特許第6574940号(P6574940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574940
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ステアリングハンドル
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20190909BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20190909BHJP
   B62D 15/02 20060101ALI20190909BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60R16/02 640K
   B62D1/06
   B62D15/02
   B60K35/00 A
   B60K35/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-189211(P2015-189211)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-65278(P2017-65278A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】豊留 慎梧
(72)【発明者】
【氏名】八幡 忠孝
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−216790(JP,A)
【文献】 特開平1−173300(JP,A)
【文献】 特開2007−283787(JP,A)
【文献】 特開2001−180407(JP,A)
【文献】 特開2001−106115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60R 11/02
16/02
16/027
B62D 1/06
15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバに把持されて車両の操舵輪の操舵を行う把持部と、
前記把持部の前記ドライバ側の面に設けられた表示部と、
駐車による停車時に、前記車両に設けられた傾斜検出手段による傾斜量が所定値以上のとき、前記操舵輪の現在の車輪操舵角の方向を前記表示部に表示すると共に、前記車両に設けられた撮影手段による画像の画像処理により前記車両の周辺の車止め手段を捜索し、前記車止め手段を認識した場合、前記車止め手段へ到達する方向を目標車輪操舵角の範囲として算出し、算出した前記目標車輪操舵角の範囲を前記表示部に表示する表示制御部とを有する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なっていない場合には、前記現在の車輪操舵角の表示部分に警告を表示する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記車止め手段を認識できない場合、前記傾斜検出手段による前記傾斜量及び傾斜方向に基づいて、前記車両の動きを制限する前記目標車輪操舵角の範囲を算出する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記傾斜量及び前記傾斜方向に加えて、前記車両に設けられた路面状況検出手段による路面状況に基づいて、前記目標車輪操舵角の範囲を算出する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なっていない場合には、前記現在の車輪操舵角の表示部分の色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを用いて警告を表示する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記把持部の操舵により前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なった場合には、重なった位置において、色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを重なっていない場合の表示から異なるものへ変更する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角から前記目標車輪操舵角への操舵方向を表示する
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のステアリングハンドルにおいて、
前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なるまで、前記現在の車輪操舵角の方向及び前記目標車輪操舵角の範囲を前記表示部に表示し続ける
ことを特徴とするステアリングハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングハンドルに関し、特に、駐車時の支援を行うことができるステアリングハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車両の各種情報をステアリングハンドルに表示させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5495355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
勾配が大きい坂道等の傾斜地に駐車を行った際、サイドブレーキの甘さや路面の悪状況などにより、下り方向に車両が動き出したり、滑り出したりする危険性がある。そうした危険性を低減する手段の一つとして、ステアリングハンドルを近傍の縁石や外側(登り方向の場合は逆側)に操舵しておくことが考えられる。
