(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は第1実施形態の反射型空中結像素子を備えた空中映像表示装置の斜視図を示している。
図2は
図1の要部を拡大した斜視図を示している。
図3〜
図5は反射型空中結像素子の分解斜視図、平面図及び側面図をそれぞれ示している。X方向、Y方向及びZ方向はそれぞれ反射型空中結像素子10の幅方向、奥行方向及び厚み方向を示している。なお、
図2及び
図4では補強板5の図示を省略している。また、
図2において矢印Qは光路を示している。
【0012】
空中映像表示装置100は光源20及び反射型空中結像素子10を有する。反射型空中結像素子10は平板状の光学素子1(第1光学素子)、平板状の光学素子2(第2光学素子)及び一対の平板状の補強板5を有する。
【0013】
光学素子1、2の平面形状は一辺の長さが例えば約300mmの略正方形に形成される。光学素子1、2はアクリル樹脂等の透明な樹脂やガラス等の光透過性材料により形成され、厚み方向(Z方向)に平行な反射面4が所定の周期Dr(例えば、0.5mm)で平行に配される。
【0014】
光学素子1、2は対向する両面に反射面4を形成した複数の透明な基材25を反射面4上に配した接着剤3(第3接着剤、
図6参照)により接着して形成される。すなわち、光学素子1、2は、厚み方向(Z方向)に平行な反射面4を有した複数の透明な基材25を反射面4に垂直な方向に接着剤3を介して並設される。
【0015】
基材25はアクリル樹脂等の透明な樹脂やガラス等により形成される。接着剤3は例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂等から成る主剤と例えばポリアミド樹脂等から成る硬化剤とを混合した二液混合型の接着剤から成る。反射面4は基材25上に例えばアルミニウムや銀等のスパッタや蒸着を行って形成される。
【0016】
図6は隣接する基材25間の接着部分を拡大した側面図を示している。隣接する基材25間には反射面4上にドット状の複数のスペーサー15が平面視でマトリクス状に配置されている。スペーサー15は例えば紫外線硬化性樹脂から成り、高さH(反射面4に垂直な方向の突出量)が例えば20μm±1μmの範囲内で形成され、直交する二方向に所定のピッチE(本実施形態では1mm)で配置される。これにより、各接着剤3の層の膜厚を容易に揃えることができ、複数の反射面4を互いに平行に維持することができる。
【0017】
補強板5の平面形状は一辺の長さが例えば約310mmの略正方形に形成される。補強板5はアクリル樹脂等の透明な樹脂やガラス等の光透過性材料により形成される。光学素子1は下方の補強板5上に接着剤6(第1接着剤、
図3参照)を介して接着される。接着剤6として例えばシリコーン接着剤を用いることができる。
【0018】
光学素子2は光学素子1上に接着剤7(第2接着剤、
図3参照)を介して接着される。この時、光学素子1の反射面4と光学素子2の反射面4とが直交するように光学素子1、2は接着される。上方の補強板5は光学素子2上に接着剤8(
図3参照)を介して接着される。これにより、光学素子1、2は厚み方向(Z方向)に並設されるとともに一対の上下の補強板5間に配され、一対の補強板5は光学素子1、2を覆う。接着剤7、8として例えばシリコーン接着剤を用いることができる。
【0019】
接着剤6、7、8としてシリコーン接着剤を用いると、温度変化や湿度変化等の環境変化による接着剤6、7、8の劣化を低減することができる。なお、接着剤6、7、8はシリコーン接着剤に限定されないが、デュロメータ硬度がA95以下の接着剤であると望ましい。接着剤6、7、8のデュロメータ硬度がA70以下であるとより望ましい。なお、接着剤6、7、8は互いに異なる材質の接着剤でもよい。
【0020】
下方の補強板5の下面は光が入射する入射面18(
図1、
図3参照)を形成し、上方の補強板5の上面は光が出射する出射面19(
図1、
図3参照)を形成する。
【0021】
