(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574848
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】CD19結合ドメインを含むキメラ抗原レセプター(CAR)
(51)【国際特許分類】
C07K 14/725 20060101AFI20190902BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20190902BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20190902BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20190902BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20190902BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20190902BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
C07K14/725ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/13
C12N5/10
A61K35/17 A
A61P35/02
【請求項の数】24
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-546104(P2017-546104)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公表番号】特表2018-508215(P2018-508215A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】GB2016050574
(87)【国際公開番号】WO2016139487
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】1503742.7
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507299817
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】プーレ, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】メッカオウイ, レイラ
(72)【発明者】
【氏名】アムロリア, パーシス
(72)【発明者】
【氏名】ゴラシアン, サラ
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー, アン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ゴードン
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/184143(WO,A1)
【文献】
Sci. Transl. Med.,2014年,vol.6, no.224,pp.224ra25(1-10)
【文献】
J. Clin. Oncol.,2015年 2月,vol.33, no.6,pp.540-549
【文献】
N. Engl. J. Med.,2014年,vol.371, no.16,pp.1507-1517
【文献】
Lancet,2015年 2月,vol.385, no.9967,pp.488-490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/725
C07K 16/28
UniProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)以下の配列:
【化38】
を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、および
b)以下の配列:
【化39】
を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含むCD19結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記CD19結合ドメインが、配列番号7として示される配列を有するVHドメインおよび/もしくは配列番号8として示される配列を有するVLドメインまたは少なくとも95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記CD19結合ドメインが、scFvをVH−VL方向で含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項4】
前記CD19結合ドメインが、配列番号9として示される配列または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項3に記載のCAR。
【請求項5】
CD19結合ドメインおよび膜貫通ドメインが、スペーサーによって連結されており、任意選択で、前記スペーサーが、以下:ヒトIgG1 Fcドメイン、IgG1ヒンジまたはCD8ストークの1つを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のCAR。
【請求項6】
細胞内T細胞シグナル伝達ドメインも含み、任意選択で、前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、以下のエンドドメイン:CD28エンドドメイン、41BBエンドドメイン、OX40エンドドメインおよびCD3ゼータエンドドメインの1つまたは複数を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のCAR。
【請求項7】
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、
(i)前記41BBエンドドメインおよび前記CD3ゼータエンドドメイン;
(ii)前記OX40エンドドメインおよび前記CD3ゼータエンドドメイン;または
(iii)以下のエンドドメイン:CD28エンドドメイン、OX40およびCD3ゼータエンドドメインのすべて
を含む、請求項6に記載のCAR。
【請求項8】
配列番号10から15のいずれかとして示される配列を含むか、または少なくとも90%の配列同一性を有するが、i)CD19を結合し、ii)T細胞シグナル伝達を誘導する能力を保持するそのバリアントを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のCAR。
【請求項9】
T細胞によって発現され、CD19発現細胞を標的とするために使用される場合、
a)以下の配列:
【化40】
を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、および
b)以下の配列:
【化41】
【化42】
を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含むCD19結合ドメインを含むCARを発現しているT細胞によって生じるIFNγ放出よりも低い、CD19発現標的細胞によるIFNγ放出をもたらす、請求項1〜8のいずれかに記載のCAR。
【請求項10】
前記CDRがヒトまたはヒト化フレームワークにグラフトされている、請求項1〜9のいずれかに記載のCAR。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のCARをコードする核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含むベクター。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のCARを含む細胞。
【請求項14】
前記細胞がT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
請求項13に記載の複数の細胞を含む細胞組成物。
【請求項16】
請求項12に記載のベクターで細胞を形質導入するか、または請求項12に記載のベクターを細胞にトランスフェクトするステップを含む、請求項13に記載の細胞を作製するための方法。
【請求項17】
請求項12に記載のベクターで被験体由来の細胞の試料をex vivoで形質導入するか、または請求項12に記載のベクターを被験体由来の細胞の試料にex vivoでトランスフェクトするステップを含む、請求項15に記載の細胞組成物を作製するための方法。
【請求項18】
請求項13に記載の細胞または請求項15に記載の細胞組成物を、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項19】
がんの処置において使用するための、請求項13に記載の細胞。
【請求項20】
前記がんがB細胞悪性腫瘍である、請求項19に記載の使用のための細胞。
【請求項21】
がんの処置において使用するための、請求項15に記載の細胞組成物。
【請求項22】
前記がんがB細胞悪性腫瘍である、請求項21に記載の使用のための細胞組成物。
【請求項23】