【0005】
しかしながら、上述したステアリング操舵は、駐車の向きが登りか下りかによって操舵する向きを変えなければならない。また、ドライバが操舵自体を失念する可能性がある。従って、傾斜地への駐車時に、警告を表示し、路面や周辺の状況からステアリング操舵をどの程度行えば良いかを案内して、駐車時の支援をすることが望まれている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、傾斜地への駐車時に、操舵案内をして、駐車時の支援を行うことができるステアリングハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係るステアリングハンドルは、ドライバに把持されて車両の操舵輪の操舵を行う把持部と、前記把持部の前記ドライバ側の面に設けられた表示部と、駐車による停車時に、前記車両に設けられた傾斜検出手段による傾斜量が所定値以上のとき、前記操舵輪の現在の車輪操舵角の方向を前記表示部に表示すると共に、前記車両に設けられた撮影手段による画像の画像処理により前記車両の周辺の車止め手段を捜索し、前記車止め手段を認識した場合、前記車止め手段へ到達する方向を目標車輪操舵角の範囲として算出し、算出した前記目標車輪操舵角の範囲を前記表示部に表示する表示制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係るステアリングハンドルは、上記第1の発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なっていない場合には、前記現在の車輪操舵角の表示部分に警告を表示することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係るステアリングハンドルは、上記第1又は第2の発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記車止め手段を認識できない場合、前記傾斜検出手段による前記傾斜量及び傾斜方向に基づいて、前記車両の動きを制限する前記目標車輪操舵角の範囲を算出することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係るステアリングハンドルは、上記第3の発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記傾斜量及び前記傾斜方向に加えて、前記車両に設けられた路面状況検出手段による路面状況に基づいて、前記目標車輪操舵角の範囲を算出することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係るステアリングハンドルは、上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なっていない場合には、前記現在の車輪操舵角の表示部分の色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを用いて警告を表示することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第6の発明に係るステアリングハンドルは、上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記把持部の操舵により前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なった場合には、重なった位置において、色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを重なっていない場合の表示から異なるものへ変更することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第7の発明に係るステアリングハンドルは、上記第1〜第6のいずれか1つの発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角から前記目標車輪操舵角への操舵方向を表示することを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第8の発明に係るステアリングハンドルは、上記第1〜第7のいずれか1つの発明に記載のステアリングハンドルにおいて、前記表示制御部は、前記現在の車輪操舵角が前記目標車輪操舵角の範囲と重なるまで、前記現在の車輪操舵角の方向及び前記目標車輪操舵角の範囲を前記表示部に表示し続けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、駐車による停車時において、車両の傾斜量が所定値以上のときには、即ち、勾配の大きい坂道に車両が停車しているときには、車止め手段(例えば、路肩の縁石)を捜索し、車止め手段へ到達する方向を目標車輪操舵角の範囲として算出し、操舵輪の現在の車輪操舵角の方向と目標車輪操舵角の範囲とをステアリングハンドルのグリップのドライバ側表面に表示するので、双方の変位量をドライバが視認することで駐車後の事故の危険性を低減することができる。つまり、ドライバに対して、駐車後の事故の危険性を低減するための支援を行うことができる。
【0016】
第2の発明によれば、現在の車輪操舵角が目標車輪操舵角の範囲と重なっていない場合には、現在の車輪操舵角の表示部分に警告を表示し、目標車輪操舵角へのステアリング操舵を導くので、駐車後の事故の危険性をより確実に低減することができる。つまり、ドライバに対して、駐車後の事故の危険性を低減するための支援を確実に行うことができる。
【0017】
