(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6574873
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】パネル部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20060101AFI20190902BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20190902BHJP
G09F 13/04 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B23K26/00 B
B60K37/00 A
B60K37/00 G
G09F13/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-100336(P2018-100336)
(22)【出願日】2018年5月25日
【審査請求日】2019年1月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591178517
【氏名又は名称】株式会社三和スクリーン銘板
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 賢士
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−066992(JP,A)
【文献】
特開2005−017356(JP,A)
【文献】
特開昭62−065076(JP,A)
【文献】
実開昭59−066278(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00〜13/46
B23K 26/00
B60K 35/00〜37/06
H01H 9/16〜 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明シートの表面側に印刷がされたパネル部材の製造方法であって、
前記透明シートの表面側に、光を透過しないインクからなる第1印刷層を印刷する工程と、
前記第1印刷層の上面に第2印刷層を重ねて印刷して、積層印刷層を形成する工程と、
前記透明シートの裏面側の一部の領域に、マーキング用のレーザ光を吸収しないインクからなる第3印刷層を印刷する工程と、
前記積層印刷層を有する前記透明シートを、前記パネル部材を構成する樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、
前記フォーミング加工を行った前記透明シートの前記第3印刷層に対応する位置に、前記積層印刷層の表面側から前記レーザ光を照射し、前記積層印刷層の一部を除去して、端面が垂直である孔部を前記積層印刷層に形成する工程と、を備え、
前記積層印刷層に前記孔部を形成する工程の前又は後に、前記透明シートの裏面側に、圧力を加えて前記樹脂基板を一体化することを特徴とするパネル部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパネル部材の製造方法において、
前記第1印刷層には、前記レーザ光を吸収するインクが用いられることを特徴とするパネル部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパネル部材の製造方法において、
前記第2印刷層は、複数の印刷層から構成されていることを特徴とするパネル部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のパネル部材の製造方法において、
前記第3印刷層は、所定の色彩が着色された着色層と、光が前記透明シートのみを通過して前記パネル部材の前面側に出射されることを防止する白色層と、を含んでいることを特徴とするパネル部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の内装加飾部品等に用いられるパネル部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両の内装加飾部品等には、表面に木目調やカーボン調の意匠が施され、内部光源からの光で照明されるパネル部材が用いられている。このような意匠を印刷する方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等が良く知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1の照明カバー部材は、自動車のエンジンのスタートボタンを構成するベゼルであり、パネル部材の表側には、金属光沢を有する金属調装飾部が全周に亘って設けられている。金属調装飾部の中には、「OFF」、「ACC」、「ON」の文字からなる3つの照明部が設けられている。すなわち、照明カバー部材は、照明部の形成部分を光が透過可能に構成されており、LED等の光源を用いて照明部の裏側から照らすことで、各照明部を発光させ得るよう構成されている。
