好転させるかもしれないが、最悪の状況下では結果として患者の基礎状態を著しく悪化させると考えられる。したがって、プラセボより優れるように、CFS(または線維筋痛症、癌、AIDS、B型およびC型慢性肝炎、自己免疫疾患、ライム病、パーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、ADDおよびADHDを含む精神的疾患、多発性硬化症、鎌状赤血球貧血もしくはうっ血性心不全に起因する慢性疲労)の患者のエネルギーレベルを常に高めると証明されている治療レジメンはこれまでない。
【0023】
低投与量のCNS刺激剤をいくつかの高力価の微量栄養素と組み合わせて利用する組成物および方法が本明細書に記載されている。高力価の微量栄養素成分は、神経系、内分泌系および免疫系の細胞が再構成されて機能性の神経−内分泌−免疫系に復帰することができるようになる細胞燃料(アミノ酸、抗酸化物質およびミトコンドリア補助因子)を供給し、低用量のCNS刺激剤は、このプロセスを経時的に高めるとともに刺激するのに必須の触媒(即ち活気(spark))を供給する。換言すれば、高力価の微量栄養素成分は、神
経系、免疫系および内分泌系の更なる消耗または崩壊をもたらすことなく神経系、免疫系および内分泌系の機能を補助し、および慢性疲労の症状に対して薬がその肯定的な臨床効果を呈することができるレベルに前記機能を高める。
【0024】
本明細書で述べる微量栄養素と量との特定の組み合わせは、低用量のCNS刺激薬剤と共に相乗効果を発揮し、長期にわたる慢性疲労またはCFSの相当数の患者において神経
系、内分泌系および免疫系の再統合を誘発し、疲労症状を著しく緩和し、または軽減し、少なくとも相当数の患者のサブセットが機能的に動く状態に復帰することができ、および/または機能的に動く状態を維持することができると考えられる。
【0025】
本明細書の組成物および治療法のCNS刺激成分に関して、ほとんどの場合、CNS刺激剤の製造業者の推奨投与範囲を用いることは、慢性疲労を患っている患者の長期治療にとって効果的ではなく、かつ/または有害である。理論に拘束されることを望むものではないが、このことの主な理由は、そのような患者は「燃え尽きている」と説明することができる神経系および分泌系を有することであると考えられ、結果として、疲労、痛み、および憂うつは、CFS患者で非常に一般的な3つの症状である。
【0026】
本明細書で用いることができる適切なCNS剤の具体例として、メチルフェニデートHCl(例えばRitalin(登録商標)、Daytrana(登録商標)、CONCERTA(登録商標)、Metadate(登録商標)、Methylin(商標))、デクスメチルフェニデートHCl(例えばFOCALIN(登録商標))、モダフィニル(例えばPROVIGIL(登録商標))、アルモダフィニル(例えばNUVIGIL(登録商標))、アンフェタミン(例えばADDERALL(登録商標)、Vyvanse(登録商標))、グアンファシン(例えばIntuniv(商標))、アトモキセチンHCl(例えばStrattera(登録商標))ならびにそれらの薬学的に許容される塩および誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。しかしながら、本明細書で述べた教示内容、組成物および方法に従って別の中枢神経系刺激剤を選択して用いることができ、別の中枢神経系刺激剤として、リスデキサンフェタミン、フェンテルミン、デキスアンフェタミン、デキストロアンフェタミン、ペモリンおよびカフェイン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および誘導体が挙げられるが、それらに限定されないことに留意すべきである。
【0027】
本明細書で用いる、治療上有効な投与量のCNS剤は通常、低投与量のCNS剤である。CNS剤の「低投与」量は、製造業者が示す初期投与量の約10%〜75%、15%〜60%、20%〜50%またはより少ない用量を意味する。慢性疲労およびCFSに好ましい用量はほとんどの場合、製造業者が推奨する投与量(MRD)の50%以下である。一態様によれば、本明細書で用いるCNS剤の例示的な低い経口投与量が以下の表1に記載されている。
【0028】
【表1】
【0029】
一態様において、CNS剤は、メチルフェニデート約2.5〜40mg/日、メチルフェニデート約5〜20mg/日またはメチルフェニデート約10〜20mg/日の経口投与量で投与される。別の態様において、CNS剤は、モダフィニル約30〜100mg/日、モダフィニル約30〜50mg/日またはモダフィニル約40〜50mg/日の量で投与される。別の態様において、CNS剤は、アルモダフィニル約20〜80mg/日、アルモダフィニル約20〜40mg/日またはアルモダフィニル約30〜40mg/日の量で投与される。更に別の態様において、CNS剤は、デクスメチルフェニデート約2.5〜10mg/日、デクスメチルフェニデート約2.5〜5mg/日またはデクスメチルフェニデート約3.5〜5mg/日の量で投与される。更に別の態様において、CNS剤は、アンフェタミン約2.5〜20mg/日、アンフェタミン約2.5〜10mg/日またはアンフェタミン約5〜10mg/日の量で投与される。更に別の態様において、CN
S剤は、アトモキセチン約20〜50mg/日、アトモキセチン約20〜25mg/日もしくはアトモキセチン約22.5〜25mg/日、またはカフェイン約50〜500mg/日、カフェイン100〜400mg/日もしくはカフェイン約100〜300mg/日の量で投与される。2種以上のCNS剤を同じ組成物または方法に含めることもでき、開示した微量栄養素との組み合わせで治療上有効な、全体として低いCNS用量を得るために、本明細書の教示内容を考慮して各々の量は、比例的に減少し得る。
