(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
コンピュータや自動車部品等の電子機器では、半導体素子や機械部品等の発熱体から生じる熱を放熱するために、ヒートシンクなどの放熱体が用いられており、熱の伝達を効率よくする目的で発熱体と放熱体の間に熱伝導性グリスを塗布することがある。
【0003】
この熱伝導性グリスは、発熱体や放熱体(典型的には金属製である)と比較すると熱伝導率が低いため、薄い方が有利である。また、発熱体と放熱体との間に熱伝導率が極めて低い空気層を入り込ませないようにするためには、低粘度で流動性の高い熱伝導性グリスの方が有利である。こうした理由から発熱体と放熱体との間隔が狭い場合には低粘度の熱伝導性グリスを用いることが知られている。例えば特開2005−330426号公報には、熱伝導性充填材の粒径が「15.0μmより大きいとシリコーングリース組成物を塗布した際に十分に薄くならず、放熱効果が小さくなる」と記載されている。
【0004】
ところが近年では、発熱する素子が多く、また発熱量の総量も増加の傾向にある。そのため、特定の電子素子というよりは、複数の電子素子、あるいは基板全体から隈なく放熱させることが望まれる。そうすると、放熱対象となる電子素子の高さも様々であり、また、斜めや横向きに配置された発熱体に放熱体を組付ける場合が生じるなど、放熱のために要求される形態が多様化してきている。
【0005】
こうした要求に対して、薄膜で使用される従来の熱伝導性グリスを、厚膜で使用すると熱伝達の効率が劣るという問題がある。その理由は、粒径の小さい熱伝導性充填材が配合された樹脂組成物は、薄膜にすることで効率よく熱を伝達できる半面、粒径の大きな熱伝導性充填材も配合された樹脂組成物と比較して熱伝導率が劣る傾向があるためである。したがって、厚膜で使用する場合には、粒径の大きな熱伝導性充填材を含む熱伝導性グリスを用いることが望まれる。
【0006】
ところが、熱伝導性グリスにおいて、粒径の大きな熱伝導性充填材を配合すると、熱伝導性充填材が沈降して、基油と分離しやすくなるという問題がある。例えば特開2012−052137号公報には、50μm以下が好ましい熱伝導性充填材について「平均粒径が大きすぎると、オイル分離が容易に進行する可能性がある。」と記載されている。また、特開2009−221311号公報には、「平均粒径が30μmを越えると、組成物の安定性が悪化し、オイル分離が起こりやすい。」と記載されている。
【0007】
こうした問題に対して、熱伝導性充填材の沈降を防ぐために、粘度やチクソ性を高めるシリカなどの添加剤を用いることが知られており、例えば特開2012−052137号公報や特開2009−221311号公報に記載されている。
【0008】
また、多糖類にも沈降防止作用があることが知られている。特開2002−226819号公報には、水性媒体中でメチルセルロースやエチルセルロースなどの非イオン性且つ水溶性のセルロースを沈降防止剤として用いる技術が公開されている。また、特許3957596号公報には、オルガノポリシロキサンに増粘剤としてメチルセルソースを添加することが記載されている。セルロースは水媒質中に溶解または分散して、水素結合による弱いネットワークを構成し“増粘”するからである。
【0009】
さらに、アマイドワックス、ポリアマイド(ポリアミド)、ウレア等も水素結合等の結合により弱いネットワークを構成し、そのネットワーク構造の形成から沈降防止作用があることが知られている。
【0010】
しかし、上記シリカ等の添加剤を添加すると、熱伝導性グリスの粘度が上昇してしまうという問題がある。このことは換言すれば、所定の粘度の熱伝導性グリスを作ろうとしたときに、熱伝導性充填材の充填量を少なくする必要があるということであり、さらに言えば、熱伝導性充填材の充填量が少なくなるため、熱伝導性が低下するということである。
【0011】
したがって、こうした従来の技術によれば、熱伝導性充填材の沈降防止を図ろうとすれば組成物を増粘させるため、熱伝導性グリスをはじめ、粘度を高めたくない用途には実現できないと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、熱伝導性充填材の沈降を抑制しつつ、粘度上昇を抑えることで熱伝導性充填材を高充填できる熱伝導性シリコーン組成物を提供することを目的とする。また本発明は、非溶解性機能付与充填材の沈降を抑制しつつ粘度上昇を抑えたシリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明のシリコーン組成物は以下のとおり構成される。