補強板5により光学素子1、2を補強することができる。また、光学素子1の下面1a及び光学素子2の上面2aはそれぞれ下方及び上方の補強板5により覆われる。これにより、光学素子1の下面1a及び光学素子2の上面2aに接着剤3が露出しないため、結露等の影響による接着剤3の劣化を防止することができる。
【0022】
光学素子1、2は、厚み方向(Z方向)に平行な反射面4を有する複数の透明な基材25を反射面4に垂直な方向に接着剤3を介して並設される。このため、光学素子1、2の反射面4に直交する方向の線膨張係数α2は、光学素子1、2の反射面4の長手方向(厚み方向(Z方向)に直交して反射面4に平行な方向)の線膨張係数α1よりも大きくなっている。したがって、温度変化による光学素子1、2の反射面4に直交する方向の伸縮は、反射面4の長手方向の伸縮よりも大きくなる。
【0023】
本実施形態では、補強板5の線膨張係数α3は光学素子1、2の線膨張係数α1よりも大きく、線膨張係数α2よりも小さくなっている。これにより、温度変化による光学素子1、2の反射面4の長手方向の伸縮を抑制することができる。このため、温度変化による光学素子1の反射面4の長手方向の伸縮と光学素子2の反射面4に直交する方向の伸縮との差が小さくなる。また、光学素子1の反射面4に直交する方向の伸縮と光学素子2の反射面4の長手方向の伸縮との差が小さくなる。なお、線膨張係数α3と線膨張係数α1、α2との差は小さいほうが望ましい。
【0024】
この時、接着剤7としてデュロメータ硬度がA95以下のシリコーン接着剤を用いると、光学素子1、2の所定方向の伸縮の差による応力を小さくできる。同様に、接着剤6としてデュロメータ硬度がA95以下のシリコーン接着剤を用いると、光学素子1と下方の補強板5との所定方向の伸縮の差による応力を小さくできる。また、接着剤8としてデュロメータ硬度がA95以下のシリコーン接着剤を用いると、光学素子2と上方の補強板5との所定方向の伸縮の差による応力を小さくできる。
【0025】
なお、接着剤6、7、8としてデュロメータ硬度がA95以下の接着剤であれば、シリコーン接着剤以外の接着剤を用いてもよい。
【0026】
また、補強板5の厚みT2(
図5参照)は光学素子1、2の厚みT1よりも大きくなっている。これにより、光学素子1、2に対する補強効果をより向上できるとともに、温度変化による反射型空中結像素子10の捩れ等の変形をより低減することができる。なお、補強板5の厚みT2を光学素子1、2の厚みT1の2倍以上にすると望ましい。これにより、補強板5による補強効果をより一層向上できる。本実施形態では補強板5の厚みT2は2.8mm、光学素子1、2の厚みT1は1.34mmになっている。
【0027】
補強板5の表面には反射防止処理を施した反射防止部(不図示)が設けられる。反射防止処理として例えばフッ化マグネシウム等のコーティング(光学薄膜処理)や、凹凸の平均周期が可視光波長以下であるミクロの凹凸構造の配置等が挙げられる。
【0028】
光源20は下方の光学素子1側(
図1において、下方の補強板5よりも下方)に配される。光源20は例えばLEDから成り、白色の照明光Lを出射する。光源20は被投影物OBの反射光が約45°の入射角で補強板5の入射面18に入射するように被投影物OBに対して照明光Lを出射する。なお、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)により光源20を形成してもよい。
【0029】
上記構成の空中映像表示装置100において、光学素子1側(
図1において、下方の補強板5よりも下方)に2次元画像の被投影物OB(
図1、
図2参照)を配置し、光源20を点灯する。光源20から出射された照明光Lは被投影物OBで反射する。被投影物OBの反射光の一部は補強板5の入射面18から入射する。
【0030】
この時、補強板5の表面に反射防止部が設けられるため入射面18上の入射光の反射を防止でき、補強板5内に入射する光量の減少を防止することができる。すなわち、入射面18での反射による光損失を低減することができる。
【0031】
