特許第6574867号(P6574867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574867
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】銀ナノプレート組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20190902BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20190902BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20190902BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20190902BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B22F9/24 F
   A61K47/32
   A61K47/10
   A61K47/36
   A61K47/08
   A61K47/06
   A61K47/12
   A61K47/04
   A61K47/20
   A61K47/42
   A61K9/10
   A61K33/38
   A61P17/00
   A61P31/04
   B22F1/00 K
   B22F1/02 D
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-76470(P2018-76470)
(22)【出願日】2018年4月12日
(62)【分割の表示】特願2015-536844(P2015-536844)の分割
【原出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2018-172795(P2018-172795A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年5月7日
(31)【優先権主張番号】61/795,149
(32)【優先日】2012年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515096077
【氏名又は名称】ナノコンポジックス,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513047246
【氏名又は名称】シエナ バイオファーマシューティカルズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】Sienna Biopharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】オルデンバーグ スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ミランダ マーティン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】セバ デイビッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハリス トッド ジェイ.
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0101007(US,A1)
【文献】 特表2010−535938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/24
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極めて高い光学濃度をもつ銀ナノプレートの溶液を生成するための方法であって、
化剤を、銀ナノプレートまたは前駆体試薬の溶液に添加する工程と;
銀ナノプレートの該濃度を増加させ、該溶液の該光学濃度を増加させる工程と
を含み、
銀ナノプレートの該溶液が、シード媒介成長法を用いて形成される、方法。
【請求項2】
該銀ナノプレートが、1.5〜25の間のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ナノプレートが、10nm〜250nmの間のエッジ長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該ナノプレートの横断面が三角形である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該ナノプレートの横断面が円形である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
銀ナノプレートの該溶液が、1または複数の形状安定化剤および銀源を含む溶液から形成される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
電磁線を用いて該銀源が還元される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
熱を用いて該銀源が還元される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための方法であって、
板形状を有する複数の銀ナノプレートを含み、0.1〜10cm-1の間のピーク光学濃度を有する溶液を準備する工程と;
安定化剤を該溶液に添加する工程と;
緩衝液を該溶液に添加する工程と;
該緩衝液を含有する溶液を濃縮して濃縮溶液を形成する工程であって、該濃縮溶液が該板形状を有する複数の銀ナノプレートを含み、該濃縮溶液が、10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する、工程と
を含む、方法。
【請求項10】
該濃縮したナノプレートを単離する工程と
該単離した濃縮ナノプレートをシリカで封入する工程と
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
ナノプレートが、接線流濾過によって濃縮される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
金属酸化物で被覆された銀ナノプレートを生成するための方法であって、
500〜1500nmの間のピーク吸収スペクトルおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する銀ナノプレートの溶液を準備する工程と;
該溶液を、該銀ナノプレートの外面に金属酸化物被膜を形成するのに十分な量の金属酸化物と接触させる工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先出願の参照組み込み
本願は、参照によりその全文が組み込まれる、2012年10月11日出願の米国特許仮出願第61/795,149号の優先権の利益を主張する。
【0002】
共同研究契約の当事者
本明細書に記載される本発明は、Sienna Labs,Inc.とnanoComposix,Inc.との間の共同研究契約によって作り出された。
【0003】
背景
発明の分野
本発明は、高い光学濃度の銀小板ナノ粒子(例えば、ナノプレート)の溶液を調製するための方法、ならびに前記方法によって調製されるナノ粒子、溶液および基板に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
ナノ粒子は、ナノスフェア、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノキューブ、ナノプレート、ならびにその他の形状を含み、さまざまな材料から合成することができる。一実施形態では、小板ナノ粒子はナノプレートである。金および銀をはじめとする金属から作製されたナノ粒子は、これらのナノ材料によって支持される局在表面プラズモン共鳴のために、電磁スペクトル全体にわたって光と相互作用するよう調整することのできる特有の光学的性質を有する。銀ナノ粒子の特有の光学的性質を利用する技術としては、限定されるものではないが、診断技術、光通信技術、医療技術、および遮蔽技術が挙げられる。数ある中でも光熱腫瘍除去、毛髪除去、にきび処置、創傷治癒、および抗菌用途を含むこれらの技術の部分集合は、高い光学濃度をもつナノ粒子の溶液を使用することがある。銀小板ナノ粒子またはナノプリズムとしても公知の銀ナノプレートは、それらの調整できるスペクトルピークおよび極めて高い光学効率のために、ナノ粒子の光学的性質を利用する技術に特に注目される。光変換(Jin et al.2001;Jin et al.2003)、pH制御光変換(Xue 2007)、熱成長(Hao et al.2004;Hao 2002;He 2008;Metraux 2005)、鋳型成長(Hao et
al.2004;Hao 2002)、およびシード媒介成長(Aherne 2008;Chen;Carroll 2003;Chen;Carroll 2002、2004;Chen et al.2002;He 2008;Le Guevel 2009;Xiong et al.2007)による銀ナノプレートの調製の方法が開発されており、これらの方法は、比較的希薄な、それに対応して低可視性および近赤外光学濃度をもつ溶液を生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jin et al.2001
【非特許文献2】Jin et al.2003
【非特許文献3】Xue 2007
【非特許文献4】Hao et al.2004
【非特許文献5】Hao 2002
【非特許文献6】He 2008
【非特許文献7】Metraux 2005
【非特許文献8】Aherne 2008;
【非特許文献9】Chen;Carroll 2003
【非特許文献10】Chen;Carroll 2002、2004
【非特許文献11】Chen et al.2002
【非特許文献12】Le Guevel 2009
【非特許文献13】Xiong et al.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの銀ナノプレート用途には、銀ナノプレートのより濃縮された溶液が有用であり、特に有利であり得る。一部の例では、これまでに開発された方法の下で銀ナノプレートの調製されたままの溶液を濃縮してより高い粒子濃度を得る場合、ナノ粒子の形状は変化を受けて、光学的性質、例えば光学濃度などの変化をもたらすことがあり得る。多くの例では、これらの変化はナノ粒子の光学的性質の望ましくない劣化をもたらす。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、銀ナノプレートの光学的性質の劣化を減少させる一方で、光学濃度の増加した銀ナノプレート溶液を、より高い濃度で調製する方法を提供する。様々な実施形態では、本発明の方法は、粒子濃度を増加させた場合に、調製された銀ナノプレートの形状および光学的性質を実質的に部分的にまたは完全に保存する、銀ナノプレートの高光学濃度溶液を、希薄な銀ナノプレート溶液から調製することを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の様々な実施形態は、銀ナノプレートの高光学濃度溶液を調製するための方法、ならびにそれらの方法によって調製されるナノ粒子および溶液を提供する。一実施形態では、本方法は、安定化剤とともにナノ粒子表面と結合しているか、またはそうでなければ連結されている1または複数の元の成分(例えば、化学薬剤または生物学的薬剤)の置き換えを含む。もう一つの実施形態では、安定化剤は、元の成分を置き換えるのではなくて、むしろ元の成分を補充または変更する。安定化剤は、濃縮の前、間、および/または後にナノプレートを安定化させ、それによって銀ナノプレートの安定した高光学濃度溶液の製造を可能にする生物学的薬剤または化学薬剤であり得る。一実施形態では、本方法はまた、溶液内の銀ナノプレートの濃度を増加させ、従って溶液光学濃度を増加させる方法も含む。いくつかの実施形態では、高光学濃度溶液の安定性(例えば、溶液中のナノ粒子の特徴、例えば、形状、大きさ、光学的性質、ピーク応答、プラズモン特性など)は、本方法の間、影響を受けないかまたは実質的に影響を受けない。本発明のいくつかの実施形態は、安定化剤(例えば、表面結合分子、化学薬剤、および/または生物学的薬剤)によって安定化された銀ナノプレートの高光学濃度溶液を含む。一実施形態では、本発明は、表面に物理吸着されている、特異的相互作用を通じて表面と分子的に結合している、または各々のナノ粒子を封入する、化学薬剤または生物学的薬剤によって表面が官能化された銀ナノプレートの溶液を含む。
