(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メガネ式の顔面保護具は、装着者が眼鏡をかけている場合、鼻パッドやテンプル部材が眼鏡の各部材と干渉し合うため併用が困難であった。また、鼻や耳の位置や頭部の大きさ等には個人差があるため、装着時の安定性を確保することも難しかった。
【0005】
また、特許文献1及び2のカチューシャ式ゴーグルでも、頭部の大きさ、形状、毛量等の個人差に関わらず装着時の安定性を確保するのが難しく、装着者によっては上下方向や左右方向にズレが生じる問題があった。頭部に無理に固定したならば、はめ心地が極めて悪くなって違和感や痛みが生じ、顔面保護具を使用して行う作業に支障を来し得る。このような問題は、医療及び介護の分野において使用される顔面保護具に限定されず、他の分野において使用される顔面保護具においても同様に存在する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、頭部の大きさ等の個人差に関わらず、装着安定性を確実に確保でき、しかも良好なはめ心地を実現できる顔面保護具及び顔面保護具用フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、頭部に装着される本体フレームと、前記本体フレームの外側に配置され、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールド部材を保持するシールドフレームと、を具備し、前記本体フレームは、前頭部から側頭部に亘って両側後頭部まで延びるブリッジアームと、前記ブリッジアームの両端部に設けられ後頭部を支持する第1支持部と、前記ブリッジアームの側頭部に対応する部分から前頭部方向に分岐して、前記ブリッジアームの内側に配置される一対のヘッドアームと、前記ヘッドアームの先端部にそれぞれ設けられ前頭部を支持する第2支持部と、を具備し、前記ブリッジアームの前頭部に対応する部分は前頭部から離間して配置され、前記第1支持部の後頭部への押圧力を調整する第1押圧力調整部となり、前記ヘッドアームは、前記第2支持部の前頭部への押圧力を調整する第2押圧力調整部となっており、前記シールドフレームは、前記ブリッジアームの前記第1押圧力調整部よりさらに前記前頭部から離間して配置され
ることで、前記シールド部材
を、前記シールドフレームから下方に向かって保持
し、前記顔面の鼻先より前方に位置するように配置
可能に構成されていることを特徴とする顔面保護具用フレームにある。
【0008】
かかる態様によれば、ブリッジアームの両端部に設けられた第1支持部によって後頭部の2点を支持し、ヘッドアームの先端部にそれぞれ設けられた第2支持部によって前頭部の2点を支持する、すなわち、前後左右の計4点によって頭部を支持するため、頭部の大きさ等の個人差に関わらず、装着安定性を確実に確保できる。その上、装着時において、押し広げたブリッジアームの間に頭部を大まかに位置させるだけで、押し広げ力を解除すれば、ブリッジアームやヘッドアームが初期状態に戻ろうとする弾性変形力を利用して、顔面保護具用フレームを頭部に自動的に安定性よく支持させることができる。しかも、ブリッジアームの第1押圧力調整部やヘッドアームの第2押圧力調整部によって後頭部や前頭部への押圧力が調整されるため、良好なはめ心地も実現できる。
【0009】
また、前記ブリッジアームによって形成される平面と、前記ヘッドアームによって形成される平面と、の成す角は、0〜30度の範囲内であることが好ましい。これによれば、上記の本体フレームを金型等によって製造しやすくなる。よって、装着安定性を確実に確保でき、しかも良好なはめ心地を実現できる顔面保護具用フレームを容易に提供できる。
【0010】
