(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
(過給機)
図1〜
図3に示される過給機1は、車両用の過給機であり、図示しないエンジンから排出された排気ガスを利用して、エンジンに供給される空気を圧縮するものである。この過給機1は、
図3に示すウェイストゲートバルブ20を開閉するダイヤフラム式アクチュエータ50を備えている。この過給機1は、タービン2とコンプレッサ(遠心圧縮機)3とを備える。タービン2は、タービンハウジング4と、タービンハウジング4に収納されたタービン翼車6と、を備えている。コンプレッサ3は、コンプレッサハウジング5と、コンプレッサハウジング5に収納されたコンプレッサ翼車7と、を備えている。
【0017】
タービン翼車6は回転軸14の一端に設けられており、コンプレッサ翼車7は回転軸14の他端に設けられている。タービンハウジング4とコンプレッサハウジング5との間には、軸受ハウジング13が設けられている。回転軸(ロータ軸)14は、軸受15を介して軸受ハウジング13に回転可能に支持されている。過給機1は、タービンロータ軸16を備え、このタービンロータ軸16は、回転軸14と、この回転軸14の一端に設けられたタービン翼車6とを備えている。タービンロータ軸16及びコンプレッサ翼車7は一体の回転体として回転する。
【0018】
タービンハウジング4には、排気ガス流入口8及び排気ガス流出口10が設けられている。エンジンから排出された排気ガスは、排気ガス流入口8を通じてタービンハウジング4内に流入し、タービン翼車6を回転させ、その後、排気ガス流出口10を通じてタービンハウジング4外に流出する。
【0019】
コンプレッサハウジング5には、吸入口9及び吐出口11が設けられている。上記のようにタービン翼車6が回転すると、タービンロータ軸16及びコンプレッサ翼車7が回転する。回転するコンプレッサ翼車7は、吸入口9を通じて外部の空気を吸入し、圧縮して吐出口11から吐出する。吐出口11から吐出された圧縮空気は、エンジンに供給される。
【0020】
図1及び
図3に示されるように、タービンハウジング4の内部には、排気ガス流入口8から導入した排気ガスの一部を、タービン翼車6をバイパスさせて排気ガス流出口10側へ導出するためのバイパス通路(
図3参照)17が形成されている。バイパス通路17は、タービン翼車6側へ供給される排気ガスの流量を可変とするためのガス流量可変通路である。
【0021】
(ウェイストゲートバルブ)
タービンハウジング4の内部には、流量可変バルブ機構の1つとしてウェイストゲートバルブ20が設けられている。ウェイストゲートバルブ20は、バイパス通路17の開口部を開閉するバルブである。ウェイストゲートバルブ20は、タービンハウジング4の外壁に対して回転可能に支持されたステム21と、ステム21からステム21の径方向に張り出す揺動片22と、揺動片22に支持された弁体23と、を備えている。
【0022】
タービンハウジング4の外壁には、外壁の板厚方向に貫通する支持穴24が形成されている。この支持穴24内には、円筒状のブッシュ25が挿通されている。このブッシュ25は、タービンハウジング4の外壁に対して固定されている。
【0023】
ステム21は、ブッシュ25に挿通されて、タービンハウジング4の外壁に対して、回転可能に支持されている。揺動片22はステム21に対して固定されている。ステム21は、ステム21の軸線回りに回転し、揺動片22を揺動させる。揺動片22の先端部には、弁体23を取付けるための取付穴が設けられている。
【0024】
弁体23は、バイパス通路17の開口部の周縁部に当接離隔可能なものであり、例えば円盤状を成している。弁体23には、バイパス通路17の開口部とは反対側に突出するバルブ軸26が設けられている。バルブ軸26は、揺動片22の先端部の取付穴に挿通されている。バルブ軸26の弁体23とは反対側の端部には止め金27が固定されており、この止め金27によって、取付穴に挿通されたバルブ軸26が保持されている。弁体23は、揺動片22に対して微動(傾動を含む)可能に支持されている。これにより、弁体23が揺動片22に対して微動するので、弁体23がバイパス通路17の開口部の周縁部に対して密着する。そして、弁体23がバイパス通路17の開口部の周縁部に当接してウェイストゲートバルブ20が閉状態となり、弁体23がバイパス通路17の開口部の周縁部から離れてウェイストゲートバルブ20が開状態となる。
【0025】