【0030】
栄養素成分に関して、その栄養素成分は、治療レジメンにおいて特定の機能を有しているとして分類することができる様々な成分を含む。第1の成分はエネルギー生成を刺激する微量栄養素であり、理論に拘束されることを望むものではないが、この栄養素の刺激は、本明細書で規定された低投与量でCNS薬がより効果的に作用することを促進すると発明者らは考える。第2の成分は、細胞のために「バランスの取れた冷却系」を提供する微量栄養素であり、この微量栄養素は、フリーラジカルの総負荷および酸化ストレスレベルを低下させ、結果としてCNS剤の毒性または別の副作用の可能性を小さくすると思われる。
【0031】
本明細書の教示内容に従うエネルギー生成に好ましい栄養素として、アセチル−L−カルニチンおよびL−チロシンが挙げられる。いくつかの場合において、エネルギー刺激性微量栄養素成分として、ビタミンB6(ピリドキシン)およびビタミンB12(メチルコバラミン)を更に挙げることができる。回復および均整効果を発揮する好ましい栄養素として、N−アセチルシステイン、アルファ−リポ酸および場合によりL−タウリンが挙げられる。いくつかの場合において、抗酸化性微量栄養素成分として、ビタミンC、ビタミンEおよびベータカロテンを更に挙げることができる。回復および均整効果を発揮し、場合により挙げることができる別の栄養素は、特に亜鉛およびセレンである。
【0032】
付加的な任意のビタミンおよび栄養素として、混合トコフェロール、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、コリン(酒石酸水素塩)、イノシトール、葉酸(フォラシン)、フォリン酸、ビオチン、ビタミンD3(コレカルシフェロール(cholicalciferol))、カルシウム、マグネシ
ウム、鉄、ヨウ素、銅、マンガン、カリウム、クロム、モリブデンおよび/またはホウ素が挙げられる。
【0033】
したがって、本明細書で用いるのに適した高力価の栄養素成分として、エネルギー刺激用の治療上有効な量の2種以上の栄養素(まとめて「微量栄養素刺激成分」)、ならびにフリーラジカル負荷および酸化ストレスレベルを低下させるための2種以上の栄養素(まとめて「微量栄養素抗酸化成分」)が挙げられる。栄養素成分の好ましい組み合わせとして、本明細書で述べた量で、エネルギー生成用の少なくともアセチル−L−カルニチンおよびL−チロシンと、酸化ストレスの低下用のアルファ−リポ酸ならびにN−アセチルシステインおよび場合によりL−タウリンとが挙げられる。付随する別の栄養素として、例えば様々な高力価のビタミン、ミネラル、アミノ酸、抗酸化物質、補助因子、フリーラジカル捕捉物質、以下で述べる元素または生化学化合物を挙げることができる。
【0034】
微量栄養素の適切な1日当たりの経口投与量として、例えば約100mg〜2000mgの量のアセチル−L−カルニチン、約100mg〜2000mgの量のL−チロシン、約100mg〜2000mgの量のN−アセチルシステインおよび約50mg〜1000mgの量のアルファ−リポ酸ならびに場合により約50mg〜1000mgの量のL−タウリンが挙げられる。別の適切な量として、約400mg〜1600mgの量のアセチル−L−カルニチン、約350mg〜1400mgの量のL−チロシン、約250mg〜1250mgの量のN−アセチルシステインおよび約150mg〜600mgの量のアルファ−リポ酸;または約800mg〜1200mgの量のアセチル−L−カルニチン、約7
00mg〜1500mgの量のL−チロシン、約500mg〜750mgの量のN−アセチルシステインおよび約300mg〜450mgの量のアルファ−リポ酸が挙げられる。
【0035】
別の態様において、微量栄養素の、単回単位の経口投与剤形に適した量として、例えば約100mg〜150mgの量のアセチル−L−カルニチン、約80mg〜l00mgの量のL−チロシン、約100mg〜150mgの量のN−アセチルシステイン、約40mg〜60mgの量のアルファ−リポ酸および場合により約40mg〜60mgの量のL−タウリンが挙げられる。別の場合において、適切な投与量として、約90mg〜190mgの量のアセチル−L−カルニチン、約70mg〜150mgの量のL−チロシン、約90mg〜190mgの量のN−アセチルシステインおよび約35mg〜75mgの量のアルファ−リポ酸;または約60mg〜250mgの量のアセチル−L−カルニチン、約50mg〜200mgの量のL−チロシン、約60mg〜250mgの量のN−アセチルシステインおよび約25mg〜100mgの量のアルファ−リポ酸が挙げられる。そのような投与剤形用の任意の量のL−タウリンとして、例えばL−タウリン35mg〜75gまたは25mg〜100mgが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いる微量栄養素の例示的な投与量として、例えば約1mg/日/kg〜27mg/日/kgの量のアセチル−L−カルニチン、約1mg/日/kg〜27mg/日/kgの量のL−チロシン、約1mg/日/kg〜27mg/日/kgの量のN−アセチルシステイン、約0.5mg/日/kg〜14mg/日/kgのアルファ−リポ酸および場合により約0.5mg/日/kg〜14mg/日/kgのL−タウリンも挙げられる。微量栄養素の別の適切な投与量として、例えば約5mg/日/kg〜23mg/日/kgの量のアセチル−L−カルニチン、約5mg/日/kg〜20mg/日/kgの量のL−チロシン、約3mg/日/kg〜18mg/日/kgの量のN−アセチルシステインおよび約2mg/日/kg〜9mg/日/kgの量のアルファ−リポ酸;または約11mg/日/kg〜18mg/日/kgの量のアセチル−L−カルニチン、約10mg/日/kg〜15mg/日/kgの量のL−チロシン、約7mg/日/kg〜11mg/日/kgの量のN−アセチルシステインおよび約4mg/日/kg〜7mg/日/kgの量のアルファ−リポ酸が挙げられる。