また、前記ブリッジアームの側頭部に対応する部分は、前記第1押圧力調整部及び前記第2押圧力調整部より剛性が高いことが好ましい。これによれば、ブリッジアームの側頭部に対応する部分の剛性が高い分、ブリッジアームの第1押圧力調整部やヘッドアームの第2押圧力調整部が優先して弾性変形するようになる。よって、頭部への更なる装着安定性を確実に確保でき、極めて良好なはめ心地を実現できる。しかも、ブリッジアームの側頭部に対応する部分(ヘッドアームの分岐部分)の剛性が確保されるようになり、長期の使用や繰り返しの使用等に対する耐久性も向上させることができる。
【0011】
また、前記シールドフレームは、前記本体フレームに着脱可能であることが好ましい。これによれば、装着安定性を確実に確保でき、しかも良好なはめ心地を実現できる上、各フレームの修理交換やメンテナンスが容易となる顔面保護具用フレームを提供できる。
【0012】
また、前記本体フレームと、前記シールドフレームの両端側のそれぞれと、が所定の軸部材によって連結されており、前記軸部材を中心として前記シールドフレームが回動可能に構成されていることが好ましい。これによれば、顔面保護具用フレームを頭部に装着した状態で、シールドフレームを上下方向に回動させることができる。よって、装着安定性を確実に確保でき、しかも良好なはめ心地を実現できる上、用途や外部環境に応じた使用態様を実現しやすい顔面保護具用フレームを提供できる。
【0013】
上記課題を解決する本発明の他の態様は、上記の何れかに記載の顔面保護具用フレームと、前記顔面保護具用フレームに着脱可能であり、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールド部材と、を具備することを特徴とする顔面保護具にある。かかる態様によれば、上記の何れかに記載の顔面保護具用フレームを具備するため、装着安定性を確実に確保でき、しかも良好なはめ心地を実現できる顔面保護具を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の顔面保護具及び顔面保護具用フレームによれば、頭部の大きさ等の個人差に関わらず、装着安定性を確実に確保でき、しかも良好なはめ心地を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る顔面保護具の構成例を示す斜視図であり、
図2(a)〜(c)は、
図1における各フレーム等の構成例を示す図である。
【0017】
図示するように、本実施形態の顔面保護具1は、顔面保護具用フレームと、顔面保護具用フレームに着脱可能であり、感染性飛沫や薬液等から顔面の全部又は一部を保護するシールドSと、を具備している。このうち顔面保護具用フレームは、頭部に装着される本体フレーム10と、本体フレーム10の外側に配置され、上記のシールドSを保持するシールドフレーム20と、を具備している。
【0018】
本体フレーム10は、前頭部から側頭部に亘って両側後頭部まで延びるブリッジアーム11と、ブリッジアーム11の両端部に設けられ後頭部を支持する第1支持部11aと、ブリッジアーム11の側頭部に対応する部分11bから前頭部方向に分岐して、ブリッジアーム11の内側に配置される一対のヘッドアーム12と、ヘッドアーム12の先端部にそれぞれ設けられ前頭部を支持する第2支持部12aと、を具備している。ブリッジアーム11及びヘッドアーム12は、頭部に対応する曲状を有するとともにヘッドアーム12の対向方向に弾性変形可能に構成されており、これらの間を押し広げたときの弾性変形力によって、頭部に支持させることが可能となっている。
【0019】
本体フレーム10の左右には、シールドフレーム20が取り付けられる取り付け部13がそれぞれ設けられている。ここでは、ブリッジアーム11の側頭部に対応する部分11bの近傍に、上記の取り付け部13を形成するようにした。取り付け部13は、例えば本体フレーム10によって形成される面の片面側で本体フレーム10に一体に設けられ、所定の係合孔14が直列に複数(ここでは左右それぞれ3つ)形成された突出片である。上記の係合孔14の何れかを選択肢し、シールドフレーム20の両端において対向するように設けられた係合軸21を軸支させることで、本体フレーム10に対する距離や角度を調節可能に、シールドフレーム20を取り付けることができるようになっている。