がんの処置において使用するための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記がんがB細胞悪性腫瘍である、請求項23に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bリンパ球抗原CD19(表面抗原分類19)を結合するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。そのようなCARを発現しているT細胞は、B細胞白血病およびリンパ腫などのがん性疾患の処置において有用である。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体
慣例的に、抗原特異的T細胞は、標的抗原に対して天然で特異的な末梢血液T細胞の選択的拡大によって生成されている。しかし大抵のがん抗原に対して特異的な多くのT細胞を選択および拡大させることは困難であり、不可能であることも多い。組み込みベクターでの遺伝子治療は、この問題への解決策を提供している:キメラ抗原受容体(CAR)のトランスジェニック発現は、任意の表面抗原に特異的な多くのT細胞が末梢血液T細胞の混合集団のex vivoウイルスベクター形質導入によって容易に生成できるようにする。
【0003】
これらの分子の最も一般的な形態は、標的抗原を認識するモノクローナル抗体由来の1本鎖可変断片(scFv)がスペーサーおよび膜貫通ドメインを介してシグナル伝達エンドドメインに融合された融合体である。そのような分子は、scFvによるその同族標的の認識に応答してT細胞の活性化を生じる。T細胞がそのようなCARを発現すると、それらは、標的抗原を発現している標的細胞を認識し、死滅させる。いくつかのCARは腫瘍関連抗原に対して開発され、そのようなCAR発現T細胞を使用する養子移入手法は種々のがんの処置のために現在臨床試験中である。しかし今日までCAR治療の主な臨床調査および応用可能性は、B細胞悪性腫瘍のための処置としてのものである。
【0004】
CD19に対して向けられたCAR
CD19は、B細胞分化の最初期に発現されるB細胞抗原であり、プラズマ細胞への最終B細胞分化でだけ失われる。それによりCD19は多発性骨髄腫を除くすべてのB細胞腫瘍において発現されている。それは、他の造血集団または非造血細胞では発現されず、したがってこの抗原を標的化することは、骨髄または非造血性器官に毒性をもたらさないはずである。有効なCD19 CAR T細胞治療はB細胞無形成を生じるが、結果として生じる低ガンマグロブリン血症はプールした免疫グロブリンで処置できることから、正常なB細胞コンパートメントの喪失はリンパ系悪性腫瘍を処置する場合には許容可能な毒性と考えられている。
【0005】
したがってCD19は、魅力的なCAR標的である。今日までCAR分野の主な臨床的注目点は、表1に要約のとおり、難治性B細胞がんにおいてCD19を標的化する研究である。
【0006】
表1に概説のとおりさまざまな設計のCARが、さまざまな施設においてCD19に対して検査された:
【表1】
【0007】
大部分の研究は、ハイブリドーマfmc63由来のscFvに基づくCD19 CARを検査した。最も有望なのは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の処置においてであった。
【0008】
CD19に対するCARでの臨床経験
CD19指向性CAR治療は、ALLにおいて最も有効であると考えられている。ALLにおける最初の研究は、Memorial Sloane Kettering(Brentjensら(2013年)Leukemia. Sci. Transl. Med. 5巻、177ra38)およびペンシルベニア大学のグループによって2013年春に発表された。近年の研究の最新報告が最近行われた(Maudeら(2014年)N. Engl. J. Med. 371巻、1507〜1517頁)。ここで25歳未満の患者25名およびこの年齢を超える5名が処置された。90%が1ヵ月で完全奏効を達成し、28名の内22名の評価可能例がMRD陰性状態を達成し、6ヵ月の無症候生存率は67%であった。患者15名は、研究後さらなる治療を受けなかった。
【0009】
Brentjensら(上記)は、成人設定で、ALL患者5名(難治性再発2名、MRD陽性疾患2名およびMRD陰性1名であった)をSJ25C1ハイブリドーマ由来のscFvおよびCD28共刺激ドメインを組み込んだCD19 CARを発現するようにレトロウイルスで形質導入した自己T細胞で処置した。これら全員がディープ分子的寛解を達成し、これらの患者の内4名が同種SCTを受けられるようにした。これは応答の持続性の評価を妨げるが、CAR T細胞は注入3〜8週間後についてだけ血液または骨髄において検出可能であった。移植されなかった患者は、CD19+疾患を90日で再発した。次いで、Davilaら((2014年). Sci. Transl. Med. 6巻、224ra25)は、このコホートを更新した。16名の成人患者の内14名は、救援化学療法およびシクロホスファミド前処置(conditioning)にもかかわらず、CAR T細胞注入の時点で検出可能な疾患を有した。救援化学療法後に検出可能な残存疾患の形態学的証拠を有する患者9名の内7名の患者を含んで、16名の内14名は、数値の回復を伴ってまたは伴わずに完全寛解を達成した。患者16名の内12名はMRD陰性を達成し、これにより、発表の時期までに7名が同種移植を受けることが可能になった。非移植患者8名の内4名を含む一部の患者において応答は持続性であり最長24ヵ月の追跡調査で形態学的寛解を継続したが、このコホートについての生存率曲線はまだ安定していない。
【0010】
主にALLを有する小児および若年成人患者のコホートでの近年公表された研究は、その結果の最初の全例解析を提供している。これは、予定用量のCAR T細胞を受けていない患者を排除することによって内在するバイアスを除くことに役立ち得る(Leeら(2014年)Lancet. doi:10.1016/S0140-6736(14巻)61403〜3頁)。患者21名は、CD28ドメイン含有第2世代CARで処置された。2名を除くすべての患者は、予定用量のT細胞を受けており、難治性または複数回再発ALLを有する者にこの処置を送達する実行可能性を強調している。この研究は、以下の有効性:ALLを有する者の67%が完全寛解達成および60%がMRD陰性状態を達成していることを示している。
【0011】
CD19 CAR治療の免疫毒性
サイトカイン放出症候群(CRS)は、軽度から低血圧および呼吸不全を伴う多臓器不全までの範囲の一連の炎症性症状を包含する。ある程度のCRSは、CD19 CAR T細胞で処置された患者において一般的に生じる。近年のコホートにおいて処置された患者のおよそ30%(21/73)は、ある程度のCRSを示した(Daviliaら(2014年)上記;Leeら(2014年)上記;Kochenderfer(2014年)J. Clin. Oncol. Off. J. Am. Soc. Clin. Oncol.. doi:10.1200/JCO.2014.56.2025)。CRSは、ブリナツモマブ、CD19およびCD3の両方を認識する二重特異性組換え1本鎖抗体で処置された患者においても見られた。CRSは、典型的にはCAR T細胞注入の5〜21日後に生じる。
【0012】
CRSは、生命を危うくする場合があり、集中治療環境での処置を必要とする。CRSは、血清サイトカインレベルの上昇と関連する。最も顕著に上昇するサイトカインは、IL−6、IL−10およびインターフェロンガンマ(IFNγ)である。重度のCRSの臨床所見(発熱、肝脾腫、凝固障害および高フェリチン血症)は、例えばT細胞に先天性欠損を有する患者において見出されるマクロファージ活性化症候群(MAS)に類似している。これは、共通の免疫病理学的プロセスが関与していることを示唆している。現在、どの細胞型(CAR T細胞、死腫瘍細胞または局所活性化マクロファージ)が重要なサイトカイン、具体的にはIL−6の産生に関与しているのかは明らかでない。しかし、MASにおける重要な開始因子は大量のインターフェロンガンマの放出である(Lopez-Alvarezら(2009年). Clin. Vaccine Immunol. CVI 16巻、142〜145頁)。
【0013】
神経毒性
施設にわたるCD19 CAR研究における多数の患者は、失語症から鈍麻、せん妄および発作の多様な重症度で一過性の神経毒性を発症した(Daviliaら(2014年)上記)。これは、ALLを有する患者に限定されていると考えられ、同様の症候群がブリナツモマブ治療後に確認された。脳画像は正常であると考えられる。神経毒性は、高レベルの全身性サイトカインが血液脳関門を通過することを反映し得る。
【0014】
持続性、再発およびT細胞疲弊
持続的応答は、循環CAR形質導入T細胞のさらに高いピークレベル、およびB細胞無形成の持続期間と相関すると考えられる。CD19疾患を再発した患者を除いて、再発は一般に循環CAR T細胞の喪失および正常B細胞の回復と関連した。
【0015】