【0037】
低用量のCNS剤と共に、栄養素成分を、例えば以下の表2に示す一般的なデイリーマルチビタミンおよびマルチミネラルサプリメントと併用することもできる。
【0038】
【表2】
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「栄養素」は、微量栄養素および主要栄養素のどちらか、または両方を含むことを意図する。微量栄養素として、生化学的および生理的プロセスに必須の有機化合物または化学元素を挙げることができる。そのような有機化合物および化学元素として、例えばビタミン、ミネラル、アミノ酸、抗酸化物質、補助因子、フリーラジカル捕捉物質、または生化学的および生理的プロセスの維持、制御もしくは機能に利用される別の生化学化合物を挙げることができる。主要栄養素として、動物の生化学的および生理的プロセスに比較的多量に必要である有機化合物および化学元素を挙げることができる。主要栄養素の具体例として、タンパク質、炭水化物および脂肪が挙げられる。
【0040】
本明細書において用語「ビタミン」は、様々な代謝プロセスの制御において少量で通常は作用するが、エネルギー源または構成単位として通常は機能しない微量栄養素を意味する。ビタミンは通常、生合成能力の欠如に起因して、定期的に摂取され、またはヒトの中に大量に蓄えられている。本明細書における組成物および方法と組み合わせて特に有益で
あることができる任意のビタミン微量栄養素の具体例として、ビタミンA、B、C、DおよびEが挙げられる。
【0041】
本明細書において用語「ミネラル」は、天然に生じる均質なまたは見かけ上均質な、通常は固体結晶性の化学元素または化合物を意味しており、前記化学元素および化合物は、自然界の無機プロセスから生じ、特徴的な結晶構造および化学組成を有する。本明細書における組成物および方法と組み合わせて特に有益であることができる任意のミネラル微量栄養素および化学元素微量栄養素の具体例として、亜鉛、セレン、鉄、ヨウ素およびホウ素が挙げられる。
【0042】
本明細書において用語「抗酸化物質」は、酸化に拮抗する物質、または、例えば酸素、過酸化物もしくはフリーラジカルにより促進される反応を抑制する物質を意味する。本明細書における組成物および方法と組み合わせて有益である付加的な抗酸化微量栄養素の具体例として、ビタミンC、バイオフラボノイド複合体、ビタミンE、ビタミンB6およびベータ−カロテンが挙げられる。本明細書における組成物および方法と組み合わせて有益である補助因子微量栄養素の具体例として、ビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6が挙げられる。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「高力価」は、抗酸化物質に言及して用いられる場合、非ビタミンまたは非ミネラルの抗酸化物質を意味することを意図する。本明細書における組成物中のそのような高力価の抗酸化物質の化学強度もしくは薬剤強度または効能は、例えば、別の抗酸化物質と比較して、またはこれらの同じ抗酸化物質が食品中で通常に見出される量と比較して、こうした化学種により誘発される酸化、フリーラジカルの破壊または化学反応を大きく低下させることができる。本明細書における栄養素成分に用いられている高力価の抗酸化物質の化学的効能は、例えば、抗酸化物質のモル量がより大きいこと、または抗酸化物資の効能が高められていることに起因しており、抗酸化物質のモル量の増大および抗酸化物質の効能の向上は、本明細書における製剤中の別の抗酸化物質または栄養素との協調的な組み合わせに起因する。本明細書で用いるのに好ましい高力価の微量栄養素抗酸化物質は、N−アセチルシステインおよびアルファ−リポ酸である。本明細書で用いられる付加的な高力価の抗酸化物質の例として、L−タウリン、コエンザイムQ10および/またはグルタチオンが挙げられる。
【0044】
組成物またはその組成物の成分の用語「治療上有効な量」は、所望の治療目的に有効である量を指す。例えば、慢性疲労の治療において「治療上有効な量」は、以下の実施例で実証しているように、慢性疲労を患っている個人に対する顕著なプラス効果をもたらすのに有効な任意の量である。開示した組成物および方法のCNS成分に関して、「治療上有効な量」は前記で定義した低投与量であり、または本明細書に開示したように、治療上有効な量の微量栄養素刺激剤および微量栄養素抗酸化成分と共に投与される場合に過度の副作用を起こすことなくエネルギー生成に関する患者への刺激を誘発するのに十分な任意の量である。本明細書に開示した微量栄養素刺激剤に関して、「治療上有効な量」は、単独で、または本明細書に開示したように治療上有効な量のCNS剤および微量栄養素抗酸化成分と共に投与される場合にエネルギー生成に関する患者への刺激を達成するのに十分な任意の量である。微量栄養素抗酸化剤において「治療上有効な量」は、単独で、または本明細書に開示したように治療上有効な量のCNS剤および微量栄養素刺激成分と組み合わせて投与される場合にフリーラジカルおよび酸化ストレスの低下をもたらすのに十分な任意の量である。