【0015】
即ち、液状シリコーンと、非溶解性機能付与充填材と、非液状の増粘抑制沈降防止材と、を含むシリコーン組成物である。
【0016】
非溶解性機能付与充填材を含むことで組成物に所定の機能を付すことができ、非液状の増粘抑制沈降防止材を含むことで液状シリコーンとの混合系で粘度上昇を抑えつつ非溶解性機能付与充填材の沈降を防止することができる。
【0017】
液状シリコーン100重量部に対して非溶解性機能付与充填材300〜2500重量部、増粘抑制沈降防止材2.0〜50重量部を含有し、23℃での粘度が30〜700Pa・Sであるシリコーン組成物である。
【0018】
液状シリコーン100重量部に対して非溶解性機能付与充填材300〜2500重量部、増粘抑制沈降防止材2.0〜50重量部を含有させることで、23℃での粘度が30〜700Pa・Sであり、塗工などに好適なシリコーン組成物とすることができる。また、シリコーン組成物中での非溶解性機能付与充填材と増粘抑制沈降防止材の占める体積割合が好適で増粘、沈降せず、非溶解性機能付与充填材の添加を通じて求める所望の機能を得ることができる。
【0019】
増粘抑制沈降防止材が非増粘沈降防止材であるものとすることができる。
【0020】
増粘抑制沈降防止材を非増粘沈降防止材としたため、非液状物を添加しているにもかかわらず増粘を生じさせず、塗布等の作業に優れたシリコーン組成物とすることができる。
【0021】
非溶解性機能付与充填材は、その非溶解性機能付与充填材全体の体積に対して粒径が50μmを超える粒子を25〜60体積%含有するシリコーン組成物とすることができる。
【0022】
非溶解性機能付与充填材は、その非溶解性機能付与充填材全体の体積に対して粒径が50μmを超える粒子を25〜60体積%含有するため、所望の機能、例えば熱伝導率を高めることができる。また、増粘抑制沈降防止材を含むため、比較的沈降しやすい50μmを超える粒径の非溶解性機能付与充填材を含んでいても粘度上昇させずにその沈降を抑制することができる。
【0023】
増粘抑制沈降防止材または非増粘沈降防止材を多糖類とすることができる。
【0024】
増粘抑制沈降防止材または非増粘沈降防止材を多糖類としたため、粘度上昇が抑制され、非溶解性機能付与充填材の沈降を抑制したシリコーン組成物とすることができる。即ち、液状シリコーンと非溶解性機能付与充填材とを含むシリコーン組成物にセルロース等の多糖類を添加するとシリコーン組成物は増粘しないことを見出した。さらに本組成物は増粘しないにもかかわらず、非溶解性機能付与充填材の沈降を効果的に防止できるというこれまでの常識からは導き出されない結果を見出した。
【0025】
増粘抑制沈降防止材や非増粘沈降防止材または多糖類としてセルロース系化合物を用いることができる。セルロース系化合物とすれば耐湿性を向上させることができる。
【0026】
非溶解性機能付与充填材は熱伝導性充填材とすることができる。非溶解性機能付与充填材を熱伝導性充填材としたため、熱伝導性を有するシリコーン組成物とすることができる。
【0027】
そして、熱伝導性充填材には、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物、グラファイト、炭素繊維から選択される少なくとも一または複数を用いることができる。
【0028】
熱伝導性充填材として金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物、グラファイト、炭素繊維を選択したため、液状シリコーンと多糖類等の非液状の増粘抑制沈降防止材との混合系において粘度の上昇を抑えた熱伝導性シリコーン組成物とすることができる。
【0029】
また、非溶解性機能付与充填材に金属、金属酸化物、炭素化合物から選択される少なくとも一または複数を用いることができる。
【0030】