入射面18から補強板5に入射した光は補強板5を透過した後に矢印Q(
図2参照)で示すように、光学素子1の下面1aから光学素子1に入射し、光学素子1の反射面4で反射した後に光学素子2に入射する。
【0032】
光学素子2の反射面4で反射した光は光学素子2の上面2a(
図2参照)から上方へ出射された後に上方の補強板5を透過して出射面19から出射される。これにより、反射型空中結像素子10に対して被投影物OBと面対称の位置の空中で被投影物OBの実像(空中映像FI)が結像される。すなわち、被投影物OBの空中映像FIが空中に浮かんだ状態で表示される。
【0033】
この時、
図4に示すように、光学素子1の下面1aに平行な面に投影して使用者の眼EY(
図1参照)の視線方向ELに対して光学素子1の反射面4が45゜傾斜すると、空中映像FIの視認性を最良にできる。また、補強板5の反射防止部により出射面19での外光の反射を防止することができ、空中映像FIの視認性の低下を防止することができる。
【0034】
また、光学素子1の下面1a及び光学素子2の上面2aはそれぞれ下方及び上方の補強板5により覆われている。これにより、下面1a及び上面2a上で接着剤3の露出が防止され、結露等の影響による下面1a及び上面2a上の接着剤3の劣化を防止することができる。したがって、被投影物OBの反射光が通過する領域の光学素子1、2の劣化(反射面4の腐食等の劣化等)を防止することができる。その結果、空中映像FIの画質の低下を抑えることができる。なお、光学素子1、2の側端面上の接着剤3は露出しているが、被投影物OBの反射光は光学素子1、2の側端面を殆ど通過しないので、空中映像FIの結像に大きな支障はない。
【0035】
また、被投影物OBが例えば商品等に関する情報であれば、空中映像FIにより商品等の広告宣伝を行うことができる。また、医療現場や工事現場等で使用される機器のタッチパネル等を空中映像FIとして表示してもよい。これにより、機器の汚染等を防止することができる。また、反射型空中結像素子10をゲーム機等に搭載してもよい。
【0036】
なお、被投影物OBは2次元画像に限定されず、立体物でもよい。また、被投影物OBは液晶パネル等の表示装置に表示された画像でもよい。この時、光源20を省いて表示装置に内蔵された光源を用いることができる。
【0037】
図7は反射型空中結像素子10を拡大した拡大上面図を示している。
図8は光学素子1を拡大した拡大側面図を示している。なお、
図7では補強板5の図示を省略している。ガラスから成る基材25の屈折率をnとし、光学素子1の下面1aから基材25に入射して透過する光線Qpの入射角及び屈折角をそれぞれθ1、θ2とすると、スネルの法則から式(1)が導かれる。
【0038】
θ2=arcsin(sinθ1/n)・・・(1)
【0039】
厚みT1の光学素子1の一個の基材25を透過する全ての光線Qp(光線Qpの全光束)が反射面4で1回反射して光学素子1の上面1bから出射される時、反射面4のY方向のピッチPrは式(2)で示される。
【0041】
例えば、θ1=45°、n=1.51633、T1=1.5mmとすると、式(1)から屈折角θ2は27.8°と算出される。また、式(2)からピッチPrは0.78mmと算出される。Y方向が反射面4の長手方向(光学素子1の厚み方向(Z方向)に直交して反射面4に平行な方向)に対して45°傾斜していると、周期Dr(隣接する反射面4間の距離)は0.56mmになる。以上より、光学素子1の厚みT1が1.5mmの場合に周期Drを0.56mmにすると、45°の入射角で光学素子1の下面1aに入射した光線Qpの全光束を反射面4で1回反射させた後に上面1bから出射させることができる。これにより、反射型空中結像素子10によって結像する空中映像FIの画質を向上させることができる。
【0042】