【0045】
治療上有効な量の例示的な例を表2および以下の実施例に示す。栄養素およびCNS剤の治療上有効な量はまた、本明細書に示す例示的な経口投与量の約25%〜約200%超の範囲で変化することができる。ある場合において、初期投与量は、2錠の丸剤×2回/
日としての服用で1日当たり4錠の丸剤であることができ、各丸剤は表2に示す栄養素成分および1日当たり同様に低投与量の表1に示すCNS剤を有する。しかしながら、処方薬または栄養サプリメントの服用に対して極度に敏感である患者では、有効な投与量を1日当たり1錠の丸剤まで少なくすることができる。1〜2週間以内に初期投与量に反応しない患者に関しては、次いで、治療における投与量を1日当たり6錠の丸剤(3錠の丸剤×2回/日として服用)に増加させることができ、必要な場合には、1日当たり8錠の丸剤(4錠の丸剤×2回/日として服用、各丸剤は表2に示す成分を有する)に増加させることができる。そのため、表2に示す1つまたはそれ以上の栄養素の経口投与量に関する治療上有効な量は、例えば表2に示す量の30、40、50、60、70、80、90、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200%超であることができる。本明細書に記載の教示内容および指針を考慮して、当業者は前記に例示したもの以外の有効な量を求めることができる。
【0046】
ある場合において、微量栄養素成分は、例えば前記表2の態様で示すようなものであることができるデイリーマルチビタミン/ミネラルサプリメントを更に含むことができる。したがって、栄養素成分は、ビタミン、ミネラルおよび高力価の抗酸化物質の組み合わせを含むことができる。栄養素成分は、ビタミンおよびミネラル抗酸化物質、ビタミンおよび高力価の抗酸化物質、またはミネラルおよび高力価の抗酸化物質の組み合わせを含むことができる。栄養素成分はまた、これらの抗酸化物質の様々な別の組み合わせを含むことができ、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはより多くの異なる抗酸化物質を含有することができる。抗酸化物質は生理的プロセスに有益であり、その理由は、細胞および組織内で抗酸化物質が免疫力または生理的解毒機能を高めるからである。更に、様々な細胞プロセスにおける複合栄養素の相互依存関係により、複合栄養素の組み合わせは生理的に有益である。例えば、複数の哺乳類ミトコンドリアは、健全に、かつ効率的に機能するために、複合栄養素に関して相互に依存している。複合栄養素抗酸化製剤を投与することにより、そのような抗酸化物質に依存する機能を高めることができるだけでなく、抗酸化物質とビタミンおよびミネラル等の別の栄養素との相互作用に依存する機能を高めることもできる。いくつかの態様において、本明細書において栄養素成分として含まれる栄養素の組み合わせは、2種以上の栄養素の相互依存の役割を互いに補助する栄養素の量または種類を含むことができる。そのような相互依存の具体例は、天然ビタミンE(トコフェロール)をその酸化状態から再生するビタミンC(アスコルビン酸塩)の能力、および天然ビタミンC(アスコルビン酸塩)をその酸化状態から再生するアルファ−リポ酸の能力である。
【0047】
N−アセチルシステイン(NAC)は、強力な抗酸化活性を備える栄養素である。アミノ酸システインのアセチル部分は、グルタチオンの、生物学的に利用可能である一般的な経口源である。グルタチオンは強力な抗酸化物質であり、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素系の構成要素である。
【0048】
アルファ−リポ酸は、例えばミトコンドリア中に見出される強力な抗酸化物質である。アルファ−リポ酸は、好気性呼吸を促進するためのクレブス回路のアルファ−ケト−デヒドロゲナーゼ酵素複合体中の補酵素として作用するだけでなく、アスコルビン酸塩、アルファ−トコフェロールおよびグルタチオンのデノボレベルを再生する代謝経路にも関与する。アルファ−リポ酸はまた、親水性細胞画分および疎水性細胞画分の両方において強力なフリーラジカル捕捉物質として機能する。
【0049】
アセチル−L−カルニチンは刺激性栄養素(アミノ酸)である。アセチル−L−カルニチンはミトコンドリアの燃料混合物を豊富にする。アミノ酸カルニチンのアセチル部分は、ミトコンドリアの膜を介する脂肪酸輸送を制御する。アセチル−L−カルニチンは、ストレスがかかる際には追加の燃料貯蔵物をミトコンドリア中に輸送することにより、ミト
コンドリアの機能およびエネルギー生成を高める。アセチル−L−カルニチンはまた、嫌気条件下でミトコンドリアのエネルギー生成能力を高める燃料源をミトコンドリアに供給するように機能する。ミトコンドリアDNAの枯渇に起因して電子伝達鎖が制御されていない場合、例えば嫌気的代謝が生じる可能性がある。
【0050】
L−チロシンは、タンパク質を合成するために細胞に用いられる20種のアミノ酸うちの1種である。チロシンリン酸化反応は、シグナル伝達および酵素活性の制御において重要な工程のうちの1つであると考えられる。L−チロシンはまた、中枢神経および内分泌系への強力な刺激効果を発揮する神経伝達物質であるノルエピネフリンの前駆体である。
【0051】
