(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態のエアロゾル吸引器用の電源ユニットについて説明するが、先ず、電源ユニットが装着されたエアロゾル吸引器について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0013】
(エアロゾル吸引器)
エアロゾル吸引器1は、燃焼を伴わずに香味が付加されたエアロゾルを吸引するための器具であり、所定方向(以下、長手方向Aと呼ぶ)に沿って延びる棒形状を有する。エアロゾル吸引器1は、長手方向Aに沿って電源ユニット10と、第1カートリッジ20と、第2カートリッジ30と、がこの順に設けられている。第1カートリッジ20は、電源ユニット10に対して着脱可能である。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20に対して着脱可能である。言い換えると、第1カートリッジ20及び第2カートリッジ30は、それぞれ交換可能である。
【0014】
(電源ユニット)
本実施形態の電源ユニット10は、
図3、
図4、
図5、及び
図6に示すように、円筒状の電源ユニットケース11の内部に、電源12、充電IC55、MCU(Micro Controller Unit)50、スイッチ19、圧力センサ13、電圧センサ16、温度センサ17、及び各種センサ等を収容する。電源12は、充電可能な二次電池、電気二重層キャパシタ等であり、好ましくは、リチウムイオン電池である。以下では、電源12がリチウムイオン電池であるものとして説明する。
【0015】
電源ユニットケース11の長手方向Aの一端側(第1カートリッジ20側)に位置するトップ部11aには、放電端子41が設けられる。放電端子41は、トップ部11aの上面から第1カートリッジ20に向かって突出するように設けられ、第1カートリッジ20の負荷21と電気的に接続可能に構成される。
【0016】
また、トップ部11aの上面には、放電端子41の近傍に、第1カートリッジ20の負荷21に空気を供給する空気供給部42が設けられている。
【0017】
電源ユニットケース11の長手方向Aの他端側(第1カートリッジ20と反対側)に位置するボトム部11bには、電源12を充電可能な外部電源60(
図6参照)と電気的に接続可能な充電端子43が設けられる。充電端子43は、ボトム部11bの側面に設けられ、例えば、USB端子、microUSB端子、及びLightning端子の少なくとも1つが接続可能である。
【0018】
なお、充電端子43は、外部電源60から送電される電力を非接触で受電可能な受電部であってもよい。このような場合、充電端子43(受電部)は、受電コイルから構成されていてもよい。非接触による電力伝送(Wireless Power Transfer)の方式は、電磁誘導型でもよいし、磁気共鳴型でもよい。また、充電端子43は、外部電源60から送電される電力を無接点で受電可能な受電部であってもよい。別の一例として、充電端子43は、USB端子、microUSB端子、Lightning端子の少なくとも1つが接続可能であり、且つ上述した受電部を有していてもよい。
【0019】
電源ユニットケース11には、ユーザが操作可能な操作部14が、トップ部11aの側面に充電端子43とは反対側を向くように設けられる。より詳述すると、操作部14と充電端子43は、操作部14と充電端子43を結ぶ直線と長手方向Aにおける電源ユニット10の中心線の交点について点対称の関係にある。操作部14は、ボタン式のスイッチ、タッチパネル等から構成される。操作部14の近傍には、パフ動作を検出する吸気センサ15が設けられている。
【0020】
充電IC55は、充電端子43に近接して配置され、充電端子43から入力される電力の電源12への充電制御を行う。充電IC55は、充電端子43に接続される充電ケーブルに搭載された交流を直流に変換するインバータ61等(
図6参照)からの直流を大きさの異なる直流に変換するコンバータ、電圧計、電流計、プロセッサ等を含む。
【0021】
MCU50は、
図5に示すように、電源12の膨らみ(電源12の劣化によって生じる膨張)量を測定するために電源12に取り付けられた圧力センサ13、パフ(吸気)動作を検出する吸気センサ15、電源12の電源電圧を測定する電圧センサ16、電源12の温度を測定するための温度センサ17等の各種センサ装置、操作部14、後述の報知部45、及びパフ動作の回数又は負荷21への通電時間等を記憶するメモリー18に接続され、エアロゾル吸引器1の各種の制御を行う。MCU50は、具体的にはプロセッサを主体に構成されており、プロセッサの動作に必要なRAM(Random Access Memory)と各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)等の記憶媒体を更に含む。本明細書におけるプロセッサとは、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0022】
また、電源ユニットケース11には、内部に外気を取り込む不図示の空気の取込口が設けられている。なお、空気取込口は、操作部14の周囲に設けられていてもよく、充電端子43の周囲に設けられていてもよい。
【0023】
(第1カートリッジ)
図3に示すように、第1カートリッジ20は、円筒状のカートリッジケース27の内部に、エアロゾル源22を貯留するリザーバ23と、エアロゾル源22を霧化する電気的な負荷21と、リザーバ23から負荷21へエアロゾル源を引き込むウィック24と、エアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルが第2カートリッジ30に向かって流れるエアロゾル流路25と、第2カートリッジ30の一部を収容するエンドキャップ26と、を備える。
【0024】
リザーバ23は、エアロゾル流路25の周囲を囲むように区画形成され、エアロゾル源22を貯留する。リザーバ23には、樹脂ウェブ又は綿等の多孔体が収容され、且つ、エアロゾル源22が多孔体に含浸されていてもよい。エアロゾル源22は、グリセリン、プロピレングリコール、又は水などの液体を含む。
【0025】
ウィック24は、リザーバ23から毛管現象を利用してエアロゾル源22を負荷21へ引き込む液保持部材であって、例えば、ガラス繊維や多孔質セラミックなどによって構成される。
【0026】
負荷21は、電源12から放電端子41を介して供給される電力によって燃焼を伴わずにエアロゾル源22を霧化する。負荷21は、所定ピッチで巻き回される電熱線(コイル)によって構成されている。なお、負荷21は、エアロゾル源22を霧化してエアロゾルを発生可能な素子であればよく、例えば、発熱素子、又は超音波発生器である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。
【0027】
エアロゾル流路25は、負荷21の下流側であって、電源ユニット10の中心線L上に設けられる。
【0028】
エンドキャップ26は、第2カートリッジ30の一部を収容するカートリッジ収容部26aと、エアロゾル流路25とカートリッジ収容部26aとを連通させる連通路26bと、を備える。
【0029】
(第2カートリッジ)