【0020】
特に、本実施形態では、シールドフレーム20の係合軸21の根元に突起21aが一体的に設けられているとともに、本体フレーム10の係合孔14の縁部に、上記の突起21aが嵌合可能な嵌合溝14aと、シールドフレーム20の回動方向に嵌合溝14aよりも幅広に形成された遊嵌溝14bと、が設けられている。これにより、係合軸21の突起21aが遊嵌溝14bに規制される範囲内で、係合軸21を支点としてシールドフレーム20を本体フレーム10に対して所定の角度θ
1で回動させることができる。そして、遊嵌溝14bを越えてシールドフレーム20を更に回動させることで、係合軸21の突起21aが嵌合溝14aに所定の角度θ
2で嵌め合わされるようになる、つまり、本体フレーム10に対する所定の角度θ
2でシールドフレーム20を保持可能となる。
【0021】
このように、係合軸21を中心としてシールドフレーム20が上下方向に回動可能、その上、所定角度で保持可能に構成されていることで、顔面保護具用フレームを頭部に装着した状態で、シールドSの上下方向の角度を自在とすることができる。例えば、シールドSによって感染性飛沫や薬液等から顔面の全体又は一部を保護するなかで、必要に応じてシールドフレーム20を本体フレーム10に対して跳ね上げるように回動操作や角度保持操作するだけで、シールドSをいちいち脱離させることなく、シールドSによる顔面の保護を一時的に解除できるようになる。このように、用途や外部環境に応じた使用態様を実現しやすい顔面保護具用フレームを提供できる。
【0022】
本実施形態では、上記のように係合軸21を挿入する係合孔14を選択することで、本体フレーム10に対するシールドフレーム20の距離をも調節可能とされており、装着者が眼鏡に加えてマスク等を更に併用するような場合においても、必要に応じて、シールドフレーム20に取り付けたシールドSがこれらに干渉しない十分な距離を確保できるようになっている。
【0023】
ただし、本体フレーム10及びシールドフレーム20の接続の態様は、使用時においてシールドSによって顔面の全部又は一部を覆うことができるよう、本体フレーム10の外側にシールドフレーム20を配置させることができる限りにおいて前記の例に限定されない。例えば、上記の例とは逆に、本体フレーム10に係合軸が設けられ、シールドフレーム20に係合孔が設けられるようにしてもよい。シールドフレーム20が本体フレーム10に着脱可能であれば、各フレームの修理交換やメンテナンスが容易となるが、本体フレーム10に対してシールドフレーム20の距離や角度を調節可能とすることは必須でなく、また、各フレームを一体に構成しても構わない。
【0024】
本体フレーム10及びシールドフレーム20を所定の軸部材によって接続する場合、かかる軸部材の応力集中による破損や磨耗防止の観点から、軸部材による軸支部分にシリコーンオイル等の摺動剤を付与するようにしてもよく、軸支部分にワッシャー等の補強部材を設けるようにしてもよい。軸部材と、軸受け部分となる部材と、の構成材料を異ならせるようにすることも可能であり、一例として本実施形態では、シールドフレーム20の係合軸21の構成材料として、本体フレーム10の係合孔14よりも高弾性を実現できる材料が選択されている。
【0025】
本体フレーム10やシールドフレーム20の構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等を、1種単独又は2種以上を併用して用いることができる。本実施形態ではポリプロピレンが用いられており、これによれば、物理的耐久性や弾性に加え、煮沸消毒やアルコール消毒に耐え得る耐熱性や耐薬品性にも優れた顔面保護具用フレームとなる。
【0026】