第3の発明によれば、車止め手段を認識できない場合には、傾斜量及び傾斜方向に基づいて、車両の動きを制限する目標車輪操舵角の範囲を算出するので、操舵輪の向きにより車両の動きを制限することができ、駐車後の事故の危険性を低減することができる。
【0018】
第4の発明によれば、路面状況も加味して、目標車輪操舵角の範囲を算出するので、駐車後の事故の危険性をより低減することができる。
【0019】
第5の発明によれば、色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを用いて、現在の車輪操舵角の表示部分に警告を表示するので、現在の車輪操舵角の方向をドライバに認識させると共に、現在の車輪操舵角の方向のままでは車両が動いてしまう危険性があることをドライバに認識させることができる。
【0020】
第6の発明によれば、現在の車輪操舵角が目標車輪操舵角の範囲と重なった場合には、重なっていないときの表示から、色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを異なるものへ変更するので、ステアリング操舵の結果、現在の車輪操舵角が目標車輪操舵角の範囲と重なったことが明確になる。
【0021】
第7の発明によれば、現在の車輪操舵角から目標車輪操舵角への回転方向を表示するので、ステアリングハンドルの操舵方向が明確になり、ドライバは迷うことなく、ステアリング操舵を行うことができる。
【0022】
第8の発明によれば、現在の車輪操舵角が目標車輪操舵角の範囲と重なるまで、現在の車輪操舵角の方向及び目標車輪操舵角の範囲を表示し続けるので、ステアリングハンドルの操舵方向をドライバに導くと共に、現在の車輪操舵角及び目標車輪操舵角の変化量をステアリング操舵と共にフィードバック表示することになり、ドライバは視線を前方に保ちつつ、現在の車輪操舵角及び目標車輪操舵角の変化量を視認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るステアリングハンドルの実施形態の一例を説明するブロック図である。
図2図1に示したステアリングハンドルの構成の一例を示す概略図である。
図3】駐車時における動作を説明するフローチャートである。
図4】操舵前のステアリングハンドルの状態を示す図である。
図5図4に示した操舵前のステアリングハンドルの状態を表示するHUDを示す図である。
図6】操舵後のステアリングハンドルの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るステアリングハンドルの実施形態について、図1図6を参照して説明を行う。
【0025】
[実施例1]
図1は、本実施例のステアリングハンドルを説明するブロック図である。まず、図1を参照して、本実施例のステアリングハンドルについて説明を行う。
【0026】
本実施例のステアリングハンドルは、ドライバに把持されて車両の操舵輪の操舵を行うグリップ20(把持部)と、グリップ20のドライバ側の面の全周に設けられた表示装置21(表示部)と、後述する現ホイール角A(現在の車輪操舵角)の方向及び目標ホイール角T(目標車輪操舵角)の範囲を表示装置21に表示する制御装置30(表示制御部)とを有する。
【0027】
表示装置21としては、例えば、グリップ20の全周に設けられた環状の表示パネル(例えば、液晶パネル)やタッチパネルでも良いし、又は、グリップ20の全周に等間隔で設けられた複数の可変色発光素子(例えば、可変色のLED)でも良い。
【0028】
制御装置30には、車両の操舵輪のホイール角を検出するホイール角センサ41と、車両のステアリングハンドルのハンドル角を検出するハンドル角センサ42と、車両の車速を検出する車速センサ43と、車両の変速位置を検出する変速位置センサ44と、車両の周辺を撮影するカメラ45(路面状況検出手段、撮影手段)と、車両の駐車位置での傾斜を検出する加速度センサ46(傾斜検出手段)とが接続されている。カメラ45は、車両の前方、後方及び側方に設けた複数のカメラからなり、これらを用いて、車両の周辺を撮影するようにしている。
【0029】
なお、後述するように、カメラ45による画像の画像処理により、路面状況を認識しているが、カメラ45とは別に、車両の駐車位置の路面状況を検出するセンサを設けても良い。また、加速度センサ46に代えて、ナビゲーション・システムを用いても良く、その場合、ナビゲーション・システムが有する勾配情報を用いて、車両の駐車位置での傾斜を検出すれば良い。
【0030】
そして、制御装置30は、演算部31と処理部32とを有しており、詳細は後述するが、ホイール角センサ41、ハンドル角センサ42、車速センサ43、変速位置センサ44、カメラ45、加速度センサ46から入力された入力情報に基づいて、演算部31において、所定の演算を行い、処理部32において、所定の処理を行って、表示装置21などへ出力情報を出力している。
【0031】
制御装置30の処理部32からの出力情報は、主に、グリップ20に設けた表示装置21に出力されるが、表示装置21だけでなく、ドライバの目線上に設けたHUD(Head-UP Display)などの表示装置51に出力しても良いし、ドライバへの警告時には、警報装置52へ出力しても良い。
【0032】
なお、制御装置30は、表示装置21と共にグリップ20に設けても良いし、グリップ20以外のステアリングハンドルの部分(例えば、ステアリングパッドの部分など)に設けても良いし、ステアリングハンドル以外の部分(例えば、ステアリングハンドルを回転可能に支持する支持部分など)に設けたりしても良い。
【0033】
次に、図2を参照して、表示装置21での基本的な表示について説明する。なお、図2は、図1に示したステアリングハンドルの構成の一例を示す概略図である。
【0034】
