特許第6574993号(P6574993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6574993-変形ツールの表面構造化 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574993
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】変形ツールの表面構造化
(51)【国際特許分類】
   B21D 31/00 20060101AFI20190909BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20190909BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20190909BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20190909BHJP
   B21D 22/08 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B21D31/00 B
   B21D37/20 Z
   B21B1/22 H
   B21D22/02 B
   B21D22/08
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-528463(P2017-528463)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公表番号】特表2018-504279(P2018-504279A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2015074288
(87)【国際公開番号】WO2016083026
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】102014224413.7
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102014226970.9
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】コールラウシュ・アルント
(72)【発明者】
【氏名】パーヴェルスキー・ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】シェルマン・マルクス
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−178734(JP,A)
【文献】 特公昭48−024628(JP,B1)
【文献】 特開昭52−034758(JP,A)
【文献】 特開平08−243657(JP,A)
【文献】 特開平03−104537(JP,A)
【文献】 特開昭63−076722(JP,A)
【文献】 特開2000−079403(JP,A)
【文献】 特開平10−094842(JP,A)
【文献】 特開昭53−055455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/00 − 22/02
B21D 37/20
B21B 1/22
B21H 8/00
B21D 22/08
B21D 31/00
B29C 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)を塑性変形するためにそれの表面と接触可能な、構造化されたエンボス加工面(4)を有する変形ツール(2)を製造する方法であって、該方法は、
該基板(1)の上に製造されるターゲット構造を決定する工程;
該ターゲット構造を幾何学的に歪め、それにより、エンボスイメージ構造を得る工程; 該エンボスイメージ構造を反転させ、それにより、前記エンボス加工面(4)のためのエンボス構造を得る工程;
該エンボス構造に従って該変形ツール(2)のエンボス加工面(4)を作成する工程、を有する、上記の方法。
【請求項2】
