【文献】
SHINONAGA,Togo,Cell Spreading on titanium dioxide film formed and modified with aerosol beam and femtosecond laser,Applied Surface Science,Elsevier B.V,2014年 1月 1日,volume 288,pp. 649-653,BSTRACT, 第650ページ左下欄第1行-第652ページ右欄第11行
【文献】
YOSHINARI.M,Effects of multigrooved surfaces on fibroblast behavior,Journal of Biomedical Materials Research,米国,John wiley & Sons,2003年 6月 1日,volume 65A, Issue 3,pp. 359-368,Abstract, 第359ページ左欄第48行-第367ページ左欄第44行,Fig.2-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インプラントの外表面を粗面化した場合であっても、インプラントが骨結合するまでには、数週から数か月の期間を要する。この期間にインプラントに過度な力が加わると、周囲の骨等に損傷を与えたり、骨結合が遅れたり、骨結合がされづらくなる。このため、インプラントの骨結合(硬組織への結合性)をさらに向上させる必要がある。
【0007】
インプラントは、骨のみならず、骨の周囲の粘膜組織(軟部組織)にも密着するため、軟部組織との癒着性(親和性)も重要になる。歯科用インプラントは、歯肉との癒着が低いと歯肉に炎症が発生して、歯肉(歯茎)が退縮したり、歯槽骨が減少(骨吸収:Bone resorption)したりする。このため、歯科用インプラントと歯肉の癒着性(軟部組織への癒着性)を高めて、細菌の侵入を阻止(封鎖)する必要がある。
【0008】
インプラントには、生体組織に対する活着性(硬組織への結合性、軟部組織への癒着性)を向上させて、生体組織の癒合を早めることが要請されている。
【0009】
本発明は、生体組織に対する活着性を向上できる生体組織活着面、インプラント、生体組織活着面の形成方法、インプラントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生体組織活着面の第一実施態様は、生体組織に活着する生体組織活着面であって、生体適合性材料からなり、指頭形状の微絨毛体を多数有することを特徴とする。
【0011】
本発明の生体組織活着面の第二実施態様は、第一実施態様において、前記微絨毛体は、先端径がナノメートルサイズであることを特徴とする。
【0012】
本発明の生体組織活着面の第三実施態様は、第二実施態様において、前記先端径が50nm以上、500nm未満であることを特徴とする。
【0013】
本発明の生体組織活着面の第四実施態様は、第一から第三実施態様のいずれかにおいて、三次元表面粗さSaがナノメートルサイズであることを特徴とする。
【0014】
本発明の生体組織活着面の第五実施態様は、第一から第四実施態様のいずれかにおいて、界面の展開面積比Sdrが0.1以上、2.0以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の生体組織活着面の第六実施態様は、第一から第五実施態様のいずれかにおいて、幅が1μm以上、50μm以下の第一溝を複数有することを特徴とする。
【0016】
本発明の生体組織活着面の第七実施態様は、第六実施態様において、前記第一溝は、深さが1μm以上、20μm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の生体組織活着面の第八実施態様は、第六または第七実施態様において、前記第一溝は、並列または格子状に配置されることを特徴とする。
【0018】
本発明の生体組織活着面の第九実施態様は、第一から第八実施態様のいずれかにおいて、幅が10μm以上、500μm以下の第二溝を複数有することを特徴とする。
【0019】
本発明の生体組織活着面の第十実施態様は、第九実施態様において、前記第二溝は、深さが5μm以上、500μm以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の生体組織活着面の第十一実施態様は、第九または第十実施態様において、前記第二溝は、並列または格子状に配置されることを特徴とする。
【0021】
本発明の生体組織活着面の第十二実施態様は、第一から第十一実施態様のいずれかにおいて、前記生体適合性材料は、生体適合性セラミックス材料であることを特徴とする。
【0022】
本発明の生体組織活着面の第十三実施態様は、第十二実施態様において、前記生体適合性セラミックス材料は、ジルコニアを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の生体組織活着面の第十四実施態様は、第一から第十一実施態様のいずれかにおいて、前記生体適合性材料は、生体適合性金属材料であることを特徴とする。
【0024】
本発明の生体組織活着面の第十五実施態様は、第十四実施態様において、前記生体適合性金属材料は、チタン、チタン合金またはコバルトクロム合金を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の生体組織活着面の第十六実施態様は、第一から第十一実施態様のいずれかにおいて、前記生体適合性材料は、生体適合性樹脂材料であることを特徴とする。
【0026】
本発明の生体組織活着面の第十七実施態様は、第十六実施態様において、前記生体適合性樹脂材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明のインプラントの第一実施態様は、生体組織に活着するインプラントであって、生体組織に活着する表面に、本発明の生体組織活着面の第一から第十七実施態様のいずれかを有することを特徴とする。
【0028】
本発明のインプラントの第二実施態様は、第一実施態様において、歯科用インプラントのスクリュー型のフィクスチャーであり、前記生体組織活着面は、ネジ面、カラー面、先端面のいずれか一つ以上に設けられることを特徴とする。
【0029】
本発明のインプラントの第三実施態様は、第一実施態様において、歯科用インプラントのシリンダ型のフィクスチャーであり、前記生体組織活着面は、先端面、外周面のいずれか一つ以上に設けられることを特徴とする。
【0030】
本発明のインプラントの第四実施態様は、第一実施態様において、歯科用インプラントのアバットメントであり、前記生体組織活着面は、歯肉マージン面に設けられることを特徴とする。
【0031】
本発明のインプラントの第五実施態様は、第一実施態様において、人工股関節のステムであり、前記生体組織活着面は、大腿骨に埋め込まれる部位の表面に設けられることを特徴とする。
【0032】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第一実施態様は、生体組織に活着する生体組織活着面の形成方法であって、空気中でレーザ光を照射するレーザ非熱加工を生体適合性材料の表面に施して、指頭形状の微絨毛体を多数形成することを特徴とする。
