特許第6574923号(P6574923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574923
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】磁気力測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20190902BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   G01R33/02 A
   G01R33/07
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-136717(P2015-136717)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-20827(P2017-20827A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】712007876
【氏名又は名称】佐保 ミドリ
(72)【発明者】
【氏名】佐保典英
(72)【発明者】
【氏名】小野瑞絵
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−195172(JP,A)
【文献】 特開2012−89573(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0315548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/07
G01R 33/06
G01R 33/02
H01L 27/22
G01N 27/76
G01D 5/00
H01L 27/20
H02N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気力を発生する磁場発生手段の磁場空間内において、少なくとも一方向での第一の位置および第二の位置での磁気特性を測定する磁気力測定装置において、
少なくとも、該第一の位置で磁気密度を測定する磁気検出手段と、
給電により伸縮変形する高分子材の伸縮物質を内蔵し、該第一の位置から第二の位置に該磁気検出手段を移動させる移動手段と、
該伸縮物質の伸縮変形の作用を受けず、該移動手段の一定の移動距離を拘束する移動拘束手段
を備えたことを特徴とする磁気力測定装置。
【請求項2】
磁気力を発生する磁場発生手段の磁場空間内において、少なくとも一方向での第一の位置および第二の位置での磁気特性を測定する磁気力測定装置において、
少なくとも、該第一の位置で磁気密度を測定する磁気検出手段と、
給電により伸縮変形する高分子材の伸縮物質を内蔵し、該第一の位置から第二の位置に該磁気検出手段を移動させる移動手段と、
該移動手段の移動距離を拘束する移動拘束手段と
該移動手段が第二の位置から第一の位置に移動する方向に弾性力を作用する弾性体
を備えたことを特徴とする磁気力測定装置。
【請求項3】
磁気力を発生する磁場発生手段の磁場空間内において、少なくとも一方向での第一の位置および第二の位置での磁気特性を測定する磁気力測定装置において、
少なくとも、該第一の位置で磁気密度を測定する磁気検出手段と、
該第一の位置から第二の位置に該磁気検出手段を移動させる第一の移動手段と、
該第二の位置から第一の位置に該磁気検出手段を移動させる第二の移動手段と、
該両移動手段は給電により伸縮変形する高分子材の伸縮物質を内蔵し、
該移動手段の移動距離を拘束する移動拘束手段
を備えたことを特徴とする磁気力測定装置。
【請求項4】
磁気力を発生する磁場発生手段の磁場空間内において、少なくとも一方向での第一の位置および第二の位置での磁気特性を測定する磁気力測定装置において、
少なくとも、該第一の位置で磁気密度を測定する磁気検出手段と、
該第一の位置から第二の位置に該磁気検出手段を移動させる第一の移動手段と、
第二の磁気検出手段を該第一の位置から第二の位置への移動方向と逆方向に移動させる第二の移動手段と、
該両移動手段が同期して給電により伸縮変形する高分子材の伸縮物質を内蔵し、
該両移動手段の移動距離を拘束するそれぞれの移動拘束手段
を備えたことを特徴とする磁気力測定装置。
【請求項5】
前記磁気検出手段の計測電気信号より、磁気特性を算出する演算プログラムと、
算出した磁気特性項目を表示する表示手段と
前記移動手段を電子的に制御する作動制御手段
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁気力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場中において磁性細胞や工具等の磁性物質に、物理的な磁気力が作用する磁気特性を精度よく測定できる、軽量で、小型で、作動時の振動が少ない安価で高精度な磁気力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速な進展を示す再生医療分野において、膝関節の軟骨や骨の再生医療で研究が進められている、核磁気共鳴画像装置用造影剤を磁性微粒子として取り込ませた間葉系幹細胞(以下磁性幹細胞と称す)の外部誘導手段として、強磁気力を提供できる磁場発生手段の例えば電磁石の超電導バルク磁石や永久磁石の適用が、臨床応用を目標に積極的に進められている。
【0003】
現状の再生試験では、超電導バルク磁石の磁界内で、前記磁性幹細胞の注入部位や誘導先への細胞の軌跡を、内視鏡を使用しながら確認して行っている。しかし、多数のデータを整理する場合、両部位における磁気力の重要なファクターの一つである磁気力係数を定量的に把握し、治療効果を比較検討することが重要である。
