(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主剤と硬化剤とから成る2液性の接着剤を注入するための接着剤注入器に、着脱自在に装着される接着剤カートリッジと、離脱状態の前記接着剤カートリッジに接合可能に構成された補助カートリッジと、を備えたカートリッジシステムであって、
前記接着剤カートリッジは、前記接着剤注入器に装着され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の主体容器を備え、
前記補助カートリッジは、前記主体容器に接合可能に構成され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の補助容器を備え、
前記主体容器には、非伸長状態において前記主剤および前記硬化剤のいずれか一方である第1液が充填され、前記補助容器には、伸長状態において前記主剤および前記硬化剤の他方である第2液が充填され、
前記主体容器と前記補助容器とは、相互に接合されることで前記第1液と前記第2液とを混合可能に構成されていることを特徴とするカートリッジシステム。
前記主体容器と前記補助容器との間に介設され、前記主体容器と前記補助容器とを接合した状態で前記主体容器内に挿入される挿入ノズルを、更に備えたことを特徴とする請求項8に記載のカートリッジシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来のフィルムパックでは、主剤が充填される大断面積側部と硬化剤が充填される小断面積側部とが2室構造を為すものの、内容物である主剤および硬化剤は、フィルムパックから押し出された後、ミキシングノズルで混合される。
このような構造では、主剤と硬化剤との混合比は維持できるものの、ミキシングノズル内の主剤と硬化剤とは、接触して流れるだけで完全且つ適切に混ざり合うことがない。したがって、吐出された接着剤等は、所定の接着強度を発揮できなくなる問題があった。
【0005】
本発明は、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤とを、完全且つ適切に混合させることが可能な接着剤カートリッジ、カートリッジシステム、接着剤カートリッジの使用方法およびカートリッジシステムの使用方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接着剤カートリッジは、主剤と硬化剤とから成る2液性の接着剤を注入するための接着剤注入器に、着脱自在に装着される接着剤カートリッジであって、主剤および硬化剤のいずれか一方である第1液が充填され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の第1容器と、主剤および硬化剤の他方である第2液が充填され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の第2容器と、を備え、
第1容器と第2容器とは、別々の容器として構成され、第1容器および第2容器の少なくとも一方には、非伸長状態で第1液および/または第2液が充填され、第1容器と第2容器とは、軸方向に接合した連結状態
において伸縮されることで接着剤注入器に装着されると共に、連結状態で第1液と第2液とを混合可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1液が充填された第1容器と第2液が充填された第2容器と、を軸方向に接合し連結状態とすることで、第1液と第2液とを混合することが可能となる。このため、伸縮自在な第1容器と伸縮自在な第2容器とを、接合(連結状態)した後、第1容器および第2容器を適宜、伸縮させることにより、第1液と第2液とを混合させることができる。すなわち、連結状態の第1容器と第2容器とを十分に伸縮させることで、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤と、を完全且つ適切に混合させることが可能となる。
なお、第1容器の尾端部に第2容器の先端部を接合し(連結状態)、この状態で第1容器の先端部を接着剤注入器に装着(接合)する構成であってもよいし、第2容器の尾端部に第1容器の先端部を接合し(連結状態)、この状態で第2容器の先端部を接着剤注入器に装着(接合)する構成であってもよい。また、2液を混合する作業は、第1容器および第2容器を、接着剤注入器に装着する前に行うことが好ましいが、接着剤注入器に装着してから行ってもよい。また、接着剤注入器、第1容器および第2容器の相互間の接合は、ネジ接合であってもよいし、差込み接合(ロック機構付き)であってもよい。
【0008】
この場合、第1容器と第2容器とは、同一形態に形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1容器および第2容器の製造コストを低減することができる。また、前後を問わず、接着剤注入器に装着することができる。
なお、接着剤注入器、第1容器および第2容器の相互間の接合は、凹凸の共通の接合形態とすることが好ましい。したがって、第1容器および第2容器は、いずれも一方の端部に凹の接合口(接合受け口)を設け、他方の端部に凸の接合口を設けることが好ましい。
【0010】
また、第1液と第2液とを混合した接着剤の色は、第1液の色および第2液の色と異なるものであり、第1容器および第2容器は、いずれも透光性を有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1容器および第2容器を伸縮させて第1液と第2液を混合する際に、これら容器を介して、混色の状態を視認しながら作業を行うことができる。したがって、混色が完璧に行われることで、主剤と硬化剤との完全且つ適切な混合を図ることができる。
【0012】