第2カートリッジ30は、香味源31を貯留する。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20側の端部が第1カートリッジ20のエンドキャップ26に設けられたカートリッジ収容部26aに着脱可能に収容される。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20側とは反対側の端部が、ユーザの吸口32となっている。なお、吸口32は、第2カートリッジ30と一体不可分に構成される場合に限らず、第2カートリッジ30と着脱可能に構成されてもよい。このように吸口32を電源ユニット10と第1カートリッジ20とは別体に構成することで、吸口32を衛生的に保つことができる。
【0030】
第2カートリッジ30は、負荷21によってエアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルを香味源31に通すことによってエアロゾルに香味を付与する。香味源31を構成する原料片としては、刻みたばこ、又は、たばこ原料を粒状に成形した成形体を用いることができる。香味源31は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、漢方、ハーブ等)によって構成されてもよい。香味源31には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。
【0031】
本実施形態のエアロゾル吸引器1では、エアロゾル源22と香味源31と負荷21とによって、香味が付加されたエアロゾルを発生させることができる。つまり、エアロゾル源22と香味源31は、エアロゾルを発生させるエアロゾル生成源を構成している。
【0032】
エアロゾル吸引器1におけるエアロゾル生成源は、ユーザが交換して使用する部分である。この部分は、例えば、1つの第1カートリッジ20と、1つ又は複数(例えば5つ)の第2カートリッジ30とが1セットとしてユーザに提供される。
【0033】
エアロゾル吸引器1に用いられるエアロゾル生成源の構成は、エアロゾル源22と香味源31とが別体になっている構成の他、エアロゾル源22と香味源31とが一体的に形成されている構成、香味源31が省略されて香味源31に含まれ得る物質がエアロゾル源22に付加された構成、香味源31の代わりに薬剤等がエアロゾル源22に付加された構成等であってもよい。
【0034】
エアロゾル源22と香味源31とが一体的に形成されたエアロゾル生成源を含むエアロゾル吸引器1であれば、例えば1つ又は複数(例えば20個)のエアロゾル生成源が1セットとしてユーザに提供される。
【0035】
エアロゾル源22のみをエアロゾル生成源として含むエアロゾル吸引器1であれば、例えば1又は複数(例えば20個)のエアロゾル生成源が1セットとしてユーザに提供される。
【0036】
このように構成されたエアロゾル吸引器1では、
図3中の矢印Bで示すように、電源ユニットケース11に設けられた不図示の取込口から流入した空気が、空気供給部42から第1カートリッジ20の負荷21付近を通過する。負荷21は、ウィック24によってリザーバ23から引き込まれたエアロゾル源22を霧化する。霧化されて発生したエアロゾルは、取込口から流入した空気と共にエアロゾル流路25を流れ、連通路26bを介して第2カートリッジ30に供給される。第2カートリッジ30に供給されたエアロゾルは、香味源31を通過することで香味が付与され、吸口32に供給される。
【0037】
また、エアロゾル吸引器1には、各種情報を報知する報知部45が設けられている(
図5参照)。報知部45は、発光素子によって構成されていてもよく、振動素子によって構成されていてもよく、音出力素子によって構成されていてもよい。報知部45は、発光素子、振動素子、及び音出力素子のうち、2以上の素子の組合せであってもよい。報知部45は、電源ユニット10、第1カートリッジ20、及び第2カートリッジ30のいずれに設けられてもよいが、電源ユニット10に設けられることが好ましい。例えば、操作部14の周囲が透光性を有し、LED等の発光素子によって発光するように構成される。
【0038】
(電気回路)
続いて、電源ユニット10の電気回路の詳細について
図6を参照しながら説明する。
電源ユニット10は、電源12と、電源12の電圧である電源電圧V
Battを測定する電圧センサ16と、放電端子41を構成する正極側放電端子41a及び負極側放電端子41bと、充電端子43を構成する正極側充電端子43a及び負極側充電端子43bと、電源12の正極側と正極側放電端子41aとの間及び電源12の負極側と負極側放電端子41bとの間に接続されるMCU50と、充電端子43と電源12との電力伝達経路上に配置される充電IC55と、電源12と放電端子41との電力伝達経路上に配置されるスイッチ19と、を備える。
【0039】
スイッチ19は、例えばMOSFET等の半導体素子により構成され、MCU50によって開閉制御される。
【0040】
充電IC55がインバータ61に非接続の状態において電圧センサ16によって測定される電源電圧V
Battには、放電端子41に負荷21が接続され且つスイッチ19が閉じられた状態における電源12の電圧である閉回路電圧CCV(Closed Circuit Voltage)と、放電端子41に負荷21が接続され且つスイッチ19が開かれた状態における電源12の電圧である開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)と、が含まれる。電圧センサ16によって測定された電源電圧V
BattはMCU50に伝達される。
【0041】
図6に示した電源ユニット10の電気回路では、スイッチ19は電源12の正極側と正極側放電端子41aの間に設けられている。このような所謂プラスコントロールに代えて、スイッチ19は負極側放電端子41bと電源12の負極側に設けられるマイナスコントロールであってもよい。
【0042】
(MCU)
次にMCU50の構成について、より具体的に説明する。
MCU50は、
図5に示すように、ROMに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックとして、エアロゾル生成要求検出部51と、電源状態診断部52と、電力制御部53と、報知制御部54と、を備える。
【0043】
エアロゾル生成要求検出部51は、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求を検出する。吸気センサ15は、吸口32を通じたユーザの吸引により生じた電源ユニット10内の圧力(内圧)変化の値を出力するよう構成されている。吸気センサ15は、例えば、不図示の取込口から吸口32に向けて吸引される空気の流量(すなわち、ユーザのパフ動作)に応じて変化する内圧に応じた出力値(例えば、電圧値又は電流値)を出力する圧力センサである。吸気センサ15は、コンデンサマイクロフォン等から構成されていてもよい。
【0044】
電源状態診断部52は、電源12の状態を診断する。電源状態診断部52は、具体的には、電圧センサ16により測定される電気的な物理量である電源電圧V