【0004】
一方、超電導磁気浮上列車に搭載される超電導磁石は大型で高磁場を発生させるため、車両の超電導磁石周りの保守点検等を行う際、磁気力を定量的に把握し、携帯するスパナや磁気カード等の磁性物質等の磁気吸引力や磁気メモリーの破壊に対する、安全予防を行うことが重要である。
【0005】
ここで、磁気力を測定するために必要な磁束密度Bを計測する磁気検出手段としては、一般的にホール素子やSQUID素子等がある。ホール素子は、常温で使用できる。
【0006】
磁気力Fm [N]の計算式を(1)式に示す。体積がV [m3]の磁性微粒子が置かれた空間の磁束密度をB [T]とすると、磁気力Fmは、磁束密度Bと磁気勾配ΔBの積の磁気力係数fm [T2/m]に比例する。ここで,κは磁化率[-],μ0は真空透空透磁率[N/A2]である。

Fm = V・κ・B・ΔB/μ0
= V・κ・fm /μ0 ・・・・・・・・・・・(1)
【0007】
したがって、微小移動距離δL [m]離れた位置Za、位置Zbでの磁束密度BaおよびBbを測定すれば、両磁束密度差(Ba- Bb)をδLで除してZa、Zbの2点間の磁気勾配ΔBab=(Ba- Bb)/δLを計算でき、Za、Zbの平均磁束密度Bab=(Ba+ Bb)/2を計算し、磁気力係数fm =Bab×ΔBabを算出できる。ここで、磁性微粒子の物性が明らかであれば磁気力Fmを(1)式により、計算して求めることができる。すなわち、磁気力係数fm は磁気力Fmの大きさを決める重要なファクターである。
【0008】
従来、磁束密度Bの測定は、1個の磁気測定用の例えばホール素子を圧電アクチエータに組み込み、微小移動距離δLの数十μmから数百μmを短時間にトラバースし、少なくとも2点の測定位置で磁束密度Bを測定し、その測定結果より測定位置での磁気勾配ΔBを測定、算出する装置が特許公開2013-195172に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公開2013-195172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1の引例において、磁気勾配ΔBを求めるのに使用する圧電アクチエータ本体はトラバースの距離を確保するため多数の高価なピエゾ素子を積層する必要があり、かなり高価となり、かつ圧電アクチエータ駆動直流電圧が150Vと高く、その駆動ドライバーも高価であり、重く、高価な装置となる問題があった。
【0011】
また、磁場中で前記磁性細胞の注入部位や誘導先である特定部位を定めるための、磁気検出手段の移動装置の固定支持構造が明記されておらず、磁気検出手段移動時の反力による移動振れ等による、前記特定部位での測定精度が低下する問題があった。
【0012】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、軽量で、安価な磁気検出手段用の移動手段を有し、かつ磁気検出手段の移動振れを少なくした高精度な磁気力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の磁気力測定装置では、所定の微小移動距離δL離れた少なくとも2か所の位置で、磁束密度Bを測定する同一の磁気センサーを往復移動させる移動手段であるアクチエータを、低電圧で伸縮する例えば電子導電性高分子製やイオン導電性高分子製の伸縮物質と電極を組み合わせた伸縮物質デバイスを有した伸縮手段と、前記磁気センサーを保持し、前記伸縮手段と直接もしくは間接的に一体化されて移動する素子移動保持手段と、前記素子移動保持手段の移動距離を拘束する移動拘束手段で構成する。
【0014】
本構造および構成の磁気力測定装置によれば、直流電圧1〜5 V程度の低電圧の給電で前記導電性高分子製の伸縮物質が0.2〜数mm緩やかに伸縮するので、これに一体化した素子移動保持手段を振動なく静かに移動させることができ、保持した前記磁気センサーを、移動拘束手段で例えば0.1mmの微小移動距離δLだけ正確に移動でき、この移動前後の位置a、位置bであるZa,Zbでの磁束密度を精度よく測定できる。
【0015】
かかる目的を達成するためになされた請求項2記載の磁気力測定装置では、アクチエータ内に、前記素子移動保持手段との移動方向端部に前記移動前の状態で拘束された弾性体を備えた構造とする。
【0016】
本構造および構成の磁気力測定装置によれば、給電により所定の電圧で伸縮手段を伸縮させ、素子移動保持手段を所定の方向に移送させるとともに前記弾性体に変位を与えた後、無給電により前記伸縮手段および素子移動保持手段を元の位置に戻す際、前記弾性体の弾性反力で前記方向と反対方向に素子移動保持手段を復帰させ、精度良く微小移動距離δLを担保できる。
【0017】
かかる目的を達成するためになされた請求項3記載の磁気力測定装置では、前記アクチエータ内に、前記弾性体の代わりに移動後の素子移動保持手段を元の位置に戻す第2の伸縮物質デバイスを別に備えた構造とする。
【0018】
本構造および構成の磁気力測定装置によれば、給電により伸縮手段を伸縮させ、第1の伸縮物質デバイスで素子移動保持手段を所定の方向に移送させた後、第1の伸縮物質デバイスへの無給電と、第2の伸縮物質デバイスへの給電により伸縮物質を伸縮させ、この作用力で素子移動保持手段を元の位置に戻し、更に精度良く微小移動距離δLを担保できる。
【0019】
かかる目的を達成するためになされた請求項4記載の磁気力測定装置では、前記第1の素子移動保持手段を移動させる伸縮物質デバイスの他に、ほぼ同質量、同形状の第2の素子移動保持手段とこれを第1の素子移動保持手段との移動方向と反対方向に移動させる第2の伸縮物質デバイスを内蔵してアクチエータを構成する。
【0020】
