特許第6574907号(P6574907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574907樹脂発泡体、樹脂発泡体シート、粘着テープ、車両用部材及び建築部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574907
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】樹脂発泡体、樹脂発泡体シート、粘着テープ、車両用部材及び建築部材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20190902BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20190902BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190902BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20190902BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08J9/06CEX
   C09J7/26
   C09J7/38
   B32B5/18
   B32B27/00 M
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-539162(P2018-539162)
(86)(22)【出願日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2018025473
(87)【国際公開番号】WO2019009351
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-134168(P2017-134168)
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-217412(P2017-217412)
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】深谷 重一
(72)【発明者】
【氏名】肥田 知浩
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−059640(JP,A)
【文献】 特開2010−100778(JP,A)
【文献】 特表2007−536440(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102382406(CN,A)
【文献】 特開平10−052268(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/100015(WO,A1)
【文献】 特開2016−079361(JP,A)
【文献】 特開2017−133002(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/016536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
B29C 44/00−44/60;67/20
C09J 7/00− 7/50
B32B 1/00−43/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の気泡を有する樹脂発泡体であって、
ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下である
ことを特徴とする樹脂発泡体。
【請求項2】
伸長ひずみが400%以上、かつ、50%圧縮応力が30kPa以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
粘着剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の樹脂発泡体からなることを特徴とする樹脂発泡体シート。
【請求項5】
請求項4記載の樹脂発泡体シートと、該樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項6】
請求項1、2若しくは3記載の樹脂発泡体、請求項4記載の樹脂発泡体シート、又は、請求項5記載の粘着テープを用いたことを特徴とする車両用部材。
【請求項7】
請求項1、2若しくは3記載の樹脂発泡体、請求項4記載の樹脂発泡体シート、又は、請求項5記載の粘着テープを用いたことを特徴とする建築部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟であり、賦形性に優れた樹脂発泡体、該樹脂発泡体からなる樹脂発泡体シート、粘着テープ、車両用部材及び建築部材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、軽量、柔軟であり、かつ、耐衝撃性や遮音性等にも優れることから、自動車や航空機、船舶等の車両用部材、建築部材、電子部品、カーペットの裏材等の生活部材、家庭用、業務用の電気製品等のあらゆる用途に用いられている(特許文献1等)。なかでも、連続気泡率の高い樹脂発泡体は、特に柔軟性に優れるとされている。
しかしながら、従来の樹脂発泡体は、必要形状に賦型しようとすると破断しやすく、賦形性に劣るという問題点があった。例えば、従来の樹脂発泡体を板形状に賦型しようとすると、延展により樹脂発泡体に破れ等が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−52726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑み、柔軟であり、賦形性に優れた樹脂発泡体、該樹脂発泡体からなる樹脂発泡体シート、粘着テープ、車両用部材及び建築部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多数の気泡を有する樹脂発泡体であって、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下である樹脂発泡体である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する樹脂発泡体は、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下とすることにより、柔軟であり、賦形性に優れたものとなり、例えば板形状に賦型しようとしたときにでも破れ等が発生することがないことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の樹脂発泡体は、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する。