【0033】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第二実施態様は、第一実施態様において、前記レーザ光は、極短パルスレーザのレーザ光であることを特徴とする。
【0034】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第三実施態様は、第二において、前記レーザ光は、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザのレーザ光であることを特徴とする。
【0035】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第四実施態様は、第一から第三実施態様のいずれかにおいて、前記微絨毛体は、先端径がナノメートルサイズであることを特徴とする。
【0036】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第五実施態様は、第一から第四実施態様のいずれかにおいて、生体適合性セラミックス材料からなるセラミックス焼結体に対してレーザ非熱加工を施すことを特徴とする。
【0037】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第六実施態様は、第五実施態様において、前記生体適合性セラミックス材料は、ジルコニアを含むことを特徴とする。
【0038】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第七実施態様は、第一から第四実施態様のいずれかにおいて、生体適合性金属材料からなり、酸エッチングされた金属加工体に対してレーザ非熱加工を施すことを特徴とする。
【0039】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第八実施態様は、第七実施態様において、前記生体適合性金属材料は、チタン、チタン合金またはコバルトクロム合金を含むことを特徴とする。
【0040】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第九実施態様は、第一から第四実施態様のいずれかにおいて、生体適合性樹脂材料からなる樹脂成形体に対してレーザ非熱加工を施すことを特徴とする。
【0041】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第十実施態様は、第九実施態様において、前記生体適合性樹脂材料は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第十一実施態様は、第一から第十実施態様のいずれかにおいて、前記レーザ光を走査して、幅が1μm以上、50μm以下、深さが1μm以上、20μm以下の第一溝を複数形成することを特徴とする。
【0043】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第十二実施態様は、第十一実施態様において、前記レーザ光を平行な方向または交差する方向に走査して、前記第一溝同士を並列または格子状に形成することを特徴とする。
【0044】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第十三実施態様は、第一から第十二実施態様のいずれかにおいて、前記レーザ光を走査して、幅が10μm以上、500μm以下、深さが5μm以上、500μm以下の第二溝を複数形成することを特徴とする。
【0045】
本発明の生体組織活着面の形成方法の第十四実施態様は、第十三実施態様において、前記レーザ光を平行な方向または交差する方向に走査して、前記第二溝同士を並列または格子状に形成することを特徴とする。
【0046】
本発明のインプラントの製造方法の第一実施態様は、生体組織に活着するインプラントの製造方法であって、生体組織に活着する表面を形成する工程において、本発明の生体組織活着面の形成方法の第一から第十四実施態様のいずれかを含むことを特徴とする。
【0047】
本発明のインプラントの製造方法の第二実施態様は、第一実施態様において、歯科用インプラントのフィクスチャーであることを特徴とする。
【0048】
本発明のインプラントの製造方法の第三実施態様は、第一実施態様において、歯科用インプラントのアバットメントであることを特徴とする。
【0049】
本発明のインプラントの製造方法の第四実施態様は、第一実施態様において、人工股関節のステムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0050】
本発明のインプラント、インプラントの製造方法は、生体組織に対する活着性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。下記説明において示す各種寸法等は一例である。
【0053】
〔歯科用インプラント1、フィクスチャー10〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る歯科用インプラント1を示す図であって、(a)スクリュー型の歯科用インプラント1A、(b)シリンダ型の歯科用インプラント1Bである。
【0054】
歯科用インプラント1は、ジルコニア製インプラントである。歯科用インプラント1には、スクリュー型の歯科用インプラント1Aとシリンダ型の歯科用インプラント1Bがある。
歯科用インプラント1は、歯槽骨(生体組織、硬組織)Hに固定されるフィクスチャー10と、フィクスチャー10に嵌合するアバットメント20と、を備える。
アバットメント20には、人工歯冠と呼ばれるクラウン6が装着される。クラウン6よりも根端側は、歯茎(生体組織、軟部組織)Sに覆われる。
【0055】
歯科用インプラント1の長手方向(中心軸に沿う方向)を縦と言う。縦方向のうち、クラウン6側を先端側と言う。先端を第一端とも言う。縦方向のうち、フィクスチャー10側を根端側と言う。根端を第二端とも言う。
縦方向に直行する方向を横と言う。歯科用インプラント1の中心軸周りの方向を周方向と言う。
【0056】
フィクスチャー(インプラント)10は、中心穴(不図示)を有する軸状部材であり、ジルコニアを含むセラミックス(生体適合性材料、生体適合性セラミックス材料)により形成される。
フィクスチャー10には、外表面11に雄ネジ15が形成されたスクリュー型のフィクスチャー10Aと、雄ネジ15のないシリンダ型のフィクスチャー10Bがある。スクリュー型のフィクスチャー10Aとシリンダ型のフィクスチャー10Bは、雄ネジ15の有無のみが異なる。
【0057】
スクリュー型のフィクスチャー10Aは、歯槽骨Hに形成したネジ穴に螺合することにより、歯槽骨Hに固定される。
シリンダ型のフィクスチャー10Bは、歯槽骨Hに形成した円形穴に嵌合することにより、歯槽骨Hに固定される。
【0058】
フィクスチャー10の先端面13の中心には、中心穴が開口する。中心穴は、縦方向に沿って形成される。
フィクスチャー10の形状(長さ、太さ等)は、任意である。中心穴が存在しない場合であってもよい。