非溶解性機能付与充填材に金属、金属酸化物、炭素化合物を選択したため、液状シリコーンと多糖類等の非液状の増粘抑制沈降防止材との混合系において粘度の上昇を抑えた導電性シリコーン組成物とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシリコーン組成物によれば、熱伝導性充填材等の非溶解性機能付与充填材の沈降を抑制しつつ粘度上昇を抑えることができ非溶解性機能付与充填材を高充填したシリコーン組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のシリコーン組成物について説明する。このシリコーン組成物は、液状シリコーンと、非溶解性機能付与充填材と、非液状の増粘抑制沈降防止材と、を含む。即ち、ベースとなる液状シリコーンに対し、その用途に応じて熱伝導性や導電性、強度付与等といった種々の機能を付与するための充填材を含有させた系において、非液状の増粘抑制沈降防止材をさらに含有させることによって、粘度の上昇を抑えたシリコーン組成物である。以下、実施形態に即してさらに詳しく説明するが、各実施形態において同一の材質、組成、製法、作用等については重複説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、非溶解性機能付与充填材として熱伝導性を付与する熱伝導性充填材を用いた形態について説明する。熱伝導性充填材を液状シリコーンに含有させた熱伝導性シリコーン組成物は、基板に載置した複数の発熱体と、この発熱体と対向して設けられる放熱体との間に介在させて、発熱体からの熱を放熱体に伝える役割を担う材料として用いることができる。
【0035】
熱伝導性シリコーン組成物は、液状シリコーンと、熱伝導性充填材(非溶解性機能付与充填材)と、非液状の増粘抑制沈降防止材と、を含有する。
【0036】
液状シリコーンには、硬化性を有しない液状シリコーンと硬化可能な液状シリコーンの双方を含む。硬化性を有しない液状シリコーンを用いた場合には、熱伝導性シリコーン組成物は熱伝導性グリス等になり、硬化可能な液状シリコーンを用いた場合には、ポッティング材料や熱伝導性シート等になる。
【0037】
液状シリコーンの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンや、アルケニル基やエポキシ基、アクリロイル基、アミノ基等の反応性基で置換された変性シリコーン等を挙げることができる。
【0038】
硬化可能な液状シリコーンについては、硬化可能な付加反応型の液状シリコーンであることが好ましい。付加反応型の液状シリコーンは、硬化収縮が小さいためである。より詳しくは、発熱体と放熱体とで挟持した状態で熱伝導性シリコーン組成物を硬化したときに、硬化収縮が大きいと発熱体または放熱体との間に隙間が生じることがあるが、付加反応型の液状シリコーンであれば、硬化収縮が小さいため隙間が生じる不都合が生じにくいためである。付加反応型の液状シリコーンとしては、アルケニル基を末端に有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。なお、この付加反応型の液状シリコーンのように、主剤としての液状シリコーンと硬化剤としての液状シリコーンとを混合して硬化型液状シリコーンとするような場合には、主剤、硬化剤、混合後の何れの場合の液状シリコーンも含むものである。
【0039】
液状シリコーンは、粘度が0.005Pa・s〜2Pa・s程度のものを用いることができる。粘度が0.005Pa・s未満の液状シリコーンは低分子量であり、硬化した後でも分子量を高めにくい。そのため、熱伝導性シリコーン組成物を硬化したときにその硬化体が脆くなるおそれがある。硬化させない場合には、より低粘度の液状シリコーンを用いることができるが、0.005Pa・s未満の場合には、揮発性が高いため、熱伝導性用途での長期使用に適さなくなる。一方、粘度が2Pa・sを超えると、熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し易いため、熱伝導性シリコーン組成物を所望の粘度範囲にすると熱伝導性充填材の配合量が少なくなり、熱伝導性を高めることが難しくなる。
【0040】