Batt、温度センサ17により測定される非電気的な物理量である電源12の温度、及び圧力センサ13により測定される非電気的な物理量である圧力値等の情報を用いて、電源12が既定状態まで劣化が進行した劣化状態にあるか否かを診断したり、電源12が故障状態にあるか否かを診断したりする。本明細書における電源12が既定状態まで劣化が進行した状態とは、例えば電源12の劣化状態を示す数値指標であるSOH(State Of Health)が50%以下となる状態を一例として挙げることができる。電源状態診断部52は、複数種類の診断処理をそれぞれ実行することで、電源12の状態を多面的に診断する。この診断処理の詳細については後述する。
なお、電圧センサ16や温度センサ17によって測定された物理量は、いずれも信号としてMCU50に入力される点に留意されたい。
【0045】
報知制御部54は、各種情報を報知するように報知部45を制御する。例えば、報知制御部54は、第2カートリッジ30の交換タイミングの検出に応じて、第2カートリッジ30の交換タイミングを報知するように報知部45を制御する。報知制御部54は、メモリー18に記憶されたパフ動作の累積回数又は負荷21への累積通電時間に基づいて、第2カートリッジ30の交換タイミングを検出し、報知する。報知制御部54は、第2カートリッジ30の交換タイミングの報知に限らず、第1カートリッジ20の交換タイミング、電源12の交換タイミング、電源12の充電タイミング等を報知してもよい。
【0046】
報知制御部54は、未使用の1つの第2カートリッジ30がセットされた状態にて、パフ動作が所定回数行われた場合、又は、パフ動作による負荷21への累積通電時間が所定値(例えば120秒)に達した場合に、この第2カートリッジ30を使用済み(即ち、残量がゼロ又は空である)と判定して、第2カートリッジ30の交換タイミングを報知するようにしている。
【0047】
また、報知制御部54は、上記の1セットに含まれる全ての第2カートリッジ30が使用済みとなったと判定した場合に、この1セットに含まれる1つの第1カートリッジ20を使用済み(即ち、残量がゼロ又は空である)と判定して、第1カートリッジ20の交換タイミングを報知するようにしてもよい。
【0048】
電力制御部53は、エアロゾル生成要求検出部51がエアロゾル生成の要求を検出した際に、放電端子41を介した電源12の放電を、スイッチ19のON/OFFによって制御する。
【0049】
電力制御部53は、負荷21によってエアロゾル源が霧化されることで生成されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように、言い換えると、電源12から負荷21に供給される電力又は電力量が一定範囲となるように制御する。具体的に説明すると、電力制御部53は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によってスイッチ19のON/OFFを制御する。これに代えて、電力制御部53は、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)制御によってスイッチ19のオン/オフを制御してもよい。
【0050】
電力制御部53は、エアロゾルを生成するために負荷21への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、電源12から負荷21に対する電力供給を停止する。言い換えると、電力制御部53は、ユーザが実際にパフ動作を行っているパフ期間内であっても、パフ期間が所定期間を超えた場合に、電源12から負荷21に対する電力供給を停止する。所定期間は、ユーザのパフ期間のばらつきを抑制するために定められる。
【0051】
電力制御部53の制御により、1回のパフ動作において負荷21に流れる電流は、PWM制御によって負荷21に供給される略一定の実効電圧と、放電端子41と負荷21の抵抗値と、によって決まる略一定の値となる。本実施形態のエアロゾル吸引器1では、未使用の1つの第2カートリッジ30をユーザが使用してエアロゾルを吸引する際に、負荷21への累積通電時間が最大で例えば120秒となるよう制御される。そのため、1つの第2カートリッジ30を空(使用済み)にするために必要な最大の電力量を予め求めることができる。
【0052】
(電源の状態の診断処理)
電源状態診断部52が実行する複数種類の診断処理は、本形態においては、第一診断処理、第二診断処理、第三診断処理、第四診断処理、及び第五診断処理の5種類の診断処理を含む。
【0053】
第一診断処理、第二診断処理、第三診断処理、及び第四診断処理は、それぞれ、繰り返しの充放電、満充電状態や放電終止状態における長期間の放置、又は環境温度等の要因によって生じる電源12の劣化状態の有無を診断するための処理である。
【0054】
第五診断処理は、異物混入、衝撃、又は外部回路の短絡等の要因によって生じる電源12の故障状態の有無を診断するための処理である。以下、それぞれの診断処理について説明する。
【0055】
(第一診断処理)
第一診断処理は、電源12の放電特性の変化に基づいて、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する処理である。
【0056】
図7は、新品の電源12と劣化した電源12の放電特性の一例を示す図である。
図7の縦軸は電源12の電源電圧V
Batt(開回路電圧OCV又は閉回路電圧CCV)を示している。
図7の横軸は電源12の放電量の積算値を示している。
図7に示す破線の波形が新品の電源12の放電特性を示している。
図7に示す実線の波形が劣化した電源12の放電特性を示している。
【0057】
図7に示すように、電源12の劣化が進むと、同じ電源電圧V
Battであっても積算放電量は減少する。積算放電量に大きな差が生じるのは、単位放電量当たりの電源電圧の降下量が緩やかとなる所謂プラトー領域より少し手前の領域である。第一診断処理において、電源状態診断部52は、新品の電源12のプラトー領域よりも少し手前の領域において、電源12の積算放電量をモニタする。
【0058】
具体的には、電源状態診断部52は、新品時の電源12の放電特性におけるプラトー領域に達するより少し前の積算放電量のときの電圧を閾値電圧V2として設定し、更に、閾値電圧V2より大きく且つ満充電電圧よりも低い閾値電圧V1を設定する。
【0059】
電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源電圧V
Battが閾値電圧V1となってから、電圧センサ16によって測定された電源電圧V
Battの値が閾値電圧V2に達するまでの期間における電源12の積算放電量が、予め決められた閾値を超えているか否かを判定する。電源状態診断部52は、この積算放電量が閾値を超えていれば、電源12は交換が不要な程度に性能を維持している状態(言い換えると既定状態まで劣化が進行している劣化状態ではない)と診断し、この積算放電量が閾値以下であれば、電源12は交換が必要な程度に劣化の進んでいる状態(言い換えると既定状態まで劣化が進行している劣化状態である)と診断する。
【0060】
なお、電源状態診断部52は、電源電圧V
Battが閾値電圧V1から閾値電圧V2に達するまでの期間における電源12の積算放電量の代わりに、この期間に検出されたパフ動作の積算回数、この期間に検出されたパフ動作の積算時間、この期間に負荷21に通電された積算通電時間等を用いてもよい。前述したPWM制御やPFM制御によって、負荷21に供給される電力又は電力量が一定の範囲に収まるように制御されていれば、このような検出容易なパラメータのみで電源12の状態を診断することができる。
【0061】