【0059】
〔生体組織活着面30〕
フィクスチャー10には、生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)が形成される。生体組織活着面30は、フィクスチャー10の外表面11に設けられる。
フィクスチャー10Aでは、外表面11は、先端面13、カラー面12、ネジ面(雄ネジ15)を含む。
フィクスチャー10Bでは、外表面11は、先端面13と外周面14を含む。
【0060】
生体組織活着面30は、歯槽骨Hに対する結合性、歯茎Sに対する癒着性に優れる面である。生体組織活着面30は、後述する微絨毛体41を多数有する。微絨毛体41が密集する。生体組織活着面30は、微絨毛密集面である。
生体組織活着面30は、微絨毛体41に加えて、後述する小溝43、大溝45をのいずれか一方もしくは両方を有してもよい。
【0061】
フィクスチャー10は、歯槽骨Hのみならず、歯槽骨Hの周囲の粘膜組織(軟部組織)にも密着する。先端面13が歯茎Sに密着する。このため、フィクスチャー10は、軟部組織との癒着性(親和性)も重要になる。フィクスチャー10は、歯茎Sとの癒着が低いと、歯茎Sに炎症が発生して歯茎Sが退縮したり、歯槽骨Hが減少(骨吸収:Bone resorption)したりする。したがって、フィクスチャー10と歯茎Sの癒着性(軟部組織への癒着性)を高めて、細菌の侵入を阻止(封鎖)する必要がある。
生体組織活着面30は、微絨毛体41、小溝43、大溝45により、フィクスチャー10の骨結合、歯茎癒着を向上させる。生体組織活着面30は、生体組織に対するフィクスチャー10の活着性(硬組織への結合性、軟部組織への癒着性)を向上させて、生体組織の癒合を早める。
【0062】
(生体組織活着面31)
図2および
図3は、本発明の第一実施形態に係る生体組織活着面30(生体組織活着面31)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率30倍、(b)は拡大率200倍、(c)は拡大率500倍、(d)は拡大率2000倍、(e)は拡大率5000倍、(f)は拡大率10000倍である。
【0063】
生体組織活着面31は、生体組織活着面30の一例であり、フィクスチャー10Aの外表面11に形成したものである。
生体組織活着面31は、先端が指頭形状の微絨毛体41を多数有する。多数の微絨毛体41が密集配置される。指頭形状とは、指先の様に、先端が丸い形状(半球形状)を意味する。微絨毛体41は、先端が半球形状の突起であり、尖っていない。
【0064】
微絨毛体41は、先端の外径(直径)がナノメートルサイズに形成される。ナノメートルサイズは、ナノメートルオーダー、ナノメートルスケール、ナノメートルクラスと言うこともある。英語では“order of magnitude”と言い、日本語に訳せば「等級」「階級」「規模」あるいは「桁」などと言う。
微絨毛体41の先端径は、1nm以上、1000nm未満である。微絨毛体41の先端径は、例えば50nm以上、500nm未満である。例えば100nm以上、300nm未満でもよい。
【0065】
生体組織活着面31は、三次元表面粗さSa(算術平均高さ:ISO25178)もナノメートルサイズ(1nm以上、1000nm未満)である。生体組織活着面31の三次元粗さSaは、例えば500nm以上、800nmである。
【0066】
生体組織活着面31は、界面の展開面積比Sdr(ISO25178)が0.1以上、2.0以下である。生体組織活着面31は、界面の展開面積比Sdrが例えば0.5以上、1.0以下である。
【0067】
生体組織活着面31は、大溝45を複数有する。複数の大溝45は、交差配置される。複数の大溝45が格子状に配置される。20〜30μm程度の卵円形を有する骨芽細胞を大溝45の内側に確実に定着させるためである。
大溝(第二溝)57は、幅が10μm以上、500μm以下である。大溝45は、幅が例えば20μm以上、100μm以下である。30μm以上、50μm以下でもよい。前骨芽細胞が広がり過ぎないようにするためである。
大溝45は、深さが5μm以上、500μm以下である。例えば10μm以上、100μm以下でもよい。前骨芽細胞が大溝45を乗り越えないようにするためである。
縦方向に並列する大溝45と横方向(周方向)に並列する大溝45が交差する。交差する大溝45同士は、交差角度が60°以上であればよい。
【0068】
(生体組織活着面32)
図4および
図5は、本発明の第一実施形態に係る生体組織活着面30(生体組織活着面32)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率500倍、(c)は拡大率2000倍、(d)は拡大率5000倍、(e)は拡大率10000倍、(f)は拡大率20000倍である。
【0069】
生体組織活着面32は、生体組織活着面30の一例であり、フィクスチャー10Bの外表面11に形成したものである。
生体組織活着面32は、生体組織活着面31と同一に形成される。
【0070】
(参考:小腸の絨毛、微絨毛)
図6は、小腸の表面をSEMで撮影した参考写真であって、(a)は拡大率約100倍、(b)は拡大率約5000倍、(c)は拡大率約10000倍である。
【0071】
図6(a)に示すように、小腸の内面には、多数の絨毛(villus)がある。絨毛とは、器官の表面から突出した微細な突起であり、小腸や胎盤などに存在する。
図6(b),(c)に示すように、絨毛の表面には、さらに多数の微絨毛(microvillus)が密集する。微絨毛自体を柔毛、柔突起(じゅうとっき)と呼ぶ場合もある。
絨毛および微絨毛は、先端が指頭形状の突起である。微絨毛の先端径は、1μm未満である。小腸や胎盤などは、絨毛、微絨毛によって表面積が著しく増大し、吸収や結合などが効率的、効果的に行われている。
【0072】
生体組織活着面31,32は、小腸等の内面に類似する構造を有する。大溝45が生体組織の絨毛に類似し、微絨毛体41が生体組織の微絨毛に類似する。
このため、生体組織活着面31は、生体組織(骨等の硬組織、粘膜組織等の軟部組織)との結合性や癒着性が高い。生体組織活着面31は、生体組織に密着して活着する表面として、理想に近い形状と考えられる。
【0073】
(生体組織活着面33)
図7は、本発明の第一実施形態に係る生体組織活着面30(生体組織活着面33)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率2000倍、(c)は拡大率5000倍、(d)は拡大率10000倍である。
【0074】
生体組織活着面33は、生体組織活着面30の一例であり、フィクスチャー10Bの外表面11に形成したものである。
生体組織活着面33は、生体組織活着面31,32と同様に、微絨毛体41を多数有する。生体組織活着面33の三次元粗さSaと界面の展開面積比Sdrは、生体組織活着面31,32と同一である。
生体組織活着面33は、並列配置された複数の大溝45を有する。大溝45の形状等は、上述の通りである。
【0075】
(生体組織活着面34)
図8は、本発明の第一実施形態に係る生体組織活着面30(生体組織活着面34)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率500倍(c)は拡大率10000倍である。