【0008】
一実施形態では、銀ナノプレートの高光学濃度溶液は基板と会合する。一実施形態では、溶液中のナノプレートの一部が基板と結合してナノプレート−基板複合材料を作り出す。銀ナノプレートの高光学濃度溶液は基板と触れて、基板の表面積のかなりの部分がナノプレートで被覆されているナノプレート複合材料を生成することができる。一部の実施形態では、基板は、繊維、布地、メッシュ、包帯、ソックス、ラップ、その他の衣料品、スポンジ、高多孔性基板、1ミクロンよりも大きいエッジ長さをもつ粒子、ビーズ、毛髪、皮膚、紙、吸収性ポリマー、発泡体、木材、コルク、スライド、粗面、生体適合性基板、フィルタ、および/または医療用インプラントを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、安定した銀ナノプレート溶液の光学濃度を増加させるための方法は、(i)板形状を有する複数の銀ナノプレートを含み、0.1〜10cm-1の間のピーク光学濃度を有する溶液を準備すること;(ii)安定化剤を溶液に添加すること;(iii)緩衝液を溶液に添加すること;および(iv)緩衝液を含有する溶液を濃縮して濃縮溶液を形成することを含み、この際、該濃縮溶液は、板形状を有する複数の銀ナノプレートを含み、該濃縮溶液は、10cm-1よりも高いピーク光学濃度を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、安定した銀ナノプレートの高光学濃度溶液を製造するための方法は、以下の:(i)安定化剤を銀ナノプレートの溶液に添加すること、(ii)緩衝液(例えば、水溶性の塩を含有する緩衝液など)を銀ナノプレートの溶液に添加すること、(iii)安定化剤と緩衝液および銀ナノプレートを、銀ナノプレートの表面で安定化剤が緩衝液中の水溶性塩と相互作用するのに十分な時間にわたって混合すること、ならびに(iv)溶液を10cm-1よりも高いピーク光学濃度(例えば、50〜1500cm-1)に濃縮することを含む。
【0011】
安定化剤には、クエン酸ナトリウム、水溶性ポリマー、(例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよび/またはスルホン酸塩で誘導体化された炭化水素ポリマーなど)、ポリビニル系ポリマー(例えばポリビニルアルコール(PVA)および/またはポリビニルピロリドン(PVP)など)、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、またはデキストランの1またはそれ以上が含まれ得る。水溶性塩には、硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩の1またはそれ以上が含まれ得る。様々な実施形態では、安定化剤と、1または複数の水溶性塩を含有する緩衝液との組合せが、ナノプレート配合物に対する安定化を提供し、この際、塩の成分の1つが安定化剤と相互作用して安定化剤を架橋し、銀ナノプレート上の被膜の安定性を向上させることができる。一実施形態では、最初の銀ナノプレートの溶液は、1または複数の安定化剤および銀源(例えば、銀塩、銀シードなど)を含む溶液から生成することができ、この際、銀源を還元する(例えば、光交換、pH制御光交換、熱成長、鋳型成長、および/またはシード媒介成長)ために、化学薬剤、生物学的薬剤、混合、電磁線、および/または熱が使用される。
【0012】
様々な実施形態では、銀ナノプレートの溶液を濃縮するための方法には、10cm-1よりも低い(例えば、0.1〜9.9cm-1、1〜9cm-1、3〜7cm-1、1〜5cm-1、および/または5〜10cm-1)ピーク光学濃度を有する複数の銀ナノプレートを含む溶液を準備する工程、安定化剤を溶液に添加する工程、水溶性塩を含有する緩衝液を溶液に添加する工程、および、溶液を10cm-1よりも高いピーク光学濃度(例えば、80〜150cm-1、900〜1100cm-1、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)に濃縮する工程が含まれる。様々な実施形態では、ピーク光学濃度は、10%、50%、100%、200%、500%、1,000%、10,000%またはそれ以上増加する、かつ/あるいは1:1.5、1:2、1:5、1:10またはそれ以上の比で増加する、かつ/あるいは1、1.5、2、5、10、25、50、100、1000倍またはそれ以上倍加する。
【0013】
様々な実施形態では、銀ナノプレートは、1.5〜50の間のアスペクト比(例えば、1.5〜10、25〜50)を有する。一実施形態では、銀ナノプレートは、10nm〜300nmの間(例えば、50〜250、65〜100nm)のエッジ長さを含む。様々な実施形態では、安定化剤は、クエン酸ナトリウム、またはポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびスルホン酸塩で誘導体化された炭化水素ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む。一部の実施形態では、水溶性塩は、硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩の1またはそれ以上を含む。一実施形態では、安定化剤は、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、およびデキストランからなる群の少なくとも1つを含む。一実施形態では、安定化剤はチオール含有分子を含む。チオール含有分子は、ジヒドロリポ酸またはその誘導体を含み得る。本方法には、所望により、濃縮したナノプレートを単離する工程および単離した濃縮ナノプレートを(例えば、シリカまたは別の材料で)封入する工程が含まれる。一実施形態では、本方法には、封入したナノプレートを10cm-1よりも高い光学濃度(例えば、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)に濃縮する工程が含まれる。安定化剤は、銀ナノプレートの形成の前に添加される。一実施形態では、ナノプレートは、接線流濾過によって濃縮される。一実施形態では、銀濃度は、1.0mg/mLよりも高い(例えば、1〜1000、10〜300mg/mL)。
【0014】
様々な実施形態では、金属酸化物で被覆された銀ナノプレートを生成するための方法が提供される。この方法には、500〜1500nmの間のピーク吸収スペクトル(例えば、600〜1400、800〜1200nm)および10cm-1よりも高い光学濃度(例えば、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)を有する銀ナノプレートの溶液を準備する工程、ならびにこの溶液を金属酸化物または金属酸化物前駆体の溶液と銀ナノプレートの外面に金属酸化物被膜を形成するために十分な量で接触させる工程が含まれ得る。ある種の実施形態では、銀ナノプレートは、金属酸化物前駆体と接触する前に、例えば銀ナノプレートの外面に安定化ポリマーを配置することによるなど、安定化ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、またはその組合せ)と会合する。様々な実施形態では、金属酸化物は、シリカであるかまたはシリカを含む。
【0015】
様々な実施形態では、銀ナノプレートの溶液を生成するための方法には、還元剤、安定化剤、水溶性ポリマー、および銀塩を含む溶液を準備する工程、該溶液から複数の銀シードを形成する工程、溶液中で複数の銀シードを複数の銀ナノプレートに成長させて銀ナノプレート溶液を形成する工程、安定化剤を銀ナノプレート溶液に添加する工程、水溶性塩を含有する緩衝液を銀ナノプレート溶液に添加する工程、および銀ナノプレート溶液を10cm-1よりも高いピーク光学濃度(例えば、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)に濃縮する工程が含まれる。
【0016】
様々な実施形態では、組成物は、銀ナノプレートの溶液を含むかまたはそれから本質的になり、銀ナノプレートは、ポリビニルポリマーを含む。一部の実施形態では、ポリビニルポリマーは、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールを含む。いくつかの実施形態では、組成物(例えば、溶液)は、1または複数の塩、例えば水溶性塩(例えば、硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩)などを含む。
【0017】
様々な実施形態では、ポリビニルポリマーは塩と会合し、ポリビニルポリマーは銀ナノプレートの少なくとも一部分を被覆し、かつ/またはポリビニルポリマーは銀ナノプレートの外面に配置されている。一実施形態では、溶液は銀ナノプレートを、溶液中に存在する非金属被覆材料に付着するのに効果的な濃度で含む。溶液は、濃縮されるように配合されてよい。一部の実施形態では、溶液または銀ナノプレートの光学濃度は、10cm-1よりも高い(例えば、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)。溶液は、塩(硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩)を0.1mMよりも高い濃度(例えば、0.1mM〜10mM)で含有してよい。一実施形態では、溶液は、7よりも大きい(例えば、8〜13)pHを有する。一部の実施形態では、銀ナノプレートの吸収スペクトルは、500〜1500nmの間のピーク波長(例えば、600〜1400、550〜1100、810〜830、1000〜1100nm)を含む。一実施形態では、溶液は、炭酸水素塩を含む。銀ナノプレートは、シリカで被覆されていてよい。銀ナノプレートは、10nm〜500nmの間のエッジ長さ(例えば、50〜300、100〜150nm)を有することができる。
【0018】
様々な実施形態では、組成物は、ポリビニルポリマーを含むシェル材料に結合した銀ナノプレートの溶液を含むかまたはそれから本質的になる。一実施形態では、銀ナノプレートは、ポリビニルポリマーで実質的に被覆されている。様々な実施形態では、組成物には金属酸化物が含まれ、金属酸化物はシリカを含み、ポリビニルポリマーはポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含み、銀ナノプレートはポリビニルアルコールおよびシリカに結合している、かつ/または銀ナノプレートは、ポリビニルピロリドンおよびシリカまたはその任意の組合せに結合している。一実施形態では、組成物には、アミン部分およびメルカプト部分から選択される、1つの部分が含まれる。一実施形態では、この部分はシリカに結合している。一実施形態では、組成物には、アルミニウムが含まれる。一実施形態では、溶液の光学濃度は、10cm-1よりも高い(例えば、100〜1100cm-1、またはそれ以上)。一実施形態では、銀ナノプレートの光学濃度は、10cm-1よりも高い(例えば、100cm-1、1000cm-1、11〜5000cm-1、またはそれ以上)。一部の実施形態では、溶液は、水溶性塩(例えば硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩など)を0.1mMよりも高い濃度で(例えば、0.5mM〜2mM、0.1mM〜10mM)含む。一実施形態では、pHは7よりも大きい(例えば、8、9、10、11、12、13)。一実施形態では、銀ナノプレートは、500〜1500nmの間のピーク波長(例えば、700〜1300、810〜830、1000〜1100nm)を含む。