前記ターゲット構造が、伝達関数(OA)によって定義され、それのパラメータが、前記エンボス構造及び一つ又は二つ以上のプロセスパラメータを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一つ又は二つ以上のプロセスパラメータが、一つ又は二つ以上の主要方向に沿った前記塑性変形の間の前記基板(1)の変形挙動を決定することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセスパラメータが、次のパラメータ: 基板の厚さ、該基板(1)の流動応力、前記エンボス加工面(4)の幾何学的寸法、主要方向に沿った変形時の前記基板(1)の伸長、エンボス加工速度、該変形時の一つ又は二つ以上の主要方向に沿った引っ張り(Zug)、前記エンボス加工面(4)と基板(1)との間の摩耗係数、のうちの一つ、複数又は全部を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記変形ツール(2)が、加工ロール(3)、好ましくは、調質ロール(Dressierwalze)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲット構造が伝達関数によって描かれ、そのパラメータが、前記エンボス構造及び、次のパラメータ: 基板の厚さ、流動応力、前記加工ロール(3)の径、ロールの方向に沿った前記基板(1)の伸長、圧延速度、前記加工ロール(3)の走行入口における基板の引っ張り、前記加工ロール(3)の走行出口における基板の引っ張り、ロールギャップにおける摩擦、のうちの一つ、複数又は全部を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板(1)が、シート、好ましくは金属シートであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記エンボス構造が異方性特性を有し、前記ターゲット構造においてそれの対は等方性であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記エンボス加工面(4)が、次の方法: SBT、EDT、LT、EBT、Pretexのうちの一つ、複数又は全部を使って製造されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を塑性変形するためにそれの表面と接触可能な、構造化されたエンボス加工面を有する変形ツールを製造する方法に関する。さらに、本発明は、そのような変形ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
塑性変形過程では、しばしば、圧延装置において、エンボス加工面、場合によっては特に構造化された表面テクスチャを有する作業ロールの表面が使用される。この場合、ターゲットは、関連する基板の表面中へ塑性変形によりエンボス加工面の表面構造をエンボス加工する。場合によっては、既に存在している材料条件及び/又はプロセス条件付けされた表面付近の粗い構造が上に存在するそのようなエンボスは、光学的、トリポリジー的、材料技術的、接合技術的又はこれらの基本の組み合わせにより行う(motoviert)ことができる。
【0003】
いわゆるスキンパス法(Dressierverfahren)において、シートの表面をエンボス加工するためのプロセスフローの一例を簡潔に概説する:冷間圧延の場合、変形のためのグリップ条件及び潤滑条件を満たすために、所定の粗度を有するロールが使用される。例えば、後者の冷間圧延機のロール対は粗くなるため、コイルの個々の巻きの表面が、アニール時に接合しない。その圧延過程の間、ロールの粗度はシート上にエンボスされる。冷間圧延後、そのシートは、その後の熱成形に必要な変形性を得るためにアニールされる。プロセス技術の理由から、アニール時の表面構造の変化を回避することは困難である。アニーリング後、該シートはさらに顕著な降伏強度を有し、これは、変形時にフロー図もたらすことができる。スキンパスステージにおけるシートの次の後圧延によって、通常望ましくないこの影響を低減又は排除することができる。同時に、該後圧延は、最終的な表面テクスチャを生成するのに利用される。調質ロールを介した構造は、冷間圧延及びアニーリングによって設けられた構造と重なる。特に調質ロール上にエンボス構造を製造するために、様々な方法が利用でき、いわゆる、“ショットブラストテクスチャリング(Shot Blast Texturing)”(SBT)、“放電テクスチャリング”(EDT)、“レーザーテクスチャリング”(LT)、“電子ビームテクスチャリング”(EBT)、Pretexが挙げられる。
【0004】
表面を構造化形成するための基板の変形では、塑性変形は、表面付近においてのみ生じないが、この方法は、少なくとも一つの別の主要な方向に沿った材料の流れを必要とする。圧延プロセスの例を変更しないようにするためには、この場合、基板の厚さを減少し、最初のラインにおいて伸長をもたらす。該伸長は、通常、意図していても避けられない。これは、圧延方向における材料の延伸につながる。圧延方向に対して横方向の延伸はほとんど、又は全く起こらない。
