【文献】
Zhang, Yong et al,Change of bone mineral density after fixation of tibial defect with calcium sulfate cement in osteop,Dier Junyi Daxue Xuebao,2008年,Vol.29,No.5,p.569-571
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
椎骨圧迫骨折の発生を減少させるための、変性骨病態に罹患している患者の治療方法における使用のための、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、脱ミネラル化骨基質(DBM)またはこれらの組合せを含む骨再生材料であって、前記方法が、
変性骨病態であると診断された患者の椎骨の局部領域に空隙を形成する工程であって、前記椎骨は、前記椎骨の一方の側にある、第1の直接隣接した椎骨と、前記椎骨の他方の側にある、第2の直接隣接した椎骨との間に位置し、前記局部領域が、前記空隙を形成する工程の前はインタクトな骨であり、前記空隙を形成する工程が、前記椎骨、前記第1の椎骨及び前記第2の椎骨が骨折の影響を受ける前に実施される、工程、および
前記形成された空隙の少なくとも一部を骨再生材料で補填する工程であって、前記骨再生材料が、前記骨再生材料で補填された空隙の少なくとも一部において新しい変性していない骨材料の形成を促進する骨再生材料である、工程、
を含み、
前記骨再生材料が、前記形成された空隙中に補填される際に流動性である、骨再生材料。
前記骨再生材料が、前記形成された空隙に隣接する骨の領域において、実質的に正常な骨ミネラル密度(BMD)の新しい骨材料の形成を促進する、請求項1に記載の骨再生材料。
前記新たに形成された変性していない骨材料について二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)により測定したTスコアが、空隙形成前の前記変性骨材料のTスコアよりも大きくなるように、前記骨の局所領域のBMDが増大する、請求項1に記載の骨再生材料。
前記β−リン酸三カルシウム顆粒が、微粒子組成物の全重量を基準にして、約8〜約12重量パーセントの濃度で前記微粒子組成物中に存在する、請求項14に記載の骨再生材料。
前記微粒子組成物が、微粒子組成物の全重量を基準にして、少なくとも70重量パーセントの濃度の硫酸カルシウム半水和物粉末と、微粒子組成物の全重量を基準にして、合わせて3〜30重量パーセントの濃度のリン酸一カルシウム一水和物粉末及びβ−リン酸三カルシウム粉末を含む、請求項13に記載の骨再生材料。
前記微粒子状組成物が、微粒子組成物の全重量を基準にして、約8〜約12重量パーセントの濃度のβ−リン酸三カルシウム顆粒をさらに含む、請求項16に記載の骨再生材料。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
次に、種々の実施形態を参照して、本発明をこれ以降でより十分に説明する。これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になるように提供されており、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるものとなろう。実際上、本発明は、多種多様な形態で具現化可能であり、本明細書に示される実施形態に限定されるものとみなしてはならず、そうではなく、これらの実施形態は、本開示が該当法的要件を満たすように提供される。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに異なる場合を除いて、複数形の参照語を包含する。
【0028】
本発明は、変性骨材料に対して置換療法で種々の骨再生材料を使用できるという認識に基づく。特定的には、骨の局所領域の変性した骨材料を特定の骨再生材料により置換した場合、骨再生材料が生体により吸収されるとともに、新しい骨材料が骨の局所領域で生成されることを見いだした。驚くべきことに、既存の骨が変性の進行した状態(たとえば骨粗鬆症)である場合でさえも、正常骨に実質的に等しい新しい健常骨材料を生成する生体の能力が維持されることを見いだした。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「正常骨」または「正常骨材料」という用語は、BMDが典型的にはそのピークにある年齢(すなわち、30〜35歳の年齢)の者(好ましくは、治療される患者と同一の性別および人種の者)の健常骨の特性を呈する骨また骨材料を意味するものとする。言い換えれば、一実施形態によれば、骨粗鬆症の高齢コーカサス系女性を本発明に従って治療した場合、骨粗鬆症ではなく年齢30〜35歳の平均的コーカサス系女性の骨と実質的に等しい(すなわち、BMDおよび/または圧縮強度に関して)新しい骨を成長させることが可能であることを見いだした。当然ながら、そのような効果は、両方の性別でかつすべての人種にわたり観察可能である。したがって、本発明は、骨品質を局所的に変化させる能力を提供する。より特定的には、本発明によれば、局所領域の骨品質を、変性状態から変性のより少ない状態へ、好ましくは、変性状態から実質的に正常な状態へ、向上させることが可能である。言い換えれば、骨材料が、ピークBMDの平均年齢(すなわち約30〜35歳)の同一の人種および性別の者のBMDに実質的に等しい密度を有するように、局所領域の骨品質を向上させることが可能である。そのような局所領域は、新たに形成された骨、さらには本発明に従って置換されなかった骨の周囲部分を含み得る。
【0030】
以上で説明したように、BMDを評価する多数の方法が当技術分野に存在し、正常性および変性の状態の同定に有意な形でBMDを定量可能な任意の好適な方法を本発明との関連で使用可能である。理解を容易にするために、本開示全体を通じて、本発明に係る方法の有効性を二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)走査法により評価されるTスコアとの関連で説明する。これは、よく認識されたBMD評価法である。さらに、事実上、骨変性の一般的病態を患者のTスコアにより規定可能であるので、DEXA走査法の結果は、BMDの改善との関連で本発明の結果を定量する有意な方法を提供する。DEXA走査器械は、典型的には、g/cm
2単位でBMDを報告する。しかしながら、器械製造業者により差があるので、g/cm
2単位のBMDの報告は、標準化されていない。標準化に役立つように、次式:
Tスコア=(BMD−基準BMD)/SD
に従って、Tスコアをmg/cm
2単位のBMDと同等視することが可能である。式中、基準BMDおよび標準偏差(SD)は、BMDがそのピークにあると予想される年齢30〜35歳の平均的患者に基づくものであり、BMDおよびSDは両方とも、mg/cm
2の単位で提供される。得られるTスコアは、BMDの変化の証拠を提供すべく使用可能である一貫した再現性のあるBMD評価を提供する。米国では、Tスコアは、典型的には、同一の人種および性別を用いて計算される。World Health Organization(WHO)規格によれば、Tスコアは、コーカサス系女性の基準値に基づいて評価される。参照を容易にするために、本明細書で考察されるTスコアは、Hologic Delphi(商標)骨密度計(Hologic, Inc., Danbury CTから入手可能)を用いてDEXA走査法により得た。走査データを特徴付ける他の手段は、Zスコアであり、これは、検査患者と同一の年齢、性別、および人種の者の平均値から標準偏差いくつ分離れているかを表す数である。しかしながら、本発明はまた、BMD、圧縮強度、骨折耐性などの骨品質(たとえば、超音波法、QCT、SPA、DPA、DXR、SEXAなどの他の代替試験法の1つ以上を用いて達成可能なもの)の増加を評価するさらなる方法を包含する。
【0031】
特定の実施形態では、本発明の利点は、本発明に係る方法の1つ以上を利用した後のBMDの相対的改善に基づいて特徴付け可能である。「相対的改善」とは、本発明に係る治療の開始前の骨の局所領域の病態と対比した骨品質因子(たとえば、BMD、圧縮強度、または骨折耐性)の改善を意味する。本発明を特徴付けるこの方式は、若年健常成人の正常骨状態を規定するものとみなされる標準的状態を達成することとは無関係であり得る。たとえば、相対的改善は、特定的には、個別の患者の骨品質の改善および生活の質に及ぼす効果を考慮したものであり得る。たとえば、近位大腿骨できわめて悪いBMD(たとえば、−3のTスコア)を有する患者は、おそらく1.5単位のTスコアの改善により、生活の質を有意に向上させることが可能である。−1.5の最終Tスコアは、依然として骨減少状態を示すであろうが、近位大腿骨の領域の骨品質の相対的改善は、規定の正常BMDが達成されるかどうかに関係なく、効果的治療を示すのに十分に有意であり得る。
しかしながら、いくつかの実施形態では、効果的治療は、治療される骨の局所領域で正常BMDを達成する能力に明示的に関連付け可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法は、当業者であれば本明細書ですでに説明した方法を用いて再現可能なTスコア(置換された特定の骨材料および生成された新しい骨材料のものかまたは一般の骨の局所領域のものかのいずれか)の増加により実証されるBMDの増加との関連で記述可能である。したがって、本発明の利点は、より少ない変性状態(すなわち、BMDの相対的改善)または骨が正常(すなわち非変性)以上と分類されるBMDの変化に相関付け可能な改善されたTスコアとの関連で記述可能である。いくつかの実施形態では、Tスコアは、少なくとも0.25単位、少なくとも0.5単位、少なくとも0.75単位、少なくとも1.0単位、少なくとも1.25単位、少なくとも1.5単位、少なくとも1.75単位、少なくとも2.0単位、少なくとも2.25単位、少なくとも2.5単位、少なくとも2.75単位、または少なくとも3.0単位改善可能である。他の実施形態では、BMDは、Tスコアが少なくとも下限レベルになるように増加可能である。たとえば、BMDは、Tスコアが、少なくとも−1、少なくとも−0.75、少なくとも−0.5、少なくとも−0.25、少なくとも0、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも0.75、少なくとも1.0、少なくとも1.25、少なくとも1.5、少なくとも1.75、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも4.0、または少なくとも5.0になるように、増加可能である。他の実施形態では、Tスコアは、許容される正常範囲に含まれるBMDの指標であり得る−1超として規定可能である。他の実施形態では、Tスコアは、約−1.0〜約2.0、約−1.0〜約1.0、約−1.0〜約0.5、約−1.0〜約0、約−0.5〜約2.0、約−0.5〜約1.5、約−0.5〜約1.0、約−0.5〜約0.5、約0〜約2.0、約0〜約1.5、または約0〜約1.0であり得る。さらに、本発明に係る変性した骨材料は、−1.0未満、約−1.5未満、−2.0未満、−2.5未満、または−3.0未満のTスコアを有する骨として記述可能である。以上の値の重要性は、以下に提供される本発明のさらなる説明からより自明なものとなる。
【0033】
本明細書で説明される本発明は、BMDの改善が望まれる患者の生体内の実質上任意の骨で使用可能である。特定の実施形態では、置換法は、骨の局所領域でのみ使用されることが予想される。言い換えれば、骨の長さ全体が置換されたり再生されたりするものではなく、特定の骨の個別的または局所的な部分または領域のみが置換される。この方法は、好ましくは、骨の局所領域で使用される。なぜなら、この方法は、使用された骨再生材料を吸収しかつ材料を新たに生成された骨で置換する生体の自然能力を利用するからである。特定の実施形態では、そのような骨再生が骨材料の内部成長により周囲の骨材料から行われ得ることを見いだした。明確にするために、特定の実施形態では、「骨」または「骨材料」という語は、独立した意味を呈し得るものとみなされる。特定的には、「骨」は、一般的な解剖学的構造全体(たとえば、大腿骨または脊椎)を意味し得る。一方、「骨材料」は、より大きい骨構造の個別局所領域およびその周りに存在する(または生成された)複数の骨細胞および石灰化細胞外基質を意味し得る。したがって、骨材料を除去した場合、骨全体が残存する。さらに、骨に空隙を形成した場合、新しい骨材料は、そこに生成可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明に係る方法は、特定的には、骨変性病態に罹患している患者のとくに骨折を受けやすい骨で実施可能である。そのような骨変性病態は、BMDの損失により特徴付けられる任意の病態を意味し得る。特定の実施形態では、骨変性病態は、骨減少症または骨粗鬆症を意味し得る。これらの病態は、規定の範囲内のTスコアに基づいて規定可能であるので、これらの用語は、本明細書では、新しい骨細胞生産により十分に相殺されない自然骨細胞吸収から生じる変性であるか、または症状もしくは副作用として骨変性を引き起こす別の病態から生じる変性であるかに関係なく、一般的に骨変性を意味すべく用いられる。
【0035】
特定の実施形態では、本発明に係る方法は、股関節に関連する骨で実施可能である。これは、特定的には、腰骨、無名骨(innominate bone)、または寛骨として一般に認識される骨構造(すなわち、座骨、腸骨、および恥骨)、さらには大腿骨の近位部および大腿骨の転子下部を包含し得る(ただし、大腿骨全体が本発明に包含される)。本発明に係るとくに興味深い大腿骨の部分は、頭部、頸部、大転子、および小転子、さらには「Ward領域」(または「Ward三角」)として認識されている領域である。骨のそのような領域は、高齢者の転倒に伴う骨折または非定型骨折をとくに受けやすい。
【0036】
本発明に従って治療可能な他の骨としては、椎骨ならびに脚および腕に関連する他の主要骨、たとえば、橈骨、尺骨、上腕骨、脛骨、および腓骨が含まれる。とくに興味深いのは、股関節領域の骨に加えて、椎骨、遠位橈骨、および非定型骨折を受け得る特定の骨部分である。
【0037】
本発明は、特定の骨再生材料を利用する。この用語は、骨または骨材料を再生するのに有用であり得る種々の材料、特定的には、さらに空隙中への補填および補填された空隙中への新しい骨材料の内部成長の促進を行い得る材料を包含し得る。したがって、いくつかの実施形態では、骨再生材料は、骨補填材料として特徴付け可能である。好ましくは、骨再生材料は、哺乳動物の生体により吸収可能な実質的割合の材料を含む。たとえば、骨再生材料は、哺乳動物の生体により吸収可能な材料を少なくとも40%、少なくとも50重量%か、少なくとも60重量%か、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%含み得る。さらに、新しい骨材料の内部成長の速度に実質的に類似した速度で材料を吸収することが好ましい。いくつかの実施形態では、骨再生材料は、容易には吸収可能でないが新しい骨材料の生成に他の形で適合可能な(たとえば、新たに生成された骨材料を含む骨の構造中に取込み可能な)材料分を含み得る。
【0038】
特定の実施形態では、骨再生材料は、骨伝導材料または骨誘導材料として認識される材料であり得る。「骨誘導」とは、未分化血管周囲間葉細胞の有糸分裂誘発を引き起こして骨前駆細胞の形成をもたらす材料(すなわち、新しい骨または骨材料を形成する能力を有する細胞)を意味する。「骨伝導」とは、血管の侵入および規定の受動トレリス構造中への新しい骨または骨材料の形成を促進する材料を意味する。骨誘導活性、骨伝導活性、骨形成活性、骨化促進活性、または骨親和活性を呈する種々の化合物、鉱物、タンパク質などが知られている。したがって、そのような材料は、本発明に有用であり得る。
【0039】
特定的には、次のもの、すなわち、脱ミネラル化骨基質(DBM)、骨形態形成タンパク質(BMP)、形質転換成長因子(TGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、表皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、ペプチド、無機骨ミネラル(ABM)、血管透過性因子(VPF)、細胞接着分子(CAM)、アルミン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、サンゴ質ヒドロキシアパタイト、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ブルシャイト(リン酸二カルシウム二水和物)、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、硫酸カルシウム、ポリプロピレンフマレート、熱分解炭素、生体活性ガラス、多孔性チタン、多孔性ニッケル−チタン合金、多孔性タンタル、焼結コバルト−クロムビーズ、セラミックス、コラーゲン、自家骨、同種骨、異種骨、サンゴ藻、およびそれらの誘導体もしくは組合せ、またはカルシウムもしくはヒドロキシアパタイトの構造要素を含有する他の生物生産複合材料は、骨誘導能力または骨伝導能力に関して本発明に従って使用可能な材料の例であり得るが、これらに限定されるものではない。以上のものは、特定の骨再生材料組成物中で骨再生材料としてまたは添加剤として使用可能である。
【0040】