【0076】
生体組織活着面34は、生体組織活着面30の一例であり、フィクスチャー10Bの外表面11に形成したものである。
生体組織活着面34は、生体組織活着面31〜33と同様に、微絨毛体41を多数有する。生体組織活着面34の三次元粗さSaと界面の展開面積比Sdrは、生体組織活着面31〜33と同一である。
【0077】
生体組織活着面34は、小溝43と大溝45をそれぞれ複数有する。
複数の小溝43は、並列配置される。複数の大溝45も、並列配置される。小溝43と大溝45が格子状に交差する。小溝43と大溝45は、交差角度が60°以上であればよい。
大溝45の形状等は、上述の通りである。
小溝(第一溝)43は、幅が1μm以上、50μm以下であり、並列に配置される。小溝43は、幅が例えば1μm以上、20μmである。例えば5μm以上、10μm以下でもよい。小溝43は、深さが1μm以上、20μm以下である。例えば2μm以上、5μm以下でもよい。骨芽細胞に対して力学的な刺激(メカニカルストレス)を与えためである。
【0078】
(生体組織活着面35)
図9は、本発明の第一実施形態に係る生体組織活着面30(生体組織活着面35)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率500倍、(b)は拡大率10000倍である。
【0079】
生体組織活着面35は、生体組織活着面30の一例であり、フィクスチャー10Aの外表面11に形成したものである。
生体組織活着面35は、生体組織活着面31〜34と同様に、微絨毛体41を多数有する。生体組織活着面35の三次元粗さSaと界面の展開面積比Sdrは、生体組織活着面31〜34と同一である。
生体組織活着面35は、並列配置された複数の小溝43と、並列配置された複数の大溝45を有する。小溝43と大溝45が並列配置される。大溝45の内側に、複数の小溝43が配置(重畳)される。小溝43と大溝45は平行である。小溝43と大溝45は、交差角度が30°以下であればよい。
小溝43、大溝45の形状等は、上述の通りである。
【0080】
図19は、従来のチタン製フィクスチャーの外表面をSEM(拡大率2000倍)で撮影した参考写真であって、(a)はA社製品、(b)はB社製品、(c)はC社製品、(d)はD社製品である。
図19に示すように、従来のフィクスチャーでは、外表面が粗面化(多孔質化)されている。これらの外表面は、塩酸等によるエッジング処理やブラスト処理により粗面化される。これらの外表面は、細孔を多数有し、さらにこの細孔の周囲に先端が尖った形状の突起を多数有する。従来のフィクスチャーの外表面は、三次元粗さSaが2μm以上である。
しかし、従来のフィクスチャーの外表面のいずれにも、先端が半球形状(指頭形状)の突起(微絨毛体)は存在せず、微絨毛密集面とは言えない。
【0081】
〔アバットメント20〕
アバットメント(インプラント)20は、軸状部材であり、ジルコニアを含むセラミックスにより形成される。
アバットメント20は、本体部23とテーパー軸部25を有する。テーパー軸部25は、フィクスチャー10の中心穴に嵌め込まれ、本体部23は、フィクスチャー10の先端側から露出するように配置される。
【0082】
本体部23は、円錐台形等に形成されて、接着剤やセメント等を用いてクラウン6が装着される。本体部23のうち、クラウン6よりも根端側(クラウン6に覆われない領域)を歯肉マージン24(gingival margin)と言う。歯肉マージン24は、フィクスチャー10とクラウン6の間に露出する。
【0083】
アバットメント20には、生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)が形成される。生体組織活着面30は、アバットメント20の外表面21に設けられる。生体組織活着面30は、歯肉マージン面(歯肉マージン24)に設けられる。
【0084】
歯肉マージン24は、フィクスチャー10の先端面13と同様に、歯茎Sに密着する。このため、生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)を歯肉マージン24に設けることにより、歯茎Sが癒着しやすくなる。これにより、アバットメント20と歯茎Sの癒合が従来に比べて強固になる。
【0085】
フィクスチャー10(10A,10B)は、外表面11に、生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)を有する。これにより、前骨芽細胞や骨芽細胞の外表面11への定着(接着)を促進できる。
生体組織活着面30は、微絨毛体41を多数有するので、外表面11の表面積が増加する。血液に接触する面積が大幅に拡大して、前骨芽細胞や骨芽細胞が外表面11に侵入しやすい。特に、微絨毛体41の先端が尖らずに指頭形状であるため、前骨芽細胞や骨芽細胞が円滑に侵入できる。したがって、骨芽細胞が増殖して、強い骨結合が得られる。
【0086】
生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)は、小溝43や大溝45を多数有する。これにより、前骨芽細胞の繁殖を促進できる。
小溝43や大溝45の態様(数、形状、配置)を様々に設定できるので、前骨芽細胞に対して力学的な刺激(メカニカルストレス)を効果的に与えられる。したがって、骨芽細胞への分化が促進して、骨結合期間が短縮化される。
【0087】
特に、生体組織活着面30は、スケールサイズが異なる複数の凹凸(ups and downs)を備える。微絨毛体41がナノメートルサイズの凹凸を形成する。小溝43がシングルミクロンサイズの凹凸を形成する。大溝45がこれらよりも大きなスケールサイズの凹凸を形成する。このため、生体組織活着面30は、前骨芽細胞に対して効率的、効果的に力学的な刺激を与えることができる。したがって、フィクスチャー10と歯槽骨Hとの結合が従来に比べて強固になり、骨結合期間も短縮する。
【0088】
フィクスチャー10Bは、雄ネジ15を有しなくても、フィクスチャー10Aと同一の作用効果を発揮する。フィクスチャー10Bは、生体組織活着面30が高い骨結合性を発揮するので、歯槽骨Hに対して良好に結合できる。
【0089】
アバットメント20は、外表面21(歯肉マージン24)に、生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)を有する。生体組織活着面30は、微絨毛体41を多数有するので、歯肉との癒着性(軟部組織への癒着性)が高まり、細菌の侵入を阻止(封鎖)できる。
【0090】
歯科用インプラント1(10A,10B)は、フィクスチャー10の外表面11とアバットメント20の外表面21にそれぞれ生体組織活着面30を設けたので、人体に対する結合がより強固になる。歯科用インプラント1Aと歯科用インプラント1Bは、同一の作用効果を発揮する。
【0091】
生体組織活着面30は、外表面11,21のうち、生体組織に密着(活着)する領域に設けられる。生体組織に密着する領域であれば、1箇所であってもよいし、複数箇所であってもよい。生体組織活着面30の面積は、任意である。