次に熱伝導性充填材について説明する。熱伝導性充填材には、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物などの球状、鱗片状等の粉末、グラファイトや炭素繊維などが挙げられる。金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英など、金属窒化物としては、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムなどを例示することができる。また、金属炭化物としては、炭化ケイ素が挙げられ、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、樹脂繊維を炭化処理した繊維、樹脂繊維を黒鉛化処理した繊維などが挙げられる。これらの中で、特に絶縁性が求められる用途では金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物の粉末を用いることが好ましい。
【0041】
熱伝導性充填材は、低比重の材質であることが好ましい。より具体的には、比重が4.0以下の材質を用いることが好ましい。比重が4.0以下の材質としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、石英、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、グラファイト、炭素繊維などを例示することができる。また、比重が3.0以下であることがより好ましい。比重が3.0以下の材質としては、アルミニウム、水酸化アルミニウム、石英、グラファイト、炭素繊維を例示することができる。熱伝導性充填材の比重が低ければ、高比重の充填材を用いたときと比較して、沈降し難くすることができるからである。
【0042】
ここで用いる熱伝導性充填材は、平均粒径が50μm以下の熱伝導性充填材(A)と、平均粒径が50μmを超える熱伝導性充填材(B)とに分けることができる。そして、熱伝導性充填材全体の体積に対して、粒径が50μmを超える熱伝導性充填材が25〜60体積%であることが好ましい。こうした所定の範囲とすることで、熱伝導性を好適に高めることができるからである。
【0043】
2種の熱伝導性充填材(A)及び(B)の合計の配合量(重量)を一定としたときに、大粒径の熱伝導性充填材(B)の割合を高めると、60体積%程度までは、熱伝導性シリコーン組成物の粘度が僅かに上昇しつつ、熱伝導性の向上が見込まれる。60体積%を超えると、熱伝導性の向上が見られなくなり、熱伝導性シリコーン組成物の流動性が低下するとともに表面もざらつきが目立つようになる。このことは、大粒径の熱伝導性充填材の隙間を埋める小粒径の熱伝導性粒子の割合が少なくなりすぎるためであると思われる。一方、熱伝導性充填材(B)の割合が25体積%未満では、熱伝導性を高め難い。
【0044】
熱伝導性充填材(A)の平均粒径は、0.3μm〜10μmであることが好ましい。0.3μm未満では必要以上に粘度が高くなり高充填できなくなるおそれがあり、10μmを超えると大粒径の隙間に細密充填しにくいためである。
【0045】
熱伝導性充填材(B)の平均粒径は、50μm〜200μmであることが好ましい。50μm未満では十分な熱伝導性が得られにくく、200μmより大きいと結晶性セルロース等の増粘抑制沈降防止材の沈降抑制作用をもってしても、充分に沈降速度を遅くできないおそれがある。
【0046】
熱伝導性充填材の平均粒径は、レーザー回折散乱法(JIS R1629)により測定した粒度分布の体積平均粒径で示すことができる。
【0047】
熱伝導性充填材(A)と、熱伝導性充填材(B)とは同じ材質のものであっても良いが、以下のように異なる材質のものとすることができる。
【0048】
熱伝導性充填材(A)としては、水酸化アルミニウムを含むことが好ましい。水酸化アルミニウムを用いることで、硬化型熱伝導性グリスの比重を低くすることができ、液状高分子と熱伝導性充填材の分離を抑制することができる。
【0049】
一方、熱伝導性充填材(B)としては、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。酸化アルミニウムは、特に熱伝導性が高く、大粒径の熱伝導性充填材(B)として用いることで、効果的に熱伝導率を高めることができるからである。
【0050】
熱伝導性充填材(B)の形状は球状が好ましい。球状とすれば他の形状に比べて比表面積が小さいからである。すなわち比表面積が小さいため、熱伝導性充填材全体に占める大粒径の熱伝導性充填材(B)の割合が増えても、硬化型熱伝導性グリスの流動性が低下しにくく、熱伝導性充填材の充填量を増やして熱伝導性を高めることができる。
