(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0012】
〔水溶性フィルム〕
本発明の水溶性フィルムは、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂とを含む。なお、本発明の水溶性フィルムは、ポリアミン骨格含有化合物のみを必須とするものであってもよく、例えばポリアミン骨格含有化合物のみで構成してもよく、このようなポリアミン骨格含有化合物を含む水溶性フィルムもまた本発明の一態様である。また、必要に応じて他の成分を更に含んでもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0013】
上記水溶性フィルムは、主として水溶性樹脂とポリアミン骨格含有化合物とから構成されるものであることが好ましい。上記水溶性フィルムが主として水溶性樹脂とポリアミン骨格含有化合物とから構成されるものであるとは、上記水溶性フィルムにおける水溶性樹脂の質量割合とポリアミン骨格含有化合物の質量割合が、それぞれ、ポリアミン骨格含有化合物及び水溶性樹脂以外のいずれの成分の質量割合よりも大きいことを言う。なお、上記水溶性フィルムは、水溶性樹脂及びポリアミン骨格含有化合物のみからなるものであってもよい。水溶性樹脂とポリアミン骨格含有化合物との配合比(水溶性樹脂/ポリアミン骨格含有化合物)は、質量比で、例えば、1〜99/99〜1であることが好ましい。フィルム強度と冷水への溶解性とのバランスの観点から、水溶性樹脂とポリアミン骨格含有化合物との総量100質量%に対する水溶性樹脂の割合が1質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上であることが、この順に好ましく(数値が大きいほどより好ましい)、当該水溶性樹脂の割合が99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下であることが、この順に好ましい(数値が小さいほどより好ましい)。
【0014】
すなわち言い替えれば、水溶性樹脂とポリアミン骨格含有化合物との総量100質量%に対するポリアミン骨格含有化合物の割合が1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上であることが、この順に好ましく(数値が大きいほどより好ましい)、当該ポリアミン骨格含有化合物の割合が99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下であることが、この順に好ましい(数値が小さいほどより好ましい)。
【0015】
上記水溶性フィルムの厚さは、用途等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、フィルム強度と冷水への溶解性とのバランスの観点から、例えば、5〜300μmとすることが好ましい。より好ましくは6〜200μm、更に好ましくは7〜150μm、一層好ましくは8〜100μm、特に好ましくは9〜90μm、最も好ましくは10〜80μmである。
【0016】
上記水溶性フィルムは、膜厚を40μmとしたときの6℃の冷水への溶解時間が5〜240秒であることが好ましい。溶解時間が速すぎる(短すぎる)と、吸湿性が強くなり、一般的な保管状態に於いて空気中の湿気によりフィルムの形状を充分に保つことができないことがあり、また、溶解時間が遅すぎる(長すぎる)と、薬剤をより効率的に分散することができないことがある。より好ましくは205秒以下、更に好ましくは190秒以下、特に好ましくは160秒以下、一層好ましくは140秒以下、より一層好ましくは120秒以下、最も好ましくは100秒以下である。また、より好ましくは7秒以上、更に好ましくは8秒以上、特に好ましくは9秒以上、一層好ましくは10秒以上、最も好ましくは15秒以上である。
溶解時間(40μm換算)は、後述する実施例に記載の溶解性の評価方法に基づいて求めることができる。
【0017】
上記水溶性フィルムはまた、伸長性が23%以上であることが好ましい。伸長性が23%以上であると耐荷重性に優れたフィルムとなるため、薬剤や洗剤等の包装材料としてより有用なものとなる。より好ましくは40%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは100%以上である。
伸長性は、後述する実施例に記載の伸長性の評価方法に基づいて求めることができる。
【0018】
上記水溶性フィルムはまた、耐硬性が94%以上であることが好ましい。耐硬性が94%以上であると、硬度の高い水へ投入しても沈殿が生じたり、水が濁ったりすることがないが、耐硬性が94%未満であると、硬度の高い水へ投入した時に、塩を形成して沈殿が生じたり、水が濁ったりすることをより充分に抑制することが困難になる。より好ましくは95%以上、更に好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上である。
耐硬性は、後述する実施例に記載の耐硬性の評価方法に基づいて求めることができる。
【0019】
上記水溶性フィルムは更に、膜厚を40μmとしたときのフィルム強度が0.05J以上であることが好ましい。強度が0.05J以上であると、安定的に薬剤や洗剤等の梱包をより充分に維持することができる。より好ましくは0.08J以上、更に好ましくは0.1J以上である。
フィルム強度(40μm換算)は、後述する実施例に記載の強度の評価方法に基づいて求めることができる。
【0020】
以下に、水溶性フィルムに含まれるポリアミン骨格含有化合物及び水溶性樹脂や、その他の好適な含有成分等について更に説明する。
【0021】
<ポリアミン骨格含有化合物>
ポリアミン骨格含有化合物は、構造中にポリアミン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、本発明の作用効果をより充分に発揮する観点から、分岐鎖構造を有することが好ましい。より好ましくは、アミノ基で分岐した構造を有する化合物である。
【0022】
上記ポリアミン骨格含有化合物は、常温(20〜25℃)において水に容易に溶解する化合物であることが好ましい。例えば、20℃で水100gに対する溶解性が10g以上であることが好ましい。但し、高分子量(例えば、重量平均分子量が1000万以上)の重合体の場合は、水溶性を有していても水溶液の粘度上昇により溶解性が低下することもあり得るため、20℃で100gに対する溶解性が0.1gである重合体も対象とする場合がある。
【0023】
上記ポリアミン骨格含有化合物は、第1級アミノ基、第2級アミノ基(イミノ基とも称す)及び第3級アミノ基をいずれも有することが好ましい。上述のとおりポリアミン骨格含有化合物はアミノ基で分岐した構造を有する化合物であることが好ましいが、第1級〜第3級アミノ基をいずれも有する化合物は、構造中にアミノ基を多数有し、かつアミノ基で分岐した構造を有する化合物の好適な形態の1つである。
【0024】
上記ポリアミン骨格含有化合物のアミン価は特に限定されないが、例えば、5〜30であることが好ましい。これにより冷水への溶解性やフィルム強度をより高めることができる。アミン価は、より好ましくは10〜30、更に好ましくは15〜25である。アミン価は、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸溶液等の強酸を用いて電位差滴定を行うことにより測定することができる。
【0025】
上記ポリアミン骨格含有化合物の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、フィルム強度及び溶解性をより高める観点から、例えば、100〜10万であることが好ましい。より好ましくは200〜8万、更に好ましくは300〜7万、特に好ましくは500〜68000、一層好ましくは500〜3万、最も好ましくは550〜2万である。
ポリアミン骨格含有化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する実施例に記載の測定条件により測定することができる。
【0026】
上記ポリアミン骨格含有化合物としては、例えば、下記式(1):
【0028】
(式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐状アルキレン基を表す。A
1は、同一又は異なって、水素原子又は分岐による別のポリアミン骨格(ポリアミン鎖とも称す)(−R
1−{N(A
1)(R
2)}
n−N(B
1)B
2;この式中の各記号は、上記式(1)中の各記号とそれぞれ同じ原子や基を表してもよいし、異なっていてもよい。)を表し、含まれる水素原子は任意の修飾基で置換されていてもよい。B
1及びB