また、例えば、θ1=45°、n=1.51633、Dr=0.5mmとすると、ピッチPrは0.707mmとなる。屈折角θ2は27.8°なので、式(2)から光学素子1の厚みT1は1.34mmとなる。したがって、後述のように板厚が0.5mmの基板21を用いて光学素子1、2を形成する場合には研磨工程により光学素子1、2の厚みT1を1.34mmにすると、45°の入射角で下面1aに入射した光線Qpの全光束を反射面4で1回反射させた後に上面1bから出射させることができる。これにより、反射型空中結像素子10によって結像する空中映像FIの画質を向上させることができる。また、周期Drを0.56mmにする場合よりも光学素子1の厚みT1を小さくすることができる。したがって、後述の固着ブロック12(
図14参照)からより多くの素材1´を得ることができる。
【0043】
以上より、基材25としてガラスを用いた場合に、Dr/T1=0.373を満たすと、45°の入射角で下面1aに入射した光線Qpの全光束を反射面4で1回反射させた後に上面1bから出射させることができる。すなわち、45°の入射角で入射面18に入射した光を効率よく出射面19から出射させることができる。したがって、空中映像FIの画質を向上させることができる。
【0044】
図9は反射型空中結像素子10の製造工程を示す図である。反射型空中結像素子10の製造工程は反射面形成工程、スペーサー形成工程、積層工程、固着工程、切断工程、研磨工程、光学素子配置工程及び補強板取付工程を備えている。
【0045】
反射面形成工程では
図10に示すように、平面形状が略正方形の基板21の両面にアルミニウムや銀等のスパッタや蒸着等によって反射面4を形成する。基板21は薄板状のガラス板から成る。ガラス板の材質に特に限定はないが、例えばホウケイ酸ガラスを用いることができる。本実施形態では反射面4は厚み(膜厚)が100nmのアルミニウムにより形成される。なお、基板21の片面のみに反射面4を形成してもよい。また、アクリル樹脂等の薄板状の透明樹脂板により基板21を形成してもよい。
【0046】
本実施形態の基板21は300mm×300mmの正方形で、板厚が約0.5mmになっている。基板21の板厚は0.6mm以下であると好ましい。これにより、良好な空中映像FIを得ることができる。
【0047】
基板21の製造方法に特に限定はないが、例えばフュージョン法を用いることができる。フュージョン法は、上面を開口して断面形状が下端を絞るハート形状の樋に溶けたガラス(溶融ガラス)を入れ、樋の上面から溢れ出たガラスが下方へ流れ出て樋の下方で一体になる方法である。これにより、ガラス面は空気以外には非接触で表面張力のみによって形成されるため、平滑な面を得ることができる。
【0048】
図11はスペーサー形成工程を示す側面図である。スペーサー形成工程は基板21の反射面4に略平行な二方向(一方を矢印Fで示す)に移動するスペーサー形成部70により行われる。スペーサー形成部70はインクジェットヘッド71、紫外線光源72及び測距センサ73を有する。
【0049】
測距センサ73は反射面4までの距離を測定する。インクジェットヘッド71は紫外線硬化性樹脂から成るインク71aを基板21に向けて吐出する。インクジェットヘッド71の吐出前に、測距センサ73によって測定開始位置(例えば、基板21の端部)で反射面4までの距離を測定し、この距離を基準距離とする。そして、反射面4上のインク71aの滴下予定位置と測距センサ73との間の距離と基準距離とを比較し、インクジェットヘッド71のインク71aの吐出量を可変する。これにより、スペーサー15の高さを均一にすることができる。
【0050】
紫外線光源72は反射面4上に滴下されたインク71aに向けて紫外線UVを照射し、インク71aを硬化させる。これにより、
図12に示すように基板21の反射面4上に所定の高さ(本実施形態では20μm)のドット状のスペーサー15がピッチE(本実施形態では1mm)のマトリクス状に基板21に固着して形成される。スペーサー15をインクジェット印刷によりドット状に形成しているため、スペーサー15を反射面4上に容易に配置することができる。
【0051】
次に、
図13は積層工程を示す斜視図である。積層工程ではスペーサー15が形成された複数(本実施形態では600枚)の基板21を反射面4に垂直な方向(基板21の板厚方向)に積み重ねて挟持部材(不図示)により挟持する。これにより、隣接する基板21間に隙間Gを有する積層体11が形成される。