本構造および構成の磁気力測定装置によれば、給電により前記第1の素子移動保持手段の移動時に生じる反力を、前記第2の素子移動保持手段の移動時に生じる反力で相殺できるので、アクチエータの移動時の駆動振れを無くし磁気センサーの絶対位置の移動誤差を小さくでき、更に移動前後のZa 、Zb での磁束密度を精度よく測定できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、磁束密度測定磁場空間内で伸縮手段を構成する伸縮物質を低い直流電圧で振動無く伸縮でき、この伸縮の変位で磁気センサーを一体化した素子移動保持手段を、移動拘束手段で正確に微小移動距離δLだけ移動させて前記1つの磁気センサーで磁束密度を計測できるので、小型で、軽量で、安価で、高精度に磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0022】
また、素子移動保持手段を弾性体で保持する構造により、移動の後、前記弾性体の復元力により素子移動保持手段を移動前の位置に容易に復帰でき、更に精度よく微小移動距離δLを維持できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0023】
また、前記弾性体の代わりに移動後の素子移動保持手段を元の位置に戻す第2の伸縮物質デバイスを備えた構造により、給電により伸縮手段を伸縮させ、第1の伸縮物質デバイスで素子移動保持手段を所定の方向に移送させた後、第2の伸縮物質デバイスへの給電により伸縮物質を伸縮させ、素子移動保持手段を元の位置に戻して、精度良く微小移動距離δLを担保できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0024】
また、アクチエータ内に前記第1の素子移動保持手段を移動させる第1の伸縮物質デバイスの他に、ほぼ同質量、同形状の第2の素子移動保持手段を備え、第1の素子移動保持手段との移動方向と反対方向に移動させる第2の伸縮物質デバイスを内蔵する第2の素子移動保持手段でアクチエータを構成する構造により、両伸縮物質デバイスへの給電により前記第1の素子移動保持手段との移動時に生じる反力を、前記第2の素子移動保持手段との移動時に生じる反力で相殺できるのでアクチエータの作動時の駆動振れを無くし、磁気センサーの絶対位置の移動誤差を小さくして、更に移動前後の位置Za,Zbでの磁束密度を精度よく測定できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による磁気力測定装置の構造、構成を示す図である。
図2】実施例1のアクチエータの構造を示す断面図である。
図3図2のE−E矢視図である。
図4図2のF−F矢視図である。
図5】実施例1の磁気特性測定装置の構成を示すフローチャート図である。
図6】実施例1の磁気特性測定装置の構成を示すフローチャート図である。
図7】本発明による実施例2のアクチエータの構造を示す断面図である。
図8】本発明による実施例3のアクチエータの構造を示す断面図である。
図9】本発明による実施例4の磁気力測定装置の構造、構成を示す図である。
図10】実施例4のアクチエータの構造を示す断面図である。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
図1は、本発明による磁気力測定装置1の構造、構成を示す図であり、図2図1の磁気センサーの磁気センサーを微小移動距離だけ移動させるアクチエータ3の拡大断面図、図3図2のE−E矢視図、図4図2のF−F矢視図、図5図2移動物質14の屈曲変形後の断面図、図6は磁気センサーを用いた磁気特性測定装置の構成を示すフローチャート図である。
【0027】
図1図2に示すように、磁気力測定装置1は、以下の構成品で構成される。すなわち、磁場発生手段である超電導磁石(図示せず)の磁場空間内において、磁気力測定装置1は、例えば磁気検出手段であるホール素子の磁気センサー2を内蔵し、微小移動距離だけ磁気センサー2を移動させる非磁性部品で構成したアクチエータ3、磁気センサー2とアクチエータ3を支持する非磁性で高剛性のホルダー4、給電線5や給電・計測線6の端子台7を介してまとめた結束線8を連結し、手で支持する非磁性の部材のグリップ9、磁気センサー2およびアクチエータ3に給電し、計測を制御し、計測値を演算し、演算結果を表示する計測装置本体10と、計測装置本体10と長尺の結束線11と連結コネクター12で構成される。
【0028】
図2図3および図4に示すように、アクチエータ3は、磁気センサー2を頂部に一体化して移動する素子移動保持手段である例えばアルミニューム製の多段の鍔を有したセンサーホルダー13と、これを移動させる駆動力を発生するための、絶縁基材である保液層を内蔵した絶縁基板の表裏両面にイオンを流すことによって電気を通すイオン導電性分子化合物を電解重合して形成され、2枚の導電性分子膜で前記絶縁基板をサンドイッチした構造で、菊座形状の例えば幅約10mm、長さ約10mm、厚さ約0.5mmの伸縮物質14と、前記伸縮物質14に給電する負極の電極板15、正極の電極板16と、前記伸縮物質14の屈曲変形で図中Z軸方向に押下げられる電気絶縁材で非磁性の例えばプラスチック製の移動リング17、電気絶縁体18と、移動可能なセンサーホルダー13の円盤状の鍔19をZ軸方向の上限、下限位置を拘束する導電性で非磁性の例えばステンレス鋼製の移動拘束手段である移動拘束板20、21と、Z軸方向の微小移動距離δLzを担保する板厚を有した電気絶縁板22と、前記センサーホルダー13下端に例えば非電導性高分子ジェル製の孔23を有した弾性体24と、前記弾性体24を支持する下部電気絶縁容器25と、上部電気絶縁蓋26と、以上の前記上部電気絶縁蓋26、前記伸縮物質14の端部、電極板15、電極板16、電気絶縁体18、移動拘束板20、21、電気絶縁板22、下部電気絶縁容器25を機械的に一体化するネジ27で構成される。
