(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574812
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】床下機器着脱装置
(51)【国際特許分類】
B61D 15/00 20060101AFI20190902BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20190902BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
B61D15/00 E
B62B3/00 B
B62B5/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-104081(P2017-104081)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-199369(P2018-199369A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2017年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508311167
【氏名又は名称】株式会社エレメックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 幸司
(72)【発明者】
【氏名】山口 善之
(72)【発明者】
【氏名】平井 光
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−005020(JP,A)
【文献】
特公昭45−011245(JP,B1)
【文献】
特開2009−208527(JP,A)
【文献】
特公昭58−013383(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/00
B62B 1/00 − 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床下に備えられる機器を着脱するのに利用される床下機器着脱装置において、
昇降機能を備えたベース部と、該ベース部を支持する台車と、該台車の下に配置される車輪部を備え、
前記車輪部は、第1車輪と、第2車輪と、を備え、
前記第1車輪と前記第2車輪とは、2組の相互に平行な側面を有するブロック状のフレームに支持される車軸によって回動可能に連結され、
前記第1車輪に第1モータが接続され、前記第2車輪に第2モータが接続され、
前記フレームの周囲に、前記第1モータ、前記第1車輪、前記第2モータ、前記第2車輪の順に囲むように配置されていること、
前記車輪部と前記台車とはトラニオン構造で連結されること、
を特徴とする床下機器着脱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の床下機器着脱装置において、
前記第1又は前記第2モータが、前記車輪部の前記車軸の前後に配置され、前記第1又は前記第2車輪と前記第1又は前記第2モータとはベルトで動力伝達されること、
を特徴とする床下機器着脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両の検査及び修理の際に、鉄道車両の床下に取り付けられた床下機器を着脱する床下機器着脱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の床下には、動力伝達装置、電気装置、ブレーキ装置などが配置されており、特定の車両には、空圧機器、油圧機器、排水用機器なども取り付けられている。メンテナンス時には車両構体と台車を分離して、床下機器などを取り外すといった作業を必要とするケースもある。車両構体を所定の高さまでジャッキアップするにしろ、床下機器の取り外しには車両構体の下面までの高さで制限があるため、床下機器取り外しのための着脱台車は出来るだけ装置全高が低いことが好ましい。この手の着脱台車は色々な分野に用いられていて、自動車業界でも利用されている。
【0003】
特許文献1には、鉄道車両用床下機器一括解装装置に関する技術が開示されている。ボディーマウント方式で車体に取り付けられた床下機器の一輌分を、車体の下部にトラバーサに搭載して引き入れられたパレット上に取卸して搬出する鉄道車両用床下機器一括解装装置において、上記のパレットに各機器を取り付ける機器梁を個別に受けるサポートジャッキを設ける。こうすることでトラバーサを利用して鉄道車両の床下機器を取り外しが可能となる。
【0004】
