(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
疎水性ハプテン被検体を含有すると推測される未知の試料であって干渉物質を含有すると推測される未知の試料中の被検体の実際の濃度を決定するための方法であって、下記のステップを含有する方法。
(a)未知の試料について第一のアッセイ方法を実行し、前記未知の試料中の前記疎水性ハプテン被検体の測定濃度を得、前記未知の試料について第二のアッセイ方法を実行して前記未知の試料中の前記干渉物質の濃度を得るステップ;及び
(b)ステップ(a)で得られた前記疎水性ハプテン被検体の前記測定された濃度及び前記干渉物質の前記測定された濃度を利用する所定の補正式を適用して、前記未知の試料中の前記疎水性ハプテン被検体の実際の濃度を決定するステップ。
ここで、前記補正式は、
(i)前記第一のアッセイ方法を用いて、前記干渉物質を含有する少なくとも2つの異なる試料について、前記疎水性ハプテン被検体の濃度を測定し、被検体に特異的な特性を直接に測定する参照方法を用いて、前記少なくとも2つの異なる試料について、前記疎水性ハプテン被検体の濃度を測定するステップ;
(ii)前記第一のアッセイ方法と前記参照方法との間のバイアス(ここで、バイアスとは、異なる試料のそれぞれについて前記参照方法及び前記第一の方法によって決定された疎水性ハプテン被検体の濃度の間の相違である。)を決定するステップ;
(iii)前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれについて、前記干渉物質の濃度を測定するステップ;及び
(iv)前記バイアス及び前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれにおける干渉物質の濃度を用いて、回帰分析を行なうことにより、補正式を決定するステップ
を含む方法により、前以って決定される。
ここで、前記回帰分析は、回帰線を形成し該回帰線の傾き及び切片を使用して下記補正式を形成することを含む。
[An]=[mAn]+(a×[mIS]+b)
(式中、[An]は、前記未知の試料中の前記疎水性ハプテン被検体の実際の濃度、[mAn]は、前記未知の試料中の前記疎水性ハプテン被検体の測定濃度、[mIS]は、前記未知の試料中の前記干渉物質の測定濃度、aは、前記回帰線の傾き、そして、bは、前記回帰線の切片である。)
ビタミンD被検体を含有すると推測される未知の試料であって、コレステロールを含有すると推測される未知の試料中の前記ビタミンDの実際の濃度を測定する方法であって、下記のステップを含む方法。
(a)未知の試料について第一のアッセイ方法を実行して前記未知の試料中の前記ビタミンDの測定濃度を得、前記未知の試料について第二のアッセイ方法を実行してコレステロールの濃度を得るステップ;及び
(b)ステップ(a)で得られた前記ビタミンDの測定濃度及びコレステロールの測定濃度を利用する所定の補正式を適用して、前記未知の試料中の前記ビタミンD被検体の実際の濃度を決定するステップ。
ここで、前記補正式は、下記のステップを含む方法により、前以って決定される。
(i)少なくとも2つの異なる試料であって更にコレステロールを含有する試料について、前記第一のアッセイ方法を用いて、前記ビタミンD被検体の濃度を測定し、且つ、前記少なくとも2つの異なる試料について、被検体に特異的な特性を直接に測定する参照方法を用いて、前記ビタミンD被検体の濃度を測定するステップ;
(ii)前記第一のアッセイ方法と前記参照方法との間のバイアスを決定するステップ、ここで、バイアスとは、異なる試料のそれぞれについて前記参照方法及び前記第一のアッセイ方法によって決定されたビタミンD被検体の濃度の間の相違であり、
(iii)前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれについて、コレステロールの濃度を測定するステップ;及び
(iv)前記バイアス及び前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれにおけるコレステロールの濃度を用いて、回帰分析を行なうことにより、補正式を決定するステップ。
ここで、前記回帰分析は、回帰線を形成し該回帰線の傾き及び切片を使用して下記補正式を形成することを含む。
[ビタミンD]=[m ビタミンD]+(a×[m コレステロール]+b)
(式中、[ビタミンD]は、前記未知の試料中の前記ビタミンD被検体の実際の濃度、[m ビタミンD]は、前記未知の試料中の前記ビタミンD被検体の測定濃度、[m コレステロール]は、前記未知の試料中のコレステロールの測定濃度、aは、前記回帰線の傾き、そして、bは、前記回帰線の切片である。)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記述する原理に従う方法の例によれば、ホストから採取された試料(この試料は、疎水性ハプテン被検体を正確に検出する能力に影響を与える1以上の干渉物質を含有する。)中の疎水性ハプテン被検体の正確な測定が提供される。本明細書に記述する原理に従う方法の例によれば、疎水性ハプテン被検体の測定濃度は、未知の試料の一部における疎水性ハプテン被検体の濃度をアッセイ方法により測定し、前記未知の試料の他の一部における干渉物質の濃度を、もう1つの、通常は別の、アッセイ方法により測定し、上記の両測定値を利用した所定の補正式を適用することによって補正して、未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の正確な測定値が得られる。幾つかの例では、干渉物資の濃度の測定は、疎水性ハプテン被検体の測定をも包含するテストパネルの一部として実施される。
【0012】