【0004】
また、照明カバー部材は、主体となる短円筒形状の支持基材と、支持基材の表側に積層一体化されて金属調装飾部を形成する装飾フィルムとを備えている。照明カバー部材は、フィルムインサート成形によって容易に製造でき、具体的には、薄膜金属層の両面に保護層を有するフィルムを製造し、しかる後に、当該フィルムの裏面に印刷層を印刷することにより、凹凸のない装飾フィルムを得ている。
【0005】
印刷層は、光不透過性の黒色インキで形成される遮光印刷層と、光透過性の青色インキで形成される着色印刷層とで構成される。遮光印刷層は、照明部を形成する部分を欠落させることにより、裏側から照射される光が、照明部のみを透過する。一方、着色印刷層は、光透過性の青色インキで形成されるものであり、照明部を透過する光を青く着色する(段落0015〜0020、
図1,
図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−44375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の照明カバー部材に意匠を施したい場合、複数の印刷層を重ねて印刷する必要がある。また、複数の印刷層を重ね合わせる場合には、各層のずれを考慮して下層の印刷層ほど欠落部分を大きく加工する必要がある。しかしながら、そのような構造とした場合、上層の印刷層を透過する光により、照明部(文字や図形)の周辺部に光漏れが生じて、照明部が鮮明でなくなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1では、印刷基材となる裏面保護層の裏面に遮光印刷層を設けているため、裏面側から光を照射すると裏面保護層内に導光し、薄膜金属層に設けられた照明部の輪郭からも光が透過して、照明部が鮮明に見えなくなる。一方、裏面保護層の表面に遮光印刷層を設けた場合、裏面の遮光印刷層からの光の影を拾い、照明部が二重に映し出されてしまうといった問題もあった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光漏れを防止して、鮮明な文字や図形を得ることができるパネル部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、透明シートの表面側に印刷がされたパネル部材の製造方法であって、前記透明シートの表面側に、光を透過しないインクからなる第1印刷層を印刷する工程と、前記第1印刷層の上面に第2印刷層を重ねて印刷して、積層印刷層を形成する工程と、
前記透明シートの裏面側の一部の領域に、マーキング用のレーザ光を吸収しないインクからなる第3印刷層を印刷する工程と、前記積層印刷層を有する前記透明シートを、前記パネル部材
を構成する樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング加工を行う工程と、前記フォーミング加工を行った前記透明シートの
前記第3印刷層に対応する位置に、前記積層印刷層の表面側から
前記レーザ光を照射し、前記積層印刷層の一部を除去して、端面が垂直である孔部を前記積層印刷層に形成する工程と、を備
え、前記積層印刷層に前記孔部を形成する工程の前又は後に、前記透明シートの裏面側に、圧力を加えて前記樹脂基板を一体化することを特徴とする。
【0011】
本発明のパネル部材は、透明シートの表面側に印刷がされ、例えば、裏面側に配設された光源の光により照明される部材であり、車両用の内装加飾部品等として用いられる。このパネル部材を製造するため、透明シートの表面側に第1印刷層を印刷する工程と、その上面に第2印刷層を重ねて印刷して、積層印刷層を形成する工程を行う。これにより、透明シートの表面側に意匠を施すことができる。
【0012】
積層印刷層を形成した後、
透明シートの裏面側の一部の領域に第3印刷層を印刷し、この透明シートを
樹脂基板の形状に合わせて形作るフォーミング工程を行い、さらに、フォーミング加工を行った透明シートの表面側から
、第3印刷層に対応する位置にレーザ光を照射する工程を行う。これにより、積層印刷層の一部を除去して、端面が垂直(略垂直を含む)である孔部を積層印刷層に形成する。孔部を形成する際には、フォーミング加工が完了しているため、図形に歪が生じ難く、所定の位置に図形を配置することができる。孔部からは光が前面側に出射され、パネル部材に文字や図形が表示されるが、端面が垂直であることにより、光漏れが生じることがなく、鮮明な文字や図形を表示することができる。
また、孔部を形成する工程の前後で、透明シートに裏面側に、圧力を加えて樹脂基板を一体化することで、パネル部材が完成する。