生体組織活着面30は、外表面11,21のほぼ全面に設けてもよい。
生体組織活着面30は、外表面11のうち、歯槽骨Hに密着する領域(カラー面12、外周面14、雄ネジ15)の全面に亘って設けもよい。生体組織活着面30は、外表面11のうち、歯茎Sに密着する領域(先端面13)の全面に亘って設けてもよい。
生体組織活着面30は、外表面11のみ、または、外表面21のみに設けられる場合であってもよい。
【0092】
カラー面12、先端面13、外周面14、雄ネジ15において、生体組織活着面30は、表面性状(表面粗さ)がそれぞれ異なっていてもよい。カラー面12と雄ネジ15には歯槽骨Hを結合させ、先端面13には歯茎Sを癒着させるためである。
歯肉マージン24の生体組織活着面30は、先端面13の生体組織活着面30と同一の表面性状(表面粗さ)に形成してもよい。いずれも歯茎Sを癒着させるためである。
【0093】
小溝43と大溝45は、断面形状が半円弧形に形成される。断面形状は、例えば三角形(二等辺三角形)や矩形等であってもよい。
小溝43と大溝45は、それぞれ延在方向にわたって均一な幅にしてもよいし、異なる幅にしてもよい。延在方向にわたって均一な深さにしてもよいし、それぞれ異なる深さにしてもよい。
複数の小溝43、複数の大溝45は、それぞれ均一な幅にしてもよいし、それぞれ異なる幅にしてもよい。均一な深さにしてもよいし、異なる深さにしてもよい。
小溝43と大溝45の数は任意である。小溝43と大溝45は、直線に限らず、曲線であってもよい。隣接する小溝43同士、大溝45同士は、できるだけ隙間なく配置されることが好ましい。
小溝43と大溝45の延在方向は、フィクスチャー10の縦方向に対して任意の角度である。
【0094】
生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)は、外表面11,21に混在してもよい。生体組織活着面31〜35のうちのいずれか一つ以上を設ければよい。
【0095】
生体組織活着面30において、小溝43と大溝45の数、形状、配置は任意に設定できる。小溝43と大溝45は、生体組織活着面31〜35における形態以外であってもよい。
複数の大溝45を格子状に配置し、さらに複数の小溝43を格子状に配置(大溝45と小溝43が交差および重畳)してもよい。
複数の大溝45を並列に配置し、さらに複数の小溝43を格子状に配置(大溝45と小溝43が交差および重畳)してもよい。
複数の小溝43のみを格子状に配置してもよい。
生体組織活着面30は、多数の微絨毛体41のみを有し、小溝43や大溝45を有しない場合であってもよい(第三実施形態の生体組織活着面131参照)。
【0096】
〔歯科用インプラント1の製造方法、生体組織活着面30の形成方法〕
歯科用インプラント1(1A,1B)を生体適合性セラミックス材料から形成する。フィクスチャー10(10A,10B)とアバットメント20を酸化ジルコニウムを含むセラミックス材料から形成する。
【0097】
フィクスチャー10(10A,10B)の製造工程は、成形工程、焼結工程、表面加工工程を有する。表面加工工程は、生体組織活着面の形成工程であり、レーザ非熱加工工程を有する。
アバットメント20の製造工程は、フィクスチャー10の製造工程と同一であるため、説明を省略する。インプラント
【0098】
(成形工程、焼結工程)
まず、成形工程では、ジルコニア粉末を含むペレットを射出成形して、ジルコニア成形体(セラミックス成形体)を得る。
次に、焼結工程では、このジルコニア成形体に対して予備焼結処理と本焼結処理を施して、ジルコニア焼結体(セラミックス焼結体)を得る。
【0099】
(表面加工工程:レーザ非熱加工工程)
次に、表面加工工程では、ジルコニア焼結体の外表面11に対してレーザ光を照射して、外表面11に生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)を形成する。
レーザ光には、極短パルスレーザのレーザ光が用いられる。ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザのレーザ光を用いることができる。
極短パルスレーザは、パルス幅(時間幅)が数ピコ秒から数フェムト秒の非常に短いパルスのレーザである。数ピコ秒レーザは、パルス幅が1兆分の1秒のレーザである。フェムト秒レーザは、パルス幅が1000兆分の1秒のレーザである。
【0100】
ジルコニア焼結体の外表面11に対してフェムト秒レーザ等のレーザ光を照射すると、外表面11が非熱加工(レーザ非熱加工)される。
非熱加工とは、大気圧下(水分を含む空気中)でレーザ光を照射して、瞬時に溶融、蒸発、飛散させる加工である。溶融した箇所が瞬時に蒸発、飛散して除去されるため、加工部周辺への熱影響(熱損傷)が極めて少ない。非熱加工には、レーザ光の出力(ピークパワーやエネルギー密度)が大きいパルスレーザが用いられる。
外表面11をレーザ光で非熱加工すると、微絨毛体41を多数有する生体組織活着面30が形成される。レーザ光の出力等を調整することにより、微絨毛体41の数や形状(大きさ)等の形態を変更できる。
【0101】
小溝43や大溝45は、レーザ光を照射しながら走査することで外表面11に掘り込まれる。レーザ光を複数回走査することにより、小溝43や大溝45を複数形成する。
レーザ光の出力を調整することにより、レーザ光による加工幅(光径)を変更できる。レーザ光の出力(加工幅)を調整することにより、小溝43や大溝45の幅や深さを変更できる。同一箇所に対する照射回数、走査速度、レーザ光出力等に応じて、小溝43や大溝45の幅や深さを変更することもできる。
【0102】
小溝43と大溝45をそれぞれ形成する場合は、まず大溝45を形成し、次に小溝43を形成する。
小溝43同士、大溝45同士、または小溝43と大溝45を格子状に配置する場合には、レーザ光を交差(直行)する二方向に走査する。このときの走査の交差角度が、小溝43同士、大溝45同士、または小溝43と大溝45の交差角度になる。
【0103】
外表面11をレーザ光で削って大溝45や小溝43を形成すると、同時に大溝45や小溝43の内面に微絨毛体41が多数形成される。外表面11をレーザ非熱加工すると、微絨毛体41、小溝43、大溝45が同時に形成されて、生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)になる。
【0104】
表面加工工程において、カラー面12、先端面13、雄ネジ15へのレーザ非熱加工は、レーザ光の出力を異ならせてもよい。カラー面12、先端面13、雄ネジ15における生体組織活着面30の表面性状(表面粗さ)を異ならせる。カラー面12と雄ネジ15には歯槽骨Hを結合させ、先端面13には歯茎Sを癒着させるためである。
【0105】
生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)を形成した後は、洗浄や滅菌等を行う。
このようにして、フィクスチャー10が製造される。
【0106】
フィクスチャー10を本焼結処理した後に、表面加工工程(生体組織活着面の形成)を行う場合に限らない。