本明細書において微量栄養素成分に含めるために選択することができるビタミン抗酸化物質として、例えばベータ−カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6またはビタミンB12が挙げられる。これらの、または任意のビタミン抗酸化物質のうちの1つまたはそれ以上を、開示した実施形態の微量栄養素成分に含めることができる。
【0052】
ベータカロテンは、動物の肝臓中でビタミンにAに変換可能でもあるビタミン抗酸化物質である。この種の栄養素として、用語「レチノイド」で定義される全てのものが挙げられ、またレチノールとして説明されているものが挙げられる。ビタミンAは動物性食品中でのみ見出されることから、ヒトにおいて毎日摂取されるレチノイドの約3分の2はベータカロテンである。ベータカロテンは、消化管および肝臓の両方でビタミンAに変換される。ビタミンAは、網膜の機能および暗所での視力を高めるために身体に用いられ、感染に対する身体の一次障壁を形成する健全な上皮組織の形成および維持にも関与する。
【0053】
ビタミンCまたはアスコルビン酸もしくはアスコルビン酸塩は強力な還元剤であり、デヒドロアスコルビン酸に可逆的に酸化可能である。本明細書で用いる場合、用語ビタミンCは、アスコルビン酸の立体異性体であるケト・アルドン酸の様々なエノール・ラクトンのいずれかを含むことを意図する。前述したように、ビタミンCは例えばクレブス回路において機能し、欠乏は壊血病を招く可能性がある。ビタミンCはまた、骨基質、軟骨、象牙質、コラーゲンおよび一般的な結合組織の構築および維持において機能する。更に、ビタミンCは、ストレスを受けて、またはストレスに対抗して、免疫系および適切な副腎の機能による感染への抵抗に関与する。
【0054】
自然界では混合トコフェロールとして見出されるビタミンEは、抗酸化特性を備える脂溶性トコフェロール複合体である。ビタミンEはまた、細胞膜脂肪酸の酸化的損傷からの保護に関与する。ビタミンEは哺乳類にとって栄養学的に必須であり、哺乳類において、ビタミンEの欠乏は不妊症、筋ジストロフィーまたは血管系の異常を伴う。本明細書で用いる場合、用語ビタミンEは、有機化合物であるトコフェロール群内で見出される構造的に類似した化合物のうちのいずれかを含むことを意図する。
【0055】
ビタミンB6またはピロキシジンHClもしくはピリドキシンはビタミンB複合体の水溶性成分であり、赤血球および血管、神経機能、歯肉ならびに歯の正常な形成および健康に関与する。ビタミンB6の活性型では、ピリドキサールリン酸(B6−PO4)は、ア
ミノ酸、炭水化物および脂肪の代謝で起こる多くの種類のアミノ基転移反応(アミノ酸代謝)および脱カルボキシル化反応に関わる補酵素である。ビタミンB6はまた、免疫系機能における補助因子である。抗酸化物質であるとは一般に考えられていないが、ビタミンB6は抗酸化特性を示す。
【0056】
ビタミンB12は、(コリンおよび葉酸と共に)メチル基転移反応に関わる栄養因子である。ビタミンB12は、赤血球の形成および健全な神経系機能に関わる。
【0057】
本明細書において栄養素成分に含めるために任意選択により選択することができるミネラル抗酸化物質として、例えば亜鉛またはセレンが挙げられる。これらのミネラルのうちのどちらか一方または両方ならびにビタミン抗酸化物質を、開示した実施形態の微量栄養素成分に任意選択により含めることができる。
【0058】
例えばピコリン酸塩、炭酸塩、アスコルビン酸塩またはキレート化したアミノ酸と錯体化した形で摂取される亜鉛は、抗酸化活性を示すミネラルの一種である。亜鉛はまた、約200個以上の酵素の代謝活動に利用されており、細胞分裂ならびにDNAおよびポリペプチドの合成に重要であると考えられている。亜鉛欠乏は成長遅延の一因となり、軽度の欠乏でさえ、その他は健全な子供の成長を制限する可能性がある。亜鉛は、例えば乳酸デヒドロゲナーゼ酵素系の一部としてエネルギー代謝において機能する。亜鉛はまた、創傷治癒の促進を増進するという役割からも明らかなように免疫機能に関与し、スーパーオキシドジスムターゼ酵素系の一部として、抗酸化物質として機能する。
【0059】
例えばピコリン酸塩、炭酸塩、アスコルビン酸塩またはキレート化したアミノ酸と錯体化した形で摂取されるセレンは、抗酸化活性を有する別のミネラルである。セレンは、例えば酵素グルタチオンペルオキシダーゼ、ヨードチロニン−5’−デヨージナーゼおよび哺乳類のチオレドキシンレダクターゼの活性部位の構成要素である。セレンはまた、哺乳類のいくつかの別のセレンタンパク質中に存在する。グルタチオンペルオキシダーゼ触媒反応およびチオレドキシンレダクターゼ触媒反応の両方は、酸化的損傷およびフリーラジカルによる損傷からの細胞成分の保護に関与する。そのため、セレンおよび亜鉛は、1つまたはそれ以上の個々の抗酸化酵素系内において酵素の活性を高める。セレンはまた、有害な細胞の過酸化物に対する哺乳類細胞の副次的な防衛線としての役割を果たす。セレンは、グルタチオンペルオキシダーゼ酵素系の不可欠な部分として、この役割を果たす。
【0060】
前述の栄養素抗酸化物および当技術分野で既知である別のもののいずれかを、任意選択により本明細書における組成物および方法の栄養素成分に含めることができる。また、例えば1つまたはそれ以上の前述の抗酸化酵素系または別の酵素系中で機能する別の栄養素を含めることもできる。
【0061】
本明細書における組成物および治療レジメンに含めることができる付加的なビタミンまたはミネラルとして、混合トコフェロール、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、コリン(酒石酸水素塩)、イノシトール、葉酸(フォラシン)、ビオチンもしくはビタミンD3(コレカルシフェロール(cholicalciferol))等の付加的なビタミンおよび/またはカルシウム、マグネ