【0013】
本発明のパネル部材の製造方法において、前記第1印刷層には、前記レーザ光を吸収するインクが用いられることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1印刷層のインクがレーザ光を吸収して反応することにより、上層の第2印刷層を併せて除去することができる。そして、レーザ光を走査して積層印刷層を除去することで、目的の文字や図形の孔部を得ることができる。
【0015】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記第2印刷層は、複数の印刷層から構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、複数の印刷層を重ね合わせることにより、透明シートの表面側に、木目調やカーボン調等の複数の色彩が必要となる意匠を施すことができる。
【0017】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記孔部を形成する工程の前に、前記透明シートの裏面側に第3印刷層を印刷する工程をさらに備え、前記孔部を形成する工程において、前記第3印刷層に対応する位置に前記孔部を形成することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、透明シートの裏面側に第3印刷層を印刷する工程を行った後、積層印刷層に孔部を形成する工程において、第3印刷層に対応する位置に孔部を形成する。これにより、目的の文字や図形の孔部から第3印刷層を視認できるようになる。この製造方法により製造されたパネル部材では、装飾性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記第3印刷層には、前記レーザ光を吸収しないインクが用いられることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第3印刷層のインクがレーザ光を吸収しないことにより、積層印刷層に孔部を形成する工程において、第3印刷層が劣化したり、破壊されたりすることがない。
【0021】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記第3印刷層は、所定の色彩が着色された着色層と、光が前記透明シートのみを通過して前記パネル部材の前面側に出射されることを防止する白色層と、を含んでいることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、着色層を印刷することにより、孔部から所定の色彩が視認可能な意匠とすることができる。また、白色層を印刷することにより、光が直接パネル部材の前面側に出射されることを防止することができる。
【0023】
また、本発明のパネル部材の製造方法において、前記透明シートは、0.5mm以下の厚みを有していることが好ましい。
【0024】
第3印刷層は、透明シートの裏面側に形成されるため、透明シートの厚みによっては第3印刷層が窪んで見えてしまう。本発明の構成によれば、透明シートの厚みを0.5mm以下とすることで、第3印刷層をある程度、平坦に見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】パネル部材(II-II断面部分)の製造方法を説明する図。
【
図4】パネル部材(IV-IV断面部分)の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るパネル部材の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明に係るパネル部材の全体構成図である。パネル部材1は、樹脂シート3の少なくとも表面側に意匠を印刷した後、圧力を加えて成型樹脂部2と一体化する、いわゆるフィルムインサート成型により製造される。パネル部材1は、例えば、車両用の内装加飾部品等として用いられる。
【0028】
成型樹脂部2は、厚みが約3mmのプラスチック製の板状部材であり、その表面にフォーミング加工後の樹脂シート3の形状と一致する浅い窪みが形成されている。また、成型樹脂部2の裏面は、後述する光源(LED基板)が収納できるように、高さが約15mmの側板を有する。成型樹脂部2は、光源からの光が透過する透明又は半透明の材料であることが好ましい。
【0029】
樹脂シート3は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリル、又はポリカーボネートとアクリルの複層シート、ポリプロピレン等の透過性を有するフィルムである。詳細は後述するが、樹脂シート3の厚みは、0.5mm以下であることが好ましい。
【0030】