【0029】
磁気センサー2の給電・計測線6、ハンダ28で電極板15に結線された給電線5、ハンダ29で電極板16に結線された給電線30、ハンダ31で移動拘束板20に結線された計測線32、ハンダ33で移動拘束板21に結線された計測線34は、端子台7で結束線8にまとめて結線されている。アクチエータ3は、ネジ35でホルダー4に下部電気絶縁容器25を介して一体化されている。アクチエータ3下部は計測線36が結線され、孔37、孔38を通して端子台7で結束線8にまとめて結線されている。
【0030】
ここで、伸縮物質デバイスは、伸縮物質14、前記伸縮物質14に給電する電極板15、電極板16、電気絶縁体18、前記伸縮物質14の変形でZ軸方向に押下げられる移動リング17および上部電気絶縁蓋26と電気絶縁体18で構成され、デバイスサイズは例えば幅10mm、長さ15mm、厚さ数mm、質量数gと小型、軽量で、大量生産が可能な安価なデバイスである。
【0031】
図4および図5において、電極板15、電極板16で挟まれた伸縮物質14は、それぞれの電極に開いた開口部39内で変形が自由な花びら状の菊座形状となっており、電極板15、電極板16間に例えば直流電圧3Vを計測装置本体10内の電源手段49(図6に示す)から最終的に給電線5,30を通じて給電すると、図5に示すように電極板15との導通接触面側が伸びて、電極板16との導通接触面側が縮むように変形し、花びら状の伸縮物質14はZ軸下方向に図中矢印方向に屈曲変形し、移動リング17を下方に移動させ、さらにセンサーホルダー13をZ軸方向下方に移動させる。この際、弾性体24は弾性圧縮変形する。給電を止めると伸縮物質14は元の状態に復元し、移動リング17さらにセンサーホルダー13は、圧縮された弾性体24の復元力で元の位置に復元する。図4中孔40はネジ27の通し孔である。
【0032】
ここで、Z軸方向の微小移動距離δLzの設定は、電気絶縁板22の板厚t22とセンサーホルダー13の円盤状鍔19の厚さt19との関係が

δLz=t22 -t19 ・・・・・・(2)

であるように設計、製作されている。
【0033】
センサーホルダー13の円盤状の鍔19は移動拘束板20で拘束されて接触導通し、鍔19と移動拘束板21は非接触、非導通しているので、計測線32とセンサーホルダー13の計測線36は導通して短絡し、さらに移動拘束板21の測線34と計測線36は非接触で被導通する電気信号のシグナルaを発する。この状態で、磁気センサー2はZaの位置にある。ここで、センサーホルダー13の鍔19外の円柱部側面は電気絶縁膜(図示せず)を被覆させており、円柱部側面と移動拘束板20、移動拘束板21が接触しても電気的に非導通である。
【0034】
逆に、伸縮物質デバイスに通電しセンサーホルダー13が微小移動距離δLzだけZ軸下向に移動し、磁気センサー2が微小移動距離δLz移動した状態では、センサーホルダー13の鍔19は移動拘束板21で拘束されて接触導通し、鍔19と移動拘束板20は非接触、非導通であり、計測線32とセンサーホルダー13の計測線36は非導通し、さらに移動拘束板21の測線34と計測線36は接触導通で短絡する電気信号のシグナルbを発する。この状態で、磁気センサー2はZbの位置にある。
【0035】
次に、2点間の磁束密度を計測する場合の手順について説明する。ここで、計測装置本体10を用いた磁気特性測定装置1の構成を示す図6のフローチャート図において、計測装置本体10は、磁気センサー2に電気を供給し、センサー電気信号を磁束密度に演算する給電・演算機能と、測定タイミング制御機能を有する給電・演算・制御手段41と、前記磁束密度の演算値の記録およびこれらの記録データを用いた平均磁束密度Bの演算機能、磁気勾配ΔBの演算機能、磁気力係数fmの演算機能、単位磁気力Fuの演算機能や、それぞれの演算値を例えば液晶表示画面に表示するための表示・制御機能や、前記給電・演算・制御手段41を制御するとともに計測、演算結果を記憶保存する機能等を有する演算・表示・制御手段42、前記演算・表示・制御手段42の制御により図1中の演算値表示液晶画面の平均磁束密度B用表示画面43,磁気勾配ΔB用表示画面44,磁気力係数fm用表示画面45,単位磁気力Fu用表示画面46や、警報用LED表示灯やブザーの警報器47への給電や、表示、警報、制御機能を有する測定・演算値表示警告手段48、前記各手段に給電する充電式のバッテリー等の給電機器源49、外部電源(図示せず)から前記給電機器49に給電する電源コード50で構成される。
【0036】
まず、図2の状態で、センサーホルダー13の鍔19が移動拘束板20で拘束され、この位置で磁気センサー2は図中Z軸方向での上端位置であるZaにあり、前記シグナルaの電気信号を発する。
【0037】
このシグナルaを給電・演算・制御手段41や演算・表示・制御手段42で処理して、磁気センサー2がZaにあると判断し、給電・演算・制御手段41で磁気センサー2からの磁束密度の計測データを、計測線を通じて測定値Baとして受信する。
【0038】
測定値Baとして受け入れた後は、給電・演算・制御手段41から電極板15と電極板16に給電線5および給電線30を通じ、例えば3Vの直流電圧を間接的に給電機器49から給電される。伸縮物質14の伸縮変形による図5の矢印方向に屈曲の変形で、移動リング17を拘束が無ければ例えば0.2〜数mm緩やかにZ軸方向下方に移動させ、さらに移動リング17が鍔19を押してセンサーホルダー13をZ軸方向下方に移動させ、鍔19が移動拘束板21に接触し、移動が拘束されてZbに移動する。この時、弾性体24は弾性的に圧縮された状態となる。この状態で、センサーホルダー13および磁気センサー2は所定の微小移動距離δLz例えば0.1mmだけ移動したことを担保できる。