また、ステム21のタービンハウジング4の外部に配置された端部には、ステム21の径方向に突出する板状のリンク部材28が固定されている。リンク部材28の先端部には、連結ピン29が挿通される取付穴が形成され、この取付穴に連結ピン29が挿通されている。また、この連結ピン29は、後述するダイヤフラム式アクチュエータ50の作動ロッド51の先端部である他端部51bに形成された取付穴に挿通されている。連結ピン29の一方の端部はカシメによって作動ロッド51に固定されている。連結ピン29の他方の端部には、クリップ30が装着されて、連結ピン29の取付穴からの脱落が防止されている。ステム21は、リンク部材28及び連結ピン29を介して、ダイヤフラム式アクチュエータ50の作動ロッド51に連結されている。
【0026】
(ダイヤフラム式アクチュエータ)
次に、ダイヤフラム式アクチュエータ50について説明する。ダイヤフラム式アクチュエータ50は、
図2及び
図3に示されるように、コンプレッサハウジング5から側方に突出するブラケット18に固定されている。
【0027】
ダイヤフラム式アクチュエータ50は、
図4に示されるように、作動ロッド51と、この作動ロッド51を軸線方向に駆動するアクチュエータ本体52とを備えている。アクチュエータ本体52は、作動ロッド51に連結され作動ロッド51に駆動力を伝達するダイヤフラム53と、ダイヤフラム53の一方側に隣接する低圧室54と、ダイヤフラム53の他方側に隣接する高圧室55と、低圧室54の内部に設けられ、ダイヤフラム53を高圧室55側に付勢する復帰スプリング56とを備えている。作動ロッド51は、アクチュエータ本体52によって駆動される棒状の部材である。
【0028】
アクチュエータ本体52は、内部に低圧室54を形成する低圧側カップ部58と、内部に高圧室55を形成する高圧側カップ部59とを備える。低圧側カップ部58及び高圧側カップ部59は、鉄などの金属から形成されている。低圧側カップ部58は、円筒部58aと、この円筒部58aの一端側(図示右側)を閉じる背面壁58bとを備えている。円筒部58aの他端側には、開口部の周縁部から円筒部58aの径方向に張り出すフランジ部58cが設けられている。また、円筒部58aには、ノズル58dが設けられている。このノズル58dには、低圧室54の内部の圧力を減圧することができる負圧ポンプ(不図示)が接続されている。
【0029】
高圧側カップ部59は、円筒部59aと、この円筒部59aの他端側(図示左側)を閉じる正面壁(壁体)59bとを備えている。円筒部59aの一端側には、開口部の周縁部から円筒部59aの径方向に張り出すフランジ部59cが設けられている。高圧側カップ部59の円筒部59aの内径は、低圧側カップ部58の円筒部58aの内径に対応している。なお、円筒部58a,59a同士の内径は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。また、正面壁59bの中央部には、作動ロッド51を挿通させる開口部が形成されている。
【0030】
低圧側カップ部58及び高圧側カップ部59は、作動ロッド51の軸線方向において、ダイヤフラム53を挟んで、互いの開口部が対向するように配置されて接合されている。ダイヤフラム53は、例えば円形を成し、ダイヤフラム53の周縁部は、低圧側カップ部58及び高圧側カップ部59のフランジ部58c,59cによって挟持されている。低圧側カップ部58及び高圧側カップ部59のフランジ部58c,59c同士は、例えばカシメによって接合されている。低圧側カップ部58と高圧側カップ部59とは、例えば、溶接によって接合されていてもよく、ねじを用いて接合されていてもよく、その他の方法によって接合されていてもよい。
【0031】
ダイヤフラム53は、円筒部58a,59aの内径よりも大きな外径を有している。低圧側カップ部58及び高圧側カップ部59の内部において、ダイヤフラム53の中央部が作動ロッド51の軸線方向に移動可能となっている。
【0032】
ダイヤフラム53の一方(図示右側)の面には、低圧側リテーナ61が設けられ、ダイヤフラム53の他方(図示左側)の面には、高圧側リテーナ62が設けられている。低圧側リテーナ61及び高圧側リテーナ62は、例えば鉄などの金属から形成されている。低圧側リテーナ61は、ダイヤフラム53の一方の面に当接する円盤状のリテーナ本体61aと、リテーナ本体61aの外周側の周縁部から作動ロッド51の軸線方向に突出する突出部61bと、を備えている。高圧側リテーナ62は、ダイヤフラム53の他方の面に当接する円盤状のリテーナ本体62aと、リテーナ本体62aの外周側の周縁部から作動ロッド51の軸線方向に突出する突出部(リム)62bと、を備えている。高圧側リテーナ62のリテーナ本体62aの外径は、低圧側リテーナ61のリテーナ本体61aの外径より小さくなっている。また、リテーナ本体61a,62aの中央部には、開口部が形成されている。