特許文献2には、台車利用の搬送装置に関する技術が開示されている。搬送路に沿って走行する搬送台車に被搬送物を支持する昇降テーブルが設けられた台車利用の搬送装置において、昇降テーブルはそのテーブル本体上に被搬送物の底部を支持するテーブル型受け台が取り外し自在に設けられている。それと共にテーブル本体が昇降下限位置にあるときテーブル本体の上面がこの搬送台車上の平坦な作業床面と面一になるように構成されている。そして、この搬送台車上には平面視において被搬送物の左右両側に位置する左右一対の支柱部材と、被搬送物の左右両側辺を支持する受け部とからなる支柱型受け台が、その左右一対の支柱部材が昇降テーブルの左右両側に位置する状態で取り外し自在に取り付けられている。
【0005】
特許文献3には、自動車などの組立て用搬送装置に関する技術が開示されている。車体を搬送する搬送台車の上に車体支持手段が設けられ、この支持手段で所定の高さに支持された車体に対する下側からの部品組み付け作業が搬送作業台車上で行えるように構成されている。そして、この搬送台車の走行経路中のエンジン組み付け作業区間の搬送台車と同期して走行可能な同期走行台車が設けられ、この同期走行台車上に搬送台車の床面に設けられた開口部を経由して昇降する昇降台を備えたリフターが搭載されている。台車床面上に乗り入れて停止位置で停止したエンジン搬送台車のエンジンを支持する昇降テーブルが、同期走行台車側のリフターの昇降台により所定の高さまで持ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−126253号公報
【特許文献2】特開2009−51290号公報
【特許文献3】特開2009−248657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2や特許文献3の搬送装置は自動車の製造ラインに組み込まれる前提であるため、所定の位置で所定の高さにリフターが到達すれば、作業が行える構成である。しかし、鉄道車両のメンテナンスを行う場合、車両毎に床下機器の配置が異なることから、搬送装置は車両構体の長手方向に移動出来る構成が好ましい。また、搬送装置のベースを微調整可能な構成であることが好ましい。しかしながら、特許文献2は、生産ラインに沿って、特許文献3は、生産ラインに直交するような形で掘られたピットの中を搬送装置が移動する構成である。つまり、ピットの形状に移動範囲が規制される。このため、搬送装置を自在に移動させるということはできず、移動に制約があると考えられる。これは特許文献1の搬送装置もトラバーサを用いている点で同様である。
【0008】
車両構体の下に取り付けられている床下機器は、着脱するにあたって車両構体の側面側から搬送装置を車両構体の下に移動させ、床下機器を取り外したら搬送装置ごと車両構体の下から車両構体の側面側に移動させることが求められる。車両構体はメンテナンスのために持ち上げられるものの、車両構体をあまり高く持ち上げると作業性が悪化するため、車両構体の下のスペースは限られてしまう。また、車両構体の下にて位置の微調整や回転移動なども求められるケースがあるため、移動自由度の高い搬送用台車が求められる。
【0009】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、自在に移動可能な床下機器着脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による床下機器着脱装置は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)鉄道車両の床下に備えられる機器を着脱するのに利用される床下機器着脱装置において、昇降機能を備えたベース部と、該ベース部を支持する台車と、該台車の下に配置される車輪部を備え、前記車輪部は、
第1車輪と、第2車輪と、を備え、
前記第1車輪と前記第2車輪とは、2組の相互に平行な側面を有するブロック状のフレームに支持される車軸によって回動可能に連結され、
前記第1車輪に第1モータが接続され、前記第2車輪に第2モータが接続され、前記フレームの周囲に、前記第1モータ、前記第1車輪、前記第2モータ、前記第2車輪の順に囲むように配置されていること、前記車輪部と前記台車とはトラニオン構造で連結されること、を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様によって、床下機器着脱装置の台車の位置を微調整することが可能となる。これは、車輪部がトラニオン構造で台車を支持しており、かつ車輪部には左右の車輪が軸支される構造であるため、車輪部の軸がぶれずに台車を旋回させることが可能となるためである。これによって、床下機器着脱装置の位置を微調整することが容易になり、床下機器の取り付け・取り外しを容易とすることができる。その結果、鉄道車両のメンテナンス性を向上させるので、作業時間の短縮や作業の効率化に貢献可能である。
【0013】
(2)(1)に記載の床下機器着脱装置において、前記