【0039】
微小移動距離δLzを確保した時点で、シグナルbの電気信号を発する。このシグナルbを給電・演算・制御手段41や演算・表示・制御手段42で処理し磁気センサー2がZaから微小移動距離δLz離れたZbに移動したと判断し、給電・演算・制御手段41で磁気センサー2からの磁束密度の計測データを、計測線を通じて測定値Bbとして演算処理する。
【0040】
測定値Bbとして受け入れた後は、微小移動距離δLz離れたZa、Zbでの演算値の磁束密度BaおよびBbを測定値とし、両磁束密度差(Ba- Bb)をδLzで除してZa、Zbの2点間の磁気勾配ΔBab=(Ba- Bb)/δLzを演算でき、Za、Zbの平均磁束密度Bab=(Ba+ Bb)/2を演算し、磁気力係数fm=Bab×ΔBabを演算する。さらに、基準的な鉄の磁性物の体積Vを例えば1×10−6(=1cm)とし、鉄の磁化率χとして例えば0.5 ,真空透磁率μ0として例えば4π×10-7N/A2を入力して給電・演算・制御手段42に記憶させ、これらの値を用いて単位磁気力Fuを演算し、演算したこれらの磁気特性である平均磁束密度Babを平均磁束密度B用表示画面43に,磁気勾配ΔBabを磁気勾配ΔBab用表示画面44に,磁気力係数fmを磁気力係数fm用表示画面45に,単位磁気力Fuを単位磁気力Fu用表示画面46に表示する。
【0041】
さらに、予め設定された所定の単位磁気力Fu値を給電・演算・制御手段42に記憶させ、計測後演算された単位磁気力FuがFuを超えた場合、工具等の磁性体が磁気力で磁気吸引される危険リスクがあるとして、警報器47に給電し、警告音を発生させる。
【0042】
測定を終えると、給電・演算・制御手段42からの制御信号により、給電・演算・制御手段41から電極板15と電極板16への給電を止めて0Vとし、伸縮物質14が図2のように屈曲の変形が無くなり元の状態に復帰する。この際、弾性体24は元の状態に弾性力が作用し、センサーホルダー13および移動リング17をZ軸方向上方に移動し、鍔19が拘束板20に接触してその移動を拘束され、図2の状態に戻り、シグナルaの電気信号を発し、この信号で計測の終了を演算・表示・制御手段42が判定し、1回目の磁気特性の計測を終了する。
【0043】
また、1回の磁気密度測定で測定精度が不足する場合には、測定回数を複数回行えば測定精度向上が可能となり、給電・演算・制御手段42に測定回数例えば5回を記憶させ、5回の磁束密度計測を制御、実施し、平均処理された前記の磁気特性をそれぞれ演算し表示、警報を行うことができる。
【0044】
以上、本実施例によれば、例えば乾電池による直流電圧1〜5Vの低電圧の給電で前記導電性高分子製の小型、軽量な伸縮物質デバイスで磁気センサー2を一体化した素子移動保持手段のセンサーホルダー13を0.2〜数mm緩やかに振動なく移動できる機能を有し、さらに保持した前記磁気センサー2を、移動拘束手段の移動拘束板20、21で移動距離を例えば0.1mmの微小移動距離δLzを正確に担保して、この移動前後の位置Za,Zbでの磁束密度を精度よく測定できので、小型で、軽量で、安価で、高精度に磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0045】
また、給電による伸縮デバイスを伸縮させセンサーホルダー13を所定の方向に移送させる際に、センサーホルダー13移動時にセンサーホルダー13に連結した弾性体に変位を与え、無給電による伸縮物質の形状に戻し、前記伸縮デバイスおよびセンサーホルダー13を元の位置に戻す際、前記弾性体の弾性反力で前記方向と反対方向にセンサーホルダー13をZ軸上方に移動させて元に戻し、精度良く微小移動距離δLzを繰り返し担保できので、複数回の測定でも高精度に磁束密度、磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0046】
なお、本実施では弾性体24として弾性復元力を有する高分子ジェルを用いた場合について説明したが、非磁性バネや小風船等の弾性体であっても同様な効果が生じる。
【0047】
また、本実施例ではホルダー4およびアクチエータ部を手に持って測定する場合について説明したが、ホルダー4およびアクチエータ部の手振れを防止するために、固定支持の3脚(図示せず)や、これに支持されたフレキシブルアーム等(図示せず)で床や固定機器から間接的に固定支持すれば、測定時の揺れを防止でき、更に高精度な磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0048】
(実施例2)
図7は、本発明による磁気力測定装置1の実施例2のアクチエータ52の構造、構成を示す断面図であり、前記実施例1のアクチエータ3と異なる構造は、伸縮物質デバイス構造を菊座形状から、円盤形状に置き換え、前記弾性体24の位置に代替して配置した構造にある。
【0049】
図7図1の磁気センサー2およびセンサーホルダー13を微小移動距離δLzだけ移動させるアクチエータ52の拡大断面図の構成を示す。図7においてアクチエータ52は、主に伸縮物質デバイスとしての絶縁基材である保液層53を内蔵した絶縁基板の表裏両面に例えば電子導電性分子化合物を電解重合して形成し2枚の導電性分子膜54、55で前記絶縁基板をサンドイッチした構造で、前記導電性分子膜54、55に給電しこれらと一体化された正極の電極板56、負極の電極板57の組合せである伸縮物質デバイスと、電気絶縁体58と、センサーホルダー13を図中Z軸方向に移動に弾性を持たせる例えば非磁性のプラスチック製等の材質で作製されたコイルバネ59と、前記コイルバネ59の弾性をセンサーホルダー13に伝達する移動円盤60と、伸縮物質デバイス下部を一体化した下部電気絶縁容器61と、非磁性材の隔壁70と、これらの構成品等を機械的に一体化するネジ62で構成される。