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
【0008】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が40モル%である。水酸基量がこの範囲内であると、可塑剤との相溶性が高くなる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0009】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、80〜99.8モル%であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる樹脂発泡体の取り扱い性が優れるものとなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、樹脂発泡体の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0010】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、得られる樹脂発泡体の損失係数を高く設計しやすいという観点からは、炭素数が2〜10のアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが特に好ましい。
【0011】
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0012】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。
上記グリコールとしては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、例えば、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0013】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0014】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0015】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0016】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましい。テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましい。トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することが更に好ましい。
【0017】
本発明の樹脂発泡体における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が60重量部である。上記可塑剤の含有量がこの範囲内であると、賦形性を発揮することができ、樹脂発泡体から可塑剤がブリードアウトすることもない。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は55重量部である。
【0018】
本発明の樹脂発泡体は、更に粘着剤を含有することが好ましい。粘着剤を含有することにより、本発明の樹脂発泡体は粘着性を発揮することができ、取扱性が向上する。
上記粘着剤としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の公知の粘着剤が挙げられる。
【0019】
本発明の樹脂発泡体は、上記ポリビニルアセタールと可塑剤の他に、例えば、接着力調整剤、熱線吸収剤、紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。また、得られる樹脂発泡体の外観を調整するために、カーボンブラック等の顔料や染料等を含有してもよい。
【0020】
本発明の樹脂発泡体は、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下である。
本明細書において伸長ひずみとは、シート状に成形した樹脂発泡体に対して、1軸方向に伸長変形を加えたときに、樹脂発泡体に加わった変形の程度を示す値を意味する。上記伸長ひずみが300%以上であることにより、本発明の樹脂発泡体は、優れた耐衝撃性を発揮することができる。上記伸長ひずみは400%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましい。上記伸長ひずみの上限は特に限定されないが、実質的には800%程度が上限である。
本明細書において50%圧縮応力とは、シート状に成形した樹脂発泡体の厚み方向に50%圧縮したときに、樹脂発泡体にかかる応力を示す値を意味する。50%圧縮応力が70kPa以下であることにより、本発明の樹脂発泡体は、優れた賦形性を発揮することができる。上記50%圧縮応力は30kPa以下であることが好ましく、20kPa以下であることがより好ましい。上記50%圧縮応力の下限は特に限定されないが、実質的には5kPa程度が下限である。
なお、伸長ひずみ、50%圧縮応力は、JIS K 6767に準じる方法により測定することができる。
【0021】
上記伸長ひずみや50%圧縮応力は、樹脂発泡体の発泡状態を調整することにより達成することができる。