ジルコニア成形体を予備焼結処理した後に、ジルコニア焼結体に表面加工工程を行い、その後に本焼結処理を行ってもよい。この本焼結処理により、ジルコニア焼結体が収縮して、微絨毛体41、小溝43、大溝45も縮小する。そこで、ジルコニア焼結体の収縮を見込んで、生体組織活着面30を大きく形成しておく。これにより、本焼結処理後に形成した場合と同一形状のフィクスチャー10(生体組織活着面30)が得られる。
【0107】
小溝43と大溝45は、レーザ非熱加工により形成する場合に限らない。成形工程において、外表面11に小溝43と大溝45を成形してもよい。レーザ非熱加工に先だって外表面11をレーザ熱加工して、小溝43と大溝45を形成してもよい。
【0108】
このように、レーザ非熱加工を施すことにより、ジルコニウム製のフィクスチャー10等に対して生体組織活着面30(生体組織活着面31〜35)を形成できる。
【0109】
〔歯科用インプラント3、フィクスチャー50〕
図10は、本発明の第二実施形態に係る歯科用インプラント3を示す図であって、(a)スクリュー型の歯科用インプラント3A、(b)シリンダ型の歯科用インプラント3Bである。
第一実施形態と同一形状の部材等には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0110】
歯科用インプラント3は、金属(チタン合金)製インプラントである。歯科用インプラント3には、スクリュー型の歯科用インプラント3Aとシリンダ型の歯科用インプラント3Bがある。
歯科用インプラント3は、歯槽骨Hに固定されるフィクスチャー50と、フィクスチャー50に嵌合するアバットメント60と、を備える。
【0111】
フィクスチャー(インプラント)50は、中心穴(不図示)を有する軸状部材であり、チタン合金(生体適合性材料、生体適合性金属材料)により形成される。
フィクスチャー50は、フィクスチャー10とは、材料のみが異なる。
フィクスチャー50には、外表面51に雄ネジ15が形成されたスクリュー型のフィクスチャー50Aと、雄ネジ15のないシリンダ型のフィクスチャー50Bがある。スクリュー型のフィクスチャー50Aとシリンダ型のフィクスチャー50Bは、雄ネジ15の有無のみが異なる。
【0112】
〔生体組織活着面70〕
フィクスチャー50には、生体組織活着面70(生体組織活着面71)が形成される。生体組織活着面70は、フィクスチャー50の外表面51に設けられる。
フィクスチャー50Aでは、外表面51は、先端面13、カラー面12、ネジ面(雄ネジ15)を含む。
フィクスチャー50Bでは、外表面51は、先端面13と外周面14を含む。
【0113】
生体組織活着面70は、生体組織活着面30と同様に、歯槽骨Hに対する結合性、歯茎Sに対する癒着性に優れる面である。
生体組織活着面70は、後述する微絨毛体81を多数有する。微絨毛体81が密集する。生体組織活着面70は、生体組織活着面30と同様に、微絨毛密集面である。
生体組織活着面70は、微絨毛体81に加えて、後述する小溝83、大溝85をのいずれか一方もしくは両方を有してもよい。
生体組織活着面70は、生体組織活着面30とは、材料のみが異なる。微絨毛体81は微絨毛体41、小溝83は小溝43、大溝85は大溝45に相当する。
【0114】
(生体組織活着面71)
図11および
図12は、本発明の第二実施形態に係る生体組織活着面70(生体組織活着面71)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率500倍、(c)は拡大率2000倍、(d)は拡大率5000倍、(e)は拡大率10000倍である。
【0115】
生体組織活着面71は、生体組織活着面70の一例であり、微絨毛体81を多数有する。微絨毛体81の形状等は、微絨毛体41と同一である。
生体組織活着面71の三次元表面粗さSa、界面の展開面積比Sdrは、生体組織活着面30と同一である。
生体組織活着面71は、交差配置された複数の大溝85を有する。複数の大溝85が格子状に配置される。大溝85の数や形状等は、大溝45と同一である。生体組織活着面71は、生体組織活着面31と同様の形態を有する。
【0116】
生体組織活着面70の他の例として、生体組織活着面32〜35等と同様の形態の面を形成してもよい。小溝83の数や形状等は、小溝43と同一である。
生体組織活着面70は、多数の微絨毛体81のみを有し、小溝83や大溝85を有しない場合であってもよい(第三実施形態の生体組織活着面131参照)。
【0117】
〔アバットメント60〕
アバットメント(インプラント)80は、チタン合金により形成される。
アバットメント60には、生体組織活着面70(生体組織活着面71)が形成される。生体組織活着面70は、アバットメント60の外表面61に設けられる。生体組織活着面70は、歯肉マージン面(歯肉マージン24)に設けられる。
アバットメント60は、アバットメント20とは、材料のみが異なる。
【0118】
フィクスチャー50(50A,50B)、アバットメント60は、フィクスチャー10(10A,10B)、アバットメント20と同様の作用効果を奏する。
特に、生体組織活着面70は、生体組織活着面30と同様の作用効果を奏する。生体組織活着面70は、生体組織に対する活着性(硬組織への結合性、軟部組織への癒着性)を向上させて、生体組織の癒合を早める。
したがって、歯科用インプラント3(3A,3B)は、歯科用インプラント1(1A,1B)と同一の作用効果を発揮する。
【0119】
〔歯科用インプラント3の製造方法、生体組織活着面70の形成方法〕
歯科用インプラント3(3A,3B)を生体適合性金属材料から形成する。フィクスチャー50(50A,50B)とアバットメント60をチタン合金材料から形成する。
【0120】
フィクスチャー50(50A,50B)の製造工程は、機械加工工程、表面加工工程を有する。表面加工工程は、生体組織活着面の形成工程であり、酸エッチング工程、レーザ非熱加工工程を有する。
アバットメント60の製造工程は、フィクスチャー50の製造工程と同一であるため、説明を省略する。
【0121】
(機械加工工程)
機械加工工程では、チタン合金材料を複合旋盤等で切削加工したり、塑性加工したりして、チタン加工体(金属加工体)を形成する。
このチタン加工体の外表面51に対してブラスト処理を施す。後工程の酸エッチングの効率を上げるためである。チタン加工体に対するブラスト処理は任意である。
機械加工の後、チタン加工体を水やアルコールを用いて洗浄する。
【0122】
(表面加工工程:酸エッチング工程)
表面加工工程では、まず、チタン加工体の外表面51を酸エッチングを行う。
チタン加工体を塩酸に浸漬してエッジングする。塩酸の濃度は例えば1〜20%、液温は例えば30℃〜80℃、浸漬時間は例えば10分〜60分である。エッジングに用いる酸は、塩酸以外であってもよい。硫酸、フッ酸、硝酸等、さらにこれらの混合酸を用いることができる。
酸エッチング工程の後、チタン加工体を純水で超音波洗浄する。
【0123】
図13および
図14は、酸エッチングされたチタン加工体の外表面51をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率500倍、(c)は拡大率2000倍、(d)は拡大率5000倍、(e)は拡大率10000倍である。