【0050】
図7の状態では、正極の電極板56、負極の電極板57に孔63、64を通じて給電線65、66で例えば直流1.5Vの電圧が給電され、正極側の導電性分子膜54は伸び、負極側の導電性分子膜55は縮むことで正極側の導電性分子膜54は上部に膨らみ、その力でセンサーホルダー13を図中Z軸上方に押し上げるとともに、移動円盤60を介してコイルバネ59を縮める。ここで、センサーホルダー13と電極板56との接触箇所のセンサーホルダー13側底面に、プラスチック膜等の電気絶縁膜(図示せず)が一体化されている。センサーホルダー13の所定の微小移動距離δLzは実施例1と同様に鍔19と移動拘束板20、21、および微小移動距離δLzを担保する板厚を有した電気絶縁板22の同一構造で担保され、この状態でZa点への移動を確保する。この際、鍔19と移動拘束板20は接触、導通、計測線32とセンサーホルダー13の孔67を通る計測線68は導通し、さらに移動拘束板21の測線34(図7では図示せず)と計測線65は非接触 非導通の状態で、位置Zaへの移動を担保した電気信号のシグナルaを発する。
【0051】
次に、磁気センサー2を図7中Z軸方向の下方に移動させる場合は、電極板56と電極板57への給電を止めることで電圧を0Vとし、正極側の導電性分子膜54は縮み、負極側の導電性分子膜55は伸びることで正極側の導電性分子膜54の上部膨らみは小さくなり、コイルバネ59の伸びで押されて、センサーホルダー13は図中Z軸下方に押し下げられ、センサーホルダー13の所定の微小移動距離δLzは実施例1と同様に鍔19と移動拘束板21が接触して担保され、この状態で位置Zbへの移動を確保する。この際、鍔19と移動拘束板20は非接触、非導通、計測線32とセンサーホルダー13の計測線68は非導通し、さらに移動拘束板21の測線34(図7では図示せず)と計測線68は接触導通で短絡し、Zb点への移動を担保した電気信号シグナルbを発する。位置Za,Zbでの磁気センサー2による磁束密度の計測手順は、実施例1と同様である。
【0052】
本実施例によれば、導電性分子膜54は上部方向に膨らみ、この頂部での変形方向とセンサーホルダー13の移動方向が同一で、直接その膨張力でセンサーホルダー13を押し上げるので、押し上げ力を大きく作用させることができる。したがって、更に低い電圧でセンサーホルダー13を移動できるため、給電機器50を更に小型、軽量にすることができる。したがって、小型で軽量な磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0053】
(実施例3)
図8は、本発明による磁気力測定装置1の実施例3のアクチエータ70の構造、構成を示す断面図であり、前記実施例1および実施例2のアクチエータと異なる構造は、実施例1の弾性体24の代わりに、実施例2の伸縮物質デバイスを配置した構造にある。
【0054】
図8は磁気センサー2がZaにある状態を示しており、この時、正極の電極板56、負極の電極板57に給電線65、66で例えば直流1.5Vの電圧が給電され、正極側の導電性分子膜54は伸び、負極側の導電性分子膜54は縮むことで正極側の導電性分子膜54は上部に膨らみ、その力でセンサーホルダー13を図中Z軸上方に押し上げるとともに、センサーホルダー13の所定の微小移動距離δLzは実施例1と同様に鍔19と移動拘束板20、21、およびδLzを担保する板厚を有した電気絶縁板22の同一構造で担保され、この状態で位置Zaへの移動を確保する。この際、電極板15、電極板16間には給電されず0Vである。
【0055】
ここで、鍔19と移動拘束板20は接触、導通、計測線32とセンサーホルダー13の計測線68は導通し、さらに移動拘束板21の測線34(図7では図示せず)と計測線68は非接触、非導通の状態で、Zaへの移動終了のシグナルa電気信号を発する。
【0056】
次に、磁気センサー2を図8中Z軸方向の下方に移動させる場合は、電極板56、電極板57に給電線65、66で給電を止めることで0Vの電圧が給電され、正極側の導電性分子膜55は縮み、負極側の導電性分子膜54は伸びることで正極側の導電性分子膜54の上部膨らみはδLzより小さくなり、さらに、直流電圧3Vを電極板15と電極板16に給電し、花びら状の伸縮物質14をZ軸方向の下方向に屈曲変形させ、移動リング17およびセンサーホルダー13をZ軸方向下方に移動させ、鍔19が移動拘束板20で接触して移動が拘束され、微小移動距離δLzを担保し位置Zbへの移動を確保する。
【0057】
ここで、鍔19と移動拘束板20は非接触、非導通、計測線32とセンサーホルダー13の計測線68は非導通となり、いっぽう、移動拘束板21の測線34(図8では図示せず)と計測線68は接触 導通の状態で、Zbへ移動したシグナルbの電気信号を発する。Za,Zbでの磁気センサー2による磁束密度の計測手順は、実施例1と同様である。
【0058】
本実施例によれば、センサーホルダー13および磁気センサー2の上下移動をともに2個の伸縮物質デバイスで作動させることができるので、実施例1の弾性体の経年変化による弾性力の低下や、実施例2の経年変化によるコイルバネの復元力の低下により、微小移動距離δLzの確保が長期間担保できないリスクが無く、更に長期間、測定精度を担保できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。本実施例では、構造が異なる2個の伸縮物質デバイスを設けた場合について説明したが、実施例1での伸縮物質デバイスを2個使用し、センサーホルダー13の移動方向に同期して伸縮物質を屈曲変形させるように給電を制御しても同様な効果が生じる。
【0059】
(実施例4)