【0005】
該伸長、より一般的に言えば、一つ又は二つ以上の主要な方向に沿った変形は、結果として、表面上に存在するか、又は該主要な方向に沿った変形(厚さ又は伸長の減少の量に応じた圧延時)の量に対応して表面上に設けられた構造は、幾何学的に歪められる。例えば、元来円形の構造の場合、主軸がロールの方向に対して平行な楕円形に変形される。
【0006】
エンボス加工の品質は、このプロセス条件による歪みに影響を大きく受け得る。一般に、歪みのないパターンが意図されるが、そのような方向に沿った変形の場合にのみ存在し、テクスチャリングに属さない、つまり、上述の主要な方向に沿った場合には回避される。それ故、表面のテクスチャリングによる塑性変形時の顕著なターゲットの矛盾は、エンボスの高い品質が、変形の高い程度と対立していることによる。一つ又は二つ以上の主要な方向に沿った変形の高い程度、つまり、例えば、一定の質量流量での材料の大きな減少が、他方では、生産性を促す。生産性が高い限り、意図される表面テクスチャの品質はそれに反することになる。
【0007】
表面テクスチャリングの上記の問題は、主として、塑性変形のための例示的な方法としての圧延プロセスのシーンにおいて詳述されており、その困難性は、これは、鍛造、エンボス加工、プレス加工、メッキ又は他の数中で、別の塑性機会変形法及び不連続プロセスの場合に現れる。
【0008】
特開平05−92283A号公報(特許文献1)は、レーザーを使って加工ロールの表面を処理するための方法及び/又は装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−92283A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、変形ツール及びそれを製造する方法を提供することにあり、それにより、エンボスのより向上した品質での高い変形の程度が達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
該課題は、請求項1に記載の方法、及び請求項10に記載の特徴を有する変形ツールによって解決される。有利な展開は、従属請求項、本発明の以下の説明並びに好ましい実施形態の記載から得られる。
【0012】
本発明の方法は、変形ツールを製造するのに利用され、該ツールは、構造化されたエンボス加工面を有する。該構造化されたエンボス加工面は、基板を塑性変形するためにそれの表面と接触可能である。好ましい圧延プロセスの場合、基板は、例えば、圧延すべき金属シートであり、そして、エンボス加工面として、好ましくは、作業ロール、例えば調質ロールの周面が考慮される。しかしながら、本発明はまた、例えば、鍛造、エンボス加工、スタンピング又はめっきのような他の変形プロセスにも適している。
【0013】
最初に、基板上に形成する、テクスチャとも呼ばれるターゲット構造を決定する。その際、これは塑性変形によって生成される所望の表面プロフィルである。該ターゲット構造は、例えば、表面上の位置に依存して、山のプロフィル及び谷のプロフィルといった、二次元の関数として一義的に表すことができる。好ましくは、該ターゲット構造は等方性に、すなわち、少なくとも、いくつかの点で方向に関係なく形成される。該ターゲット構造の定義は、粗さの程度(中央粗さ、二乗粗さ、平均化粗さ、ピーク粗さ等)を含むことができる。過去に、粗度の高い構造又は高い変形程度の場合に特に当てはまる、ターゲット構造の不本意な歪みが見られた。この問題は本発明が解決し、その点でこの種のターゲット構造のために特に適している。
【0014】
該ターゲット構造は引き続いて幾何学的に歪められ、それにより、本明細書においてエンボス形成構造と呼ばれる構造が得られる。その幾何学的に歪めることは、特に、該ターゲット構造の圧縮(Stauchen)及び延伸を含む。この変形の意味は、一つ又は二つ以上の主要な方向に沿った基板の不可欠かつ所望の変形を補償することにある。主要な方向として、プロフィル化又はテクスチャリングかによって決定されない方向であり、それにも拘わらずそれに沿ったプロフィル化の間に基板の塑性変形が生ずる方向である。該変形方法は、例えば、前述の圧延法であり、圧延方向の上述の主要な方向に対応し、該圧延方向に沿って、材料の延伸又は伸長が起こり、これは、本来の構造パターンによってではなく、圧延作用によって実現される。