第1又は第2モータが、前記車輪部の前記車軸の前後に配置され、前記
第1又は第2車輪と前記
第1又は第2モータとはベルトで動力伝達されること、が望ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様によって、車輪部がコンパクトに配置できる上に、それぞれの車輪にモータを設けてある事で、操舵用のモータを廃することができる。結果的に、台車の高さを低くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本実施形態の、搬送台車の側面模式図である。
【
図6】本実施形態の、ベース部ユニットの斜視図である。
【
図7】本実施形態の、ベース部ユニットの模式側面図である。
【
図8】本実施形態の、旋回テーブルを説明する斜視図である。
【
図9】本実施形態の、前後テーブルを説明する斜視図である。
【
図10】本実施形態の、左右テーブルを説明する斜視図である。
【
図11】本実施形態の、角度調整テーブルを説明する側面図である。
【
図12】本実施形態の、角度調整テーブルを説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の実施形態について図面を用いて説明を行う。
図1に、本実施形態の搬送台車の斜視図を示す。床下機器着脱装置にあたる搬送台車100は自走式の台車であり、台車フレーム104の中央部にベース部ユニット110が、下部には車輪部150が備えられている。
図2に、搬送台車の側面模式図を示す。搬送台車100のフレームとなる台車フレーム104の中央には凹部105が設けられ、いわゆるバスタブ構造となっている。この凹部105にベース部ユニット110が収められる。搬送台車100の側面には制御盤101が埋め込まれ、前面には制御パネル102が用意されている。
【0017】
図3に、車輪部の斜視図を示す。
図4に、車輪部の側面図を示す。
図5に車輪部の上面視図を示す。
図4及び
図5は説明の都合で模式図としてある。台車フレーム104の下に4つ配置される車輪部150は、両サイドに車輪151(便宜上、第1車輪151a、第2車輪151bとするが、特に指示が無い場合はその何れか或いは両方のことを示すものとする)を備えており、並列にトラニオン構造に配置した車輪151は車軸152によって回動可能に連結されている。
【0018】
この車軸152はフレーム153によって回転可能に支持されており、フレーム153の両側にはサーボモータ154(便宜上、第1モータ154a及び第2モータ154bとするが、特に指示が無い場合にはその何れか或いは両方のことを示すものとする)が備えられている。つまり、フレーム153の周囲に、第1モータ154a、第1車輪151a、第2モータ154b、第2車輪151bの順に囲むように配置されている。サーボモータ154の先端にはプーリー155が取り付けられ、ベルト156を介して車輪151に動力が伝達される。なお、ベルト156を動力伝達手段に用いているが、チェーンなどを用いる事でも動力伝達が可能である。
【0019】
フレーム153の上部には、中心ピン部157が台車フレーム104に対して回転可能に支持されている。中心ピン部157の中心軸は、車軸152の中心に来るように配置される。このように、車輪部150には左右に車輪151が配置され、前後にサーボモータ154が配置される構造となっており、操舵用のモータを廃することで車輪部150自身の高さが低く抑えられている。また、左右に配置される車輪部150は2つ1組で図示しないロットにて連結されている。
【0020】
図6に、ベース部ユニットの斜視図を示す。
図7に、ベース部ユニットの側面図を模式的に示す。ベース部ユニット110には、フレーム111と、油圧式テーブルリフタ112と、旋回テーブル機構113と、前後テーブル機構114と、左右テーブル機構115と、角度調整テーブル機構116が積み重ねられて、4層のテーブル構造になっている。
【0021】
図8に、旋回テーブル機構を説明する斜視図を示す。
図9に、前後テーブル機構を説明する斜視図を示す。
図10に、左右テーブル機構を説明する斜視図を示す。
図11、及び
図12に、角度調整テーブル機構を説明する側面図を示す。4層になっているテーブルは、旋回及び前後左右に角度調整テーブル機構116を移動させることが可能である。フレーム111に支持された油圧式テーブルリフタ112は、機器中央に油圧シリンダが備えられ、X字状アームを介してその上部に設けられた旋回テーブル機構113を、水平を保って昇降する機能を有する。
【0022】
旋回テーブル機構113は、油圧シリンダを備えて±7度程、旋回テーブル113aを旋回させる機能を有している。旋回テーブル113aの上に固定される前後テーブル機構114は、