以上のように、第一診断処理では、電源12が劣化状態にあるか否かの診断を行うために必要な上記の期間を、電圧センサ16によって測定される電源電圧V
Battによって決定する。したがって、第一診断処理では、電圧センサ16によって測定される電源電圧V
Battが、電源12の状態の診断に用いられる情報の1つとなる。
【0062】
また、第一診断処理では、電源12が劣化状態にあるか否かの診断の結果を得るまでに、電源電圧V
Battが閾値電圧V1から閾値電圧V2に達するまでの長い期間を必要としている。この期間は、1回のパフ動作に応じた負荷21への放電によって生成されるエアロゾルの生成回数を1回と定義すると、例えば、数十回のエアロゾル生成を行うことのできる程度の長さとなっている。
【0063】
(第二診断処理)
第二診断処理は、電源12の膨らみ量に基づいて、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する処理である。電源12の劣化が進むと、電源12内部の電解液や活物質の分解により発生するガスによって、新品時に比べて膨張する。このため、この膨張量によって電源12が劣化しているかどうかを診断可能である。具体的には、電源状態診断部52は、例えば、充電IC55によって電源12の充電が完了された時点、又は、電源電圧V
Battが放電終止電圧に達した時点等の1回又は複数回の充放電サイクル毎のタイミングにおいて、圧力センサ13の出力信号を取得する。
【0064】
MCU50のROMには、電源12が新品の状態における圧力センサ13の出力信号が基準値として予め記憶されている。電源状態診断部52は、上記のタイミングにて取得した圧力センサ13の出力信号からこの基準値を減算した値が所定値以上であった場合(すなわち電源12の膨らみ量が大きい場合)には、電源12は既定状態より劣化が進行した劣化状態であると診断し、上記の減算した値が上記の所定値未満であった場合(すなわち電源12の膨らみ量が小さい場合)には、電源12は劣化状態ではないと診断する。
【0065】
第二診断処理では、圧力センサ13の出力信号が、電源12の状態の診断に用いられる情報となる。また、第二診断処理では、電源12が劣化状態にあるか否かの診断の結果を得るまでに、1回又は複数回の充放電サイクルといった、第一診断処理において診断結果を得るために必要な時間よりも長い時間が必要となる。
【0066】
(第三診断処理)
第三診断処理は、電源12の内部抵抗に基づいて、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する処理である。電源12の劣化が進むと、電源12の内部抵抗は増大する。第三診断処理では、この内部抵抗の変化をモニタすることで、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する。
【0067】
電源状態診断部52は、例えば、パフ動作が検出されてから、このパフ動作に応じたエアロゾルの生成を開始するまでの期間に、電源12の開回路電圧OCVと、電源12の閉回路電圧CCVとを電圧センサ16から順次取得し、取得した開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVに基づいて、電源12の内部抵抗を算出する。そして、電源状態診断部52は、算出した内部抵抗から、新品の電源12の内部抵抗を減算して得られる内部抵抗差が予め決められた抵抗閾値を超えている場合には、電源12は既定状態より劣化が進行した劣化状態であると診断し、内部抵抗差が抵抗閾値以下である場合には、電源12は劣化状態ではないと診断する。
【0068】
図8は、エアロゾル吸引器1がパフ動作に応じてエアロゾル生成を行う際のタイミングチャートである。まず、時刻t1において、エアロゾル生成要求検出部51が、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求を検出する。時刻t1の後の時刻t2において、電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源12の開回路電圧OCV1を取得する。
【0069】
時刻t2にて開回路電圧OCV1を取得した後、電源状態診断部52は、電源12の診断用にスイッチ19を閉じる制御を行う。ここでのスイッチ19を閉じる時間は、エアロゾルの生成が行われない程度に短い時間である。つまり、このスイッチ19を閉じる期間においては、エアロゾルを発生させるために負荷21へ放電する際の電流よりも小さい電流が負荷21に流れる。
【0070】
図8に示したように、電源12の電源電圧は、スイッチ19が閉じられた直後においては、電源12の電極間内部抵抗(リチウムイオンが電極間を移動する際に受ける電極間における抵抗)によって瞬時に電圧が低下する。その後、電源12の電源電圧は、電源12の反応抵抗(リチウムイオンが電極と電解液との界面を移動する際の抵抗)によって徐々に低下して安定する。
【0071】
この反応抵抗による電源電圧の降下が終了した時刻t3において、電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源12の閉回路電圧CCV1を取得する。閉回路電圧CCV1が取得されると、電源状態診断部52は、スイッチ19を開く制御を行う。その後、電力制御部53によってスイッチ19のPWM制御が開始されて、エアロゾルの生成が行われる。
【0072】
電源状態診断部52は、時刻t2にて取得した開回路電圧OCV1から、時刻t3にて取得した閉回路電圧CCV1を減算した値を、時刻t2の後の電源12の診断用にスイッチ19を閉じている間に負荷21に流れた電流値で除算することで、電源12の内部抵抗(電極間内部抵抗と反応抵抗の和)を算出する。
【0073】
そして、電源状態診断部52は、算出した内部抵抗と新品時の内部抵抗との内部抵抗差が上記の抵抗閾値を超えている場合には電源12が劣化状態にあると診断し、内部抵抗差が上記の抵抗閾値以下である場合には電源12が劣化状態ではないと診断する。
【0074】
この第三診断処理では、電圧センサ16の出力信号が、電源12の状態の診断に用いられる情報となる。また、第三診断処理では、電源12が劣化状態にあるか否かの診断の結果を得るまでに、
図8に示した時刻t2と、電源12の診断用にスイッチ19を閉じる期間が終了した時刻t4と、の間の時間T1が必要となる。この時間T1は、第一診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間と、第二診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間の各々よりも短い時間となっている。
【0075】
(第四診断処理)
第四診断処理は、電源12の温度に基づいて、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する処理である。電源12の劣化が進むと、悪化した内部抵抗によるジュール熱により充放電を行っている間の電源12の発熱量は増大する。第四診断処理では、この発熱量に対応する電源12の温度をモニタすることで、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する。
【0076】
具体的には、電源状態診断部52は、