シウム、鉄、ヨウ素、銅、マンガン、カリウム、クロム、モリブデンもしくはホウ素等の付加的なミネラルが挙げられる。例えば、ビタミンのカテゴリーから1つまたはそれ以上の栄養素を付加的に含めることができる。同様に、ミネラルのカテゴリーから1つまたはそれ以上の栄養素を付加的に含めることができる。また、ビタミンおよびミネラルの両方のカテゴリーから1つまたはそれ以上の栄養素を、開示した実施形態の微量栄養素成分に付加的に含めることができる。そのため、開示した実施形態の微量栄養素成分は、以下のビタミンまたはミネラルの様々な組み合わせのうちのいずれか1つまたはそれ以上だけでなく、前記組み合わせの全ても含むことができる:ベータカロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB12、亜鉛、セレン、混合トコフェロール、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、コリン(酒石酸水素塩)、イノシトール、葉酸(フォラシン)、ビオチン、ビタミンD3(コレカルシフェロール(cholicalciferol))、カルシウム、マグネシウム、
鉄、ヨウ素、銅、マンガン、カリウム、クロム、モリブデンおよび/またはホウ素。
【0062】
カルシウムは、人体中に大量に存在しており、例えば、構造的完全性、血液凝固および
神経細胞の機能に必要である。カルシウムはまた、神経系を補助するとともにその神経系のバランスを取るミネラルであり、そのため本明細書に開示した組成物および方法のいくつかの態様で特に有益である。
【0063】
マグネシウムは、炭水化物およびタンパク質等の高分子の健全な細胞内代謝に関与する。多くの生化学反応において基質として用いられるATPの形態はマグネシウム−ATP錯体である。マグネシウムは神経系を補助するとともにその神経系のバランスを取るミネラルであり、そのため本明細書に開示した組成物および方法のいくつかの態様において特に有益である。
【0064】
別の態様において、本開示は、栄養素および/または1つもしくはそれ以上のCNS剤の組み合わせと、任意選択により薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。当技術分野で既知の従来の方法により組成物を調製することができる。用語「薬学的に許容される担体」は、CNS刺激剤および/または栄養素を投与するための製剤で用いるのに適している任意の不活性な物質を指す。担体は、抗粘着剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、賦形剤または希釈剤、防腐剤(抗酸化剤、抗菌剤または抗真菌剤等)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤等であることができる。
【0065】
医薬組成物は、液状の剤形、半固形の剤形および固形の剤形等の任意の適切な形態であることができる。液状の剤形の例として、液剤(例えば注射剤および不溶解性液剤)、マイクロエマルション、リポソーム、分散液または懸濁液が挙げられる。固形の剤形の例として、錠剤、丸剤、カプセル、マイクロカプセルおよび粉末が挙げられる。CNS刺激剤および栄養素成分の投与に適した組成物の具体的な形態は、丸剤等の固体の剤形である。
【0066】
任意の適切な経腸的経路または非経口経路の投与によって組成物を投与することができる。経腸的経路の例として、経口、粘膜、頬内粘膜(buccal)および直腸経路、または胃内経路が挙げられる。非経口経路の投与の例として、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、経気管、硬膜外および胸骨下(intrasternal)、皮下または局所投与が挙げられる。経口摂取、経鼻胃チューブ、注射、点滴、埋め込み型注入ポンプおよび浸透圧ポンプ等の任意の適切な方法を用いて組成物を投与することができる。
【0067】
好ましい実施形態において、安全で効果的な治療を施すために、低用量のCNS刺激薬剤および栄養素成分が経口摂取用の単位剤形(丸剤、錠剤、カプセル剤または液体等)で組み合わされる。主要な微量栄養素(少なくともアセチル−L−カルニチン、L−チロシン、N−アセチルシステインおよびアルファ−リポ酸)とCNS剤との間の前述した投与関係が治療を成功させるのに有益であるように、薬剤と栄養素との間には密接な関係がある。したがって、CNS刺激薬剤および栄養素成分を単一の剤形中に共に供給することができる。この単一の剤形により、患者は正確な割合の栄養素成分およびCNS薬剤を確実に受け取っている。したがって、CNSおよび栄養素成分を別々の錠剤として、またはより好ましくは一つに組み合わされた錠剤として製剤化することができる。好ましい医薬製剤は固形組成物であり、具体的には錠剤、硬カプセルおよび液体入りカプセルである。成分の経口投与が好ましい。いくつかの態様によれば、患者は、治療への反応に応じて例えば表2に示すように1日当たり1〜8錠の錠剤を服用することができる。いずれにせよ、ほとんどの場合でCNS薬剤は1日当たり低投与量に規定される。1日当たり1回で、1日当たり2回または複数回で、ならびに症状が現れなくなるまで、および/または症状が大幅に沈静化するまで治療期間中に継続して、典型的には4週、8週または12週にわたって継続して剤形を投与することができるが、症状が現れなくなった後または大幅に沈静化した後に、主治医の判断で予防手段として長期間継続することもできる。