本発明の他の接着剤カートリッジは、主剤と硬化剤とから成る2液性の接着剤を注入するための接着剤注入器に、着脱自在に装着される接着剤カートリッジであって、接着剤注入器に装着され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の接着剤容器を備え、接着剤容器は、伸長状態において主剤および硬化剤のいずれか一方である第1液が充填された第1充填部と、非伸長状態において主剤および硬化剤の他方である第2液が充填された第2充填部と、軸方向に直交する方向において第1充填部と第2充填部とを仕切る隔膜部と、隔膜部を破膜して第1液と第2液とを混合可能とする破膜部と、を有し、破膜部は、第2充填部内において一方の端部を隔膜部に固着され、他方の端部を隔膜部とは逆側の第2充填部の端部に固着され、接着剤容器を伸長させることで、隔膜部を破膜可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1充填部と第2充填部とを仕切る隔膜部を、破膜部により破膜することで、第1充填部に充填された第1液と第2充填部に充填された第2液とを混合することが可能となる。このため、破膜後、伸縮自在に形成された接着剤容器を適宜、伸縮させることにより、第1液と第2液とを混合させることができる。すなわち、第1充填部と第2充填部とを有する接着剤容器を十分に伸縮させることで、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤と、を完全且つ適切に混合させることが可能となる。
なお、隔膜部および破膜部は、フィルム素材で形成することが好ましい。また、2液を混合する作業は、接着剤容器を接着剤注入器に装着する前に行うことが好ましいが、接着剤注入器に装着してから行ってもよい。
【0014】
この場合、隔膜部とは逆側の第2充填部の端部には、第2液を充填するための充填口が設けられ、破膜部の他方の端部は、充填口の内側に固着されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、接着剤容器を伸長させたときに、その力を、破膜部を介して隔膜部に適切に伝達することができ、隔膜部を確実に破膜することができる。
なお、充填口は、接着剤容器を接着剤注入器に装着するための接合口を兼ねるものであってもよい。
【0016】
また、隔膜部には、破膜部が固着された部位を基点とする「V」字状の破膜線が形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、破膜線に沿って隔膜部を簡単且つ確実に破膜することができ、破膜面積を大きくすることができる。このため、第1液と第2液との混合を促進することができる。
なお、言うまでもないが、隔膜部の破膜強度は破膜線により決定され、破膜線は、接着剤容器を手持し或いは軽く握った程度では、破損しないように調整されていることが好ましい。
【0018】
また、第1液と第2液とを混合した接着剤の色は、第1液の色および第2液の色と異なるものであり、接着剤容器は、透光性を有することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、接着剤容器を伸縮させて第1液と第2液を混合する際に、この容器を介して、混色の状態を視認しながら作業を行うことができる。したがって、混色が完璧に行われることで、主剤と硬化剤との完全且つ適切な混合を図ることができる。
【0020】
本発明のカートリッジシステムは、主剤と硬化剤とから成る2液性の接着剤を注入するための接着剤注入器に、着脱自在に装着される接着剤カートリッジと、接着剤カートリッジに接合可能に構成された補助カートリッジと、を備えたカートリッジシステムであって、接着剤カートリッジは、接着剤注入器に装着され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の主体容器を備え、補助カートリッジは、主体容器に接合可能に構成され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の補助容器を備え、主体容器には、非伸長状態において主剤および硬化剤のいずれか一方である第1液が充填され、補助容器には、伸長状態において主剤および硬化剤の他方である第2液が充填され、主体容器と補助容器とは、相互に接合されることで第1液と第2液とを混合可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第1液が充填された主体容器に第2液が充填された補助容器を接合することで、第1液と第2液とを混合することが可能となる。このため、伸縮自在に形成された補助容器から、伸縮自在に形成された主体容器に第2液を送り込み、適宜、伸縮させることにより、第1液と第2液とを混合させることができる。すなわち、第2液が送り込まれた主体容器を十分に伸縮させることで、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤と、を完全且つ適切に混合させることが可能となる。
なお、第1液と第2液との混合は、補助容器から主体容器に第2液を送り込んだ後、補助容器を外して主体容器内で行うことが好ましいが、補助容器と主体容器とを接合したまま行ってもよい。但し、混合の後、主体容器を接着剤注入器に装着するときには、補助容器は外される。したがって、主体容器の接合口は、接着剤注入器に装着するための接合口と、補助容器を接合するための接合口とを、兼用することが好ましい。
【0022】
この場合、主体容器と補助容器との間に介設され、主体容器と補助容器とを接合した状態で主体容器内に挿入される挿入ノズルを、更に備えることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、挿入ノズルを介して、補助容器から主体容器に第2液を送り込んだ時点で、第1液に第2液を混ぜ込むことができ、第1液と第2液との混合を促進することができる。
【0024】
また、第1液と第2液とを混合した接着剤の色は、第1液の色および第2液の色と異なるものであり、主体容器は、透光性を有することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、主体容器を伸縮させて第1液と第2液を混合する際に、この容器を介して、混色の状態を視認しながら作業を行うことができる。したがって、混色が完璧に行われることで、主剤と硬化剤との完全且つ適切な混合を図ることができる。
【0026】