2は、水素原子を表すが、同一又は異なる任意の修飾基で置換されていてもよい。nは1以上の整数を表す。)で表される化合物が好適である。この化合物は、ポリアミン、又は、当該ポリアミンが有するアミノ基の少なくとも1個が修飾された構造を有する化合物に該当し、後者の化合物としては、後述するように、(ポリ)アルキレングリコール基、カルボン酸(塩)基、疎水性基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基で修飾された構造を有することが好ましい。
【0029】
上記ポリアミン骨格含有化合物を与えるポリアミンとしては、ポリアルキレンアミン(PAA)、ポリアルキレンイミン(PAI)が好適である。中でも、本発明の効果をより一層発揮できる観点から、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基をいずれも有するポリアルキレンイミンが好ましい。この場合、上記式(1)におけるnは2以上の整数を表し、A
1の少なくとも1つは水素原子、少なくとも1つは分岐による別のポリアミン鎖である。したがって、本発明のポリアミン骨格含有化合物として特に好ましくは、ポリアルキレンイミン骨格含有化合物である。
【0030】
上記ポリアルキレンアミン(PAA)としては、例えば、ポリエチレンアミン(PEA)、テトラブチレンペンタミンが挙げられる。PEAは、アンモニア及びエチレンジクロリドを反応させ、その後、分別蒸留することにより得ることができる。このような方法により得られるPEAとしては、トリエチレンテトラミン(TETA)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)がある。
【0031】
上記ポリアルキレンイミン(PAI)は、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2〜6のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる、これらアルキレンイミンの単独重合体や共重合体が好適である。より好ましくは、エチレンイミンの単独重合体(ポリエチレンイミン、PEIとも称す)である。また、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等を重合して得られるものであってもよい。このようなポリアルキレンイミンでは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
【0032】
上記アルキレンイミンの単独重合体や共重合体では、ポリアルキレンイミン鎖が形成されることになる。アルキレンイミンの単独重合体や共重合体中の第2級アミノ基と第3級アミノ基との比率(第2級アミノ基/第3級アミノ基)は、4/1〜1/4であることが好ましい。より好ましくは3/1〜1/3、更に好ましくは2.5/1〜1/2、最も好ましくは2/1〜1/1である。また、アルキレンイミンの単独重合体や共重合体中の第1級アミノ基と第2級アミノ基との比率(第1級アミノ基/第2級アミノ基)は、4/1〜1/5であるものが好ましい。より好ましくは3/1〜1/4、更に好ましくは2/1〜1/3、最も好ましくは1/1〜1/2である。
【0033】
本発明においては、ポリアミン骨格がエチレンイミンを主体として形成されるものであることが好ましい。この場合、「主体」とは、ポリアミン鎖が2種以上のアルキレンイミンにより形成されるときに、全アルキレンイミンのモル数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンイミン100モル%中のエチレンイミンのモル%で表すと、50〜100モル%であることが好ましい。このようなものであると、冷水への溶解性や強度、耐硬性等がより向上される。より好ましくは60〜100モル%、更に好ましくは70〜100モル%である。
【0034】
上記ポリアミン骨格含有化合物がポリエチレンイミンである場合、ポリエチレンイミンが有する全アミノ基100モル%のうち、第1級アミノ基の割合が10〜50モル%であることが好ましい。これにより、本発明の作用効果がより充分に発揮される。より好ましくは20〜45モル%、更に好ましくは25〜40モル%、特に好ましくは27〜37モル%である。
【0035】
上記ポリアミン骨格における第1級、第2級及び第3級アミノ基の窒素原子に由来する単位の相対割合は、特にPEIの場合では製法に応じて適宜選択することができる。PEIは、二酸化炭素、重亜硫酸ナトリウム、硫酸、過酸化水素、塩酸、酢酸等の触媒の存在下でエチレンイミンを重合させることにより製造できる。
【0036】
上記式(1)中のA
1は、同一又は異なって、水素原子又は分岐による別のポリアミン鎖であるが、例えば、酸無水物、エポキシ化合物、酸ハライド、マイケル付加反応等により、各種の置換基で修飾されていてもよい。同様に、式(1)中のB
1及び/又はB
2は、水素原子を表すが、任意の修飾基で修飾されていてもよい。これらA
1、B
1及び/又はB
2における修飾率は、使用用途や求められる目的等によって、0〜100モル%の間で適宜設定することが好ましく、修飾率の好適な範囲や好適な修飾基は以下に記載するとおりである。
【0037】
上記ポリアミン骨格含有化合物は、求められる性能等によっては、ポリアミンが有するアミノ基の少なくとも1個が修飾された構造を有することも好適である。ポリアミン骨格含有化合物は、中でも、(ポリ)アルキレングリコール基、カルボン酸(塩)基、疎水性基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基で修飾された構造を有することがより好ましい。(ポリ)アルキレングリコール基を有すると、冷水への溶解性とともに、フィルム強度や再汚染防止能、洗浄力も向上する。カルボン酸(塩)基を有すると、冷水への溶解性とともに無機粒子等(例えば、カーボンブラック)の分散性も向上する。疎水性基を有すると、フィルム強度がより向上するとともに抗菌作用を付与できる。スルホン酸(塩)基を有すると、耐硬性がより向上する。カルボン酸(塩)基とともにスルホン酸(塩)基を有すると、耐硬性がより一層顕著に向上する。
【0038】
修飾されるアミノ基は、末端アミノ基(第1級アミノ基)であってもよいし、主鎖中のアミノ基(第2級アミノ基、イミノ基)であってもよい。また、2個以上のアミノ基が修飾される場合、修飾する基は同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0039】
ここで、カルボン酸(塩)基とは、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩を意味し、スルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩を意味する。カルボン酸塩やスルホン酸塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。金属塩を構成する金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2価金属;アルミニウム等の3価金属;鉄等のその他の金属;等が挙げられる。有機アミン塩を構成する有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基;等が挙げられる。上記塩の中でも好ましくは、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0040】
修飾されるアミノ基の割合は求められる性能等によっても異なる。例えば、消臭性や凝集性向上の観点からはアミノ基が多く存在する方が好ましいため、例えば、ポリアミンが有する全アミノ基100モル%に対し、修飾されたアミノ基が50モル%以下であることが好ましい。より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。一方、上述したように冷水への溶解性やフィルム強度、再汚染防止能、洗浄力、無機粒子分散性、抗菌性、耐硬性の付与又は向上の観点からは、ポリアミンが有する全アミノ基100モル%に対し、修飾されたアミノ基が10モル%以上であることが好ましい。より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
なお、修飾されるアミノ基の割合は、例えば、NMR、HPLC又はGPCにより測定することが可能である。
【0041】
以下に、アミノ基の少なくとも1個が上記修飾基で修飾された構造を有する化合物の製造方法の好ましい例を説明する。なお、2種以上の修飾基で修飾された化合物については、以下の製造方法を適宜組み合わせることによって好ましく得ることができる。
【0042】
(i)(ポリ)アルキレングリコール基による修飾
上記ポリアミン骨格含有化合物が、少なくとも1個のアミノ基が(ポリ)アルキレングリコール基で修飾された構造を有する化合物である場合は、ポリアミンに、アルキレンオキシドを付加反応させることにより当該化合物を容易に得ることができる。付加反応の方法は特に限定されず、通常の手法により行えばよい。なお、反応に供する化合物は各々1種又は2種以上を使用することができる。