図9に示すように前後テーブル114aを±50mm程度前後に移動させる機能を有している。前後テーブル機構114には電動スクリュージャッキ114bを備えて、電動スクリュージャッキ114bが前後テーブル114aを移動させる。
【0023】
前後テーブル114aの上に固定される左右テーブル機構115は、
図10に示すように左右テーブル115aを±50mm程度左右に移動させる機能を有している。左右テーブル機構115には電動スクリュージャッキ115bを備えて、電動スクリュージャッキ115bが左右テーブル115aを移動させる。左右テーブル115aには角度調整テーブル機構116が固定されている。
【0024】
そして、
図11及び
図12に示すように角度調整テーブル機構116は、その四方に取り付けられる手動油圧シリンダ117で角度調整を行う事ができる。手動油圧シリンダ117はその先端に球面軸受け117aを有しており、角度調整テーブル116aの角度を変更する構造になっている。調整ストロークは50mm程度で、図示しないハンドポンプによって駆動され、油圧シリンダによってそれぞれの高さを調整可能である。この様な構成のベース部ユニット110が台車フレーム104の中央に設けられた凹部105に収められ、ベース部ユニット110の下限にあるとき、台車フレーム104の上面の面位置と角度調整テーブル116aの上面の面位置が一致するような高さに設定されている。
【0025】
本実施形態の発明に係る床下機器着脱装置は上記構成であるため、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0026】
まずは、自在に移動可能な床下機器着脱装置の提供が可能になる点が、効果として挙げられる。これは、鉄道車両の床下に備えられる機器を着脱するのに利用される床下機器着脱装置に相当する搬送台車100において、昇降機能を備えたベース部に相当するベース部ユニット110と、ベース部ユニット110を支持する台車フレーム104と、台車フレーム104の下に配置される車輪部150を備え、車輪部150は、車軸152の左右に接続された車輪151を有し、車輪151のそれぞれにモータであるサーボモータ154が接続され、車輪部150と台車フレーム104とはトラニオン構造で連結されるためである。
【0027】
車輪部150のフレーム153には、筒耳158を備える中心ピン部157が支持されていて、中心ピン部157が車軸152の中心に配置されている。この中心ピン部157が台車フレーム104を支持する構造となっている為、車輪部150はこの中心ピン部157の軸中心を中心にして回転できる。それぞれのサーボモータ154がベルト156によって車輪151に対して動力を伝達する構成であるため、サーボモータ154は走行モータと操舵モータの働きを兼ねる。対になる車輪151が同じ方向に回転すれば走行し、逆方向に回転すれば操舵が可能となる。
【0028】
この結果、車輪151を複列にしたことで、搬送台車100を並進、回転するときにも車輪部150の軸がぶれにくく、微調整が容易となった。これまでは、単車輪を両側から挟んで支える方式を採っていたが、鉄道車両の真下で搬送台車100の位置を微調整する場合に、位置調整に苦労することが多かった。特にすえ切りと呼ばれる停止した状態でタイヤを回転させるようなケースで影響が出る。これは、車輪の摩擦の影響や床面に不陸部があるなど条件が悪いと更に大きく影響し、その結果操舵時に荷ぶれが発生し、搬送台車100と床下機器が干渉する恐れがあった。しかし、車輪151が並列で配置されて、その中心に中心ピン部157が配置され、接地面が分散された状態で、軸中心で回転する構成となっているので、軸のぶれを抑える事ができる。
【0029】
また、サーボモータ154が、車輪部150の車軸152の前後に配置され、車輪151とサーボモータ154とはベルト156で動力伝達される構成となっている。車輪部150の操舵はサーボモータ154を用いて行っている。従って、別に操舵用のモータを用意する必要が無く、車輪部150の高さを抑えることができる。この結果、搬送台車100の高さを抑えることができる。搬送台車100は、車両構体の下側に入って床下機器を取り外しする為に、搬送台車100の高さが抑えられることが望ましい。
【0030】
以上、本発明に係る床下機器着脱装置の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、各部には油圧ジャッキや電動のサーボモータをそれぞれ用いているが、その動力は油圧や電気に限らずとも良い。また、サーボモータ154はベルト156で動力伝達される構成となっているが、これを別の動力伝達手段、例えばチェーンを用いる事を妨げない。
【符号の説明】
【0031】
100 搬送台車
101 制御盤
102 制御パネル
104 台車フレーム
105 凹部
110 ベース部ユニット
150 車輪部