特定の実施形態では、本発明に使用される骨再生材料は、特定的には、硫酸カルシウムを含む材料であり得るが、所望により、追加の成分を含んでいてもよい。硫酸カルシウムは、特定的には、硫酸カルシウム半水和物、β−硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、またはそれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、とくに硫酸カルシウムをさらなる材料と組み合わせる場合、硫酸カルシウム組成物は、水と、場合により、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、EDTA、硫酸アンモニウム、アンモニウムアセテート、ナトリウムアセテートなどの無機塩および界面活性剤からなる群から選択される1種以上の添加剤と、を含み得る水性の溶液またはスラリーとして提供可能である。硫酸カルシウムはさらに、本明細書で説明した骨誘導材料および骨伝導材料、さらには硫酸カルシウム半水和物から硫酸カルシウム二水和物への反応を加速するのに有用な促進剤、可塑剤、または生物学的活性剤のいずれかを含む追加の成分を含んでいてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、骨再生材料は、特定的には、リン酸カルシウムを含み得る。特定的には、材料は、硫酸カルシウムとリン酸カルシウムとを含み得る。リン酸カルシウムは、種々のサイズのペレット、顆粒、ウェッジ、ブロック、ディスクなどの特定のジオメトリーまたは形状を有するものとして記述されるバイオセラミックス材料の形態をとり得る。本発明に従って使用可能なリン酸カルシウムの例としては、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(たとえば、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム)、リン酸四カルシウム、無水リン酸二カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸七カルシウム、リン酸八カルシウム(octocalcium phosphate)、ピロリン酸カルシウム、オキシアパタイト、メタリン酸カルシウム、炭酸アパタイト、ダーライト、およびそれらの組合せまたは混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、リン酸カルシウムは、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウムは、ブルシャイトの形成を引き起こし得る2つ以上の形態(たとえば、リン酸三カルシウムおよびリン酸カルシウム一水和物)で存在することが有用であり得る。
【0042】
特定の好ましい実施形態では、本発明に使用される骨再生材料は、硫酸カルシウムと、リン酸カルシウムと、リン酸三カルシウム顆粒などの微粒子状材料または脱ミネラル化骨基質(DBM)などのさらなる詳述した骨誘導材料または骨伝導材料と、を含み得る。本発明にとくに有用であり得る材料の特定例は、PRO-DENSE(登録商標)およびPRO-STIM(登録商標)(Wright Medical Technology, Inc., Arlington, Tenn.)という商品名で市販されている材料である。そのような材料は本発明の実施にとくに有用であるが、本発明の特定の実施形態では、骨用途に有用な他の材料が有用であり得る。理論により拘束することを望むものではないが、骨再生性を呈する材料、特定的には、本明細書で別に説明した多相プロファイルを呈する材料は、種々の実施形態でより有利な結果を提供し得ると考えられる。本発明の特定の実施形態に有用であり得るさらなる材料の例はとしては、OSTEOSET(登録商標)、MIIG(登録商標)X3、CELLPLEX(登録商標)、ALLOMATRIX(登録商標)、ALLOMATRIX(登録商標)RCS、IGNITE(登録商標)、ACTIFUSE(登録商標)、CEM-OSTETIC(登録商標)、GENEX(登録商標)、PROOSTEON(登録商標)500R、BONEPLAST(登録商標)、CERAMENT(登録商標)、α-BSM(登録商標)、CONDUIT(登録商標)TCP、γ-BSM(登録商標)、β-BSM(登録商標)、EQUIVABONE(登録商標)、CARRIGEN(登録商標)、MASTERGRAFT(登録商標)、NOVABONE(登録商標)、PERIOGLAS(登録商標)、Chondromimetic、VITOSS(登録商標)、PLEXUR(登録商標)Bone Void Filler、BONESOURCE(登録商標)BVF、HYDROSET(登録商標)、NORIAN(登録商標)SRS(登録商標)Fast Set Putty、NORIAN(登録商標)CRS(登録商標)Fast Set Putty、ALLOFUSE(登録商標)、INTERGRO(登録商標)DBM Putty、OPTEFORM(登録商標)、OPTEFIL(登録商標)、OPTECURE(登録商標)、ACCELL(登録商標)、ACCELL(登録商標)CONNEXUS(登録商標)、ACCELL(登録商標)EV03(登録商標)、OPTIUM DBM(登録商標)100、PROGENIX(登録商標)DBM Putty、OSTEOFIL(登録商標)DBM、DBX(登録商標)、GRAFTON(登録商標)、GRAFTON PLUS(登録商標)、PUROS(登録商標)Demineralized Bone Matrix、INFUSE(登録商標)Bone Graft、OP-1(登録商標)、OSTEOCEL(登録商標)、TRINITY(商標) Matrix、およびTRINITY REVOLUTION(商標)という名称で知られるものが含まれる。本発明に有用であり得る骨再生材料の種々の実施形態は、米国特許第6,652,887号、米国特許第7,211,266号、米国特許第7,250,550号、米国特許第7,371,408号、米国特許第7,371,409号、米国特許第7,371,410号、米国特許第7,507,257号、米国特許第7,658,768号、および米国特許出願公開第2007/0059281号(それらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられるものとする)に記載のものである。
【0043】
いくつかの実施形態では、骨再生材料は、水性溶液と混合すると硬化または固化する微粒子組成物の形態をとり得る。そのような組成物は、1つ以上の形態の硫酸カルシウムと1つ以上の形態のリン酸カルシウムとを含み得る。好ましくは、組成物は、少なくとも1つの形態の硫酸カルシウムと少なくとも2つの形態のリン酸カルシウムとを含み得る。特定的には、組成物は、硫酸カルシウム半水和物(これ以降では「CSH」)粉末と、リン酸一カルシウム一水和物(これ以降では「MCPM」)粉末とβ−リン酸三カルシウム(これ以降では「β−TCP」)粉末とを含むブルシャイト形成リン酸カルシウム混合物と、を含み得る。
【0044】
そのような微粒子組成物は、CSHと水との反応生成物である硫酸カルシウム二水和物(これ以降では「CSD」)を含む骨再生材料を形成するのに有用であり得る。CSD成分は、骨再生材料に良好な機械的強度を付与したり、骨成長を刺激したり、骨再生材料の多孔性構造がインプランテンーションにより迅速に形成されるようにin vivoで比較的速い吸収速度を提供したりすることが可能である。したがって、CSD成分は、インプラント部位中への骨組織内部成長と迅速に置換可能である。
【0045】
2つのリン酸カルシウム成分は、水性溶液と混合するとブルシャイトを形成するように反応可能である。骨再生材料中のブルシャイトの存在は、CSDを含む組成物と比較して、骨再生材料の吸収速度を遅くすることが可能である。したがって、そのような二相骨再生材料の使用により、CSD成分およびブルシャイト成分により規定される二重吸収速度を提供することが可能である。
【0046】
より遅い吸収速度に加えて、本発明で骨再生材料としてそのような微粒子組成物を使用することにより、高い機械的強度、良好な取扱い特性、および合理的な固化時間を提供することが可能である。そのほかに、そのような骨再生材料は、本発明に従って使用した場合、高品質の骨を生成するのにとくに有用である。
【0047】
いくつかの実施形態では、CSH粉末は、二モード粒子分布、すなわち、粒子サイズと各サイズの粒子の体積パーセントとのプロットで2つのピークにより特徴付けられる粒子分布を有し得るが、本発明により他の粒子分布が考えられる。たとえば、CSH粉末の二モード粒子分布は、CSH粉末の全体積を基準にして、約1.0〜約3.0ミクロンのモードを有する約30〜約60体積パーセントの粒子と、約20〜約30ミクロンのモードを有する約40〜約70体積パーセントの粒子と、により特徴付け可能である。さらに他の実施形態では、二モード粒子分布は、約1.0〜約2.0ミクロンのモードを有する約40〜約60体積パーセントの粒子と、約20〜約25ミクロンのモードを有する約40〜約60体積パーセントの粒子と、を含む。CSH粉末のメディアン粒子サイズは、好ましくは約5〜約20ミクロン、より好ましくは約8〜約15ミクロン、最も好ましくは約10〜約15ミクロンである。
【0048】
本発明に有用な骨再生材料で有用な微粒子組成物は、好ましくは、微粒子組成物の全重量を基準にして少なくとも50重量パーセントの量のCSH粉末を含む。さらなる実施形態では、本発明に有用な骨再生材料は、少なくとも60重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、または少なくとも90重量パーセントの量のCSH粉末を含み得る。他の実施形態では、CSH粉末は、約50重量パーセント〜約99重量パーセント、約60重量パーセント〜約98重量パーセント、約65重量パーセント〜約95重量パーセント、約70重量パーセント〜約95重量パーセント、または約70重量パーセント〜約90重量パーセントの量で存在可能である。
【0049】
CSHは、好ましくは、固化してCSDを形成するとβ形と比較してより高い機械的強度を呈するα−硫酸カルシウム半水和物である。本発明で使用される骨再生材料中にCSDを存在させることにより、骨材料の迅速な生成に寄与することが可能である。CSH粉末は、米国特許第2,616,789号(参照によりその全体が本明細書に完全に組み入れられるものとする)に開示されるプロセスにより作製可能である。CSH粉末は、CSHから二水和物形態への変換を加速することにより、それから作製された骨再生材料をより迅速に固化させることが可能な促進剤などのさらなる成分を含んでいてもよい。例示的な促進剤としては、硫酸カルシウム二水和物結晶(U.S. Gypsumから入手可能)、特定的にはスクロース被覆CSD(VWR Scientific Productsから入手可能)が含まれる。スクロースで被覆することにより二水和物結晶を安定化させるプロセスは、米国特許第3,573,947号(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。使用可能な促進剤の他の例としては、アルカリ金属の硫酸塩および硫化物(たとえば、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、および硫化カルシウム(それらの水和物を含む))が含まれるが、これらに限定されるものではない。促進剤は、微粒子組成物の全重量を基準にして、1.0重量パーセントまでの量で存在可能である。いくつかの実施形態では、微粒子組成物は、約0.001〜約0.5重量パーセント、より典型的には約0.01〜約0.3重量パーセントの促進剤を含む。2つ以上の促進剤の混合物を使用することが可能である。
【0050】
本発明に係る骨再生材料に有用な微粒子組成物のリン酸カルシウム部分は、MCPM粉末(Ca(H
2PO
4)2H
2O)とβ−TCP粉末(Ca
3(PO
4)
2)とを含み得る。当技術分野で理解されているように、MCPMとβ−TCPと水との主反応生成物は、リン酸二カルシウム二水和物(CaHPO
4.2H
2O)(DCPD)としても知られるブルシャイトである。ブルシャイト形成粉末はまた、DCPDよりも高い熱力学的安定性を有する特定のリン酸カルシウム、たとえば、ヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウムなどの形成をもたらす思われる他の反応に関与し得る。特定量のβ−TCP粉末はまた、未反応のまま残存し得る。β−TCP粉末は、約20ミクロン未満のメディアン粒子サイズを有し得る。典型的には、β−TCP粉末は、約10ミクロン〜約20ミクロンのメディアン粒子サイズを有するであろう。微粒子組成物のβ−TCP粉末部分は、β−リン酸三カルシウム粉末の全体積を基準にして、約2.0〜約6.0ミクロンのモードを有する約30〜約70体積パーセントの粒子と、約40〜約70ミクロンのモードを有する約30〜約70体積パーセントの粒子と、により特徴付けられる二モード粒子サイズ分布を有し得る。一実施形態では、β−TCP粉末は、β−リン酸三カルシウム粉末の全体積を基準にして、約4.0〜約5.5ミクロンのモードを有する約50〜約65体積パーセントの粒子と、約60〜約70ミクロンのモードを有する約35〜約50体積パーセントの粒子と、により特徴付けられる二モード粒子サイズ分布を有し得る。
【0051】
MCPMという用語の意味は、同数のカルシウムイオンおよびリン酸イオンを溶液中に放出するMCPMの単なる無水形であるリン酸一カルシウム(MCP)を包含するものとする。しかしながら、MCPをMCPMの代わりに使用する場合、骨再生材料の形成に使用される水の量は、MCPから失われた水分子を補うために増加することが必要になり得る(MCPMを使用した場合に形成されるのと正確に同一の溶解生成物を生成することが望まれる場合)。
【0052】
ブルシャイト成分の存在は、硫酸カルシウムと比較して、骨再生材料のin vivo吸収を遅らせることが可能である。その結果として、吸収速度が遅くなると、より長期間にわたり骨再生材料に構造支持を提供できるようになり得る。
【0053】
以上で説明した骨再生材料は、混合物の硫酸カルシウム成分の比較的速い吸収に起因してin vivo投与後にリン酸カルシウム材料の高多孔性基質になり得るので、本発明にとくに有用であり得る。リン酸カルシウムの残存多孔性基質は、自然治癒過程時に骨内部成長のための優れた足場を提供する。
【0054】
微粒子組成物中に存在するMCPM粉末およびβ−TCP粉末の量は、さまざまであり得る。この量は、主に、骨移植片代替セメントで望まれるブルシャイトの量に依存する。ブルシャイト形成リン酸カルシウム組成物(すなわち、MCPM粉末とβ−TCP粉末との合計量)は、微粒子組成物の全重量を基準にして、約3〜約30重量パーセントの濃度で存在可能である。さらなる実施形態では、ブルシャイト形成リン酸カルシウム組成物は、約5〜約25重量パーセント、約10〜約20重量パーセント、約12〜約18重量パーセント、または約15重量パーセントの濃度で存在可能である。MCPMおよびβ−TCPの相対量は、ブルシャイト形成反応でのそれらの等モルの化学量論的関係に基づいて選択可能である。一実施形態では、MCPM粉末は、微粒子組成物の全重量を基準にして、約3〜約7重量パーセントの濃度で存在可能であり、かつβ−TCPは、約3.72〜約8.67重量パーセントの量で存在可能である。
【0055】
微粒子組成物はまた、本明細書で別に説明したように、顆粒分、粒子分、または粉末分を含み得る。特定の実施形態では、組成物は、β−TCP粉末のメディアン粒子サイズよりも大きいメディアン粒子サイズを有する複数のβ−TCP顆粒を含み得る。β−TCP顆粒は、典型的には、約75〜約1,000ミクロン、約100〜約400ミクロン、または約180〜約240ミクロンのメディアン粒子サイズを有する。顆粒は、骨移植片代替セメントの吸収速度をさらに低下させて足場形成に寄与するように機能する。β−TCP顆粒は、微粒子組成物の全重量を基準にして20重量パーセントまでの濃度で存在可能である。他の実施形態では、β−TCP顆粒は、組成物の全重量を基準にして15重量パーセントまでまたは12重量パーセントまでの濃度で存在可能である。顆粒は、骨再生組成物で使用される残りの材料よりも(たとえば、以上で説明した硫酸カルシウム相およびブルシャイト相と比較して)遅い吸収を呈する第3の相を提供するのにとくに有用である(三相材料との関連で本明細書でより十分に説明したとおり)。
【0056】
本発明に有用な骨再生材料を形成するために微粒子組成物と混合される水性成分は、所望の粘稠度と硬化時間または固化時間とを有する組成物を提供するように選択可能である。典型的には、水性溶液は、少なくとも0.2、少なくとも0.21、または少なくとも0.23の液体対粉末質量比(L/P)を達成するのに必要な量で提供される。好ましいL/P比範囲は、約0.2〜約0.3または約0.2〜約0.25である。好適な水性成分の例としては、水(たとえば、滅菌水)およびその溶液が含まれる。場合により、本発明に係る骨再生材料は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、EDTA、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上の添加剤を含みうる。好ましい一実施形態では、使用される水性混合溶液は、生理食塩水溶液またはリン酸緩衝生理食塩水溶液である。例示的な水性溶液は、Baxter International (Deerfield, Ill.)から入手可能な0.9%NaCl生理食塩水溶液などである。水性溶液は、α炭素上にヒドロキシル基を含有していてもいなくてもよい1種以上の有機または無機のカルボン酸含有化合物(これ以降ではカルボン酸またはカルボン酸化合物)を含み得、場合により好適な塩基を用いて中性pHに調整される(たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩基を用いて約6.5〜約7.5のpHに中和される)が、これは、混合時の骨再生材料の水必要量、流動性、および/または粘度を変化させ得る。例示的なカルボン酸としては、グリコール酸および乳酸が含まれる。好ましいカルボン酸は、単一のカルボン酸基と、合計1〜10個の炭素原子(たとえば、カルボニル炭素を含めて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子)と、炭素鎖に結合された0〜5個のヒドロキシル基(たとえば、0、1、2、3、4、または5個)と、を有する。一実施形態では、混合溶液は、NaOHを用いて7.0のpHに中和されたグリコール酸の0.6M溶液である。ここでのカルボン酸化合物という用語の意味は、遊離酸形および塩形の両方を包含する。カルボン酸は、たとえば、アルカリ金属塩基を用いて、溶液中で約6.5〜約7.5のpHに中和可能であり、次いで、溶媒(たとえば水)を蒸発させることにより、結晶性粉末として単離可能である。結晶性粉末は、典型的には、アルカリ金属塩形(たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、またはカリウム塩)などの塩形で単離される。塩形のカルボン酸の例示的な乾燥結晶性粉末としては、グリコール酸ナトリウム塩、グリコール酸カリウム塩、乳酸ナトリウム塩、および乳酸カリウム塩が含まれる。粉末状カルボン酸塩は、骨再生材料の微粒子状部分を一緒になって形成する他の粉末成分、たとえば、CSH成分または各リン酸カルシウム成分のいずれかに添加可能である。しかしながら、特定の実施形態では、粉末状カルボン酸は、溶液を組成物の残りの微粒子状成分と混合する前に水性溶液で再構成可能なように、個別容器に貯蔵される。
【0057】