【0033】
作動ロッド51の一端部51aは、ダイヤフラム53に連結されている。具体的には、作動ロッド51の一端部51aは、高圧側リテーナ62の開口部、ダイヤフラム53の開口部、及び低圧側リテーナ61の開口部に挿通されて、例えば、カシメによって、高圧側リテーナ62及び低圧側リテーナ61に対して固定されている。高圧側リテーナ62及び低圧側リテーナ61は、作動ロッド51の軸線方向において両側から、ダイヤフラム53の中央部を挟んで支持している。なお、作動ロッド51と、ダイヤフラム53との連結方法は、カシメによって連結する方法に限定されない。例えば、作動ロッド51の一端部にネジ部を形成し、このネジ部にナットを締め付けることで、作動ロッド51を、高圧側リテーナ62及び低圧側リテーナ61を介して、ダイヤフラム53に連結してもよい。
【0034】
また、復帰スプリング56は、例えば圧縮コイルバネであり、復帰スプリング56の一端部は、低圧側カップ部58の背面壁58bに当接し、復帰スプリング56の他端部は、低圧側リテーナ61のリテーナ本体61aに当接している。復帰スプリング56は、作動ロッド51の軸線方向に伸長、圧縮可能であり、低圧側リテーナ61を高圧室55側に付勢することで、ダイヤフラム53を高圧室55側に付勢する。
【0035】
作動ロッド51は、ダイヤフラム53から高圧室55側に延在し、高圧側カップ部59の正面壁59bを貫通して、高圧室55の外部に延出している。正面壁59bの開口部に対応する位置には、作動ロッド51を保持する軸受け部63が設けられている。
【0036】
軸受け部63は、円筒状のブッシュ64と、ブッシュ64を収容するブッシュ収容部65とを備えている。ブッシュ収容部65は、円筒部65aと、背面壁(壁体)65bと、フランジ部65cと、を備える。円筒部65aは、ブッシュ64の外周面を覆うように配置されている。背面壁65bは、円筒部65aの一端側で、径方向の内側に張り出すように形成されている。背面壁65bの中央部には、作動ロッド51を挿通させる開口部が形成されている。背面壁65bは、ブッシュ64の一端側の端面を覆うように配置されている。
【0037】
フランジ部65cは、円筒部65aの他端側で、径方向の外側に張り出すように形成されている。フランジ部65cは、高圧側カップ部59の正面壁59bの内壁面(室内側の面)に対して固定されている。フランジ部65cは、例えば溶接によって高圧側カップ部59に接合されている。ブッシュ64は、作動ロッド51の軸線方向において、高圧側カップ部59の正面壁59bと、ブッシュ収容部65の背面壁65bとの間に配置されている。
【0038】
また、ブッシュ収容部65は、正面壁59bから内側に張り出すように配置されている。換言すると、ブッシュ収容部65の背面壁65bは、高圧側カップ部59の正面壁59bよりもダイヤフラム53に近い位置に配置されている。ブッシュ収容部65の背面壁65bは、作動ロッド51の軸線方向において高圧側リテーナ62に対向している。
【0039】
ここで、ダイヤフラム式アクチュエータ50は、高圧室55の内部で、作動ロッド51の軸線方向において、高圧側リテーナ62と、ブッシュ収容部65の背面壁65bとの間に、防振シート(弾性部材)66を備えている。
【0040】
防振シート66は、例えばリング状に形成されたゴム板(板状部)である。防振シート66の中央開口部は、作動ロッド51を挿通させる開口である。防振シート66の外径は、ブッシュ収容部65の背面壁65bの外径に対応している。また、防振シート66は、防振シート66の板厚方向が、作動ロッド51の軸線方向に沿うように配置されている。防振シート66の一方の面は、高圧側リテーナ62のリテーナ本体62aと対面するように配置され、防振シート66の他方の面は、ブッシュ収容部65の背面壁65bの内壁面(リテーナに対向する壁面)と対面している。防振シート66は、例えば接着により、ブッシュ収容部65の背面壁65bの内壁面に取り付けられている。
【0041】
また、防振シート66の材質は、例えば、シリコンゴム、クロロプレンゴム等の耐熱性のゴムである。なお、高圧室55の内部の温度は、過給機1の使用状態において、例えば、100℃程度である。
【0042】
次に、過給機1の作用、効果について説明する。