【0052】
積層工程後の固着工程では、積層方向LMから所定の加圧力を積層体11に加えて積層体11を加圧する。これにより、積層体11の各基板21の反りが矯正される。
【0053】
そして、積層体11への加圧を継続した状態で積層体11を貯留槽(不図示)内の液状の接着剤3に浸漬する。これにより、隙間G内に接着剤3が進入して充填される。積層体11の接着剤3への浸漬を所定時間(例えば1時間)行った後に積層体11を貯留槽から引き上げて接着剤3を硬化させる。これにより、積層体11が固着され、
図14に示す固着ブロック12が形成される。固着ブロック12の反射面4に垂直な方向の長さ(積層方向LMの長さ)は約300mmになっている。
【0054】
また、隣接する基板21間に隙間Gを確保するスペーサー15が配されるため、基板21間の接着剤3の膜厚を揃えて各反射面4の平行を容易に維持することができる。隙間Gが大きくなると光学素子1の接着剤3の膜厚が大きくなるため、空中映像FIが粗くなる。このため、隙間Gを50μm以下にすると望ましい。一方、隙間Gを小さくすると、空中映像FIを良好に結像させることができるが、液状の接着剤3の充填が困難になる。このため、隙間Gを10μm以上にすると望ましい。
【0055】
なお、反射型空中結像素子10の製造工程からスペーサー形成工程を省き、反射面4を形成した複数の基板21の反射面4上に接着剤3を逐一塗布し、反射面4に接着剤3が塗布された複数の基板21を反射面4に垂直な方向に積み重ねて積層体11を形成してもよい。この場合、固着工程では積層体11を貯留槽に浸漬することなく、積層体11への加圧を継続した状態で接着剤3を硬化させる。
【0056】
次に、切断工程では、
図14の切断線KTで示すように、固着ブロック12を反射面4に平行な方向に所定周期(例えば1.8mm)で反射面4に垂直な方向に切断する。これにより、光学素子1(
図3参照)の素材1´が複数形成される。なお、光学素子2の構成は光学素子1の構成と同様であり、光学素子2も素材1´から形成される。固着ブロック12の切断にはワイヤーソーが好適に用いられるが、スライサーを用いてもよい。
【0057】
研磨工程では光学素子1の素材1´の両面をラッピング装置により所定の厚さ(例えば、1.5mm)まで研磨する。その後、ポリッシング装置により光学素子1の素材1´の両面を鏡面仕上げする。これにより、
図3に示す光学素子1、2が得られる。この時、光学素子1、2の厚みT1(
図5参照)は1.34mmになっている。
【0058】
光学素子配置工程では、光学素子1の反射面4と光学素子2の反射面4とが互いに直交するように光学素子1、2を厚み方向に重ねて配置し、接着剤7(
図3参照)を介して光学素子1、2を接着する。これにより、光学素子1、2は厚み方向(Z方向)に並設される。
【0059】
補強板取付工程では、光学素子1、2の並設方向(Z方向)の両端面(下面1a及び上面2a)に補強板5を接着剤6、8(
図3参照)で接着する。以上により、
図1に示す反射型空中結像素子10が形成される。
【0060】
また、光学素子1の基材25間の接着剤3に例えば45°の入射角で入射した光源20の照明光Lは反射面4で数十回反射した後に接着剤3から出射される。これにより、接着剤3に入射した光は大きく減衰して出射されるため、空中映像FIの結像には殆ど寄与しない。したがって、光学素子1の基材25間の接着剤3にスペーサー15を配置しても空中映像FIの表示に大きな支障はない。
【0061】
図15は本実施形態の光学素子1の線膨張ひずみを示した図である。縦軸は線膨張ひずみを示し、横軸は温度(単位:℃)を示している。線膨張ひずみは20℃の時の長さLgに対する長さの変化量ΔLの比で示している。また、光学素子1の基材25としてホウケイ酸ガラス(ショット日本株式会社製、D263Tecо)を用いている。
【0062】