本発明の接着剤カートリッジの使用方法は、上記した接着剤カートリッジの使用方法であって、第1液が充填された第1容器と、第2液が充填された第2容器と、を軸方向に接合して連結状態とする接合工程と、連結状態の第1容器および第2容器を揉むようにして伸縮させ、第1液と第2液とを混合する混合工程と、連結状態の第1容器および第2容器を、接着剤注入器に装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、連結状態の第1容器と第2容器とを十分に伸縮させることで、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤と、を完全且つ適切に混合させることができる。したがって、接着剤カートリッジ内の主剤と硬化剤とは、適切に混合されており、この接着剤カートリッジを装着した接着剤注入器から吐出された接着剤は、所望の接着強度を発揮する。
【0028】
本発明の接着剤カートリッジの使用方法は、上記した接着剤カートリッジの使用方法であって、第1充填部に第1液が充填されると共に第2充填部に第2液が充填された接着剤容器の隔膜部を、接着剤容器を伸長させることで破膜部を介して破膜する破膜工程と、隔膜部が破膜された接着剤容器を揉むようにして伸縮させ、第1液と第2液とを混合する混合工程と、接着剤容器を接着剤注入器に装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、隔膜部を破膜した後、第1充填部と第2充填部とを有する接着剤容器を十分に伸縮させることで、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤と、を完全且つ適切に混合させることができる。したがって、接着剤カートリッジ内の主剤と硬化剤とは、適切に混合されており、この接着剤カートリッジを装着した接着剤注入器から吐出された接着剤は、所望の接着強度を発揮する。
【0030】
本発明のカートリッジシステムの使用方法は、上記したカートリッジシステムの使用方法であって、第1液が充填された主体容器と、第2液が充填された補助容器と、を接合する接合工程と、接合した状態で、補助容器の第2液を主体容器に注入する注入工程と、主体容器に対する補助容器の接合を解く分離工程と、第2液が注入された主体容器を揉むようにして伸縮させて第1液と前記第2液とを混合する混合工程と、主体容器を接着剤注入器に装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、第2液が送り込まれた主体容器を十分に伸縮させることで、2液性の接着剤を構成する主剤と硬化剤と、を完全且つ適切に混合させることができる。したがって、接着剤カートリッジ内の主剤と硬化剤とは、適切に混合されており、この接着剤カートリッジを装着した接着剤注入器から吐出された接着剤は、所望の接着強度を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態にかかる接着剤カートリッジおよびその使用方法について説明すると共に、カートリッジシステムおよびその使用方法について説明する。建物の外壁や内壁等の壁体に生じた「ひび割れ」や「浮き」等に対し、接着剤を充填して補修する工法(例えば樹脂注入工法やピンニング工法)では、接着剤として、主剤と硬化剤とから成る2液性の接着剤が用いられる。2液性の接着剤は、接着剤カートリッジの形態で接着剤注入器に装着され、接着剤注入器を介して、壁体の要補修箇所に注入される。以下、先に接着剤注入器について説明し、その後、接着剤カートリッジおよびカートリッジシステムについて説明する。
【0034】
[接着剤注入器]
図1の構造図に示すように、接着剤注入器1は、ポンプ機能を有する注入器本体2と、注入器本体2の先端部に装着された注入ノズル3とから成り、注入器本体2には、接着剤カートリッジ10が着脱自在に装着されている。接着剤カートリッジ10内の接着剤Rは、注入器本体2をポンピングすることにより、注入器本体2から注入ノズル3に送り込まれ、注入ノズル3から吐出される。
【0035】
接着剤カートリッジ10には、主剤R1と硬化剤R2とから成る2液性の接着剤Rが充填されている。接着剤Rには、例えばエポキシ樹脂接着剤が用いられ、接着剤カートリッジ10内の接着剤Rは、接着剤カートリッジ10の注入器本体2への装着に際し、その主剤R1と硬化剤R2とが撹拌・混合される。なお、2液性の接着剤Rは、エポキシ樹脂の他、シリコン系、ポリウレタン系、変成シリコン系等の樹脂であってもよい。
【0036】
注入ノズル3は、先端側に注入対象物に応じたノズル部(図示省略)を有し、基端側で管用テーパーネジ3a(仮想線で図示)を介して、注入器本体2に着脱可能に連結されている。注入対象物別の工法としては、例えばコンクリート打放し仕上げ、モルタル塗り仕上げ、タイル張り仕上げ等における、ひび割れ改修工法、欠損部改修工法、浮き改修工法(ピンニング工法、充填工法)、あと施工アンカー工法等がある。注入ノズル3は、これらの工法別に複数種のものが用意されている一方、注入器本体2は、これら工法に共通して用いられる。
【0037】
注入器本体2は、手動式のものであり、接着剤カートリッジ10を収容するケーシング部11と、ケーシング部11が着脱自在に装着されるポンプ部12と、ポンプ部12を作動させるための操作レバー13と、備えている。なお、注入器本体2は、モーター等によりポンピングを行う自動式のものであってもよい。
【0038】
ポンプ部12は、吸込口16および吐出口17を含むシリンダー15と、シリンダー15に対し往復動するプランジャー18と、吐出口17に組み込んだ逆止弁(図示省略)と、を有している。操作レバー13は、先端側でシリンダー15に回動自在に支持されると共に、プランジャー18に連結されており、操作レバー13を手動で押し引き(ポンピング)することで、プランジャー18が往復動してポンプ作用を奏する。
【0039】
具体的には、プランジャー18が復動すると、接着剤カートリッジ10内の接着剤Rが、吸込口16を介してシリンダー15に流入する(吸込)。続いて、プランジャー18が往動すると、吸込口16が閉じ、その後、シリンダー15内の接着剤Rが吐出口17から流出する(吐出)。これを繰り返すことで、接着剤カートリッジ10内の接着剤Rが、ポンプ部12から吐出され、注入ノズル3に送り込まれる。
【0040】
ケーシング部11は、前側の太径筒部22と後側の細径筒部23とから成る筒体21と、筒体21内に組み込まれ、接着剤カートリッジ10を加圧する加圧機構部24と、を有している。太径筒部22の前端は開放されており、これに形成したリング状雄ネジ22aにより、ケーシング部11がポンプ部12にネジ接合されている。