それに反して、圧延方向に対して横方向(基板の平面)の伸長はほとんど又は全く起こらないため、その圧延プロセスにおける変形は、主要な方向のみに沿って終了させることができる。言い換えると、平面の変形は、長手方向及び厚さ方向において行われるが、幅方向においては行われないため、その表面に基づいて、変形は、主要な方向でのみ、つまり、長手方向においてのみ現れる。しかし、一般的に言えば、該変形は、いくつかの主要な方向に沿って行うことができる。それ故、幾何学的な変形は、圧延の場合、圧延方向における基板の伸長を補償する。ターゲット構造が、例えば、多数の円から構成されている場合、これは、その範囲内での幾何学的な歪みが意図され、そして、主軸が、圧延方向に対して横方向にある楕円形に圧縮することが望まれる。
【0015】
エンボス形成構造はそれから反転され、それにより、エンボス構造として特徴付けられた構造が得られる。その後、変形ツールのエンボス加工面は、そのようにして得られたエンボス構造に従って完成される。換言すれば、該エンボス構造は、それによって変形ツールのエンボス加工面が提供される構造である。
【0016】
本発明は、ターゲットテクスチャにおける不要な歪みを生じさせることなく、該ツールから基板上への高いエンボス加工度を可能にする。これは、ターゲット構造の品質に対してそのように不都合な影響を及ぼすことなく、高い粗度が実現できる。特にここで紹介する方法により、規則的及び/又は等方性の構造を高い変形の程度で生じさせることができる。どちらかと言えば確率論的な構造とは異なり、それらにはすぐに歪みが見られる。品質を向上させるために、過去では、大きなロール径、小さい変形の程度及び/又は別の欠点のある技術的な解決策が必要であった。これらの問題は本発明が解決する。特に、光学的、トライボロジーの、材料技術の、接合技術の、及び/又はこれら又は他の特性の組み合わせに関して、表面品質を向上させるのに寄与する。これらの全ては、明白な高い変形の程度又はエンボス加工度との組み合わせで実現可能であり、それによって、変形装置を構造的に変更することなく、生産性の向上が達成される。それ故、本発明は、ツールの少ない変更で実現可能である。
【0017】
好ましくは、ターゲット構造は伝達関数によって記載され、それは、パラメータ又は独立変数、エンボス構造及び一つ又は二つ以上のプロセスパラメータを含む。この場合、該プロセスパラメータは、一つ又は二つ以上の主要な方向に沿った塑性変形の間の基板の変形挙動を特徴付ける。“プロセスパラメータ”という語は、本明細書において一般的に理解され、そして、加工すべき基板のパラメータ同様に含み、そのようなパラメータ、変形ツールの特性を説明する。例えば、主要な方向に沿った変形は、圧延時の基板の厚さ、例えば、シートの厚さ又はテープの厚さに左右され得る。さらに、変形性は、材料の流動応力に左右され得る。同様に、圧延プロセスにおける、例えば、ロールの径の幾何学的な寸法は、基板の変形挙動の影響を受ける。ロール径が大きければ大きい程、圧延方向における伸長はより小さくなる。この点に関して役割を果たし得るさらなるパラメータは、エンボス加工速度、例えば、圧延プロセスにおける圧延速度、変形時の一つ又は二つ以上の主要な方向に沿った引っ張り、エンボスツールと基板との間の摩擦径計数及び/又は材料の伸長に関する別の量である。
【0018】
好ましくは、エンボス構造は、異方性の幾何学的特性を有し、それの対となるものはターゲット構造中で等方性である。この場合、エンボス構造は、その全体において異方性、すなわち、方向依存性であることができる(その全体において等方性、すなわち、方向に依存しないターゲット構造と同様に)か、又は、単に、基板の一つ又は二つ以上の幾何学的な特性が異方性又は等方性を示すことができる。例えば、ターゲット構造が、複数の円から構成されている場合には、これらの円を異方性に分布させることができる。それにもかかわらず、該構造は、対応する等方性の特性−円−を有し得る。該エンボス構造では、これらの円は楕円に歪められた。
【0019】
エンボス加工面を製造するには、いわゆる“ショットブラストテクスチャリング(SBT)”、“放電テクスチャリング(EDT)”、“レーザーテクスチャリング(LT)”、“電子ビームテクスチャリング(EBT)”、Pretexが適している。“ショットブラストテクスチャリング”の場合、巨視的な粒子が、遠心ディスクにより、エンボス加工面上へ加速する。そのエンボス加工面上への衝突時に、粒子は表面を塑性的に変形させ、場合によっては材料を外へたたき出す。粗度は、遠心ディスクの速度、照射手段、エンボス加工面の硬度、照射手段のスループット及び/又は加工機関によって調節できる。“放電テクスチャリング”の場合、好ましくは、エンボス加工面に触れることなく電子が該面を動かす(例えば、ロール表面を回転させる)。発電機の高電圧パルスによって、電極と基板との間に十分高い電界強度が生成し、それは二つの極の間の誘電体で、火花放電となる。そのプラズマではアークを形成する燃焼流が流れる。