補正式は、(i)少なくとも2つの異なる試料であって干渉物質をも含有する試料について、第一のアッセイ方法を用いて、疎水性ハプテン被検体の濃度を測定し、前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれについて、参照方法を用いて、疎水性ハプテン被検体の濃度を測定し、(ii)前記第一のアッセイ方法と前記参照方法との間のバイアス(ここで、バイアスとは、前記2つの異なる試料について、前記参照方法及び前記第一のアッセイ方法により測定された疎水性ハプテン被検体の濃度の差をいう。)を測定し、(iii)前記2つの異なる試料における干渉物質の濃度を測定し、そして(iv)前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれについて、バイアス及び干渉物質の濃度を用いて回帰分析を行なうことにより補正式を決定することを含む方法により、予め決定される。
【0013】
本発明者は、補正式なしでは、干渉物質によって、高すぎる又は低すぎるアッセイ測定値が得られるとしても、上述の補正式を用いれば、疎水性ハプテン被検体のより正確な測定ができることを見出した。
【0014】
用語「疎水性ハプテン被検体」は、約2,500未満の、又は約2,000未満の、又は約1,500未満の、又は約1,000未満の、又は約500未満の分子量を有し、例えば、約100〜約2,500の、又は約300〜約2,500の、又は約300〜約2,000の、又は約300〜約1,500の、又は約300〜約1,000の、又は約500〜約2,500の、又は約500〜約2,000の、又は約500〜約1,500の、又は約500〜約1,000の分子量範囲を有する被検体をいう。疎水性ハプテン被検体は、脂溶性であり、これは、疎水性ハプテン被検体が、例えば、1以上の脂肪、油、脂質に可溶であることを意味する。
【0015】
幾つかの例では、疎水性ハプテン被検体には、これらに限定されるものではないが、例えば、ビタミン、濫用薬物、治療薬及びステロイドホルモンが含まれる。ビタミンには、これらに限定されないが、例えば、ビタミンD、ビタミンB12、ビタミンE及びビタミンKが含まれる。ステロイドホルモンには、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、プロゲストゲン、エストロゲン、アンドロゲン、糖質ステロイド、鉱質コルチコイド及びセコステロイドが含まれる。本明細書に記述する原理に従う幾つかの例では、疎水性ハプテン被検体は、例えば、ビタミンDである。
【0016】
本明細書において、用語「ビタミンD」は、脂溶性セコステロイドのグループを指し、例えば、1以上の25−ヒドロキシコレカルシフェロール(カルシジオール、カルシフェディオール、25−ヒドロキシコレカルシフェロール又は25−ヒドロキシビタミンD
3及び25−ヒドロキシビタミンD
2を始めとする25−ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)と略する。);カルシジオール、1,25−ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール;1,25−(OH)
2D
3);1,25−ジヒドロキシビタミンD
4;1,25−ジヒドロキシビタミンD
5;及び1,25−ジヒドロキシビタミンD
6;上述のもの全ての代謝体を含む。)を包含する。
【0017】
分析対象の試料は、疎水性ハプテン被検体及び1以上の干渉物質を含有すると推測される試料である。試料は、生物学的試料であっても非生物学的試料であってもよい。生物学的試料は、哺乳動物被験体であっても非哺乳動物被験体であってもよい。哺乳動物被験体は、例えば、ヒト又は他の動物種であってよい。「非哺乳動物被験体」は、生物学的材料に関連しないものであって、これには、例えば、土壌試料、廃棄物流、水試料、空気試料、空気以外のガス試料及び鉱物試料が含まれる。用語「生物学的試料」は、例えば、体液、体組織、体化合物及び培養培地等のあらゆる生物学的材料をいう。試料は、あらゆる源からの固体、半固体又は流体(液体又は気体)であってよい。幾つかの実施態様では、試料は、体排出物、体吸引物、体切除物又は体抽出物であってよい。体とは、通常哺乳動物のそれであり、幾つかの実施態様では、体とは、人体である。体排出物は、例えば、尿、糞、便、膣粘液、精液、涙、息、汗、水疱液及び炎症性浸出液等の、体から排出される物質である(もっとも、これらは、切除又は抽出によっても得られる。)。体切除物とは、例えば、皮膚、毛髪並びに器官及び他の体部分からの生検材料を始めとする組織試料等の、体から採取された材料である。体吸引物とは、例えば、粘膜、唾液及び痰のような体から吸引された材料である。体抽出物とは、例えば、全血、血漿、血清、髄液、脳髄液、リンパ液、滑液及び腹水等の体から抽出された材料である。いくつかの例では、試料は、全血、血漿又は血清である。
【0018】
用語「干渉物質」とは、疎水性ハプテン被検体と相互作用して疎水性ハプテン被検体を、疎水性ハプテン被検体の測定のためのアッセイに用いられる疎水性ハプテン被検体の抗体等の結合パートナーと、結合できなくする1以上の化合物をいう。そのような干渉物質には、これらに限られないが、例えば、LDL、VLDL、IDL、HDL及びカイロミクロンを始めとする全てのリポタンパク中に存在するコレステロールが含まれる。
【0019】
(補正式の決定)
本明細書に記述する原理に従う例は、干渉物質が測定の正確さに影響する疎水性ハプテン被検体のアッセイに特別の適用を有する。上述のとおり、所定の補正式が、試験された試料中の1以上の干渉物質の存在に起因するアッセイ測定値の不正確な結果を補正するために採用される。本明細書に記述する原理に従う例では、補正式をあらかじめ決定する方法は、第一のアッセイ方法を用いて、少なくとも2つの異なる試料であって干渉物質をも含有する試料について疎水性ハプテン被検体の濃度を測定し、参照方法を用いて、前記少なくとも2つの異なる試料のそれぞれについて疎水性ハプテン被検体の濃度を測定することを含む。