【0019】
様々な実施形態では、組成物には、ポリビニルポリマーを含むシェル材料によって少なくとも部分的に被覆された銀ナノプレートが含まれ、この際、シェル材料の平均厚さは、1nm〜50nmの間(例えば、5、15、40nm)である。一実施形態では、銀ナノプレートは、10nm〜500nmの間(例えば、25、100、250、300nm)の少なくとも1つのエッジ長さを有する。
【0020】
様々な実施形態では、キットは、10cm-1よりも高い光学濃度(例えば、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)をもつナノプレートを含む1または複数の容器、ナノプレートを金属酸化物のシェルで被覆するために適した溶液、およびその取扱説明書を含むかまたはそれから本質的になる。一実施形態では、ナノプレートはポリビニルポリマーを含む。一実施形態では、ポリビニルポリマーは、水溶性塩(例えば、硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩)と相互作用する(例えば、架橋するかまたはそうでなければ結合する)。
【0021】
様々な実施形態では、溶液には、シリカ被膜によって少なくとも部分的に被覆された銀ナノプレートが含まれ、この際、銀ナノプレートは、10cm-1よりも高い(例えば、11〜5000cm-1、90〜1100cm-1、またはそれ以上)ピーク光学濃度を含む。一実施形態では、シリカ被膜は、2〜100nmの間(例えば、10〜70、30〜90、40〜60nm)のシェル厚さを有する。一実施形態では、溶液は、水溶性塩(例えば、硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩)を0.1mMよりも高い濃度(例えば、0.1mM〜10mM)で含む。一実施形態では、溶液は、7よりも大きいpH(例えば、9、12、13)を有する。一実施形態では、銀ナノプレートは、500nm〜1500nmの間(例えば、800〜1400nm)のピーク波長を含むピーク吸収スペクトルを有する。一実施形態では、シリカ被膜は、銀ナノプレートの外面に配置される。一実施形態では、被膜には、アミン部分またはメルカプト部分が含まれる。一実施形態では、被膜には、アルミニウムがさらに含まれる。一実施形態では、被膜には、炭酸水素塩が含まれる。一実施形態では、被膜には、ポリビニルピロリドンが含まれる。一実施形態では、銀ナノプレートは、1nm〜50nmの間(例えば、10〜40、15〜25、5〜30)の厚さを備える。一実施形態では、銀ナノプレートは、10nm〜500nmの間の少なくとも1つのエッジ長さ(例えば、20〜400、50〜250、300〜450)を備える。
【0022】
一部の実施形態では、極めて高い光学濃度をもつ銀ナノプレートの溶液を生成するための方法には、(i)濃度安定化化学薬剤を銀ナノプレートの溶液または前駆体試薬に添加する工程および(ii)銀ナノプレートの濃度を増加させて溶液の光学濃度を増加させる工程が含まれる。
【0023】
様々な実施形態では、銀ナノプレートは、1.5〜25の間(例えば、1.5〜10、1.5〜5、10〜30、25〜50)のアスペクト比を有し;かつ/またはナノプレートは、約10nm〜250nmの間(例えば、25〜180、50〜150nm)のエッジ長さを有し;および/またはナノプレートは横断面が三角形であり;かつ/またはナノプレートは断面が円形である。一実施形態では、ナノプレート断面の周囲は、4〜8の間(例えば、5、6、7)のエッジを有する。様々な実施形態では、銀ナノプレートの溶液は、光変換法、pH制御光変換法、熱成長法、シード媒介成長法、および/または1または複数の形状安定化剤および銀源を含む溶液の1または複数を用いて形成される。様々な実施形態では、化学薬剤または生物学的薬剤、および/または電磁線、および/または熱、またはその組合せを用いて銀源を還元する。一実施形態では、銀ナノプレートの溶液は、還元剤、形状安定化剤、光源、熱源、および銀源の一部の組合せから形成される。
【0024】
一実施形態では、酸、塩基、または緩衝液(「緩衝剤」とも呼ばれる)を添加して溶液pHを変化させる。様々な実施形態では、濃度安定化化学薬剤は、銀ナノプレートの形成の前、間、および/または後に添加される。一実施形態では、濃度安定化化学薬剤は、形状安定化剤として働く。一実施形態では、濃度安定化化学薬剤は、還元剤として働く。一実施形態では、濃度安定化化学薬剤は、溶液pHを変える薬剤として働く。
【0025】
一実施形態では、濃度安定化化学薬剤は、水溶性ポリマーである。様々な実施形態では、ポリマーは、ポリスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの誘導体、ビニルポリマーの誘導体、およびポリビニルアルコール(PVA)のいずれかまたは複数である。様々な実施形態では、PVAは、約80,000ダルトン未満、約80,000ダルトン〜120,000ダルトンの間、および/または約120,000ダルトンよりも大きい分子量を有する。一実施形態では、ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。様々な実施形態では、PVPは、約20,000ダルトン未満、約20,000ダルトンよりも大きい、約20,000ダルトン〜60,000ダルトンの間、および/または約60,000ダルトンよりも大きい分子量を有する。一実施形態では、ポリマーは、エチレンオキシド誘導体である。
【0026】
一実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。様々な実施形態では、PEGは、約5,000ダルトン未満、約5,000ダルトン〜10000ダルトンの間、および/または約10000ダルトンよりも大きい分子量を有する。一実施形態では、PEGは、単一の官能基を含有する。一実施形態では、PEGは2つの官能基を含有する。一部の実施形態によれば、1または複数の官能基は、以下の:アミン、チオール、アクリル酸塩、アルキン、マレイミド、シラン、アジド、ヒドロキシル、脂質、ジスルフィド、蛍光分子、および/またはビオチン、またはその組合せの1またはそれ以上からなる。一実施形態では、1または複数の官能基は、アミン、チオール、アクリル酸塩、アルキン、マレイミド、シラン、アジド、ヒドロキシル、脂質、ジスルフィド、蛍光分子、および/またはビオチンのいずれかまたは複数であり得る。一実施形態では、濃度安定化剤は、炭水化物誘導体である。様々な実施形態では、ポリマーは、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、および/またはデキストランである。様々な実施形態では、デキストランは、約2000ダルトン未満(例えば、500、1000、1500ダルトン)、約2000ダルトン〜5000ダルトンの間(例えば、3000、4000ダルトン)、および/または約5000ダルトンよりも大きい(例えば、6000、8000、10000ダルトンまたはそれ以上)分子量を有する。
【0027】
様々な実施形態では、濃度安定化化学薬剤は、フェノール、モノマーフェノール、二量体フェノール、三量体フェノール、ポリフェノール、タンニン酸、アラビアゴム、生体分子、タンパク質、ウシ血清アルブミン、ストレプトアビジン、ビオチン、ペプチド、オリゴヌクレオチド、天然に存在するオリゴヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、金属もしくは半金属酸化物、および/または二酸化ケイ素シェルのいずれかまたは複数である。一実施形態では、二酸化ケイ素シェルは、厚さが約1nm未満から約100nmに及ぶ(例えば、2〜90、5〜25、30〜70)。一実施形態では、安定化剤の組合せが使用される。
【0028】
様々な実施形態では、溶媒は、水、アルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、水とアルコールとの混合物の1または複数であり得る。
【0029】
一実施形態では、銀ナノプレートの濃度は、接線流濾過を用いて増加させる。一実施形態では、接線流濾過は、接線流濾過膜を用いて実施される。一実施形態では、接線流膜は、セルロースエステルまたはセルロースエステルの混合物製である。
【0030】
様々な実施形態では、接線流膜は、1または複数のポリエーテルスルホン(polyetheresulfone)および/またはポリスルホン製である。様々な実施形態では、接線流膜は、約10kD未満(例えば、1、5、8kD)、約10kD〜500kDの間(例えば、50、250、400kD)、約500kDよりも大きい(例えば、750、1000、5000kDまたはそれ以上)、約0.05μm未満(例えば、0.01、0.03μm)、約0.05μm〜0.5μmの間(例えば、0.1、0.25、0.4μm)、および/または約0.5μmよりも多くの(例えば、1.0、2、5、10、100μm)の分子量カットオフを有する。
【0031】
様々な実施形態では、銀ナノプレート溶液を濃縮して、約10cm-1よりも高い、約50cm-1よりも高い、約75cm-1よりも高い、約100cm-1よりも高い、および/または約500cm-1よりも高い(例えば、100〜1000、100〜2000cm-1)光学濃度をもつ溶液を生成する。
【0032】
一実施形態では、濃縮溶液の溶媒は、接線流濾過を用いて交換される。一実施形態では、濃縮溶液は、接線流濾過を用いて残留化学物質を除去するために処理される。
【0033】
様々な実施形態では、銀ナノ粒子を含むナノ粒子の溶液は、100cm-1よりも高い(例えば、200、500、700、1500cm-1、またはそれ以上)光学濃度をもつポリマーで被覆される。一実施形態では、銀ナノプレートの溶液は、基板とともにインキュベートされる。一実施形態では、基板は、銀ナノプレートの溶液から取り出されて乾燥される。
【0034】