【0020】
エンボス加工面の小さい領域が融解される。誘電体には気泡が形成する。浸食インパルス(Erodierimpulse)の停止時に、該気泡は内部崩壊し、融解した材料が外へ打ち出される。粗度は、エンボス加工面の硬度以外に、電圧、電流、制御時間及び電極の距離のようなパラメータによって調節できる。SBTに比べて、EDTでは高いピーク速度及び低い粗度、高い再現性で製造できる。“レーザーテクスチャリング”の場合、エンボス加工面上へのレーザー光が焦光され、表面の小さい領域が融解する。チョッパーディスク又は適切な電子制御が該光を遮断し、融解物が、プラズマの圧力及び不活性ガスによって吹き飛ばされる。その際、該融解物は、クレーター縁部の周囲の隆起部に集まるか、又はクレーターの一方の側に蓄積し、そこで固化する。粗度を調節するために、例えば、レーザー能、レーザー光の送り速度、チョッパー回転数並びに不活性ガスが利用される。“電子ビームテクスチャリング”の場合、エンボス加工面の材料を融解させるために電子ビームが使用される。融解した材料の一部は蒸発し、その結果、融解物の蒸気圧が、クレーター周囲でリング状に蓄積される。“Pretex”法の場合、エンボス加工面は、電気分解により硬質クロムめっきされる。アノードとカソードとして利用されるエンボス加工面との間の電圧は、球状セグメント状構造成分が表面上で堆積するように制御される。
【0021】
本発明はさらに、構造化されたエンボス加工面を有し、表面を有する基板を塑性変形するために、該表面と接触可能な変形ツールに関し、その際、該変形ツールは、本発明による方法及び/又はその好ましいさらなる形態に従って製造される。特に、変形ツールのエンボス加工面の構造は、好ましくは、異方性の幾何学特性を有する。該加工面が作業ロールの一部である場合、エンボス加工面の構造は、好ましくは、いくつかの楕円形状の構造を有し、その主軸は、圧延方向に対して横方向に存在する。好ましくは、エンボス加工面の全ての楕円形状の構造物の主軸は圧延方向に対して横方向に存在する。
【0022】
塑性変形及び構造化のための技術分野において、本発明、特に、作業ロール又は調質ロールが使用されているにもかかわらず、本発明は、場合によっては、別の領域で実施することができる。さらに、本発明の更なる利点及び特徴は、好ましい実施形態の以下の記載から明らかになる。ここで説明した特徴は、それらの特徴が矛盾しない限り、単独又は一つ又は二つ以上の上記で言及した特徴を組み合わせて実行することができる。好ましい実施形態の以下の説明は、添付の図面を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、後圧延プロセス(Nachwalzprozesse)の進行を概略的に示しており、その際、作業ロールの構造化されたエンボス加工面を使って、金属テープに構造が塑性的にエンボスされる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の例示的な実施形態を、符号に関連して詳細に説明する。ここに記載の実施形態は、本発明を限定するのではなく、本発明を説明されるのに利用することを意図するものであり、その際、実施形態の、説明する特徴又は特徴の組み合わせが、本発明のために必ずしも必須である必要ではないことに留意すべきである。
【0025】
図1は、金属テープ又は金属シート1の後圧延のプロセスを概略的に示しており、これは、一般的な名称の“基板”の一例である。符号1は、金属テープだけでなく、後圧延の前に、圧延装置2のライン入口に存在し得るその表面上の構造も指し示している。該金属テープ1は表面構造に加えて、以下においてOEと呼ぶこの位置、テープの厚さh及び流動応力kfを有する。
【0026】