【0043】
上記アルキレンオキシドは特に限定されず、炭素数1〜30のアルキレンオキシドの1種又は2種以上を使用することができる。溶解性向上の観点から、アルキレンオキシドの炭素数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2である。なお、2種以上のアルキレンオキシドが付加する場合、その付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0044】
上記アルキレンオキシドの平均付加モル数は特に限定されないが、1〜300の数であることが好ましい。フィルム強度維持及び溶解性向上の観点から、より好ましくは2〜300の数、更に好ましくは5〜150の数、特に好ましくは10〜100の数、最も好ましくは10〜50の数である。
なお、アルキレンオキシドの平均付加モル数とは、ポリアミン骨格(好ましくはポリアルキレンイミン骨格)1モルあたりに付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値である。
【0045】
上記アルキレンオキシドの付加反応後、更に変性処理を行ってもよい。本発明のポリアミン骨格含有化合物には、このような変性処理後の化合物も包含される。例えば、アルキレンオキシドの付加反応後に、末端に存在する水酸基の一部又は全部を変性処理してもよい。変性処理方法は特に限定されず、例えば、特開2006−241372号公報〔0017〕〜〔0044〕等を参照して行えばよい。
【0046】
その他、ポリアミンとエポキシ化合物と重亜硫酸塩とを反応することによっても、少なくとも1個のアミノ基が(ポリ)アルキレングリコール基で修飾された構造を有するポリアミン骨格含有化合物を得ることができる。この手法は、例えば、特開2013−60562号公報〔0028〕〜〔0039〕等を参照して行えばよい。
【0047】
(ii)カルボン酸(塩)基による修飾
上記ポリアミン骨格含有化合物が、少なくとも1個のアミノ基がカルボン酸(塩)基で修飾された構造を有する化合物である場合は、ポリアミンに、カルボン酸系単量体をマイケル付加反応させることにより当該化合物を容易に得ることができる。付加反応の方法は特に限定されないが、例えば、特開2004−2589号公報〔0011〕〜〔0016〕等を参照して行うことが好ましい。なお、反応に供する化合物は各々1種又は2種以上を使用することができる。
【0048】
この場合、ポリアミンに対するカルボン酸系単量体の付加量は特に限定されないが、例えば、ポリアミン中の全窒素原子100モル%中、1〜80モル%に、カルボン酸系単量体が付加するように設定することが好ましい。より好ましくは5〜70モル%の窒素原子に、更に好ましくは10〜60モル%の窒素原子に、カルボン酸系単量体が付加するように設定することである。
【0049】
上記カルボン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボン酸(塩)基(すなわち、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩)とを含む化合物である。中でも、1分子中に不飽和二重結合と1つのカルボン酸(塩)基とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体;1分子中に不飽和二重結合と2つのカルボン酸(塩)基とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体;が好適である。
【0050】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和モノカルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。なお、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」という。
【0051】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸や、これらの塩や無水物等が挙げられる。また、これら不飽和ジカルボン酸系単量体とアルコール類(例えば、炭素数1〜22個のアルコール)とのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸系単量体とアミン類(例えば、炭素数1〜22のアミン)とのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体とグリコール類(例えば、炭素数2〜4のグリコール)とのハーフエステル、マレアミド酸とグリコール類(例えば、炭素数2〜4のグリコール)とのハーフアミド等であってもよい。
【0052】
上述したカルボン酸系単量体の中でも、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。より好ましくは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩である。これにより、冷水への溶解性及び強度により一層優れる水溶性フィルムを得ることができる。更に好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩である。
【0053】
上記カルボン酸系単量体の付加反応後、更に、変性処理を行ってもよい。例えば、ハロゲン化アルキルを反応させて疎水性を付与させてもよいし、多官能性の化合物を用いてポリマー同士を結合させて分子量を上げたりしてもよい。
【0054】
(iii)疎水性基による修飾
上記ポリアミン骨格含有化合物が、少なくとも1個のアミノ基が疎水性基で修飾された構造を有する化合物である場合は、ポリアミンに、疎水性基含有単量体を付加反応させることにより当該化合物を容易に得ることができる。付加反応の方法は特に限定されないが、例えば、特開2005−170977号公報〔0033〕〜〔0040〕等を参照して行うことが好ましい。なお、反応に供する化合物は各々1種又は2種以上を使用することができる。
【0055】
この場合、ポリアミンに対する疎水性基含有単量体の付加量は特に限定されないが、例えば、冷水への溶解性の向上の観点から、ポリアミン中の全窒素原子100モル%に対し、疎水性基が0.1〜20モル%となるように設定することが好ましい。より好ましくは0.3〜12モル%、更に好ましくは0.4〜9モル%、特に好ましくは0.5〜8モル%である。
【0056】
上記疎水性基含有単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、1又は2以上の疎水性基とを含む化合物である。疎水性基としては特に限定されないが、例えば、炭化水素基が好ましい。具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。中でも、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基である。また、炭化水素基の炭素数は、疎水性及び重合性の観点から1〜30が好ましく、より好ましくは2〜20、更に好ましくは5〜20である。
なお、疎水性基は、疎水性である限りヘテロ原子を含んでいてもよく、例えば、上記炭化水素基において水素原子がハロゲン等によって置換されたものであってもよい。
【0057】
上記疎水性基含有単量体として具体的には、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;の他、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。中でも、一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0059】
式中、R
2は、水素原子又はCH
3基を表す。R
a、R
b及びR
cは、同一又は異なって、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。x
1は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。x
2は、(O−CH
2−CH
2)で表される単位の数を表し、0〜100の数である。x
3は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。ただし、R
a、R
b及びR
cが直接結合を表し、かつx
1が0である場合、x
2は1〜100の数であり、かつx
3は1である。R
3は、疎水性基を表す。
【0060】
上記一般式(2)において、R
2は、水素原子又はCH
3基を表すが、好ましくは水素原子である。R
a、R
b及びR
cは、同一又は異なって、CH
2基、CH
2CH
2基、又は、直接結合を表すが、R
a及びR
bは、好ましくはCH
2基である。R
cは、好ましくは直接結合である。R