【0043】
排気ガス流入口8から流入した排気ガスはタービンスクロール流路4aを通過して、タービン翼車6の入口側に供給される。タービン翼車6は供給された排気ガスの圧力を利用して、回転力を発生させ、回転軸14及びコンプレッサ翼車7をタービン翼車6と一体的に回転させる。これにより、コンプレッサ3の吸入口9から吸入した空気を、コンプレッサ翼車7を用いて圧縮する。コンプレッサ翼車7によって圧縮された空気は、ディフューザー流路5a及びコンプレッサスクロール流路5bを通過して吐出口11から排出される。吐出口11から排出された空気は、エンジンに供給される。
【0044】
例えば、過給機1の運転中に、過給圧(吐出口11から排出される空気の圧力)が設定圧未満である場合には、負圧ポンプによって、ダイヤフラム式アクチュエータ50の低圧室54に負圧が印加されている。このとき、高圧室55の内部圧力は、低圧室54の内部圧力より高く、高圧室55の内部圧力によって、ダイヤフラム53が付勢されて、ダイヤフラム53の中央部は低圧室54側に移動する。復帰スプリング56は圧縮された状態となっている。
【0045】
低圧室54に負圧が印加されている状態では、ダイヤフラム53の中央部は低圧側カップ部58の背面壁58bに接近した状態となっている。作動ロッド51は軸線方向において一端側に引っ張られた状態であり、作動ロッド51による引張力は、この作動ロッド51に連結されたリンク部材28、ステム21及び揺動片22を介して、弁体23に伝達される。これにより、弁体23は、バイパス通路17の開口部の周縁部に押し当てられて、ウェイストゲートバルブ20は、閉状態となる。すなわち、タービン2において、バイパス通路17による排気ガスのバイパスは行われていない状態となっている。
【0046】
そして、過給機1の運転中に、過給圧が設定圧に達すると、負圧ポンプによる負圧の印加状態が解除されて、低圧室54の内部圧力が上昇して、低圧室54の内部圧力は高圧室55の内部圧力に近づくことになる。このとき、圧縮された状態であった復帰スプリング56は伸長され、ダイヤフラム53は、復帰スプリング56によって付勢されて、ダイヤフラム53の中央部は高圧室55側に移動する。
【0047】
ダイヤフラム53の中央部が高圧室55側に移動すると、ダイヤフラム53の中央部の移動に伴って、作動ロッド51は軸線方向において、他端側に移動する。作動ロッド51は軸線方向において他端側に押された状態であり、作動ロッド51による押出し力は、リンク部材28に伝達される。リンク部材28は、ステム21を中心として揺動し、ステム21がその軸線回りに回転して、揺動片22が揺動する。これにより、弁体23は、バイパス通路17の開口部の周縁部から離間し、ウェイストゲートバルブ20は、開状態となる。これにより、排気ガス流入口8から流入した排気ガスの一部は、バイパス通路17を通過し、タービン翼車6をバイパスする。そのため、タービン翼車6に供給される排気ガスの流量を減少させることができる。
【0048】
ウェイストゲートバルブ20が開状態であり、ダイヤフラム53の中央部の高圧室55側への移動が最大となった場合には、高圧側リテーナ62のリテーナ本体62aが、防振シート66に当接した状態となっている。換言すれば、防振シート66は、作動ロッド51の軸線方向において、リテーナ本体62aとブッシュ収容部65の背面壁65bによって挟まれた状態となっている。
【0049】
この状態において、例えば、弁体23が振動した場合には、この弁体23の振動は、揺動片22、ステム21、リンク部材28、作動ロッド51、ダイヤフラム53及び高圧側リテーナ62に伝達されるが、高圧側リテーナ62の振動は、防振シート66によって減衰されることになる。これにより、高圧側リテーナ62の振動が抑制されるので、ダイヤフラム53、作動ロッド51、リンク部材28、ステム21、揺動片22及び弁体23の振動が抑制されることになる。
【0050】
また、このダイヤフラム式アクチュエータ50では、ブッシュ収容部65の背面壁65bの内壁面に、防振シート66が取り付けられているので、高圧側リテーナ62と背面壁65bとの接触が防止される。そのため、高圧側リテーナ62と背面壁65bとが当たって異音が生じるおそれがない。また、ブッシュ収容部65が、高圧側カップ部59の正面壁59bよりも、高圧側リテーナ62側に突出しているので、高圧側リテーナ62が正面壁59bに当たる前に、高圧側リテーナ62が防振シート66に当たることになる。そのため、高圧側リテーナ62と高圧側カップ部59とが当たって異音が生じるおそれがない。