圧延装置2を使って、エンボス工程と薄型化工程との組み合わせにおいて、適切な幾何学的な構造又はテクスチャを、該金属テープ1の一方又は両方の表面上に設ける。換言すると、該圧延装置2には、金属テープの表面に構造がエンボス加工されるだけでなく、該テープはさらに伸長され、該伸長は、薄型化に関連付けられる。それ故、本来のテクスチャリングに加えて、別の主要方向に沿った変形、この場合においては、テープ1の縦方向及び輸送方向に沿った変形が行われる。これらの二つのプロセス段階(伸長と構造化)が一緒に行われることによって、加工プロセスの生産性を高めることができる。さらに、表面のテクスチャリングを、高い変形程度又は高い粗度で実現することができ、これは、多大な手間暇の下で一つ又は二つ以上の主要な方向に沿ったそのような変形を伴うことなく、例えば、ロール径の著しい増大によって実現できる。本例では、作業ロール3、つまり、所定の表面構造を有するエンボス加工面を有し、基板1中へエンボスされる各ロールは、せいぜい約400mmの径を有する。別の径も当然ながら可能である。例えば、約230mmのロール径を用いて成果のある実験が行われた。重要なことは、すでにより大きなロールで得られたエンボス加工品質で、比較的小径のロールでのエンボスが可能であるという認識である。作業ロールの径は、Dの符号で示されている。さらに、いくつかの作業ロールを使ってエンボス加工が可能であるだけでなく、テープの両方の面をエンボス加工できるか、又は製造されるパターンにいくつかのエンボス工程が必要であることに留意されたい。
【0027】
作業ロール3は、図1において符号4で示すエンボス加工面を有する。エンボス加工面4は、基板1をエンボス加工すべき構造を有する。エンボス加工面4の構造は、以下においてOWで示される関数で説明することができる。
【0028】
結果として得られる表面テクスチャ、つまり、最終的に、圧延装置2の排出部において、基板1上に残され、そして、符号5で示される各構造は、OWの関数だけでなく、さらなるプロセスパラメータ、例えば、ロールによる厚さの減少(薄型化)に起因する、延長ε、ロール速度v、進入部におけるテープの引っ張りFE、排出部におけるテープの引っ張りFA、及びロールギャップにおける摩擦係数μに依存する。一つ又は二つ以上のこれらのパラメータは、テープの輸送方向に沿ったテープの伸長を決定する。これは変形であり、該変形は、作業ロール3のエンボス加工面4から与えられた構造を歪め、これによりテープの排出部における構造の従来においては意図しない異方性が存在する。
【0029】
圧延工程後、つまり、圧延装置2の排出部において残される表面構造5は、関数OAで説明される。OAは、一般に、次の式を有する。
OA=f(OW;OE,D,h,kf,ε,v,FE,FA,μ)…(1)
【0030】
“等方性”及び“異方性”という記載は、本明細書では、一つ又は二つ以上の幾何学的な特徴のことであり、これらは、エンボス加工面4において、かつ、ターゲット構造5において同一であり、そして、互いに異なっていることができる。作業ロール3のエンボス加工面4が、例えば、円形を有する場合、これは、圧延装置2の排出部において、テープ表面5の上で輸送方向に平行な主軸を有する楕円になり、それから、該構造OWは、異方的に歪められた。
【0031】
すでに言及したように、一般に歪みである異方性の程度は、圧延時に減少させることができ、作業ロールの径を増大させるか、又は、例えば、ロールギャップの摩擦を高めることで得ることができる。二つの可能性は、技術的及び/又は運転上の欠点、例えば、装置の構造的な増大及びより大きなエネルギー需要などと結びついている。
【0032】
以下に示す技術的解決法は、別の箇所で提供されている。上述の圧延装置2の用語において、アルミニウムテープ1の所望の表面構造OAは、変形の程度に依存することなく、作業ロール3を介して、クリンチされた、一般に、歪めた表面テクスチャOWの選択によって得られる。作業ロール3の、歪んだ、通常、異方性の表面テクスチャ4は、伝達関数OAの逆数として選択され、所望のターゲット構造OW上へ使用される。伝達関数OAが定義する構造は、本明細書ではエンボス形成構造と呼ばれる。作業ロール3によるエンボス工程と薄型化工程との組み合わせによって、適切な、幾何学的に歪められたエンボス構造が生じ、それによって、テープ1の伸長に応じた所望のターゲット構造が得られる。エンボス加工面4上のパターンの幾何学的な歪みの種類及び程度は、それは、基板1上への伝達関数OAの逆に対応する。
OW=f−1(OA;OE,D,h,kf,ε,v,FE,FA,μ)…(2)
【0033】
基板1上への作業ロール3、又は、一般的なツールのエンボス加工特性の可能な微調整は、別のプロセスパラメータ、例えば、進入部におけるテープの引っ張りFE、排出部におけるテープの引っ張りFA、延長ε、ロール速度v及び/又はロールギャップにおける摩擦係数(滑り)μを変更することによって実現できる。
【0034】
単純な伸長の伝達関数のための実施形態:
OAは、高さプロフィルzA(x、y)で表され、