【0051】
熱伝導性充填材は、液状シリコーン100重量部に対して、300〜2500重量部の範囲で含有させることが好ましい。300重量部未満では、充分な熱伝導性が得られにくく、2500重量部を超えると粘度が高くなりすぎるためである。
【0052】
次に増粘抑制沈降防止材について説明する。ここで用いる増粘抑制沈降防止材は、それを加えることで系の粘度上昇を抑えて非溶解性機能付与充填材の沈降を防止する機能を奏するものである。非液状の増粘抑制沈降防止材は、添加することで一般的に粘度を低下させる低粘度液体とは異なり、固形状やゲル状等の非液状である。
【0053】
増粘抑制沈降防止材の中でも非増粘沈降防止材は、それを加えることでその組成物の粘度を加えない場合よりも低下させて非溶解性機能付与充填材の沈降を防止する機能を奏するものである。したがって、増粘抑制沈降防止材の中でも非増粘沈降防止材を用いることが好ましい。
【0054】
増粘抑制沈降防止材としては、セルロース系化合物やデンプン、デキストリン等の多糖類が挙げられる。多糖類は一般的には増粘剤であるが液状シリコーンとの混合系では従来の増粘剤としての機能とは全く異なり増粘抑制沈降防止材としての挙動を示す。
【0055】
セルロース系化合物の具体例としては、セルロース(結晶性セルロース)やメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。また、イオン性置換基を導入したこれらのセルロース系化合物を挙げることができる。多糖類としてセルロース系化合物を用いると耐湿性に優れる点で好ましい。
【0056】
非セルロース系化合物の具体例としては、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、デキストリン、フルクタン、キチン等を挙げることができる。
【0057】
また、多糖類には、樹脂の表面を多糖類で覆ったような構造のものも含まれる。
【0058】
多糖類は、不定形や繊維状の形状のものを用いることができ、また、粒径では1〜1000μmのものを用いることができる。こうした粒度分布には幅があってもよいが、5〜100μm程度の粉末が多いものが好ましい。なお、粒径は電子顕微鏡等で直接観察することで確認することができる。あるいはまた多糖類としてゲル状のものを用いることもできる。
【0059】
多糖類は、液状シリコーン100重量部に対して、2.0〜50重量部とすることが好ましく、6.0〜50重量部とすることがより好ましく、6.0〜20重量部とすることがさらに好ましい。1.0重量部以下では、沈降防止効果を得ることができず、2.0〜50重量部では沈降防止効果を得ることができる。また、6.0〜50重量部では優れた沈降防止効果を得ることができる。そして、2.0〜50重量部では粘度を低く抑えることができるが、50重量部を超えると、熱伝導性シリコーン組成物中の結晶性セルロースの量が過剰になり熱伝導性が低下する可能性があり、20重量部以下であれば熱伝導性はより好ましい。
【0060】
こうした組成でなるシリコーン組成物には、その機能を損なわない範囲で種々の添加剤を含ませることができる。例えば分散剤、難燃剤、カップリング剤、可塑剤、硬化遅延剤、酸化防止剤、着色剤、触媒などを適宜添加してもよい。
【0061】
上記各成分は混合し、よく攪拌することでシリコーン組成物を得ることができる。
【0062】
そうして得られた熱伝導性シリコーン組成物の粘度は、23℃で30Pa・s〜700Pa・sであることが好ましい。熱伝導性充填材の充填量が少ない場合には粘度が低くなるが、30Pa・sよりも粘度が低い場合には、充分な熱伝導率が得られないおそれがある。一方、700Pa・sを超えると、塗布作業が困難になる。
【0063】
なお、上記粘度は、粘度計(BROOKFIELD回転粘度計DV−E)でスピンドルNo.14の回転子を用い、回転速度5rpm、測定温度23℃で測定することができる。
【0065】
本実施形態では、非溶解性機能付与充填材として導電性を付与する導電性充填材を用いた形態について説明する。導電性充填材を液状シリコーンに含有させた導電性シリコーン組成物は、導電性ペーストなどとして用いることができる。
【0066】