尚、シールドフレーム20は、装着者の前頭部に対応する曲状を有しており、上記のシールドSを保持する保持部22が両端側に設けられている。例えば保持部22は、シールドフレーム20の延在方向とは交差する方向に設けられた軸部材23によってシールドフレーム20の外側に回動自在に支持されたクリップ部材24と、軸部材23を支点としてクリップ部材24の先端部24aを閉じるように付勢する付勢手段と、を具備するように構成することができる。本実施形態では、このクリップ部材24の先端部24aにおけるシールドフレーム20に対向する領域R
krpに、シールドSに形成された貫通孔O
pnが係止される係止爪が形成されたものを用いた。
【0027】
これによれば、クリップ部材24の先端部24aを閉じるような付勢力に抗することで、軸部材23を支点としてクリップ部材24を回動させて係止爪をシールドフレーム20から離間させることができる、いわゆるバインダークリップ機構を実現できる。かかる機構により、シールドSの着脱が容易になるため、装着に要する手間や時間の短縮を図ることができ、また、クリップ部材24の後端部24bの押圧によりシールドSを落下させて手で摘むことなく素早くそのまま廃棄できる。しかも、クリップ部材24の係止爪によってシールドSに形成された貫通孔O
pnを係止するので、シールドフレーム20両端側の計2点であってもシールドSを安定的に保持できる上、装着したシールドSに歪みが生じることも防止できる。
【0028】
上記の保持部22の構成を採用する場合、シールドSとして、上部両端にそれぞれ、貫通孔O
pnと切り欠きC
outとが形成されたものを用いることができる。これによれば、保持部22を切り欠きC
outに沿わせてガイドさせ、保持部22とシールドフレーム20との間にシールドSを滑り込ませるようにして更に容易に装着できるようになり、しかも装着後は、切り欠きC
outに対して保持部22がストッパーとなってシールドSの上下方向の意図しない回動を規制できるため、シールドSを極めて安定的に保持できる。
【0029】
シールドSには、例えば親水基が比較的多い三酢酸セルロ−スを用いて防曇性を付与することができる。すなわち、表面をアルカリ処理によって改質した三酢酸セルロ−スにより、透明性や可撓性のみならず防曇性をも具備したシールドSとなる。ただし、シールドSの構成材料は前記の例に限定されず、ポリエチレンテレフタラートやポリプロピレン等を用いるようにしてもよい。また、シールドSの防曇性の更なる向上を図る観点からは、シールドSの構成材料に防曇処理剤を添加したり、シールドSの表面に防曇処理剤を塗布したりする等の防曇処理を更に施すことが好ましい。これによれば、通常使用時における使用者の呼吸はもちろん、外部環境の急激な変化に対しても、シールドSの防曇性を確保できるようになる。
【0030】
ここで、上記の本体フレーム10に関する構成例や機能等について、
図3〜4を参照しつつ説明する。
図3は、本体フレームにおけるブリッジアームの押圧力調整部を説明する図であり、
図4は、かかる押圧力調整部による押圧力の調整を説明する図である。
【0031】
本体フレーム10では、上記のようにブリッジアーム11の側頭部に対応する部分11bから前頭部方向の内側に分岐して、一対のヘッドアーム12が配置されている。顔面保護具1の装着時において、前頭部は、ヘッドアーム12に支持されて外側のブリッジアーム11とは所定の距離だけ離間するようになっており、前頭部とブリッジアーム11との間に所定の第1空間R1が形成されるようになる。この第1空間R1によって、ブリッジアーム11の撓み空間、すなわち第1支持部11aの後頭部への押圧力調整空間が確保される。
【0032】
このように、ブリッジアーム11の前頭部に対応する部分は、第1支持部11aの後頭部への押圧力を調整する第1押圧力調整部15となっている。初期状態(
図3(a))からブリッジアーム11の間を押し広げると、第1空間R1が大きくなるように第1押圧力調整部15が撓み、このとき初期状態に戻ろうとする弾性変形力が、第1支持部11aの対向方向に作用する(
図3(b)の矢印)。この第1支持部11aの対向方向に作用する弾性変形力が、顔面保護具1の装着時における後頭部への押圧力となる。