【0020】
所定の補正式は、例えば、生産者又は開発者によって、ホストからの未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の濃度を決定するために用いられるアッセイのために、決定される。一旦決定されれば、補正式は、例えば、アッセイの指示書に包含することによって、未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の濃度の決定に用いるために試験室等のユーザーに広められる。所定の補正式は、このユーザーによって、未知の試料の引き続く分析のために得られたアッセイの結果に容易に適用され、未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の正確な濃度が決定される。
【0021】
補正式を決定するにあたり、第一のアッセイ方法に供される疎水性ハプテン被検体を含有する異なる試料の数は、少なくとも2、又は少なくとも3、又は少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6である。幾つかの例では、採用される疎水性ハプテン被検体を含有する異なる試料の数は、例えば、2〜20の間、又は2〜15の間、又は2〜14の間、又は2〜13の間、又は2〜12の間、又は2〜11の間、又は2〜10の間、又は3〜20の間、又は3〜15の間、又は3〜14の間、又は3〜13の間、又は3〜12の間、又は3〜11の間、又は3〜10の間、又は4〜20の間、又は4〜15の間、又は4〜12の間、又は4〜10の間、又は5〜20の間、又は5〜15の間、又は5〜12の間、又は5〜10の間、又は6〜15の間、又は6〜14の間、又は6〜13の間、又は6〜12の間、又は7〜15の間、又は7〜14の間、又は7〜13の間、又は7〜12の間、又は8〜20の間、8〜15の間、又は8〜12の間である。
【0022】
幾つかの例では、採用される疎水性ハプテン被検体の濃度は、分析すべき未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の予期される濃度範囲に亘る。試験される疎水性ハプテン被検体の濃度は、一般に、例えば、約10
−5〜約10
−17モル、又は約10
−6〜約10
−14モル、又は約10
−8〜約10
−10モルに及ぶ。各試料中の干渉物質の濃度は、例えば、約10mg/dL〜約1,000mg/dL、又は約50mg/dL〜約1,000mg/dL、又は約100mg/dL〜約1,000mg/dL、又は約200mg/dL〜約1,000mg/dL、又は約300mg/dL〜約1,000mg/dL、又は約500mg/dL〜約1,000mg/dL、又は約10mg/dL〜約500mg/dL、又は約50mg/dL〜約500mg/dL、又は約100mg/dL〜約500mg/dL、又は約200mg/dL〜約500mg/dL、又は約300mg/dL〜約500mg/dLの間で変化する。
【0023】
補正式の決定に当たって採用される第一のアッセイ方法は、疎水性ハプテン被検体を含有すると推測される試料、つまり未知の試料、を測定するために引き続いて用いられるアッセイ方法である。第一のアッセイ方法として如何なるアッセイ方法を採用してもよい。幾つかの例では、第一のアッセイ方法は、試料中の疎水性被検体の濃度を決定するための試薬であって疎水性被検体のための少なくとも1つの結合パートナーを含有する試薬を、試料を含有する媒体に、添加するステップ、及びこの媒体を、前記疎水性被検体のための結合パートナーに前記疎水性被検体を結合させる条件下で、インキュベートするステップを含む。結合により、前記被検体のための結合パートナーと前記被検体又は被検体類似体との錯体が生じる。そのような錯体の量が測定され、試料中の前記被検体の量に関連付けられる。
【0024】
用語「結合パートナー」とは特定の結合対の一員である分子をいい、特異的に結合し、それにより他の分子の相補体と定義される2つの異なる分子の一方である。例えば、特定の結合対の一員は、表面上又は空洞に、該特定の結合対の他のメンバーの特別な空間的又は極性組織に特異的に結合する領域を有している。結合パートナーは、これは例示のためであって限定するものではないが、例えば、抗体又はアプタマー(例えば、核酸アプタマー又はペプチドアプタマー)である。
【0025】
試薬として抗体を採用するアッセイは、イムノアッセイと呼ばれる。用語「被検体の抗体」とは、被検体に(そして、幾つかの例では、密接に関連する、被検体の代謝物としての、被検体の構造的類似体に)特異的に結合し、該被検体の分析を不正確にする他の物質とは影響を及ぼす程度には結合しない抗体をいう。従って、特異的結合には、2つの異なる分子の一方の他方に対する(その他の分子に対して認識が実質的に低いのに比較すると)特異的な認識が関与する。他方、非特異的結合には、特異的な表面構造の影響を相対的に受けない分子間の非共有結合が関与する。非特異的結合は、分子間の疎水性相互作用を始めとする幾つかの要因によって生じる。
【0026】
一般に、本明細書に記述する原理に従う補正式の決定のための第一のアッセイ方法として採用されるアッセイは、アッセイ媒体中で疎水性ハプテン被検体を含有する試料と疎水性ハプテン被検体の抗体とを結合させることにより実施される。抗体は遊離で採用しても共役系で採用していてもよい。共役抗体は、例えば、支持体若しくは標識又は支持体と標識との結合体に結合している抗体である。採用される他の試薬の性質は、実行すべきアッセイの型による。媒体中での結合は、被検体又は被検体類似体を抗体と結合させて錯体を形成させる条件による。錯体の量は、錯体の量が媒体中で被検体の量に関連しているところで測定される。