T細胞疲弊は、多くの慢性感染症およびがんの間に生じるT細胞機能障害の状態である。それは、不十分なエフェクター機能、抑制性受容体の発現の持続および機能性エフェクターまたはメモリーT細胞のものとは異なる転写状態によって定義される。疲弊は、感染および腫瘍の最適な管理を妨げる。近年、疲弊T細胞の機能的および表現型プロファイルのさらに明確な臨床像が、抑制性受容体プログラム死1(PD−1;PDCD1としても公知)、重要な特性である活性化T細胞の負の制御因子、の発現と共に明らかになった(Dayら(2006年)Nature 443巻、350〜354頁)。
【0016】
CD19 CAR研究での応答は、長期間の高レベルでのT細胞の持続が持続的応答をもたらすために重要であると考えられることを示唆している。T細胞疲弊を低減するCD19 CARは、臨床応答の改善を生じ得る。
したがって、上記の不利益と関連しない、CD19に対して向けられた代替的CARに対する必要がある。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
a)以下の配列:
【化38】
を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、および
b)以下の配列:
【化39】
を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含むCD19結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
(項目2)
前記CD19結合ドメインが、配列番号7として示される配列を有するVHドメインおよび/もしくは配列番号8として示される配列を有するVLドメインまたは少なくとも95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目1に記載のCAR。
(項目3)
前記CD19結合ドメインが、scFvをVH−VL方向で含む、項目1に記載のCAR。
(項目4)
前記CD19結合ドメインが、配列番号9として示される配列または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目3に記載のCAR。
(項目5)
前記CD19結合ドメインが、ヒト抗体フレームワークにグラフトされた項目1に定義された6個のCDRを含む、項目1に記載のCAR。
(項目6)
CD19結合ドメインおよび膜貫通ドメインが、スペーサーによって連結されている、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目7)
前記スペーサーが、以下:ヒトIgG1 Fcドメイン、IgG1ヒンジまたはCD8ストークの1つを含む、項目6に記載のCAR。
(項目8)
前記スペーサーが、IgG1ヒンジまたはCD8ストークを含む、項目7に記載のCAR。
(項目9)
細胞内T細胞シグナル伝達ドメインも含む、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目10)
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、以下のエンドドメイン:CD28エンドドメイン、41BBエンドドメイン、OX40エンドドメインおよびCD3ゼータエンドドメインの1つまたは複数を含む、項目9に記載のCAR。
(項目11)
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、前記41BBエンドドメインおよび前記CD3ゼータエンドドメインを含む、項目10に記載のCAR。
(項目12)
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、前記OX40エンドドメインおよび前記CD3ゼータエンドドメインを含む、項目10に記載のCAR。
(項目13)
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、以下のエンドドメイン:CD28エンドドメイン、OX40およびCD3ゼータエンドドメインのすべてを含む、項目10に記載のCAR。
(項目14)
配列番号10から15のいずれかとして示される配列を含むか、または少なくとも80%の配列同一性を有するが、i)CD19を結合し、ii)T細胞シグナル伝達を誘導する能力を保持するそのバリアントを含む、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目15)
T細胞によって発現され、CD19発現細胞を標的とするために使用される場合、
a)以下の配列:
【化40】
を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、および
b)以下の配列:
【化41】
【化42】
を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含むCD19結合ドメインを含むCARを発現しているT細胞によって生じるIFNγ放出よりも低いCD19発現標的細胞によるIFNγ放出をもたらす、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目16)
ヒトまたはヒト化フレームワークにグラフトされている、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目17)
前記項目のいずれかに記載のCARをコードする核酸配列。
(項目18)
項目17に記載の核酸配列を含むベクター。
(項目19)
項目1から項目16のいずれかに記載のCARを含む細胞。
(項目20)
T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である、項目19に記載の細胞。
(項目21)
項目19または項目20に記載の複数の細胞を含む細胞組成物。
(項目22)
項目18に記載のベクターで細胞を形質導入するか、または項目18に記載のベクターを細胞にトランスフェクトするステップを含む、項目19または項目20に記載の細胞を作製するための方法。
(項目23)
項目18に記載のベクターで被験体由来の細胞の試料をex vivoで形質導入するか、または項目18に記載のベクターを被験体由来の細胞の試料にトランスフェクトするステップを含む、項目21に記載の細胞組成物を作製するための方法。
(項目24)
項目19もしくは20に記載の細胞または項目21に記載の細胞組成物を、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
(項目25)
項目19もしくは項目20に記載の細胞、項目21に記載の細胞組成物または項目24に記載の医薬組成物を被験体に投与するステップを含む、がんを処置するための方法。
(項目26)
前記被験体由来の細胞を、項目18に記載のベクターでex vivoで形質導入するか、または項目18に記載のベクターを該被験体由来の細胞にトランスフェクトし、次いでトランスフェクトした細胞を該被験体に戻し投与するステップを含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記がんが、B細胞悪性腫瘍である、項目25または項目26に記載の方法。
(項目28)
がんを処置することにおける使用のための項目24に記載の医薬組成物。
(項目29)
がんを処置するための医薬組成物の製造における項目20または項目21に記載の細胞の使用。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Brentjensら(2013年)Leukemia. Sci. Transl. Med. 5巻、177ra38
【非特許文献2】Maudeら(2014年)N. Engl. J. Med. 371巻、1507〜1517頁
【非特許文献3】Davilaら((2014年). Sci. Transl. Med. 6巻、224ra25)
【非特許文献4】Leeら(2014年)Lancet. doi:10.1016/S0140-6736(14巻)61403〜3頁
【非特許文献5】Kochenderfer(2014年)J. Clin. Oncol. Off. J. Am. Soc. Clin. Oncol.. doi:10.1200/JCO.2014.56.2025
【非特許文献6】Lopez-Alvarezら(2009年). Clin. Vaccine Immunol. CVI 16巻、142〜145頁
【非特許文献7】Dayら(2006年)Nature 443巻、350〜354頁
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1-1】注釈を付け、番号付けした(a)CAT19 VH配列、(b)CAT19 VL配列。 VHおよびVLの配列はChothia番号付けを使用して番号付けられている。フレームワーク領域およびCDR領域は示されている。挿入も示されている。
【
図1-2】注釈を付け、番号付けした(a)CAT19 VH配列、(b)CAT19 VL配列。 VHおよびVLの配列はChothia番号付けを使用して番号付けられている。フレームワーク領域およびCDR領域は示されている。挿入も示されている。
【0019】
【