【0033】
一方、ヘッドアーム12は、上記のようにブリッジアーム11よりも内側に分岐、ここではブリッジアーム11よりも所定の距離だけ内側に配置されるように分岐しており、ヘッドアーム12とブリッジアーム11との間に所定の第2空間R2が形成されるようになっている。この第2空間R2によって、ヘッドアーム12の撓み空間、すなわち、第2支持部12aの前頭部への押圧力を調整する第2押圧力調整空間が確保される。
【0034】
このように、ヘッドアーム12は、第2支持部12aの前頭部への押圧力を調整する第2押圧力調整部16となっている。初期状態(
図3(a))からヘッドアーム12の間を押し広げると、第2空間R2が小さくなるように第2押圧力調整部16が撓み、このとき初期状態に戻ろうとする弾性変形力が、第2支持部12aの対向方向に作用する(
図3(c)の矢印)。この第2支持部12aの対向方向に作用する弾性変形力が、顔面保護具1の装着時における前頭部への押圧力となる。
【0035】
以上のような顔面保護具用フレームによれば、上記の第1支持部11aによって後頭部の2点を支持し、上記の第2支持部12aによって前頭部の2点を支持する、すなわち、前後左右の計4点によって頭部を支持できる。ヘッドアーム12としての第2押圧力調整部16は、ブリッジアーム11の第1押圧力調整部15とは独立して撓み動作し、また、一対の第2押圧力調整部16同士も、それぞれ独立して撓み動作するため、頭部の大きさ等の個人差に関わらず、装着安定性を確実に確保できる。
【0036】
その上、装着時において押し広げたブリッジアーム11の間に頭部を大まかに位置させるだけで、押し広げ力を解除すれば、ブリッジアーム11やヘッドアーム12が初期状態に戻ろうとする弾性変形力を利用して、顔面保護具用フレームを頭部に自動的に支持させることができる。しかも、ブリッジアーム11の第1押圧力調整部15やヘッドアーム12の第2押圧力調整部16によって後頭部や前頭部への押圧力が調整されるため、良好なはめ心地も実現できる。
【0037】
例えば、顔面保護具1の装着時(
図4(a))、第2押圧力調整部16が第2空間R2内に撓み、所定の対向距離LF1を介したヘッドアーム12の第2支持部12aによって前頭部が安定的に受け止められる。第2押圧力調整部16が第2空間R2内に撓む分、前頭部によるブリッジアーム11の撓みが抑制され、第1支持部11aの対向距離LB1が過度に離れることを防止でき、第1支持部11aによる後頭部の支持が弱められることなく、第1支持部11aによる後頭部の支持が弱められることがなくなる。
【0038】
装着者の頭部が比較的大きい場合等には(
図4(b))、第2押圧力調整部16が第2空間R2内に大きく撓み、所定の対向距離LF2を介したヘッドアーム12の第2支持部12aによって前頭部が安定的に受け止められる(LF2>LF1)。第2押圧力調整部16が第2空間R2内に大きく撓む分、第1支持部11aの対向距離LB2が過度に離れることを防止でき、第1支持部11aによる後頭部の支持が弱められることがなくなる。
【0039】
頭部が比較的小さい場合等には(
図4(c))、第2押圧力調整部16の第2空間R2内への撓みが少なくなるものの、ヘッドアーム12の第2支持部12aによって前頭部が安定的に受け止められる。頭部が小さい分、第1支持部11aの対向距離LB3が過度に離れることもなく、第1支持部11aによって後頭部が安定的に受け止められる(LB3<LB1)。
【0040】
このように、顔面保護具用フレームによれば、頭部の大きさ、形状、毛量等の個人差に関わらず、前頭部を安定的に支持でき、更に、第1支持部11a同士が過度に引き離されて後頭部から離間してしまったり、後頭部への第1支持部11aへの押圧力が弱くなってしまったりすることもなくなるため、装着安定性を確実に確保できる。しかも良好なはめ心地も実現できる。顔面保護具1は、前頭部から側頭部に亘って両側後頭部まで延びて頭部に支持されるため、眼鏡の鼻パッドやテンプル部材等の各部材と干渉することもなく、併用が可能である。