【0027】
「被検体類似体」とは、被検体の抗体のような受容体への結合に関して被検体と競合する変性された被検体をいう。変性により、被検体類似体を他の分子に結合させる手段が与えられる。被検体類似体は、通常、被検体類似体をハブ又は標識に連結する結合で水素を置換する以上に、被検体とは異なるが、そうでなくてもよい。被検体類似体は、例えば、例えば標識又は支持体のような他の分子に、例えば結合又は連結基を介して、共役した被検体であってもよい。
【0028】
アッセイは、任意のアッセイ成分又は生成物を分離しないで(均質)行なってもよく分離して(非均質)行なってもよい。非均質アッセイは、通常、1以上の分離ステップが関与するが、競合的でも非競合的でもよい。イムノアッセイは、標識した又は標識しない試薬を用いてもよい。非標識化試薬を用いるイムノアッセイは、通常、本明細書に記述する原理に従う免疫コンジュゲートから準備された1以上の抗体が関与する相対的に大きな錯体の生成を含む。そのようなアッセイには、例えば、免疫沈降及び凝集法並びに対応する比濁法及び比ろう法のような抗体錯体の検知のための光散乱技法が含まれる。標識化イムノアッセイには、これらに限定されないが、例えば、化学発光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、蛍光偏光イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、阻害アッセイ、誘起発光アッセイ、蛍光酸素チャネリングアッセイが含まれる。
【0029】
イムノアッセイの一般的な群の1つには、試薬の1つの限定された濃度を用いるイムノアッセイが含まれる。イムノアッセイのもう1つの群には、1以上の主な試薬の過剰の使用が関係する。イムノアッセイのもう1つの群は、分離のない均質なアッセイであり、ここでは、試料中の抗体への被検体又は被検体類似体の結合の際に、標識化試薬が標識信号を調整する。
【0030】
上述のように、アッセイは、任意のアッセイ成分又は生成物を分離しないでも(均質)又は分離しても(非均質)実施することができる。均質アッセイとしては、特許文献1の第3欄第6行〜第6欄第64行に開示されているEMIT(登録商標)アッセイ(シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス社、イリノイ州ディアフィールド);特許文献2第17欄第59行〜第23欄第25行に開示されているような免疫蛍光法;特許文献3第6欄第25行〜第9欄第63行に開示されているような酵素チャネリングイムノアッセイ(ECIA);特許文献4例えば、中でも特許文献4に開示されている蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA);及びYalowら酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のような酵素イムノアッセイが例示される。非均質アッセイの例は、特許文献5に開示されている。上述の開示の関連部分を、参照により、本明細書に取り入れる。
【0031】
他の酵素イムノアッセイは、例えば、非特許文献2において議論された酵素調整媒介免疫測定法(「EMMIA」)、非特許文献3において開示された基質標識蛍光免疫測定法(「SLFIA」)、非特許文献4において開示された複合酵素ドナー免疫測定法(「CEDIA」)、粒子強化比濁阻害免疫測定法(「PETINIA」)等の均質粒子標識免疫測定法及び粒子強化比濁免疫測定法(「PETIA」)である。
【0032】
その他のアッセイには、例えば、ゾル粒子免疫測定法(「SPIA」)、分散色素免疫測定法(「DIA」)、メタロ免疫測定法(「MIA」)、酵素膜免疫測定法(「EMIA」)及び蛍光免疫測定法(「LIA」)が含まれる。他のタイプのアッセイには、抗体への結合の際の化合物の光学的、音響的及び電気的特性の変化のモニタリングを伴うイムノセンサーアッセイが含まれる。そのようなアッセイには、例えば光学イムノセンサーアッセイ、音響イムノセンサーアッセイ、半導体イムノセンサーアッセイ、電気化学的変換器イムノセンサーアッセイ、電位差測定イムノセンサーアッセイ及び電流測定電極アッセイが含まれる。
【0033】
不均質アッセイは、通常、1つ以上の分離ステップを必要とし、競合的でも又は非競合的であってもよい。様々な競合的及び非競合的な不均質アッセイのフォーマットが、Davalianらの特許文献5第14欄第25行〜第15欄第9行に記載されており、その開示内容を参照により本発明に援用する。競合的な不均質アッセイの例では、被検体に対する抗体を結合した支持体を、被検体及び標識化被検体類縁体を含むと考えられる試料を含む媒体と接触させる。試料中の被検体は、被検体に対する抗体への結合に関して、検出可能な標識を有していてもよい被検体類縁体と競合する。支持体と媒体とを分離した後、支持体又は媒体の標識活性が、従来法により測定され、試料中の被検体の量と関係づけられる。
【0034】
本明細書に記述する原理に従う補正式を予め決定するためのアッセイ方法で採用される媒体は、通常、最適のアッセイ感度を提供する中庸のpHの水性緩衝媒体である。前記水性媒体は、水のみでもよく、又は、0.1〜約40体積%の共溶媒を含んでもいてよい。媒体のpHは、例えば、約4〜約11の範囲、又は約5〜約10の範囲、又は約6.5〜約9.5の範囲である。pHは、通常、あらゆる特異的な結合対の結合メンバーの最適の結合や、信号生成システムの部材等の、アッセイに用いられる他の試薬のための最適pH、等々の妥協物である。様々な緩衝剤を用いて、望ましいpHを達成し、アッセイの間のpHを維持することができる。緩衝剤の例には、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、TRIS、バルビタール、PIPES、HEPES、MES、ACES、MOPS、BICINE等が含まれる。使用される具体的な緩衝剤の種類は重要ではないが、個々のアッセイにおいて、或る緩衝剤又は他の緩衝剤の使用が好ましい場合もある。