樹脂シート3の表面側には、高詳細のスクリーン印刷により印刷した積層印刷層4が形成され、積層印刷層4は、複数の印刷層により構成されている。
図1は、パネル部材1の表面に木目調の意匠が描かれていることを示しているが、積層印刷層4は、茶色の印刷層や木目の細線の印刷層等、2〜5つの印刷層を重ね合わせて形成される。なお、意匠は木目調に限られず、カーボン調やピアノブラック(光沢ブラック)等、様々なデザインとすることができる。
【0031】
また、パネル部材1は、その表面に、抜き文字又は抜き柄となる図形5a,5b1,5b2を有している。詳細は後述するが、積層印刷層4が完成した後、レーザマーキング装置によりレーザ光(例えば、Nd:YAGの波長;1,064μm)を所望の図形となるようにスキャンし、積層印刷層4を除去する。これにより、積層印刷層4に図形5a,5b1,5b2の孔部を形成する。
【0032】
図形5aは、四つ葉マークの縁部のみが孔部となっており、成型樹脂部2の裏面側に配設された光源の光が透過するようになっている。また、図形5b1,5b2は、それぞれ異なる模様又は色彩となるように樹脂シート3の裏面側に印刷層が印刷されている。
【0033】
光が透過する図形5aについては、樹脂シート3の裏面側に印刷層を設けていないが、直光がパネル部材1の前面側に出射されないように、樹脂シート3の裏面側に白色の印刷層を設ける場合もある。
【0034】
次に、
図2に、
図1のパネル部材1のII-II断面図を示す。
【0035】
パネル部材1は、成型樹脂部2の表面側に、圧空成形等によるフォーミング加工を行った樹脂シート3が取り付けられている。樹脂シート3の表面側の積層印刷層4は、光源6の光が透過しない印刷層4a(本発明の「第1印刷層」)と、主に意匠を構成する印刷層4b,4c(本発明の「第2印刷層」)とで構成されている。意匠が単色(特に、黒色系)である場合、印刷層4aのみでも構成可能であるが、通常、少なくとも2以上の印刷層を重ね合わせて意匠を構成する。
【0036】
図2において、積層印刷層4が除去された部分は、
図1の図形5a(四つ葉マークの縁部)である。ここで、光源6が成型樹脂部2の裏面側に配設されているが、成型樹脂部2及び樹脂シート3が透過性を有する材料であるため、図形5aの部分から光源6の光が成型樹脂部2の前面側に出射される。
【0037】
次に、
図3を参照して、
図1のパネル部材1のII-II断面部分の製造方法を説明する。なお、以下では、成型樹脂部2の断面を省略している。
【0038】
図3(a)に示すように、樹脂シート3の表面側に下層から印刷層4a,4b,4cの順にスクリーン印刷を行い、積層印刷層4を形成する。印刷層4aは、レーザマーキング装置のレーザ光(Nd:YAG,CO
2レーザ等)を吸光し易いインク、例えば、カーボンブラックを含む黒色顔料の層である。また、印刷層4aを黒色の層とすることで、遮光効果も得られる。
【0039】
印刷層4b,4cはパネル部材1の意匠を構成する層であり、例えば、印刷層4bが木目の茶色の層、印刷層4cが木目の細線の層となっている。木目調の意匠を作る場合、実際は、5以上の印刷層を重ね合わせる必要があるが、ここでは、説明のため簡略化した3層の構造としている。
【0040】
次に、
図3(b)に示すように、図形5aを描くため、積層印刷層4の表面側からレーザ光を照射する。これにより、上層の印刷層4b,4cがレーザ光の熱で溶解する。また、レーザ光が印刷層4aに到達すると吸光され、化学反応により印刷層4aが除去(アブレーション)される。
【0041】
その後、
図3(c)に示すように、印刷層4aの除去に伴い、印刷層4b,4cが破壊される。そして、レーザ光をスキャンして、積層印刷層4の一部分を図形5aの形状となるように除去する。また、レーザ光の径を絞ることにより、極めて小さい孔部を形成することができるので、孔部の端面は垂直となる。
【0042】
仮に、孔部の端面が垂直とならず、印刷層4cの孔部が印刷層4a,4bの孔部よりも小さい場合、光源6の光が通過する部分が狭くなる。また、印刷層4c(厚みは3〜6μm)のうち、印刷層4a,4bの孔部の端面よりも孔部の中心方向に突出した部分によって光が漏れ、不鮮明な図形となる。しかし、本発明の製造方法では、印刷層4a,4b,4cの孔部の端面が垂直に揃うため、図形5aの周辺部に光漏れが生じず、図形5aの輪郭は鮮明になる。
【0043】
次に、
図4を参照して、
図1のパネル部材1のIV-IV断面部分の製造方法を説明する。以下でも、成型樹脂部2の断面を省略している。
【0044】
図4(a)に示すように、樹脂シート3の表面側に下層から印刷層4a,4b,4cの順にスクリーン印刷を行い、積層印刷層4を形成する。ここでも、印刷層4aはレーザ光を吸光し易いインクの層であり、印刷層4b,4cはパネル部材1の意匠を構成する層である。
【0045】