実線Aは光学素子1の反射面4の長手方向の線膨張ひずみを示し、破線Bは光学素子1の反射面4に直交する方向の線膨張ひずみを示している。一点鎖線C及び二点鎖線Dはそれぞれ青板ガラス(ソーダライムガラス)及びホウケイ酸ガラスの線膨張ひずみを示している。
【0063】
図15によると、温度が上昇するに従って、光学素子1の反射面4の長手方向の線膨張ひずみと、反射面4に直交する方向の線膨張ひずみとの差は大きくなっている。このため、同一構成の光学素子1、2を備えた反射型空中結像素子10から補強板5を省いた従来の構成では、温度変化により反射型空中結像素子に捩れ等の変形が生じる。
【0064】
また、30℃〜100℃において、青板ガラスの線膨張量は光学素子1の反射面4の長手方向の線膨張ひずみよりも大きく、反射面4に直交する方向の線膨張ひずみよりも小さい。すなわち、青板ガラスの線膨張係数は線膨張係数α1よりも大きく線膨張係数α2よりも小さい。なお、30℃〜100℃において、ホウケイ酸ガラスの線膨張ひずみは光学素子1の反射面4の長手方向の線膨張ひずみと略同じである。
【0065】
次に、本実施形態の反射型空中結像素子10の破損の有無を調べる実験を行った。光学素子1、2の基材25としてホウケイ酸ガラスを用い、補強板5として青板ガラスを用いた。接着剤6、7、8としてシリコーン接着剤(信越化学工業株式会社製、KE−106)を用いた。本実験に用いたシリコーン接着剤のデュロメータ硬度はA65である。比較例の反射型空中結像素子では補強板5を省いた。比較例のその他の構成は本実施形態と同様である。本実施形態の反射型空中結像素子10及び比較例の反射型空中結像素子をそれぞれ2サンプル用意し、温度を20℃〜100℃に可変した。
【0066】
本実施形態の反射型空中結像素子10では2サンプルともに破損箇所は認められなかった。一方、比較例の反射型空中結像素子では2サンプルともに複数の破損箇所が認められた。以上の結果から、補強板5を光学素子1、2に接着することにより反射型空中結像素子10の破損を防止でき、反射型空中結像素子10の信頼性を向上させることができる。
【0067】
本実施形態によると、補強板5の線膨張係数α3が光学素子1(第1光学素子)及び光学素子2(第2光学素子)の厚み方向に直交して反射面4に平行な方向の線膨張係数α1よりも大きく、光学素子1及び光学素子2の反射面4に直交する方向の線膨張係数α2よりも小さい。
【0068】
これにより、温度変化による光学素子1及び光学素子2の反射面4の長手方向の伸縮を抑制することができる。このため、光学素子1の厚み方向に直交して反射面4に平行な方向の伸縮と、光学素子2の反射面4に直交する方向の伸縮との差を小さくすることができる。また、光学素子1の反射面4に直交する方向の伸縮と、光学素子2の厚み方向に直交して反射面4に平行な方向の伸縮との差を小さくすることができる。その結果、温度変化による反射型空中結像素子10の捩れ等の変形が低減され、反射型空中結像素子10の破損が防止される。したがって、反射型空中結像素子10の信頼性を向上させることができる。
【0069】
なお、上方の補強板5及び下方の補強板5の一方を省いてもよい。これにより、温度変化による光学素子1または光学素子2の反射面4の長手方向の伸縮を抑制することができる。したがって、温度変化による所定方向の光学素子1の伸縮と光学素子2の伸縮との差が小さくなり、反射型空中結像素子10の破損を防止することができる。
【0070】
また、複数の光学素子1、2の反射面4が互いに平行になるとともに光学素子1、2の側端面で各反射面4が連続するように厚み方向(Z方向)に直交する方向で複数の光学素子1、2を側端面で接着剤により接着し(タイリングし)、大型の反射型空中結像素子を形成してもよい。この場合でも補強板5により大型の反射型空中結像素子の捩れ等の変形を防止し、破損を防止することができる。
【0071】