本発明に有用な骨再生材料は、本明細書で説明した個別材料のいずれかから選択な1種以上の添加剤を含み得る。添加剤は、粉末、液体、または固体の形態をとることが可能であり、混合または骨再生材料によるカプセル化が可能である。本発明で使用するのに好適な例示的添加剤としては、促進剤(たとえば、スクロース被覆硫酸カルシウム二水和物粒子)、海綿骨細片、塩(たとえば、塩化物、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、EDTA、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、および酢酸ナトリウム)、組成物の粘稠度および固化時間を変化させ得る可塑剤(たとえば、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、それらの混合物または塩などのアルキルセルロースを含めて、グリセロールおよび他のポリオール、ビニルアルコール、ステアリン酸、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、およびそれらの混合物)、ならびに任意の「生物学的活性剤」(すなわち、in vivoまたはin vitroで実証可能ななんらかの薬理学的作用を提供する任意の作用剤、薬剤、化合物、物質の組成物、または混合物)、特定的には、抗骨減少症剤または抗骨粗鬆症剤であると認識されている任意の作用剤)が含まれる。特定の薬理剤としては、骨粗鬆症を治療する医薬、たとえば、ビスホスホネート、RANKL阻害剤、プロトンポンプ阻害剤、ホルモン療法剤、ならびにSERM、テリパラチド、およびrPTHを含み得る。生物学的活性剤のさらなる例としては、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬剤、色素、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微粒子、およびミセルが含まれるが、これらに限定されるものではない。それには、患者で限局性または全身性の効果を生じる作用剤が含まれる。生物学的活性剤のさらなる例としては、抗生物質、化学療法剤、殺有害生物剤(たとえば、抗菌類剤および抗寄生生物剤)、抗ウイルス剤、抗炎症剤、および鎮痛剤が含まれる。例示的な抗生物質としては、シプロフロキサシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、セファロスポリン、アミノグリコシド(たとえば、トブラマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、エリスロマイシン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、およびストレプトマイシン)、バシトラシン、リファンピシン、N−ジメチルリファンピシン、クロロマイセチン、およびそれらの誘導体が含まれる。例示的な化学療法剤としては、シスプラチナム、5−フルオロウラシル(5−FU)、タキソールおよび/またはタキソテール、イホスファミド、メトトレキセート、ならびに塩酸ドキソルビシンが含まれる。例示的な鎮痛剤としては、塩酸リドカイン、ビピバカイン(bipivacaine)、および非ステロイド系抗炎症剤、たとえば、ケトロラクトロメタミンが含まれる。例示的な抗ウイルス剤としては、ガングシクロビル(gangcyclovir)、ジドブジン、アマンチジン、ビダラビン、リバラビン(ribaravin)、トリフルリジン、アシクロビル、ジデオキシウリジン、ウイルス成分またはウイルス遺伝子産物に対する抗体、サイトカイン、およびインターロイキンが含まれる。例示的な抗寄生生物剤は、ペンタミジンである。例示的な抗炎症剤としては、α−1−アンチトリプシンおよびα−1−アンチキモトリプシンが含まれる。有用な抗菌類剤としては、ジフルカン、ケタコニゾール(ketaconizole)、ナイスタチン、グリセオフルビン、マイコスタチン、ミコナゾール、および米国特許第3,717,655号(その全教示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のそれらの誘導体、ビスジグアニド、たとえば、クロルヘキシジン、より特定的には、第四級アンモニウム化合物、たとえば、臭化ドミフェン、塩化ドミフェン、フッ化ドミフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、1−(3−クロロアリル)−3,5,7トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリドのシス異性体(Dowicil 200という商標でDow Chemical Companyから市販されている)および米国特許第3,228,828号(その全教示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のその類似体、米国特許第2,170,111号、同第2,115,250号、および同2,229,024号(その全教示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるようなセチルトリメチルアンモニウムブロミドさらにはベンゼトニウムクロリドおよびメチルベンゼトニウムクロリド、カルバニリドおよびサリチルアニリド、たとえば、3,4,4’−トリクロロカルバニリドおよび3,4,5−トリブロモサリチルアニリド、ヒドロキシジフェニル、たとえば、ジクロロフェン、テトラクロロフェン、ヘキサクロロフェン、および2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、さらには有機金属殺菌剤およびハロゲン殺菌剤、たとえば、シンクピリチオン(sinc pyrithione)、銀スルファジアゾン(sulfadiazone)、銀ウラシル、ヨウ素、ならびに米国特許第2,710,277号および同第2,977,315号(その全教示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるような非イオン性界面活性剤から、および米国特許第2,706,701号、同第2,826,532号、および同第2,900,305号(その全教示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるようなポリビニルピロリドンから、誘導されるヨードフォアが含まれる。有用な成長因子としては、他の細胞、特定的には結合組織前駆細胞の成長または分化を変調する任意の細胞産物が含まれる。本発明に従って使用可能な成長因子としては、繊維芽細胞成長因子(たとえば、FGF−1、FGF−2、FGF−4)、PDGF−AB、PDGF−BB、およびPDGF−AAを含む血小板由来成長因子(PDGF)、骨形態形成タンパク質(BMP)、たとえば、BMP−1〜BMP−18のいずれか、骨形成タンパク質(たとえば、OP−1、OP−2、またはOP−3)、形質転換成長因子−α、形質転換成長因子−β(たとえば、β1、β2、またはβ3)、LIMミネラル化タンパク質(LMP)、類骨誘導因子(OIF)、アンギオゲニン、エンドセリン、増殖分化因子(GDF)、ADMP−1、エンドセリン、肝細胞成長因子およびケラチノサイト成長因子、オステオゲニン(骨形態形成タンパク質−3)、ヘパリン結合性増殖因子(HBGF)、たとえば、HBGF−1およびHBGF−2、インディアンヘッジホッグ、ソニックヘッジホッグ、およびデザートヘッジホッグを含むヘッジホッグファミリーのタンパク質ヘッジホッグ、IL−1〜6を含むインターロイキン(IL)、CSF−1、G−CSF、およびGM−CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)、上皮成長因子(EGF)、ならびにインスリン様成長因子(たとえば、IGF−Iおよび−II)、脱ミネラル化骨基質(DBM)、サイトカイン、オステオポンチン、さらには以上のタンパク質の任意のアイソフォームを含むオステオネクチンが含まれるが、これらに限定されるものではない。生物学的活性剤はまた、抗体であり得る。好適な抗体としては、たとえば、STRO−1、SH−2、SH−3、およびSH−4 SB−10、SB−20、およびアルカリホスファターゼに対する抗体が含まれる。そのような抗体は、Haynesworth et al., Bone (1992), 13:69-80、Bruder, S. et al., Trans Ortho Res Soc (1996), 21:574、Haynesworth, S. E., et al., Bone (1992), 13:69-80、Stewart, K., et al, J Bone Miner Res (1996), 1 l(Suppl.):S142、Flemming J E, et al., in ”Embryonic Human Skin. Developmental Dynamics,” 212: 119-132, (1998)、およびBruder S P, et al, Bone (1997), 21(3): 225-235(それらの全教示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。生物学的活性剤の他の例は骨髄穿刺液、血小板濃厚液、血液、同種移植骨、海綿骨細片、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどのミネラルの合成由来または天然由来のチップ、間葉系幹細胞、硫酸カルシウムのチャンク、シャード、および/またはペレットが含まれる。添加剤、特定的には薬理学的添加剤、より特定的には抗骨粗鬆症添加剤は、骨再生材料中に混合されたまたは骨空隙中に配置されて骨再生材料によりカプセル化された固体形態で存在可能である。薬理学的療法剤は、骨再生材料から溶出、溶解、崩壊、または蒸発し得る。
【0058】
本発明に係る方法に有用な骨再生材料は、組成物の厳密な性質に依存して、さまざまな方法により形成可能である。いくつかの実施形態では、骨再生材料は、骨中に形成された空隙に充填可能な微粒子形態で存在可能である。他の実施形態では、骨再生材料は、当技術分野で公知の手動混合または機械混合の技術および装置を用いて、以上で説明したような微粒子組成物を本明細書で説明した水性溶液と混合することにより調製し得る、注射可能な流動性形態で存在可能である。特定的には、成分は、大気圧以下で(たとえば、真空下で)かつ混合物の水性成分の凍結や有意な蒸発を引き起こさない温度で、混合可能である。混合後、均一組成物は、典型的には、注射可能なペースト様粘稠度を有するが、混合物の粘度および流動性は、その中の添加剤に依存してさまざまであり得る。骨再生材料は、シリンジなどの送達器具に移して、形成された空隙に注入可能である。いくつかの実施形態では、材料は、たとえば長さ10cmまでの11〜16ゲージ針を介して注入可能である。
【0059】
特定の実施形態では、骨再生材料の性質は、材料を注入可能な注入力範囲に基づいて特徴付け可能である。種々の実施形態では、材料は、1,200Nまで、1,000Nまで、800Nまで、600Nまで、500Nまで、または400Nまでの注入力を有し得る。他の実施形態では、注入力範囲は、約1N〜約1,200N、約2N〜約1,000N、約3N〜約800N、約4N〜約700N、約5N〜約660N、約10N〜約660N、または約10N〜約330Nであり得る。
【0060】
特定の実施形態では、本発明に有用な骨再生材料は、以下に示すVicat針落下試験により定義されるように、一般的には、約3〜約25分間、より好ましくは約10〜約20分間で固化するものであり得る。骨再生材料は、好ましくは、約30〜約60分間以内に骨と同等以上の硬度に達するであろう。材料の固化は、空気、水を含むさまざまな環境で、in vivoで、および様々なin vitro条件下で、起こり得る。
【0061】
本発明に有用な硬化骨再生材料は、好ましくは、自己形成多孔性足場および特定の機械的強度特性(特定的には、間接引張り強度および圧縮強度により特徴付けられるもの)を有して複雑な溶解を呈する。たとえば、材料は、送達状態に材料を調製してから周囲空気中で1時間硬化させた後、少なくとも4MPaの間接引張り強度、より好ましくは少なくとも5MPa、最も好ましくは少なくとも6MPaの間接引張り強度を呈し得る。さらに、骨再生材料は、送達用材料を調製してから周囲空気中で24時間硬化させた後、少なくとも8MPaの間接引張り強度、より好ましくは24時間硬化後少なくとも9MPa、最も好ましくは少なくとも10MPaの間接引張り強度を呈し得る。
【0062】
本発明に有用な骨再生材料はまた、高レベルの圧縮強度、たとえば、送達用材料を調製してから周囲空気中で1時間硬化させた後、少なくとも15MPaの圧縮強度、より好ましく少なくとも40MPaの圧縮強度を呈する。さらに、骨再生材料の好ましい実施形態は、送達用材料を調製してから周囲空気中で24時間硬化させた後、少なくとも50MPaの圧縮強度、より好ましくは少なくとも80MPaの圧縮強度を呈し得る。
【0063】
特定の実施形態では、硬化骨再生材料の強度は、種々の材料の添加により増大することが可能である。本発明は、引張り強度および圧縮強度の一方または両方を増大させるために当技術分野で認識された任意の材料を包含するが、1種以上の繊維状材料を組み込む実施形態は、とくに有用であり得る。したがって、本発明は、特定的には、骨再生材料の繊維複合体を包含する。
【0064】
本発明に有用な繊維複合体は、特定的には、生分解性ポリマー繊維を含み得る。活性剤は、繊維形成前にポリマーと混合可能であり、活性剤は、繊維の生分解に伴ってin vivoで徐々に放出されるであろうから、そのような繊維は、骨再生材料の強度特性の増大だけでなく、以上に開示した生物学的活性剤(たとえば、成長因子、抗生物質など)の1つ以上の持続性送達をも提供可能である。さらなる実施形態では、非生分解性繊維もまた、使用可能であるが、いずれの非生分解性繊維も、本質的に不活性であることが好ましい。骨再生材料の強度を増大するために繊維として有用であることが示された材料の例としては、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)(たとえば、MERSILENE(登録商標)縫合糸)、ポリエチレン、ポリエステル(たとえば、FIBERWIRE(登録商標))、ポリグルカプロン(たとえば、MONOCRYL(登録商標))、ポリグリコール酸、およびポリプロピレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。当然ながら、本開示の利点を生かす当業者であれば、本発明に従って使用される骨再生材料の強度を増大させるために繊維の形態でまたは他の形態で提供可能なさらなる材料はわかるであろう。
【0065】
骨再生材料の強度の増大に使用される繊維は、種々のサイズを有し得る。好ましくは、種々の実施形態で使用される繊維は、約1μm〜約100μm、約2μm〜約75μm、約3μm〜約50μm、約4μm〜約40μm、または約5μm〜約25μmの平均直径を有し得る。そのような繊維は、さらに好ましく、は約100μm〜約1,000μm、約150μm〜約900μm、約200μm〜約800μm、または約250μm〜約750μmの平均長さを有する。
【0066】
骨再生材料の強度の増大に使用される繊維はまた、さまざまな濃度で組込み可能である。特定的には、繊維は、重量基準で骨再生材料の約0.1%〜約10%、約0.25%〜約9%、約0.5%〜約8%、約0.75%〜約7%、約1%〜約6%、または約1.5%〜約5%を構成し得る。
【0067】
好ましくは、繊維は、いかなる繊維添加剤も用いない材料と比較して骨再生材料の強度がかなり増大するような濃度で添加される。特定的には、繊維は、骨再生材料の引張り強度を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%増大させる量で添加され得る。同様に、繊維成分の添加は、圧縮強度を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも30%増大させ得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、繊維成分の添加は、骨再生材料の粘度の増加を引き起こし得るので、材料の注入性が低減され得る。この粘度増加を克服するために、テーパー状ノズルを備えたシリンジを用いて材料を注入することが有用であり得る。そのようなノズル構成にすれば、より粘性のペーストを針に通して注入するのに必要な力を低減することが可能である。
【0069】
調製時、繊維は、骨再生材料で使用される材料の乾燥混合物に添加可能である。組み合わされた材料は、ペーストを形成するために湿潤させることが可能である。骨再生材料中への繊維の混合を改善し、かつ融着繊維グループの存在を低減するために、追加のプロセス工程を含むことがさらに有用であり得る。たとえば、裁断繊維を規定の時間(たとえば、30〜60分間)にわたり超音波撹拌することが可能であり、そのような撹拌は、繊維ポリマーが不溶の液体媒体(たとえば、イソプロピルアルコール)中で繊維を用いて実施可能である。次いで、超音波処理された繊維を骨再生材料に使用される乾燥成分に添加してブレンドすることが可能である(たとえば、撹拌により)。次いで、組合せ物は、濾過され、真空下で乾燥される。次いで、組み合わされた材料を湿潤させて、使用に供されるペースト材料を形成することが可能である。
【0070】
本発明に係る方法は、一般的には、既定の体積の変性した骨材料を(場合により、規定の形状を有する領域に)、置換される変性した骨材料よりも大きい密度(または本明細書で説明される他の骨品質尺度)の新しい骨材料の生成を引き起こす骨再生材料で、置換することを含む。「変性骨材料(degenerative bone material)」または「変性した骨材料(degenerated bone material)」という用語は、骨減少症または骨粗鬆症として臨床的に分類される骨材料を意味し得る。この用語は、より特定的には、−1未満、−1.5未満、−2未満、−2.5未満、または−3未満のTスコアを有する骨を意味し得る。そのような変性した骨材料はまた、典型的には、同様に骨減少症または骨粗鬆症として一般に分類される骨内に存在するであろう。
【0071】
本発明に係る方法は、一般的には、骨の局所領域の骨品質を改善する方法として記述可能である。特定的には、骨品質は、BMDに直接対応し得るが、そのほかに、一般的な骨強度(圧縮強度を含む)ならびに骨の局所領域およびその周りの骨が骨折に耐える能力をも意味し得る。骨品質を改善するこの能力は、部分的には、骨の局所領域が事実上より健常な骨品質(正常骨の骨品質またはBMDがそのピークにあると認識される条件下の類似の患者の骨品質)に戻り得るという認識に基づく。驚くべきことに、骨粗鬆症に罹患している患者などに由来する骨の局所領域の変性骨材料が、局所領域で新しい骨材料の生成を引き起こす骨再生材料を用いて置換され得ることを見いだした。特に驚くべきことは、新たに生成される骨材料が骨粗鬆症品質ではないということである。これは予想外である。なぜなら、患者が骨粗鬆症に全身罹患している場合、そのような患者で形成されるいかなる新しい骨材料も低品質であろう(すなわち、骨粗鬆症であり、低密度を呈するであろう)と予想されるからである。しかしながら、本発明により、骨減少症骨中または骨粗鬆症骨中への骨再生材料のインプランテーション後、材料が断定可能な速度で吸収され、全身性疾患により悪影響を受けないことが示された。続いて、骨の局所領域で緻密な新しい骨材料が生成されることにより、DEXAに基づくTスコアにより測定される骨品質およびBMDが改善される。特定的には、Tスコアは、少なくともピークBMD時に患者で観測されると予想されるレベル(たとえば、約−1〜約1の範囲内のTスコア)であるかつ骨減少症状態でも骨粗鬆症状態でもない密度を呈するという点で、新たに生成される骨材料が正常骨に実質的に類似していることを示す。さらなる実施形態では、新たに生成される骨材料は、正常骨の圧縮強度に実質的に類似した(またはそれを上回る)圧縮強度を呈することが可能である。そのような特性は、新たに形成される骨材料に、特定的には、一般に骨の局所領域(すなわち、新たに形成される骨材料およびそのすぐ周りの領域の既存の骨材料)に、関連付け可能である。