具体的には例えば、樹脂発泡体の連続気泡率を20%以上とすることが好ましい。連続気泡率を20%以上とすることにより、得られる樹脂発泡体の50%圧縮応力を所期の範囲に調整することができ、極めて高い柔軟性を発揮させることができる。上記連続気泡率が30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、50%以上であることが特に好ましい。上記連続気泡率の上限は特に限定されないが、98%程度が実質的な上限である。
なお、本明細書において連続気泡とは、樹脂発泡体を形成する気泡がお互いにつながっているものを意味する。
また、上記連続気泡率は、寸法測定によって得られる樹脂発泡体の見掛け体積に対する、樹脂発泡体の外部にまで連結している気泡の容積割合で定義され、JIS K7138記載のピクノメータ法などにより測定することができる。
【0022】
本発明の樹脂発泡体は、見掛け密度が50kg/m以上であることが好ましい。上記見掛け密度が50kg/m以上であることにより、樹脂発泡体の伸長ひずみを所期の範囲に調整することができ、極めて良好な賦形性を付与することができる。上記見掛け密度は60kg/m以上であることがより好ましく、80kg/m以上であることが更に好ましく、100kg/m以上であることが特に好ましい。本発明の樹脂発泡体は、見掛け密度が500kg/m以下であることが好ましい。上記見掛け密度が500kg/m以下であることにより、より優れた賦形性を発揮することができる。上記見掛け密度は、300kg/m以下であることがより好ましく、200kg/m以下であることが更に好ましい。
【0023】
本発明の樹脂発泡体は、平均気泡径の好ましい下限が100μm、好ましい上限が1000μmである。上記平均気泡径がこの範囲内にあることにより、より高い柔軟性と賦形性を発揮することができる。上記平均気泡径のより好ましい下限は120μm、より好ましい上限は500μm、更に好ましい下限は200μmである。
なお、上記平均気泡径は、気泡の断面観察写真より気泡壁部と空隙部とを観察して、空隙部のサイズを測定する方法により測定することができる。
【0024】
本発明の樹脂発泡体は、気泡の平均アスペクト比が2以下であることが好ましい。上記気泡の平均アスペクト比が2以下であることにより、より高い柔軟性と賦形性を発揮することができる。上記気泡の平均アスペクト比は、1.5以下であることがより好ましい。
なお、上記気泡の平均アスペクト比は、気泡の断面観察写真より空隙部の長径と短径とを測定してその比を計算する方法により測定することができる。
【0025】
本発明の樹脂発泡体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記ポリビニルアセタール、可塑剤及び必要に応じて添加する添加剤に熱分解型発泡剤を配合して樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物を発泡温度にまで加熱して熱分解型発泡剤を分解させる方法が好適である。
【0026】
ここで、連続気泡率を20%以上とし、伸長ひずみや50%圧縮応力を所期の範囲に調整して極めて高い賦形性を発揮させるためには、製造時における熱分解型発泡剤の種類と配合量、及び、発泡温度の設定が極めて重要である。なかでも、発泡温度の設定は、高い連続気泡率を達成するために必須である。
上記発泡温度は、180℃以上であることが好ましい。180℃以上の温度では、発泡時に上記樹脂組成物が充分に軟化して気泡同士が連通しやすくなるため、連続気泡が発生し易くなるものと考えられる。ポリビニルアセタール以外の樹脂からなる樹脂組成物では、発泡温度を高くしてもこのような連続気泡率の上昇は認められないことから、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含有する樹脂組成物に独特の現象のようである。
【0027】
上記熱分解型発泡剤としては、分解温度が120〜240℃程度であるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、上記連続気泡率をより高くできることから、発泡前の原料である樹脂組成物の成形温度に対して、分解温度が20℃以上高い熱分解型発泡剤を用いることが好ましく、50℃以上高い熱分解型発泡剤を用いることがより好ましい。
【0028】
上記熱分解型発泡剤としては、具体的には例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、尿素、炭酸水素ナトリウム、及び、これらの混合物等が挙げられる。
上記熱分解型発泡剤のうち市販のものとしては、例えば、セルマイクシリーズ(三協化成社製)やビニホールシリーズ、セルラーシリーズ、ネオセルボンシリーズ(以上、永和化成工業社製)等が挙げられる。
【0029】
上記樹脂組成物中の上記熱分解型発泡剤の配合量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限は3重量部、好ましい上限は20重量部である。上記熱分解型発泡剤の配合量がこの範囲内であれば、連続気泡率が10%以上の発泡体を製造することができる。上記熱分解型発泡剤の配合量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0030】
本発明の樹脂発泡体は、上記構成を有することにより、柔軟でありながら従来の樹脂発泡体では達成できなかった、極めて高い賦形性を発揮することができる。このため、本発明の樹脂発泡体は、例えば、自動車や航空機、船舶等の車両用部材、建築部材、電子部品、カーペットの裏材等の生活部材、家庭用、業務用の電気製品等のあらゆる用途に用いることができる。とりわけ、シート状に成形した本発明の樹脂発泡体は、広い用途に用いることができる。
本発明の樹脂発泡体からなる樹脂発泡体シートもまた、本発明の1つである。
【0031】
本発明の樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を形成した粘着テープは、極めて取り扱い性に優れる。
本発明の樹脂発泡体シートと、該樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とを有する粘着テープもまた、本発明の1つである。