3で表される疎水性基は、上述のとおり炭化水素基が好ましく、その好適な形態や炭化水素基の炭素数の好ましい範囲も上述したとおりである。また、上述のとおり、疎水性である限りヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0061】
x
1は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。x
1は1であることが好ましい。これにより、疎水性基含有単量体の親水性がより向上されるため、単量体成分における当該単量体の割合を増加させた場合であってもより充分に重合反応が行われる。(O−CH
2−CH(OH))で表される構造は、例えば、グリシジル基とアルコール又はアルキレンオキシドの付加物等の水酸基とを反応させること等により形成される。
【0062】
x
2は、(O−CH
2−CH
2)で表される単位の数を表し、0〜100の数である(ただし、R
a、R
b及びR
cが直接結合を表し、かつx
1が0である場合、x
2は1〜100の数である。)。x
2が1〜100の場合、当該単量体の親水性がより向上することができるため、水等の親水性溶媒を用いても反応しやすいという特性を有する。中でも1〜50が好ましい。また、x
2が0である場合には、R
3で表される疎水性基の効果をより充分に発揮することができる。得られる共重合体の疎水性の観点からは、x
2は0であることがより好ましい。このように親水性と疎水性とのバランスを考慮して、x
2の値を調節することが好ましい。
【0063】
x
3は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である(ただし、R
a、R
b及びR
cが直接結合を表し、かつx
1が0である場合、x
3は1である。)。x
3は、好ましくは0である。
【0064】
上記一般式(2)で表される疎水性基含有単量体としては、例えば、不飽和二重結合を有するアルコール(例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール及びイソプレノール等)に、炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のアルキルグリシジルエーテルを反応させた化合物;不飽和二重結合を有するアルコールのエチレンオキシド付加物に、炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のハロゲン化アルキルを反応させた化合物;炭素数1〜30のアルキルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテルに、炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のアルコール又は炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のアルコールのエチレンオキシド付加物を反応させた化合物;等が挙げられる。
【0065】
上記疎水性基含有単量体として特に好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物である。式中の記号は上述したとおりであり、R
2は水素原子であることが好ましく、R
aはCH
2基であることが好ましい。R
3で表される疎水性基も上述したとおり炭化水素基であることが好ましい。
【0067】
上記疎水性基含有単量体の付加反応後、更に、変性処理を行ってもよい。例えば、カルボン酸系単量体を反応させて親水性を付与したり、多官能性の化合物を用いてポリマー同士を結合させて分子量を上げたりしてもよい。
【0068】
(iv)スルホン酸(塩)基による修飾
上記ポリアミン骨格含有化合物が、少なくとも1個のアミノ基がスルホン酸(塩)基で修飾された構造を有する化合物である場合は、ポリアミンに、スルホン酸系単量体を付加反応させることにより当該化合物を容易に得ることができる。付加反応の方法は特に限定されない。なお、反応に供する化合物は各々1種又は2種以上を使用することができる。
【0069】
この場合、ポリアミンに対するスルホン酸系単量体の付加量は特に限定されないが、例えば、冷水への溶解性の向上の観点から、ポリアミン中の全窒素原子100モル%に対し、スルホン酸(塩)基が0.1〜80モル%となるように設定することが好ましい。より好ましくは0.3〜70モル%、更に好ましくは0.4〜50モル%、特に好ましくは0.5〜30モル%である。
【0070】
上記スルホン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、スルホン酸(塩)基(すなわち、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩)とを含む化合物である。具体的には、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート等の不飽和スルホン酸類や、これらの塩等が挙げられる。
【0071】
上記スルホン酸系単量体として特に好ましくは、経済性及び構造上の安定性の観点から、下記一般式(4)で表される化合物である。この化合物は、例えば、特許第5558357号明細書に記載の手法により得ることができる。
【0073】
式中、R
4は、水素原子又はCH
3基を表す。R
dは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。X及びYは、同一又は異なって、水酸基又はスルホン酸(塩)基を表し、X及びYのうち少なくとも一方は、スルホン酸(塩)基を表す。
【0074】
上記一般式(4)において、R
4は、水素原子又はCH
3基を表すが、好ましくは水素原子である。R
dは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表すが、好ましくはCH
2基である。X及びYは、同一又は異なって水酸基又はスルホン酸(塩)基を表すが、X及びYのうちいずれかがスルホン酸(塩)基を表し、もう一方が水酸基を表すことが好ましい。
【0075】
上述のアミノ基の少なくとも1個が上記修飾基で修飾された構造を有する化合物はまた、ポリアミンに、エポキシ基と上記修飾基の少なくとも1個とを有する化合物(エポキシ基含有化合物とも称す)を付加反応させることによっても、当該化合物を容易に得ることができる。付加反応の方法は特に限定されないが、例えば、特開昭61−64324号公報や、特開2005−170977号公報(特に〔0026〕、〔0033〕〜〔0041〕)等を参照して行うことが好ましい。なお、反応に供する化合物は各々1種又は2種以上を使用することができる。
【0076】
この場合、ポリアミンに対するエポキシ基含有化合物の付加量は特に限定されないが、例えば、ポリアミン中の全窒素原子100モル%に対し、エポキシ基含有化合物が有する修飾基が0.1〜20モル%となるように設定することが好ましい。より好ましくは0.2〜15モル%、更に好ましくは0.3〜12モル%、特に好ましくは0.4〜9モル%、最も好ましくは0.5〜8モル%である。例えば、ポリアミン1重量部に対し、エポキシ基含有化合物が0.01〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.8重量部、更に好ましくは0.1〜1.5重量部、特に好ましくは0.3〜1.5重量部、最も好ましくは0.5〜1.2重量部である。
【0077】
エポキシ基含有化合物とは、上記修飾基(好ましくは、(ポリ)アルキレングリコール基、カルボン酸(塩)基、疎水性基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基)と、1又は2個以上のオキシラン環構造とを含む化合物を意味する。中でも、疎水性基を含む化合物が好ましく、具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基又は(アルキル)アリール基を有するグリシジルエーテル化合物;エポキシアルケン;アリール基含有エポキシアルカン;等が好適である。なお、各炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0078】
上記グリシジルエーテル化合物がアルキル基又はアルケニル基を有する場合、該アルキル基又はアルケニル基の炭素数は1〜30であることが好ましく、より好ましくは2〜20、更に好ましくは3〜18、特に好ましくは4〜13である。具体的には、ブチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基等が好適である。上記グリシジルエーテル化合物がアリール基(アルキル基を有していてもよい)を有する場合、該アリール基の炭素数は6〜30であることが好ましく、より好ましくは6〜20、更に好ましくは6〜15、特に好ましくは6〜12である。具体的には、フェニル基、トルイル基、ナフチル基等が好ましく、中でもフェニル基がより好ましい。