【0041】
加圧機構部24は、太径筒部22の後端部から細径筒部23に亘って内蔵されており、細径筒部23から突出したハンドル26と、ハンドル26から延びるロッド27と、ロッド27の先端に取り付けたわん型パッキン28と、わん型パッキン28を前方に付勢する圧縮バネ29と、を有している。圧縮バネ29に抗してハンドル26を後方に引くと、わん型パッキン28が後退し、続いてハンドル26を離すと、圧縮バネ29によりわん型パッキン28が前進する。
【0042】
細径筒部23には、軸方向に延びるストレート開口31と、ストレート開口31の後端に直角に連なるクランク開口32とが形成されており、このストレート開口31およびクランク開口32から、ハンドル26が操作可能に突出している。ストレート開口31に臨むハンドル26を、圧縮バネ29に抗して後方に引き回動させてクランク開口32に掛止めすることにより、わん型パッキン28が最後端位置に移動する。この状態でケーシング部11をポンプ部12から外すことで、接着剤カートリッジ10の着脱が可能となる。
【0043】
接着剤カートリッジ10を装着した状態で、ケーシング部11をポンプ部12に装着し、続いてハンドル26をクランク開口32からストレート開口31に移動させると、圧縮バネ29によりわん型パッキン28を介して、接着剤カートリッジ10に圧力が加えられた状態となる。なお、ポンピングにより、接着剤カートリッジ10内の接着剤Rが消費されてゆくと、その消費量分、圧縮バネ29によりわん型パッキン28が徐々に前進する。
【0044】
ポンプ部12には、シリンダー15の背面側(ケーシング部11側)に筒体接合部34が設けられている。筒体接合部34は、ケーシング部11(太径筒部22)の蓋体を兼ねるものであり、円形の蓋板部35と、蓋板部35の縁端から突出するリング状接合部36と、蓋板部35の中心部から突出するカートリッジ接合部37とを有し、これらは一体に形成されている。リング状接合部36には、上記の太径筒部22のリング状雄ネジ22aに螺合するリング状雌ネジ36aが形成されている。これにより、ケーシング部11は、ポンプ部12に相互に着脱自在に装着される。
【0045】
カートリッジ接合部37の内周面には、接着剤カートリッジ10が螺合する本体雌ネジ部38が形成され、且つカートリッジ接合部37の内部は、シリンダー15の吸込口16に連通している。カートリッジ接合部37に接着剤カートリッジ10を接合すると、吸込口16を介して、接着剤カートリッジ10とシリンダー15とが連通する。
【0046】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に接着剤カートリッジ10の構造図である。同図に示すように、接着剤カートリッジ10は、第1カートリッジ41と第2カートリッジ42とを備えている。第1カートリッジ41は、主剤R1(第1液)と、主剤R1が充填された樹脂製の第1容器41Aとにより構成されている。同様に、第2カートリッジ42は、硬化剤R2(第2液)と、硬化剤R2が充填された樹脂製の第2容器42Aとにより構成されている。
【0047】
第1容器41Aは、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の第1容器本体44と、第1容器本体44の先端部に取り付けられた第1先端キャップ45と、第1容器本体44の尾端部に取り付けられた第1尾端キャップ46と、を有している。同様に、第2容器42Aは、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状且つ有底の第2容器本体47と、第2容器本体47の先端部に取り付けられた第2先端キャップ48と、を有している。
【0048】
第1容器本体44の先端部には、外周面に雄ネジを有する第1先端接合口51が形成され、これに対応して第1先端キャップ45の内周面には雌ネジが形成されている。すなわち、第1容器本体44の第1先端接合口51と第1先端キャップ45とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。同様に、第1容器本体44の尾端部には、内周面に雌ネジを有する第1尾端接合口52が形成され、これに対応して第1尾端キャップ46の外周面には雄ネジが形成されている。すなわち、第1容器本体44の第1尾端接合口52と第1尾端キャップ46とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。
【0049】
また、第2容器本体47の先端部には、外周面に雄ネジを有する第2先端接合口53が形成され、これに対応して第2先端キャップ48の内周面には雌ネジが形成されている。すなわち、第2容器本体47の第2先端接合口53と第2先端キャップ48とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。
【0050】
第1先端接合口51の雄ネジ、第1尾端キャップ46の雄ネジおよび第2先端接合口53の雄ネジは、同一のネジで構成されている。これに対応して、第1先端キャップ45の雌ネジ、第1尾端接合口52の雌ネジおよび第2先端キャップ48の雌ネジ、更には上記のカートリッジ接合部37の本体雌ネジ部38も、同一のネジで構成されている。
【0051】
したがって、第1尾端キャップ46および第2先端キャップ48を外し、第1尾端接合口52と第2先端接合口53とを接合することで、第1容器41Aと第2容器42Aとは連結される。詳細は後述するが、第1容器41Aと第2容器42Aとを連結した状態で、第1先端キャップ45を外し、第1先端接合口51をカートリッジ接合部37に接合することで、第1容器41Aおよび第2容器42A(接着剤カートリッジ10)が注入器本体2に装着される。
【0052】
本実施形態では、主剤R1が第1容器41Aに充填され、第1カートリッジ41(主剤カートリッジ)として提供され、同様に、硬化剤R2が第2容器42Aに充填され、第2カートリッジ42(硬化剤カートリッジ)として提供される。また、第1容器41Aと第2容器42Aとは、略同一の内容積を有し、いずれも透光性を有する(実施形態のものは、透明)な樹脂で構成されている。