本発明の一実施形態は、標的組織領域の熱変調を実施するのに適した、プラズモンナノ粒子、例えば、銀ナノプレートなどの溶液を作製するための方法を提供する。標的組織の熱変調は、有効量のプラズモンナノ粒子が標的組織領域のドメインに局在し、標的組織領域のドメインの熱変調を誘発するために効果的な量で励起表面プラズモン共鳴源から送られるエネルギーに標的組織領域をさらすような条件下で、複数のプラズモンナノ粒子を含む組成物を被験体に投与した場合に達成することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載される材料は、組織の切除を伴うかまたは切除を伴わない標的加熱を実施するのに有用である。例えば、一実施形態では、(i)被験体の皮膚表面に銀ナノプレートを含むプラズモンナノ粒子の組成物を局所投与する工程;(ii)皮膚表面から皮膚組織の成分へプラズモン粒子を再分配するための浸透手段を提供する工程;および(iii)光によって皮膚表面の照射をもたらす工程を含む、組織の切除を伴うかまたは切除を伴わない標的加熱を、処置を必要とする哺乳動物被験体を処置するために実施するための方法が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明は、適切な投与方法および励起方法で光に基づくエネルギー源とともに使用された場合に、ナノ粒子の使用によって、皮膚および下にある組織、またはその他の接近可能な組織空間の非侵襲性または最小限侵襲性の処置を達成することのできる組成物を含む。プラズモンナノ粒子、例えば、銀ナノプレートなどの光学濃度溶液を短いパルス幅のレーザー励起(例えば、0.1ms〜1sのパルス幅)とともに使用することは、急峻で一時的な熱勾配を作り出すことができ、それは粒子が局在しているいくつかの細胞層の中の構造、例えばにきび処置および孔径縮小のための毛嚢脂腺単位、皮膚のリサーフェシングおよび小さい外面の瘢痕の組織修復のための標的化された上皮層および皮層、および永久脱毛のための毛包に、切除を伴ってまたは切除を伴わずに熱を選択的に標的化する。処置としては、限定されるものではないが、脱毛、毛髪成長および再成長、および皮膚の若返りまたはリサーフェシング、にきびの除去または縮小、シワの減少、毛穴の縮小、セルライトおよびその他の皮膚の脂質沈着の除去、いぼおよび真菌の除去、肥厚性瘢痕、萎縮性瘢痕、およびケロイドを含む瘢痕の菲薄化または除去、異常な色素沈着(例えばポートワイン母斑など)、刺青の除去、および/または皮膚の不整合性(例えば、肌目、色、色調、弾力、水和)を挙げることができる。その他の治療法または予防法としては、限定されるものではないが、多汗症、無汗症、フライ症候群(味覚性発汗)、ホルネル症候群、およびRoss症候群、日光角化症(actinici keratosis)、毛包性角化症、皮膚炎、白斑、粃糠疹、乾癬、扁平苔癬、湿疹、脱毛症、乾癬、悪性もしくは非悪性皮膚腫瘍の処置が挙げられる。
【0036】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、本発明の説明となる実施形態を示す添付の図と併せて以下の詳細な説明から明らかとなり、以下が図面の説明である。これらの図面は例であり、実施形態を制限するために使用されるものではない。さらに、述べられた特徴を有する実施形態の列挙は、さらなる特徴を有するその他の実施形態または述べられた特徴の異なる組合せを組み込むその他の実施形態を排除するものではない。さらに、一つの実施形態の(例えば1つの図での)特徴は、その他の実施形態の説明(および図)と組み合わされてよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に従う光変換法を用いて調製した銀ナノプレート溶液の光学スペクトルを説明する図である。調製されたままでは、これらの銀ナノプレートは、一実施形態では、1cm-1未満(例えば、約0.8cm-1)のピーク光学濃度を有する。
図2】本発明の一実施形態に従う種成長法を用いて調製した銀ナノプレート溶液の光学スペクトルを説明する図である。調製されたままでは、これらの銀ナノプレートは、3cm-1未満のピーク光学濃度を有する。
図3A】本発明の一実施形態に従う光変換法を用いて調製した銀ナノプレート溶液の透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
図3B】本発明の一実施形態に従う種成長法を用いて調製した銀ナノプレート溶液の透過型電子顕微鏡画像を示す図である。
図4】接線流濃縮前および接線流濃縮後の、本発明の一実施形態に従う、安定化剤および水溶性塩を添加しない、銀ナノプレートの光学スペクトルを示す図である。
図5】接線流濃縮前および濃縮後の、本発明の一実施形態に従う、安定化剤および水溶性塩を添加しない、銀ナノプレートの正規化した光学スペクトルを示す図である。
図6】濃縮前および濃縮後の、ポリビニルアルコールおよび水溶性塩と合した銀ナノプレートの一実施形態に従う光学スペクトルを示す図である。
図7】濃縮前および濃縮後の、ポリビニルアルコールおよび水溶性塩と合した銀ナノプレートの一実施形態に従う、正規化した光学スペクトルを示す図である。
図8】本発明の様々な実施形態に記載される方法を用いて処理された高光学濃度ナノプレート溶液の光学消光スペクトルを示す図である。
図9】銀ナノプレートを調製し、安定化剤を添加し、ナノプレートを濃縮し、所望によりナノプレートをシリカで被覆することによる、銀ナノプレートの一実施形態を作製するための工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明のいくつかの実施形態は、標的組織領域の熱変調を実施するのに適した銀ナノプレートを含むプラズモンナノ粒子の溶液を作製するための方法を含む。一実施形態では、標的組織の熱変調は、複数のプラズモンナノ粒子を含む組成物が、有効量のプラズモンナノ粒子が標的組織領域のドメインに局在するような条件下で被験体に投与される場合に達成することができる。標的組織領域は、励起表面プラズモン共鳴源から送られるエネルギーにさらされる。エネルギーは、標的組織領域のドメインの熱変調を誘発するために効果的な量で送られる。
【0039】
光学濃度(Optical Density:O.D.)は、本明細書において吸光度の同意語として用いられ、材料への入射放射線と、材料を透過した放射線との対数比と定義される(O.D.=−log10(I1/I0)、ここで、I1は、透過光の強度であり、
0は入射光の強度である)。溶液に関して、光学濃度は、液体サンプルを通過する経路
長の関数であり、cm-1の単位で表される。一部の例では、光学濃度は単位cm-1を使用せずに(例えば1cmの標準経路長が使用される例などのように)表される。銀ナノプレートを製造する一部の従来法では、さらなる処理を行わない合成されたままの溶液中の銀ナノプレートの最大光学濃度は、一般に10cm-1未満(例えば、0.1〜9.9cm-1、1〜9cm-1、3〜7cm-1、1〜5cm-1、および/または5〜10cm-1)である。しかし、本発明の一部の実施形態によれば、増加した光学濃度をもつ銀ナノプレートを製造することができる。一般に、銀ナノプレートを含むプラズモン粒子を含有する溶液の光学濃度は、10cm-1よりも高い(例えば、11〜5000cm-1、15〜2000cm-1、20〜1000cm-1、80〜150cm-1、90〜110cm-1、900〜1100cm-1、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上の)光学濃度で最も効果的であり、製薬用もしくは化粧用担体に配合され、粒子形状および/または性質の変更なく、数日、数か月、数週または数年間安定している。一実施形態では、銀ナノプレートを含むプラズモン粒子を含有する溶液の光学濃度は、10cm-1よりも大きく(例えば、11〜5000cm-1、15〜2000cm-1、20〜1000cm-1、80〜150cm-1、90〜110cm-1、900〜1100cm-1、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)、製薬用もしくは化粧用担体に配合され、粒子形状および/または性質の変更なく、数日、数か月、数週または数年間安定している。一実施形態では、担体および組成物は、哺乳動物被験体の皮膚への局所投与に適し、結果としてプラズモンナノ粒子が皮膚の成分の選択的熱変調に効果的な量で存在する。
【0040】
一部の実施形態では、ナノ粒子配合物は、スポンジ塗布具、布塗布具、手または手袋をはめた手による直接接触、スプレー、エアロゾル、真空吸引、高圧気流、または高圧液体流、ローラー、ブラシ、平面表面、半平面表面、ワックス、超音波およびその他の音波力、機械的振動、毛幹の操作(引くこと、マッサージすることを含む)、物理的な力、熱による操作、および/またはその他の処置による適用用に配合される。一部の実施形態では、ナノ粒子配合物の処置は、単独で、組み合わせて、順次に実施される、あるいは1〜24回またはそれ以上繰り返される。その他の実施形態では、プラズモンナノ粒子は皮膚の第1の成分に選択的に局在することができ、そこでは物理的なマッサージもしくは圧力、超音波、または熱が、この第1の成分へのナノ粒子の選択的局在性を増加させる。そのうえ、ナノ粒子は、第1の成分以外の皮膚の成分から選択的に除去可能であり、そのような除去は、アセトン、アルコール、水、空気、皮膚の剥脱、ケミカルピーリング、ロウ引き、またはプラズモン化合物の還元によって達成することができる。さらに、一部の実施形態では、ナノ粒子は、担体中のナノ粒子の溶解度を増加させ、かつ/または非標的部位での「粘着性」および蓄積を減少させるコート層を有する。一実施形態では、ナノ粒子の外面の少なくとも一部分は、例えばポリマー、極性モノマー、非極性モノマー、生物学的化合物、金属(例えば、金属薄膜、金属複合材料、金属酸化物、または金属塩)、誘電体、または半導体の層を含むように修飾される。一実施形態では、外面修飾は、極性、非極性、荷電、イオン性、塩基性、酸性、反応性、疎水性、親水性、作動性、および/または拮抗性である。一実施形態では、プラズモンナノ粒子の溶液中の少なくとも1つのナノ粒子の少なくとも1つの寸法は、50〜100nmよりも小さく(例えば、1、5、10、25、40、60、75、90nm)、粒子の寸法を50〜100nmまたはそれ以上(例えば、75、80、110、140、200、800nm)に増大させるために、ナノ粒子表面を10〜100nmまたはそれ以上の厚さ(例えば、20、50、75、150、200、500nm)のマトリックス(例えば、シリカ)で被覆することができる。この増加した寸法サイズは、全てのナノ粒子の標的領域(例えば、毛包、毛穴、皮膚など)への送達を増加させ、非標的領域(例えば、真皮)への送達を制限することができる。
【0041】
様々な実施形態では、本明細書に記載される材料は、組織の切除を伴うかまたは切除を伴わない標的加熱を実施するのに有用である。例えば、一実施形態では、(i)被験体の皮膚表面に銀ナノプレートを含むプラズモンナノ粒子の組成物を局所投与する工程;(ii)皮膚表面から皮膚組織の成分へプラズモン粒子を再分配するための浸透手段を提供する工程;および(iii)光によって皮膚表面の照射をもたらす工程を含む、処置を必要とする哺乳動物被験体を処置するために、組織の切除を伴うかまたは切除を伴わない標的加熱を実施するための方法が提供される。さらなるまたは追加の実施形態では、光源が、水銀、キセノン、重水素、または金属ハロゲン化物、燐光、白熱光、発光、発光ダイオード、または日光の励起を含む方法が提供される。なおさらなるまたは追加の実施形態では、浸透手段が、高周波超音波、低周波超音波、マッサージ、イオン導入法、高圧気流、高圧液体流、真空、分割された光熱分解または皮膚切除術による前処理、またはその組合せを含む方法が提供される。なおさらなる実施形態では、照射が、約200nm〜約10,000nmの間(例えば、300〜9000、700〜1300、800〜1200、800〜1300、900〜1100、550〜1100、810〜830、1000〜1100nm)の光の波長、約1〜約100ジュール/cm2(例えば、5〜20、40〜
70、10〜90)のフルエンス、約1フェムト秒〜約1秒のパルス幅、および約1Hz〜約1THz(例えば、1〜10、10〜100、100〜1000、1000〜10000、10000〜100000Hzまたはそれ以上)の繰り返し周波数を有する光を含む方法が提供される。
【0042】