【0032】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の公知の粘着剤が挙げられる。
ただし、本発明の樹脂発泡体シートは可塑剤を含有することから、上記粘着剤層へ可塑剤が移行することにより、粘着力の低下が生じる恐れがある。そこで、上記粘着剤層として、可塑剤耐性の高い粘着剤層を用いることが好ましい。
上記可塑剤耐性の高い粘着剤層としては、例えば、アクリル系重合体(X)、軟化点が140〜160℃である粘着付与樹脂(Y)、及び、架橋剤(Z)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層等が挙げられる。このような粘着剤組成物を用いることで、可塑剤の移行に由来する経時的な粘着力の低下が生じにくくなる。
以下、上記粘着剤組成物を構成する各成分について詳しく説明する。
【0033】
上記アクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60重量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100重量部に対して、カルボキシル基含有モノマー(B)を5〜18重量部含むモノマー混合物を重合してなる重合体である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを示す。
【0034】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60重量%以上含むことが好ましい。アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の含有量が60重量%以上であると、得られる粘着剤層の可塑剤耐性が高くなる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の含有量は、軟質ポリ塩化ビニルに対する粘着力の低下を抑制する観点から、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%である。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)としては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、n−ブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートのみを単独で含むことがより好ましい。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)は、アルキル基の炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b)を含んでもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b)としては、具体的には例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)が上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b)を含む場合の含有量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0037】
上記カルボキシル基含有モノマー(B)は、分子内にカルボキシル基を含有し重合可能なモノマーであり、好ましくはカルボキシル基を含有したビニル系モノマーである。
上記カルボキシル基含有モノマー(B)としては、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有モノマー(B)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0038】
上記アクリル系重合体(X)の原料となるモノマー混合物は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)及びカルボキシル基含有モノマー(B)以外のその他のモノマーを更に含有してもよい。
上記その他のモノマーとしては、例えば、カルボキシル基以外の極性基を含有するモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、及びp−メチルスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられる。
【0039】
上記アクリル系重合体(X)の原料となるモノマー混合物における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100重量部に対する上記カルボキシル基含有モノマー(B)の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は18重量部である。上記カルボキシル基含有モノマー(B)を5重量部以上用いることにより、得られる粘着剤層の可塑剤耐性が高くなる。上記カルボキシル基含有モノマー(B)の含有量のより好ましい下限は6重量部、より好ましい上限は17重量部であり、更に好ましい下限は10重量部、更に好ましい上限は15重量部である。
【0040】
上記アクリル系重合体(X)の重量平均分子量の好ましい下限は55万、好ましい上限は100万である。重量平均分子量が55万以上であれば、得られる粘着剤層の可塑剤耐性が高くなる。重量平均分子量が100万以下であれば、粘着剤層が硬くなりすぎることを抑制でき、複雑な形状の被着体に対する粘着力を発揮することができる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は60万、より好ましい上限は80万であり、更に好ましい下限は65万、更に好ましい上限は75万である。
【0041】
上記アクリル系重合体(X)は、上記モノマー混合物を重合することにより得られる。