【0068】
ある場合において、CFSがある患者を治療するための初期投与量は、患者の個々の反
応に基づいて例えば1日当たり2回で2錠の錠剤(表2)であることができるが、投与量を例えば1日当たり2回で4錠の丸剤または1日当たり2回で1錠の丸剤に変更することもできる。任意の特定の対象のために、個々の要求および組成物の投与を管理している専門家の専門的な判断に基づいて、具体的な投与レジメンを経時的に調整しなくてはならないことを理解すべきである。したがって、患者は1つの用量で開始され得るが、患者の状態が変化するとともにその用量を変更することができる。
【0069】
用語「1日当たり」は、1日に少なくとも1回は投与する投与量を意味する。頻度は1日当たり1回でもよいが、任意の規定した1日当たりの投与量を超えないという条件で1日当たり1回を超えることができる。
【0070】
用語「組み合わせ」は、CNSおよび栄養素成分それぞれの1日当たりの投与量が治療日中に投与されることを意味する。前述したように、組み合わせの成分を同時に、即ち両方の成分を含有する単一の剤形として、または別々の投与単位として投与することが特に好ましい。所望の1日当たりの投与量が達成されているという条件で組み合わせの成分を治療日中の異なる時間に投与することもできる。
【0071】
一態様において、治療期間中に治療レジメンの中断がないことが好ましい。したがって、CNSおよび栄養素の組み合わせの「連続投与」は、全治療期間中において1日当たり少なくとも1回は前記組み合わせが投与されることを意味する。治療する症状に応じて治療期間を変更することができる。患者との意思疎通に加えて医者による評価が治療の継続期間の決定の助けになる。投与量レジメンは不定、長期、短期、または12週未満、8週もしくは4週未満であることができる有限項の治療であることができる。治療レジメンの過程中に患者がミスをする可能性があり、または1回もしくは数回の投与量の服用を忘れる可能性があると予測されるが、そのような患者はまだ連続投与を受けていると見なす。
【0072】
栄養素成分の効能は栄養素の純度レベルと相関する。高純度レベルではより大きな活性が得られ、その結果として、1回またはそれ以上の投与での量を削減することができる。
【0073】
本明細書における組成物および方法で用いるCNS薬剤および栄養素は、約90%を超える純度レベルを好ましくは有し、より好ましくは約95%を超える純度レベル、最も好ましくは約98%を超える純度レベルを有する。当技術分野で周知の方法により、これらの高純度レベルを得ることができる。また、賦形剤、結合剤またはステアレートもしくはパルミテート等の潤滑剤を省略することにより、全重量の約98%を超える純度レベルおよび特に約99%を超える純度レベルを得ることができる。また、微量栄養素成分の活性を損なうことなく約98〜99%を超える純度を達成するために、個人における成分の吸収、生物学的利用または耐性を抑制するか、または抑制する可能性があることが当技術分野で既知である別の物質を製剤から除外することもできる。しかしながら、望ましい場合には、そのような賦形剤、結合剤、滑沢剤または別の物質を含むこともできることを理解すべきである。本明細書に記載されている教示内容および指針を考慮して、当業者は、前述の純度レベル未満の栄養素成分を用いるべきか、または付加的な物質および薬学的に許容される添加剤を製剤に含めるべきかが分かる。したがって、栄養素または別の投与可能な化合物の包装および投与用に当技術分野で既知の薬学的に許容される担体の様々な製剤を、開示した実施形態と共に利用することができる。
【0074】
本明細書の製剤で用いる栄養素を、当業者に既知の様々な供給源のいずれかから得ることができる。例えば、本明細書に例示した量または投与量を満たす個々の栄養素または組み合わせを商業用の製造業者が製造することができる。商業用の製造業者の例として、Enzymatic Therapy(グリーンベイ、ウィスコンシン州、およびURL enzymatictherapy.comで見つけることができる)が挙げられる。ま
た、当業者に既知の方法を用いて栄養素を生化学的に精製することまたは化学的に合成することができる。
【0075】
以下の実施例は例示を意図しており、限定することを意図していない。患者それぞれの慢性疲労の状況に対して適切な標準的治療を維持するために、別の複数のCNS刺激剤またはそれらの組み合わせを用いることができるだけでなく、投与のスケジュールおよび継続時間を変更することができ、かつ/または、より少ないもしくは付加的な微量栄養素、マルチビタミンおよびミネラルを使用することができる。
【実施例】
【0076】
フェーズIIaの臨床試験をカリフォルニア州、ミルバレーで行なった。この前向き非盲検12週臨床試験の結果は、慢性疲労を患っている個人に対する有意のプラス効果を強く示した。
【0077】
目的:微量栄養素の高力価の組み合わせと併用される低用量のアンフェタミン誘導体を利用する栄養素−薬剤ハイブリッド治療の疲労、集中力障害および慢性疲労症候群(CFS)の患者の生活の質に対する効果を研究すること。
【0078】
研究デザイン:慢性疲労症候群に関する1994年のCDCの基準を満たし集中力が低下している15例の患者における前向き非盲検12週臨床試験。研究継続期間:12週。適格条件:主な適格条件は、CFSに関する1994年のCDCの症例定義を満たし、18〜65歳の年齢であり、ならびに注意力および/または集中力の欠如の自覚症状を有する男性または女性の被験者であった。
【0079】