【0053】
一方、接着剤Rは、主剤R1と硬化剤R2とが2:1の体積割合で混合されるタイプのものが用いられている。このため、主剤R1は、伸長状態とした第1容器41Aに充填され、硬化剤R2は、主剤R1の半分の容量となるように、非伸長状態とした第2容器42Aに充填されている。また、主剤R1は白色を、硬化剤R2はオレンジ色を呈している。このため、主剤R1と硬化剤R2とを混合すると、接着剤Rはベージュ色となる。
【0054】
[変形例]
ここで、
図3を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。
図3(a)は、上記した各接合部分の変形例であり、この変形例では、ネジ接合で構成された各接合部分を、これに代えて差込み接合としている。
図3(b)は、第2容器42A(第2カートリッジ42)の変形例であり、この変形例では、第2容器42Aが第1容器41Aと同一の形態を有している。
【0055】
図3(a)は、各接合部分の例として、カートリッジ接合部37と第1容器41Aの第1先端接合口51の接合形態を表している。第1先端接合口51の外周面には、円形の一対の接合突起55が設けられている。一対の接合突起55は、第1先端接合口51の外周面において、180°点対称位置に配設されている。これに対応して、カートリッジ接合部37の内周面には、「L」字状に延びる一対の係合溝56が設けられている。一対の係合溝56は、カートリッジ接合部37の内周面において、180°点対称位置に配設されている。
【0056】
各係合溝56の軸方向溝部56aに、各接合突起55を位置合わせし、第1先端接合口51をカートリッジ接合部37に差込んでゆく。続いて、第1先端接合口51をひねり(回転)、各接合突起55を各係合溝56の周方向溝部56bに係合させる。周方向溝部56bは、周方向に対しわずかに傾いており、第1先端接合口51を回転させ、各接合突起55が周方向溝部56bの端に達する過程で、第1先端接合口51はわずかに前進する。これにより、カートリッジ接合部37と第1先端接合口51とが、液密に接合される。なお、差込み接合は、上記の接合形態の他、いわゆるワンタッチの接合形態であってもよい。
【0057】
図3(b)は、第1容器41Aと同一形態とした第2容器42Aを表している。この第2容器42Aは、第2容器本体47と、第2容器本体47に取り付けられた第2先端キャップ48とを有する他、これに加えて第2容器本体47の尾端部に取り付けられた第2尾端キャップ58、を有している。また、第2容器本体47には、第2先端接合口53に加えて、第2尾端接合口59が形成されている。この場合、第2先端キャップ48は、第1先端キャップ45と同一の形態を有し、更に第2尾端キャップ58は、第1尾端キャップ46と同一の形態を有している。
【0058】
すなわち、第2容器42Aは、第1容器41Aと同一の形態を有しており、硬化剤は、主剤の半分の容量となるように、非伸長状態とした第2容器42Aに充填されている。このように、第1容器41Aと第2容器42Aとを同一の形態とすることで、第1容器41Aおよび第2容器42Aを低コストで製造することができる。なお、この場合には、第2容器42Aの尾端部に第1容器41Aの先端部を接合し(連結状態)、この状態で第2容器42Aの先端部を接着剤注入器1に装着(接合)するようにしてもよい。
【0059】
次に、
図4を参照して、第1実施形態の接着剤カートリッジ10の使用方法について説明する。上述のように、主剤R1は第1容器41Aに充填され第1カートリッジ41として提供され、硬化剤R2は第2容器42Aに充填され第2カートリッジ42として提供される。
【0060】
接着剤カートリッジ10の使用方法は、主剤R1が充填された第1容器41Aと、硬化剤R2が充填された第2容器42Aと、を軸方向に接合して連結状態とする接合工程(
図4(a)参照)と、接合工程の後、第1容器41Aおよび第2容器42Aを揉むようにして伸縮させ、主剤R1と硬化剤R2とを混合する混合工程(
図4(b)参照)と、混合工程の後、連結状態の第1容器41Aおよび第2容器42Aを、接着剤注入器1に装着する装着工程(
図4(c)参照)と、を備えている。
【0061】
接合工程では、第1容器41A(第1カートリッジ41)の第1尾端キャップ46、および第2容器42A(第2カートリッジ42)の第2先端キャップ48を外し、第1尾端接合口52に第2先端接合口53を接合する(
図4(a)参照)。すなわち、第1容器41Aと第2容器42Aとを連結状態とする。その際、第1容器41Aを軽く握って、主剤R1の液位が第1尾端接合口52の縁に達するようにすると共に、第2容器42Aを軽く握って、硬化剤R2の液位が第2先端接合口53の縁に達するようにしてから、両者の接合を行う。このようにして、第1容器41Aと第2容器42Aとを接合したときに、極力エアーが混入しないようにする。
【0062】
混合工程では、一方の手で第1容器41Aを持つと共に、他方の手で第2容器42Aを持ち、第1容器41Aと第2容器42Aとを交互に強く握る(揉む)ようにする(
図4(b)参照)。これにより、第1容器41Aと第2容器42Aとは交互に伸縮し、主剤R1と硬化剤R2とが第1容器41Aと第2容器42Aとの間で行き来する。主剤R1と硬化剤R2とを、第1容器41Aと第2容器42Aとの間で行き来させると、主剤R1と硬化剤R2との撹拌・混合が進み、やがて接着剤Rがベージュ色になってゆく。そして、第1容器41Aおよび第2容器42Aの内部で、接着剤Rがムラなくベージュ色になったとこで、主剤R1と硬化剤R2との混合を終了する。すなわち、この時点で、接着剤Rを充填した接着剤カートリッジ10が成立する。
【0063】
装着工程では、第1容器41Aと第2容器42Aとを連結状態としたまま、第1容器41Aの第1先端キャップ45を外し、第1先端接合口51をカートリッジ接合部37に接合する(
図4(c)参照)。この場合も、第1容器41Aまたは第2容器42Aを軽く握って、接着剤Rの液位が第1先端接合口51の縁に達するようにしてから、接着剤カートリッジ10のカートリッジ接合部37への接合を行う。
【0064】