図2】CD19陽性細胞の組換えCAT19での染色。 SupT1細胞は、通常CD19を発現しないが、この研究では発現するように操作した。CAT19 VH配列およびVL配列を、マウスIgG2a重鎖フォーマットおよびマウスカッパ軽鎖フォーマット、両方とも哺乳動物発現プラスミド中に、クローニングした。293T細胞は、重鎖および軽鎖の両方を同時にトランスフェクトされ、生じた抗体をプロテインAで精製した。SupT1細胞およびSupT1.CD19細胞を、この組換え抗体(または単なる293T上清)で染色し、蛍光コンジュゲート抗マウス二次抗体でさらに染色した。組換えCAT19抗体の結合は、フローサイトメトリーによって容易に検出し得る。
【0020】
【
図3-1】CAT19 scFvでのCD19陽性細胞の染色。 CAT19のVHおよびVLを、それらがscFvを形成し、それによりVHおよびVLが(SGGGGS)
3リンカーによって分けられるようにクローニングした。CAT scFvをVH−VL方向およびVL−VH方向の両方で用いて、2種のscFvを生成させた。さらに、抗CD19抗体fmc63および4g7から、いずれかの方向でscFvが生成された。(a)scFv表示フォーマット:これは、レトロウイルスベクターであり、それによりscFvは、CD8膜貫通ドメインおよびCD8エンドドメインの最初の12残基を有するヒトIgG1 Fcスペーサーにクローニングされている。これは順にFMD−2AペプチドTaVおよび切断型ヒトCD34とインフレームである。このようにscFvを、細胞の表面上に表示させ、導入遺伝子発現を、CD34を別々に検出することによって調節できる。6個の異なるscFvフォーマットのいずれかを発現するSupT1細胞が生成され、これらの細胞を組換えヒト切断型CD19−マウスIgG2a Fc融合体および抗CD34で染色した;(b)fmc63 VH−VLおよびVL−VHフォーマットでの染色;(c)4g7 VH−VLおよびVL−VHフォーマットでの染色;ならびに(d)CAT19 VH−VLおよびVL−VHフォ−マットでの染色。驚くべきことにCAT19 VH−VL scFvは良好に結合し、一方VL−VH scFvは検出可能な結合が有意に少なかった。
【
図3-2】CAT19 scFvでのCD19陽性細胞の染色。 CAT19のVHおよびVLを、それらがscFvを形成し、それによりVHおよびVLが(SGGGGS)
3リンカーによって分けられるようにクローニングした。CAT scFvをVH−VL方向およびVL−VH方向の両方で用いて、2種のscFvを生成させた。さらに、抗CD19抗体fmc63および4g7から、いずれかの方向でscFvが生成された。(a)scFv表示フォーマット:これは、レトロウイルスベクターであり、それによりscFvは、CD8膜貫通ドメインおよびCD8エンドドメインの最初の12残基を有するヒトIgG1 Fcスペーサーにクローニングされている。これは順にFMD−2AペプチドTaVおよび切断型ヒトCD34とインフレームである。このようにscFvを、細胞の表面上に表示させ、導入遺伝子発現を、CD34を別々に検出することによって調節できる。6個の異なるscFvフォーマットのいずれかを発現するSupT1細胞が生成され、これらの細胞を組換えヒト切断型CD19−マウスIgG2a Fc融合体および抗CD34で染色した;(b)fmc63 VH−VLおよびVL−VHフォーマットでの染色;(c)4g7 VH−VLおよびVL−VHフォーマットでの染色;ならびに(d)CAT19 VH−VLおよびVL−VHフォ−マットでの染色。驚くべきことにCAT19 VH−VL scFvは良好に結合し、一方VL−VH scFvは検出可能な結合が有意に少なかった。
【0021】
【
図4-1】検査したさまざまな世代のCARおよび出発CAR。 (a)抗原結合ドメイン(最も一般的にはscFv)、スペーサードメイン、膜貫通ドメインおよび1つまたはいくつかのシグナル伝達ドメインを含む典型的CARフォーマット。(b)第1世代CARは活性化シグナルを伝達し、それらのエンドドメインはFcガンマ受容体エンドドメインまたはCD3ゼータエンドドメインのいずれか由来である。(c)第2世代受容体は2種のシグナルを伝達し、それらのエンドドメインはCD3ゼータのエンドドメインに連結された共刺激ドメインを含む。共刺激ドメインは、通常、CD28のエンドドメイン、OX40のエンドドメインまたは41BBのエンドドメインのいずれかである。(d)第3世代受容体は3種のシグナルを伝達し、それらのエンドドメインはCD28エンドドメインと41BBエンドドメインとCD3ゼータエンドドメインとの、またはCD28エンドドメインとOX40エンドドメインとCD3ゼータエンドドメインとの融合体を含む。(e)VH−VL方向でscFv、CD8ストークスペーサーおよび41BBゼータから構成される第2世代エンドドメインを含む、最初に検査したCAT19に基づくCAR(カンパナ(Campana)CARフォーマット)。
【
図4-2】検査したさまざまな世代のCARおよび出発CAR。 (a)抗原結合ドメイン(最も一般的にはscFv)、スペーサードメイン、膜貫通ドメインおよび1つまたはいくつかのシグナル伝達ドメインを含む典型的CARフォーマット。(b)第1世代CARは活性化シグナルを伝達し、それらのエンドドメインはFcガンマ受容体エンドドメインまたはCD3ゼータエンドドメインのいずれか由来である。(c)第2世代受容体は2種のシグナルを伝達し、それらのエンドドメインはCD3ゼータのエンドドメインに連結された共刺激ドメインを含む。共刺激ドメインは、通常、CD28のエンドドメイン、OX40のエンドドメインまたは41BBのエンドドメインのいずれかである。(d)第3世代受容体は3種のシグナルを伝達し、それらのエンドドメインはCD28エンドドメインと41BBエンドドメインとCD3ゼータエンドドメインとの、またはCD28エンドドメインとOX40エンドドメインとCD3ゼータエンドドメインとの融合体を含む。(e)VH−VL方向でscFv、CD8ストークスペーサーおよび41BBゼータから構成される第2世代エンドドメインを含む、最初に検査したCAT19に基づくCAR(カンパナ(Campana)CARフォーマット)。
【0022】
【
図5】fmc36 CARに対するCAT19 CAR機能のin vitro比較。 5名の異なるドナー由来の初代ヒトT細胞をカンパナフォーマットでのCAT19 CARまたはカンパナCAR自体をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。これらのT細胞を次いで種々のアッセイにおいて使用した。(a)クロム放出アッセイをSupT1細胞に対して実施した。これらの細胞はCD19陰性である。いずれのCAR T細胞もこの細胞株に対して応答しなかった(点線)。クロム放出アッセイをSupT1.CD9に対して実施した。両方のCARは、この細胞株に対して同様に実施した(実線)。次に脱顆粒アッセイをNT T細胞、fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞のいずれかを使用してSupT1またはSupT1.CD19のいずれかに対して実施した。(b)CD4+T細胞および(c)CD8+T細胞でゲーティングしたデータが示されている。脱顆粒はCAR19 CAR T細胞で増加した。(d)増殖は、トリチウム化チミジン取り込みを使用して概算した。NT、fmc63 CAR T細胞、CAT19 CAR T細胞を、SupT1.CD19に対して検査した。この実験では無関係なCAR標的化GD2も検査した。CAR19 CAR T細胞で増殖が増加する傾向があった。(e)SupT1またはSupT1.CD19細胞に対するチャレンジ24時間後のNT T細胞、fmc63 CAR T細胞、CAT19 CAR T細胞またはGD2 CAR T細胞のいずれかからのインターフェロンガンマ放出。CD19+標的でチャレンジした場合、CAT19 CAR T細胞は、fmc63 CAR T細胞よりも有意に少ないIF−Gを産生した。
【0023】
【
図6-1】CAT19有効性のin vivoモデル。 (a)in vivoモデルについての実験設定の概要。NSGマウスに尾静脈注射を介してRaji.FLuc細胞2.5x10
5個を注射した。24時間後、NT初代ヒトT細胞またはfmc63 CARで形質導入したT細胞またはCAT19 CARで形質導入したT細胞のいずれかの4x10
6個を、尾静脈を介して投与した。腫瘍応答を生物発光画像化によって順次測定した。尾静脈血を生着および血清サイトカインのために4日目にサンプリングした。動物を11日目に選別し、CAR T細胞の持続性および腫瘍負荷について組織を研究した。(b)さまざまなマウスコホートの10日目の生物発光画像化。広範囲の疾患がNT T細胞で処置されたマウスの骨盤、脊椎、肋骨、頭蓋および脾臓において見られた一方で、CAT19 CAR T細胞またはfmc63 CAR T細胞のいずれかを受けたマウスにおいてはわずかなシグナルが明らかである。(c)さまざまなマウスコホートからの経時的な平均化された定量的生物発光シグナル。Y軸は対数目盛りであり、明白な差異がNT T細胞を受けたマウスとCAR T細胞を受けたマウスとの間のシグナル蓄積において見られる。シグナル蓄積の差異は、fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞を受けたマウスにおいては見られない。(d)実験終了時のマウス由来骨髄においてフローサイトメトリーで決定された腫瘍負荷。実質的にfmc63またはCAT19 CAR T細胞のいずれかを受けたマウスの骨髄においてRaji細胞は検出できなかった。
【