【0035】
上記アッセイ方法において、様々な補助的材料を使用してもよい。例えば、緩衝剤に加えて、媒体は、媒体の安定化剤及び使用される試薬の安定化剤を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、これらの添加物に加えて、アルブミン等のタンパク質;ホルムアミド等の有機溶媒;第四級アンモニウム塩;例えば硫酸デキストラン等のポリアニオン;結合促進物質、例えばポリアルキレングリコール;例えばデキストラン又はトレハロース等の多糖類を添加してもよい。前記媒体は、血餅形成の防止剤を含有していてもよい。かかる試薬は当技術分野で公知であり、例えばEDTA、EGTA、クエン酸塩、ヘパリン等を含む。前記媒体は、例えばアジ化ナトリウム、硫酸ネオマイシン、PROCLIN(登録商標)300、ストレプトマイシン等の当技術分野で公知の1つ以上の保存剤を含有してもよい。上記の材料のいずれであっても、それを使用する場合は、それは、所望の効果又は機能を発揮させるのに十分な濃度又は量で存在する。
【0036】
採用するアッセイの性質によって、媒体は、例えば、標識がその一部を形成している信号生成システムの他のメンバーのような1以上の成分を含有していてもよい。
【0037】
信号生成システムは、1つ以上の成分を有していてもよいが、少なくとも1つの成分は、標識である。信号生成システムは、試料中の疎水性ハプテン被検体の存在に関連する信号を発生する。信号生成システムは、測定可能な芯がオウを生成するのに必要な全ての試薬を含有する。信号生成システムの他の成分は、デヴェロッパー溶液中に含まれていてもよく、これらに限らないが、例えば、基質、強化剤、活性化剤、化学発光化合物、コファクター、禁止剤、捕捉剤、金属イオン、及び信号生成物質の結合に必要な特異的な結合物質を含有していてもよい。信号生成システムの他の成分は、例えば、補酵素、酵素生成物と反応する物質、その他の酵素及び触媒である。信号生成システムは、外部手段によって、電磁放射の使用によって、望ましくは視覚的検査によって、検知可能な信号を与える。信号生成システムの例は、特許文献6に記載されているが、その関連する開示を参照により、ここに援用する。
【0038】
用語「標識」は、ポリ(アミノ酸)標識及び非ポリ(アミノ酸)標識を包含する。用語「ポリ(アミノ酸)標識部分」は、例えば、これらに限定されるわけではないが、酵素、抗体、ペプチド及び免疫原のようなタンパクを包含する。用語「非ポリ(アミノ酸)標識」は、タンパクではない標識を包含する。非ポリ(アミノ酸)標識は、直接に検知可能であるか又は検知可能な信号を生成する反応を通して検知することができる。非ポリ(アミノ酸)標識は、等方性でも非等方性でもよく、これは説明のためであって限定するものではないが、例えば、放射性同位体、発光化合物(これには、限定するものではないが、例えば、アクリジニウムエステル、蛍光化合物及び化学発光化合物が含まれる。)、触媒をコードするポリヌクレオチド、プロモーター、染料、補酵素、酵素基質、放射性基、及び増幅可能なポリヌクレオチド配列であってよい。幾つかの例においては、非ポリ(アミノ酸)標識は、例えば、放射性同位体であり、(例えば、アクリジニウムエステルのように)発光性であり、(例えば、混濁度又は比濁法により、結合していないラテックス粒子から結合して分離できる磁性粒子のような)微粒子及び化学発光ビーズであってよい。
【0039】
幾つかの既知のアッセイは、信号生成システム(sps)を使用し、そこでは、第一及び第二のspsメンバーを採用する。spsメンバーは、spsの一員の活性化が、例えば光等の、生成物を生じ、これがspsのもう1つのメンバーの活性化をするという点で、関連している。
【0040】
既知のアッセイの幾つかの実施態様では、spsメンバーは、例えば感光剤のような増感剤と、増感剤の活性化により生成される生成物によって活性化される化学発光組成物とを、含有する。第二のspsメンバーは、通常、結合した又は結合していないspsメンバーの量、即ち、検出すべき被検体に又は検出すべき被検体の量を反映する薬剤に結合し又は結合していないspsメンバーの量、に関連する検知可能な信号を生成する。本明細書に記述する原理に従う幾つかの例では、増感剤試薬又は化学発光試薬のどちらかは、本明細書に記述する原理に従って調製されたコンジュゲート(接合)試薬である。利用可能な光増感剤及び化学発光試薬の例は、特許文献7及び8に記載されたものである。これらの特許文献の関連する記載を参照により本明細書に援用する。
【0041】
これは説明のためであって限定するものではないが、特別な例において、誘起発光イムノアッセイを採用してもよい。誘起発光イムノアッセイは、特許文献7(Ullman)において言及されている。その開示を参照により本明細書に援用する。このアッセイでは、光増感剤試薬と化学発光試薬とを使用する。1つのアプローチでは、このアッセイは、光増感剤試薬として、粒子接合体の標識が光増感剤である標識−粒子接合体を使用する。化学発光試薬は、被検体の抗体からなる。被検体は、被検体の抗体に関して、被検体の類縁体を含有する粒子接合体と競合する。被検体が存在すると、化学発光化合物に近接してくる標識された粒子接合体分子の数がより少なくなる。従って、アッセイ信号が減少する。光増感剤は、一重項酸素を発生し、2つの標識が近接したときに、化学発光試薬を活性化する。活性化された化学発光試薬は、次いで、光を発生する。生成された光の量は、形成された錯体の量に関連し、それは、次いで、試料中に存在する被検体の量に関連する。