【0124】
図13および
図14は、酸エッチングされたチタン加工体の外表面51をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率500倍、(c)は拡大率2000、(d)は拡大率5000倍、(e)は拡大率10000倍である。
【0125】
酸エッチングされたチタン加工体(被酸エッチング金属体)の外表面51は、細孔を多数有し、さらにこの細孔の周囲に先端が尖った形状の突起を多数有する。この外表面51は、粗面(多孔質)であり、従来のフィクスチャーも外表面と同様である(
図19参照)。
この外表面51には、まだ微絨毛体41は存在しない。
【0126】
(表面加工工程:レーザ非熱加工工程)
次に、チタン加工体の外表面51に対してレーザ光を照射して、外表面51に生体組織活着面70(生体組織活着面71)を形成する。
このレーザ非熱加工工程は、生体組織活着面30のレーザ非熱加工工程と同一である。
【0127】
酸エッチングされたチタン加工体の外表面51に対してフェムト秒レーザ等のレーザ光を照射すると、外表面51が非熱加工(レーザ非熱加工)される。外表面51をレーザ光で非熱加工すると、微絨毛体81が多数形成される。
【0128】
小溝83や大溝85は、レーザ光を照射しながら走査することで外表面51に掘り込まれる。外表面51をレーザ非熱加工すると、微絨毛体81、小溝83、大溝85が同時に形成されて、生体組織活着面70(生体組織活着面71)になる。
【0129】
生体組織活着面70(生体組織活着面71)を形成した後は、洗浄や滅菌等を行う。
このようにして、フィクスチャー50が製造される。
【0130】
小溝83と大溝85は、レーザ非熱加工により形成する場合に限らない。機械加工工程において、外表面51に小溝83と大溝85を形成してもよい。レーザ非熱加工に先だって外表面51をレーザ熱加工して、小溝83と大溝85を形成してもよい。
【0131】
このように、酸エッチングとレーザ非熱加工を施すことにより、チタン合金製のフィクスチャー50等に対して生体組織活着面70(生体組織活着面71)を形成できる。
【0132】
〔人工股関節101、ステム103〕
図15は、本発明の第三実施形態に係る人工股関節101を示す図である。
人工股関節101は、股関節が損傷を受けたときに、その機能を回復するために、股関節に置き換わる。人工股関節101は、大腿骨Jに埋め込まれる大腿骨コンポーネント102と、寛骨臼Kに埋め込まれる寛骨臼コンポーネント106から構成される。
【0133】
大腿骨コンポーネント102は、ステム103とヘッド104を備える。
ステム103は、大腿骨(生体組織、硬組織)Jに埋め込まれてヘッド104を支持する。
ヘッド104は、大腿骨Jの骨頭の役割を果たす球体形の部材であり、ジルコニア等の生体適合性セラミックス材料により形成される。
【0134】
寛骨臼コンポーネント106は、カップ107とライナー108を備える。
カップ107は、寛骨臼(生体組織、硬組織)Kに埋め込まれる椀形の部材であり、ジルコニア等の生体適合性セラミックス材料やチタン合金等の生体適合性金属材料により形成される。カップ107の外表面に、生体組織活着面30,70を形成してもよい。
ライナー108は、カップ107の内側に固定される椀形の部材であり、例えば超高分子ポリエチレン樹脂により形成される。ライナー108は、ヘッド104を摺動可能に支持して、関節面の役割を果たす。
【0135】
大腿骨コンポーネント102が延びる方向を縦方向という。縦方向のうち、ヘッド104側を先端(第一端)、ステム103側を末端(第二端)という。ステム103の幅方向を横方向という。ステム103の厚み方向を前後方向という。
【0136】
ステム(インプラント)103は、大腿骨Jに形成した窄孔Jaに挿入されて骨結合する。ステム103は、ヘッド104を支持して、荷重を大腿骨Jに伝達する。
ステム103は、生体適合性樹脂材料(生体適合性材料)により形成される。ステム103は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEKK:polyetherketoneketone)により形成される。
ステム103は、ボディ部111、レグ部112、ネック部113を有し、これらがポリエーテルエーテルケトン樹脂により一体成形される。
【0137】
ボディ部111は、縦方向に延びるブロック状の部位であり、窄孔Jaに挿入されて骨結合する。
ボディ部111は、縦方向の長さが約50mmである。ボディ部111の幅は、先端側から末端側に向けて徐々に細くなる。先端側が約33mm、末端側が約15mmである。ボディ部111の厚みは、先端側から末端側に向けてほぼ一定である。先端側が約13mm、末端側が約11mmである。
【0138】
レグ部112は、縦方向に延びる略四角柱形の部位であり、ボディ部111の末端側に配置される。レグ部112は、ボディ部111の窄孔Jaへの挿入を案内し、ステム103の埋入後の姿勢を保持する。
レグ部112は、縦方向の長さが約90mmである。レグ部112は、先端から末端に向けて徐々に細くなる。
【0139】
ネック部113は、縦方向に延びる略円柱形の部位であり、ボディ部111の先端側に配置される。ネック部113は、窄孔Jaから突出して、寛骨臼側からの荷重を導入する。
ネック部113は、長さが約22mmである。ネック部113は、先端から末端に向けて徐々に太くなる。ネック部113の先端には、ヘッド連結部が形成される。
【0140】
〔生体組織活着面130〕
ステム103には、生体組織活着面130(生体組織活着面131)が形成される。生体組織活着面130は、ステム103の外表面のうち、窄孔Jaに埋入される部位(ボディ部111、レグ部112)の外表面115に設けられる。生体組織活着面130は、少なくとも、ボディ部111の外表面115にも設けられる。
生体組織活着面130は、生体組織活着面30,70と同様に、自然骨(大腿骨J)に対する結合性に優れる面である。生体組織活着面130は、後述する微絨毛体141を多数有する。微絨毛体141が密集する。生体組織活着面130は、生体組織活着面30,70と同様に、微絨毛密集面である。
生体組織活着面130は、微絨毛体141を有し、さらに小溝や大溝のいずれか一方もしくは両方を有してもよい。
生体組織活着面130は、生体組織活着面30,70とは、材料のみが異なる。微絨毛体141は微絨毛体41,81、小溝は小溝43,83、大溝は大溝45,85に相当する。
【0141】
(生体組織活着面131)
図16および
図17は、本発明の第三実施形態に係る生体組織活着面130(生体組織活着面131)をSEMで撮影した写真であって、(a)は拡大率200倍、(b)は拡大率500倍、(c)は拡大率2000倍、(d)は拡大率5000倍、(e)は拡大率10000倍である。
【0142】
生体組織活着面131は、生体組織活着面130の一例であり、微絨毛体141を多数有する。微絨毛体141の形状等は、微絨毛体41,81と同一である。
生体組織活着面131の三次元表面粗さSa、界面の展開面積比Sdrは、生体組織活着面30,70と同一である。
【0143】