図6-2】CAT19有効性のin vivoモデル。 (a)in vivoモデルについての実験設定の概要。NSGマウスに尾静脈注射を介してRaji.FLuc細胞2.5x10
5個を注射した。24時間後、NT初代ヒトT細胞またはfmc63 CARで形質導入したT細胞またはCAT19 CARで形質導入したT細胞のいずれかの4x10
6個を、尾静脈を介して投与した。腫瘍応答を生物発光画像化によって順次測定した。尾静脈血を生着および血清サイトカインのために4日目にサンプリングした。動物を11日目に選別し、CAR T細胞の持続性および腫瘍負荷について組織を研究した。(b)さまざまなマウスコホートの10日目の生物発光画像化。広範囲の疾患がNT T細胞で処置されたマウスの骨盤、脊椎、肋骨、頭蓋および脾臓において見られた一方で、CAT19 CAR T細胞またはfmc63 CAR T細胞のいずれかを受けたマウスにおいてはわずかなシグナルが明らかである。(c)さまざまなマウスコホートからの経時的な平均化された定量的生物発光シグナル。Y軸は対数目盛りであり、明白な差異がNT T細胞を受けたマウスとCAR T細胞を受けたマウスとの間のシグナル蓄積において見られる。シグナル蓄積の差異は、fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞を受けたマウスにおいては見られない。(d)実験終了時のマウス由来骨髄においてフローサイトメトリーで決定された腫瘍負荷。実質的にfmc63またはCAT19 CAR T細胞のいずれかを受けたマウスの骨髄においてRaji細胞は検出できなかった。
【0024】
【
図7】in vivo持続性CAR T細胞の特徴付け。 (a)上に概説したモデルにおいて、fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞で処置したマウスからのマウス脾臓におけるCAR T細胞の絶対数。これは、両方において同じ数が存在することを示している。(b)fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞で処置したマウス骨髄におけるCAR T細胞の絶対数。これは、両方において同じ数の細胞が存在することを示している。fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞のいずれかで処置したマウスの(c)脾臓および(d)骨髄におけるPD1発現CAR T細胞の絶対数。CAT19 T細胞のほんの少数が、両コンパートメントにおいてPD1+である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、以前記載されたことがない、CDRを有する新規CD19特異的CARを開発した。それは、UPENN研究において使用されたfmc63に基づくCARと同等の効力を有するが、毒性の低減およびT細胞疲弊の低減をもたらす。
【0026】
したがって本発明の第1の態様では、a)以下の配列:
【化1】
を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、および
b)以下の配列:
【化2】
を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含むCD19結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0027】
CD19結合ドメインは、配列番号7として示される配列を有するVHドメインおよび/もしくは(and/or or)配列番号8として示される配列を有するVLドメインまたは少なくとも95%の配列同一性を有するそのバリアントを含んでよい。
【0028】
CD19結合ドメインは、scFvをVH−VL方向で含んでよい。
【0029】
CD19結合ドメインは、配列番号9として示される配列または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含んでよい。
【0030】
CD19結合ドメインは、ヒト抗体フレームワークにグラフトされた請求項1に定義された6個のCDRを含んでよい。
【0031】
CD19結合ドメインおよび膜貫通ドメインは、以下:ヒトIgG1 Fcドメイン、IgG1ヒンジまたはCD8ストークの1つを含んでよいスペーサーによって連結されてよい。スペーサーはCD8ストークを含んでよい。
【0032】
CARは、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むまたはそれと会合してよい。
【0033】
細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、以下のエンドドメイン:CD28エンドドメイン、41BBエンドドメイン、OX40エンドドメインおよびCD3ゼータエンドドメインの1つまたは複数を含んでよい。
【0034】
具体的にはCARは、CD8ストークスペーサーならびに、41BBエンドドメインおよびCD3ゼータエンドドメインを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0035】
具体的にはCARは、CD8ストークスペーサーならびにOX40エンドドメインおよびCD3ゼータエンドドメインを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0036】
代替的実施形態では細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、以下のエンドドメイン:CD28エンドドメイン;OX40およびCD3ゼータエンドドメインのすべてを含んでよい。
【0037】
CARは、配列番号10から15のいずれかとして示される配列を含むか、または少なくとも80%の配列同一性を有するが、i)CD19に結合し、ii)T細胞シグナル伝達を誘導する能力を保持するそのバリアントを含んでよい。CARは、UPENN研究において使用されたfmc63に基づくCARと比較して有利な特性を有し得る。例えばT細胞によって発現され、CD19発現細胞を標的とするために使用される場合、CARは:a)以下の配列:CDR1−GVSLPDY(配列番号16);CDR2−WGSET(配列番号17);CDR3−HYYYGGSYAMDY(配列番号18)を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、およびb)以下の配列:CDR1−RASQDISKYLN(配列番号19);CDR2−HTSRLHS(配列番号20)CDR3−QQGNTLPYT(配列番号21)を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含むCD19結合ドメインを含むCARを発現しているT細胞によって引き起こされるIFNγ放出よりも、低いIFNγ放出がCD19発現標的細胞によって引き起こされ得る。CDRは、ヒトまたはヒト化フレームワークにグラフトされてよい。
【0038】
第2の態様では本発明は、本発明の第1の態様によるCARをコードする核酸配列を提供する。
【0039】
第3の態様では、本発明の第2の態様による核酸配列を含むベクターが提供される。
【0040】
第3の態様では、本発明の第1の態様によるCARを含む細胞が提供される。
【0041】
細胞は、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞などの細胞溶解性免疫細胞であってよい。
【0042】
第4の態様では、本発明の第3の態様による複数の細胞を含む細胞組成物が提供される。
【0043】
第5の態様では、本発明の第3の態様によるベクターで細胞を形質導入するか、またはベクターを細胞にトランスフェクトするステップを含む、本発明の第3の態様による細胞を作製するための方法が提供される。
【0044】
第6の態様では、本発明の第3の態様によるベクターでex vivoで被験体由来の細胞の試料を形質導入するか、またはベクターを上記試料にトランスフェクトするステップを含む、本発明の第4の態様による細胞組成物を作製するための方法が提供される。
【0045】
細胞の試料は、末梢血単核細胞(PBMC)試料などの例えば血液試料またはその派生物であってよい。
【0046】
第7の態様では、本発明の第1の態様による細胞、または本発明の第4の態様による細胞組成物を、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物が提供される。
【0047】
第8の態様では、本発明の第1の態様による細胞、本発明の第4の態様による細胞組成物または本発明の第7の態様による医薬組成物を被験体に投与するステップを含む、がんを処置するための方法が提供される。
【0048】
方法は、被験体由来の細胞を、本発明の第3の態様によるベクターでex vivoで形質導入するか、またはベクターを上記細胞にトランスフェクトし、次いでトランスフェクトした細胞またはその一部を(the, or some of the, transfected cells)被験体に戻し投与するステップを含んでよい。
【0049】
がんを処置することにおける使用のための本発明の第7の態様による医薬組成物も提供される。
【0050】
がんを処置するための医薬組成物の製造における本発明の第3の態様による細胞の使用も提供される。