制御装置30は、ホイール角センサ41からの入力情報に基づいて、演算部31において、車両の操舵輪の現在のホイール角θw(点線参照)を演算し、処理部32において、演算したホイール角θwに対応する現ホイール角Aの出力情報を表示装置21に出力する。そして、表示装置21は、図2に示すように、処理部32からの出力情報に基づいて、表示装置21上に現ホイール角Aの方向を表示する。現ホイール角Aとしては、後述するように、目標ホイール角Tとの差分に応じた色、形及び点灯パターンの領域を表示装置21上に表示すれば良い。
【0035】
このとき、制御装置30は、ハンドル角センサ42からの入力情報に基づいて、演算部31において、車両のステアリングハンドルの現在のハンドル角を演算し、処理部32においては、演算したハンドル角を考慮して、現ホイール角Aの出力情報を補正しており、現ホイール角Aの方向を表示装置21上の正しい位置に表示するようにしている。
【0036】
これは、ステアリングハンドルのハンドル角の変化量と操舵輪のホイール角の変化量とが同じではなく(1対1に対応していない)、現ホイール角Aを表示装置21上の同じ位置に表示したままにしていると、現ホイール角Aが本来表示すべき位置からずれてしまうからである。そのため、演算したハンドル角を考慮して、現ホイール角Aの方向を表示装置21上の正しい位置に表示するようにしている。このハンドル角を考慮した表示は、後述する目標ホイール角Tでも同様である。
【0037】
以上が表示装置21での基本的な表示の説明であるが、駐車時においては、図4に示すように、更に、目標ホイール角Tの範囲も表示するようにしている。
【0038】
そこで、図3図6を参照して、駐車時における表示装置21での表示について説明する。なお、図3は、駐車時における動作を説明するフローチャートである。また、図4は、操舵前のステアリングハンドルの状態を示す図であり、図5は、図4に示した操舵前のステアリングハンドルの状態を表示するHUDを示す図である。また、図6は、操舵後のステアリングハンドルの状態を示す図である。ここでは、駐車位置が下り坂の場合を例に取って以降の説明を行う。また、道路は、左側通行とする。
【0039】
(ステップS1)
制御装置30は、自車両が駐車状態にあるかどうかを確認する。例えば、車速センサ43を用いて、自車両が停止している状態か確認すると共に、変速位置センサ44を用いて、ギアがPレンジに入っているか確認している。つまり、自車両が停止した状態であり、かつ、ドライバがギアをPレンジに入れたとき、以下の支援が始まる。なお、例えば、サイドブレーキを引いた後に、自車両の車速及びギアを確認し、上記条件を満たしているときに、支援を始めるようにしても良い。
【0040】
(ステップS2)
次に、制御装置30は、加速度センサ46を用いて、自車両の駐車位置での傾斜量及び傾斜方向を検出する。ここでは、駐車位置が下り坂であるので、傾斜方向は前方となる。
【0041】
(ステップS3)
加速度センサ46で検出した傾斜量が所定値(例えば、10°)以上の場合には、ステップS4へ進み、所定値より小さい場合には、以降の動作を行わず、終了する。つまり、自車両の駐車位置の勾配が大きい場合には、ステップS4へ進み、勾配が大きくない場合には、以降の動作を行わず、終了する。
【0042】
(ステップS4〜S5)
次に、制御装置30は、カメラ45を用いて、自車両の駐車位置の周辺を撮影し、自車両の駐車位置の周辺状況をカメラ45で撮影した画像の画像処理により認識する。ここでは、まず、カメラ45で撮影した画像の画像処理により、自車両の駐車位置の周辺に、車止め手段として機能する路肩の縁石がないか捜索し、縁石を認識した場合は、認識した縁石へ到達する方向を目標ホイール角Tの範囲として算出する。一例として、最短距離で縁石へ到達する方向を目標ホイール角Tとして算出すれば良い。なお、縁石に代えて、その同等物、例えば、ガードレールや塀などでも良い。
【0043】
縁石を認識できない場合は、制御装置30は、加速度センサ46により検出した傾斜量及び傾斜方向に基づいて、自車両の動きを制限する方向を目標ホイール角Tの範囲として算出する。このとき、目標ホイール角Tは、傾斜量が大きくなるに従って大きくなるように算出されている。
【0044】
加えて、カメラ45で撮影した画像の画像処理により、自車両の駐車位置の周辺の路面状況を認識し、認識した路面状況を考慮して、目標ホイール角Tを算出しても良い。これは、路面の摩擦係数を推測するためである。例えば、路面の摩擦係数に直接的な影響がある路面状況として、路面が乾いているかどうか、路面が舗装されているかどうかなどを認識すれば良い。このとき、目標ホイール角Tは、路面の摩擦係数が小さくなるに従って大きくなるように算出されている。
【0045】
ここでは、目標ホイール角Tは、傾斜方向が前方であるので、即ち、下り坂であるので、ステアリングハンドルを左側(路肩側)に切るように算出される。
【0046】
(ステップS6)
上述した現ホイール角Aが算出した目標ホイール角Tの範囲と重なっているか確認し、重なっていない場合はステップS7へ、重なっている場合はステップS8へ進む。
【0047】
(ステップS7)
現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なっていない場合は、図4に示すように、現ホイール角Aの方向と共に目標ホイール角Tの範囲を表示装置21上に表示する。このとき、上述したように、ステアリングハンドルのハンドル角を考慮して、表示装置21上の正しい位置に表示するようにしている。
【0048】
目標ホイール角Tの表示部分としては、例えば、表示装置21上に青色点灯の領域を帯状に表示する。一方、現ホイール角Aの表示部分としては、目標ホイール角Tとの差分に応じた色、形及び点灯パターンを用いて表示するようにしており、例えば、目標ホイール角Tとの差分が比較的大きくなる場合(例えば、差分が10°以上の場合)には、赤色点滅の領域を帯状に表示するようにし、目標ホイール角Tとの差分が比較的小さくなる場合(例えば、差分が10°未満の場合)には、黄色点滅の領域を帯状に表示するようにしている。