【0041】
このような第2支持部12aの面積は、第1支持部11aの面積よりも大きいように構成されている。シールドフレーム20やシールドSが設けられる分、前頭部側への重量が大きくなりやすいが、かかる重量を広面積である第2支持部12aで分散させることができ、良好なはめ心地を確実に実現できる。また、顔面保護具の前頭部への支持力が大きくされることで、シールドフレーム20の回動操作が容易となり、回動操作に起因して顔面保護具1に上下左右方向にズレが生じることも防止できる。
【0042】
また、ブリッジアーム11の側頭部に対応する部分11bは、第1押圧力調整部15及び第2押圧力調整部16より剛性が高いように構成されている。これによれば、ブリッジアーム11の側頭部に対応する部分11bの剛性が高い分、ブリッジアーム11の第1押圧力調整部15やヘッドアーム12の第2押圧力調整部16が優先して弾性変形するようになる。よって、頭部への更なる装着安定性を確実に確保でき、極めて良好なはめ心地を実現できる。しかも、ブリッジアームの側頭部に対応する部分11b(ヘッドアームの分岐部分)の剛性が確保されるようになり、長期の使用や繰り返しの使用等に対する耐久性も向上させることができる。
【0043】
また、ブリッジアーム11によって形成される平面と、ヘッドアーム12によって形成される平面と、の成す角は、0〜30度の範囲内であるように構成されている。これによれば、上記の本体フレームを金型等によって製造しやすくなる。尚、上記の成す角は前記の例に限定されず、例えば30〜90度の範囲内であってもよい。
【0044】
以上説明した顔面保護具1の使用方法は以下の通りである。すなわち、ブリッジアーム11の間を押し広げ、ブリッジアーム11の間に頭部を位置させた上で押し広げ力を解除する。これにより、顔面保護具用フレームに対する頭部の厳密な位置合わせを要することなく、ブリッジアーム11やヘッドアーム12が初期状態に戻ろうとする弾性変形力を利用して、自動的に、頭部への安定性よく素早く装着できる。よって、顔面保護具用フレームを素早く、かつ簡易な動作で自ら頭部に装着できるのは勿論、装着対象者に対して他者が顔面保護具を装着する場合においても、頭部への好適な位置に、安定性よく素早く装着させることができる。ブリッジアーム11の第1押圧力調整部15やヘッドアーム12の第2押圧力調整部16によって後頭部や前頭部への押圧力が調整されるため、良好なはめ心地も実現できる。
【0045】
以上説明した本実施形態の顔面保護具1や顔面保護具用フレームは、様々な分野において使用することができる。特に、医療や介護の分野で使用される場合には緊急性を要する状況も想定されるが、かかる状況下においても、簡単な操作で素早く、かつ安定的に顔面保護具を頭部に装着できる。良好なはめ心地も実現できるため、長時間や繰り返しの使用によっても、違和感や痛みが生じることもがない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
上記の実施形態に記載の顔面保護具1を構成した(実施例1)。シールドとしては、上部両端にそれぞれ貫通孔O
pn及び切り欠きC
outが形成されているものを用いた。
【0048】
(比較例1)
頭部を額から水平に囲むように装着するストレート式の本体フレームを用いて構成した。具体的には、頭部より径の小さい環の一部を切断し、額を支点の一つとして頭部を水平に囲むようにし、押し広げた両端部が元に戻ろうとする弾性変形力によって頭部に支持させる顔面保護具とした。
【0049】
(比較例2)
比較例1のストレート式を採用した本体フレームを斜めに(額よりも頭頂部に近い位置を支点の一つとし、本体フレームの両端部を後頭部や首すじの近傍に位置させて)装着するようにした。斜めに装着すると、眼鏡のテンプルと本体フレームが交差することが予想されたため、本体フレームの両端部を狭めることにより眼鏡テンプル付近で本体フレームを頭部から浮き上がらせ、本体フレームの両端部のみが頭部と接触するような顔面保護具とした。