【0072】
特定の実施形態では、本発明に係る方法は、患者の骨内に空隙を形成する能動的工程を含み得る。特定的には、この方法は、骨の局所領域に空隙を形成することを含み得る。そのような空隙を形成するのに有用な方法はいずれも、本発明に従って使用可能である。いくつかの実施形態では、この方法は、空隙を形成すべく骨の規定領域内の骨材料を化学溶解するかまたは他の方法で排除することを含み得る。他の実施形態では、米国特許公開第2008/0300603号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の方法のように、骨内に空隙を形成すべく液体洗浄を使用することが可能である。さらなる実施形態では、局所領域の骨材料を排除すべく超音波処理を使用することが可能である。他の実施形態では、膨張型または拡張型の器具(たとえば、バルーンまたはin situ拡張型リーマー)を用いることにより、空隙を形成することが可能である。拡張型メッシュを使用することも可能である。特定の実施形態では、この方法は、骨の局所領域に空隙を形成する任意の機械的手段を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、この方法は、骨の局所領域の内部に穿孔または他の方法でチャネル形成すること(たとえば、カニューレ挿入針または中実針、プローブなどを用いて穿刺することにより)を含み得る。いくつかの実施形態では、このように形成されたチャネルは、特定の治療方法に望まれる空隙を提供することが可能である。他の好ましい実施形態では、穿孔またはチャンネル形成は、チャネルよりも大きい寸法の空隙が形成されるように治療対象の骨の局所領域の内部への通路を形成する手段として特徴付け可能である。治療対象の骨の領域に到達するチャネルを用いて、以上で説明したいずれの方法をも含めて、空隙を形成するのに有用な任意の手段により、所定の形状およびサイズの空隙を形成することが可能である。骨の変性状態(すなわち、骨減少症または骨粗鬆症の進行状態)に依存して、空隙の形成は、変性した骨材料の少なくとも一部の除去を含み得る。
【0074】
図2aおよび
図2bは、それぞれ、正常骨および骨粗鬆症骨の走査型電子顕微鏡写真を示している。そこに見られるように、正常骨は、骨材料の強い相互連結プレートのパターンを示す。この材料の多くは、骨粗鬆症で失われ、残存骨は、より弱いロッド状構造を有し、ロッドのいくつかは、完全に分断されている。そのような分断された骨は、骨量として測定され得るが、骨強度になんら寄与しない。いくつかの実施形態では、空隙は、単純に変性した骨材料を破壊分離することにより、たとえば、削取、穿孔、または骨をリーマー処理して空隙を形成するための特殊素材の使用などにより、形成可能である。そのような排除は、空隙形成のための領域内の骨材料の破壊、崩壊、破砕、微粉砕、リーマー処理、拡張、またはそれ以外に解体、押込み、もしくは近傍移動として、別の形で記述可能である。いくつかの実施形態では、これは、局所領域の骨のデブリードマン、ガス注入、またはスネーク処理として、別の形で参照可能である。好ましくは、デブリードマンの領域は、所望の空隙の所定の形状およびサイズに合致する。
【0075】
BMDの損失が理由で、空隙を形成すべく破壊分離された変性した骨材料は、形成された空隙中の残留材料として単純に放置してもよい。他の実施形態では、空隙を形成すべく排除された変性した骨材料の一部または全部を除去することが望ましいこともある。したがって、本発明に係る空隙形成は、局所領域の変性した骨材料の破壊分離および材料の少なくとも一部の除去として特徴付け可能であるか、または空隙形成は、単純に破壊分離工程として特徴付け可能である。いくつかの実施形態では、骨中に空隙を形成する能動的工程は、骨の局所領域からの損傷および/または変性した骨材料の排除として参照可能である。したがって、排除は、変性した骨材料の完全破壊もしくは部分破壊および/または空隙からの変性した骨材料の全部もしくは一部の除去を包含し得る。特定の実施形態では、本発明は、所定の形状およびサイズの空隙を形成するために骨の局所領域から損傷および/または変性した骨材料を除去することとして特徴付け可能である。他の実施形態では、この方法は、規定の体積のアモルファス空隙の形成として特徴付け可能である。
【0076】
この方法はさらに、本明細書で説明したように、形成された空隙を骨再生材料で少なくとも部分的に補填することを含み得る。使用される骨再生材料の量は、前工程で形成された空隙の体積に依存し得る。種々の実施形態では、使用される骨再生材料の体積は、約1cm
3〜約200cm
3、約2cm
3〜約150cm
3、約2cm
3〜約100cm
3、約2cm
3〜約75cm
3、約5cm
3〜約50cm
3、約10cm
3〜約40cm
3、または約15cm
3〜約35cm
3の範囲内であり得る。したがって、以上で説明したように、以上の体積は、骨中に形成される空隙の実際の体積を表し得る。特定の実施形態では、体積は、特定的には、治療される骨および領域に関連付け可能である。たとえば、遠位橈骨との関連では、体積は、約1cm
3〜約10cm
3、約1cm
3〜約8cm
3、または約1cm
3〜約5cm
3であり得る。椎体との関連では、体積は、約1cm
3〜約30cm
3、約2cm
3〜約25cm
3、または約2cm
3〜約20cm
3であり得る。近位大腿骨との関連では、体積は、約5cm
3〜約100cm
3、約5cm
3〜約80cm
3、または約10cm
3〜約50cm
3であり得る。近位上腕骨との関連では、体積は、約5cm
3〜約200cm
3、約5cm
3〜約150cm
3、約5cm
3〜約100cm
3、または約10cm
3〜約80cm
3であり得る。
【0077】
骨中に形成される空隙の形状は、治療される骨に依存してさまざまであり得る。いくつかの実施形態では、形成される空隙の形状は、Ward領域として知られる近位大腿骨中の領域の形状に実質的に対応し得る。いくつかの実施形態では、空隙の形状は、治療された骨の局所領域の形状に実質的に合致し得る。たとえば、遠位橈骨の治療との関連では、空隙は、骨の遠位1〜5cmの形状に実質的に合致し得る。特定の実施形態では、形成される空隙の形状は、方法の成功にそれほど重要ではないが、本発明は、治療される特定の骨に望ましいと思われる規定の形状およびサイズの空隙の形成を包含するものとする。
【0078】
特定の実施形態では、特定的には、骨変性のとくに進行した段階を呈する患者を治療する場合、少なくともある程度の治療は、骨再生材料の注入前に空隙を形成することなく達成可能である。以上で説明したように、骨粗鬆症に関連付けられる骨損失の影響は、骨材料の密度の低下または骨内のより大きいより顕著な空間の形成である。進行した骨粗鬆症では、骨の空洞化が起こるので、そのような増大された多孔度を呈する骨の局所領域に骨再生材料を直接注入することが可能である。特定の実施形態では、骨再生材料自体を注入する力により、骨内の空間を人為的に拡大させることが可能であるので、事実上、ただちに補填される空隙を形成することが可能である。他の実施形態では、注入された骨再生材料は、増大された多孔度の変性した骨を単純に透過することが可能であるので、治療される骨の局所領域の細孔容積を実質的に補填することが可能である。したがって、特定の実施形態では、本発明は、骨の局所領域で空隙の形成および補填を同時に行うことを包含する。そのような実施形態を行うことが可能であるが、ほとんどの効果的結果は、変性した骨の領域中に少なくともチャネルを形成して骨再生材料で充填することにより、達成されると予想される。より好ましくは、空隙は、以上で別に説明したように形成されるであろう。
【0079】
形成された空隙に骨再生材料を挿入するのに有用な任意の手段を使用することが可能である。たとえば、骨再生材料が流動性形態である場合、シリンジを用いるなどにより、形成された空隙に材料を注入することが可能である。したがって、特定の実施形態中では、骨再生材料を実質的に流動性状態で空隙に導入してからin vivoで硬化させることが有用であり得る。他の実施形態では、生体の外部で骨再生材料を実質的に硬化させから硬化した材料を空隙に充填することが有用であり得る。さらにまた、骨再生材料は、パテ様粘稠度などのさらなる物理的状態を取り得る。いくつかの実施形態では、骨再生材料は、空隙に充填可能なさまざまなサイズの微粒子形態で存在可能である。さらに、骨再生材料は、空隙の補填を支援可能である、かつ局所領域に一時的または永久的な支持を提供するなどの1つ以上のさらなる有利な機能を提供可能である、1種以上の追加材料に加えて空隙中に補填可能である。特定の実施形態では、骨再生材料の挿入前に、BMPやペプチド浸漬拡張型スポンジなどの溶出基質を空隙に挿入することが可能である。
【0080】
いくつかの実施形態では、骨再生材料は、形成された空隙に追加の補強材と組み合わせて挿入可能である(たとえば、スクリューもしくは他の円柱状ボディーまたは中空コア材料、たとえば、補強材を被覆するかまたは補強材の中空コア内に組み込む)。しかしながら、有利には、本発明に係る方法は、いかなるさらなる補強材をも必要とすることなく(補強材が吸収性であるか非吸収性であるかにかかわらず)、形成された空隙の補填を可能にする。特定の実施形態では、本発明で使用される骨再生材料は、骨の治療領域が治療前の骨の骨折耐性と少なくとも等価な骨折耐性を有するように、治療される骨の局所領域に十分な強度をただちに提供するように硬化する材料であり得る。以下の実施例では、そのような利点をより具体的に説明する。同様に本明細書で説明したように、自然健常骨に特性が実質的に等しい新しい骨材料の内部成長により確保される骨強度の実質的増加により、補強材の必要はさらに否定される。骨品質のそのような増加は、比較的早く観測され始める(たとえば、1週間未満の期間から約16週間までの期間の範囲内)。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明は、変性骨病態に罹患している患者を治療する方法を提供し得る。特定的には、患者は、骨減少症の病態もしくは骨粗鬆症の病態に罹患している者および/またはそうした病態を有すると診断された者であり得る。他の選択肢として、患者は、骨変性(特定的には、BMDおよび/または骨強度の損失)を引き起こす効果を有する任意の他の病態に罹患している者であり得る。
【0082】
変性した骨材料の局所領域が空隙の形成により排除されるので、そこに骨再生材料を提供可能であるという点で、本発明は、とくに有用である。好ましくは、骨再生材料は、空隙中での新しい変性していない骨材料の形成を促進する。有利には、新たに形成される骨材料は、患者に自然なものである。好ましくは、新たに形成される骨材料は、正常骨に実質的に等しいまたはそれを上回る密度を有する。言い換えれば、新たに形成される骨材料は、約30〜35歳の年齢の(好ましくは、同一の人種および性別の)者の骨密度に実質的に等しい密度を有する。特定の実施形態では、これは、新たに形成される骨材料が、DEXAにより測定した場合、−1超、好ましくは少なくとも−0.5または少なくとも0のTスコアを有することを意味し得る。他の実施形態では、新たに形成される骨材料のTスコアは、約−1.0〜約2.0、約−1.0〜約1.0、約−1.0〜約0.5、約−1.0〜約0、約−0.5〜約2.0、約−0.5〜約1.5、約−0.5〜約1.0、約−0.5〜約0.5、約0〜約2.0、約0〜約1.5、または約0〜約1.0であり得る。他の実施形態では、新たに形成される骨材料は、患者がBMDの有意な相対的改善を有するとみなされるように、治療前のBMDを十分に上回るBMDを有し得る(改善されたTスコアにより示される)。新たに形成される骨はまた、正常骨に実質的に等しいまたはそれを上回る圧縮強度を有し得る。
【0083】
本発明に係る方法は、骨の治療された局所領域が、正常骨(すなわち、正常BMDおよび/または正常圧縮強度および/または正常骨折耐性を呈する)に実質的に等しくなるように経時的に効果的にリモデリングされるという点で、とくに有利である。さらに、いくつかの実施形態では、新しい自然骨成長の発生に対する骨再生材料の効果は、事実上、形成された空隙の境界の外に及び得る。特定的には、本発明に従って、改善された密度の新しい自然骨材料は、最初に形成された空隙内に形成され得るが、新しい骨材料はまた、形成された空隙に隣接する骨の領域内にも形成され得るという点で、勾配効果が提供され得ることを見いだした。これは、隣接骨折の発生が低減されるように、形成された空隙に隣接する骨の領域もまた強化されるという点で、とくに有利である。
【0084】
以上で述べたように、本発明に係る方法は、哺乳動物の生体内のさまざまな骨で実施可能である。とくに有用な実施形態では、本発明に係る方法は、患者の股関節領域の骨で使用可能である。たとえば、以下は、患者の大腿骨の局所領域、特定的には近位大腿骨で、骨材料を置換することにより、変性骨病態に罹患している患者を治療する例示的な方法である。外科技術では、標準的骨髄減圧またはヒップスクリューに類似した側方進入が使用される。技術の1つの差異は、移植材(すなわち骨再生材料)を収容する欠損部または空隙のジオメトリーの形成であり、これは、続いて、緻密な新しい自然骨を再生して、骨の局所領域の骨品質を向上させ、大腿骨頸部およびWard三角を強化し、かつ脆弱性骨折のリスクを低減するであろう。椎体、遠位橈骨、近位上腕骨、脛骨などの骨幹端骨の他の領域では、次の手順(ジオメトリーが異なる)を利用することが可能である。
【0085】
この技術を実施するために、患者を仰臥位で放射線透過性台上に配置してもよい。Cアーム装置およびX線技術者により放射線撮影支持を提供し、手順時のX線ナビゲーションを提供することが可能である。以上に述べたように、近位大腿骨への側方進入を使用することが可能である。他の実施形態では、大転子進入を使用することが可能である。大転子のすぐ遠位側に小さい切開を行うことが可能であり、前後(AP)撮影および側面撮影で透視ガイド下でガイドワイヤーを近位大腿骨に導入することが可能である。カニューレ挿入5.3mmドリルをガイドワイヤーで大腿骨頭まで導入することが可能であり、空隙形成のための部位まで(他の選択肢としてそれを貫通して)チャネルを形成することが可能である。このチャネルは、コアとして参照可能である。代替的な実施形態では、脆弱な骨粗鬆症骨材料を破壊除去するために任意の手段を利用することが可能であり、たとえば、皿穴ドリルまたは皮質パンチおよび鈍端オブチュレーターを用いて空間を形成することが可能である。ドリルおよびガイドワイヤーを除去することが可能であり、そしてコア中にワーキングカニューレを導入して、外科的に形成された欠損部または空隙を形成することが可能である。骨再生材料のインプランテーションのために、デブリードマンプローブを用いて大腿骨の局所領域内に空間を形成することが可能である。特定的には、プローブは、大腿骨頸部およびWard三角の骨内膜組織を収容するために精密傾斜ヘッドを有し得る。頸部およびWard三角の完全補填を可能にするようにこのジオメトリーを形成すれば、完全な再生およびより高い最終骨強度が得られる最大の可能性が提供される。外科的に形成された欠損部(または空隙)は、好ましくは、次に進む前に洗浄吸引される。必要であれば、骨再生材料を調製して、外科的に形成された欠損部に長いカニューレを介して注入する。カニューレを介して注入すれば、加圧さらには髄管を下って自己ベントする能力が不要になる。骨再生材料の注入後、標準的方式で切開を閉じる。有利には、そのような手順は、患者の休止時間を最小限に抑えて行うことが可能であり、好ましくは、一晩入院を必要としない(たとえば、診療所、病院、または他の医療施設で約6〜8時間までの合計時間を必要とするにすぎない)。
図3a〜3iは、骨再生材料の注入直前に患者の近位大腿骨に形成された空隙への骨再生材料PRO-DENSE(登録商標)(Wright Medical, Arlington, TNから入手可能)の注入のラジオグラフィー画像を提供する。画像に見られるように、骨再生材料は、長いカニューレを介して空隙中に補填され、このカニューレは、最初に大腿骨頭まで挿入され(
図3a)、空隙を完全に補填するように操作され(
図3b〜
図3h)、そして埋め戻しが終了した後、除去される(
図3i)。
【0086】
以上の手順の多数の変形形態を本発明の範囲内で実施することが可能である。たとえば、
図4は、標的補填領域を例示する近位大腿骨の高画質ラジオグラフを提供するものであり、その任意の部分に、その領域の初期デブリードマンを行ってまたは行わずに、補填を行うことが可能である。この図はまた、側方進入により形成可能な初期チャネルの近似的な領域およびサイズを示している。特定的には、
図4は、近位大腿骨を介して大腿骨頭まで側方に延在するチャネルを示しており、ハッチングは、近位大腿骨中の例示的領域を示すべく提供され、その任意の部分が、骨材料の除去および骨再生材料による補填の候補として標的となり得る。さらなる例として、初期チャネルからのブランチとして、近位大腿骨中に1つ以上の「ストラット」を形成し、次いで、骨再生材料で満たすことが可能であるが、これらに限定されるものではない。そのうえさらに、1つ以上のストラットは、骨の規定の領域に配置される骨再生材料の量を増大するために有意に拡大された1つ以上の部分を有し得る。そのほかにさらに、近位大腿骨のより大きい普遍領域にデブリードマンを行い、補填することが可能である。さらに、本開示に照らして、類似の実施形態を考えることも可能である。
【0087】
本発明に従って使用可能なさらなる外科技術を、切迫非定型大腿骨骨折との関連で以下に説明する。そのような骨折は、大腿骨骨幹部の近位1/3で最もよく起こるが、それらは、小転子のすぐ遠位側から顆上フレアの近位を通って遠位大腿骨骨幹端まで大腿骨骨幹に沿って任意の位置で起こり得る。この骨折は、通常、外傷なしで起こるかまたは身長以下の高さからの転落と等価な最小限の外傷の結果として起こるという点で、非定型である。この骨折は、完全で、大腿骨骨幹部全体にわたり、多くの場合、内側スパイクの形成を伴うか、または不完全で、外側皮質中の横方向放射線透過ラインにより顕在化される。
【0088】