以上のように、第1実施形態によれば、主剤R1が充填された第1容器41Aと硬化剤R2が充填された第2容器42Aと、を軸方向に接合し連結状態とすることで、主剤R1と硬化剤R2とを混合することが可能となる。このため、第1容器41Aと第2容器42Aとを接合(連結状態)した後、第1容器41Aおよび第2容器42Aを、複数回に亘って伸縮(揉む)させることで、主剤R1と硬化剤R2とを完全且つ適切に混合させることができる。したがって、主剤R1と硬化剤R2とを混合させた接着剤カートリッジ10を接着剤注入器1に装着すれば、接着剤注入器1から吐出された接着剤Rは、所望の接着強度を発揮することとなる。
【0065】
なお、2液を混合する作業(混合工程)は、上述のように、第1容器41Aおよび第2容器42Aを、接着剤注入器1(注入器本体2)に装着する前に行うことが好ましいが、接着剤注入器1に装着してから行ってもよい。
【0066】
[第2実施形態]
次に、
図5を参照して、第2実施形態の接着剤カートリッジ10Aについて説明する。
図5(a)に示すように、この接着剤カートリッジ10Aは、注入器本体2に装着される樹脂製の接着剤容器61を備えている。接着剤容器61は、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の容器本体63と、容器本体63の先端部に取り付けた先端キャップ64と、容器本体63の尾端部に溶着した尾端プレート65と、容器本体63の内部を軸方向に直交する方向において仕切る隔膜部66と、隔膜部66を破膜するための破膜部67と、を有している。
【0067】
すなわち、接着剤容器61は、隔膜部66で仕切られた、先端キャップ64付きの第1充填部61Aと、尾端プレート65付きの第2充填部61Bと、を有している。第1充填部61Aは、伸長状態となっており、内部には主剤R1(第1液)が充填されている。一方、第2充填部61Bは、非伸長状態となっており、内部には硬化剤R2(第2液)が充填されている。また、接着剤容器61は、透光性を有する(実施形態のものは、透明)な樹脂で構成されている。そして、この場合も、接着剤Rは、主剤R1と硬化剤R2とが2:1の体積割合で混合されるタイプのものが用いられている。
【0068】
容器本体63の先端部には、外周面に雄ネジを有する先端接合口71が形成され、これに対応して先端キャップ64の内周面には雌ネジが形成されている。すなわち、容器本体63の先端接合口71と先端キャップ64とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。言うまでもないが、主剤R1は、この先端接合口71から充填される。また、先端キャップ64の外周面64aは、容器本体63側に向かって先細りのテーパー形状に形成されている(後述する伸長時の滑止め形状)。
【0069】
容器本体63の尾端部には、尾端プレート65が溶着され、尾端プレート65の内側には、破膜部67の一端が溶着されている(詳細は後述する)。また、尾端プレート65には、硬化剤R2を第2充填部61Bに充填するための小径の注入口65aが形成され、注入口65aには、封止キャップ72が溶着されている。注入口65aは、硬化剤R2が充填された後、封止キャップ72により封止される。
【0070】
隔膜部66は、薄手の樹脂フィルム等で形成され、周縁部を容器本体63の内周面に溶着されている。同様に、破膜部67は、薄手の樹脂フィルム等で帯状に形成され、一端を隔膜部66の周縁部寄りの位置に溶着(固着)され、他端を尾端プレート65の内側中心部寄りの位置に溶着(固着)されている。
【0071】
図5(b)に示すように、隔膜部66には、破膜部67が溶着された部位を基点とする「V」字状の破膜線74が形成されている。また、隔膜部66には、破膜線74から分岐するように、一対の補助破膜線75が形成されている。先端キャップ64と尾端プレート65とを持って容器本体63を伸長させると、破膜部67が強く引かれ、隔膜部66が破膜線74および補助破膜線75に倣って破膜される。これにより、第1充填部61A内の主剤R1と第2充填部61B内の硬化剤R2とが、混合可能となる。
【0072】
[変形例]
図6は、第2実施形態の変形例を表している。この変形例では、容器本体63の尾端部に、尾端プレート65に代えて、尾端キャップ77が取り付けられている。すなわち、容器本体63の尾端部には、外周面に雄ネジを有する尾端接合口78が形成され、これに対応して尾端キャップ77の内周面には雌ネジが形成されている。すなわち、容器本体63の尾端接合口78と尾端キャップ77とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。言うまでもないが、硬化剤R2は、この尾端接合口78から充填される。また、尾端キャップ77の外周面は、先端キャップ64と同様に、テーパー形状に形成されている。
【0073】
そして、この場合の破膜部67の他端は、この尾端接合口78(充填口)の内側に溶着(固着)されている。この場合も、先端キャップ64と尾端キャップ77とを持って容器本体63を伸長させると、破膜部67が強く引かれ、隔膜部66が破膜線74および補助破膜線75に倣って破膜される。これにより、第1充填部61A内の主剤R1と第2充填部61B内の硬化剤R2とが、混合可能となる。また、この接着剤カートリッジ10Aでは、前後を問わず、注入器本体2に装着することができる。
【0074】
なお、破膜部67を、第1充填部61A側に配設するようにしてもよい。かかる場合には、破膜部67の他端を先端接合口71(充填口)の内側に溶着(固着)するようにする。また、この場合には、主剤R1が充填された第1充填部61Aを非伸長状態とし、硬化剤R2が充填された第2充填部61Bを伸長状態とする。
【0075】
次に、
図7を参照して、第2実施形態の接着剤カートリッジ10Aの使用方法について説明する。上述のように、この接着剤カートリッジ10Aでは、主剤R1が第1充填部61Aに充填され、硬化剤R2が第2充填部61Bに充填されて提供される。
【0076】
接着剤カートリッジ10Aの使用方法は、第1充填部61Aに主剤R1が充填されると共に第2充填部61Bに硬化剤R2が充填された接着剤容器61の隔膜部66を、接着剤容器61を伸長させることで破膜部67を介して破膜する破膜工程(
図7(a)参照)と、破膜工程の後、接着剤容器61を揉むようにして伸縮させ、主剤R1と硬化剤R2とを混合する混合工程(
図7(b)参照)と、混合工程の後、接着剤容器61を接着剤注入器1に装着する装着工程(