図8に示すタイミングチャートにおけるエアロゾル生成の直前のタイミングである時刻t4において、温度センサ17により測定された電源12の温度Temp1を取得する。時刻t4の後、電力制御部53によってPWM制御が開始され、このPWM制御が終了してエアロゾルの生成が終了された後の時刻t5において、電源状態診断部52は、温度センサ17により測定された電源12の温度Temp2を取得する。そして、電源状態診断部52は、温度Temp2から温度Temp1を減算して得た温度差が温度閾値を超えている場合には、電源12が既定状態より劣化が進行した劣化状態にあると診断し、温度差が温度閾値以下である場合には、電源12が劣化状態ではないと診断する。
【0077】
この第四診断処理では、温度センサ17の出力信号が、電源12の状態の診断に用いられる情報となる。また、第四診断処理では、電源12が劣化状態にあるか否かの診断の結果を得るまでに、
図8に示した時刻t4と時刻t5の間の時間T3が必要となる。この時間T3は、第一診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間と、第二診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間の各々よりも短い時間となっている。また、この時間T3は、第三診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間T1よりも長い時間となっている。
【0078】
なお、第四診断処理において用いる2つの温度の取得タイミングは上述した例に限らない。例えば、
図8の時刻t1から時刻t4の間の任意のタイミングにて電源12の温度Temp1を取得してもよい。
【0079】
(第五診断処理)
第五診断処理は、エアロゾル生成の前後における電源12の電源電圧の変化に基づいて、電源12が故障状態にあるか否かを診断する処理である。ここで言う電源12の故障状態には、電源内部において正極と負極が接触することによる内部短絡と、電源外部において正極と負極が低抵抗の導電体を介して接触する外部短絡とが含まれる。
【0080】
内部短絡又は外部短絡が発生すると、エアロゾル生成前の電源12の電源電圧からエアロゾル生成後の電源12の電源電圧を減算した値である電圧降下量は、エアロゾル生成に用いられた放電量に相当する値よりも大きくなる。第五診断処理では、この電圧降下量をモニタすることで、電源12が故障状態にあるか否かを診断する。
【0081】
具体的には、電源状態診断部52は、
図8に示すタイミングチャートにおけるエアロゾル生成前のタイミングである時刻t2において、温度センサ17により測定された電源12の開回路電圧OCV1を取得する。時刻t2の後に電力制御部53によってPWM制御が開始され、このPWM制御が終了してエアロゾルの生成が終了される。その後の時刻t6において、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求が再度検出されると、時刻t6の後の時刻t7において、電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源12の開回路電圧OCV2を取得する。
【0082】
そして、電源状態診断部52は、開回路電圧OCV1から開回路電圧OCV2を減算して得たエアロゾル生成に伴う電圧降下量が降下閾値を超えている場合には、電源12が故障状態にあると診断し、電圧降下量が降下閾値以下である場合には、電源12が故障状態ではないと診断する。この降下閾値は、例えば、1つの第2カートリッジ30を空(使用済み)にするために必要な最大の電力量に相当する値よりも大きな値が設定される。
【0083】
この第五診断処理では、電圧センサ16の出力信号が、電源12の状態の診断に用いられる情報となる。また、第五診断処理では、電源12が故障状態にあるか否かの診断の結果を得るまでに、
図8に示した時刻t2と時刻t7の間の時間T2が必要となる。この時間T2は、第一診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間と、第二診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間の各々よりも短い時間となっている。また、この時間T2は、第三診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間T1と、第四診断処理による診断結果が得られるまでにかかる時間T3の各々よりも長い時間となっている。
【0084】
なお、電源状態診断部52は、
図8に示すタイミングチャートにおけるエアロゾル生成前のタイミングである時刻t3において、温度センサ17により測定された電源12の閉回路電圧CCV1を取得し、時刻t6の後にスイッチ19が一時的に閉じられる期間における時刻t8において、電圧センサ16によって測定された電源12の閉回路電圧CCV2を取得し、閉回路電圧CCV1から閉回路電圧CCV2を減算して得た値が降下閾値を超えているか否かによって、電源12が故障状態にあるか否かを診断してもよい。
【0085】
電源12に内部短絡が発生している場合には、電源12に外部短絡が発生している場合よりも、エアロゾル生成に伴う電圧降下量は大きくなる。そこで、上記の降下閾値を、第一の降下閾値と、第一の降下閾値よりも大きい第二の降下閾値との2段階に設定することで、内部短絡と外部短絡のどちらが発生しているのかを判別することが可能である。
【0086】
例えば、電源状態診断部52は、開回路電圧OCV2から開回路電圧OCV1を減算して得た電圧降下量が第二の降下閾値を超えている場合には、電源12が内部短絡による故障状態にあると診断し、電圧降下量が第一の降下閾値を超えており且つ第二の降下閾値以下である場合には、電源12が外部短絡による故障状態であると診断し、電圧降下量が第一の降下閾値以下である場合には、電源12が故障状態ではないと診断する。
【0087】
エアロゾル吸引器1では、以上の5種類の診断処理のいずれかの結果が“劣化状態”又は“故障状態”となった場合に、報知制御部54が、電源12が劣化していること、電源12が故障していること、又は電源12の交換を行う必要があること等を報知部45から報知させる。また、MCU50は、以上の5種類の診断処理のいずれかの結果が“劣化状態”又は“故障状態”となった場合には、それ以降のエアロゾルの生成を行わないよう制御する。これにより、電源12が劣化又は故障した状態にてエアロゾル吸引器1が使用されるのを防いで、製品の安全性を高めることができる。
【0088】
(実施形態のエアロゾル吸引器の効果)
エアロゾル吸引器1によれば、5種類の診断処理によって電源12の状態を多面的に診断することができる。このため、1つの診断処理では見落としてしまう電源12の劣化又は故障などの事象を見落としにくくなる。したがって、電源12の状態の診断精度を高めることができ、製品の安全性を向上させることができる。
【0089】
また、エアロゾル吸引器1によれば、エアロゾルの生成が必要な第一診断処理、第二診断処理、第四診断処理、及び第五診断処理と、エアロゾルの生成が不要な第三診断処理とによって電源12の状態を診断できる。このように、異なる条件下にて電源12の診断を行うことで、診断精度を高めて、製品の安全性を向上させることができる。
【0090】