非溶解性機能付与充填材以外の成分、割合等については第1実施形態で説明したシリコーン組成物と同じである。
【0067】
非溶解性機能付与充填材として用いることのできる充填材には、金属、金属酸化物、炭素化合物から選ばれる何れか一種、または複数が挙げられる。こうした充填材には、導電性を有していれば先の実施形態で用いた充填材と同じものも含まれる。
【0068】
導電性充填材も液状シリコーン100重量部に対して、300〜2500重量部の範囲で含有させることが好ましい。300重量部未満では、充填材に由来する効果が不十分となるおそれがある。一方、2500重量部を超えると粘度が高くなりすぎ、塗布して使用する用途では使用が困難になるためである。
【0070】
本実施形態では、非溶解性機能付与充填材として強度を付与するための充填材を用いた形態について説明する。強度付与のための充填材を液状シリコーンに含有させたシリコーン組成物は、建物の空隙などに充填するシーリング材などとして用いることができる。
【0071】
強度を付与する目的で用いる非溶解性機能付与充填材には、先の実施形態で説明した熱伝導性充填材や導電性充填材の他、炭酸カルシウムやシリカ等の種々の充填材が挙げられる。非溶解性機能付与充填材以外の成分、割合等については第1実施形態で説明したシリコーン組成物と同じである。
【0073】
上記各実施形態において含まれる非溶解性機能付与充填材には、平均粒径が50μm以下の充填材(A)と、平均粒径が50μmを超える熱伝導性充填材(B)と、を含むものとしたが、単一の熱伝導性充填材を用いても良い。その際に、特に平均粒径は限定されない。このようにしても、増粘抑制沈降防止材による沈降防止効果が得られ、また組成物が増粘し難いため、非溶解性機能付与充填材の充填量を高めることができる。
【0074】
上記実施形態は本発明の一例であり、こうした形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度において、各組成物を構成する成分の形状、材質、製造方法等の変更形態を含むものである。
【実施例】
【0075】
以下に説明する試料1〜試料17のシリコーン組成物を製造し、各種試験を行って非溶解性機能付与充填材の沈降程度、組成物の粘度、熱伝導率について評価した。まず始めに各試料について説明する。
【0076】
<試料の調製>
試料1:
【0077】
液状シリコーンとして、付加反応型の液状シリコーンの主剤であるビニル末端オルガノポリシロキサン(25℃での粘度が300mPa・s)100重量部と、熱伝導性充填材として、平均粒径1μmの不定形水酸化アルミニウム粉末140重量部(全熱伝導性充填材に対し22.1体積%)、平均粒径3μmの球状アルミナ200重量部(全熱伝導性充填材に対し19.5体積%)、平均粒径70μmの球状アルミナ600重量部(全熱伝導性充填材に対し58.4体積%)と、増粘抑制沈降防止材(添加剤)として結晶性セルロース(平均粒径50μm、以下セルロース(1)と記す)6重量部と、を混合して、試料1の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物を調製した。それを試料1として表1に示す。
【0078】
また、液状シリコーンとして、付加反応型の液状シリコーンの硬化剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(25℃での粘度が400mPa・s)100重量部と、前記主剤に加えたのと同じ材質、含有量の熱伝導性充填材および添加剤と、を混合して、硬化剤としての熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
【0079】
試料2〜試料7:
【0080】
試料1の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物に対して用いたセルロース(1)を、表1に示した添加剤に代えた以外は試料1の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物と同様にして試料2〜試料7の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
【0081】