【0051】
がんは、例えばB細胞悪性腫瘍であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0052】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)は、キメラT細胞受容体、人工T細胞受容体およびキメラ免疫受容体としても公知であり、免疫エフェクター細胞に任意の特異性をグラフトする操作された受容体である。古典的CARでは、モノクローナル抗体の特異性がT細胞にグラフトされる。CARコード核酸は、例えばレトロウイルスベクターを使用してT細胞に移入され得る。このように多数のがん特異的T細胞は養子細胞移入のために生成され得る。この手法の第I相臨床研究は有効性を示している。
【0053】
CARの標的抗原結合ドメインは、一般にスペーサーおよび膜貫通ドメインを介してエンドドメインに融合されている。エンドドメインは、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むまたはそれと会合してよい。CARが標的抗原に結合すると、これは、それが発現されているT細胞への活性化シグナルの伝達を生じる。
【0054】
本発明のCARは、マウス抗CD19モノクローナル抗体に基づくCD19結合ドメインを含む。
【0055】
本発明のCARは、
a)以下の配列:
【化3】
を含む相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH)、および
b)以下の配列:
【化4】
を含むCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含むCD19結合ドメインを含む。
【0056】
CD19結合活性に悪影響を与えることなく各CDRに1つまたは複数の変異(置換、付加または欠失)を導入することが可能であり得る。各CDRは、例えば1個、2個または3個のアミノ酸変異を有してよい。
【0057】
CDRは、10から約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結された抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の融合タンパク質である、1本鎖可変断片(scFv)のフォーマットであってよい。scFvは、VH−VL方向であってよい、すなわちVHがCAR分子のアミノ末端にあり、VLドメインがスペーサーならびに次に膜貫通ドメインおよびエンドドメインにつながれている。
【0058】
CDRは、ヒト抗体またはscFvのフレームワークにグラフトされ得る。例えば本発明のCARは、以下の配列の1つからなるまたは以下の配列の1つを含むCD19結合ドメインを含んでよい。
【0059】
本発明のCARは、以下のVH配列を含んでよい:
配列番号7−ネズミモノクローナル抗体由来VH配列
【化5】
【0060】
本発明のCARは、以下のVL配列を含んでよい:
配列番号8−ネズミモノクローナル抗体由来VL配列
【化6】
【0061】
本発明のCARは、以下のscFv配列を含んでよい:
配列番号9−ネズミモノクローナル抗体由来VH−VL scFv配列
【化7】
【0062】
CARは、以下の配列の1つからなるまたは以下の配列の1つを含んでよい:
配列番号10−「カンパナ」構造を使用するCAT19 CAR(実施例を参照されたい)
【化8】
配列番号11−OX40ゼータエンドドメインを含むCAT19 CAR
【化9】
配列番号12−CD28ゼータエンドドメインを含むCAT19 CAR
【化10】
配列番号13−第3世代CD19 CAR
【化11】
配列番号14−IgG1ヒンジスペーサーを含むCD19 CAR
【化12】
配列番号15−FcR結合部位が変異により外されたヒトIgG1のヒンジCH2−CH3を含むCD19 CAR
【化13】
【0063】
本発明のCARは、少なくとも80、85、90、95、98または99%の配列同一性を有する配列番号7、8、9、10、11、12、13、14または15として示される配列のバリアントを、バリアント配列がCD19に結合する能力を保持する限り(適切な場合は、相補性VLまたはVHドメインと合わせて)含んでよい。
【0064】
2個のポリペプチド配列間の同一性百分率は、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov.において自由に入手可能であるBLASTなどのプログラムによって容易に決定され得る。
【0065】
膜貫通ドメイン
本発明のCARは、膜に広がる膜貫通ドメインも含んでよい。それは、疎水性アルファヘリックスを含んでよい。膜貫通ドメインは、CD28由来であってよく、良好な受容体安定性をもたらす。
【0066】
膜貫通ドメインは、配列番号22として示される配列を含んでよい。
配列番号22
【化14】
【0067】
細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)
エンドドメインは、CARのシグナルの伝達部分である。抗原認識後、受容体がクラスター形成し、シグナルは細胞に伝達される。最も一般的に使用されるエンドドメイン構成成分は、3個のITAMを含有するCD3ゼータのものである。これは、抗原が結合した後にT細胞に活性化シグナルを伝達する。CD3ゼータは、完全に適格性の活性化シグナルは提供し得ず、追加的共刺激シグナル伝達が必要な場合がある。例えばCD28またはOX40もしくは41BB由来のエンドドメインは、増殖/生存シグナルを伝達するためにCD3ゼータと共に使用される場合がある、あるいは3種すべてが一緒に使用されてよい。
【0068】
初期のCAR設計は、FcεR1またはCD3ζのいずれかのγ鎖の細胞内部分由来のエンドドメインを有していた。結果としてこれらの第1世代受容体は免疫学的シグナル1を伝達し、それはT細胞による同族標的細胞の殺滅を引き起こすために十分であったがT細胞を完全に活性化して増殖および生存させることはできなかった。この限界を克服するために、複合エンドドメインが構築された。T細胞共刺激分子の細胞内部分のCD3ζの細胞内部分への融合は、活性化および共刺激シグナルを抗原認識後に同時に伝達できる第2世代受容体をもたらした。最も一般的に使用される共刺激ドメインは、CD28のものであった。これは、T細胞増殖を引き起こす最も強力な共刺激シグナル、すなわち免疫学的シグナル2を供給する。また、一部の受容体は、生存シグナルを伝達するOX40および41BBなどのTNF受容体ファミリーエンドドメインを含むものが記載された。最終的に活性化、増殖および生存シグナルを伝達できるエンドドメインを有するさらに強力な第3世代CARが記載された。CARおよびそのさまざまな世代は、
図4に要約されている。
【0069】
本発明のCARのエンドドメインは、CD3ゼータエンドドメイン、41BBエンドドメイン、OX40エンドドメインまたはCD28エンドドメインの1つまたは複数の組合せを含んでよい。
【0070】
本発明のCARの細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)は、配列番号23、24、25、26、27、28、29もしくは30として示される配列または少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含んでよい。
配列番号23(CD3ゼータエンドドメイン)
【化15】
配列番号24(41BBエンドドメイン)
【化16】
配列番号25(OX40エンドドメイン)
【化17】
配列番号26(CD28エンドドメイン)
【化18】
【0071】
そのようなエンドドメインの組合せの例は41BB−Z、OX40−Z、CD28−ZおよびCD28−OX40ゼータを含む。
配列番号27(41BB−Zエンドドメイン融合体)
【化19】
配列番号28(OX40−Zエンドドメイン融合体)
【化20】
配列番号29(CD28Zエンドドメイン融合体)
【化21】
配列番号30(CD28OXZ)
【化22】
【0072】
バリアント配列は、配列が有効な膜貫通ドメイン/細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを提供する限り、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を配列番号22、23、24、25、26、27、28、29または30に有してよい。
【0073】
シグナルペプチド
本発明のCARは、CARがT細胞などの細胞内で発現されたときに、新生タンパク質が小胞体に、次いでそれが発現される細胞表面に向けられるようなシグナルペプチドを含んでもよい。
【0074】
シグナルペプチドのコアは、単一のアルファヘリックスを形成する傾向を有する疎水性アミノ酸の長いストレッチを含有してよい。シグナルペプチドは、アミノ酸の短い正に荷電したストレッチで始まってよく、トランスロケーションの間にポリペプチドの適切なトポロジーを強化することに役立つ。シグナルペプチドの末端に、典型的にはシグナルペプチダーゼによって認識および切断されるアミノ酸のストレッチが存在する。シグナルペプチダーゼは、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成するようにトランスロケーションの間または完了後のいずれかに切断できる。次いで遊離シグナルペプチドは、特異的プロテアーゼによって消化される。