研究介入:メチルフェニデートおよび栄養素を別々の丸剤で投与したことを除いて表2に列挙した栄養素および投与量を含む栄養素−薬剤ハイブリッドから成る経口治療を15例のCFS患者に施した。1回/日服用するメチルフェニデート10mgおよび4錠の栄養素の丸剤の初期投与量で治療を開始した。治療の3日後、本研究の患者に連絡を取り、本研究の患者が支障なく治療に耐えていた場合、治療の投与量を、2回/日服用するメチルフェニデート10mgおよび4錠の栄養素の丸剤に増加した。この投与量は、1日当たり合計8錠の丸剤(4錠の丸剤を2回服用/日)に相当する、表2に示す栄養素およびメチルフェニデートの投与量を示す。
【0080】
患者の標準的治療を維持するために(本研究の患者は、研究中に提供されたもの以外の任意の追加の栄養素、ビタミンまたはミネラルを摂取しないことに事前に同意していた)、CNS剤、4種の主要な栄養素および広範囲のマルチビタミン/ミネラルサプリメントを含む、表2に示す組成物を研究治療で用いた。
【0081】
少なくともCFS患者の半数における臨床的に有意な改善を、本研究に関する主要転帰の目的とした。本研究の目的に関して、臨床的に有意な改善をいずれの疲労の主要転帰尺度においても33%以上の改善と定義する。これまで、この水準の効果を示しているCFS治療はない。
【0082】
主要転帰尺度:3つの手段を用いて、確立されている測定技法に従って疲労および集中力を評価した。例えばBlockmans,D.他、「Does Methylphenidate Reduce the Symptoms of Chronic Fatigue Syndrome?」Am.J.of Medicine(2006)119,167.e23−167.e30参照。
【0083】
2つの手段を用いて疲労の変化を評価した:(1)個人的体力チェックリスト(CIS
)は、20〜140に順位付けした、前2週間にわたる疲労の重症度を評価する自己申告式質問票である。本研究の目的のため、臨床的に有意な応答を、疲労スコアでの33%低下、または従事者での推定疲労に関するカットオフ・ポイントとして事前に定義している76%以下のCISスコアと定義した。これらの基準を満たしている患者を応答者と見なした。(2)第2の手段として、主観的疲労を測定する視覚的アナログ・スケール(VAS)を用いた(範囲0〜10)。
【0084】
一方ではCIS(5項目、範囲5〜35)の集中力サブスケールを用いて、および他方では主観的集中力を測定するVAS(範囲0〜10)を用いて、集中力障害を評価した。CISの総スコアと同様に、有意な臨床的改善をCISサブスケールでの集中力障害スコアの33%低下と定義した。
【0085】
研究結果:主要転帰測定値:
疲労:4週目での中間解析では、CISの総スコアにおいて33%以上の低下で判断する疲労の臨床的に有意な減少が、疲労症状が平均して33%低減している参加者の66%[15例中10例が有意に応答した]で見られた。12週目での中間解析では、CISの総スコアにおいて33%以上の低下で判断する疲労の臨床的に有意な減少が、疲労症状が平均して41%減少している(図1参照)参加者の100%[7例の患者中7例が有意に応答した]で見られた。視覚的アナログ・スケール(VAS)でも同様の結果が見られ、この結果は、12週目において疲労症状が平均して54%低減している(図2参照)本研究の患者の66%[15例中10例が有意に応答した]での疲労症状の臨床的に有意な減少と一致した。
【0086】
集中力障害:4週目での中間解析では、CISの集中力サブスコアにおいて33%以上の低下で判断する集中力障害の臨床的に有意な減少が、集中力障害症状が平均して36%減少している参加者の66%[15例中10例が有意に応答した]で見られた。12週目での解析では、CISの集中力サブスコアにおいて33%以上の低下で判断する集中力障害症状の臨床的に有意な減少が、集中力障害症状が12週目で平均して50%減少している(図3参照)参加者の85%[7例の患者中6例が有意に応答した]で見られた。視覚的アナログ・スケール(VAS)でも同様の結果が見られ、この結果は、12週目において集中力障害症状が平均して54%低減している(図4参照)本研究の患者の80%[15例中12例が有意に応答した]での集中力障害症状の臨床的に有意な減少と一致した。
【0087】
結論:本明細書に開示した栄養素−薬剤の組み合わせおよび方法による治療は、CFS患者の大部分で疲労、注意力および集中力障害を有意に改善した。本研究で用いた栄養素−薬剤ハイブリッド治療は慢性疲労症候群を伴う疲労および集中力障害の治療に効果的であり、良好な耐用性を示した。
【0088】
本明細書で引用した全ての特許および刊行物を参照によって本明細書に組み入れる。本発明は以上に説明および例示した特定の実施例および実施形態に限定されないことを容易に理解しなくてはならない。むしろ、本発明の精神および範囲と等しい、前述しなかった多くのCNS薬、栄養素成分、投与技術および別のバリエーション、代替、置き換えまたは等価な配置を組み込むために、実施例および実施形態を変更することができる。例えば、実施例では低用量のメチルフェニデートを用いるCFSの治療に関して本発明を実施するためのいくつかの好ましい実施形態に関して説明されているが、別のCNS薬による組成物の調製および慢性疲労の治療に本発明を用いることもできるだけでなく、別の慢性疲労の状態の治療に本発明を用いることもできる。したがって、本発明は前述の説明に限定されず、添付した特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4