また、主剤と同じ材質の添加剤に代えた以外は試料1の硬化剤としての熱伝導性シリコーン組成物と同様にして試料2〜試料7の硬化剤としての熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
【0082】
試料8〜試料17:
【0083】
試料1の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物に対して用いたセルロース(1)を、表2に示した添加剤や添加量に代えた以外は試料1の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物と同様にして試料8〜試料17の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
【0084】
また、主剤と同じ材質の添加剤とその添加量に代えた以外は試料1の硬化剤としての熱伝導性シリコーン組成物と同様にして試料8〜試料17の硬化剤としての熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1および表2において、セルロース(2)としてはカルボキシメチルセルロース(平均粒径50μm)を、セルロース(3)としてはメチルセルロース(平均粒径50μm)を、シリカとしてはAEROSIL COK 84(日本アエロジル株式会社製)を、ポリブテンとしてはニッサンポリブテン10SH(日油株式会社製)を、テルペン樹脂としてはYSポリスターT100(ヤスハラケミカル株式会社製)を、多糖類(1)としては、でんぷん(和光純薬製)を、多糖類(2)としては、デキストリン水和物(和光純薬製)を、それぞれ用いた。
【0088】
セルロース(2)とセルロース(3)とは、ともに不定形や繊維状で、5〜100μm程度の粉末が中心でありほとんどの粒子がこの範囲に分布していた。また、多糖類(1)と多糖類(2)とは、ともに不定形で、1〜100μm程度の粉末が中心でありほとんどの粒子がこの範囲に分布していた。
【0089】
<試料の測定および評価>
粘度の測定:
【0090】
試料1〜試料17の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物に対して粘度計(BROOK FIELD製回転粘度計DV−E)(スピンドルNo.14の回転子を使用、回転速度5rpm、測定温度23℃)で粘度を測定した。その結果を表1、表2に示した。
【0091】
粘度変化の計算:
【0092】
添加剤を含んだ試料1〜試料6、試料8〜試料17の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物については、添加剤を含まない試料7の主剤として熱伝導性シリコーン組成物と比較し、粘度変化(各試料の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物の粘度を試料7の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物の粘度で除したときの値)を表1、表2に記載した。
【0093】
沈降試験およびその評価:
【0094】
試料1〜試料17の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物をそれぞれ直径20mm、高さ120mmの円筒状の容器に100mmの高さまで充填して、60℃の環境下、静止状態で1000時間放置し、熱伝導性充填材の沈降状態を目視で観察した。
【0095】
そして、各試料の沈降状態を次に示す5段階に分けて評価した。この結果を表1、表2に示した。
5:全く分離していない状態。
4:分離していないが、表面が滑らかに見える状態。(表面の液状シリコーンの濃度が高まり、熱伝導性充填材の粒子感が少なくなった状態。)
3:分離していないが、液状シリコーンの薄膜が表面を覆った状態。(表面に限れば熱伝導性充填材の粒子が無くなった状態。)
2:傾けると液状シリコーンが流れ出る程度に分離している状態。(1mm以上5mm未満の厚みで液状シリコーンが分離した状態。)
1:5mm以上の厚みで液状シリコーンが分離した状態。
【0096】
熱伝導率:
【0097】