本明細書に記載される主題の一実施形態の目的は、適切な投与方法および励起方法で光に基づくエネルギー源とともに使用された場合に、ナノ粒子の使用によって、皮膚および下にある組織、またはその他の接近可能な組織空間の非侵襲性および最小限侵襲性の処置を達成することのできる組成物を提供することである。プラズモンナノ粒子、例えば、銀ナノプレートなどの光学濃度溶液を短いパルス幅のレーザー励起(例えば、0.1ms〜1sのパルス幅)とともに使用することは、急峻で一時的な熱勾配を作り出すことができ、それは、粒子が局在しているいくつかの細胞層の中の構造、例えばにきび処置および孔径縮小のための毛嚢脂腺単位、皮膚のリサーフェシングおよび小さい外面の瘢痕の組織修復のための標的化された上皮層および皮層、および永久脱毛のための毛包に対して、切除を伴ってまたは切除を伴わずに熱を選択的に標的化する。処置としては、限定されるものではないが、脱毛、毛髪成長および再成長、および皮膚の若返りまたはリサーフェシング、にきびの除去または縮小、シワの減少、毛穴の縮小、セルライトおよびその他の皮膚の脂質沈着の除去、いぼおよび真菌の除去、肥厚性瘢痕、萎縮性瘢痕、およびケロイドを含む瘢痕の菲薄化または除去、異常な色素沈着(例えばポートワイン母斑など)、刺青の除去、および/または皮膚の不整合性(例えば、肌目、色、色調、弾力、水和)を挙げることができる。その他の治療法または予防法としては、限定されるものではないが、多汗症、無汗症、フライ症候群(味覚性発汗)、ホルネル症候群、およびRoss症候群、日光角化症、毛包性角化症、皮膚炎、白斑、粃糠疹、乾癬、扁平苔癬、湿疹、脱毛症、乾癬、悪性もしくは非悪性皮膚腫瘍の処置が挙げられる。
【0043】
銀ナノプレートの物理的説明
一実施形態では、ナノプレート、例えば銀ナノプレートなどは、3本の主軸に沿った長さを特徴とする:主軸のうちの2本の軸長は、最も短い主軸の軸長よりも少なくとも2倍大きく、最も短い主軸長は、約500nm未満(例えば、450。400、350、300、250、100、150、50、30、20、10nm)である。ナノプレートの「エッジ長さ」は、2本の長い主軸の長さの平均と規定される。ナノプレートの「厚さ」は、最も短い主軸と規定される。
【0044】
エッジ長さと厚さとの比は、「アスペクト比」と呼ばれる。様々な実施形態では、銀ナノプレートの平均アスペクト比は、1.5、2、3、4、5、7、10、20、30、または50およびその中の任意の範囲よりも大きい。一実施形態では、銀ナノプレートの平均アスペクト比は、1.5〜25の間、2〜25の間、1.5〜50の間、2〜50の間、3〜25の間、および/または3〜50の間である。
【0045】
様々な実施形態では、ナノプレートのエッジ長さは、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、80nm、60nmまたは50nm未満である。一実施形態では、ナノプレートのエッジ長さは、5nm、10nm、20nm、30nm、50nmまたは100nmよりも大きい。様々な実施形態では、エッジ長さは、30nm〜100nm、20nm〜150nm、10nm〜200nm、10nm〜300nmである。様々な実施形態では、ナノプレートは、500nm、300nm、200nm、100nm、80nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、および/または10nmおよびその中の任意の範囲よりも小さい厚さを有する。様々な実施形態では、ナノプレート厚さは、5nm〜20nm、5nm〜30nm、10nm〜30nm、10nm〜50nm、10nm〜100nmである。
【0046】
銀ナノプレートの様々な実施形態は、多様な異なる断面形状を有し、それには(限定されるものではないが)円形、三角形、または任意の数の別個のエッジを有する形状が含まれる。限定されない実施形態では、ナノプレートは、円形、楕円形、正方形、長方形、棒、星、管、角錐、角柱、三角形、分枝として造形されることができるか、または平面状表面で構成されることができる。様々な実施形態では、ナノプレートは、20、15、10、8、6、5、または4未満のエッジ、および/または20〜1の間の任意の数のエッジを有する。様々な実施形態では、ナノプレートは、1〜20、15、10、8、6、5、4、または3の間のエッジを有することができる。一実施形態では、ナノプレートは、2、3、4、または5本よりも多くのエッジを有する。一部の実施形態では、銀ナノプレートは鋭い角を有し、その他の実施形態では、これらの角は丸みがある。銀ナノプレートの一部の実施形態では、同じサンプル内に多様な異なる断面形状がある。銀ナノプレート溶液のその他の実施形態では、溶液中の粒子の数の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%よりも多くが、銀ナノプレートであり、その他の粒子は、限定されるものではないが、球形、立方体形、および不規則形を含む異なる形状を有する。様々な実施形態では、銀ナノプレート溶液は、一定の百分率の銀ナノプレートと、限定されるものではないが、球形、立方体形、および不規則形を含む異なる形状を有する溶液中のその他の粒子を有する。様々な実施形態では、銀ナノプレート溶液は、5%〜100%、10%〜50%、50%〜100%、30%〜60%、60%〜100%、40%〜70%、70%〜100%、50%〜80%、80%〜100%、60%〜90%、および/または90%〜100%の粒子の数を溶液中に有し、これらは、銀ナノプレートと、限定されるものではないが、球形、立方体形、および不規則形を含む異なる形状を有するその他の粒子である。一部の実施形態では、方法は、濃縮プロセスを受けている間に、銀ナノプレート形状の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上を保持しながら、銀ナノプレートの安定性を強化して光学濃度の増加を促進することができる。一部の実施形態では、方法は、濃縮プロセスを受けている間に、銀ナノプレートの50%、40%、30%、25%、20%、10%、5%、3,%、2%、1%未満で、ナノプレートから別の形状(例えば、球形、立方体形、および/または不規則形)へ形状を変化させながら、銀ナノプレートの安定性を強化して光学濃度の増加を促進することができる。様々な実施形態では、ナノプレートは、1、2、またはそれ以上の平らな面を有することができる。もう一つの実施形態では、ナノプレートはピラミッド形である。
【0047】
銀ナノプレートは、その他のプラズモンナノ粒子形状および組成物よりも明確な利点がある。例えば、銀ナノプレートは、低い製造コスト(少ない反応廃棄物および低い材料コスト)の可能性のために、金ナノシェルおよび金ナノロッドを含む、プラズモンナノ粒子形状および組成物よりも利点がある。さらに、ナノプレートの平面表面は入射光の両方の偏光と共鳴するため、金属の重量あたりの光学濃度(O.D.)は、溶液中で無作為に配向され、非極性の光で照射された場合、金ナノロッドと比較して銀ナノプレートについて大きい。そのうえ、銀ナノプレートの吸光度は、ナノシェルと比較してナノプレート構造によって散乱するのに対し、より多くの光が吸収されるので、同じ重量の金属に対して金ナノシェルの吸光度よりも高い。多くの適用には、コストおよび吸光度のこれらの利益は、ナノプレートが高濃度で長期間安定する場合にのみ現実化することができる。これが、本発明の一実施形態の主題である。
【0048】
銀ナノプレートの調製
現代のナノ粒子合成技法は、診断、遮蔽、および治療用途を含む広範囲の用途のための、特有の光学的性質をもつ材料の開発を可能にした。光交換、pH制御光交換、熱成長、および/またはシード媒介成長法を含む現行の従来法によって調製されたままの銀ナノプレートは、一般に0.1から10cm-1に及ぶ(例えば、0.1〜9.9cm-1、1〜9cm-1、3〜7cm-1、1〜5cm-1、および/または5〜10cm-1の)光学濃度を有する。いくつかの技術が、銀ナノプレートのより高い光学濃度の溶液を探し求めている。本発明のいくつかの実施形態は、銀ナノプレートを濃縮し、より高い光学濃度の銀ナノプレート溶液を生成するための新規かつ自明でない方法を記載する。例えば、様々な実施形態では、方法は、銀ナノプレートの光学濃度溶液を10cm-1、20cm-1、30cm-1、50cm-1、80cm-1、100cm-1、150cm-1、200cm-1、300cm-1、400cm-1、500cm-1、600cm-1、700cm-1、800cm-1、900cm-1、および/または1000cm-1よりも高く、またはそれ以上まで増加させることができる。
【0049】
銀ナノプレートは、光変換(Jin et al.2001;Jin et al.2003)、pH制御光変換(Xue 2007)、熱成長(Hao et al.2004;Hao 2002;He 2008;Metraux 2005)、鋳型成長(Hao et al.2004;Hao 2002)、シード媒介成長((Aherne 2008;Chen;Carroll 2003;Chen;Carroll 2002、2004;Chen et al.2002;He 2008;Le Guevel 2009;Xiong et al.2007)(すべて参照により本明細書に援用される)、または別法を用いて調製されてよい。本発明の様々な実施形態に従う別法としては、1またはそれ以上の安定化剤および銀源を含む溶液から銀ナノプレートを形成し、化学薬剤、生物学的薬剤、混合、電磁線、および/または熱を用いて銀源を還元する方法が挙げられる。
【0050】
光変換法の一実施形態を用いて調製された銀ナノプレートの光学スペクトルが図1に示される。光学スペクトル(100)のピーク波長は、0.74cm-1の光学濃度で775nmの波長である。シード媒介成長法の一実施形態を用いて調製された銀ナノプレートの光学スペクトルが図2に示される。光学スペクトル(200)のピーク波長は、2.58cm-1の光学濃度で930nmの波長である。光変換法を用いて作製した銀ナノプレートの透過型電子顕微鏡画像が図3Aに示される。シード媒介成長法を用いて作製した銀ナノプレートの透過型電子顕微鏡画像は図3Bに示される。
【0051】
一実施形態では、調製されたままのナノプレートが接線流濾過を用いて濃縮される場合、ナノプレートの多くの形状は、ナノスフェアに変化することができ、球形の銀ナノ粒子のピーク光共鳴である約400nmのピーク高さの増加から明らかなように、配合物の有効性を低下させる。図4は、濃縮前(400)および濃縮後(410)の濃度安定化剤の不在下の、ナノプレートの溶液の一実施形態の光学濃度を示す。ナノプレートのプラズモン共鳴に相当する光共鳴ピークは、815nm(420)から745nm(430)に変化し、ナノプレートの平均エッジ長さが減少していることを示す。
【0052】
図5は、図4に示されるナノプレートスペクトルの正規化されたプロットを示す。ナノプレートのこの溶液に関して、700nm〜850nmの範囲内のピーク強度は、溶液中のナノプレートの数に相関している。400nmの範囲のピーク強度は、溶液中の球状粒子の数に相関している。濃縮前は、長波長ピーク(520)と短波長ピーク(540)との比は3である。濃縮後は、長波長ピーク(530)と短波長ピーク(550)との比は0.8である。この変化する比は、銀ナノプレートが形状を変化させていること、および溶液中のナノプレートの数が減少していることを示す。
【0053】
一実施形態では、ナノプレートの溶液を安定化させることができる。図6は、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウムなど)の溶液中でポリビニルアルコールによって安定化させたナノプレートの溶液の一実施形態の光学濃度を示す。ナノプレートピークのピーク波長は、非濃縮(620)溶液と濃縮(630)溶液の両方について同じであり、ナノプレートのエッジ長さが濃縮前(600)および濃縮後(610)について同じであることを示す。図7は、ピークのスペクトルの形状が濃縮前(700)および濃縮後(710)で変化しないことを示す、正規化されたスペクトルを示し、それによって、一実施形態では、表面の被膜が、ナノ粒子の形状が変化することを防ぐのに十分であることが示される。様々な実施形態では、10%よりも多くの、20%よりも多くの、30%よりも多くのまたは50%よりも多くの銀ナノプレートは、表面保護なしで形状を変化させる。その他の実施形態では、ナノプレートが保護的な表面被膜で被覆されている場合に、20%未満、10%未満または5%未満の銀ナノプレートが形状変化を受ける。一実施形態では、約900cm-1のピーク光学濃度を有するように濃縮されたナノプレート溶液のスペクトルが図8に示される。