図9は、本発明による磁気力測定装置の実施例4の磁気力測定装置76の構造、構成を示す図であり、図10は、図9アクチエータ71の構造、構成を示す拡大断面図であり、前記実施例1、実施例2および実施例3のアクチエータと異なる構造は、実施例1のアクチエータ3の反対側の位置に、一体化したアクチエータ3cを配置した構造にある。
【0060】
図9は、磁気力測定装置76のホルダー4にアクチエータ71を一体化した構造を示しており、実施例1でのアクチエータ3に比べ、アクチエータ71の部のみがダブルサイズ化した構造となっている。
【0061】
図10において、アクチエータ71の第1のアクチエータ3の部品番号と第2のアクチエータ3cの部品番号では、同一数字の部品は同一質量、形状、機能を有する部品を示す。ただし、ダミー体72は磁気センサー2の質量とほぼ等しい非磁性物質で製作され、磁気特性を測定するセンサーではない。
【0062】
アクチエータ3cはアクチエータ3と同一構造のアクチエータであり、アクチエータ3を反転した姿勢で、連結体73を介して一体化されている。アクチエータ3で移動制御される磁気センサー2による位置Za,Zbでの磁束密度Ba,Bbの測定手順は、実施例1での測定手順と同一であり、伸縮物質14が屈曲変形し移動リング17を図中Z軸下方に押し下げる際、その反力として下部電気絶縁容器25を、移動リング17の移動方向と逆方向に動かす力が生じる。この力で下部電気絶縁容器25が動くとZaの絶対位置が僅かに動き、正確な磁束密度Baを測定できないリスクが生じる。
【0063】
このため、伸縮物質14が屈曲変形するのに同期して、アクチエータ3cの伸縮物質14cを給電により反対方向に屈曲変形させ移動リング17を図中Z軸上方に押し下げる制御を行えば、その反力として下部電気絶縁容器25cを、移動リング17cの移動方向と逆方向に動かす力を発生させ、連結体73を介してそれぞれの反力を相殺させることができるので、前記屈曲変形に伴う駆動振れが無くなりZaの絶対位置が担保され、δLz離れたZbの絶対位置がともに担保され、磁束密度Ba、Bbを更に精度よく測定できるので、更に高精度な磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0064】
すなわち、センサーホルダー13の鍔19は移動拘束板20で拘束されて接触導通し、円盤状鍔19と移動拘束板21は非接触、非導通しているので、計測線32とセンサーホルダー13の計測線36は導通して短絡し、さらに移動拘束板21の測線34と計測線36は非接触で被導通する電気信号のシグナルaを発する。この状態で、磁気センサー2はZaの位置にある。この際、センサーホルダー13cの鍔19cは移動拘束板20cで拘束されて接触導通し、鍔19cと移動拘束板21cは非接触、非導通しているので、計測線32cとセンサーホルダー13cの計測線36cは導通して短絡し、さらに移動拘束板21cの測線34cと計測線36cは非接触で被導通する電気信号のシグナルacを発する。
【0065】
次に、電極板15、電極板16で挟まれた伸縮物質14に、電極板15、電極板16間に、例えば直流電圧3Vを給電線5,30を通じて給電するとともに、これに同期して、電極板15c、電極板16cで挟まれた伸縮物質14cに、電極板15c、電極板16c間に、同じ直流電圧3Vを給電線5c,30cを通じて給電すると、伸縮物質14、14cはそれぞれ反対方向に屈曲変形し、移動リング17、17cおよびセンサーホルダー13、13cをそれぞれ逆方向に移動させる。給電を止めると伸縮物質14、14cは元の状態に復元し、移動リング17、17cさらにセンサーホルダー13、13cは、圧縮された弾性体24、24cの復元力で元の位置に復元する。この際も、移動リング17、17cさらにセンサーホルダー13、13cは逆方向に移動され、それぞれの反力は相殺される。
【0066】
したがって、本実施例では、第1の伸縮物質デバイスの作動時の反力を第2の伸縮物質デバイスの作動時の反力で相殺できるので、アクチエータの作動時の駆動振れを無くし、磁気センサーの絶対位置の移動誤差を小さくして、位置Za,Zbでの磁束密度を精度よく測定できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0067】
以上の実施例では、磁気センサーとしてホール素子を用いた例で説明したが、ホール素子の代わりにSQUOID素子や磁気抵抗素子、アモルファス・ワイヤを利用する磁気インピーダンス方式やコイルに磁束を通して誘導電流を検知するフラックス・ゲート方式のセンサーを用いても同様な効果がある。また、伸縮物質として電子を流すことで電気を通す電子導電性高分子製およびイオンを流すことによって電気を通すイオン導電性高分子製で説明したが、電気双極子が回転することによって電気がコンデンサーにたまることを利用して電気を流す誘電体高分子製であっても同様な効果がある。
【0068】
また、以上の実施例では、表示する磁気特性演算値毎に磁気特性演算値の表示画面を設けて説明したが、磁気特性演算値の項目数より少ない表示画面で、押しスイッチの切替で複数の項目の演算値を同一の表示画面に表示できるようにしても同様な効果が生じる。
【0069】
また、以上の実施例では、磁気センサーの計測制御、アクチエータの作動制御、計測結果の演算および表示、計測、演算結果の記憶保存を、計測装置本体10に内蔵した給電・演算・表示・制御手段および測定・演算値表示警告手段で行うことで説明したが、給電・演算・表示・制御手段および測定・演算値表示警告手段を、計測装置本体10と有線もしくは無線によるデータ伝送手段でデータ共有できる汎用の小型電子計算機や、携帯電話機や、メガネ式やゴーグル型やヘルメット型の小型電子計算表示器等に前記機能をプログラムミングして実施しても、同様な効果が生じる。
【0070】