また、エアロゾル吸引器1によれば、1回のエアロゾルの発生が必要な第四診断処理及び第五診断処理と、複数回のエアロゾルの発生が必要な第一診断処理及び第二診断処理とによって電源12の状態を診断できる。このため、短期間で観測可能な電源12の劣化又は故障と、長期間で観測可能な電源12の劣化又は故障との両方を検知することができ、診断精度を高めて、製品の安全性を向上させることができる。
【0091】
また、エアロゾル吸引器1によれば、電源12の劣化状態を複数種類の診断処理(第一診断処理、第二診断処理、第三診断処理、第四診断処理)によって診断することができる。このため、1つの診断処理では見落としてしまう電源12の劣化を見落としにくくなる。したがって、電源12の診断精度を高めることができ、製品の安全性を向上させることができる。
【0092】
また、エアロゾル吸引器1によれば、複数のセンサ(圧力センサ13、電圧センサ16、温度センサ17)の出力によって電源12の状態の診断が行われる。このため、いずれか1つのセンサが故障していたりこのセンサの出力に誤差が生じたりしていた場合であっても、電源12の劣化又は故障を検知できる可能性を高めることができる。
【0093】
また、エアロゾル吸引器1によれば、電圧センサ16により測定される電気的な物理量と、圧力センサ13及び温度センサ17により測定される非電気的な物理量とを用いて電源12の状態を診断することができる。このため、多面的な観点で電源12の状態を診断することができる。また、電磁波ノイズ等の外乱によって電気的な物理量をうまく取得できない状況であっても、電源12の劣化又は故障を検知できる可能性を高めることができる。
【0094】
また、エアロゾル吸引器1によれば、繰り返しの充放電、満充電状態や放電終止状態における長期間の放置、又は環境温度等の第一の要因によって生じる電源12の劣化状態の有無を診断するための第一診断処理、第二診断処理、第三診断処理、及び第四診断処理と、異物混入、衝撃、又は外部回路の短絡等の第二の要因によって生じる電源12の故障状態の有無を診断するための第五診断処理といった、異なる原因によって生じる電源12の状態の変化を検知するための複数の診断処理によって電源12の状態を診断できる。このように、異なる観点にて電源12の診断を行うことで、様々な要因で電源12が劣化又は故障した場合でも、この劣化又は故障を検知することができる。
【0095】
また、エアロゾル吸引器1によれば、電源12の温度によって診断結果が変化し得る温度依存性のある診断処理(第一診断処理、第三診断処理、第四診断処理)と、電源12の温度によって診断結果が変化し得えない温度依存性のない診断処理(第二診断処理、第五診断処理)と、によって電源12の状態を診断できる。
【0096】
第一診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる積算放電量は、電源12の温度によっても変化が生じ得る。このため、第一診断処理は、電源12の劣化状態が同一であっても、電源12の温度が異なる場合には、診断結果が異なる可能性がある処理となる。言い換えると、第一診断処理は、電源12の温度の影響を受ける処理となる。なお、第一診断処理では、電源12の温度を測定し、その温度を考慮して閾値を可変制御することで、診断精度を高めることは可能である。
【0097】
第三診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる内部抵抗は、電源12の温度によっても変化が生じ得る。このため、第三診断処理は、電源12の劣化状態が同一であっても、電源12の温度が異なる場合には、診断結果が異なる可能性がある処理となる。言い換えると、第三診断処理は、電源12の温度の影響を受ける処理となる。なお、第三診断処理では、電源12の温度を測定し、その温度を考慮して抵抗閾値を可変制御することで、診断精度を高めることは可能である。
【0098】
第四診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる発熱量は、電源12の劣化状態が同一であっても、環境温度が高くて電源12の温度が高くなっている場合には、その変化量が小さくなる。このため、第四診断処理は、電源12の温度によって診断結果が異なる可能性がある処理となる。言い換えると、第四診断処理は、電源12の温度の影響を受ける処理となる。なお、第四診断処理では、電源12の温度を測定し、その温度を考慮して温度閾値を可変制御することで、診断精度を高めることは可能である。
【0099】
第二診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる膨らみ量は、電源12の温度によって大きさが変化するものではない。つまり、第二診断処理は、電源12の温度によって診断結果が異なる可能性がない、言い換えると、電源12の温度の影響を受けない処理となる。
【0100】
第五診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる電圧降下量は、電源12の温度によって大きさが変化するものではない。つまり、第五診断処理は、電源12の温度によって診断結果が異なる可能性がない、言い換えると、電源12の温度の影響を受けない処理となる。
【0101】
このように、温度依存性のある診断処理と、温度依存性のない診断処理とによって電源12の診断が可能な。このため、周囲環境の影響により、温度依存性のある診断処理による診断精度が低下してしまう場合でも、温度依存性のない診断処理によって診断精度を確保することができる。また、電源12の温度が正確に取得できない状況であっても診断精度を確保することができる。
【0102】
また、エアロゾル吸引器1によれば、電源12の充電状態によって診断結果が変化し得る診断処理(第一診断処理、第五診断処理)と、電源12の充電状態によって診断結果が変化し得えない診断処理(第二診断処理、第三診断処理、第四診断処理)と、によって電源12の状態を診断できる。このため、電源12の放電状態によって前者の診断処理による診断精度が低下してしまう場合でも、後者の診断処理によって診断精度を確保することができる。また、電源12の放電状態によっては前者の診断処理によって診断精度を確保できるため、多面的な観点で電源12の診断が可能となる。
【0103】
第一診断処理では、プラトー領域の手前における電圧範囲での積算放電量を診断の基準にしている。つまり、第一診断処理は、電源12の充電状態が所定の状態(電源電圧がプラトー領域外にある状態)にある場合にのみ診断精度を確保できる、言い換えると、電源12の充電状態の影響を受ける処理ということができる。
【0104】
第五診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる電圧降下量は、プラトー領域外においては大きい値となる。つまり、第五診断処理は、電源12の充電状態が所定の状態(電源電圧がプラトー領域にある状態)にある場合にのみ診断精度を確保できる処理、言い換えると、電源12の充電状態の影響を受けるということができる。
【0105】
第二診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる膨らみ量は、電源12の充電状態によって大きさが変化するものではない。つまり、第二診断処理は、電源12の充電状態の影響を受けない処理ということができる。
【0106】