また、樹脂シート3の裏面側に下層(樹脂シート3と接触する層)側から印刷層7a,7b(本発明の「第3印刷層」)の順にスクリーン印刷を行い、裏面印刷層7を形成する。これは、樹脂シート3の表面側(印刷層4cの上面)に図形用の印刷層を重ねて印刷すると、その部分だけ凸状となり、外観を損ねるためである。
【0046】
裏面印刷層7は、例えば、印刷層7aが赤色の層(本発明の「着色層」の一例),印刷層7bが白色の層(本発明の「白色層」)である。このように、印刷層を3〜4枚重ね合わせることで、模様や標章等を描くこともできる。なお、裏面印刷層7は、所定の色彩の印刷層7aのみで構成してもよい。
【0047】
ここで、印刷層7a,7bは、レーザマーキング装置のレーザ光を吸光しない、すなわち、レーザ光により劣化や破壊が進まないインクの層である。白色の層のインクは、例えば、酸化チタンを含む顔料が用いられる。
【0048】
次に、
図4(b)に示すように、図形5b2を描くため、積層印刷層4の表面側からレーザ光を照射する。これにより、印刷層4aの除去(アブレーション)時に印刷層4b,4cが共に破壊される。
【0049】
その後、レーザ光を図形5b2の形状となるようにスキャンして、
図4(c)に示すように、積層印刷層4の一部分を除する。また、このとき、孔部の端面は垂直となるので、図形5b2の周辺部に光漏れが生じず、図形5b2の輪郭は鮮明になる。
【0050】
この工程において、レーザ光は、樹脂シート3を通過して裏面印刷層7まで到達する。しかし、印刷層7a,7bはレーザ光によって劣化しないので、印刷層7a,7bはそのまま残存する。これにより、図形5b2は、パネル部材1の上面から見た場合、印刷層7a,7bによる色彩又は模様となる。なお、印刷層7a,7bは、孔部の位置の多少のずれを考慮して、図形5b2の形状よりも広めに印刷されている。
【0051】
樹脂シート3の厚みは、0.5mm以下とすることが好ましい。少なくとも積層印刷層4は、樹脂シート3よりも遥かに薄い(10層でも約50μm)ので、印刷層7a,7bは樹脂シート3の裏面側に配置されているものの、実際は、裏面印刷層7がそれ程奥まって見えない。すなわち、裏面印刷層7をある程度、平坦に見せることができ、美観を保つことができる。また、樹脂シート3を薄くすることで、シート内部での導光による隣接図形への影響を抑えるという効果もある。
【0052】
レーザマーキングは、印刷された樹脂シート3のフォーミング加工後に行ってもよいし、樹脂シート3の成型樹脂部2への取り付け、すなわち、インジェクション後に行ってもよい。後者の方法によれば、図形の歪みが生じ難くなり、パネル部材1の所定の位置に図形を配置することができる。
【0053】
以上で説明したように、本発明のパネル部材1の製造方法は、樹脂シート3の表面側に光が透過しないインクからなる印刷層4aを印刷する工程と、印刷層4aの上面に印刷層4b,4cを重ねて印刷して、積層印刷層4を形成する工程と、積層印刷層4の表面側からレーザ光を照射し、積層印刷層4の一部を除去して、端面が垂直である孔部を積層印刷層4に形成する工程とを備えている。
【0054】
パネル部材1の印刷層4a,4b,4cは、高詳細のスクリーン印刷で印刷するため、従来のグラビア印刷と遜色のない、木目調等の美しい意匠をパネル部材1に施すことができる。また、積層印刷層4の表面側からレーザ光を照射して図形(抜き文字、抜き柄)を形成する際、孔部の端面を垂直に形成する。これにより、形成される孔部の周辺部から光漏れが生じず、輪郭が鮮明な図形を有するパネル部材とすることができる。
【0055】
上記説明は、本発明の実施形態の一部であり、これ以外にも種々な実施形態が考えられる。樹脂シート3の表面側の積層印刷層4、裏面側の裏面印刷層7は、それぞれ何層で構成されていてもよい。
【0056】
例えば、レーザマーキング後に、パネル部材1の印刷面の耐殺傷性を向上させるため、透過性を有する光硬化性塗料、又は熱硬化性塗料の保護膜を被覆してもよい。このような耐殺傷性層の形成は、パネル部材1が車両用の部品に用いられる場合は必須となる。
【符号の説明】
【0057】
1…パネル部材、2…成型樹脂部、3…透明シート、4…積層印刷層、4a〜4c…印刷層、5a,5b1,5b2…図形、6…光源、7…裏面印刷層、7a,7b…印刷層。
【要約】
【課題】光漏れを防止して、鮮明な文字や図形を得ることができるパネル部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のパネル部材1の製造方法は、樹脂シート3の表面側に、光を透過しないインクからなる印刷層4aを印刷する工程と、印刷層4aの上面に印刷層4bを重ねて印刷して、積層印刷層4を形成する工程と、積層印刷層4の表面側からレーザ光を照射し、積層印刷層4の一部を除去して、端面が垂直である孔部を積層印刷層4に形成する工程とを備えている。
【選択図】
図3