【0051】
また、このダイヤフラム式アクチュエータ50では、ブッシュ収容部65に防振シート66が取り付けられているので、アクチュエータ本体52の固有振動数を変化させることができ、アクチュエータ本体52の振動を抑制して、作動ロッド51の振動を抑制することができる。これにより、作動ロッド51の振動を抑制して、弁体23の振動を抑制することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、第2実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ50Bについて説明する。第2実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ50Bが、第1実施形態のダイヤフラム式アクチュエータ50と異なる点は、防振シート66に代えて、圧縮コイルバネ(弾性部材)67を備える点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0053】
圧縮コイルバネ67は、作動ロッド51の軸線方向において、ブッシュ収容部65の背面壁65bと、リテーナ本体62aとの間に配置されている。圧縮コイルバネ67は、作動ロッド51と同軸となるように配置され、圧縮コイルバネ67の一端部は、リテーナ本体62aに当接し、圧縮コイルバネ67の他端部は、背面壁65bの壁面に当接している。
【0054】
この圧縮コイルバネ67の外径は、例えば、背面壁65bの外径に対応している。圧縮コイルバネ67のバネ定数は、低圧室54の内部に配置された復帰スプリング56のバネ定数より低く、例えば、復帰スプリング56のバネ定数の1/10〜1/5である。例えば、高圧室55の内部圧力と、低圧室54の内部圧力とが等しい場合には、ダイヤフラム53の中央部は、復帰スプリング56によって付勢されて、高圧室55側に移動にし、圧縮コイルバネ67は圧縮された状態となる。
【0055】
この第2実施形態のダイヤフラム式アクチュエータ50Bによれば、弁体23が振動して、ダイヤフラム53及び高圧側リテーナ62に振動が伝達されると、圧縮コイルバネ67によって高圧側リテーナ62及びダイヤフラム53の振動が減衰されて、作動ロッド51の振動が抑制される。そのため、ダイヤフラム式アクチュエータ50の弁体23の振動が抑制される。
【0056】
また、ダイヤフラム式アクチュエータ50Bでは、バルブが全開となっていない状態においても、高圧側リテーナ62と圧縮コイルバネ67とが接触しているので、バルブの開度によらず、作動ロッド51の振動が抑制される。
【0057】
なお、第2実施形態では、圧縮コイルバネ67の他端部が、ブッシュ収容部65の背面壁65bに当接するように配置されているが、例えば、圧縮コイルバネ67の他端部は、高圧側カップ部59の正面壁59bの内壁面に当接するように配置されていてもよい。また、圧縮コイルバネ67は、複数設けられていてもよく、例えば、作動ロッド51の外側に配置され、作動ロッド51を挿通させないように配置されているものでもよい。
【0058】
また、圧縮コイルバネ67の軸線方向の長さは、背面壁65bとリテーナ本体62aとの距離よりも短いものでもよい。例えば、圧縮コイルバネ67の他端部が背面壁65bに対して取り付けられ、圧縮コイルバネ67の一端部が、リテーナ本体62aに対して、離間して配置されている構成でもよい。この構成の場合には、ダイヤフラム53の高圧室55側への移動量が増加したときに、リテーナ本体62aと圧縮コイルバネ67とが当接して、高圧側リテーナ62の振動が減衰される。
【0059】
また、圧縮コイルバネ67の一端部がリテーナ本体62aに対して取り付けられ、圧縮コイルバネ67の他端部が、背面壁65bに対して離間して配置されている構成でもよい。この構成の場合には、ダイヤフラム53の高圧室55側への移動量が増加したときに背面壁65bと圧縮コイルバネ67とが当接して、高圧側リテーナ62の振動が減衰される。
【0060】
(第3実施形態)
次に、
図6を参照して、第3実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ50Cについて説明する。第3実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ50Cが、第1実施形態のダイヤフラム式アクチュエータ50と異なる点は、正面壁59bから高圧室55の内部に張り出すように配置された軸受け部63に代えて、正面壁59bから高圧室55の外部に張り出すように配置された軸受け部68を備える点、及びブッシュ収容部65の背面壁65bに取り付けられた防振シート66に代えて、正面壁59bの内壁面に取り付けられた防振シート69を備える点である。なお、第3実施形態の説明において、第1,第2実施形態と同様の説明は省略する。