【0079】
上記グリシジルエーテル化合物として具体的には、例えば、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類;フェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル等の(アルキル)フェニルグリシジルエーテル類;シクロペンチルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、オクチルシクロペンチルグリシジルエーテル、オクチルシクロヘキシルグリシジルエーテル等の(アルキル)シクロアルカノールのグリシジルエーテル類;ベンジルグリシジルエーテル、オクチルベンジルグリシジルエーテル等の(アルキル)ベンジルグリシジルエーテル;等が挙げられる。
【0080】
上記グリシジルエーテル化合物はまた、アルキル基、アルケニル基又は(アルキル)アリール基とオキシラン環構造とに加え、(ポリ)アルキレングリコール基を更に有していてもよい。(ポリ)アルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドの好適な形態は、上記(i)(ポリ)アルキレングリコール基による修飾において説明したものと同様である。アルキレンオキシドの平均付加モル数は特に限定されないが、例えば、1〜30が好ましい。このような(ポリ)アルキレングリコール基を更に有するグリシジルエーテル化合物としては、例えばアルキルポリオキシエチレングリシジルエーテル類;(アルキル)フェニルポリオキシエチレングリシジルエーテル類;(アルキル)シクロアルキルポリオキシエチレングリシジルエーテル類;(アルキル)ベンジルポリオキシエチレングリシジルエーテル類;等が挙げられる。
【0081】
上記エポキシアルケン及びアリール基含有エポキシアルカンは、エーテル結合を含まないもの、すなわちエーテル結合非含有の化合物であることが好適である。エポキシアルケンの炭素数は1〜30であることが好ましく、より好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜18、特に好ましくは7〜13である。アリール基含有エポキシアルカンの炭素数は1〜30であることが好ましく、より好ましくは2〜20、更に好ましくは3〜18、特に好ましくは4〜13である。アリール基含有エポキシアルカンとして特に好ましくは、フェニル基、トルイル基又はナフチル基を有するエポキシアルカンであり、中でもスチレンオキシドが好適である。
【0082】
<水溶性樹脂>
本発明で使用される水溶性樹脂は、水中で容易に溶解又は分散する性質を有する。具体的には、20℃の水100gに0.05g以上溶解する樹脂であることが好ましく、より好ましくは0.1g以上溶解する樹脂である。このような性質を有する樹脂であれば、その材質は特に限定されないが、例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩のようなセルロースの誘導体;ポリビニルアルコール系;プルラン;デンプン系;ポリアルキレンオキサイド系;等が使用できる。
【0083】
上記水溶性樹脂は、例えば、プルランよりなるものとしてプルランフィルム(林原社製);セルロース及びカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩よりなるものとしてディゾルボ(三島製紙社製);ポリビニルアルコール系重合体よりなるものとしてソルブロン(アイセロ化学社製)、ハイセロン(日合フィルム社製)、トスロン(東京セロハン紙社製)、クラレビニロンフィルム(クラレ社製);ポリアルキレンオキサイド系のものとして、アルコックス(ポリエチレンオキサイド樹脂)のフィルム(明成化学工業社製)、フレキシーヌ(ポリオキシアルキレングリコールと多価カルボン酸及びその低級アルキルエステルよりなる水溶性樹脂パオゲンをフィルム状としたもの、第一工業製薬社製);等の商品名で入手することができる。
【0084】
上記水溶性樹脂の中でも、フィルム強度や水溶性等の観点から、ポリビニルアルコール系重合体が特に好ましい。すなわち本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール系重合体と、ポリアミン骨格含有化合物とを含むものであることが特に好適である。
以下では、ポリビニルアルコール系重合体について更に説明する。
【0085】
ポリビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル、及び、必要に応じてビニルエステル以外の単量体(他の単量体とも称す)を重合して得られたポリビニルエステル(ポリビニルエステル系重合体)をけん化して得られる重合体であり、下記一般式(5)で表される構造単位を有する。式中、pは平均重合度を表し、1以上の数である。
【0087】
上記ポリビニルエステル系重合体を与えるビニルエステル(単量体)としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の1種又は2種以上が挙げられる。中でも、生産性や入手容易性の観点から、酢酸ビニルが好適である。
【0088】
ポリビニルエステル系重合体を与える単量体は、更に上述した他の単量体を必要に応じて含んでいても良い。他の単量体としては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルホルムアミド系単量体;N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアセトアミド系単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−プロピル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン等のN−ビニルピロリドン系単量体;N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−プロピル−2−カプロラクタム等のN−ビニルカプロラクタム系単量体;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のオキシアルキレン基を有する不飽和単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;エチレン、プロピレン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル等のアリルエーテル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール等のヒドロキシ基を含有するα−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0089】
他の単量体の含有量は、ポリビニルエステル系重合体を与える全単量体100モル%中、50モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
【0090】
上記ポリビニルアルコール系重合体の平均けん化度は、例えば、フィルム強度及び冷水への溶解性をより高める観点から、50〜100モル%であることが好ましい。平均けん化度の下限は、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、また上限は、より好ましくは100モル%未満、更に好ましくは99モル%以下、特に好ましくは95モル%以下である。けん化については、後により詳しく説明する。
【0091】
上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度(一般式(5)中のp)は、例えば、フィルム強度及び冷水への溶解性をより高める観点から、200〜10000であることが好ましい。平均重合度は、より好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上である。また平均重合度は、より好ましくは6000以下、更に好ましくは4000以下である。
【0092】
上記ポリビニルアルコール系重合体の製法としては、ビニルエステル、及び、必要に応じて他の単量体を重合して得られたビニルエステル系重合体を溶媒中でけん化する方法等が挙げられる。
【0093】
上記ビニルエステル系重合体を得るためのビニルエステル、及び、必要に応じて他の単量体の重合としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合、沈殿重合等が挙げられる。溶媒を使用する場合、溶媒としては、アルコール等の公知の溶媒を使用できる。重合に使用される開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ重合開始剤や過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。重合温度は、例えば0℃〜150℃の範囲とすることができる。