次に、非定型大腿骨骨折を起こす前のインタクト大腿骨体中に空隙を形成することにより、患者、とくに切迫非定型骨折を受けやすい患者、たとえば、骨減少症患者または骨粗鬆症患者、の大腿骨体に骨再生材料を導入するための技術をとくに説明する。第一段階(ガイドピン配置)は、大転子の先端の近位(たとえば1cm)の皮膚切開の形成を含む。カニューレ挿入センタリングガイドとガイドピンとを備えた鋸歯状組織プロテクタースリーブを大転子の皮質に挿入する。ガイドピンを前進させて大転子の皮質に貫通させ、継続して大腿骨骨幹部の切迫骨折の領域まで進行させる。ガイドピンの深さおよび位置を両面で透視検査により確認することが可能である。
【0089】
次いで、欠損部を形成し、骨再生材料の注入の準備をする。特定的には、鋸歯状組織プロテクターを所定の位置に保持しながら、カニューレ挿入センタリングガイドは除去し、5.3mmカニューレ挿入ドリルを挿入し、転子に刺して前進させる。次いで、ドリルを除去し、所定の位置にガイドピンを残し、可撓性リーマーを導入する。リーマーをガイドワイヤー上で前進させて転子に貫通させ、次いで、ガイドピンを除去する。次いで、リーマーを切迫骨折の領域に前進させ、そして除去する。挿入トロカールを備えたワーキングカニューレを鋸歯状組織プロテクターを介して挿入し、皮質内に着座させる(すなわち、「滑り」嵌めを提供する)。次いで、鋸歯状組織プロテクターおよび挿入トロカールを除去する。注入カニューレをワーキングカニューレを介して配置し、大腿骨骨折の領域に前進させることが可能であり、カニューレを吸い上げと併用して大腿骨中に形成されたいずれの微粒子をも除去することが可能である。次いで、好ましくは監視しながら(たとえば、透視検査により)、骨再生材料を注入する。注射の操作時間は、典型的には、最適な補填結果が得られる約2〜4分間である。次いで、注入カニューレおよびワーキングカニューレを除去することが可能である。次いで、軟組織を洗浄することが可能であり、皮膚を適切な手段(たとえば縫合糸)で閉じる。
【0090】
本発明に従って使用可能な外科技術の他の説明を遠位橈骨との関連で以下に説明する。次に、脆弱性骨折前のインタクト遠位橈骨中に空隙を形成することにより、骨減少症患者または骨粗鬆症患者の遠位橈骨に骨再生材料を導入するための技術をとくに説明する。この技術を実施するために、手のひらを上に向けて放射線透過性台上に腕を置いた状態で、患者を配置してもよい。Cアーム装置およびX線技術者により放射線撮影支持を提供し、手順時のX線ナビゲーションを提供することが可能である。注入ポータルを形成するために、橈骨茎状突起を中心に1cm切開を行い、皮下組織を第1および第2の背側伸筋区画間で骨膜まで非開胸切開する。透視ガイド下で橈骨舟状骨間関節ラインの3〜4mm近位でかつ橈骨茎状突起を中心にして(背側から掌側へ)k−ワイヤーを挿入する。カニューレ挿入ドリルを用いて遠位橈骨の骨幹端中に穿孔する。骨再生材料のインプランテーションのために、デブリードマンプローブを用いて遠位橈骨の局所領域内に空間を形成することが可能である。特定的には、プローブは、遠位橈骨の骨内膜組織を収容するために精密傾斜ヘッドを有し得る。外科的に形成された欠損部は、好ましくは、次に進む前に洗浄吸引される。必要であれば、骨再生材料を調製して、外科的に形成された欠損部にカニューレを介して注入する。骨再生材料の注入後、標準的方式で切開を閉じる。そのような外科技術は、患者の入院を必要としないと予想され、患者の休止時間を最小限に抑えて骨変性の有利な治療を可能にする。
図5a〜5cは、以上で説明した外科技術の特定の段階の図を提供する。
図5aは、遠位橈骨骨幹端への通路の形成を示している。
図5bは、遠位橈骨中に機械的に形成された空隙を示している。
図5cは、骨再生材料で空隙を補填した後の橈骨の局所領域を示している。
【0091】
本発明に従って使用可能な外科技術の他の説明を椎骨との関連で以下に説明する。以下の技術は、Kyphon, Inc.(Medtronic, Inc.の現在の子会社)から入手可能なような膨張型タンプ(またはバルーンタンプ)を利用する。したがって、本明細書でさらに説明されるように、本発明に係るいくつかの方法は、椎骨形成技術の改善であり得る。しかしながら、他の実施形態では、椎骨の変性骨を置換する技術は、近位大腿骨および遠位橈骨との関連で以上で説明した技術に性質上実質的に類似し得る。脊椎骨折を治療する公知の技術よりも優れた実質的な差異は、椎骨が骨粗鬆症圧迫骨折(または任意の他のタイプの骨折)の影響を受ける前に、本発明に係る方法が椎骨で行われることである。
【0092】
椎骨中の変性骨を置換する例示的な外科技術では、腹臥位で放射線透過性台上に患者を配置してもよい。Cアーム装置およびX線技術者により放射線撮影支持を提供し、手順時のX線ナビゲーションを提供することが可能である。前後方向撮影の放射線学的チューブを用いて、治療される椎骨およびその対応する椎弓根を限定した後、前側、内側、および尾側に傾斜する椎弓根の後部を介して11/13ゲージの骨生検針(bone biopsy need)が導入される背側領域または腰椎領域で、小さい皮膚切開(約1cm)を行うことが可能である。この例示的な方法の進入は、両側性である。針の正確な位置を確証した後、Kirshnerワイヤーを導入する。ドリル先端を前部皮質縁から数ミリメートルの壁中に前進させて、バルーンタンプの逐次的通過のための脊椎内骨チャネルを形成する。
【0093】
続いて、側面像撮影の透視ガイド下で、プローブを注意深く前方に押し込み、椎骨の前部2/3に配置する。それは、15〜20mmの間を含む長さを有し得る(それぞれ4および6mLの最大体積を有する)。両端(近位および遠位)に位置する2つの放射線不透過性マーカーを利用して、2つの半椎中のバルーンの正確な位置を確認した後、60%造影剤を含有する液体でバルーンを膨満し、上椎体終板の持上げを達成し、周囲海綿骨の圧縮を介して内部に空洞を形成する。空間が形成された時、膨張を停止し、皮質体性表面に接触させるか、またはバルーンの最大圧力(220PSI)または拡張を達成する。次いで、外科的に作製された空隙を洗浄吸引することが可能である。
【0094】
必要に応じて骨再生材料を調製し得る。次いで、骨再生材料を専用カニューレ中に充填し、空隙の前部1/3に対応するまでワーキングカニューレを介して前方に移動した。その直後、連続透視ガイド下でプランジャースタイレットを用いてわずかに圧力を加えて骨再生材料を押し込む。補填体積は、通常、バルーンを用いて得られたよりも1〜2mL大きいので、骨再生材料は、それ自体で効果的に分布するようになる。手順を終了するために、すべてのカニューレを抜き取り、皮膚切開を縫合し、その後数時間ベッドに居るように患者に指示することが可能である。治療される各椎骨に対する手順の長さは、典型的には、約35〜45分間である。得られた結果を評価する手順の後、伝統的な放射線検査を行うことが可能である。
図6a〜6cは、椎骨中の骨を置換する代表的手順の特定の段階を示している。
図6aは、治療される椎骨中へのバルーンタンプの両側性挿入を示している。
図6bは、椎骨中の空隙を機械的に形成するバルーンの膨張を示している。
図6cは、椎骨中の形成された空隙に骨再生材料を埋め戻しながら行うバルーンの除去を示している。
【0095】
本発明に係る方法は、変性骨病態(骨減少症や骨粗鬆症など)に罹患している患者を治療することに基づいて特徴付け可能であるが、本発明はさらに、BMDの改善、骨品質の改善、骨強度の改善、自然骨構造の改善などにより、骨の局所領域を特定的に変化させる能力によっても特徴付け可能である。本発明はまた、正常BMDに徐々に減少する顕著に増大された密度を有する骨の局所領域を提供することを含めて、骨の局所領域をリモデリングする能力によっても特徴付け可能である。
【0096】
特定の実施形態では、本発明は、骨の局所領域で骨品質を改善する種々の方法を提供するものとして特徴付け可能である。骨品質は、特定的には、DEXA走査法によるTスコアに基づいて評価可能なBMDとの関連で特徴付け可能である。骨品質はまた、より一般的には、骨足場との関連で骨材料の全体構造に関連付け可能である。さらに、骨品質は、特定的には、骨強度すなわち圧縮強度に関連付け可能である。
【0097】
自然骨材料に対するものであるか、外科的に形成された欠損部で再生された骨材料(骨減少症患者および骨粗鬆症患者のものを含めて)に対するものであるかにかかわらず、骨の特定の機械的強度を生きている被験体で直接測定することはできない。なぜなら、そのような検査は、現在のところ、骨の有意な部分の除去を必要とするからである。したがって、骨の機械的強度の直接的測定は、死後の臨床回収試験を通じて測定できるにすぎない。それにもかかわらず、研究によると、本明細書に論述されるように、強度の実質的増加は、同時にBMDの増加を伴うことが予想される。さらに、骨体積、 骨梁の厚さ、 骨梁の数、 骨梁の分離、相互連結性の測定、 および皮質の壁厚さなどのさらなる増大された骨の性質を達成することが予想されよう。機械的強度のそのような増加を裏付ける証拠は、本発明に係る空洞化および補填の手順を行った13週間後および26週間後の両方で再生された骨の外植試験片で圧縮強度および石灰化骨量の両方が直接に測定されたイヌ試験との関連で添付の実施例に提供される。13週間では、再生された骨材料を含む骨部分は、定量組織学的検査により測定されるように、同一の解剖学的位置から採取された正常骨と比較して石灰化骨では実質的な172%増加を呈した。自然骨の圧縮強度に対する再生された骨材料を有する骨の圧縮強度の対応する増加は、283%であった。手術の26週間後では、新たに再生された骨材料は、リモデリングを起こし、正常骨の構造および性質に徐々に戻った。組織学的解析に基づく石灰化骨の24%増加(この場合も自然骨と比較して)は、正常対照よりも59%大きい圧縮強度に相当した。また、ラジオグラフィーに基づく密度の増加が観測され、組織学的検査に基づく定量的結果に相関付けられたことも注目すべきである。
【0098】
ヒト被験者でのBMD増加の臨床的証拠は、添付の実施例に提供され、BMDの増加が、骨の機械的強度、特定的には圧縮強度の増加に適正に相関付け可能であるという結論を裏付けるものと考えられる。簡潔に述べると、World Health Organization(WHO)の定義によってすべて骨粗鬆症とみなされた12名のヒト患者を用いて試験を行った。各患者は、一方の股関節部で本発明に係る治療を受け、対側側を比較の目的で未治療のままにした。治療前(ベースライン)、ならびに6、12、および24週間を含む所定の間隔で、両方の股関節部でBMDを測定した。平均大腿骨頸部BMDは、ベースラインと比較して各間隔でそれぞれ120%、96%、および74%増大した。平均Ward領域BMDは、ベースラインと比較して各間隔でそれぞれ350%、286%、および189%増大した。24ヶ月間試験終了時、2名の患者をさらに評価した。これらの2名の患者は、終了時、35%(大腿骨頸部領域)および133%(Ward領域)の平均BMD増加を示した。このレベルのパーセント値は、イヌ試験で観測されたように、移植材料が吸収されて新しい骨材料と置換されたこを示唆する。未治療の場合、ベースラインからのBMD測定値に大きな変化は、存在しなかった。
【0099】
これまでのところ、ヒト骨粗鬆症骨でのBMDの増加および強度の増加が、健常イヌ被験体で測定されたそのような値に正確に相関付け可能であることを示す公知の試験は、存在しない。それにもかかわらず、イヌ試験での両方の性質の大きい増加は、臨床試験で測定されたBMDの増加と一緒になって、本明細書中に記載の方法に従って治療されるヒト骨粗鬆症骨の骨強度の対応する増加の強力な証拠である。
【0100】
骨品質はまた、骨が骨折に耐える能力に関連し得る。したがって、骨品質の増加に関連するものとして特徴付けることができる本発明の実施形態は、特定的には、骨の治療領域が、治療前の骨折のリスク(たとえば、患者が骨減少症状態または骨粗鬆症状態である場合)と比較して低減された骨折のリスクを有するように、骨構造を改善することを包含しうる。
【0101】
低いBMDは、脆弱性骨折の最も強いリスク因子の一つである。それに加えて、海綿骨構造の悪化は、骨脆弱性への寄与因子である。したがって、骨粗鬆症は、骨強度の欠如により特徴付けられる疾患として伝統的に定義されてきたが、それは、低い骨密度および骨品質の劣化の疾患としてさらに定義されるべきである。BMDの測定は骨量を同定するための強力な臨床ツールおよび「ゴールドスタンダード」であるが、骨品質はまた、骨代謝回転および微細構造により主に定義される。骨のこれらの態様が劣化する場合(たとえば、骨梁の細化および連結性の損失)、骨脆弱性および骨折のリスクの対応する増加が存在する。
【0102】
高分解能末梢定量的コンピューター断層撮影法(pQCT)、マイクロコンピューター断層撮影(uCT)、および機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)をはじめとする種々の非侵襲性方法を、微細構造の測定に利用することが可能であるが、これらに限定されるものではない。そのような方法を用いて得られた画像を用いれば、皮質骨と海綿骨とを識別したり、これまでは侵襲性生検でのみ測定された骨梁微細構造の細部を可視化したりすることが可能である。CT(およびおそらくMRI)の走査は、骨剛度を評価するためにマイクロ構造有限要素解析(FEA)により計算でモデリングすることが可能である。これらの各方法を用いれば、骨の構造を評価することが可能である。これらの構造測定としては、骨体積、骨梁の厚さ、骨梁の数、骨梁の分離、相互連結性の測定、および皮質の壁厚さが含まれる。
【0103】
技術が改良されてきているので、したがって、コンピューター化ソフトウェアのアウトカム評価もまた改良されてきている。pQCTおよびFEAを組み合わせて用いて、特定の荷重下の骨折開始点および骨折可能性を予測することが可能である。この解析はまた、生体力学的計算断層撮影(BCT)としても知られる。網羅的健常動物試験、骨粗鬆症動物研究、死体生体力学的試験などの伝統的な試験を併用すれば、BCTを用いて、患者の骨折可能性(転倒時の骨折のリスクを含む)を予測したり、侵襲的生検を必要とせずに生きている患者で骨品質改善を評価する情報を提供したりすることが可能である。それは定量評価であるので、患者の骨品質が対象となるいずれの試験に対しても、BCTは、選択/除外基準に限定しうる。そのほかに、「リスクがあると推定される」患者に対して「リスクがある」特定のサブセットのみが必要であるにすぎないので、いずれの試験の継続期間も短縮可能である。そのほかに、BCTは、提供された治療の利点を決定するために、死亡率との高い相関を有する実際の股関節部骨折などの確定到達点の必要性を軽減することが可能である。
【0104】
したがって、特定の実施形態では、本発明に係る骨品質改善の証拠は、他の確立された科学的骨品質評価と組み合わせて、以上で説明したように、BCT解析をインプラントされた骨基質に適用することにより達成することが可能である。組合せ結果は、骨密度および骨品質の経時的変化を解析するのに有用であり得るので、したがって、治療前の自然骨の状態(すなわち、骨が骨減少症状態または骨粗鬆症状態にある時)と比較して、本発明に係る治療後の全体的骨折リスク減少を実証するのに有用であり得る。したがって、そのような方法を用いて、治療前および本発明に係る治療後の骨折のリスクを定量し、定量データに基づいて、骨折しやすさを低減するかまたは骨折耐性を増大させる本発明の能力を示すことが可能である。たとえば、骨折可能性は、BMD解析のTスコアと同様に、約0のスコアであれば骨折可能性が年齢約30歳の平均的健常成人の可能性と類似していることを示すように、スケール化可能である(おそらく、性別、人種、および/または国籍のデータさえも含まれる(そのような因子を考慮すべきであることが証拠から示唆される場合))。負のスコアであれば、平均的健常成人の場合よりも大きい骨折可能性であることが示唆され得る。その可能性は、より大きい負の値になるほど増大する(たとえば、−2のスコアは、−1のスコアよりも大きい骨折可能性であることを示す)。正のスコアであれば、骨折可能性が平均的健常成人の場合よりも小さいことが示唆され得る。その可能性は、より大きい正の数になるほど減少する(たとえば、2のスコアは、1のスコアよりも小さい骨折可能性であることを示す)。
【0105】
特定の実施形態では、骨の局所領域で骨品質を改善する方法は、−1.0未満のTスコアを有する変性した骨の体積を−1.0超のTスコアを有する新たに形成された自然骨材料で置換することを含み得る。好ましくは、新たに形成された自然骨材料を有する骨のTスコアは、少なくとも−0.5、少なくとも0、少なくとも0.5、または少なくとも1.0である。特定の実施形態では、治療された骨のTスコアは、変性した骨のTスコアを少なくとも0.5単位、少なくとも1.0単位、少なくとも1.5単位、少なくとも2.0単位、少なくとも2.5単位、または少なくとも3.0単位上回ることが可能である。治療された骨のTスコアが変性した骨のTスコアを少なくとも特定量上回るいくつかの実施形態では、Tスコアの増加により実証されるBMDの増加が患者に有用である十分に有意な骨品質の改良を表すかぎり、Tスコアはまた、規定の最小値よりも大きい必要がないこともあり得る(たとえば、局所領域の骨が重篤な骨粗鬆症病態から軽度の骨粗鬆症病態へまたは骨粗鬆症病態から骨減少症病態へ変換される場合)。
【0106】
骨品質を改善する方法では、置換段階は、領域中の変性骨材料を排除することと、場合により、変性骨材料分を除去することと、により、骨の局所領域に空隙を形成することを含み得る。この方法はさらに、形成された空隙を骨再生材料で少なくとも部分的に補填することにより、形成された空隙に新しい自然骨材料の内部成長を生成することを含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、変性骨材料を品質の向上した骨材料で置換する能力は、特定的には、骨中に形成された空隙を補填するために使用される骨再生材料の有利な品質から生じ得る。好ましくは、骨再生材料は、生体による新しい骨材料生成の速度に有意に一致した速度で生体により信頼性のある一貫した吸収を提供する本明細書で説明した材料である。たとえば、新しい骨の内部成長を最適化可能な多相吸収プロファイルをin vivoで提供する本明細書で説明した材料を利用することがとくに有用であり得る。そのような材料は、二相(すなわち、in vivoで異なる速度で吸収される少なくとも2つの異なる材料を含む)、三相(すなわち、in vivoで異なる速度で吸収される少なくとも3つの異なる材料を含む)であり得るか、またはin vivoで異なる速度で吸収されるさらに多くの異なる材料を含み得る。
【0108】
特定の実施形態では、骨再生材料は、典型的には単純溶解を介して迅速に吸収される第1の相成分としての硫酸カルシウムと、破骨細胞吸収(さらには単純溶解)を受ける第2の相成分ブルシャイト(CaPO