【0054】
一実施形態では、銀ナノプレートは多工程プロセスで形成される。一実施形態では、ナノプレートを濃縮する工程が図9に示され、銀ナノプレートを調製する工程(900)、安定化剤を添加する工程(910)、ナノプレートを濃縮する工程(920)および所望によりナノプレートをシリカで被覆する工程(930)で構成される。様々な実施形態では、これらの工程は、任意の順序で行うことができる。一実施形態では、第1の工程は、還元剤、安定化剤、水溶性ポリマーおよび銀塩を含む水溶液から銀シードを形成する。還元剤、安定化剤および水溶性ポリマーは、銀源の添加の前に混合されてよい。様々な実施形態では、銀シード形成工程で使用される還元剤は、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、別の水素化ホウ素、水素ガス、一酸化炭素ガス、ヒドラジン、または還元糖、あるいはこれらの組合せであり得る。様々な実施形態では、還元剤は、少なくとも0.1mM、1mM、または3mMの濃度で存在してよい。様々な実施形態では、還元剤は、0.1mM〜1mM、0.3mM〜3mM、0.5mM〜2mM、0.1mM〜2mM、0.1mM〜10mMの濃度で存在してよい。
【0055】
様々な実施形態では、安定化剤は、塩、ポリマー、または生体分子であってよい。一実施形態では、安定化剤は、クエン酸三ナトリウムまたは別のクエン酸塩誘導体である。
【0056】
一実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリアニオン性ポリマーであり、それには、限定されるものではないが、スルホン酸塩で誘導体化されたポリマー、ポリスチレンスルホン酸塩の無機塩などのポリスチレンスルホン酸塩の誘導体、またはポリスチレンスルホン酸塩の一価の塩が挙げられる。一実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSSS)である。一実施形態では、PSSSの分子量は、約3kDa〜約1,000kDaの間である。様々な実施形態では、PSSSの分子量は、3kDa〜10kDa、5kDa〜50kDa、10kDa〜100kDa、30kDa〜300kDa、50kDa〜500kDa、100kDa〜1000kDa、300kDa〜100kDa、500kDa〜1000kDaである。
【0057】
様々な実施形態では、銀塩は、任意の水溶性銀塩であってよく、それには、限定されるものではないが、酢酸銀、過塩素酸銀、硝酸銀、トリフルオロ酢酸銀、または銀トリフラートが挙げられる。
【0058】
一実施形態では、銀ナノプレートの配合のための工程には、銀シード、酸性還元剤および銀塩を含む水溶液中でシードを銀ナノプレートに成長させることが含まれる。一実施形態では、酸性還元剤は、クエン酸またはアスコルビン酸である。シードを銀ナノプレートに成長させる工程のための銀塩は、酢酸銀、過塩素酸銀、硝酸銀、トリフルオロ酢酸銀、銀トリフラート、またはその組合せを含む、任意の水溶性銀塩であってよい。
【0059】
一実施形態では、銀ナノプレートは、1s-1〜100,000s-1の間(例えば、少なくとも10、50、100、200、300、400、500、1000、2000、5000、10000、20000、50000、75000、90000s-1)の剪断流量で撹拌される。様々な実施形態では、銀ナノプレートは、10s-1〜100s-1の間、50s-1〜500s-1の間、100s-1〜300s-1の間、200s-1〜500s-1の間、100s-1〜400s-1の間、500s-1〜1000s-1の間、1000s-1〜10000s-1の間、2000s-1〜5000s-1の間、1000s-1〜2000s-1の間、5000s-1および/または10000s-1の剪断流量で撹拌される。
【0060】
銀ナノプレートの被覆
一実施形態では、銀ナノプレートは、粒子表面に吸着されているかまたはそうでなければ結合している分子を有する。表面上の分子は、合成の反応体または反応体副産物である。本発明の一目的は、銀ナノプレートの表面に結合した分子を、濃縮の間に粒子が形状を変化させることをより完全に防ぐその他の分子に部分的にまたは完全に交換することである。本発明の別の目的は、調製の間に、プレート形状を生成し、その後の濃縮の間にプレートを安定化させる安定剤を使用することである。
【0061】
様々な実施形態では、利用してよい安定化剤としては、表面に物理吸着されている(例えば、非分子結合力によって吸着されている)、特異的相互作用を通じて表面に分子的に結合している(例えば、チオールまたはアミン)、または表面(例えば、金属酸化物または半金属酸化物シェル)に封入されている化学薬剤または生物学的薬剤が挙げられる。一実施形態では、関心対象の特定の化学薬剤には、ポリマーが含まれる。一実施形態では、関心対象の特定の化学薬剤には、ポリスルホネートなどのポリマーが含まれる。1つの好ましい実施形態では、安定化ポリマーは、スルホン酸塩によって誘導体化される。一部の実施形態では、ビニルポリマー、炭水化物、エチレンオキシド、フェノール、および炭水化物を用いてよい。これらのポリマーの具体的な例としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、多糖、フェノール、タンニン酸、デキストラン、および、1またはそれ以上の化学基(例えば、アミン、チオール、アクリル酸塩、アルキン、マレイミド、シラン、アジド、ヒドロキシル、脂質、ジスルフィド、蛍光分子、または生体分子部分)を含有するPEG分子を含むポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。関心対象の特定の分子としては、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ビオチン、アルカンチオール、リポ酸およびジヒドロリポ酸ならびにこれらの酸の誘導体、ウシ血清アルブミン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、小麦胚凝集素、天然に存在するオリゴヌクレオチドおよびペプチド、ならびに、1またはそれ以上の化学官能基(例えば、アミン、チオール、ジチオール、アクリルホスホルアミダイト、アジド、ジゴキシゲニン、アルキン、または生体分子部分)を有する合成オリゴヌクレオチドを含む、合成オリゴヌクレオチドおよびペプチドが挙げられる。関心対象の特定の封入化学薬剤には、SiO2およびTiO2などの金属酸化物シェルが含まれる。安定化剤は、銀ナノプレートの形成の前に、銀ナノプレートの形成の間に、または銀ナノプレートの形成の後に添加されてよい。関心対象のさらなる化学薬剤は、アラビアガムである。一部の実施形態では、安定化剤は、溶液のpHも変更する。
【0062】
担体溶液
本発明の一実施形態では、銀ナノプレートは、水溶液中で調製される。その他の実施形態では、銀ナノプレートは、エタノール、イソプロパノール、または、ヘプタン、トルエン、もしくはブタノールなどの有機溶媒をはじめとするその他の溶液中で調製される。
【0063】
一実施形態では酸、塩基または緩衝剤が、安定剤の添加の前、間または後のいずれかに溶液pHを変化させるために添加される。一実施形態では、一般に水溶性塩を含有する緩衝液が添加される。一実施形態では、水溶性塩はホウ酸塩を含む。一実施形態では、水溶性塩はホウ酸ナトリウムを含む。一実施形態では、ナノプレートは、炭酸水素ナトリウム緩衝液またはホウ酸ナトリウム緩衝液に懸濁される。一実施形態では、pH調整剤の添加後の溶液のpHは、pH6、pH7、pH8、pH9、またはpH10よりも大きい。様々な実施形態では、pH調整剤の添加後の溶液のpHは、pH6〜pH8、pH6.0〜pH9、pH7〜pH10、pH7〜pH11、pH8〜pH10、pH8〜pH11、またはpH7〜pH12である。
【0064】
一実施形態では、緩衝液中に存在するナノプレート被膜と水溶性塩の組合せが、ナノプレート配合物に対する安定化をもたらす。一部の実施形態では、塩の成分の1つがナノプレート被膜または安定化剤と相互作用して被膜を架橋し、被膜の安定性を増加させることができる。様々な実施形態では、そのような架橋には、非共有結合(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ならびに、分散引力、双極子−双極子相互作用および双極子−誘起双極子相互作用を含むファンデルワールス力)ならびに/あるいは、ナノプレート表面、水溶性塩、および/または被膜材料/安定化剤間の共有結合が含まれ得る。一部の実施形態では、緩衝液中に存在する水溶性塩の存在は、例えば、ゼータ電位および/またはナノプレートの表面の電荷を変更することによって、安定化剤または被膜材料とナノプレート表面との結合親和性を変化させる。その他の実施形態では、緩衝液中に存在する水溶性塩は、共有もしくは非共有結合によって安定化剤または被膜材料とそれ自体との結合親和性を変化させる。一部の実施形態では、水溶性塩の存在は、安定化剤との会合で粒子表面に物理吸着するようになることによって安定化剤と粒子の表面との結合を媒介する。さらなる実施形態では、水溶性塩は、安定化剤または被膜材料の単位と会合すること、および被膜材料がナノプレート表面の上または周囲に整列するために必要な自由エネルギーを低下させることによって、ポリマーとそれ自体との結合を媒介する。一実施形態では、ナノプレート被膜はポリマーであり、架橋は、ナノプレートの全部または一部を取り囲む粘弾性ゲルを生成する。その他の実施形態では、安定化剤は、水溶性塩を含有する緩衝液と混合され、安定化剤と水溶性塩の一成分の両方は、ナノプレートの表面に結合する。一実施形態では、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンなどのポリビニル系ポリマーは、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩と混合される。ポリビニルアルコールおよびホウ酸塩は、水素結合を介して複合体化してゲルを形成することができる(Schultz 1969)。一実施形態では、図6および図7は、ナノ粒子の形状を保存するために濃縮の前にポリビニルアルコールおよびホウ酸ナトリウムで銀ナノプレートを安定化させる効果を示す。
【0065】
表面の安定化