【0042】
アッセイ媒体中の種々の試薬の濃度は、一般に、被検体の対象の濃度範囲、アッセイの性質等により決定される。しかしながら、各試薬の最終濃度は、通常、対象の範囲に亘ってアッセイ感度を最適化するように、経験的に決定される。つまり、重要な被検体の濃度の変化から、正確に測定可能な信号の差異が提供されなければならない。通常は、信号生成システムや被検体の性質等を考慮して、種々の試薬の濃度が決定される。
【0043】
上述のように、試料と試薬とは媒体中に配合して提供される。媒体の添加の順序は、変わりうるが、ここで記述するアッセイフォーマットの幾つかの実施態様においては、或る優先順位が存在する。勿論、最も簡単な添加の順序は、全ての材料を同時に添加し、均質アッセイにおけるように、アッセイ媒体が信号に対して及ぼす影響を決定することである。代替法として、試薬のそれぞれ又は試薬の群を逐次的に合一してもよい。いくつかの実施態様では、以下に述べるように、各添加に引き続いてインキュベーションステップを行なってもよい。非均質アッセイでは、1つ以上のインキュベーションステップの後に洗浄ステップを採用してもよい。
【0044】
1以上のインキュベーション期間を、上述の種々の試薬の添加の間の間隔をも含めて、1以上の間隔をあけて、媒体に適用してもよい。試薬は、通常、試薬の種々の成分の結合が起きるのに十分な温度で十分な時間、インキュベートされる。アッセイを実行するのに、通常、中庸の温度が採用され、それは、通常、測定の間、一定温度好ましくは室温である。インキュベーション温度は、通常、例えば、約5℃〜約99℃、又は約15℃〜約70℃、又は約20℃〜約45℃である。インキュベーション時間は、例えば、約0.2秒〜24時間、又は約1秒〜約6時間、又は約2秒〜約1時間、又は約1分〜約15分である。時間の長さは、媒体の温度及び種々の試薬の結合速度による。測定の間の温度は、一般に、例えば、約10℃〜約50℃又は約15℃〜約40℃の範囲である。
【0045】
アッセイ方法の次のステップで、媒体について、被検体及びこの被検体の抗体を含有する錯体の存在について検査する。錯体の量は、試料中の被検体の量を示す。多くの実施態様において、媒体の試験には、媒体からの信号の検知が関与する。信号の量は、試料中の被検体の存在及び/又は量に関連する。検出の特別なモードは、spsの性質による。上記で議論したように、spsの標識が外部手段で検知可能な信号を生成する多くの方法がある。信号生成システムの活性化は、信号生成システムのメンバーの性質による。
【0046】
測定の間の温度は、一般に、約10℃〜約70℃、又は約20℃〜約45℃、又は約20℃〜約25℃である。1つのアプローチでは、被検体の既知の濃度を用いて標準曲線が形成される。調整器及び他の制御機器を使用してもよい。
【0047】
あらゆる標識から生成される発光又は光は、視覚的に、写真的に、化学光量的に、分光学的に、例えば、光電子増倍管やフォトダイオードを用いて又はその量を測定するのに便利な手段を用いて測定され、それが媒体中の被検体の量に関連付けられる。信号の存在及び/又は量の試験には、信号の検知をも含むが、これは、一般に、信号を読み取るステップにすぎない。信号は、通常、機器を用いて読み取られ、機器の性質は、信号の性質による。機器は、これらに限定されないが、例えば、分光光度計、蛍光光度計、吸収分光計、ルミノメーター及び化学発光計である。
【0048】
上述のように、補正ファクターを前以って決定するには、試料の一部について第一のアッセイ方法により、また、同じ試料の一部について参照方法により、試料中の疎水性ハプテン被検体の濃度の測定を行なう。これらの測定は、本明細書に記述する原理に従う補正式を前以って決定するのに使用した試料のそれぞれについて実施する。参照方法は、上述した異なる試料のそれぞれにおける疎水性ハプテン被検体の濃度の測定に採用された第一のアッセイ方法とは異なる、被検体の測定方法である。参照方法は、被検体又はその誘導体に特異的な特性、例えば質量分析法により測定されたM/Z比、を直接に測定する方法でなければならない。採用可能な参照方法には、これは説明のためであって限定するものではないが、質量分析法、例えば高速液体クロマトグラフィを始めとする液体クロマトグラフィ、電気泳動、顕微鏡検査法、マイクロ流体工学、分光学、化学的定量法、イムノアッセイ、及びこれらの2以上の組合せが包含される。
【0049】
少なくとも第一のアッセイ方法及び参照方法により、使用された異なる試料のそれぞれについて、疎水性ハプテン被検体の濃度が測定されると、第一のアッセイ方法及び参照方法の間のバイアスが決定される。このバイアスは、疎水性ハプテン被検体を含有する異なる試料のそれぞれについて、参照方法及び第一のアッセイ方法によって測定された疎水性ハプテン被検体の濃度の差異である。
【0050】
異なる試料のそれぞれにおける第一のアッセイ方法及び参照方法を用いた疎水性ハプテン被検体の濃度の測定に加えて、異なる試料のそれぞれにおける干渉物質の濃度についても測定が行なわれる。異なる試料中の干渉物質の濃度の測定は、干渉物質の測定のためのアッセイ方法を用いて実施することができる。アッセイ方法は、上述の第一のアッセイ方法及び参照方法のいずれから選んでもよい。分析される異なる試料は、本発明書に記載の原理に従って生成された補正式を、後々、大きな患者集団について遭遇する広範囲の干渉物質の分析に用いることができるように、干渉物質の広い濃度範囲に及ばなければならない。これは、例えば、補正式を生成するのに必要な数よりも多い数の試料を分析し、試料の中から、干渉物質の広範囲の濃度を提供する試料を選定することによって達成することができる。