上記重合方法は特に限定されないが、例えば、上記モノマー混合物を重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。より具体的には、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法を採用できる。
【0042】
上記重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
上記有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート又はジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
上記アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、得られるアクリル系重合体(X)の臭気低減の観点から、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドが好ましい。
上記重合開始剤の量は特に限定されないが、上記モノマー混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜2重量部程度用いる。
【0043】
上記粘着付与樹脂(Y)の軟化点の好ましい下限は140℃、好ましい上限は160℃である。軟化点が上記範囲内であれば、得られる粘着剤層の経時的な粘着力の低下を抑制できる。経時的な粘着力低下を更に抑制する観点から、軟化点のより好ましい上限は150℃である。
なお、上記粘着付与樹脂(Y)の軟化点は、JIS K2207に準拠して測定することができる。
【0044】
上記粘着付与樹脂(Y)としては、例えば、石油樹脂系粘着付与樹脂、水添石油樹脂系粘着付与樹脂、ロジンジオール系粘着付与樹脂、ロジンエステル系粘着付与樹脂等のロジン系樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、経時的な粘着力を抑制する観点から、ロジン系粘着付与樹脂が好ましく、ロジンエステル系粘着付与樹脂がより好ましい。
上記ロジンエステル系粘着付与樹脂としては、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジンフェノール系等が挙げられる。
【0045】
上記粘着付与樹脂(Y)は、分子量600以下の成分の含有量が13重量%以下であることが好ましい。このような粘着付与樹脂を用いれば、粘着性を維持しつつ、粘着付与樹脂より発生する揮発成分を低く抑えることができる。更に、低分子量成分が少ないことにより、粘着剤層の粘度を相対的に高くでき、粘着剤層への可塑剤の移動が阻害されやすくなり、経時的な粘着力の低下が生じにくくなる。
粘着付与樹脂から分子量600以下の成分を除去する方法としては、例えば、粘着付与樹脂を軟化点以上に加熱溶融する方法、水蒸気を吹き込む方法等が挙げられる。
なお、上記粘着付与樹脂の分子量及びその含有量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値及び面積比により算出できる。
【0046】
上記粘着剤組成物中の粘着付与樹脂(Y)の配合量は、アクリル系重合体(X)100重量部に対する好ましい下限が3重量部、好ましい上限が9重量部である。粘着付与樹脂の配合量が3重量部以上であれば、難被着体に対する粘着力が向上する。粘着付与樹脂の配合量が9重量部以下であれば、粘着剤層への可塑剤の移動を抑制しやすくなり、経時的な粘着力の低下を防止できる。難被着体への粘着力を高め、かつ、粘着力を維持する観点から、粘着付与樹脂(Y)の配合量のより好ましい下限は4重量部、より好ましい上限は8重量部であり、更に好ましい上限は7重量部である。
【0047】
上記架橋剤(Z)は、得られる粘着剤層の凝集力を高め、粘着テープとしての物性を向上させる役割を有する。
上記架橋剤(Z)としては特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤又は金属キレート系架橋剤が好ましい。
【0048】
上記イソシアネート系架橋剤としては、具体的には例えば、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートL等が挙げられる。
上記金属キレート系架橋剤としては、具体的には例えば、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられる。なかでも、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、川研ファインケミカル株式会社製のアルミキレートA、アルミキレートM等が挙げられる。
上記粘着剤組成物中の架橋剤(Z)の含有量は特に限定されないが、上記アクリル系重合体(X)100重量部に対する好ましい下限は0.005重量部、好ましい上限は5重量部であり、より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は1重量部であり、更に好ましい下限は0.02重量部、更に好ましい上限は0.1重量部である。
【0049】
上記粘着剤組成物は、上記アクリル系重合体(X)、粘着付与樹脂(Y)、及び架橋剤(Z)以外にも、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等の溶剤を含んでもよい。なかでも、揮発成分を低く抑える観点から、酢酸エチルが好ましい。
上記粘着剤組成物には、更に必要に応じて、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0050】
上記粘着剤層の厚みの好ましい下限は5μm、好ましい上限は200μmである。粘着剤層の厚みがこの範囲内であると、充分な粘着性を発揮することができる。粘着剤層の厚みのより好ましい下限は7μm、より好ましい上限は150μmであり、更に好ましい下限は10μm、更に好ましい上限は100μmである。
【0051】