様々な実施形態では、安定化剤は、銀ナノプレート溶液に添加される固体もしくは液体製剤であり得る。安定化剤は、銀ナノプレートの表面に対して親和性を有し、広い範囲の相対濃度でプレート表面と会合する能力をもつ。一部の実施形態では、銀ナノプレート上の結合分子は、安定化剤によって置き換えられる。あるいは、安定化剤、例えばポリマーなどは、ナノプレートの表面に存在する銀原子に共有結合している。ポリマー被膜は、銀ナノプレートの外面の全部または一部に及んでよい。例えば、銀ナノプレートの外面の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、99%、99.9%、または99.9%以上が、1種類のポリマーまたは複数の異なるポリマー種で被覆される。一実施形態では、安定化剤は銀ナノプレートの形成の前に添加されるが、別の実施形態では、安定化種は、銀ナノプレートの合成の後に添加される。従って、ポリマーで被覆された銀ナノプレートを含有する組成物が提供され、これらの組成物を含有する溶液は、10cm-1以下の光学濃度を有してよい。あるいは、そのような溶液は、ポリマーで被覆された銀ナノプレートおよび10cm-1よりも高い光学濃度を有する;これらの溶液は、濃縮することによるか、またはそれよりも希薄な溶液中に存在するポリマーで被覆された銀ナノプレートを精製することによって達成することができる。一部の実施形態では、安定剤を調製されたままの銀ナノプレート溶液に添加する。その他の実施形態では、ナノプレートの溶液を洗浄するか、またはそうでなければ残留する反応体を除去する。一部の実施形態では、懸濁溶液は、安定化剤が添加される前に、例えば、ナノプレートを洗浄するため、または溶液のpHを変えるために、1または複数の溶液と1または複数回交換される。また、1またはそれ以上の容器の中に、10cm-1よりも高い光学濃度を有する溶液中のナノプレートと、ナノプレートを金属酸化物のシェル(または被膜)で被覆するのに適した金属酸化物含有溶液または金属酸化物前駆体含有溶液とを含有するキットも提供される。好ましくは、容器はその取扱説明書とともに提供される。一部の実施形態では、キットは、ポリビニルポリマーを含有する被膜を有するナノプレートを含有する。その他の実施形態では、ポリビニルポリマーは、ホウ酸塩を含有する。安定剤被膜を有するナノプレートは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ当技術分野で公知の通り、例えば粒子分析装置または発光検出器、例えばNMR、フーリエ変換分光法、質量分析、または同様のアッセイなどによって、特徴づけられる。
【0066】
安定化剤が添加されれば、安定剤と銀ナノプレートの混合物は、加熱、煮沸、煮沸還流、回転蒸発、真空、撹拌、磁気撹拌子による撹拌、オーバーヘッドミキサーによる撹拌、ホモジナイザーによる撹拌、振盪、微小流動化、冷蔵、および凍結を含む、多数の異なるプロセスを受けることができる。
【0067】
洗浄および濃縮
一実施形態では、安定化工程が完了した後、銀ナノプレートを洗浄して、残留する反応体を除去するかまたは溶液を別の溶液と交換することができる。溶液の交換は、透析、遠心分離、濾過、または接線流濾過(クロスフロー濾過としても公知)を用いて達成することができる。様々な実施形態では、サンプル内で交換される洗浄量(wash volume)の数は、0、1、2、3、4、5、1および5、5〜10、10〜20、または20以上の洗浄量である。
【0068】
10cm-1よりも高い光学濃度(例えば、11〜5000cm-1、15〜2000cm-1、20〜1000cm-1、80〜150cm-1、90〜110cm-1、900〜1100cm-1、100cm-1、1000cm-1またはそれ以上)をもつナノ粒子溶液は、遠心分離、蒸発、濾過、透析または接線流濾過を用いて調製され得る。本発明の一実施形態は、銀ナノプレート溶液を濃縮するプロセスとして接線流濾過を利用する。利用される濾過膜は、多様な材料から形成されてよい。様々な実施形態では、関心対象の特定の濾過膜材料としては、セルロースエステル、ポリスルホン、およびポリエーテルスルホンを挙げることができる。様々な実施形態では、利用される濾過膜は、約10kD未満、10kD〜500kDの間、または約500kD超の分子量カットオフをもつ細孔、および/または約0.05μm未満、0.05μm〜0.5μmの間、または約0.5μm超の孔径を有してよい。様々な実施形態では、利用される濾過膜は、10kD〜100kDの間、10kD〜500kDの間、20kD〜500kDの間、20kD〜250kDの間の分子量カットオフをもつ細孔、および/または0.02μm〜0.1μmの間、0.05μm〜0.2μmの間、0.05μm〜0.5μmの間、0.10μm〜0.2μmの間、0.1μm〜0.5μmの間の孔径を有してよい。また、接線流濾過を利用して、銀ナノプレートが分散している溶媒を変えることもできる。様々な実施形態では、関心対象の特定の溶媒としては、水およびアルコール(例えば、t−ブタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコール)、ならびにその他の極性もしくは非極性溶媒が挙げられる。そのうえ、接線流濾過を利用して残留化学物質を除去することができる。図8は、930cm-1のピーク吸光度に濃縮されたナノプレートの溶液の実施形態を示す。
【0069】
様々な実施形態では、銀ナノプレート溶液の濃度を増加させて、約5cm-1よりも高い、約10cm-1よりも高い、約50cm-1よりも高い、約75cm-1よりも高い、約100cm-1よりも高い、約500cm-1よりも高い、および/または約1000cm-1よりも高い光学濃度をもつ最終溶液を生成する。様々な実施形態では、銀ナノプレート溶液の濃度を増加させて、10cm-1〜100cm-1の間、30cm-1〜300cm-1の間、50cm-1〜500cm-1の間、100cm-1〜1000cm-1の間、300cm-1〜3000cm-1の間、または500cm-1〜5000cm-1の間の光学濃度をもつ最終溶液を生成する。本発明の一実施形態は、銀ナノプレート溶液濃度は、1ミリリットルあたり、106、107、108、109、1010、1011、1012または1013個を超える粒子に増加される。様々な実施形態では、銀ナノプレート溶液濃度は、1ミリリットルあたり、106〜1013の間、107〜1013の間、108〜1013の間、109〜1013の間、1010〜1013の間、1011〜1013の間、または1012〜1013の間の粒子に増加される。様々な実施形態では、銀濃度は、0.1、1.0、2、4、5、7、8、9、および/または10mg/mLよりも高い。様々な実施形態では、銀濃度は、0.1〜1.0、0.3〜3.0、0.5〜5.0、1.0〜10.0、3.0〜30.0、5.0〜50.0、10.0〜200.0、1.0〜200.0、1.0〜500.0、または10.0〜500.0mg/mLの間である。
【0070】
シリカ被膜およびシェリング
一実施形態では、濃縮された銀ナノプレートは、シリカのシェルで封入されている。被膜は、銀ナノプレートの外面の全部または一部に及んでよい。例えば、銀ナノプレートの外面の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、99%、99.9%、または99.9%以上がシリカで被覆されている。濃縮されたプレートは、アルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール)と混合することができる。一実施形態では、アミノシランまたはメルカプトシランを溶液に添加して、シラン分子をナノプレートの表面に結合させる。シラン分子のナノプレートの表面への結合は、ナノプレート上の表面被膜に特有である。処理中にナノプレートを安定化させる一部のナノ粒子の被膜は、シリカシェルの形成と両立しない。一実施形態では、ナノプレートの表面は、溶液中のシラン分子に親和性を有する分子で被覆される。一実施形態では、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンなどのポリビニル系ポリマーは、シラン分子の添加の前にナノプレートの表面に結合している。その他の実施形態では、ポリビニル系ポリマー表面は、シラン分子の添加の前に、緩衝液中に存在する水溶性塩(例えば、1または複数の硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩)と複合化している。その他の実施形態では、メルカプトヘキサデカン酸、メルカプトウンデカン酸、またはその他のチオール含有酸は、ナノプレートの表面に結合している。ナノプレートの表面に結合している初期シランが存在するならば、さらなるシランを塩基の存在下で溶液に添加してシリカシェルを形成することができる。一実施形態では、シリカシェルで被覆したナノプレートを水に移し、接線流濾過などの濃縮方法を用いて濃縮することができる。もう一つの実施形態では、シリカシェルは、塩化アルミニウムなどのアルミニウム塩、ポリビニルピロリドンなどの安定化ポリマー、または炭酸水素塩などの緩衝液の溶液と混合される。
【0071】
本発明の目的は、シリカシェルで被覆された銀ナノプレートの濃縮溶液を含む溶液を調製することである。一実施形態では、1cmの経路長のキュベットで測定される溶液のピーク光学濃度は、10、20、50、100、500、または1000を上回る。様々な実施形態では、1cmの経路長のキュベットで測定される溶液のピーク光学濃度は、10〜100の間、20〜200の間、30〜300の間、50〜500の間、100〜1000の間、200〜1000の間、300〜1000の間、500〜1000の間、および/または200〜2000の間、およびそれらの中の任意の組合せである。もう一つの実施形態では、銀濃度は、0.1mg/mLを上回る、1mg/mLまたは10mg/mLを上回る。いくつかの実施形態では、銀濃度は、0.1〜1.0の間、0.3〜3.0の間、0.5〜5.0の間、1.0〜10.0の間、3.0〜30.0の間、5.0〜50.0の間、10.0〜200.0の間、1.0〜200.0の間、1.0〜500.0の間、および/または10.0〜500.0mg/mLの間、およびそれらの中の任意の組合せである。一実施形態では、シリカシェルの厚さは、2〜100nmの間であり、別の実施形態では、5〜50nmの間である。様々な実施形態では、シリカシェルの厚さは、3〜20nmの間、5〜20nmの間、10〜20nmの間、10〜50nmの間、10〜100nmの間、1〜10nmの間、3〜30nmの間、5〜50nmの間、および/または5〜200nmの間、ならびにそれらの中の任意の組合せである。シリカシェルは、限定されるものではないが、アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランおよびテトラエチルオルトシリケートを含む、シランの混合物から調製されることができる。シリカシェルは、窒素原子または硫黄原子を含有することができる。シリカシェルは、アミン部分またはメルカプト部分を含有することができる。シリカシェルは、アルミニウム原子またはナトリウム原子を含有することができる。
【0072】
もう一つの実施形態では、溶液は緩衝液を含有し、それには、水溶性塩(例えば、1または複数の硫酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、および亜硫酸塩、酢酸塩、および硝酸塩)が、0.1mM、1.0mMまたは10.0mMよりも高い濃度で含まれる。様々な実施形態では、水溶性塩の濃度は、0.1mM〜1mM、0.3mM〜3mM、0.5mM〜5mM、1mM〜10mM、1mM〜30mM、1mM〜50mM、1mM〜1000mM、およびそれらの中の任意の組合せであってよい。溶液は、500nm〜1500nmの間、500nm〜1200nm、500nm〜1000nm、600nm〜1200nm、700nm〜1200nm、700nm〜1500nm、700nm〜900nm、および/または900〜1100nm、およびそれらの中の任意の組合せのピーク吸収波長を有し得る。
【0073】
貯蔵
様々な実施形態では、濃縮された粒子は、−10、0、4、6、10、または20℃よりも低い温度で貯蔵される。一実施形態では、粒子は凍結され、真空乾燥される。一実施形態では、粒子はフリーズドライされる。一実施形態では、粒子は超臨界乾燥される。一実施形態では、さらなる安定剤またはその他の抗凍結剤を、粒子が熱乾燥されるかまたはフリーズドライされる前に溶液に添加する。
【0074】
複合材料