【0051】
補正式は、異なる試料のそれぞれにおけるバイアス及び干渉物質の濃度を用いて回帰分析を行なうことにより決定される。回帰分析は、独立変数と1以上の従属変数との間の関係に焦点を当てるものである。回帰分析は、例えば、これらに限定されないが、線形回帰分析、多項式回帰分析、通常の最小二乗回帰分析、パッシング−バブロック回帰及びデミング回帰(重み付き又は非重み付き)等のいずれであっても、適切なものを、採用することができる。
【0052】
これは説明のためであって、限定するものではないが、或る例では、回帰分析は、直線回帰におけるように回帰線を形成し、回帰線の傾き及び切片から補正式を展開する。この例では、個々の異なる試料について、上述のようにして得られたバイアスを上述のようにして得られた干渉物質の濃度に対してプロットする。以下の関係式、即ち補正式、が導かれる。[An]=[mAn]+(a×[mIS]+b)。ここで、[An]は、未知の試料における疎水性被検体の実際の濃度であり、[mAn]は、未知の試料における疎水性被検体の測定濃度であり、[mIS]は、未知の試料中の干渉物質の測定濃度であり、aは、回帰線の傾きであり、bは、回帰線の切片である。従って、試験室等のユーザーは、補正式が既に定められているアッセイを用いて、上記の補正式により疎水性ハプテン被検体の濃度を正確に決定することができる。アッセイを実施した後、未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の測定濃度及び干渉物質の測定濃度を前記式に代入して、未知の試料中の疎水性ハプテン被検体の正確な濃度を得る。例えば、特定の疎水性ハプテン被検体の特定のアッセイについて、所定の補正式が、[An]=[mAn]+(0.22×[mIS]+(−0.28))と決定された。従って、[mAn]の値が36ng/mLであり、[mIS]の値が130ng/mLであれば、式は、[An]=36+(0.22×130+(−0.28))、即ち、[An]=36+28.6−28=36.6ng/mLとなる。
【0053】
(アッセイを実施するためのキット)
疎水性ハプテン被検体の測定のためのアッセイを簡便に実施するために有用なキット中には、特定のアッセイを実施するための試薬が存在する。一例では、キットは、被検体を分析するための試薬のパッケージされた組合せを含むが、その性質は、特定のアッセイフォーマットに依る。試薬は、例えば、非検体の結合パートナーを含んでいてもよい。試薬は、それぞれ個別の容器に入れられていてもよく、種々の試薬が、その交差反応性及び安定性に応じて、1以上の容器中に合一されていてもよい。キットは、更に、追加結合メンバーや補助試薬等の、アッセイを実施するためのパッケージされた、他の個別の試薬を含んでいてもよい。
【0054】
キットにおける種々の試薬の相対量は、本発明の方法中に起きなければならない反応を実質的に最適化する試薬の濃度を得、アッセイの感度を実質的に最適化するために、広範囲に変化させることができる。適切な条件下では、キット中の1以上の試薬は、通常凍結乾燥され賦形剤を含んだ乾燥粉末として提供することができ、この乾燥粉末は、溶解により、方法又はアッセイを実行するのに適切な濃度を有する試薬溶液となる。キットは、更に、方法又はアッセイについての説明文書及び上述した本発明の実施態様に従った補正式を含んでいてもよい。
【0055】
本明細書において、用語「少なくとも」は、特定の項目の数がそこで述べられた数と同じかそれより多いことを意味する。本明細書において、用語「約」は、そこで述べられた数がプラスマイナス10%異なり得ることを意味する。例えば、「約5」は、4.5〜5.5の範囲を意味する。
【0056】
用語「第一の」及び「第二の」は、全く任意のものであり、認定された項目の間の順序や順位付け、それらの項目の添加の順序を示唆することを何ら意図していない。本明細書において、第一の及び第二の使用の例には、例えば、第一のアッセイ方法及び第二のアッセイ方法並びに第一のspsメンバー及び第二のspsメンバーが挙げられる。
【0057】
以下の実施例は、限定のためではなく説明のために、本発明の具体的な実施態様を記載したものであり、本発明の範囲を記述することを意図するものであって限定することを意図していない。本明細書に記載された部及び百分率は、特に指定がなければ、容量に基づく。
【実施例】
【0058】
(補正式の決定)
各試料がそれぞれ異なる個人から得られた11の異なる血清試料からなるセットを使用した。各試料の一部について、シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド社(ニューアーク)から入手したイムノアッセイを用いて、25(OH)ビタミンDの濃度を分析した。イムノアッセイは、DIMENSION(登録商標)クリニカルケミストリシステム(シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド社)により実施した。DIMENSION(登録商標)EXL(登録商標)25(OH)ビタミンDトータルアッセイ(VitD)は、発光酸素チャネリングイムノアッセイ法(LOCI)に基づく均質競合化学発光イムノアッセイである。このアッセイは、血清及び血漿の両方における全25(OH)濃度(25(OH)D
2及び25(OH)D
3)を測定する。LOCI VitD構成要素には、遊離試薬、2つの合成ビーズ試薬及びビオチン化モノクローナル抗体が含まれる。第一のビーズ試薬(センシビーズ)は、特許文献9〜12に記載された方法に類似の方法を用いて調製されたもので、ストレプトアヴィジンで被覆され、感光性染料を含有していた。感光剤は、ビス(トリヘキシル)−シリコン−t−ブチルフタロシアニンであった。第二のビーズ試薬(ケミビーズ)は、特許文献13に記載された手順に類似の手順を用いて調製されたもので、25(OH)ビタミンD