本発明の樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を形成して本発明の粘着テープを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に、コーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、スプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。また、樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に、両面粘着テープを貼り付ける方法により粘着剤層を形成してもよい。
【0052】
本発明の樹脂発泡体、樹脂発泡体シート、粘着テープは、柔軟かつ賦形性に優れることから、自動車や航空機、船舶等の車両用部材、建築部材、電子部品、カーペットの裏材等の生活部材、家庭用、業務用の電気製品等のあらゆる用途に用いることができる。
上記生活部材としては、例えば、カーペット裏材、カーテン素材、壁紙等の、振動、衝撃、音等の緩和を目的とした部材が挙げられる。
上記電気部材としては、例えば、携帯電話、タブレット、パソコン等の電子部品や、オーディオ、ヘッドフォン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機等の家電製品等、或いは業務用電気製品において、振動、衝撃、音等の緩和を目的として用いられる部材が挙げられる。
上記その他の用途の部材としては、例えば、室内外運動施設における床、マット、壁等の、追突時の衝撃緩和を目的として用いられる部材が挙げられる。
【0053】
本発明の樹脂発泡体、樹脂発泡体シート、粘着テープは、車両用部材、建築部材として特に好適である。
本発明の樹脂発泡体、樹脂発泡体シート又は粘着テープを用いた車両用部材もまた、本発明の1つである。
本発明の樹脂発泡体、樹脂発泡体シート又は粘着テープを用いた建築部材もまた、本発明の1つである。
【0054】
上記車両用部材としては、例えば、自動車や航空機、船舶等の車両の天井材、内装材、内装裏打ち材等の、振動、衝撃、音等の緩和を目的とした部材が挙げられる。
より具体的には例えば、自動車等の車両の天井やドアパネル、床板等の鋼板部材に直接貼り付けて用いるデッドニング材や、外装や躯体を構成する鋼板部材と内装の樹脂部材との間に挟んで用いるダンピング材、クッション材等が挙げられる。
【0055】
上記建築部材としては、例えば、床下地材、防音壁用材料、天井材、樹脂製及び金属製瓦の裏打ち材等の、振動、衝撃、音等の緩和を目的とした部材が挙げられる。
より具体的には例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)からなる金属瓦に雨音対策として直接貼り付けるデッドニング材や、住宅床のフローリング材と下地材との間に挟み込んで使用する遮音マット等が挙げられる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、柔軟であり、賦形性に優れた樹脂発泡体、該樹脂発泡体からなる樹脂発泡体シート、粘着テープ、車両用部材及び建築部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
(1)樹脂発泡体の製造
ポリビニルブチラール1(PVB1)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を40重量部、熱分解型発泡剤としてビニホールAC#3(永和化成工業社製、分解温度208℃)を8重量部、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSP)を0.8重量部加えて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を110℃にてミキシングロールで充分に混練した後、押出機により押出して、シート状体を得た。なお、PVB1は、水酸基の含有率31モル%、アセチル化度0.7モル%、ブチラール化度68.3モル%、平均重合度1800である。
得られたシート状体を、オーブン中、230℃の発泡温度にて熱分解型発泡剤を分解させることにより、シート状の樹脂発泡体(樹脂発泡体シート)を得た。
【0059】
(2)連続気泡率及び見掛け密度の測定
得られた樹脂発泡体について、JIS K7138に準拠してピクノメータ法により連続気泡率を測定した。また、測定重量と寸法測定によって得られる見掛け体積とから計算する方法により見掛け密度を測定した。
【0060】
(3)平均気泡径及び気泡の平均アスペクト比の測定
測定用の樹脂発泡体サンプルは縦50mm、横50mm、厚さ4mmにカットして液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃で厚さ方向に平行な面に沿って切断した。
その後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、製品名VHX−900)を用いて200倍の拡大写真を撮り、厚さ方向における長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡について気泡径を測定した。
その操作を測定箇所を変えて5回繰り返し、観察された全ての気泡径の平均値を平均気泡径とした。なお、各気泡の気泡径は、観察された気泡に対して内接する内接円を描いた時の直径が最大となる内接円の直径とした。
また、平均気泡径を測定する際に、観察された各気泡に対して内接する楕円を描いた時の長径と短径を測定し、長径の長さを短径の長さで除してアスペクト比を求めた。観察された全ての気泡に対してアスペクト比を求め、得られたアスペクト比の平均値を求めた。
【0061】
(4)伸長ひずみ及び50%圧縮応力の測定
JIS K 6767に準じる方法により、伸長ひずみ及び50%圧縮応力を測定した。
具体的には、JIS K 6251に規定するダンベル状1号形に打ち抜いたサンプルを用いて、万能試験機にて引張速度500mm/分で引張する方法により伸長ひずみを測定した。
また、一辺が50mmの正方形状に切り出したサンプルを積層厚さが25mm以上になるまで積層した積層サンプルを万能試験機にて圧縮速度10mm/分で圧縮する方法により50%圧縮応力を測定した。
【0062】
(実施例2〜4)