4)と、主に破骨細胞吸収を受ける第3の相リン酸三カルシウムと、を含み得る。そのような三相吸収プロファイルを呈する任意の材料を本発明に従って使用することが可能である。新しい骨材料の制御された内部成長を促進可能なこの種の構造を有する骨再生材料の経時的変化を
図7a〜7eに示す。前記図は、イヌモデルでvivoで観測される吸収の約6倍の速さの加速されたin vitroモデルでの移植材溶解を示している。
図7a〜7eに関連する骨再生材料の吸収プロファイルのより詳細な考察を以下の実施例で提供する。
【0109】
多相材料中のすべての相が移植材配置直後にある程度の吸収を開始し得るが、多相吸収材料は、第1の相が、第1の相のほとんどがなくなるまで第1の材料(たとえば硫酸カルシウム材料)の吸収により支配され、第2の相が、第2の材料(たとえばブルシャイト)の吸収により支配され、かつ任意のさらなる相が、残りの移植材料(たとえば顆粒状TCP)が吸収される期間として記述可能であるものとして記述可能である。各相の完全吸収に特有な時間は、使用される特定の材料および欠損部サイズに依存し得る。
【0110】
硫酸カルシウム材料が吸収されるにつれて、多孔性の第2の相が現れて血管浸潤の助けになるので、血管新生は、第1の相吸収時の主要な初期イベントである。多孔性の第2の相はまた、インプラント/欠損部界面でVEGFやBMP−2などの遊離タンパク質に結合可能である。次いで、第2の相が吸収されることにより、結合されたタンパク質が放出可能になり、細胞をインプラント表面に動員可能になる。界面領域の成長因子は、間葉系幹細胞の増殖および分化を刺激することが可能である。その後、分化された骨芽細胞は、類骨を生成し、次いで、これがミネラル化されて新たに網状化された骨になる。次いで、Wolffの法則の原理により、新たに形成された骨材料のリモデリングの駆動が可能である。これは、脆弱性骨折を起こしやすい股関節部などの領域の強化により、より強い動きや運動を行えるようになるという患者の自信を高めることが可能になり、その結果、骨全体の品質および全身の健康にプラスの影響を及ぼし得るという点で、患者にさらに有利である。
【0111】
さらなる実施形態では、本発明は、骨の局所領域のBMDを増大する方法を提供する。この方法は、例えば本明細書で説明したような好適な方法に従って局所領域のネイティブな変性した骨材料を排除するなどにより、骨の局所領域に空隙を形成することを含み得る。排除された自然骨材料は、場合により、形成された空隙から除去可能である。次いで、形成された空隙を本明細書で説明した骨再生材料で少なくとも部分的に補填する。空隙を補填する骨再生材料は、空隙内における新しい骨材料の生成を引き起こし得る。この新たに生成された骨材料の密度は、骨中に空隙を形成するために排除された変性したネイティブな骨材料の密度よりも大きい。
【0112】
BMDの増加は、変性したネイティブな骨材料の除去前および形成された空隙内の新しい骨材料の生成後に骨の局所領域のBMD走査結果の比較により示し得る。
たとえば、DEXA走査法を使用する場合、空隙内で生成された骨材料の密度は、空隙を形成するために排除される前の変性したネイティブな骨材料のTスコアよりも少なくとも0.5単位大きいTスコアを有することが好ましい。さらなる実施形態では、Tスコアは、少なくとも0.75単位、少なくとも1.0単位、少なくとも1.25単位、少なくとも1.5単位、少なくとも1.75単位、少なくとも2.0単位、少なくとも2.25単位、少なくとも2.5単位、少なくとも2.75単位、または少なくとも3.0単位増大され得る。他の実施形態では、骨の局所領域の空隙形成前の変性したネイティブな骨のTスコアは、特定的には、骨減少症または骨粗鬆症の存在の指標となる範囲内であり得るし、また、BMDの増加は、骨の局所領域が骨減少症または骨粗鬆症としてもはや特徴付けされない程度に十分に大きい。たとえば、空隙の形成前、骨の局所領域のBMDは、−1.0未満、−1.5未満、−2.0未満、−2.5未満、−3.0未満、−3.5未満、または−4.0未満であり得る。そのような実施形態では、BMDは、Tスコアが少なくとも下限レベルになるように増大され得る。たとえば、BMDは、Tスコアが−1.0超、または少なくとも−0.75、少なくとも−0.5、少なくとも−0.25、少なくとも0、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも0.75、もしくは少なくとも1.0になるように、増大され得る。さらなる実施形態では、骨の局所領域のBMDは、骨の局所領域のTスコアが、許容される正常範囲内に含まれるBMDを示す範囲内になり得るように、増大され得る。たとえば、Tスコアは、−1超〜約2.0、約−0.5〜約2.0、約0〜約2.0、約−1.0〜約1.0、約−0.5〜約1.0、約−0.5〜約0.5、またはまで約0〜約1.0の範囲内であり得る。特定の実施形態では、空隙形成のために排除される前のネイティブな骨材料のTスコアは、−1.0未満であり得るし、また、形成された空隙で生成された骨材料は、少なくとも−0.5または少なくとも0のTスコアを有し得る。そのようなことから、治療前の骨の局所領域は、少なくとも骨減少症であるとみなされ、かつ空隙内の新しい骨の生成後の骨の局所領域は、ピークBMDの年齢の同一の性別および人種の者の正常BMDに実質的に等しいBMDを有するとみなされることが示唆される。以上で説明したように、BMDの増加は、局所領域のBMDの相対的改善を実証するのに単純に十分であり得る。
【0113】
正常密度の新しい自然骨の形成を引き起こす能力に加えて、本発明は、有利には、長期間にわたり改善されたBMDの維持を可能にする。以上で説明したように、骨粗鬆症患者で新たに形成される骨材料が、骨粗鬆症品質ではなく、実質的に、ピークBMDの年齢の同一の性別および人種の患者で観察されると予想される品質であることを本発明に従って見いだしたことは、驚くべきことであった。したがって、本発明に係る方法は、治療された局所領域の骨品質を本質的にピーク状態(または正常状態)に戻すのに有用であることが判明した。さらに、骨の局所領域のこの戻りは、患者の全体的骨粗鬆症状態により影響されないと思われる。言い換えれば、BMDの改善は、新たに形成される骨材料が患者の全体的状態に対応して骨粗鬆症状態に迅速に変性するような一時的現象ではない。それとは対照的に、新たに形成される骨材料は、
図1に示されるように新たに形成される骨材料がBMDの自然低下を伴って発達するという点で、元に戻った状態の十分な特性を呈するように思われる。たとえば、
図1に見られるように、BMDの典型的な低下を示す70歳のコーカサス系女性は、約775mg/cm
2の局所股関節部BMDを有し得る。本発明に係る治療後、腰骨の局所領域は、正常BMD−たとえば約950mg/cm
2(または年齢30歳の典型的BMD)に戻り得る。BMDが10年間にわたりさらなる典型的低下を起こした後、同一患者は、約700mg/cm
2(すなわち、70〜80歳の年齢の典型的なBMDの低下)の平均BMDを有すると予想されよう。しかしながら、本発明に従って治療された股関節部の局所領域の骨材料は、約930mg/cm
2(すなわち、30〜40歳の年齢の典型的なBMDの低下)であると予想されよう。当然ながら、以上のことは、平均値に基づく例示的な特性解析であるにすぎないものとみなされ、実際値は、患者間で異なり得ることが予想される。したがって、本発明に係る方法により生成される骨材料は、事実上、ピーク状態に戻り、次いで、老化を伴う密度の典型的な自然低下を継続する(すなわち、加速された速度で低下して、患者の全身性骨粗鬆症状態に「追いつく」ことはない)ので、本発明に係る方法が一時的な解決策ではなく長期にわたるBMDの増加を提供することは、明らかである。
【0114】
この本発明の特徴に照らして、特定の実施形態は、規定の期間にわたる増大されたBMDの維持を包含し得る。たとえば、骨の局所領域のBMDの増加は、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、少なくとも5年間、さらにはそれ以上の期間にわたり維持され得る。期間の測定は、形成された空隙内で新しい骨材料が生成された時点から計算され得る。好ましくは、増大されたBMDの維持としては、−1.0超、−0.5超、0超、または0.5超のTスコアを維持することが含まれる。他の実施形態では、増大されたBMDの維持としては、−1.0超〜1.0、−0.5〜1.0、または−0.5〜約0.5の範囲内のTスコアを維持することが含まれる。同様に、増加は、未治療の骨を基準にした増加パーセントとして特徴付け可能である。したがって、治療された骨は、以上に述べた期間のいずれかにわたり、BMDの増加を呈し得る。BMDのそのような増加は、同一被験者の基準未治療骨よりも少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも30%大きい、少なくとも35%大きい、少なくとも40%大きい、少なくとも45%大きい、少なくとも50大きい、少なくとも60%大きい、少なくとも70%大きい、少なくとも80%大きい、または少なくとも90%大きい。
【0115】
BMDを増大させる方法はさらに、骨の局所領域のBMDの増加が骨中で形成された空隙の境界を越えて延在し得るという点で、有利である。
図2aおよび
図2bに見られるように、骨材料は、性質上多孔性であり、本質的に、骨細胞で形成される足場材料の一連の相互侵入網状構造である。健常骨では、網状構造は、緻密で強い足場材料用として密に形成される。骨粗鬆症骨では、網状構造は、劣化し始めて、足場は、薄くなり、弱化し、さらには分解し、骨の多孔度は、増加する。理論により拘束することを望むものではないが、骨粗鬆症骨のこの性質のため、本発明に従って骨中に形成された空隙を補填することにより、形成された空隙に隣接する領域の骨の部分を骨再生材料で補填しうると考えられる。したがって、骨再生材料が生体により吸収されるとともに、形成された空隙内に新しい正常骨材料が生成されるが、そのような新しい正常骨材料はまた、補填された空隙の境界を越えて骨再生材料が延在する結果として、形成された空隙に隣接する骨の領域で生成される。さらに、形成された空隙の外側での新しい健常骨材料のそのような形成は、たとえば、空隙の縁の外側で生物学的活性を増強する界面の成長因子およびサイトカインが関与する、増大された生物学的活性に起因し得る。いくつかの実施形態では、これは、勾配効果をもたらすことさえもあり得、ここで、本発明に従って治療された骨の局所領域の骨材料の密度は、空隙の外側でおよび骨再生材料が進入したと思われるいずれの位置からも離れて、その最低値をとり、かつ骨材料の密度は、形成された空隙の領域の方向に徐々に増加する。したがって、勾配効果は、骨粗鬆症骨に対する以下の実施例により誘導され得る。すなわち、空隙が形成された領域内に直接存在する骨材料は、正常密度以上の密度(たとえば、約0〜1のTスコア)を有し得るし、形成された空隙の領域に直接隣接した骨材料は、同様に実質的に正常な密度、ただし、空隙が形成された領域内よりは少ない密度(たとえば、約−0.5〜0.5のTスコア)を有し得るし、形成された空隙からいくぶんさらに離れた骨材料は、増大された密度、ただし、形成された空隙に直接隣接した骨材料よりは少ない密度(たとえば、約−2〜−1のTスコア)を呈し得るし、そして形成された空隙からさらに離れた骨材料は、その元の骨粗鬆症密度(たとえば、−2.5未満のTスコア)を維持し得る。当然ながら、以上のことは、勾配効果の単なる例示にすぎず、実際のTスコアおよび形成された空隙からの実効距離に対する効果の範囲は、手順時の骨の実際の密度、使用する骨再生材料のタイプ、および形成された空隙に骨再生材料を配置し、ひいてはその境界を越えて延在させうる力に依存して、さまざまであり得る。これを
図8にさらに示す。この図は、本発明に係る骨再生材料で形成される移植材の挿入の13週間後のイヌ近位上腕骨中の肉眼的標本を示している。この図は、移植材部位の緻密な海綿骨および破線により示された元の欠損部の縁を越えてまで延在する新しい骨材料の形成を示している。
【0116】
さらなる実施形態では、本発明に係る方法は、骨の局所領域中で誘導された特定のBMDプロファイルに基づいて特徴付け可能である。以上に述べたように、本発明に係る方法は、新たに形成された骨材料を正常密度に戻すだけでなく、この方法はまた、実質的に正常な密度に達する前に骨の局所領域の密度を劇的に増大させることも可能であることが判明した。これは、特定の密度プロファイルに基づく局所領域の骨のリモデリングとして特徴付け可能である。
【0117】
いくつかの実施形態では、骨の局所領域の規定のBMDプロファイルを形成する方法は、領域内の変性した骨材料を排除することにより、場合により、排除された変性した骨材料分を除去することにより、骨の局所領域に空隙を形成することを含み得る。空隙形成時またはその後で骨材料を空隙から除去する必要はないが、いくつかの実施形態では、空隙内に配置され得る骨再生材料の量を最大化するために、変性した骨材料を空隙から部分的にまたは完全に除去することが望ましいこともある。したがって、空隙形成後、この方法はさらに、新しい骨材料が空隙内に経時的に生成されるように、形成された空隙を骨再生材料で少なくとも部分的に補填することを含み得る。
【0118】
新しい骨材料が空隙内に生成されるとともに、骨再生材料の一部または全部は、生体により吸収され得る。特定的には、新しい骨の内部成長は、特には、形成された空隙に対して外側から内側へ、生体による骨再生材料の吸収の速度に実質的に類似した速度で進行し得る。
【0119】
重要なこととして、形成された空隙で新たに生成される骨材料は、形成される骨材料が、治療を受けた患者に由来する骨細胞の流入から生じたものであり、同種骨でも異種骨でもないという点で、(患者との関連で)自然骨材料であるとして正確に特徴付け可能である。したがって、骨再生材料が、骨置換治療の有効性を制限し得る免疫応答を誘導する可能性は、ほとんどないかまたはまったくない。
【0120】
規定のBMDプロファイルに関して、長期にわたる逐次的BMD評価、たとえば逐次的DEXA走査は、骨再生材料のインプランテーションに起因する骨の局所領域のBMDの経時的プロファイルを提供可能である。本発明に従って提供されるBMDプロファイルは、とりわけ予想外なものである。なぜなら、外科的に形成された空隙の骨再生材料の使用により、BMDが、最初は正常骨よりも有意に緻密な状態に急上昇し、次いで、新しい骨材料の内部成長を伴って経時的にリモデリングし、結果的に、本発明に従って処理された骨の局所領域の密度が、実質的に正常な値に近づくような変化が、骨の局所領域で誘導されるからである。本発明に係る特定の実施形態に従って達成されるBMDプロファイルの性質を
図9に示す。この図では、DEXA走査Tスコアとして報告されるBMDは、期間の関数としてグラフ化されており、期間0は、空隙形成および骨再生材料のインプランテーションの時点である場合。
図9は、本発明に従って治療された骨の局所的BMDが、骨が骨減少症または骨粗鬆症(すなわち、−1未満または−2.5未満のTスコア)であると考えられるようなものである、プロファイルを示している。期間0以前の示された破線は、Tスコアにより特徴付けられる実際のBMDが、規定の閾値未満のいずれかの値(たとえば、−1未満、約−2.5未満など)であり得ることを示している。局所領域の変性した骨を骨再生材料で(期間ゼロで)置換すると、局所領域のBMDは、急激に増加し始めて最大密度に達する。
図9の代表的グラフに示されるように、約5超のTスコアに対応する最大密度は、約1週間〜約13週間の期間内で達成される。
図9中の実線は、BMDのこの急激な増加を示しており、5のTスコアを上回る破線は、達成された最大Tスコアが、5超のある値であり得ることおよび典型的には破線により覆われた範囲内のある時点で生じ得ることを示している。特定の実施形態では、規定のBMDプロファイルに従って達成される最大Tスコアは、少なくとも2.0、少なくとも3.0、少なくとも4.0、少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0、または少なくとも10.0である。インプランテーション後に最大密度(すなわち最大Tスコア)に達成する期間は、約1週間〜約6週間、約1週間〜約10週間、約1週間〜約13週間、約1週間〜約18週間、約2週間〜約10週間、約2週間〜約13週間、約2週間〜約18週間、約3週間〜約10週間、約3週間〜約13週間、約3週間〜約18週間、約4週間〜約10週間、約4週間〜約13週間、約4週間〜約18週間、約6週間〜約10週間、約6週間〜約13週間、または約6週間〜約18週間の範囲内であり得る。最大密度に達した後、骨の局所領域の密度は、約6ヶ月間まで、約9ヶ月間まで、約12ヶ月間まで、約18ヶ月間まで、約24ヶ月間まで、約6週間〜約24ヶ月間、約13週間〜約18ヶ月間、または約18週間〜約12ヶ月間の期間にわたり減少し始める。その後、骨の局所領域のBMDは、約−1.0〜約2.0、約−1.0〜約1.0、約−1.0〜約0.5、約−1.0〜約0、約−0.5〜約2.0、約−0.5〜約1.5、約−0.5〜約1.0、約−0.5〜約0.5、約0〜約2.0、約0〜約1.5、または約0〜約1.0の実質的に正常な範囲内で安定化する。以上の値を踏まえて、達成される最大BMD、および/または最大BMDを達成する期間、および/または最大BMDを達成した後にBMDが実質的に正常な範囲に減少するまでの期間だけが異なる、本発明に包含される代表的BMDプロファイルを提供する、
図9に示されるものに類似したさらなるグラフを、作成することが可能である。被験者で達成されたBMDプロファイルの実際の実施形態を以下に示される実施例で説明する。
【0121】
さらなる実施形態では、BMDは、規定のBMDプロファイルが長期間にわたり延長され得るように、実質的に維持され得る。言い換えれば、約−1.0〜約2.0、約−1.0〜約1.0、約−1.0〜約0.5、約−1.0〜約0、約−0.5〜約2.0、約−0.5〜約1.5、約−0.5〜約1.0、約−0.5〜約0.5、約0〜約2.0、約0〜約1.5、または約0〜約1.0のTスコアに対応するBMDが、さらに何年も維持され得る(すなわち、骨の局所領域のBMDプロファイルは、注目すべき範囲内のTスコアにより報告されるBMDが確立され、かつ少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、少なくとも5年間、またはそれ以上の期間にわたり維持され得るものである)。
【0122】