3類似体で被覆され、化学発光染料を含有していた。化学発光化合物は、ユーロピウムでキレートした2−(4−(N,N−ジ−テトラデシル)アニリノ−3−フェニルチオキセンであった。試料を遊離試薬(アニリノナフタレンスルホン酸(ANS))でインキュベートして、それらの結合タンパクからビタミンD分子を遊離させた。次いで、反応混合物をビオチン化抗体でインキュベートして、25(OH)ビタミンD/ビオチン化抗体錯体を形成させた。ケミビーズを添加して過剰の遊離のビオチン化抗体を除去し、次いで、センシビーズを添加して、ケミビーズ類似体/抗体−ビオチン/ストレプトアヴィジン−センシビーズ錯体を形成させた。反応混合物に680nmで照射するとセンシビーズから一重項酸素が発生し、このものは、ケミビーズ中に拡散して、化学発光反応を引き起こした。その結果生じた信号を612nmで測定したところ、試料中の全25(OH)ビタミンの濃度に反比例していた。
【0059】
各試料の他の部分について、参照方法として、ID−LC/MS/MS(同位体希釈液体クロマトグラフィ/質量分析/質量分析)を用いてビタミンD濃度を測定した。
【0060】
各試料の他の部分について、シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド社からの全コレステロール濃度アッセイ(No.DF27)により、製造者のプロトコルに従って、コレステロール濃度を分析した。アッセイにおいて、コレステロールエステラーゼ(CE)がコレステロールエステルの加水分解を触媒して遊離のコレステロールを生成し、このものは、前以って存在していた遊離のコレステロールと共に、コレステロールオキシダーゼによって触媒される反応において酸化され、コレスト−4−エン−3−オン及び過酸化水素を形成した。このようにして形成された過酸化水素は、西洋わさびペルオキシダーゼ(HPO)の存在下で、N,N−ジエチルアニリンーHCl/4−アミノアンチピリン(DEA−HCl/AAP)を酸化するのに使用され、540nmで吸収を示す発色団を生成する。酸化されたDEA−HCl/AAPによる吸収は、全コレステロール濃度に正比例し、ポリクロマチック(452nm、540nm、700nm。nmは、ナノメーターを表わす。)終点法を用いて測定される。
【0061】
イムノアッセイ法を用いて異なる各試料から得られたビタミンD濃度を、参照方法を用いて異なる各試料から得られたビタミンD濃度から差し引いて、異なる各試料についてのバイアスが得られる。異なる各試料についてのバイアスを異なる各試料についてのコレステロール濃度に対してプロットした。結果を
図1に示す。ここで、[vitD]は、ビタミンDの濃度、LCMSは、参照方法を用いて測定されたビタミンDの濃度、DM EXLは、イムノアッセイを用いて測定されたビタミンDの濃度、mgはミリグラム、dLはデシリットル、yは目的変数、xは、説明変数であり、R
2は、相関係数の平方である。
【0062】
上述の結果から、以下の補正式が導かれる。
[An]=[mAn]+(a×[mIS]+b)
式中、[An]は、未知の試料中の実際のビタミンD濃度、[mAn]は、未知の試料中の測定ビタミンD濃度、[mIS]は、未知の試料中の測定コレステロール濃度、aは、回帰線の傾きで、この例では0.2213、bは、回帰線の切片で、この例では−27.966である。従って、補正式は、
[実際のビタミンD]=[測定ビタミンD]+(0.2213×[コレステロール]−27.966)となる。
【0063】
(補正式の証明)
上記決定された補正式の証明は、ビタミンDの測定濃度及び上述の補正式を用いて、実際のビタミンD濃度について、バイアスを計算することによって実行される。異なる試料のそれぞれについて、コレステロールに対してバイアスをプロットする。結果を
図2に示す。ここで、3E−5は、3×10
−5を意味する。これから分かるとおり、試料中の実際のビタミンD濃度の決定のために補正式を適用した後では、バイアスとコレステロールの濃度との間の相関は、もはや存在しない。
【0064】
図3及び
図4を参照して分かるように、補正式の適用後は、相関係数(イムノアッセイを用いて測定されたビタミンD濃度とID−LCMS/MS法を用いて測定されたビタミンD濃度との間の相関におけるデータのばらつき)が改善される。
図3及び
図4において、Rは相関係数、ngはナノグラム、mLはミリリットルである。
【0065】
本明細書で引用された全ての刊行物及び特許出願は、参照により、各刊行物及び特許出願が参照により援用されると明確に個別に指示されていたように、本明細書に援用される。
【0066】
上述の発明は、図示及び例示により、理解を明快にするために、幾分詳細に記述したけれども、本発明の教示に照らせば、添付された請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、変更及び修飾をなし得ることは、当業者にとって、明らかである。更に、上述の記載においては、本発明を完全に理解するために、説明上、特定の命名を使用した。しかしながら、本発明を実行するために、その特定の詳細が必要ではないことは、当業者に明らかである。従って、本発明の特定の実施態様についての上記記述は、図示及び説明のために提供されたものである。それらは、網羅的なものではなく、開示された厳密な形態に発明を限定するものでもない。上述の教示に鑑みて、多くの修飾及び変更が可能である。実施態様は、本発明の原理及びその現実の適用を説明し、それにより当業者が本発明を実施できるようにするために選択され記載されたものである。