図7(c)参照)と、を備えている。
【0077】
破膜工程では、先ず先端キャップ64と尾端プレート65(変形例では、尾端キャップ77)とを持って容器本体63を伸長させる(
図7(a)参照)。容器本体63を伸長させると、破膜部67が強く引かれ、隔膜部66が破膜線74および補助破膜線75に倣って破膜される。これにより、第1充填部61Aと第2充填部61Bとが連通し、第1充填部61Aの主剤R1と第2充填部61Bの硬化剤R2とが、混合可能となる。
【0078】
混合工程では、容器本体63(接着剤容器61)を握り、これを揉むようにして内部の主剤R1と硬化剤R2とを撹拌・混合する(
図7(b)参照)。主剤R1と硬化剤R2との撹拌・混合が進み、やがて接着剤Rがベージュ色になってゆく。そして、接着剤容器61の内部で、接着剤Rがムラなくベージュ色になったとこで、主剤R1と硬化剤R2との混合を終了する。すなわち、この時点で、接着剤Rを充填した接着剤カートリッジ10Aが成立する。
【0079】
装着工程では、接着剤容器61の先端キャップ64を外し、先端接合口71をカートリッジ接合部37に接合する(
図7(c)参照)。この場合、接着剤容器61を軽く握って、接着剤Rの液位が先端接合口71の縁に達するようにしてから、接着剤容器61(接着剤カートリッジ10A)のカートリッジ接合部37への接合を行う。
【0080】
以上のように、第2実施形態によれば、第1充填部61Aと第2充填部61Bとを仕切る隔膜部66を、破膜部67により破膜することで、第1充填部61Aに充填された主剤R1と第2充填部61Bに充填された硬化剤R2とを混合することが可能となる。このため、隔膜部66を破膜した後、接着剤容器61を繰り返し伸縮させることにより、主剤R1と硬化剤R2とを完全且つ適切に混合させることができる。したがって、主剤R1と硬化剤R2とを混合させた接着剤カートリッジ10Aを接着剤注入器1に装着すれば、接着剤注入器1から吐出された接着剤Rは、所望の接着強度を発揮することとなる。
【0081】
なお、2液を混合する作業(混合工程)は、上述のように、接着剤容器61を接着剤注入器1(注入器本体2)に装着する前に行うことが好ましいが、接着剤注入器1に装着してから行ってもよい。また、第2実施形態における各接合部分を、第1実施形態の変形例のように差込み接合とすることも可能である。
【0082】
[第3実施形態]
次に、
図8を参照して、第3実施形態となるカートリッジシステム80について説明する。
このカートリッジシステム80は、注入器本体2に装着される接着剤カートリッジ10Bと、接着剤カートリッジ10Bに接合可能に構成された補助カートリッジ81と、この接合の際に、接着剤カートリッジ10Bと補助カートリッジ81との間に介設される挿入ノズル82と、を備えている。
【0083】
接着剤カートリッジ10Bは、主剤R1(第1液)と、主剤R1が充填された樹脂製の主体容器83とにより構成されている。同様に、補助カートリッジ81は、硬化剤R2(第2液)と、硬化剤R2が充填された樹脂製の補助容器84とにより構成されている。挿入ノズル82は、主体容器83と補助容器84との間に介在され、これも樹脂で形成されている。
【0084】
主体容器83は、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状且つ有底の主容器本体86と、主容器本体86の先端部に取り付けられた主キャップ87と、を有している。同様に、補助容器84は、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状且つ有底の補助容器本体88と、補助容器本体88の先端部に取り付けられた補助キャップ89と、を有している。また、挿入ノズル82は、主体容器83と補助容器84との間に挟み込まれる介設接合部91と、介設接合部91から延びるノズル部92とを有し、これらは一体に形成されている。
【0085】
主容器本体86の先端部には、外周面に雄ネジを有する主接合口94が形成され、これに対応して主キャップ87の内周面には雌ネジが形成されている。すなわち、主容器本体86の主接合口94と主キャップ87とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。同様に、補助容器本体88の先端部には、外周面に雄ネジを有する補助接合口95が形成され、これに対応して補助キャップ89の内周面には雌ネジが形成されている。すなわち、補助容器本体88の補助接合口95と補助キャップ89とは、ネジ接合により開閉自在に接合されている。
【0086】
挿入ノズル82の介設接合部91は、接合部本体101と、接合部本体101からノズル部92側に延びる第1接合部102と、接合部本体101からノズル部92と逆側に延びる第2接合部103と、を有している。第1接合部102の内周面には雌ネジが形成され、この雌ネジは、主キャップ87の雌ネジと同一の形態を有している。このため、第1接合部102には、主容器本体86が接合可能となっている。同様に、第2接合部103の内周面には雌ネジが形成され、この雌ネジは、補助キャップ89の雌ネジと同一の形態を有している。このため、第2接合部103には、補助容器本体88が接合可能となっている。すなわち、主キャップ87の雌ネジと補助キャップ89の雌ネジとは、同一の形態を有している。
【0087】
挿入ノズル82のノズル部92は、後述するように主体容器83(主体容器本体86)の内部に挿入される部位であり、接合部本体101から長く延びている。ノズル部92の先端にはノズル口104が形成され、また周面全域には、複数の小穴105が形成されている。詳細は、後述するが、補助容器84の硬化剤R2が、このノズル口104および複数の小穴105から、主剤を充填した主体容器83に送り込まれる。
【0088】
本実施形態では、主剤R1が主体容器83に充填され、接着剤カートリッジ10B(主剤カートリッジ)として提供され、同様に、硬化剤R2が補助容器84に充填され、補助カートリッジ81(硬化剤カートリッジ)として提供される。また、主体容器83と補助容器84とは、いずれも透光性を有する(実施形態のものは、透明)な樹脂で構成されている。
【0089】