試料1〜試料17の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物に対して試料1〜試料17のそれぞれの硬化剤としての熱伝導性シリコーン組成物を混合し十分に攪拌して、試料1〜試料17の硬化型熱伝導性シリコーン組成物を調製した。そして、その各組成物を厚さ20mmのシート状に形成して熱伝導率測定用試験片を作製した。各試験片については、京都電子工業株式会社製迅速熱伝導率計QTM−500を用いて非定常法細線加熱法にて熱伝導率を測定した。その結果も表1、表2に示した。
【0098】
<考察>
粘度および沈降防止効果について:
【0099】
熱伝導性充填材の沈降防止作用が期待される各種添加剤を配合した試料1〜試料6の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物については、熱伝導性充填材が分離せず、いずれも沈降防止効果が確認された。一方添加剤を含有していない試料7では、熱伝導性充填材が液状シリコーンから分離して沈降した。
【0100】
添加剤を含有しない試料7の粘度は450Pa・sであった。この値を基準として、セルロース系化合物を添加した試料1〜試料3の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物では、いずれも450Pa・sよりも10%程度低い粘度(粘度変化が0.89〜0.90)となった。一方、シリカを添加した試料4では、粘度が1152Pa・sとなり、粘度がかなり高まった。また、ポリブテン、テルペン樹脂についても、高粘度となった。
この結果から、試料1〜試料3で用いたセルロース系化合物は添加すると粘度低減をもたらす非増粘沈降防止材として機能していることが確認できた。
【0101】
次に、セルロース(1)の添加量を変えた試料1および試料8〜試料14の主剤としての熱伝導性シリコーン組成物についてみると、添加量が0.5重量部の試料8および添加量が1.0重量部の試料9では、熱伝導性充填材が分離しており、沈降防止の効果が低かった。一方、添加量が2.0重量部の試料10では、表面に薄く液状シリコーン層があるように見えたが、分離しているとまではいえず、沈降防止効果が確認された。添加量が6.0重量部以上となる試料1および試料11〜試料14では、液状シリコーンと熱伝導性充填材の分離は見られず、優れた沈降防止効果を発揮していた。
【0102】
上記セルロース(1)を添加した試料は、試料1、試料8〜試料13で粘度低下が見られ、非増粘沈降防止材として機能していることがわかった。これらの中では、試料1、試料11および試料12の粘度が特に低かった。
【0103】
試料14では、添加剤を加えない場合と比較して僅かに粘度上昇していたため、増粘抑制沈降防止材として機能するものの非液状の非増粘沈降防止材としては機能していないことがわかった。試料14で試料13と比べて粘度上昇してしまった理由としては、液状シリコーンに対して、固形分となるセルロース系化合物の添加量が過剰となり、相対的に流動成分が少なくなり過ぎたことが原因であると思われる。
【0104】
また、試料16、試料17についても粘度低下が見られ、非増粘沈降防止材として機能していることがわかった。
【0105】
これらの結果より、セルロース系化合物等の多糖類の添加量は、2.0〜50重量部とすることが好ましく、6.0〜50重量部とすることがより好ましいことがわかる。
【0106】
シリカを添加した試料4と試料15については、まず添加剤の添加量が試料1と同じである試料4では、沈降防止効果はあるものの粘度がかなり増大した。一方、粘度を低下させるべくシリカの添加量を減少させた試料15では、粘度の減少も見られずシリカが増粘抑制沈降防止材として機能しないばかりか容器を傾けると液状シリコーンが流れ出る程度に熱伝導性充填材が分離しており、沈降防止効果が不十分だった。
【0107】
熱伝導率について:
【0108】
試料1〜試料12、試料16、試料17では、熱伝導率に差がなかった。試料13のセルロース(1)の添加量が50重量部のときに、熱伝導率がやや低下しており、試料14の80重量部では熱伝導率が大きく低下していた。試料14では、熱伝導性シリコーン組成物における単位体積当たりの熱伝導性充填材の割合が少ないことが理由であると考えられる。この結果から、セルロース系化合物等の多糖類の添加量は50重量部以下が好ましく、20重量部以下がさらに好ましいことがわかる。よって、セルロース系化合物等の多糖類の添加量は、6.0〜20重量部とすることがさらに好ましいことがわかる。