本発明の一実施形態では、銀ナノプレートの高光学濃度溶液は、基板と会合する。様々な実施形態では、基板の例としては、繊維、布地、メッシュ、包帯、ソックス、ラップ、その他の衣料品、スポンジ、高多孔性基板、1ミクロンよりも大きいエッジ長さをもつ粒子、ビーズ、毛髪、皮膚、紙、吸収性ポリマー、発泡体、木材、コルク、スライド、粗面、生体適合性基板、フィルタ、または医療用インプラントが挙げられる。様々な実施形態では、少なくとも1mg/mL、10mg/mL、および/または100mg/mLの濃度の銀ナノプレートの溶液は、基板とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、基板とともにインキュベートされる銀ナノプレート濃度は、0.1〜1.0、0.3〜3.0、0.5〜5.0、1.0〜10.0、3.0〜30.0、5.0〜50.0、10.0〜20.0、5.0〜50.0、3.0〜50.0、1.0〜100.0mg/mL、10.0〜100.0、20.0〜100.0、30.0〜100.0mg/mLの間である。もう一つの実施形態では、基板とともにインキュベートされる銀ナノプレートの溶液は、1ミリリットルあたり、106〜1013の間、107〜1013の間、108
〜1013の間、109〜1013の間、1010〜1013の間、1011〜1013の間、1012
〜1013の間、または1013以上の粒子である。もう一つの実施形態では、銀ナノプレートは、基板とともにインキュベートする前に、少なくとも10、20、50、100、300、500、1000および/または2000cm-1の光学濃度で調製される。様々な実施形態では、銀ナノプレートは、10〜100の間、20〜200の間、30〜300の間、50〜500の間、100〜1000の間、200〜1000の間、300〜1000の間、500〜1000の間、または200〜2000の間の光学濃度で調製される。もう一つの実施形態では、基板は、ナノプレートと基板との結合を増加させるために化学処理される。例えば、基板は、正または負に帯電した表面をもたらす分子によって官能化され得る。もう一つの実施形態では、インキュベーション溶液のpHは、結合を最適化するために選択される。もう一つの実施形態では、銀ナノプレートは、基板の少なくとも5%、10%、20%、30%、50%または75%を覆う。様々な実施形態では、銀ナノプレートは、基板の5%〜10%の間、10%〜100%の間、10%〜50%の間、50%〜100%の間、30%〜100%の間、30%〜70%の間、40%〜80%の間、50%〜90%の間、60%〜100%の間、70%〜100%の間、80%〜100%の間、90%〜100%の間、0%〜5%の間、0%〜10%の間、0%〜20%の間、0%〜30%の間、または0%〜50%の間を覆う。もう一つの実施形態では、その他の溶媒または化学物質がインキュベーション溶液に添加される。もう一つの実施形態では、生物学的リンカー(例えば、抗体、ペプチド、DNA)を用いて、高光学濃度の銀ナノプレートと基板の表面とを結合する。一実施形態では、インキュベーションは、1分未満、5分、20分、60分、または120分の間である。様々な実施形態では、インキュベーションは、0〜1分の間、1分〜120分の間、5分〜120分の間、20分〜120分の間、60分〜120分の間、5分〜60分の間、10分〜60分の間、20分〜60分の間、0分〜10分の間、0分〜20分の間、または0分〜5分の間である。
【0075】
一実施形態では、基板は、インキュベーション溶液から分離され、乾燥される。基板は、空気乾燥、熱乾燥、凍結乾燥、または超臨界乾燥を用いて乾燥することができる。もう一つの実施形態では、乾燥した基板を、基板を別の材料に浸漬するか、基板に別の材料を塗るか、または基板を気相中にある別の材料に露出させることによってさらに処理することができる。
【0076】
本発明のその他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の明細および実践を考慮すれば当業者に明らかである。明細および例は、本発明の特定の実施形態を開示しているだけとみなされることが意図され、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲に示される。
【0077】
本明細書に記載される主題は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態で具体化されてよい。そのため、前述の実施形態は、全ての点で制限的であるよりは説明的であるとみなされる。実施形態は様々な変更および代替形態に影響されやすいが、その具体例がこれらの図面に示され、本明細書において詳細に記載されている。しかし、本発明が開示される特定の形態または方法に制限されるものでなく、それとは反対に、本発明は、記載される様々な実施形態および添付される特許請求の範囲の精神および範囲内の全ての修正形、同等物、および代替形態を網羅することは当然理解される。本明細書に開示されるいずれの方法も、列挙される順序で実施される必要はない。
【0078】
本明細書に開示される方法には、開業医のとる特定の行動が含まれる;しかし、それらには明示的にまたは暗に、それらの行動の第三者の指示も含まれ得る。例えば、「皮膚組織の標的領域を同定する」のような行動には、「皮膚組織の標的領域の同定を指示する」が含まれる。
【0079】
本明細書に開示される範囲はまた、ありとあらゆる重複、下位範囲、およびそれらの組合せを包含する。「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「の間」、および同類のものなどの語には、列挙される数字が含まれる。「約」または「およそ」または「実質的に」などの用語に先行される数字には、列挙される数字が含まれる。例えば、「約3分」には、「3分」が含まれる。用語「およそ」、「約」および/または「実質的に」は、本明細書において、なお所望の機能を実行するかまたは所望の結果を達成する、述べられた量または特徴に近い量または特徴を表す。例えば、用語「およそ」、「約」、および「実質的に」は、述べられた量または特徴の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内、および0.01%未満内の量をさしてよい。
【実施例】
【0080】
下の具体例の説明は、説明のためだけのものであって、本明細書に開示される本発明の範囲を限定するものではない。
【0081】
実施例1:銀ナノプレート
銀ナノプレートを、水性条件下、三塩基性クエン酸ナトリウムおよびポリスチレンスルホン酸ナトリウムの存在下で、硝酸銀を水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって調製した銀シードを用いて合成した。銀シードの調製:21.3mLの2.5mM三塩基性クエン酸ナトリウム水溶液を、磁気撹拌下で混合させた。1mLの2g/Lポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSS)溶液を次に別々のビーカーで調製した。次に、21.3mLの0.5mM硝酸銀溶液を、該塩を水に溶解することによって調製した。上記溶液が調製されれば、1.33mLの0.5mM水素化ホウ素ナトリウム溶液を4℃の水中で調製した。次に、ホウ化水素およびPSSS溶液を、該クエン酸塩を含有するビーカーに添加し、混合させた。次に、蠕動ポンプを100mL/分の速度で用いて、硝酸銀溶液を該クエン酸塩溶液の中に注ぎ込んだ。次に、このシード溶液を室温で一晩撹拌させた。1530mLのミリQ水を35mLの10mMアスコルビン酸溶液と混合することによって、銀ナノプレートを調製した。溶液が十分に混合されれば、調製した銀シードを反応器に添加した。353mLの2mM硝酸銀溶液を100mL/分の速度で反応器の中に注ぎ込んだ。反応物を2時間混合した。TEM分析は、70%を超える粒子がナノプレートであることを示した。溶液の光学濃度は2.8cm-1であった。
【0082】
実施例2:濃縮された銀ナノプレート
約5cm-1のピーク光学濃度をもつ、15Lの銀ナノプレートを、3.5gのポリビニルアルコール(PVA)およびホウ酸ナトリウムと混合し、3100cm2の表面積をも
つ500kDポリスルホン接線流膜を用いて接線流濾過を用いて濃縮した。溶液を約90分間濃縮し、最終溶液体積は、15Lから0.5Lに減少した。銀ナノプレート溶液の光学濃度を約150cm-1に増加させた。従って、一実施形態によれば、銀ナノプレート溶液を5cm-1から150cm-1に増加させるための方法(例えば、ざっと30倍の光学濃度の増加)は、PVAおよびホウ酸ナトリウムを銀ナノプレートに添加する工程、および溶液を接線流濾過で濃縮する工程を含む。
【0083】
実施例3:濃縮された銀ナノプレート
銀ナノプレートを濃縮する一例では、約4cm-1のピーク光学濃度をもつ1.2Lの銀ナノプレートを、4Lの無水エタノールおよび約49mLの水酸化アンモニウム溶液と混合した。0.6mLの希釈したアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を溶液に添加した。15分のインキュベーションの後、6.5mLのテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)溶液を添加した。24時間後、1Lの溶液を、1050cm2の表面積を
もつ500kDポリスルホン接線流膜を用いて濃縮した。最終溶液量は150mLに減少し、銀ナノ粒子溶液の光学濃度を約40cm-1に増加させた。従って、一実施形態によれば、銀ナノプレート溶液を4cm-1から40cm-1まで増加させるための方法(例えば、ざっと10倍の光学濃度の増加)は、無水エタノール、水酸化アンモニウム溶液、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、およびテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)を銀ナノプレートに添加する工程、および溶液を接線流濾過で濃縮する工程を含む。
【0084】
実施例4:シリカシェルを含むナノプレート
シリカシェルを、800nm共鳴(エッジ長さ約75nm)ポリビニルピロリドン(PVP)でキャップした銀ナノプレートの表面で成長させた。2mg/mL(O.D.20cm-1)の濃度の800nm共鳴PVPでキャップされた銀ナノプレートの溶液400mLを、2.3Lの試薬等級エタノールおよび190mLのミリQ水に一定撹拌下で添加した。4.3mLの希釈したアミノプロピルトリエトキシシラン(4.085mLイソプロパノール中215uL APTES)を次に溶液に添加し、その直後に44mLの30%水酸化アンモニウムを添加した。15分のインキュベーションの後、31mLの希釈したテトラエチルオルトケイ酸塩(29.45mLイソプロパノール中1.55mL TEOS)を溶液に添加した。次に、溶液を一晩撹拌させた。次に、ナノプレートをUltracentrifugeで17000RCFで15分間遠心し、ミリQ水中に毎回再構成して2回繰り返した。シリカシェルの厚さは15nmであった。濃縮された材料の光学濃度は2040cm-1であった。
【0085】
実施例5
ポリビニルアルコールおよびホウ酸ナトリウムで安定化された、濃縮された銀ナノプレートの40O.D.溶液の溶液40mLを、3000RCFで30分間回転させた。上清を除去し、浴超音波処理によってペレットを再分散させた。濃縮された銀ナノプレートは、図8に示されるように900O.D.よりも高い光学濃度を有した。
【0086】
実施例6:基板上の濃縮されたナノプレート
1000O.D.銀ナノプレートの溶液5mLを、吸収性の布の3”x3”切片(Absorber Synthetic Drying Chamois、Clean Tools)に添加した。添加後、基板を風乾させた。乾燥すると、銀ナノプレートは、吸収性の布の表面に結合し、その後に布が湿り、圧力を印加することによって水を除去したときに放出されなかった。
【0087】
上記の参照文献の各々は、参照によりその全文が組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9