【0061】
軸受け部68は、ブッシュ64と、ブッシュ収容部65とを備えている。ブッシュ収容部65は、円筒部65aと、正面壁65dとを備える。円筒部65aは、高圧側カップ部59の正面壁59bから作動ロッド51の他端側へ張り出すように形成されている。円筒部65aの一端側は、高圧側カップ部59の正面壁59bに連続して設けられている。ブッシュ収容部65の正面壁65dは、円筒部65aの他端側で、円筒部65aから径方向の内側に張り出すように形成されている。正面壁65dの中央部には、作動ロッド51を挿通させる開口部が形成されている。正面壁65dは、ブッシュ64の他端側の端面を覆うように配置されている。
【0062】
防振シート69は、例えば円盤状のゴム板(板状部)である。防振シート69の中央部には、作動ロッド51を挿通させる開口部が形成されている。また、防振シート69の外径は、高圧側リテーナ62の突出部62bの外径よりも大きな寸法である。防振シート69は、例えば接着によって、正面壁59bに取り付けられている。
【0063】
この構成のダイヤフラム式アクチュエータ50Cでは、ダイヤフラム53の中央部の高圧室55側への移動量が最大となると、高圧側リテーナ62の突出部62bの端面が防振シート69に当接する。これにより、弁体23の振動が、ダイヤフラム53及び高圧側リテーナ62に伝わると、防振シート69によって高圧側リテーナ62及びダイヤフラム53の振動が減衰される。そのため、作動ロッド51の振動が抑制されて、ダイヤフラム式アクチュエータ50の弁体23の振動が抑制される。
【0064】
なお、第3実施形態では、防振シート69が正面壁59bに取り付けられているが、防振シートは、例えば、高圧側リテーナ62に取り付けられていてもよい。例えば、防振シートは、リング状を成し、高圧側リテーナ62の突出部62bの端面を覆うように配置されている構成でもよい。
【0065】
(第4実施形態)
次に、
図7を参照して、第4実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ50Dについて説明する。第4実施形態に係るダイヤフラム式アクチュエータ50Dが、第3実施形態のダイヤフラム式アクチュエータ50Cと異なる点は、防振シート69に代えて、防振シート70を備える点である。なお、第4実施形態の説明において、第1、第2、第3実施形態と同様の説明は省略する。
【0066】
防振シート70は、例えば円錐台状の山型が形成された板状のゴム部材である。防振シート70は、円盤状を成し、正面壁59bと離間して配置された背面部(板状部)70aと、背面部70aの外周側の縁部から正面壁59b側に延びる筒状部(延出部)70bと、筒状部70bの正面壁59b側の端部から径方向外側に張り出すフランジ部70cと、を備える。
【0067】
背面部70aは、作動ロッド51の軸線方向において正面壁59bと離間し、ダイヤフラム53側に配置されている。背面部70aと正面壁59bとの間には、所定の空間が形成されている。背面部70aの中央部には、作動ロッド51を挿通させる開口部が形成されている。背面部70aは、作動ロッド51の軸線方向において高圧側リテーナ62に対向する壁面を形成する。背面部70aの外径は、例えば、高圧側リテーナ62の突出部62bの内径よりも小さい寸法である。
【0068】
筒状部70bは、円錐状に形成され、正面壁59bに近づくほど内径が大きくなっている。作動ロッド51の軸線方向において、筒状部70bの一方の端部は、背面部70aに接続され、筒状部70bの他方の端部は、正面壁59bの内壁面に当接している。筒状部70bの他方の端部の外径は、一方の端部の外径よりも大きく、例えば、高圧側リテーナ62の突出部62bの内径よりも小さい寸法である。
【0069】
また、フランジ部70cは、作動ロッド51の軸線方向において、例えば高圧側リテーナ62の突出部62bに対向するように配置されている。フランジ部70cは、例えば接着によって、正面壁59bの内壁面に取り付けられている。フランジ部70cの外径は、高圧側リテーナ62の突出部62bの外径よりも大きい寸法でもよく、突出部62bの外径よりも小さい寸法でもよい。
【0070】