生体組織活着面130の他の例として、生体組織活着面31〜35,71等と同様の形態の面を形成してもよい。生体組織活着面130は、小溝や大溝を有してもよい。この小溝、大溝は、小溝43,83、大溝45,85に相当する。生体組織活着面130の小溝、大溝の数や形状等は、小溝43,83、大溝45,85と同一である。
【0144】
ステム103は、フィクスチャー10,50と同様の作用効果を奏する。生体組織活着面130は、生体組織活着面30,70と同様の作用効果を奏する。生体組織活着面130は、生体組織に対する活着性(硬組織への結合性)を向上させて、生体組織の癒合を早める。
特に、生体組織活着面130は、樹脂面のみでも生体組織に対する活着性を発揮できる。このため、樹脂面に金属やセラミックスのコーティングをしたり、樹脂材料に金属やセラミックスを混ぜ入れたりする必要がない。
人工股関節101は、ステム103の外表面115に生体組織活着面130を設けたので、人体に対する結合がより強固になる。
したがって、人工股関節101は、歯科用インプラント1,3と同一の作用効果を発揮する。
【0145】
〔人工股関節101の製造方法、生体組織活着面130の形成方法〕
人工股関節101を生体適合性樹脂材料から形成する。ステム103をポリエーテルエーテルケトン樹脂から形成する。
【0146】
ステム103の製造工程は、成形工程、表面加工工程を有する。表面加工工程は、生体組織活着面の形成工程であり、レーザ非熱加工工程を有する。
ヘッド104、カップ107、ライナー108の製造工程は、従来通りであるため、説明を省略する。
【0147】
(成形工程)
成形工程では、ポリエーテルエーテルケトン樹脂のペレットを射出成形して、ポリエーテルエーテルケトン成形体(樹脂成形体)を得る。
【0148】
(表面加工工程:レーザ非熱加工工程)
次に、表面加工工程では、ポリエーテルエーテルケトン成形体の外表面115に対してレーザ光を照射して、外表面115に生体組織活着面130(生体組織活着面131)を形成する。
このレーザ非熱加工工程は、生体組織活着面30,70のレーザ非熱加工工程と同一である。
【0149】
ポリエーテルエーテルケトン成形体の外表面115に対してフェムト秒レーザ等のレーザ光を照射すると、外表面115が非熱加工(レーザ非熱加工)される。外表面115をレーザ光で非熱加工すると、微絨毛体141を多数有する生体組織活着面131が形成される。
【0150】
レーザ光を照射しながら走査することで外表面115に小溝や大溝を掘り込んでもよい。外表面115をレーザ非熱加工すると、微絨毛体141、小溝、大溝が同時に形成されて、生体組織活着面130になる。
【0151】
生体組織活着面130(生体組織活着面131)を形成した後は、洗浄や滅菌等を行う。
このようにして、ステム103が製造される。
【0152】
小溝83と大溝85は、レーザ非熱加工により形成する場合に限らない。機械加工工程において、外表面51に小溝83と大溝85を形成してもよい。レーザ非熱加工に先だって外表面51をレーザ熱加工して、小溝83と大溝85を形成してもよい。
【0153】
生体組織活着面130は、ステム103の外表面のうち、大腿骨Jに密着(活着)する領域(外表面115)に設けられる。大腿骨Jに密着する面であれば、1箇所であってもよいし、複数箇所であってもよい。生体組織活着面130の面積は、任意である。
生体組織活着面130は、外表面115のほぼ全面に設けてもよい。
生体組織活着面130は、外表面115のうち、ボディ部111の外表面のみ(レグ部112の外表面を除く面)に設けもよい。
【0154】
このように、レーザ非熱加工を施すことにより、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のステム103に対して生体組織活着面130(生体組織活着面131)を形成できる。
ステム103は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂に限らず、ジルコニア等の生体適合性セラミックス材料やチタン合金等の生体適合性金属材料により形成してもよい。ステム103の外表面115に、生体組織活着面30,70を形成してもよい。
【0155】
〔動物実験〕
図18は、動物実験の結果を示す写真であって、(a)は左下顎の歯槽骨Hのレントゲン写真、(b)は右下顎の歯茎Sの写真、(c)は左下顎の歯槽骨Hのレントゲン写真、(d)は右下顎の歯茎Sの写真である。
犬の左右下顎の歯槽骨Hに、フィクスチャー10A、フィクスチャー10Bを1つずつ埋入した。埋入後4週間目に、フィクスチャー10の状態をレントゲン等で撮影した。
【0156】
動物実験の結果、歯茎S(歯肉)に炎症が発生していないことが確認できた。歯茎Sが退縮したり、歯槽骨Hが減少したりしていないことが確認できた。
フィクスチャー10(10A,10B)と歯茎Sの癒着性(軟部組織への癒着性)が高く、細菌の侵入を阻止(封鎖)することができた。
フィクスチャー(10A,10B)は、人力では歯槽骨Hから引き抜くことができない程に骨結合した。フィクスチャー(10A,10B)と歯槽骨Hの骨結合(硬組織への結合性)が高く、骨結合期間を短縮することができた。
このように、フィクスチャー10(10A,10B)は、活着性(硬組織への結合性と軟部組織への癒着性)が向上して、生体組織の癒合を高める(早める)ことができた。
【0157】
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0158】
上述した実施形態では、歯槽骨Hの埋入される歯科用インプラント1,3や大腿骨Jに埋入される人工股関節101について説明したが、これに限らない。
本発明のインプラントは、人工骨、骨補填材等であってもよい。人工骨や骨補填材は、骨折や腫瘍の切除などで生じた骨の欠損した部分又は腰椎手術で取り除いた軟骨などを補うために用いられる。
本発明のインプラントは、人工関節の部材、骨折部位の固定に使用する骨接合材料、脊椎等の固定器具(脊椎インプラントや腰椎インプラント)であってもよい。
【0159】
インプラントは、生体(体内)に埋め込まれるに限らず、体表に固定されるものであってもよい。インプラントは、人間に限らず、ペットや家畜等に適用するものであってもよい。
【0160】
生体組織活着面は、小溝や大溝に加えて、または、小溝や大溝に代えて、他の溝や畝等の凹凸を有してもよい。
【0161】
上述した実施形態では、生体適合性セラミックス材料として、ジルコニア(酸化ジルコニウム)の場合について説明したが、ジルコニアとカーボンや樹脂やガラス等を組み合わせたものであってもよい。ジルコニア(酸化ジルコニウム)は、インプラントの体積比において50%以上含まれていればよい。ジルコニア(酸化ジルコニウム)は、インプラントの体積比において90%以上含まれる。
生体適合性セラミックス材料として、アルミナ(酸化アルミニウム)や酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化シリコーン、酸化マグネシウム、酸化セリウム等を採用してもよい。
【0162】
生体適合性金属材料は、銅、チタン、チタン合金、コバルトクロム合金等であってもよい。生体適合性樹脂材料は、シリコン、ナイロン、POM、複合素材等であってもよい。