さらなる方法では、本発明は、正常骨に実質的に等しくなるように変性骨の局所領域をリモデリングすることに関連してすでに以上で説明した効果に基づいて特徴付け可能である。特定の実施形態では、本発明は、特定的には、次の段階、すなわち、領域内の変性骨材料を排除することにより、場合により変性骨材料分を除去することにより、骨の局所領域に空隙を形成する段階と、形成された空隙を骨再生材料で少なくとも部分的に補填することにより、形成された空隙内で新しい骨材料の内部成長を生成する段階と、を含む、変性骨の局所領域をリモデリングする方法に関し得る。特定的には、骨の局所領域のリモデリングは、以前は骨減少症または骨粗鬆症であった骨(すなわち、変性したものであると考えられたあるいはそれ以外に疾患があるおよび/または低品質、低強度、および/もしくは低密度であるとみなされた骨)の領域で新しい自然骨材料の成長を引き起こす能力により実証可能である。
【0123】
特定の実施形態では、本発明に従って治療された局所領域の骨材料(すなわち、空隙を形成する前のもの)は、典型的には正常レベルとみなされるレベルを外れた骨変性を示す−1.0未満のTスコアを有するか、またはリモデリング後に存在する新しい骨材料は、局所領域の骨が正常骨に実質的に等しくなるようにリモデリングされたことを示す−1.0超のTスコアを有する。そのような実施形態では、骨の領域は、変性した骨、骨減少症骨、骨粗鬆症骨などとはもはやみなされず、そうではなく、ピークBMDの同一の性別および人種の者の正常密度の骨(すなわち正常骨)に有意に類似した状態であるとみなされるように、効果的に変化したものであるので、骨は、局所領域でリモデリングされたとみなされ得る。言い換えれば、骨は、低密度の自然骨から正常密度の自然骨にリモデリングされる。
【0124】
これは、本発明以前に予想された効果ではない。骨粗鬆症(すなわち、BMDの有意な損失)は、典型的には、全身性病態として観察される。実際のTスコアは、同一の患者で部位によって異なり得るが、一般的には、骨粗鬆症が存在する場合、病態は、生体全体にわたり持続する(たとえば、股関節部では−3のTスコアであるのに対して遠位橈骨では−2.8のTスコアである)。以上で説明したように、骨粗鬆症は全身的に進行するが、生体の骨品質を局所的に元に戻すことが可能であることが、本発明により判明した。言い換えれば、骨の局所領域は、骨粗鬆症状態から正常状態にリモデリング可能である。これは予想外なことである。なぜなら、骨粗鬆症は、骨細胞吸収の速度が新しい細胞の形成を上回るように新しい骨細胞を形成する生体の能力が低減することから生じると理解されているからである。傷害部位中に成長する新たに形成される骨は単純に周囲の骨の延長であると推測されよう。すなわち、低品質の骨は低品質の骨を生じると推測されよう。本発明は、逆が真であることを示す。骨の局所領域の骨材料の規定の体積を系統的に除去し、その材料を本明細書で説明した骨再生材料で置換することにより、全過程が再生過程を開始し、新しい骨細胞の流入により、単に周囲領域中の変性骨の延長ではなく正常密度の正常骨に実質的に等しい骨材料である新しい自然骨材料の形成が引き起こされる。
【0125】
このリモデリングを
図10にグラフで示す。この図では、コーカサス系女性の骨の局所領域のBMDの低下が推定される。そこに見られるように、局所領域のBMDは、約30歳のときの正常範囲から低下し、低下の速度は、閉経期の期間にわたり増加し、次いで、より少ない低下で安定する。グラフ上の70歳の点は、本発明に係る手順を受けた時点を表す。局所領域のBMDは、劇的に増加し、正常範囲に戻る(すなわち、30歳のときとほぼ同一の密度)。その期間以降、局所領域の新しい骨材料は、老化を伴うBMDの自然低下を継続する。したがって、骨の局所領域は、骨粗鬆症状態から正常状態へ効果的にリモデリングされた。
【0126】
実際のTスコア値は患者によって異なり得るので、
図10に示される厳密な値は、代表値にすぎない。しかしながら、全体的リモデリング効果は、患者間で一貫性があると予想されよう。言い換えれば、厳密なBMD値は、例示されたものよりもいくらか大きいこともあれば少ないこともあるが、リモデリングは、次の点で、すなわち、骨が、骨減少症状態または骨粗鬆症状態の点へ低下する密度を呈し、本発明に係る方法に従って骨再生材料をインプランテーションした後、実質的に正常な範囲を上回るBMDの急激な増加が存在し、BMDが、実質的に正常な範囲に低下し、かつBMDが、健常骨材料が典型的に呈す低下の速度をとるという点で、一貫性があろう。重要なこととして、インプランテーション後に正常な低下の速度が再度達成される場合、低下は、ピークBMD年齢の正常健常者が典型的には呈すBMDの点から開始される。したがって、BMDは低下を継続するが、その基準は、骨減少症や骨粗鬆症の密度範囲ではなく正常な密度範囲に変更された。このことは、閉経期に関連するBMDの急激な低下が新たに成長した緻密骨に影響し得ないという点で、本発明に係る手順をすでに閉経期を過ぎた女性で行う場合、とくに重要である。治療時の女性患者の年齢および各人の寿命に依存して、局所領域の骨の性質を元に戻すことにより、骨の局所領域が治療後の患者の生存期間にわたり骨減少症状態や骨粗鬆症状態を再度達成することがないように、局所領域の構造を効果的に変化させ得る。骨減少症および骨粗鬆症の骨材料を正常骨材料に構造が実質的に類似したものにリモデリングするこの能力を、以下に提供される実施例でさらに説明する。
【0127】
形成された空隙により規定された変性骨の領域のリモデリングを引き起こすことに加えて、本発明はまた、形成された空隙の実質的にごく近傍で変性骨材料のリモデリングを引き起こし得る。
図8との関連で以上で説明したように、形成された空隙への骨再生材料の提供は、骨再生材料で補填された空隙内で新しい骨材料が生成されるだけでなく、形成され補填された空隙に隣接する骨の領域でも新しい骨材料が形成される、勾配効果をもたらし得る。同様に、本発明は、記載の範囲内のTスコアを有する骨材料が、形成された空隙に隣接する骨の領域で形成され得る程度まで、骨の局所領域の変性骨材料のリモデリングを提供し得る。したがって、空隙を形成するために排除されなかったおよび/または除去されなかった骨の局所領域の変性骨材料もまた、リモデリングを受けて実質的に正常な状態になり得る。特定的には、新たに成長した骨材料は、空隙の周りの領域から空隙内の領域へ骨材料のTスコアが増大し得るように構造に変化をもたせることが可能である。
【0128】
また、すでに以上で考察したように、正常骨に実質的に等しくなるようにリモデリングされた変性骨の局所領域は、好ましくは、長期間にわたりリモデリング状態の特性を維持する。たとえば、リモデリングされた骨の局所領域は、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、さらにはそれ以上の期間にわたり、正常骨に実質的に等しい状態を維持する。
【0129】
本発明は、椎骨形成や椎体形成などの既存の外科的手順との関連で利用可能である。これらの既存の手順と異なり、本発明に従って用いられる方法は、現時点では脊椎骨折や他の形で脊椎脆弱化に罹患していない患者で行われよう。もっと正確に言えば、本方法は、予防的に(すなわち、変性した骨のその後の骨折を予防するために)行われるものとして特徴付け可能である。特定的には、脊椎との関連では、骨折していない骨粗鬆症脊椎で外科的方法を行うことが可能であるが、用いられる外科的方法は、伝統的な椎骨形成で利用される外科的方法に類似したものであり得る。そのような実施形態では、本発明に係る方法は、本明細書で別に説明したとおりであり得るが、特定的には、患者の1つ以上の椎骨で実施可能である。
【0130】
他の実施形態では、本発明は、すでに骨折している椎骨で実施可能である。典型的にはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのセメント材料で骨折領域を補填することを含む伝統的な椎骨形成を行うのではなく、本発明は、必要に応じて骨折を拡張または増大させて椎骨内に空隙を形成し、空隙を骨再生材料で補填をすることを提供し得る。特定の実施形態では、本発明に従って治療される椎骨は、骨減少症または骨粗鬆症である。
【0131】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、正常骨に実質的に等しい新しい骨材料の内部成長を引き起こすことにより、椎体高さを復元するかまたは骨折した脊椎(特定的には、骨折した骨減少症もしくは骨粗鬆症の脊椎)の椎体高さの復元または角度変形の補正を行う方法を提供するものとして特徴付け可能である。特定的には、この方法は、骨折部およびその周りの損傷または変性した骨材料を機械的に排除することにより、場合により、排除された骨材料分を除去することにより、骨折領域に空隙を形成することを含み得る。この方法はさらに、新しい骨材料が空隙内に経時的に生成されるように、形成された空隙を骨再生材料で少なくとも部分的に補填することを含み得る。好ましくは、形成される新しい骨材料は、新しい骨材料が正常骨に実質的に等しいことを示すTスコアを有する。特定の実施形態では、新しい骨材料のTスコアは、−1超、少なくとも−0.5、少なくとも0、少なくとも0.5、または少なくとも1.0(または本明細書で説明した正常範囲内)であり得る。さらに、本発明は、新しい骨材料が、少なくとも約1年間の期間(または別に本明細書に開示されたより長い期間)にわたり正常骨に実質的に等しい状態を維持し得る、という点で有利である。そのような期間は、空隙が形成され骨再生材料で補填された骨の領域内の新しい骨材料の生成時から測定可能である。
【0132】
本発明は、骨粗鬆症および/または骨減少症を治療するための他の公知の方法および材料よりも優れた顕著な利点を提供すると考えられるが、本発明は、必ずしも他の治療を排除して利用する必要はない。特定的には、変性骨材料を患者に固有のかつ骨品質が実質的に正常な新たに成長した骨材料で置換する本方法は、骨粗鬆症および/または骨減少症を治療するのに有利なものとして当技術分野で認識されている薬学的介入と組み合わせて、使用可能である。たとえば、本発明に係る患者の治療は、患者が、ホルモン療法(たとえば、エストロゲン、SERM、カルシトニン、および組換え体たとえばrPTH)、ビスホスホネート、および抗体(たとえば、デノスマブ)を含む医薬治療を同時に受けながら、実施可能である。そのような医薬治療は、本発明に係る治療と同時にまたはその後、実施可能である。特定的には、本発明に係る方法を行う前の特定の期間にわたり、そのような治療を停止することが可能である。同様に、本発明に係る方法を行った後、特定の期間経過してから、そのような治療を開始することが可能である。
【0133】
他の態様では、本発明はまた、本明細書で説明した変性した骨を置換する方法で使用可能な材料を提供する。特定的には、種々の材料をキットの形で事前にパッケージ化することが可能である。したがって、本発明に係る方法またはこの方法の特定の段階は、種々の成分を含むキットからの用具を用いて実施可能である。本発明に係るキットで提供可能な例示的な材料を以下で説明する。
【0134】
本発明に係るキットは、好ましくは、穿孔用具を含むであろう。これは、ドリルおよび/またはドリルビットたとえばカニューレ挿入ドリルビットを含み得る。たとえば、5.3mmODカニューレ挿入ドリルを含めることが可能である。キットはまた、ガイドワイヤー、シリンジ、空隙に骨再生材料を送達するための手段、たとえば、大ゲージ注入針、ワーキングカニューレ、吸い上げ(suction)器具、吸引(aspiration)器具、タンプ器具、キュレット、リーマー器具、および用具を規定の角度に曲げる手段(たとえば、針またはタンプ)、の1つ以上を含み得る。ある実施形態では、キットは、規定のジオメトリーのヘッドを有する1つ以上のタンプ器具(たとえば、デブリードマンプローブ)を含み得る。さらなる実施形態では、キットは、リーマー器具、たとえば、X-REAM(商標) Percutaneous Expandable Reamer(Wright Medical Technology, Inc., Arlington, Tenn.から入手可能)または本明細書に記載の方法に従って使用するのに好適な寸法の類似の用具を含み得る。たとえば、骨にデブリードマンを行ったりまたは外科的に欠損部を形成したりするのに好適な任意のin situ拡張型器具を使用することが可能である。特定の実施形態では、キットは、骨の局所領域の空隙の補填に好適な量の骨再生材料を含み得る。
【0135】
骨のデブリードマンに有用な任意の材料を本発明のキットに含めることが可能である。たとえば、キュレット、ラスプ、トレフィンなどに加えて、空間を形成するための拡張器具(バルーン、ビーズ入りバッグ、メッシュ状バッグ、可撓性ワイヤー、回転ワイヤー、を可撓性および/または有孔チューブ、拡張型ウイスク、拡張型ブレード、非拡張型可撓性ブレード、または他の類似の器具)を使用することが可能である。以上のものはすべて、手動または機械操作が可能である。それらは、拘束型(たとえば、チューブ中の開口を介して固定されたプリフォームブレード)または非拘束型(たとえば、チューブ中の開口を介して変形されるブレード)であり得る。
【0136】
本発明の実施形態を実施するのに有用であり得、したがって本発明に係るキットに含まれ得る用具の特定の例を
図11〜
図19に示す。
図11は、周囲の軟組織を損傷から保護することにより、生体外から生体内への他の用具(たとえば穿孔用具)の安全な通過を提供するように機能する、組織プロテクターを示している。組織プロテクター110は、ハンドル111と内部に開放チャネル113を備えた細長ボディー112とを含む。
図12は、ガイドワイヤーを中心に配置するために使用可能な(および組織プロテクター内部を通過可能な)カニューレ挿入オブチュレーターを示している。オブチュレーター120は、フレア付きヘッド121と、細長ボディー122と、内部に開放チャネル123と、を含む。
図13は、ガイドワイヤー(in vivoで配置位置を保持すると同時に骨中へのカッティングを容易にする)のカッティングヘッド部を示している。ガイドワイヤー130は、ボディー131(部分的に示される)と、実質的な穿孔通路を形成することなく骨中にカッティングするのに十分なカッティングヘッド132と、を含む。
図14は、骨中に規定の寸法(たとえば直径5.3mm)の通路またはトンネルを形成するために使用されるドリルを示している。ドリル140は、ボディー141とカッティングヘッド142とを含む。
図15は、可撓性ワーキングカニューレを示している。ワーキングカニューレは、周囲の組織を保護すると同時に骨の内部へのさらなるワーキング用具(たとえば、デブリードマンツールおよび注射針)の安全な通過を提供するように機能する。示されたカニューレ150は、さらなる器具に装着するように造形されたヘッド151と、ボディー152と、カッティングヘッド153と、内部の開放チャネル154と、を含む。
図16は、カニューレと併用可能なさらなるオブチュレーターを示している。オブチュレーター160は、フレア付きヘッド161と細長ボディー16とを含み、中央チャネル(図示せず)を含んでもよい。
図17は、変性した骨材料を排除して骨内に空隙を形成するために骨に挿入されるデブリードマンプローブを示している。プローブ170は、ハンドル171と、細長ボディー172と、ヘッド173(骨材料を排除するために特定の寸法または形状をとり得る)と、湾曲部分174と、を含む。湾曲部分の存在は、所望の形状および体積の空隙形成のためのヘッド173を配置するのにとくに有利であり得る。湾曲部分174は、ボディー172に対する角度を、約5°〜約90°、約10°〜約75、約10°〜約60、約15°〜約50°、または約15°〜約45°に、規定し得る。
図18は、内部を貫通する開放チャネル182を有する細長ボディー181を含む吸い上げ/洗浄器具180を示している。この器具はまた、洗浄要素(例示されるシリンジボディー184)と、真空源(例示せず)に接続可能な吸い上げ要素(例示されるポート185)と、を収容する、ベース183を含む。この器具はさらに、チャネル182を介する吸い上げおよび/または洗浄の適用を制御するために制御バルブ186を含む。
図19は、内部を貫通するチャネル192を有するボディー191を含む他のワーキングカニューレ(トラフワーキングカニューレ190)を示している。
【0137】
本発明に係るキットは、1つ以上の例示された用具もしくはそれらの任意の組合せまたは本発明に係る方法を実施するのに有用であり得るさらなる用具を含み得る。特定の実施形態では、キットは、骨補充手順を行うのに必要なすべての用具および骨再生材料を含むであろう。これは、皮膚切開、骨空隙生成、デブリードマン、骨再生材料の混合、および骨再生材料の送達を提供するのに必要な用具を含み得る。特定的には、次の要素、すなわち、メス、組織プロテクター、カニューレ挿入オブチュレーター、ガイドワイヤー、ドリル、ワーキングカニューレ、デブリードマンプローブ、吸い上げ/洗浄器具、骨再生材料(好ましくは注入により、形成された空隙中へのインプランテーション前に流動性材料を形成するための固体および液体の成分を含む)、混合装置(たとえば、混合チャンバー)、シリンジ、および送達針(または形成された空隙中に骨再生材料を送達するのに有用な他の用具)のさまざまな組合せが、本発明に係る骨補充キットに含まれ得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、キットは、本発明を実施するのに必要な要素の最小分のみを含み得る。たとえば、最小限では、キットは、デブリードマンプローブ(たとえば、本明細書で説明した範囲のいずれかに含まれる角度などの特定の曲げジオメトリーのプローブ)および/または特定のサイズの進入チャネルおよび/または骨再生材料を形成するためのドリルを含み得る。他の実施形態では、カニューレ挿入オブチュレーターもまた含まれ得る。そのほかのさらなる実施形態では、ワーキングカニューレが含まれ得る。さらに他の実施形態では、吸い上げ/洗浄器具が含まれ得る。さらに他の実施形態では、組織プロテクターが含まれ得る。さらに他の実施形態では、ガイドワイヤーもまた含まれ得る。さらに他の実施形態では、混合装置が含まれ得る。他の実施形態では、シリンジおよび送達針が含まれ得る。本開示の利点を生かす当業者に自明であり得るさらなる用具が、本発明に係るキットに含まれ得る。
【0139】
以上で説明した要素のいずれかに加えて、本発明に係るキットは、変性骨病態に罹患している患者の治療にキット要素をどのように使用するかを指示する説明書一式を含み得る。たとえば、説明書一式は、治療対象の骨への経路を作製すべくメスを使用するための、周りの組織を保護すべく切開内で組織プロテクターを使用するための、骨中への初期進入経路を形成すべくガイドワイヤーまたはガイドピンを使用するための、骨の内部中へのチャネルを形成すべくドリルを使用するための、変性した骨材料を排除すべくデブリードマンツールを行うための、排除された骨材料を除去すべく吸い上げツールを使用するための、(必要であれば)骨再生材料の混合のための、形成された空隙に骨再生材料を注入すべくシリンジを使用するための、組織領域を排除すべく洗浄器具を使用するための、および組織通路切開を閉じるべくクロージャーを使用するための、説明書を提供し得る。特定のキットに含まれる用具の任意の組合せに関連して、類似の説明書が含まれ得る。さらに、説明書は、任意の好適な形態をとり得る(たとえば、著作物(たとえば、マニュアル、パンフレット、1つ以上の著作シートなど)またはデジタル媒体(たとえば、CD、DVD、フラッシュドライブ、メモリーカードなど)。