【0094】
上記ポリビニルアルコール系重合体は、上記ビニルエステル系重合体をけん化することにより得ることができる。けん化の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル、ジメチルスルホキシド、これらの混合溶媒等を使用できる。けん化の触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、塩酸、過酸化水素等を使用できる。その他のけん化反応の条件は、目的とするけん化度等によって適宜調整すれことができるが、例えば反応温度を0〜200℃とし、0.1〜24時間の反応時間とすることができる。
【0095】
<他の成分>
本発明の水溶性フィルムには、必要に応じて、ポリアミン骨格含有化合物及び水溶性樹脂以外の成分(他の成分とも称す)を1種又は2種以上含んでもよい。他の成分としては特に限定されず、各種添加剤や各種重合体が挙げられる。
他の成分の含有量は、本発明の水溶性フィルム100質量%中、0〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0096】
〔水溶性フィルムの製造方法〕
本発明の水溶性フィルムは、ポリアミン骨格含有化合物から得ることができるが、中でも特に、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂とを混合する工程(混合工程とも称す)を含む製造方法によって製造することが好ましい。また、製膜工程を更に含むことが好ましく、通常のフィルム作製で適用される1又は2以上のその他の工程を含んでもよい。
ここで、ポリアミン骨格含有化合物は市販品を用いてもよいが、1種又は2種以上のアミン(好ましくはアルキレンイミン)を重合する工程を含む製造方法により得られたものを用いてもよい。
【0097】
上記ポリアミン骨格含有化合物としてアミノ基の少なくとも1個が修飾された構造を有する化合物を用いる場合は、ポリアミン(好ましくはポリアルキレンイミン)に、上述した付加反応を行うことが好ましい。すなわち上記製造方法は、ポリアミンに、アルキレンオキシド、カルボン酸系単量体、疎水性基含有単量体、スルホン酸系単量体及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を付加反応させる工程を含むことが好ましい。この工程については上述したとおりである。
以下、各工程について更に説明する。
【0098】
<混合工程>
混合工程は、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程である。混合工程では、必要に応じて他の成分を更に混合してもよい。各成分の混合は、一度に行ってもよいし、混合成分の一部を混合した後に残りを混合させてもよい。
【0099】
上記混合工程において、ポリアミン骨格含有化合物と、水溶性樹脂と、必要に応じて更に他の成分との混合手段は特に限定されず、例えば、溶媒下で溶解又は分散してもよいし、溶融混練してもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては特に限定されず、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、n−ブタノール、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。中でも、水を用いることが好ましい。
【0100】
上記混合工程は、20〜90℃の温度下で行うことが好ましい。これにより、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とがより充分に混合され、より均一性の高い水溶性フィルムを得ることができる。より好ましくは50〜90℃である。
【0101】
<製膜工程>
製膜工程は、上記混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程である。製膜手段は特に限定されず、例えば、上記混合物を基材に塗布し、乾燥又は硬化した後、必要に応じて該基材から剥離することにより形成する方法(塗布法又はコーティング法と称す)や、支持体に、上記混合物から形成されたフィルムを熱圧着することにより形成する方法の他、練込法等も挙げられる。これらの中でも、塗布法を採用することが好ましい。
【0102】
〔用途〕
本発明の水溶性フィルムは、冷水への溶解性に優れ、かつ伸長性の他、耐薬品性も有する。したがって、農薬等の薬品類や洗剤の包装材料として特に有用である。すなわち、本発明の水溶性フィルムは、薬品及び/又は洗剤を包装するために用いられるものであることが好ましい。また、本発明の水溶性フィルムは、薬品及び/又は洗剤の包装に用いるために適したものであることが好ましい。包装対象(薬品類等)の形態(粉末状、顆粒状、液状等)や大きさ、粒度分布等は特に限定されず、例えば洗剤としては、粉末洗剤、液体洗剤、ジェル状洗剤等のいずれも好適である。また、包装対象には、必要に応じて分散剤、結合剤、界面活性剤等の各種添加剤を含んでもよい。また、本発明の水溶性フィルムは更に、再汚染防止能や洗浄力に優れるというビルダー性能を有するため、洗剤の包装材料として特に有用である。
【0103】
<組成物>
本発明はまた、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂とを含む組成物(混合物)でもある。この組成物を成膜することにより本発明の水溶性フィルムを好適に得ることができる。この組成物は、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合することにより得ることができる。
【0104】
<包装物>
本発明はまた、本発明の水溶性フィルムに薬品及び/又は洗剤が包装されてなる包装物でもある。本発明の包装物は、例えば、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを含む水溶性フィルムに薬品及び/又は洗剤が包装されてなる包装物である。包装物や包装物中の薬品及び/又は洗剤の形態や大きさは特に限定されず、適宜設計することができる。包装の形態は、密封包装であってもよく、非密封包装であってもよいが、包装物をより容易かつ安全に使用する観点から、例えば密封包装であることが好ましい。
【0105】
<包装物の製造方法>
本発明は更に、本発明の水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む包装物の製造方法でもある。本発明の包装物の製造方法は、例えば、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程、該混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程、及び、該製膜工程で得た水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む水溶性フィルムの製造方法である。
【0106】
<包装方法等>
本発明はそして、本発明の水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む包装方法でもある。本発明の包装方法は、例えば、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程、該混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程、及び、該製膜工程で得た水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む包装方法である。本発明はまた、本発明の水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む本発明の水溶性フィルムの使用方法でもある。本発明の使用方法は、例えば、ポリアミン骨格含有化合物と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程、該混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程、及び、該製膜工程で得た水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む水溶性フィルムの使用方法である。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」とは「質量%」を意味する。
なお、以下の実施例及び比較例では、ポリビニルアルコール系重合体(PVA)として、ALDRICH社製の試薬・ポリビニルアルコール系重合体(重量平均分子量85000〜124000、けん化度87〜89%)を用いた。以下では、このポリビニルアルコール系重合体を単にポリビニルアルコールとも言う。
【0108】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