熱分解型発泡剤の配合量を表1に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂発泡体を製造し、伸長ひずみや50%圧縮応力等を測定した。
【0063】
(実施例5〜7)
ポリビニルブチラール1に代えてポリビニルブチラール2(PVB2)を用い、熱分解型発泡剤の配合量を表1に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂発泡体を製造し、伸長ひずみや50%圧縮応力等を測定した。なお、PVB2は、水酸基の含有率22.0モル%、アセチル化度4.0モル%、ブチラール化度74.0モル%、平均重合度550である。
【0064】
(比較例1)
比較例として市販のポリエチレン発泡体(積水化学工業社製、ソフトロンS、発泡倍率5倍)を準備した。該ポリエチレン発泡体について、実施例1と同様にして伸長ひずみや50%圧縮応力等を測定した。
【0065】
(比較例2)
比較例として市販のポリエチレン発泡体(積水化学工業社製、ソフトロンS、発泡倍率10倍)を準備した。該ポリエチレン発泡体について、実施例1と同様にして伸長ひずみや50%圧縮応力等を測定した。
【0066】
(比較例3)
比較例として市販のポリエチレン発泡体(積水化学工業社製、ソフトロンS、発泡倍率15倍)を準備した。該ポリプロピレン発泡体について、実施例1と同様にして伸長ひずみや50%圧縮応力等を測定した。
【0067】
(比較例4)
比較例として市販のポリウレタン発泡体(日本発条社製、スーパーシートSS−H6、発泡倍率15倍)を準備した。該ポリウレタン発泡体について、実施例1と同様にして伸長ひずみや50%圧縮応力等を測定した。
【0068】
(評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4で得た樹脂発泡体について、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0069】
(1)賦形性の評価
片面に粘着材を塗布した発泡体を、ピッチ32mm、谷深さ9mmのポリカ製波板に波板の山部のみ接触するように乗せ、発泡体の接触していない部分を谷部に押し付けるように延伸して貼り付けた。このとき発泡体に生じるヤブレや局所的な薄肉化の有無を観察した。樹脂発泡体の賦形性について、以下の基準により評価した。
○:ヤブレや薄肉化が見られない
×:ヤブレ、もしくは薄肉化がみられた
【0070】
(2)柔軟性の評価
波板形状に賦型した発泡体の谷部に、直径1/2インチのSUS玉を1分間静置した。SUS玉を取り除いたときにSUS玉が沈み込んだ痕跡があるか否かを観察した。樹脂発泡体の柔軟性について、以下の基準により評価した。
○:SUS玉の沈み込んだ痕跡が見られた
×:痕跡が確認できなかった
【0071】
【表1】
【0072】
(実施例8)
実施例1で得られた樹脂発泡体シートの片面に粘着剤層として、内装部材固定用両面テープ(積水化学工業社製、#5782)を貼り付けて片面粘着テープを得た。
得られた片面粘着テープは、実施例1記載の樹脂発泡体シートの柔軟性と遮音性を維持したまま粘着性を発揮することができた。
【0073】
(実施例9)
(1)アクリル系重合体の製造
反応容器の内に、n−ブチルアクリレート100重量部及びアクリル酸11重量部を導入しモノマー成分を得た。該モノマー成分を酢酸エチルに溶解して、還流点において、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.1重量部を添加し、70℃で5時間還流させて、重量平均分子量が72万のアクリル系重合体の溶液を得た。
【0074】
(2)粘着剤組成物及び粘着テープの製造
得られたアクリル系重合体溶液に、アクリル系重合体溶液の不揮発分であるアクリル系重合体100重量部に対して、分子量600以下の成分の含有量が13%である重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点140℃)を6.3重量部、及び、架橋剤として金属キレート系架橋剤であるアルミニウムキレートを0.054重量部となるように加えた。その後、均一に混合して粘着剤組成物を得た。
次いで、得られた該粘着剤組成物を、実施例1で得られた樹脂発泡体シートの片面に塗布した後、120℃で5分乾燥させ、樹脂発泡体シートの片面に厚さ60μmの粘着剤層が積層された片面粘着テープを得た。
得られた片面粘着テープは、実施例1記載の樹脂発泡体シートの柔軟性と遮音性を維持したまま粘着性を発揮することができた。
【0075】
(評価)
実施例8、9で得た片面粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
【0076】
(耐可塑剤性評価)
(1)試験体準備
実施例8、9で得られた片面粘着テープを、幅25mm×長さ150mmに切り出し、JIS G4305に規定するSUS304(表面BA仕上げ)に、JIS Z0237に準じて2kgゴムローラーを10mm/秒の速度で1往復させ圧着した。
【0077】
(2)初期粘着力の測定
上記試験体準備で得た片面粘着テープを、23℃、50%RHにて圧着から20分間放置した後、JIS Z0237に準じて、90度剥離試験を試験数3にて実施し、平均値を初期粘着力(N/25mm)とした。なお、剥離速度は300mm/分であった。
【0078】
(3)経時粘着力の測定
上記試験体準備で得た試験体を60℃の雰囲気下で72時間放置し、ついで23℃、50%RHにて30分間放置した後、JIS Z0237に準じ、90度剥離試験を試験数3にて実施し、平均値を経時粘着力(N/25mm)とした。
【0079】
(4)粘着力維持率の評価
上記で得られた初期粘着力及び経時粘着力を用いて、以下の式により粘着力維持率(%)を算出した。
粘着力維持率(%)=100×(経時粘着力/初期粘着力)
実施例9で得られた片面粘着テープの粘着力維持率は、実施例8で得られた片面粘着テープの粘着力維持率に比較して、大幅に改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、柔軟であり、賦形性に優れた樹脂発泡体、該樹脂発泡体からなる樹脂発泡体シート、粘着テープ、車両用部材及び建築部材を提供することができる。