また、接着剤6、7、8のデュロメータ硬度はA95以下であると望ましい。これにより、光学素子1、2の所定方向の伸縮の差による応力を小さくできる。また、光学素子1と補強板5との所定方向の伸縮の差による応力を小さくできる。また、光学素子2と補強板5との所定方向の伸縮の差による応力を小さくできる。したがって、温度変化による反射型空中結像素子10の捩れ等の変形をより防止することができる。なお、接着剤6、7、8のデュロメータ硬度がA70以下であると、温度変化による反射型空中結像素子10の捩れ等の変形をより一層防止することができるため、より望ましい。
【0072】
また、接着剤6、7、8がシリコーン接着剤であると、温度変化や湿度変化等の環境変化による劣化が発生しにくい。
【0073】
また、補強板5の厚みT2は光学素子1、2の厚みT1よりも大きい。これにより、反射型空中結像素子10の剛性が高くなり、温度変化による反射型空中結像素子10の捩れ等の変形をより防止することができる。
【0074】
また、補強板5の表面には反射防止処理を施した反射防止部が設けられている。これにより、補強板5を設けても入射面18での反射による光損失を低減することができる。また、補強板5の表面での外光の反射を防止し、空中映像FIの視認性の低下を防止することができる。
【0075】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図16は第2実施形態の反射型空中結像素子10のスペーサー形成工程完了時の基材25の斜視図を示している。説明の便宜上、
図1〜
図15に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態では積層工程に使用される基材25の構成が第1実施形態とは異なるとともに、第1実施形態に対して切断工程を省いている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態の反射面形成工程では、断面矩形の角材状の透明な基材25の対向する一対の面に反射面4を形成する。なお、基材25の一の面にのみ反射面4を形成してもよい。積層工程では、角材状の基材25の反射面4上に配した複数のドット状のスペーサー15を介して基材25を一方向(反射面4に垂直な方向)に並設する。その後、固着工程により光学素子1の素材1´が形成される。固着工程の後に研磨工程を実行する。なお、研磨工程以降は第1実施形態と同様である。
【0077】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、対向する一対の面に反射面4を形成した断面矩形の角材状の透明な複数の基材25を用いるため、第1実施形態の切断工程を省くことができる。
【0078】
本発明は、透明な補強板と、前記補強板上に第1接着剤を介して接着される平板状の第1光学素子と、前記第1光学素子上に第2接着剤を介して接着される平板状の第2光学素子と、を備え、前記第1光学素子及び前記第2光学素子が厚み方向に平行な反射面を有した複数の透明な基材を前記反射面に垂直な方向に第3接着剤を介して並設されるとともに、前記第1光学素子の前記反射面と前記第2光学素子の前記反射面とが直交し、前記補強板の線膨張係数が前記第1光学素子及び前記第2光学素子の前記厚み方向に直交して前記反射面に平行な方向の線膨張係数よりも大きく、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の前記反射面に直交する方向の線膨張係数よりも小さいことを特徴としている。
【0079】
また本発明は、上記構成の反射型空中結像素子において、一対の前記補強板間に前記第1光学素子及び前記第2光学素子を配すると好ましい。
【0080】
また本発明は、上記構成の反射型空中結像素子において、前記第1接着剤及び前記第2接着剤のデュロメータ硬度がA95以下であると好ましい。
【0081】
また本発明は、上記構成の反射型空中結像素子において、前記第1接着剤及び前記第2接着剤はシリコーン接着剤であると好ましい。
【0082】
また本発明は、上記構成の反射型空中結像素子において、前記補強板の厚みは前記第1光学素子及び前記第2光学素子の厚みよりも大きいと好ましい。
【0083】
また本発明は、上記構成の反射型空中結像素子において、前記補強板の表面に反射防止部を設けると好ましい。