(1)GPC測定条件1
以下の実施例で用いたポリアミン骨格含有化合物の重量平均分子量(Mw)の測定は、以下の条件にて行った。
装置:島津製作所社製GPC装置
検出器:RI検出器
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−710−HQ,GF−510−HQ,GF−310HQ
標準物質:プルランP−82(和光純薬工業社製)
溶離液:0.2モル%−モノエタノールアミン水溶液に酢酸を添加してpH5.1に調整したもの
【0109】
(2)GPC測定条件2
比較例2で使用したポリアクリル酸(HL−415)の重量平均分子量(Mw)の測定は、以下の条件にて行った。
装置:東ソー社製、HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー社製 TSK−guard column、及び、TSK−GEL G3000PWXL2本の計3本を直列
カラム温度:35℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学社製、POLY SODIUM ACRYLATE STANDARD
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液
検量線:American Polymer Standard Corp.製、POLYACRYLIC ACID STANDARD
【0110】
<フィルムの作製>
実施例1
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製のエポミンSP−003(ポリエチレンイミン(PEI)、平均分子量300、以下「SP−003」とも称する。)を1.2g、ポリビニルアルコール4.8g、水34.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を、離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)上に、アプリケーターを用いて塗工した。塗工時の厚みは、乾燥後のフィルムの厚みが10〜20μmとなるように設定した。このように塗工処理した離型フィルムを、100℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥させた。次いで、オーブンから取り出し室温にまで冷却後、離型フィルムを剥がすことにより、水溶性フィルム1を得た。
【0111】
実施例2
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製のエポミンSP−006(PEI、平均分子量600、以下「SP−006」とも称する。)を1.2g、ポリビニルアルコール4.8g、水34.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム2を得た。
【0112】
実施例3
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製のエポミンSP−200(PEI、平均分子量10000、以下「SP−200」とも称する。)を1.2g、ポリビニルアルコール4.8g、水34.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム3を得た。
【0113】
実施例4
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製のエポミンSP−006を2.4g、ポリビニルアルコール3.6g、水34.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム4を得た。
【0114】
実施例5
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製のエポミンSP−006を0.3g、ポリビニルアルコール5.7g、水34.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム5を得た。
【0115】
実施例6
日本触媒社製のエポミンSP−006に、窒素原子1モル当り20モルに相当するエチレンオキシド(EO)をエトキシ化して得られたポリエチレンイミンエチレンオキシド共重合体(以下「PN−100」とも称する。)を合成した。50mLのスクリュー管に、PN−100を1.2g、ポリビニルアルコール4.8g、水34.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム6を得た。
【0116】
実施例7
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製の500mLセパラブルフラスコに、純水151.3gと日本触媒社製のエポミンP−1000(PEI、平均分子量70000、樹脂分30%、以下「P−1000」とも称する。)165.0gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態のポリエチレンイミン水溶液中に80質量%アクリル酸水溶液(以下「80%AA」とも称する)93.2gを滴下ノズルより180分かけて滴下した。80%AAの滴下終了後、攪拌下、90℃一定状態の反応系中に48%水酸化ナトリウム水溶液(以下「48%NaOH」とも称する)34.5gを10分かけて滴下した。48%NaOHの滴下終了後、更に6時間にわたって反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結せしめた。このようにして、重量平均分子量(Mw)が320000の末端カルボン酸修飾ポリエチレンイミン(固形分32%、以下「AM−108」とも称する。)を得た。
50mLのスクリュー管に、AM−108を3.75g、ポリビニルアルコール4.8g、水31.45gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム7を得た。
【0117】
比較例1
50mLのスクリュー管に、水を34.0g、ポリビニルアルコール6.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、比較用水溶性フィルム1を得た。
【0118】
比較例2
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製のアクアリックHL−415(ポリアクリル酸、Mw12000、固形分46%。以下「HL−415」とも称する。)を5.2g、ポリビニルアルコール3.6g、水31.2gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、比較用水溶性フィルム2を得た。
【0119】
比較例3
50mLのスクリュー管に、日本触媒製のポリビニルピロリドン(PVP、固形分49%。以下「PVP K30」とも称する。)を2.4g、ポリビニルアルコール4.8g、水32.8gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、比較用水溶性フィルム3を得た。
【0120】
各実施例及び比較例で用いた配合ポリマーの詳細を表1に示す。また、実施例及び比較例で得た各フィルムについて、以下の評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0121】
<フィルムの評価試験>
1、溶解性
100mLビーカーに5℃の純水100gを投入し、マグネティックスターラーと撹拌子を用いて撹拌した。撹拌中の水中に4×4cmの大きさに切り取ったフィルムを投入し、完全に溶解するまでの時間(投入してから、目視でフィルムが見えなくなるまでの時間)を計測した。計測した時間(溶解時間)を表2に示す。更に、この溶解時間を下記式を用いて換算し、厚さ40μmフィルムの溶解時間とした。この溶解時間が短いほど溶解性が良好であることを意味する。
溶解時間(40μm換算)(秒)=(40/フィルムの厚さ(μm))
2×溶解時間(秒)
なお、フィルムの膜厚は、Coolant Proof Micrometer IP65を用いて測定した。フィルムの6箇所をランダムに測定し、その平均値をフィルムの膜厚とした。
【0122】
2、耐硬性
グリシン67.6gと塩化ナトリウム52.6gを秤りとった1Lのビーカーに純水と48%水酸化ナトリウムを加えて、pH10のグリシン緩衝原液600gを調整した。このグリシン緩衝原液を別の1Lビーカーに54.0g秤りとり、純水を加えて1000gになるまで希釈し、グリシン緩衝希釈液とした。別途、フィルムを水に溶解させ、2.5%フィルム水溶液を調整しておき、このフィルム水溶液2.5gにグリシン緩衝希釈液80gを加えて、試験液とした。更に別途、1mol/Lの塩化カルシウム水溶液を調整し、硬水とした。平沼産業社製自動滴定装置COM−1700を用いて、試験液に、硬水を3秒毎に0.1mLずつ滴下し、6mL滴下した時点での650nm光の透過率(%)を測定した。数値が100に近いほど耐硬性が良好であることを意味する。