OWは、高さプロフィルzW’(x、y)で表され、
x:ロール方向
y:幅方向
zA(x,y)=−zW(x/(1+C*ε),y)/C
(式中、指数C、C>0、h及びμなどのさらなるプロセス条件に依存し得る)。
【0035】
逆は次の通り:
zW(x,y)=−C1*zA(x*(1+C2*ε),y)
【0036】
例えば、延長ε及び進入部におけるテープの引っ張りFEを介した微調整は次のとおり:
ΔOA=[∂f(OW;OE,D,h,kf,ε,v,FE,FA,μ)/∂ε]Δε+
[∂f(OW;OE,D,h,kf,ε,v,FE,FA,μ)/∂FE]ΔFE
【0037】
エンボス構造をこのようにして求めた後、エンボス加工面を完成させることができる。そのために、様々な方法、例えば、“ショットブラストテクスチャリング(SBT)”、“放電テクスチャリング(EDT)”、“レーザーテクスチャリング(LT)”、“電子ビームテクスチャリング(EBT)”、Pretexが利用される。
【0038】
適用可能である限り、実施形態で示されたいくつかの特徴の全ては、本発明の範囲を逸脱することなく、互いに組み合わせる及び/又は交換することができる。
本発明の特徴は、次の通りである。
1. 基板(1)を塑性変形するためにそれの表面と接触可能な、構造化されたエンボス加工面(4)を有する変形ツール(2)を製造する方法であって、該方法は、
該基板(1)の上に製造されるターゲット構造を決定する工程;
該ターゲット構造を幾何学的に歪め、それにより、エンボスイメージ構造を得る工程; 該エンボスイメージ構造を反転させ、それにより、前記エンボス加工面(4)のためのエンボス構造を得る工程;
該エンボス構造に従って該変形ツール(2)のエンボス加工面(4)を作成する工程、を有する、上記の方法。
2. 前記ターゲット構造が、伝達関数(OA)によって描かれ、それのパラメータが、前記エンボス構造及び一つ又は二つ以上のプロセスパラメータを含むことを特徴とする、上記の特徴1に記載の方法。
3. 一つ又は二つ以上のプロセスパラメータが、一つ又は二つ以上の主要方向に沿った前記塑性変形の間の前記基板(1)の変形挙動を特徴付けすることを特徴とする、上記の特徴2に記載の方法。
4. 前記プロセスパラメータが、次のパラメータ: 基板の厚さ、該基板(1)の流動応力、前記エンボス加工面(4)の幾何学的寸法、主要方向に沿った変形時の前記基板(1)の伸長、エンボス加工速度、該変形時の一つ又は二つ以上の主要方向に沿った引っ張り(Zug)、前記エンボス加工面(4)と基板(1)との間の摩耗係数、のうちの一つ、複数又は全部を含むことを特徴とする、上記の特徴3に記載の方法。
5. 前記変形ツール(2)が、加工ロール(3)、好ましくは、調質ロール(Dressierwalze)を含むことを特徴とする、上記の特徴1〜4のいずれか一つに記載の方法。
6. 前記ターゲット構造が伝達関数によって描かれ、そのパラメータが、前記エンボス構造及び、次のパラメータ: 基板の厚さ、流動応力、前記加工ロール(3)の径、ロールの方向に沿った前記基板(1)の伸長、圧延速度、前記加工ロール(3)の走行入口における基板の引っ張り、前記加工ロール(3)の走行出口における基板の引っ張り、ロールギャップにおける摩擦、のうちの一つ、複数又は全部を含むことを特徴とする、上記の特徴5に記載の方法。
7. 前記基板(1)が、シート、好ましくは金属シートであることを特徴とする、上記の特徴1〜6のいずれか一つに記載の方法。
8. 前記エンボス構造が異方性特性を有し、前記ターゲット構造においてそれの対は等方性であることを特徴とする、上記の特徴1〜7のいずれか一つに記載の方法。
9. 前記エンボス加工面(4)が、次の方法: SBT、EDT、LT、EBT、Pretexのうちの一つ、複数又は全部を使って製造されることを特徴とする、上記の特徴1〜8のいずれか一つに記載の方法。
10. 基板(1)を塑性変形するためにそれの表面と接触可能な、構造化されたエンボス加工面(4)を有する変形ツール(2)であって、該変形ツール(2)が、上記の特徴1〜9のいずれか一つに記載の方法に従って製造されたものであり、
前記変形ツール(2)が加工ロール(3)を有し、その表面が前記エンボス加工面(4)を有し、そして該加工面(4)の構造が、圧延方向に対して横方向に主軸が存在する楕円構造を複数有することを特徴とする、上記の変形ツール。
【符号の説明】
【0039】
1 可動ベルトの始端における基板
2 圧延装置
3 作業ロール
4 エンボス加工面
5 可動ベルトの終端におけるターゲット構造を有する基板
図1