防振シート70は、例えば板状のゴム部材から形成することができる。円錐台状の山型を形成する基台に対してゴム部材を押し当ててプレスすることで、防振シート70を成形することができる。
【0071】
この構成のダイヤフラム式アクチュエータ50Dでは、ダイヤフラム53の中央部の高圧室55側へ移動し、この移動量が最大となると、高圧側リテーナ62のリテーナ本体62aが防振シート70の背面部70aに当接する。これにより、弁体23の振動が、ダイヤフラム53及び高圧側リテーナ62に伝わり、防振シート70によって高圧側リテーナ62及びダイヤフラム53の振動が減衰される。そのため、作動ロッド51の振動が抑制されて、ダイヤフラム式アクチュエータ50の弁体23の振動が抑制される。
【0072】
なお、第4実施形態では、第3実施形態と同様に、防振シート70が正面壁59bに取り付けられているが、防振シート70は、例えば、高圧側リテーナ62に取り付けられていてもよい。例えば、防振シート70の背面部70aの外径が、高圧側リテーナ62の突出部62bの外径よりも大きく、背面部70aが突出部62bの端面を覆うように配置されている構成でもよい。
【0073】
また、防振シート70に形成される山型の形状は、円錐台状に限定されない。例えば、円筒状にしてもよく、直方体状にしてもよい。また、山型の側面は、筒状に限定されず、周方向に間隔を開けて配置された複数の脚形状の延出部を備えるものでもよい。
【0074】
また、防振シート70は、フランジ部70cを備える構成としているが、フランジ部70cを備えていない構成でもよい。また、防振シート70は、筒状部70bの正面壁59b側の端部において、径方向内側に張り出すフランジ部を備える構成でもよく、筒状部70bの正面壁59b側の端部を閉じるように形成された円盤状の正面部を備える構成でもよい。
【0075】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0076】
上記実施形態では、ダイヤフラム式アクチュエータ50を、過給機1のウェイストゲートバルブ20の駆動源として用いているが、その他のバルブを開閉するための駆動源として用いてもよい。また、ダイヤフラム式アクチュエータ50は、バルブ以外の対象物を駆動させる駆動源として利用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、弾性部材として、防振シート66,69,70及び圧縮コイルバネ67を例示しているが、弾性部材は、例えば、皿ばね、板ばね等その他のばね部材でもよい。例えば、同一種類の複数のばね部材が、作動ロッド51の軸線方向に重なるように配置されている構成でもよく、複数種類のばね部材が作動ロッド51の軸線方向に重なるように配置されている構成でもよい。例えば、
図6に示されるような防振シート69が複数枚重ねられている構成でもよく、厚みや材質が異なる複数の防振シートが重ねられている構成でもよい。また、防振シート69のダイヤフラム53側に防振シート70が配置されている構成でもよい。また、防振シート66、69、70のダイヤフラム53側に圧縮コイルバネが配置されている構成でもよく、防振シート66、69、70の正面壁59b側に圧縮コイルバネが配置されている構成でもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、弾性部材をブッシュ収容部65の背面壁65bに取り付ける場合、弾性部材を高圧側カップ部59の正面壁59bに取り付ける場合、弾性部材を高圧側リテーナ62に取り付ける場合について、例示しているが、弾性部材はその他の部位に取り付けられていてもよい。例えば、弾性部材は、高圧側カップ部59の円筒部59aの内周面に対して取り付けられている構成でもよく、他の部材を介して、高圧側カップ部59に取り付けられている構成でもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、高圧側リテーナ62は、高圧室55の内部に突出する突出部62bを備える構成としているが、高圧側リテーナ62は、高圧室55の内部に突出する突出部62bを備えていない構成でもよい。また、突出部62bは、リテーナ本体62aの外周部から突出するものに限定されず、径方向における中間部から突出する構成でもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ウェイストゲートバルブ20が採用された過給機1を車両用として例示しているが、過給機は車両用に限定されず、船舶用のエンジンに用いられてもよく、その他のエンジンに用いられてもよい。