第三診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVの差は、電源12の充電状態によって大きさが変化するものではない。つまり、第三診断処理は、電源12の充電状態の影響を受けない処理ということができる。
【0107】
第四診断処理にて電源12の状態の診断に用いられる発熱量は、電源12の充電状態によって大きさが変化するものではない。つまり、第四診断処理は、電源12の充電状態の影響を受けない処理ということができる。
【0108】
(電源の診断結果の報知制御の第一変形例)
報知制御部54は、上記の5種類の診断処理における第一診断処理から第四診断処理のうちのいずれか1つの結果が“劣化状態”となった場合と、第一診断処理から第四診断処理のうちの2つ以上の結果が“劣化状態”となった場合とで、報知部45を異なる動作モードにて動作させることが好ましい。
【0109】
例えば、報知制御部54は、第一診断処理から第四診断処理のうちのいずれか1つの結果が“劣化状態”となった場合には、例えば発光素子の色を黄色で点灯させるなどして、劣化が少し進んでいることを報知部45からユーザ等に報知させる。この場合には、MCU50は、エアロゾルの生成は停止せずに、エアロゾル生成要求が行われた場合には、エアロゾルの生成を行う。
【0110】
一方、報知制御部54は、第一診断処理から第四診断処理のうちの2つ以上の結果が“劣化状態”となった場合には、例えば発光素子の色を赤色で点灯させるなどして、電源12の交換を行うべきことを報知部45からユーザ等に報知させる。この場合には、MCU50は、エアロゾル生成要求が行われた場合でもエアロゾルの生成は行わない。
【0111】
この変形例によれば、電源12の劣化状態をユーザに段階的に知らせることができる。また、第一診断処理から第四診断処理のうちのいずれか1つのみの結果が“劣化状態”となっている場合には、製品の使用を継続することができるため、ユーザの満足度を向上させつつ、製品の安全性を高めることができる。
【0112】
(電源の診断結果の報知制御の第二変形例)
報知制御部54は、上記の5種類の診断処理における第五診断処理の結果が“故障状態”となった場合と、上記の5種類の診断処理における第一診断処理から第四診断処理のうちの2つ以上の診断処理の結果が“劣化状態”となった場合とのいずれかの場合に、電源12が故障していること、電源12が劣化していること、又は電源12の交換を行う必要があること等を報知部45から報知させてもよい。
【0113】
この変形例によれば、第一診断処理から第四診断処理のうちのいずれか1つのみの結果が“劣化状態”となっている場合には、製品の使用を継続することができる。このため、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0114】
以上のエアロゾル吸引器1において、電源状態診断部52は、第一診断処理から第五診断処理の5種類全てを実行するものでなくてもよい。例えば、電源状態診断部52は、第一診断処理乃至第五診断処理から選ばれる2つ、3つ、又は4つの診断処理を実行するものであってもよい。
なお、電源状態診断部52が実行する診断処理は、第一診断処理から第五診断処理に限定されるものではない。電源12の状態を診断できる任意の診断処理であれば、第一診断処理から第五診断処理に加えて、又は第一診断処理から第五診断処理のいずれかの代わりに用いることができる。この任意の診断処理が、第一診断処理から第五診断処理に比べて結果を得るために必要な時間や、結果を得るために用いられる情報が異なれば、本願の課題を解決可能な上述した効果を奏することができる点に留意されたい。
【0115】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0116】
(1)
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷(負荷21)に放電可能な電源(電源12)と、
前記電源の状態を診断するための複数種類の処理を実行する制御部(MCU50)と、を備え、
前記複数種類の処理は、診断の結果を得るために必要な時間と、診断の結果を得るために用いられる情報との少なくとも一方が異なるものであるエアロゾル吸引器(エアロゾル吸引器1)用の電源ユニット(電源ユニット10)。
【0117】
(1)によれば、複数種類の処理によって電源の状態を診断することができる。このため、1つの処理では見落としてしまう電源の劣化又は故障などの事象を見落としにくくなる。したがって、電源の状態の診断精度を高めることができ、製品の安全性を向上させることができる。
【0118】
(2)
(1)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数種類の処理は、前記エアロゾルの発生が必要な処理と、前記エアロゾルの発生が不要な処理と、を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0119】
(2)によれば、エアロゾルの生成が必要な処理とエアロゾルの生成が不要な処理とによって電源の状態を診断できる。このため、例えば、エアロゾルの生成前に診断を行い、エアロゾルの生成後に診断を行うといったダブルチェックによって診断精度を高めて、製品の安全性を向上させることができる。
【0120】
(3)
(1)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数種類の処理は、1回の前記エアロゾルの発生が必要な処理と、複数回の前記エアロゾルの発生が必要な処理と、を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0121】
(3)によれば、短期間で観測可能な電源の劣化又は故障と、長期間で観測可能な電源の劣化又は故障との両方を検知することができる。このため、診断精度を高めて、製品の安全性を向上させることができる。
【0122】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数種類の処理は、前記電源の劣化の有無を診断する複数種類の劣化診断処理を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0123】
(4)によれば、複数種類の劣化診断処理によって電源の劣化状態を診断することができる。このため、1つの劣化診断処理では見落としてしまう電源の劣化を見落としにくくなる。したがって、電源の診断精度を高めることができ、製品の安全性を向上させることができる。
【0124】
(5)
(4)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
利用者への報知を行うための報知部(報知部45)を備え、
前記制御部は、前記複数種類の前記劣化診断処理のうちの1つの前記劣化診断処理によって前記電源が既定状態より劣化が進行した劣化状態にあると診断した場合には、前記複数種類の前記劣化診断処理のうちの2つ以上の前記劣化診断処理の各々によって前記電源が劣化状態にあると診断した場合とは異なる動作モードにて前記報知部を動作させて、前記劣化状態を報知させるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0125】