また、以上の実施例では、磁気センサーの微小移動距離δLは、アクチエータの例えば電気絶縁板22の板厚とセンサーホルダー13の円盤状鍔19の厚さで担保したが、それぞれの板厚を調整して製作した異なった微小移動距離δLを準備し、アクチエータを取り換えて種々の磁気勾配の計測で適正に使い分けて計測することにより、超高磁気勾配の磁場空間では微小移動距離δLを狭くし、平均磁束密度をより精度よく計測することにより、磁気特性を精度よく計測でき、更に測定精度を担保できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0071】
また、以上の実施例では、アクチエータ内の可動部である伸縮デバイス、移動リングおよびセンサーホルダーの質量を、これらを内蔵保持するアクチエータの質量に比べ十分に小さくすることで、伸縮物質デバイスの作動時の反力によるアクチエータ振れの影響を小さくし、磁気センサーの絶対位置の移動誤差を小さくして、位置Za,Zbでの磁束密度を精度よく測定できるので、更に測定精度を担保できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0072】
また、以上の実施例では、アクチエータ内の磁気センサー、センサーホルダーや計測線が露出している構造で説明したが、これらの保護のため、アクチエータ外周部を非磁性の例えばプラスチック製の保護カバーで覆っても、前記効果を担保できる。
【0073】
したがって、本発明によれば、伸縮デバイスの伸縮手段を構成する導電性分子化合物製の伸縮物質を数ボルトの低電圧で振動無く伸縮でき、この伸縮デバイスの変位で磁気センサーを一体化したセンサーホルダーである素子移動保持手段を磁束密度測定空間において、2枚の移動拘束板の移動拘束手段で正確に微小移動距離δLだけ移動して、前記磁気センサーで移動前後の磁束密度を計測できるので、小型で、軽量で、安価で、高精度に磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0074】
さらに、本発明によれば、素子移動保持手段を弾性体で保持する構造により、前記弾性体の復元力により素子移動保持手段を移動した後、移動前の位置に容易に復帰できるので、更に精度よく微小移動距離δLを維持できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0075】
さらに、本発明によれば、前記弾性体の代わりに移動後の素子移動保持手段を元の位置に戻す第2の伸縮物質デバイスを備えた構造により、給電して伸縮手段を伸縮させ、第1の伸縮物質デバイスで素子移動保持手段を所定の方向に移送させた後、無給電状態の第2の伸縮物質デバイスへの給電により伸縮物質を伸縮させ、素子移動保持手段を元の位置に戻し、精度良く微小移動距離δLを担保できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0076】
さらに、本発明によれば、第1の伸縮物質デバイスと第2の伸縮物質デバイスの作動方向を逆にすることにより、第1の伸縮物質デバイスの作動時の反力を第2の伸縮物質デバイスの作動時の反力で相殺できるので、アクチエータの作動時の振れを無くし、磁気センサーの絶対位置の移動誤差を小さくして、位置Za,Zbでの磁束密度を精度よく測定できるので、さらに精度よく磁気勾配と磁気力を測定、演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【0077】
さらに、本発明によれば、磁気センサーと素子移動保持手段の移動方向は同一軸とし、Z軸方向の磁気力測定を行う場合について説明したが、前記磁気センサーと素子移動保持手段を有するアクチエータをX軸、Y軸、Z軸方向毎に同一ホルダー上に配置し、各軸毎に測定制御し、各軸方向の磁気特性から3次元の磁気特性ベクトルを演算し、それらの値を表示できるようにも構成でき、本構成により3次元の磁気力を精度よく測定演算できる磁気力計測装置を提供できる効果がある。
【符号の説明】
【0078】
1・・・磁気力測定装置、2・・・磁気センサー、3・・・アクチエータ、4・・・ホルダー、5・・・給電線、6・・・給電・計測線、7・・・端子台、8・・・結束線、10・・・計測装置本体、11・・・結束線、12・・・連結コネクター、13・・・センサーホルダー、14・・・伸縮物質、15・・・負極の電極板、16・・・正極の電極板、17・・・移動リング、18・・・電気絶縁体、19・・・鍔、20,21・・・移動拘束板、22・・・電気絶縁板、24・・・弾性体、25・・・下部電気絶縁容器、26・・・上部電気絶縁蓋、34・・・計測線、36・・・計測線、41・・・給電・演算・制御手段、42・・・演算・表示・制御手段、43・・・平均磁束密度B用表示画面、44・・・磁気勾配ΔB用表示画面、45・・・磁気力係数Fm用表示画面、46・・・単位磁気力Fu用表示画面、47・・・警報器、48・・・測定・演算値表示警告手段、53・・・保液層、54,55・・・導電性分子膜、56・・・正極の電極板、57・・・負極の電極板、58・・・電気絶縁体、59・・・コイルバネ、60・・・移動円盤、61・・・下部電気絶縁容器、68・・・計測線、71・・・アクチエータ、76・・・磁気力測定装置、3c・・・アクチエータ、13c・・・センサーホルダー、14c・・・伸縮物質、15c・・・負極の電極板、16c・・・正極の電極板、17c・・・移動リング、18c・・・電気絶縁体、19c・・・鍔、20c,21c・・・移動拘束板、22c・・・電気絶縁板、24c・・・弾性体、25c・・・下部電気絶縁容器、26c・・・上部電気絶縁蓋、34c・・・計測線、36c・・・計測線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10