この場合も、接着剤Rは、主剤R1と硬化剤R2とが2:1の体積割合で混合されるタイプのものが用いられる。このため、主剤R1は、非伸長状態とした主体容器83に充填され、硬化剤R2は、主剤R1の半分の容量となるように、伸長状態とした補助容器84に充填されている。詳細は、後述するが、補助容器84の硬化剤R2は、主体容器83に送り込まれ(注入され)、主体容器83内で混合される。このため、主体容器83は、混合時にあっても、非伸長状態を維持する容量のものとなっている。
【0090】
次に、
図9を参照して、第3実施形態のカートリッジシステム80の使用方法について説明する。上述のように、主剤R1は主体容器83に充填され接着剤カートリッジ10Bとして提供され、硬化剤R2は補助容器84に充填され補助カートリッジ81として提供される。
【0091】
カートリッジシステム80の使用方法は、挿入ノズル82を介して、主剤R1が充填された主体容器83と硬化剤R2が充填された補助容器84と、を接合する接合工程(
図9(a)参照)と、接合工程の後、挿入ノズル82を介して、補助容器84の硬化剤R2を主体容器83に注入する注入工程(
図9(b)参照)と、注入工程の後、主体容器83に対する補助容器84および挿入ノズル82の接合を解く分離工程(
図9(c)参照)と、分離工程の後、主体容器83を揉むようにして伸縮させて主剤R1と硬化剤R2とを混合する混合工程(
図9(c)参照)と、混合工程の後、主体容器83を接着剤注入器1に装着する装着工程(
図9(d)参照)と、を備えている。
【0092】
接合工程では、先ず主体容器83(接着剤カートリッジ10B)の主キャップ87、および補助容器84(補助カートリッジ81)の補助キャップ89を外す。次に、ノズル部92を主体容器83に挿入し、挿入ノズル82の第1接合部102に主体容器83の主接合口94を接合する。また、挿入ノズル82の第2接合部103に補助容器84の補助接合口95を接合する(
図9(a)参照)。すなわち、挿入ノズル82を介して、主体容器83と補助容器84とを接合する。
【0093】
その際、主体容器83を軽く握って、主剤R1の液位が主接合口94の縁に達するようにすると共に、補助容器84を軽く握って、硬化剤R2の液位が補助接合口95の縁に達するようにしてから、挿入ノズル82への接合を行う。このようにして、主体容器83、挿入ノズル82および補助容器84を相互に接合したときに、極力エアーが混入しないようにする。
【0094】
注入工程では、補助容器84を押圧し(収縮させ)、補助容器84内の硬化剤R2を、挿入ノズル82を介して、主体容器83(内の主剤R1)に注入する(
図9(b)参照)。硬化剤R2を主体容器83に注入してゆくと、主体容器83は、伸長してゆくが、最終的に非伸長状態を維持する。
【0095】
分離工程では、このようにして、補助容器84内の硬化剤R2を、主体容器83内に注入したら(送り込んだら)、主体容器83に対し、補助容器84および挿入ノズル82の接合を解く(
図9(c)参照)。すなわち、主体容器83から補助容器84および挿入ノズル82を外し、主体容器83に主キャップ87を取り付ける。その際、主体容器83を軽く握って、接着剤R(主剤R1および硬化剤R2)の液位が主接合口94の縁に達するようにし、エアーが混入しないようにする。
【0096】
混合工程では、両手で主体容器83を持ち、主体容器83の前半部と後半部とを交互に強く握る(揉む)ようにする(
図9(c)参照)。これにより、主体容器83内の主剤R1と硬化剤R2とが撹拌・混合されてゆく。そして、主体容器83の内部で、接着剤Rがムラなくベージュ色になったとこで、主剤R1と硬化剤R2との混合を終了する。すなわち、この時点で、接着剤Rを充填した接着剤カートリッジ10Bが成立する。
【0097】
装着工程では、主体容器83の主キャップ87を外し、主接合口94をカートリッジ接合部37に接合する(
図9(d)参照)。この場合も、主体容器83を軽く握って、接着剤Rの液位が主接合口94の縁に達するようにしてから、注入器本体2のカートリッジ接合部37への接合を行う。
【0098】
以上のように、第3実施形態によれば、主剤R1が充填された主体容器83に硬化剤R2が充填された補助容器84を接合することで、主剤R1と硬化剤R2とを混合することが可能となる。このため、補助容器84から主体容器83に硬化剤R2を送り込んだ後、主体容器83を繰り返し伸縮させる(揉む)ことにより、主剤R1と硬化剤R2と、を完全且つ適切に混合させることが可能となる。したがって、主剤R1と硬化剤R2とを混合させた接着剤カートリッジ10Bを接着剤注入器1に装着すれば、接着剤注入器1から吐出された接着剤Rは、所望の接着強度を発揮することとなる。
【0099】
なお、主剤R1と硬化剤R2との混合(混合工程)は、上述のように、補助容器84から主体容器83に硬化剤R2を送り込んだ後、補助容器83および挿入ノズル82を外して主体容器83内で行うことが好ましいが、これらを接合したまま行ってもよい。この場合には、混合の後に、主体容器83を接着剤注入器1(注入器本体2)に装着するときには、補助容器84および挿入ノズル82は外される。
【0100】
また、挿入ノズル82を省略することも可能である。かかる場合には、補助容器84の補助接合口95を主体容器83の主接合口94に接合可能な雌ネジとし、補助容器84の補助キャップ89を主接合口94と同一の雄ネジとしておくようにする。この場合にあっても、主剤R1と硬化剤R2との混合(混合工程)を、補助容器84と主体容器83とを接合したまま行ってもよい。
【0101】
そして、この場合にも、第3実施形態における各接合部分を、第1実施形態の変形例のように差込み接合とすることも可能である。
【解決手段】2液性の接着剤Rを注入するための接着剤注入器1に、着脱自在に装着される接着剤カートリッジ10であって、主剤R1が充填され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の第1容器41Aと、硬化剤R2が充填され、軸方向に伸縮自在に形成された蛇腹状の第2容器42Aと、を備え、第1容器41Aには伸長状態で主剤R1が充填され、第2容器42Aには非伸長状態で硬化剤R2が充填され、第1容器41Aと第2容器42Aとは、軸方向に接合した連結状態で接着剤注入器1に装着されると共に、連結状態で主剤R1と硬化剤R2とを混合可能に構成されている。