【0050】
(比較例3)
前頭部と本体フレームが2点で接触するように、本体フレームの前方内側(装着時における前頭部に当接する側)の左右に突起をそれぞれ設けた本体フレームを用いて構成した。具体的には、左右それぞれの突起を前頭部に当接させ、押し広げた両端部が元に戻ろうとする弾性変形力によって後頭部を支持させる顔面保護具とした。
【0051】
その他、シールド部としてのレンズの周りにレンズフレームが設けられるとともに、レンズフレームに鼻パッド及び一対のテンプル部材が固定されたメガネ式の顔面保護具も検討したが、かかるメガネ式では、装着時において、顔面保護具の鼻パッドやテンプル部材が眼鏡の各部材と干渉するようになり、眼鏡との併用が困難であった。
【0052】
(官能試験1)
20代〜50代の男女の計10名を対象に、シールドの装着時における、はめ心地、上下の安定性、左右の安定性について3段階で評価する官能試験を実施した。試験の結果は、使用に適さないと判断する場合には「×」、使用に適すると判断する場合には「○」、「×」及び「○」で評価が分かれる場合には「△」、格段に優れていると判断する場合には「◎」と評価した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例1は、上下方向に対する安定感がないことが分かった(
図5(a)の矢印A)。また、比較例1は、前方にシールドおよびシールドフレームを取り付けた場合には、その重さで頭部から本体フレームが外れやすいことも分かった。
【0055】
比較例2は、装着者の頭の形状によって、本体フレームの前側が前頭部中央の1点でのみ支持されるようになり、後頭部を支持する本体フレームの両端部が支点となり、上下方向に回転するようなズレや、左右方向のズレが生じやすいことが分かった(
図5(b)の矢印A及びB)。
【0056】
比較例3は、前頭部の2点と後頭部の2点、前後左右の計4点から頭部を支持できるため、比較例1〜2に比べれば安定感が高くなったが、頭部が大きいと、前頭部によって支持点が大きく押し広げられて、これにより本体フレームが広がり、後頭部を支持するための両端部が過度に離れ、後方支持部の締め付けが弱くなることが分かった(
図5(b)のLb)。つまり、比較例3では、頭部の大きい場合も小さい場合も安定して装着できるものではないことが分かった。
【0057】
これに対し、実施例1は、3項目すべてにおいて、格段に優れていると評価となり、他の構成より優れた構造であるとことが確かめられた。
【0058】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上記のものに限定されるものではない。例えば、本発明は、上記の実施形態で述べたような医療や介護の分野において使用される顔面保護具に限定されず、染性飛沫や薬液等から顔面の全体又は一部を保護するための顔面保護具を対象としたものであり、他の分野においても勿論適用することができる。例えば、本発明は、化学分野、船舶・海洋分野、航空・宇宙分野、繊維分野、金属分野、資源工学分野、建設分野、上下水道分野、衛生工学分野、農業分野、森林分野、水産分野、環境分野、原子力・放射線分野等にも適用可能である。
【0059】
上記の実施形態では、シールドSとして可撓性を有する透明樹脂材料を用いて構成したが、これに調光材料や光吸収材料等を配合するようにしてもよい。シールドの長さも限定されず、感染性飛沫や薬液等から顔面の全体を保護する程度の長さを有するものであってもよいし、顔面の一部、例えば眼球近傍を保護する程度の長さを有するものであってもよい。
【0060】
また、シールドSには、少なくとも一方の面に所定の保護シートを付しておくようにしてもよい。これによれば、使用前段階においてシールドSの表面が保護シートによって保護されるため、シールドSの表面に傷がつくことや、空気中のダストによって表面が汚染されることを抑制できる。よって、作業時における作業対象物への良好な視認性を確保でき、保護シートの剥離することではじめて露出する面を外側にしてシールドSを使用すれば、作業対象物に対する低汚染性をも確保できるようになる。しかも、保護シートを付しておくことで、シールドS同士の張り付きを防止することもできる。