【0049】
また、目標ホイール角Tとの差分が比較的大きい場合には、警報装置52を用い、音や音声などによりドライバに警告するようにしても良い。
【0050】
加えて、現ホイール角Aと目標ホイール角Tとの間に、現ホイール角Aから目標ホイール角Tへの操舵方向(回転方向)を示す矢印Sを表示しており、これにより、ステアリングハンドルの操舵方向が明確になり、ドライバは迷うことなく、ステアリング操舵を行うことができる。なお、矢印Sに代えて、現ホイール角Aから目標ホイール角Tへ向かう点滅表示を行うことで、ステアリングハンドルの操舵方向を表示しても良い。
【0051】
このように、ステアリングハンドルのグリップ20のドライバ側表面において、表示装置21が自車両の操舵輪の現ホイール角Aと目標ホイール角Tと矢印Sとを表示しているので、ドライバは、これらの表示に従って、ステアリング操舵を行えば良い。
【0052】
なお、現ホイール角A、目標ホイール角T及び矢印Sは、表示装置21と共に、図5に示すように、HUDなどの表示装置51に表示しても良い。
【0053】
(ステップS8)
現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なった場合、例えば、表示装置21の表示に従うステアリング操舵により、現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なった場合には、図6に示すように、現ホイール角Aと目標ホイール角Tとが重なった位置を、例えば、緑色点灯の領域に変化させる。これにより、ドライバは、現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なったことが視認できる。なお、このときには、矢印Sは消去されることになる。そして、現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なれば、一連の動作は終了し、駐車後の事故の危険性を低減する状態で自車両を駐車させることになる。
【0054】
もし、ドライバがステアリングハンドルを回しすぎたり、誤って、逆方向に回したりした場合には、上述したように、現ホイール角Aを黄色や赤色の点滅の領域に変化させるようにして、ドライバに警告するようにすれば良い。このとき、警報装置52を用い、音や音声などによりドライバに警告するようにしても良い。
【0055】
以上説明したように、駐車による停車時において、表示装置21が、現ホイール角A、目標ホイール角T及び矢印Sを表示しているので、ステアリング操舵に伴う現ホイール角A及び目標ホイール角Tの変化量をフィードバックして表示することになり、ドライバは視線を前方に保ちつつ、現ホイール角A及び目標ホイール角Tの変化量を視認できるようになる。そして、ドライバは、表示装置21上の現ホイール角A、目標ホイール角T及び矢印Sの表示に従って、現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なるようにステアリング操舵をすることにより、駐車後の事故の危険性を低減する状態で自車両を駐車させることができる。つまり、表示装置21上の現ホイール角A、目標ホイール角T及び矢印Sの表示により、ドライバに対して、駐車時の支援をすることになる。
【0056】
なお、表示装置21は、現ホイール角Aと目標ホイール角Tとを、色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを互いに異なるもので表示するようにしており、これにより、互いの識別が明確になり、それらの視認性を向上させることができる。
【0057】
加えて、表示装置21は、現ホイール角Aと目標ホイール角Tとが重なった場合、重なった位置において、色、形及び点灯パターンのうちの少なくとも1つを、重なっていない場合の表示から異なるものへ変更するようにしており、これにより、現ホイール角Aが目標ホイール角Tの範囲と重なったことが明確になり、その視認性を向上させることができる。
【0058】
上述した色としては、例えば、青、赤、黄色、緑などが用いられ、形としては、例えば、帯状、線状などが用いられ、点灯パターンとしては、点灯、点滅などが用いられる。
【0059】
また、ここでは、表示装置21の上部に、現ホイール角A、目標ホイール角T及び矢印Sを表示し、ドライバが視線を前方に保ちつつ情報を取得することが可能となっているが、上部だけに限らず、表示装置21の下部にも、現ホイール角A、目標ホイール角T及び矢印Sを表示しても良い。
【0060】
また、ここでは、下り坂の場合を例にとって説明を行ったが、登り坂の場合は、ステアリングハンドルの操舵方向が右側(中心線側)になり、それ以外は、上述した手順と同様の手順により、駐車時の支援を行うことができる。また、ここでは、道路が左側通行の場合を例にとって説明を行ったが、道路が右側通行の場合、下り坂の場合は、ステアリングハンドルの操舵方向が右側(路肩側)になり、登り坂の場合は、ステアリングハンドルの操舵方向が左側(中心線側)になり、それ以外は、上述した手順と同様の手順により、駐車時の支援を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ステアリングハンドルとして好適なものである。
【符号の説明】
【0062】
20 グリップ
21 表示装置
30 制御装置
41 ホイール角センサ
42 ハンドル角センサ
45 カメラ
46 加速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6