【実施例】
【0140】
実験
以下の実施例により本発明をより十分に説明する。これらの実施例は、本発明を説明し十分な開示を提供するために示されたものであり、これらに限定されるものではない。
【0141】
実施例1
三相骨再生材料の吸収特性
PRO-DENSE(登録商標)という名称で市販されている骨再生材料のプレキャスト秤量済み4.8mm×3.2mmペレットを用いて、三相骨再生材料の吸収特性を説明する加速モデルを実施した。新しい骨材料の制御された内部成長を促進するための骨再生材料中での経時変化を説明すべく試験を設計した。加速in vitroモデルは、イヌモデルでin vivoで観察される吸収の約6倍の速さであり、in vitroモデルの吸収速度は、ヒトモデルと対比するとさらに速い。
【0142】
評価を開始するために、ペレットを蒸溜水中に浸漬した。毎日の試験で、ペレットを水から取り出し、乾燥させ、秤量して残存質量パーセントを決定した。測定を行った後、ペレットを蒸溜水の新しいアリコート中に入れた。顕微鏡で解析するために、ペレットを包埋し、切片にし、35倍の倍率で走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて解析した。
【0143】
骨再生材料の初期状態を
図7aに示す。in vitro4日間のペレットを
図7bに示す(in vivo約24日間の状態に対応すると予想される)。ペレットの表面からの硫酸カルシウム溶解の初期バーストが存在する。このペレットは、微細ブルシャイト結晶の外層とより大きいTCP顆粒(SEM画像中の鮮白色部)とを呈する。ブルシャイトは、CaSO
4の溶解速度を遅らせる拡散バリヤーを形成する。in vitro8日間(in vivo約48日間)では、溶解の進行が
図7cで観察され、ペレットの外側のブルシャイト結晶(最初に暴露される)は緻密になることが観測されたことから、ブルシャイトもまた溶解されていることが示唆される。
図7dは、in vitro12日間(in vivo約72日間)のペレットを示しており、ペレットのインタクト部分を包囲するブルシャイトの比較的緻密な領域は、溶解が継続されるとともに内向きに移動することがわかる。最後に、TCP顆粒が、CaSO
4およびブルシャイトの大部分が溶解した後、一様に分布する足場を形成するとともに、完全な硫酸カルシウム溶解が、
図7eで観察される。おそらく、ブルシャイトの一部は、TCPに結合して残存し、顆粒を保持一体化するように機能すると思われる。
【0144】
実施例2
空隙形成および骨再生材料補填の前後の骨粗鬆症骨の骨折耐性の比較
本発明に係る手順を実施した直後の骨折しやすさに及ぼす効果を評価するために、骨減少症または骨粗鬆症の近位大腿骨の10個のマッチド対を用いて、死体試験を行った。初期DEXA走査法を大腿骨頸部およびWard領域で実施したところ、試験したすべての骨のTスコアは、試験時の骨材料が骨減少症または骨粗鬆症の病態であることを示す−2.0以下であった。マッチド対は、同一死体の右および左の大腿骨であった。各試験では、欠損部を一方の大腿骨中に形成し、PRO-DENSE(登録商標)移植材料で補填した。
図20および
図21のラジオグラフは、それぞれ近位大腿骨中の空隙の形成で使用されたデブリードマンプローブの挿入および形成された空隙を補填する所定の位置の移植材料(暗領域)を示している。対側大腿骨は、対照としてインタクトな状態で残した。移植材料を固化させる時間の後、対応付けられたセットの各近位大腿骨を骨折に達するまで20mm/秒の圧縮で荷重した。
【0145】
試験結果は、本発明に従って治療された近位大腿骨と対照(インタクト)大腿骨との間でピーク荷重に有意差を示さなかった。試験した10対の対応付けられた死体大腿骨間で観測された平均ピーク荷重を、
図22に提供されたグラフに示す。そこに見られるように、近位大腿骨はすべて、約8,000Nのピーク荷重で骨折した。したがって、この試験から、空隙は形成され骨再生材料で補填される本発明に係る手順を受けた近位大腿骨では、強度低下の臨床的リスクは存在しないことが示唆される。特定的には、ピン、インサートなどのいかなる外的支持材料も不在であるときでさえも、手順実施直後の本発明に係る方法に関連する骨折のリスク増加は、存在しなかった。
【0146】
実施例3
大きい臨界サイズの長手方向近位上腕骨モデルでの骨再生材料を用いたin vivoイヌ試験
臨界サイズのイヌ長手方向近位上腕骨欠損モデルで骨再生材料の13および26週間in vivo性能を評価する試験を行った。ラジオグラフおよび組織学的検査スライドを介して、生物学的応答、すなわち、新骨形成、インプラント分解、および生体適合性を定性的に評価した。
【0147】
この試験では、16匹の骨格成熟イヌ被験体のそれぞれに、それらの近位上腕骨に両側長手方向円筒状欠損部(13mmOD×50mm)を設けた。すべての被験体は2つの欠損部の一方にOSTEOSET(登録商標)硫酸カルシウム骨移植片代替物ペレット(Wright Medical Technology, Inc., Arlington Tenn.)を与えられた。流動性PRO-DENSE(登録商標)移植材料の注入ボーラスまたはPRO-DENSE(登録商標)材料のプリフォームペレットのいずれか(両方とも市販されている)で対側欠損部を治療した。各実験群の半分は13週間後に、残りの半分は26週間後に評価を行った。同一位置から採取された正常骨で比較データを作成する目的で、5匹の未手術のイヌの追加の10個の上腕骨を取得した。すべてのサンプルで圧縮強度および組織形態を試験した。
【0148】
各被験体で、鎖骨上腕筋の切開および退縮を介して、左および右の上腕骨の大結節への限定された頭側進入を行った。穿孔およびリーマー処理を用いて、以上に述べたサイズの欠損部を各試験部位に形成した。次いで、使用材料に対して欠損部部位をランダム化するために左側および右側で材料を順次切り替えて、試験材料の1つで、形成された欠損部を埋め戻した。鉗子を用いてペレットを各欠損部に密に充填した。真空骨セメント混合装置(Summit Medical; Gloucestershire, UK)を用いて液体成分と粉末成分とを組み合わせることにより、ボーラス注入材を調製した。20〜23”Hg真空下で30秒間混合後、材料を20cm
3シリンジに移動し、11ゲージ6cm
3ポート式jamshidi型針を介して埋め戻し技術によりボーラス(約6cm
3)を欠損部に送達した。次いで創傷を閉じた。
【0149】
被験体の試験部位から得られた機械的試験片を用いて、新たに形成された骨の極限圧縮強度および弾性率を決定すべく、生体力学的試験を行った。1kN Dynacell Dynamic Load Cell and Bluehill Materials Testing Software(system, load cell, and software: Instron Corp., Canton, MA)を備えたInstron Model 8874油圧制御機械的試験システムを用いて、試験を行った。球状キャップを除去し、荷重ロッドを試験フレームのアクチュエーターに螺入するように機械加工する形で、ASTM D695準拠圧縮サブプレス(Wyoming Test Fixtures, Inc., Laramie, Wyoming, serial no. WTF-SP-9)を改造した。また、形成された新しい骨材料の量を各試験片で評価すべく、試験を行った。試験直前、試験片の長さおよび半分の各試験片長さの位置の直径を測定した(+/−0.01mm)。
【0150】
明らかな試験片破損が観測されるまで(荷重曲線の有意な低下または試験片の30%の歪みが達成されるまで)、試験片を0.5mm/minの速度で非拘束型一軸圧縮試験に付した。得られる応力−歪み曲線から、ソフトウェアにより試験片の極限圧縮強度および弾性率を計算した。5匹の追加のイヌの9個の機械的試験片にコアを設けて、比較用「正常骨」試験片として使用するために同一の方式で試験した。
【0151】
Bluehill Materials Testing Softwareを用いて各試験片で応力対歪み図を作成し、応力−歪み図が傾きゼロになる応力として極限圧縮強度を決定した。試験片の極限圧縮強度(MPa)および弾性率E(MPa)を以下の表1に示す。2つの個別試験でOSTEOSET(登録商標)材料が使用された試験片および各試験(IおよびII)で得られた平均値が含まれる。正常骨の値が比較として含まれる。表2は、同様に、13および26週間での新しい骨および残留材料の面積率を示している。標準的ポイントカウント技術により、これらの平均値を決定した。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
以上のデータからわかるように、流動性PRO-DENSE材料では、13週間での骨形成およびミネラル化に及ぼす効果が正常骨(5.29MPa対1.38MPa)で観察されたものを上回ることが実証された。この現象は、26週間で低減し、その時点で、圧縮強度および弾性率の平均値は、正常骨のものにさらによく一致した。正常骨密度に戻るリモデリングのこの現象は、表2の骨密度値と一致し、13週間の試験では、流動性PRO-DENSE(登録商標)材料の骨面積率は、正常骨密度よりも有意に高かったが、26週間では、流動性PRO-DENSE(登録商標)材料に関する値は、正常骨密度にかなり近い値であった。これらの知見は、流動性PRO-DENSE(登録商標)材料を用いて治療された試験片の13週間のラジオグラフで観測された高レベルの放射線濃度と一致した。ペレット状PRO-DENSE(登録商標)材料で治療された試験片は、流動性材料で治療された欠損部で観測されたものと同程度の骨形成を示さなかった。しかしながら、ペレット状材料が、13週間および26週間の両方の時点で、依然として、正常骨試験片で観察された性質と実質的に類似しているかさらにはそれよりもかなり良い性質を有する骨の形成を生じることに注目することは、重要である。
【0155】
OSTEOSET(登録商標)ペレットで治療された欠損部の機械的性質の平均値は、正常骨のものを下回った。しかしながら、差は、統計的に有意であるとは判定されなかった。また、以上に提供される比較的大きい標準偏差が、このタイプの機械的試験にかなりよく見受けられるものであることに注目されたい。
【0156】
実施例4
骨再生材料で補填した形成された空隙内における新しい緻密な骨材料の生成
骨粗鬆症患者で新しい骨成長の形成を評価するために、80歳のヒト女性の左大腿骨を本発明に従って治療した。特定的には、大腿骨中に空隙を形成し、PRO-DENSE(登録商標)移植材料で補填した。
図23は、移植材を注入前の近位大腿骨のラジオグラフを提供し、
図24は、注入前の近位大腿骨の同一域のCT画像を提供する。
図25は、手術中の近位大腿骨のラジオグラフを提供し、近位大腿骨中の所定の位置の移植材料を示す。
【0157】
以下の表は、手順を受ける前の左大腿骨のTスコアおよびZスコアの値を提供する。表はさらに、比較用として使用される右大腿骨(未治療)の同一値を提供する。
【0158】
【表3】
【0159】
手術後、本発明に従って治療された骨の局所領域の密度の変化および対照での変化を経時的に決定するために、多数の間隔で患者を評価した。治療1週間後の試験値を以下の表4に示す。そこに見られるように、治療された大腿骨は、すでに密度の劇的な改善を呈するが、対照の大腿骨は、治療前の値に類似した骨粗鬆症値を呈する。
【0160】
【表4】
【0161】
図26は、治療の6週間後の治療された左大腿骨のラジオグラフを提供する。そこに見られるように、移植材は、局所領域の骨がリモデリングするとともに、生体により吸収され始める。治療の6週間後のDEXA走査法の試験値を表5に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
図27は、治療の12週間後の治療された左大腿骨のCT画像を提供する。移植材料の存在(明着色塊)は明らかであり、さらなる吸収を示す。表6は、治療の12週間後のDEXA走査法値を提供し、表7は、治療の18週間後のDEXA走査法値を提供する。
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
図28は、治療の24週間後の治療された左大腿骨のCT画像を提供する。移植材料が吸収されて緻密な骨材料により置換されるとともに、移植材料の存在(明着色塊)は、有意に低減される。表8は、治療の24週間後のDEXA走査法値を提供し、表9は、治療の12ヶ月間後のDEXA走査法値を提供する。
【0167】
【表8】
【0168】
【表9】
【0169】
実施例5
空隙の形成および骨再生材料の補填の後の骨粗鬆症骨の局所領域のBMPの増加
World Health Organization(WHO)の定義によるとすべて骨粗鬆症とみなされた12名のヒト患者で試験を行った。各患者で、一方の大腿骨を本発明に従って治療し、対側を比較の目的で未治療のまま残存させた。
【0170】
最初に、ベースラインを得るために、DEXAにより両方の股関節部でBMDを測定した。その後、各患者の単一の股関節部の試験部位で、骨粗鬆症骨部分を除去することにより、近位大腿骨に空隙を形成し、実施例4に示される方法と同様に、空隙をPRO−DENSE(登録商標)移植材料で補填した。患者は、通常の日常生活を送り、1、6、12、18、24、52、78、および104週間で追跡走査を行った。12名の患者は、すべて24週間まで評価され、8名の患者は、52週間まで試験され、3名の患者は、78週間まで試験され、そして2名の患者は、全104週間にわたり試験されたことに注目されたい。
【0171】
各追跡試験(ベースライン測定と同様)では、各患者で大腿骨頸部および大腿骨近位部全体のDEXA走査法Tスコアを記録した。
図29を参照してわかるように、すべての患者で大腿骨頸部のTスコアは、ベースラインが−2未満であるが、各患者は、1週間後の評価でTスコアの有意な増大を呈した(約1〜ほぼ6の範囲内)。この初期の急激な増加の後、各患者のTスコアは、健常骨の正常範囲(基準として30歳平均値を用いた)に徐々に戻った。12週間程度の短い期間内で、少数の患者は、0近傍またはそれをわずかに下回るまでTスコアの低下を有していた。104週間まで試験した患者でさえも、Tスコアは、継続して正常値近傍であった(ただし0未満)。
図30に示されるように、大腿骨近位部全体のTスコアについても類似の傾向が観察された。Tスコアの急激な増加は大腿骨頸部の場合ほど大きくなかったが、初期増加は、おおよそ比例した(すなわち、各患者は、手順を受けた1週間後、約3ポイント以上の増加を呈する)。この場合も、大腿骨近位部全体のTスコアは、試験期間が進むにつれて低減したが、各患者で得られた最終スコアは、ベースラインスコアから有意に改善された病態へのリモデリングを示す。治療された股関節部のWard領域では、さらに大きい改善が観察された。
図31に見られるように、1週間以内に、ほとんどの患者のTスコアは、5〜17程度の範囲に上昇した。この場合も、治療を受けた患者の股関節部のこの領域での本発明の実施は、再度、正常品質(すなわち、この患者のゼロ超のTスコア)になる骨のリモデリングをもたらす。
【0172】
本発明に係る置換手順を受けた後の治療された部位での骨品質の効果的な有意な増大を
図32でさらに説明する。この図は、種々の間隔で患者集団間で大腿骨頸部のBMDの平均値の改善を示す。Tスコア(骨粗鬆症骨から正常骨へ骨品質の絶対的変化を例証する)に加えて、
図32に示される比較の平均的変化から、低いBMDの骨を除去して有意により大きいBMDを有する新しい骨の成長を促進することにより、本発明に係る手順が治療領域の基本骨構造をリモデリングし得ることが確認される。
図32に見られるように、本発明に係る手順を受けた1週間後以内で、対照(各患者の対側の未治療の股関節部の平均BMDである)に対して、BMDは、約150%増加した。その後、約24週間まで、大腿骨頸部のBMDの相対的増加は、正常骨のBMDに向って比較的急激なリモデリングを示す(BMDは、6週間では対照よりも120%大きく、12週間では対照よりも96%大きく、そして24週間では対照よりも74%大きい)。この時点以降、BMDは、標準化された形で徐々に減少し始めた。2年間の評価では、試験に残った2名の患者は、依然として、対照に対して大腿骨頸部で35%の平均BMD増加を呈した。
【0173】
類似の結果が
図33で観察される。この図は、種々の間隔で患者集団間で全体でBMDの平均値改善を示す。そこに見られるように、本発明に係る手順を受けた1週間後以内に、対照(各患者中の対側の未治療の股関節部の平均BMDである)に対して、BMDは、約68%増加した。その後、約24週間まで、大腿骨近位部全体にわるBMDの相対的増加は、正常骨のBMDに向って比較的急激なリモデリングを示す(BMDは、6週間では対照よりも54%大きく、12週間では対照よりも45%大きく、そして24週間では対照よりも36%大きい)。この時点以降、BMDは、標準化された形で徐々に減少し始めた。2年間の評価では、試験に残った2名の患者は、依然として、対照に対して大腿骨近位部全体にわたり18%の平均BMD増加を呈した。BMDのこの増加は試験期間全体にわたるので、骨の治療領域は、増大された圧縮強度を呈し(以上で説明したイヌ試験で実証されたとおり)、BMDが増大しかつ圧縮強度が増大するので、骨折耐性が増大されることが期待されよう。未治療の側ではベースラインからのBMD測定値の大きな変化は存在しなかった(ただし、
図33から、20週間以降、未治療の側の大腿骨近位部全体にわたりBMDが徐々に減少することが示唆される)。
【0174】
この場合も、
図34に示されるように、Ward領域のBMD増加に関しては、さらに大きい結果が観察された。本発明に係る治療の一週間後以内に、平均BMDは、400%上昇した。経時的な漸減が観察され、6週間では355%大きいBMD、12週間では295%大きいBMD、そして24週間では220%大きいBMDである。治療の52週間後〜治療の104週間後にわたる期間では、Ward領域の治療された股関節部のBMDは、対照の股関節部よりも約140%〜約200%大きい範囲内であった。
【0175】
当業者であれば、本発明の多くの変形形態および他の実施形態が考えられようが、それらに対して、本発明は、以上の説明および添付の図面に提示された教示の恩恵を有する。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形形態および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるとみなされるものとする。本明細書では特定の用語が用いられているが、それらは、一般的かつ記述的な意味で用いられているにすぎず、限定を目的としたものではない。