【0061】
保護シートに帯電防止特性を付与するようにすれば、シールドSからの剥離が容易となり、着色された保護シートを用いるようにすれば、シールドSに保護シートが付されているか否かの判断が容易となる。更に、保護シートの所定位置に剥離シートを付しておき、これを摘まんでシールドSから保護シートを剥離できるようにすれば、かかる剥離作業がより容易なものとなる。
【0062】
保護シートは、シールドSの全面に設けることもできるし、一部のみに設けることもできる。シールドSの全面に設けた上で、保護シートのみに切れ込みや切断線を付与するようにすれば、所定領域ごとに所定のタイミングで保護シートを剥離することができる。一例として、シールドSの全面に保護シートを設け、シールドSの貫通孔O
pn及び切り欠きC
outを含む上部領域と、装着時において顔面を主に保護する下部領域と、の境界に切断線を付与し、上部領域の保護シートのみ、使用前段階である出荷時や保管時に剥離しておくようにすることができる。
【0063】
シールドフレーム20は、上記のように左右の保持部22同士を接続するように連続して設けられることで、シールドフレーム20の外面をシールドSに当接させてシールドSを安定的に保持しやすくなり、また顔面との好適な距離を保ちやすくなる。ただし、シールドフレームは前記の例に限定されず、
図6(a)に示すように、中央部分が除かれた別体型のシールドフレーム20A、20Bとしてもよい。これによれば、各部材ごとの修理・交換・メンテナンス等が可能になる。また、
図6(b)に示すように、本体フレーム10及びシールドフレーム20を一体的に固定するようにしてもよい。
【0064】
シールドフレーム20におけるシールドSを保持するための構成は、本体フレーム10の外側でシールドSを保持できる限りにおいて前記の例に限定されず、シールドフレーム20から立ち上がり、押圧に応じて先端部に形成された係止爪がシールドフレーム20に接離可能である延設部材と、延設部材よりも後端側に設けられ延設部材の背面にと当接してスライド可能なスライド部材と、を具備するスライド式を採用してもよい。かかるスライド式の場合、スライド部材をスライドさせて延設部材を背面側から押し倒すことで、係止爪を貫通孔O
pnに係止させることができ、逆方向にスライドさせることで、係止爪の係止を解除することができる。
【0065】
また、シールドフレーム20におけるシールドSを保持するための構成として、ヒンジ接続された一対の雄部及び雌部をシールドフレームに形成し、貫通孔O
pnを通して雄部を雌部に押し込んでシールドSを装着し、雌部から雄部を引き抜いてシールドSを脱離させるヒンジ式を採用してもよい。また、シールドフレームの両側に手かぎ状のフックを形成し、これに貫通孔O
pnを引っ掛けてシールドSを引き伸ばしつつ装着し、フックの引っ掛かりを解除してシールドSを脱離させるフック式を採用してもよい。
【0066】
また、シールドフレームの両側に、先端に大径部を有するピンを形成するとともに、貫通孔O
pnの縁に複数の切り込みを形成し、縁を折り曲げて貫通孔O
pnをピンに押し通すことでシールドSを装着し、縁が折り曲がるようにピンから貫通孔O
pnを外すことでシールドSを脱離させるプッシュ式を採用してもよい。更に、シールドフレームの両側に、シールドフレーム側に付勢された押さえ板部を形成し、押さえ板部の間に挿入することでシールドSを装着し、シールドフレーム及び押さえ板部の間から引き抜いてシールドSを脱離させる単純クリップ式を採用しても良い。必要に応じて、シールドフレーム20のシールドSに対向する面に突起を設け、この突起に対応するようにシールドに開口を形成し、シールドSの開口にシールドフレーム20の突起を挿入しつつ、保持部22によってシールドSを保持するようにしてもよい。