(5)によれば、複数種類の劣化診断処理の1つによって電源の劣化が検知された場合と、2つ以上の劣化診断処理によって電源の劣化が検知された場合とで異なる動作モードにて劣化状態の報知がなされる。このため、電源の劣化状態を適切に利用者に通知することができる。
【0126】
(6)
(4)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
利用者への報知を行うための報知部(報知部45)を備え、
前記制御部は、前記複数種類の前記劣化診断処理のうちの少なくとも2つの前記劣化診断処理によって前記電源が既定状態より劣化が進行した劣化状態にあると診断した場合にのみ、前記劣化状態を前記報知部から報知させるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0127】
(6)によれば、複数種類の劣化診断処理の1つによって電源の劣化が検知された場合には報知はなされず、少なくとも2つの劣化診断処理によって電源の劣化が検知された場合にのみ電源の劣化の発生が報知されることで、電源の劣化状態を適切に利用者に通知することができる。
【0128】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
異なる物理量を出力する複数のセンサ(圧力センサ13、電圧センサ16、温度センサ17)を備え、
前記複数種類の処理は、異なる前記センサから出力される前記物理量に基づいて前記電源の状態の診断を行う複数の処理を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0129】
(7)によれば、複数のセンサの出力によって電源の状態の診断が行われる。このため、いずれか1つのセンサが故障していたりこのセンサの出力に誤差が生じたりしていた場合であっても、電源の劣化又は故障を検知できる可能性を高めることができる。
【0130】
(8)
(7)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数のセンサは、電気的な物理量を検出して信号を出力する第一センサ(電圧センサ16)と、非電気的な物理量を検出して信号を出力する第二センサ(圧力センサ13、温度センサ17)と、を含み、
前記複数種類の処理は、前記第一センサから出力される信号に基づいて前記電源の状態を診断する処理と、前記第二センサから出力される信号に基づいて前記電源の状態を診断する処理と、を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0131】
(8)によれば、電気的な物理量と非電気的な物理量を用いて電源の状態を診断することができる。このため、多面的な観点で電源の状態を診断することができる。また、電磁波ノイズ等の外乱によって電気的な物理量をうまく取得できない状況であっても、電源の劣化又は故障を検知できる可能性を高めることができる。
【0132】
(9)
(1)から(8)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数種類の処理は、異なる原因によって生じる前記電源の状態の変化を診断するための複数の処理を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0133】
(9)によれば、異なる観点にて電源の診断が行われるため、様々な要因で電源が劣化又は故障した場合でも、この劣化又は故障を検知することができる。
【0134】
(10)
(1)から(9)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数種類の処理は、前記電源の温度の影響を受ける処理と、前記電源の温度の影響を受けない処理と、を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0135】
(10)によれば、温度依存性のある処理と、温度依存性のない処理とによって電源の診断が可能なため、周囲環境の影響により、温度依存性のある処理による診断精度が低下してしまう場合でも、温度依存性のない処理によって診断精度を確保することができる。また、電源の温度が正確に取得できない状況であっても診断精度を確保することができる。
【0136】
(11)
(1)から(10)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記複数種類の処理は、前記電源の充電状態の影響を受ける処理と、前記電源の充電状態の影響を受けない処理と、を含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0137】
(11)によれば、電源の充電状態に依存して精度が変化する処理と、電源の充電状態に無関係で精度が確保される処理とによって電源の診断が可能なため、電源の放電状態によって前者の処理による診断精度が低下してしまう場合でも、後者の処理によって診断精度を確保することができる。また、電源の放電状態によっては前者の処理によって診断精度を確保できるため、多面的な観点で電源の診断が可能となる。
【0138】
(12)
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源を有するエアロゾル吸引器の電源の状態の診断方法であって、
前記電源の状態を診断するための複数種類の処理を実行する制御ステップを備え、
前記複数種類の処理は、診断の結果を得るために必要な時間と、診断の結果を得るために用いられる情報との少なくとも一方が異なるものであるエアロゾル吸引器の電源の状態の診断方法。
【0139】
(13)
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源を有するエアロゾル吸引器の電源の状態の診断プログラムであって、
前記電源の状態を診断するための複数種類の処理を実行する制御ステップをコンピュータに実行させるためのものであり、
前記複数種類の処理は、診断の結果を得るために必要な時間と、診断の結果を得るために用いられる情報との少なくとも一方が異なるものであるエアロゾル吸引器の電源の状態の診断プログラム。
【0140】
(1)、(12)、及び(13)によれば、複数種類の処理によって電源の状態を診断することができる。このため、1つの処理では見落としてしまう電源の劣化又は故障などの事象を見落としにくくなる。したがって、電源の状態の診断精度を高めることができ、製品の安全性を向上させることができる。このように電源の劣化状態又は故障状態を適切に把握できることで、電源の交換を適切なタイミングでユーザなどに促すことができる。この結果、電源を新品のものと交換することなく使用できる期間を最大化できるという省エネルギー効果を有する。
【課題】電源の状態の診断を高精度に行うことのできるエアロゾル吸引器用の電源ユニット、エアロゾル吸引器の電源の状態の診断方法、及びエアロゾル吸引器の電源の状態の診断プログラムを提供する。
【解決手段】エアロゾル吸引器1は、エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷21に放電可能な電源12と、電源12の状態を診断するための複数種類の処理を実行するMCU50と、を備える。複数種類の処理は、診断の結果を得るために必要な時間と、診断の結果を得るために用いられる情報との少なくとも一方が異なるものである。