【0123】
3、強度
3×3cmの大きさに切り取ったフィルム上に、重さ11.84gの金属球を、自由落下させた。落下位置を調節し、フィルムが破れた時の高さにおける金属球の位置エネルギーを下記式:
強度(J)=0.01184(kg)×9.8(m/s
2)×金属球落下位置の高さ(m)
より算出し、強度とした。更に、このようにして算出した値を、下記式:
強度(40μm換算)(J)=(40/フィルムの厚さ(μm))
2×強度(J)
を用いて換算することで、厚さ40μmフィルムの強度とした。値が大きいほど強度が高いことを意味する。
なお、フィルムの膜厚は、Coolant Proof Micrometer IP65を用いて測定した。フィルムの6箇所をランダムに測定し、その平均値をフィルムの膜厚とした。
【0124】
4、伸長性
1.5×9.0cmの大きさに切り取ったフィルムを、室温下、引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−100D)にて、初期標線距離60mm、引っ張り速度5mm/minの条件で引っ張り破断した時のひずみ(最大ひずみ)(%)を伸長性として評価した。最大ひずみが大きいほど伸長性が高いことを意味する。
【0125】
5、消臭性
ガラス製シャーレを用意し、フィルムを2.5g秤量して入れた。またブランクとして空のシャーレを用意した。これらのシャーレをそれぞれ、コック付きサンプリングバッグ(GLサイエンス社製、スマートバッグPA、容量3L)に入れ、ヒートシールして完全に密閉した。各サンプリングバッグ内を真空にした後、窒素ガス2Lを量り入れた。各バッグ内のシャーレを開けた後、酢酸飽和窒素ガスを、シリンジを用いて5mL量り取り入れた。2時間静置した後、酢酸用の検知管(ガステック社製、No.81又は81L)を用い、バッグ内の気体100mLを吸引して、酢酸濃度の低減率(%)を比較した。なお、測定値は、検知管の説明書に記載の換算スケールを用いて酢酸濃度に換算した。
酢酸の低減率は下式のように算出した。
低減率(%)=(ブランクのガス濃度−試料入りのガス濃度)÷(ブランクのガス濃度)×100
【0126】
6、再汚染防止能
Testfabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE6000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。塩化カルシウム2水和物4.41gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0g、炭酸ナトリウム6.0g、硫酸ナトリウム2.0gに純水を加えて100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。ターゴットメーターを25℃ にセットし、硬水1L及び界面活性剤水溶液5g、各実施例又は比較例で得たフィルム(固形分換算)の10%水溶液1g、ゼオライト0.15g、カーボンブラック0.25gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌した。その後、白布5枚を入れ100rpmで10分間攪拌した。手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。再度、手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。手で白布の水を切り、白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布の白色度を反射率にて測定した。以上の測定結果から下記数式により再汚染防止率(%)を求めた。なお、再汚染防止率が高いほど、再汚染防止能に優れることを意味する。
再汚染防止率(%)=(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)×100
【0127】
7、カーボンブラック分散能
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.60g、48%水酸化ナトリウム5.00gに純水を加えて600.0gとした後、48%水酸化ナトリウムでpH10とし、グリシンバッファーを調製した。次に、このグリシンバッファー6.00gとエタノール11.10gに純水を加えて1000.0gとし、分散液を調製した。また、各実施例又は比較例で得たフィルム(固形分換算)の5.0%水溶液を約10g調製した。100mlのねじ口瓶にカーボンブラック0.03gを取り、ここに上記5.0%フィルム水溶液9.0g、分散液81.0gを加え、試験液とした。試験液の入ったねじ口瓶を超音波洗浄器に5分間かけ、更に、長さ10mmのスターラーチップを入れて500rpmで5分間攪拌した。攪拌を止めて3時間静置した後、試験液の外観を観察した。判定基準は以下の通りとした。
(1)カーボンブラック水和能:
〇:目視にて、カーボンブラックがほとんど液面に見られなかった。
△:目視にて、少量のカーボンブラックが液面に浮いていた。
×:目視にて、多量のカーボンブラックが液面に浮いていた。
(2)カーボンブラック分散:
〇:目視にて、液中にカーボンブラックが濃厚に分散していた。
△:目視にて、液中にカーボンブラックが均一に分散していた。
×:目視にて、液中のカーボンブラックが分散していなかった。
【0128】
8、洗浄力
人工汚染布として、洗濯科学協会より入手した湿式人工汚染布を用いた。人工汚染布は、予め測色色差計SE6000(日本電色工業社製)を用いて、白色度を反射率で測定した。塩化カルシウム2水和物1.47gに純水を加えて10kgとし、硬水を調製した。ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(AES)4.8g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(AE)0.6g、ホウ酸ナトリウム0.6g、クエン酸0.9g、プロピレングリコール2.4gに純水を加えて全体で80gとした。水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.2に調整した後に純水を加えて全体で100gとし、界面活性剤水溶液を調製した。ターゴットメーターを27℃ にセットし、硬水1000mL、各実施例又は比較例で得たフィルム(固形分換算)の濃度2.75%溶液5mL、界面活性剤水溶液4.8mL、人工汚染布5枚、JIS L0803準拠綿白布5枚をポットに入れ、100rpmで10分間攪拌した。人工汚染布をポットから取り出し、人工汚染布の水分を手で絞った。ポットに硬水1000mLを入れ、水分を絞った人工汚染布をポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。人工汚染布をポットから取り出し、手で水分を絞った後、人工汚染布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた。乾燥した人工汚染布の白色度を測色色差計で反射率により測定した。以上の方法により測定された値と下式により洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄後の人工汚染布の白色度−洗浄前の人工汚染布の白色度)÷(人工汚染布の元白布(EMPA221)の白色度−洗浄前の人工汚染布の白色度)×100
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
表2より、以下のことを確認した。
実施例1〜7と比較例1とは、ポリアミン骨格含有化合物を用いるか否かの点で主に相違するが、溶解性に顕著な差が生じたことが分かる。実施例4と比較例2とは、本発明のポリアミン骨格含有化合物を用いるか又はポリアクリル酸を用いるかの点で主に相違するが、特に耐硬性や伸長性に顕著な差が生じたことが分かる。従って、ポリアミン骨格含有化合物を必須に含む構成とすることで、冷水への溶解性及び耐硬性のいずれにも優れる水溶性フィルムとなることが分かった。また、実施例1〜3、6、7と比較例3とは、本発明のポリアミン骨格含有化合物を用いるか又はポリビニルピロリドンを用いるかの点で主に相違するが、この場合、溶解性又は伸長性に差が見られる。それゆえ、高価なポリビニルピロリドンを必須としなくても、溶解性や伸長性に優れる水溶性フィルムとなることが分かった。
【0132】
表には記載していないが、実施例1〜7で得たフィルムが高強度を有することも確認した。実施例1〜7で得たフィルムはまた、比較例3で得たフィルム(ポリビニルピロリドン使用)に比べて、再汚染防止能や洗浄力に優れていることも確認した。更に、実施例1〜7で得たフィルムは、消臭性や、無機微粒子(カーボンブラック)の分散能にも優れた性能を有することを確認した。