【0075】
シグナルペプチドは、分子のアミノ末端にあってよい。
本発明のCARは一般式:
シグナルペプチド−CD19結合ドメイン−スペーサードメイン−膜貫通ドメイン/細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン
を有してよい。
【0076】
シグナルペプチドは、配列番号31または、シグナルペプチドがCARの細胞表面発現を生じるように依然として機能する限り5個、4個、3個、2個もしくは1個のアミノ酸変異(挿入、置換もしくは付加)を有するそのバリアントを含んでよい。
【化23】
【0077】
配列番号31のシグナルペプチドは、コンパクトで高効率である。シグナルペプダーゼにより末端グリシンの後ろで約95%が切断されて、効率的な除去をもたらすことが予測される
【0078】
スペーサー
本発明のCARは、CD19結合ドメインを膜貫通ドメインに連結し、CD19結合ドメインをエンドドメインから空間的に離すスペーサー配列を含んでよい。可動性スペーサーは、CD19結合を可能にするようにCD19結合ドメインをさまざまな方向に方向付けることを可能にする。
【0079】
スペーサー配列は、例えばIgG1 Fc領域、IgG1ヒンジもしくはCD8ストークまたはこれらの組合せを含んでよい。スペーサーは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはCD8ストークと同様の長さおよび/またはドメインスペーシング特性を有する代替的配列を代替的に含んでよい。
【0080】
ヒトIgG1スペーサーは、Fc結合モチーフを除くように変更されてよい。
これらのスペーサーについてのアミノ酸配列の例は下に示されている:
配列番号32(ヒトIgG1のヒンジCH2CH3)
【化24】
配列番号33(ヒトCD8ストーク):
【化25】
配列番号34(ヒトIgG1ヒンジ):
【化26】
配列番号35(IgG1ヒンジFc)
【化27】
配列番号36(Fc受容体認識モチーフを除くように修飾されたIgG1ヒンジFc)
【化28】
修飾残基に下線を引く;
*は欠失を示す。
【0081】
インターフェロン放出およびCAR T細胞疲弊
本発明者らは、CAT19 scFvに基づくCD19 CARが、さらに低い毒性およびさらに良好な有効性を生じることができる特性を有することを見出した。
【0082】
CD19 CAR治療での主な経験がfmc63 scFvに基づくCARによるものであったこと、ならびに最も古く、最も長くおよび恐らく最も重要な臨床データセットがfmc63に基づくカンパナCARによるものであることを考慮して、本発明者らは、このカンパナCARを「至適基準」として用いた。したがって比較は、fmc63−カンパナCARと、fmc63の代わりにCAT19 scFvを有する類似するCARとの間で行った。驚くべきことに、本発明者らは、CAT19 CAR T細胞がCD19を発現している標的細胞の死滅をもたらし、CD19を発現する標的への応答で増殖する一方で、インターフェロン−ガンマ放出は少なかったことを見出した。さらに高悪性度B細胞リンパ腫の小動物モデルは、fmc63に基づくCARとCAT19に基づくCARとの間で同等の有効性および同等の生着を示したが、驚くべきことに、fmc63 CAR T細胞よりも少ないCAT19 CAR T細胞が疲弊した。
【0083】
本発明のCARは、CAR T細胞を標的細胞と接触させることを含む比較アッセイにおいて25、50、70または90%低いIFNγ放出を生じ得る。
【0084】
本発明のCARは、fmc63 CAR T細胞よりも少ない割合のCAR T細胞の疲弊をもたらし得る。T細胞疲弊は、PD−1発現の分析などの当技術分野において公知の方法を使用して評価され得る。本発明のCARは、CAR T細胞を標的細胞と接触させることを含む比較アッセイにおいてfmc63 CAR T細胞よりも(that)20、30、40、50、60または(of)70%少ないCAR T細胞にPD−1を発現させ得る。
【0085】
核酸配列
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のCARをコードする核酸配列に関する。
【0086】
核酸配列は、配列番号10〜15のいずれかとして示されるアミノ酸配列を有するCARをコードすることが可能であり得る。
【0087】
ベクター
本発明は、本発明による核酸配列を含むベクターも提供する。そのようなベクターは、核酸配列を宿主細胞に導入するために使用されてよく、それにより本発明の第1の態様による分子を発現および産生する。
【0088】
ベクターは、例えばプラスミドまたは、レトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターであってよい。
【0089】
ベクターは、T細胞などの細胞にトランスフェクトすることが可能、または細胞を形質導入することが可能であり得る。
【0090】
細胞
本発明は、本発明による核酸を含む細胞も提供する。本発明は、本発明の第1の態様によるCARを細胞表面に発現する細胞を提供する。
【0091】
細胞は、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞などの細胞溶解性免疫細胞であってよい。
【0092】
本発明によるCARを発現できる細胞は、CARコード核酸で細胞を形質導入するか、またはCARコード核酸を細胞にトランスフェクトすることによって作製され得る。
【0093】
本発明のCAR発現細胞は、ex vivoで生成されてよい。細胞は、患者またはドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)試料などの細胞試料由来であってよい。細胞は、例えば抗CD3モノクローナル抗体での処置によって、CARコード核酸で形質導入される前に活性化および/または拡大されてよい。
【0094】
医薬組成物
本発明は、本発明の1つまたは複数のCAR発現細胞を薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤ならびに任意選択で1つまたは複数のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物と共に含有する医薬組成物にも関する。そのような製剤は、例えば静脈内注入のために好適な形態であってよい。
【0095】
処置方法
本発明のCAR発現細胞は、B細胞リンパ腫細胞などのがん細胞を死滅させることが可能であり得る。T細胞またはNK細胞などのCAR発現細胞は、患者自身の末梢血液から(第1のパーティー)、またはドナー末梢血液からの造血幹細胞移植の設定において(第2のパーティー)、または無関係のドナー由来の末梢血液から(第3のパーティー)のいずれかでex vivoで作製されてよい。代替的にCAR発現細胞は、誘導可能前駆細胞または胚性前駆細胞からT細胞などの細胞へのex vivo分化由来であってよい。これらの場合CAR細胞は、CARをコードするDNAまたはRNAをウイルスベクターでの形質導入、DNAまたはRNAのトランスフェクションを含む多数の手段の1つによって導入することによって生成される。
【0096】
本発明のCAR分子を発現するTまたはNK細胞は、がん性疾患、具体的にはCD19発現に関連するがん性疾患の処置のために使用できる。
【0097】
疾患の処置のための方法は、本発明の細胞または細胞集団の治療的使用に関する。これに関して細胞は、既存の疾患または状態を有する被験体に、疾患に関連する少なくとも1つの症状を和らげる、低減するもしくは改善するためにおよび/または疾患の進行を遅らせる、低減するもしくは遮断するために投与されてよい。本発明の方法は、B細胞などのCD19発現細胞の細胞媒介性死滅を生じるまたは促進できる。
【0098】
本発明は、実施例によってここにさらに記載され、それは本発明を実施することにおいて当業者を支援するために役立つことを意味し、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
VHおよびVLのクローニングならびにCD19結合の実証
VHおよびVLをマウス抗CD19モノクローナル抗体からクローニングし、ヒトカッパ定常領域およびヒトIgG1定常領域にインフレームで融合した。これらのキメラ重鎖および軽鎖を発現ベクターにクローニングし、293T細胞にトランスフェクトするために使用した。次に産生された抗体をSupT1細胞(CD19陰性であるT細胞株)および、CD19陽性になるように操作されたSupT1細胞を染色するために使用した。この染色は、CD19の特異的結合を示している(
図2)。
【0100】
(実施例2)
VH/VLがCD19を結合するscFvを形成できることの実証
次いで、クローニングされたVHおよびVLがscFvフォーマットにおいてCD19を結合できるかどうかを調査した。VHおよびVLをscFvとして2方向:VH−VLおよびVL−VHでクローニングし、ここで2個の可変領域は、(SGGGG)4からなるリンカーによって分けられた。これらのscFvを
図3aに示すとおり切断型CD34と共発現される非シグナル伝達CARにクローニングした。簡潔にはこれは、シグナルペプチド、scFv、ヒトIgG1のヒンジCH2−CH3、CD8膜貫通ドメイン、CD8エンドドメインの最初の12残基、FMD−2AペプチドTeV、切断型ヒトCD34を含む。比較できるようにするために、fmc63由来scFvおよび別の抗CD19ハイブリドーマ4g7由来scFvを、VH−VLおよびVL−VHの両方向で同じフォーマットにクローニングした。
【0101】
このようにいくつかのパラメーターを研究できる:(1)シグナル伝達による受容体の内部移行によって妨げられなくなった、ネズミFcに融合した組換え同族標的抗原の使用による標的抗原のCARへの結合;(2)受容体の安定性はポリクローナル抗Fcを使用して決定できる;(3)カセットの発現レベルはCD34についての共染色によって調節できる。
【0102】
これらの構築物をSupT1細胞に形質導入した。組換えCD19マウスIgG2aFc融合体を生成した。SupT1細胞をマウス−Fc、ヒト−Fcおよび抗CD34についてさまざまなフルオロフォアにコンジュゲートした抗体で染色し、フローサイトメトリーによって安定性/結合を調べた。
【0103】
使用したさまざまなscFvの配列を下に詳述する:
>scFv_fmc63_VH−VL(配列番号37)
【化29】
>scFv_fmc63_VL−VH(配列番号38)
【化30】
>scFv_4g7_VH−VL(配列番号39)
【化31】
>scFv_4g7_VL−VH(配列番号40)
【化32】
>scFv_CAT_VH−VL(配列番号9)
【化33】
>scFv_CAT_VL−VH(配列番号41)
【化34】
【0104】
使用した構築物および染色結果を
図3に要約する。驚くべきことに、VH−VL方向でscFvを有するCAT CARはCD19を結合する一方、VL−VH方向でscFvを有するCAT19 CARはわずかなCD19結合を生じた。これは、HLおよびLHの両方向でCD19を結合するfmc63 CARおよび4g7 CARとは対照的であった。HL CAT CARの結合および安定性は、fmc63のものと同程度であると考えられた。
【0105】
(実施例3)
fmc36 CARに対するCAT19 CAR機能のin vitro比較
CAT scFvをHL方向で、Campana(Imaiら(2004年)Leuk. Off. J. Leuk. Soc, Am. Leuk, Res. Fund. UK 18巻:676〜684頁)によって設計されたCARスキャホールドにクローニングした。実際にfmc63 scFvをCAT scFvで置き換え、元のfmc63に基づくCARと比較した。このCARは、シグナルペプチド、scFv、CD8ストークスペーサーならびに膜貫通および41BBおよびゼータエンドドメインを含む。CAT CARおよびfmc63 CARのアミノ酸配列を下に示す:
>CAT19_CAR(配列番号10)
【化35】
【化36】
>Fmc63_CAR、Imaiら(2004年)上記によって記載のとおり(配列番号42)
【化37】
【0106】
5名の異なるドナー由来の初代ヒトT細胞をカンパナフォーマットでCAT19 CARをコードするレンチウイルスベクターでまたはfmc63カンパナCAR自体で形質導入した。これらのT細胞を次いで種々のアッセイにおいて使用した。クロム放出アッセイをSupT1細胞に対して実施した。これらの細胞は、CD19陰性である。いずれのCAR T細胞もこの細胞株に対して応答せず、CAR19 CARがCD19陰性細胞に対して非特異的殺滅活性を有さないことを実証している[
図5(a)]。(b)クロム放出アッセイはまたCD19を発現するように操作したSupT1細胞に対して実施した。両方のCARはこの細胞株に対してこのアッセイにおいて同様の高レベルの殺滅を示した[
図5(b)]。次に脱顆粒アッセイを標的細胞との共培養後にエフェクター細胞の表面上のCD107についての染色によって実施した。ここでNT T細胞、fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞のいずれかをエフェクターとして使用し、SupT1またはSupT1.CD19細胞のいずれかを標的として使用した。CD4+およびCD8+細胞の脱顆粒の示差測定を可能にするフローサイトメトリーによって表面CD107を検出した[それぞれ
図5(c)および(d)]。脱顆粒は、fmc63 CAR T細胞と比較してCAT19 CAR T細胞で増加していた。増殖は、トリチウム化チミジレート(thymidilate)取り込みを使用して概算した。ここでNT、fmc63 CAR T細胞、CAT19 CAR T細胞を、CD19を発現するように操作したSupT1細胞と共培養した。チミジン(thymidiIn)の取り込み、この実験では無関係なCAR標的化GD2も検査した。CAR19 CAR T細胞で増殖が増加する傾向があった[
図4(e)]。次に、NT T細胞、fmc63 CAR T細胞、CAT19 CAR T細胞またはGD2 CAR T細胞のいずれかからのインターフェロンガンマ放出をSupT1またはSupT1.CD19細胞に対するチャレンジの24時間後にELISAによって測定した。CD19+標的でチャレンジした場合、CAT19 CAR T細胞は、fmc63 CAR T細胞よりも有意に少ないインターフェロンガンマを産生した。
【0107】
(実施例4)
CAT19 CAR治療のin vivo有効性の実証
このin vivoモデルについての実験設定の概要を
図6(a)に示す。簡潔にはNSG(NOD scid gamma、NOD.Cg−Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ)マウスは十分に免疫無防備状態であり、ヒト細胞株および初代ヒトT細胞の生着に許容的である。Raji細胞はバーキットリンパ腫由来のB細胞株である。これらの細胞は、NSGマウスの骨髄内に容易に生着し、高悪性度白血病様症候群を生じる。生物発光画像化(BLI)を使用した非侵襲性トラッキングを可能にするホタルルシフェラーゼを発現するようにRaji細胞を操作した。マウスに尾静脈注射を介してRaji.FLuc細胞2.5x10
5個を注射した。24時間後、NT初代ヒトT細胞またはfmc63 CARで形質導入したT細胞または、CAT19 CARで形質導入したT細胞のいずれかの4x10
6個を、尾静脈を介して投与した。腫瘍応答をBLIによって順次測定した。尾静脈血液を生着および血清サイトカインのために4日目に採取した。動物を11日目に選別し、CAR T細胞の持続性および腫瘍負荷について組織を研究した。さまざまなマウスコホートの10日目のBLI画像化を
図6(b)に示す。広範囲の疾患がNT T細胞で処置したマウスの骨盤、脊椎、肋骨、頭蓋および脾臓において見られた一方で、わずかなシグナルがCAT19 CAR T細胞またはfmc63 CAR T細胞のいずれかを受けたマウスにおいて明らかである。さまざまなマウスコホートから経時的に平均化された定量的生物発光シグナルを対数目盛で
図6(c)に示す。明白な差異がNT T細胞を受けたマウスとCAR T細胞を受けたマウスとの間のシグナル蓄積において見られる。シグナル蓄積の差異は、fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞を受けたマウスにおいては見られない。最終的に屠殺後に各マウス由来骨髄のフローサイトメトリー分析を、腫瘍負荷を直接決定するために実施した。Raji細胞は、それらがヒトB細胞マーカーを発現することから、マウス造血細胞からおよび養子移入T細胞から容易に識別できる。わずかなRaji細胞がfmc63またはCAT19 CAR T細胞のいずれかを受けたマウスの骨髄において検出できた。
【0108】
(実施例5)
in vivo持続性CAR T細胞の特徴付け
上の動物モデルから、本発明者らは、両方の型のCAR T細胞がこれらのNSGマウスの骨髄および脾臓に生着したかを決定することを試みた。カウンティングビーズを用いた骨髄および脾臓のフローサイトメトリー分析は、CAR T細胞の絶対数の決定を可能にした。このデータを
図7(a)および(b)に示す。fmc63 CAR T細胞またはCAT19 CAR T細胞で処置したマウス由来のマウスの脾臓におけるCAR T細胞の絶対数は同様であった。次に本発明者らは、これらのさまざまな組織中の疲弊T細胞の数に差異があるかどうかを決定することに進んだ。上の試料におけるPD1発現について共染色することによって、疲弊T細胞の数を決定できた。このデータを
図7(c)および(d)に示す。驚くべきことに、fmc63 CARよりもCAT19 CARを用いた両方の組織コンパートメントにおいて、より少ない疲弊T細胞が存在した。
【0109】
上の明細書に述べるすべての刊行物は、本明細書に参照により組み込まれる。本発明の記載された方法および系の種々の改変および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明は具体的な好ましい実施形態と関連して記載されているが、特許請求される本発明がそのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際に、分子生物学、CAR技術または関連分野の当業者に明らかである本発明を実行するために記載された様式の種々の改変は続く特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]