(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本技術の実施形態について以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(リチウムイオン伝導体の例)
1.1 リチウムイオン伝導体の構成
1.2 リチウムイオン伝導体の製造方法
1.3 効果
1.4 変形例
2.第2の実施形態(電池の例)
2.1 電池の構成
2.2 電池の製造方法
2.3 効果
2.4 変形例
3.第3の実施形態(電子機器の例)
3.1 電子機器の構成
3.2 変形例
【0015】
<1 第1の実施形態>
[1.1 リチウムイオン伝導体の構成]
本技術の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、粉末であり、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)およびP(リン)のうち1種以上と、Li(リチウム)と、O(酸素)とを含んでいる。具体的には、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとを含んでいる。なお、リチウムイオン伝導体の形態は粉末に限定されるものではなく、薄膜やブロックであってもよい。
【0016】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、電気化学デバイスに用いて好適なものである。電気化学デバイスは、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には例えば、Liなどを用いる各種の電池、キャパシタ、ガスセンサ、Liイオンフィルタなどである。電池は、例えば一次電池、二次電池、空気電池、燃料電池などである。二次電池は、例えばリチウムイオン電池であり、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を固体電解質として使用することで全固体リチウムイオン電池を実現することができる。但し、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、全固体電池および液系電池のいずれにも使用することができる。
【0017】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を電池に適用する場合、例えば、電池の固体電解質、結着剤または被覆剤として用いることができる。なお、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、固体電解質、結着剤および被覆剤のうちの2以上の機能を有する材料として用いることも可能である。
【0018】
具体的には例えば、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を用いて固体電解質層を形成してもよいし、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を固体電解質および/または結着剤として電極または活物質層に含ませてもよい。
【0019】
また、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を用いて、固体電解質層前駆体、電極層前駆体または活物質層前駆体としてのセラミックグリーンシート(以下単に「グリーンシート」という。)または圧粉体を形成してもよいし、固体電解質層、電極または活物質層としての焼結体を形成してもよい。
【0020】
また、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を電極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆するため表面被覆剤として用いてもよい。この場合、電解液と電極活物質との反応を抑制することができる。例えば、LCO(LiCoO
2)系、NCM(Li[NiMnCo]O
2)などの正極活物質粒子の表面被覆剤として用いた場合には、それらの正極活物質粒子からの酸素放出を抑制することができる。
【0021】
また、硫黄系全固体電池において、電極活物質と硫黄系固体電解質の反応抑制のために、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を電極活物質粒子に表面被覆剤として用いてもよい。
【0022】
また、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を電池用セパレータに添加する添加剤、または電池用セパレータの表面を被覆する被覆剤として用いてもよい。この場合、電池の安全性を向上することができる。
【0023】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、例えば、非晶質(アモルファス)、結晶質、または非晶質と結晶質とが混在したものである。ここで、結晶質とは、単結晶のみならず、多数の結晶粒が集合した多結晶も含むものとする。結晶質とは、X線回折や電子線回折においてピークが観測されるなど、結晶学的に単結晶や多結晶である状態をいう。非晶質とは、X線回折や電子線回折においてハローが観測されるなど、結晶学的に非晶質である状態をいう。非晶質と結晶質とが混在したものとは、X線回折や電子線回折においてピークおよびハローが観測されるなど、結晶学的に非晶質と結晶質とが混在している状態をいう。
【0024】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結温度は、好ましくは600℃以下、より好ましくは300℃以上600℃以下、さらに好ましくは300℃以上500℃以下である。焼結温度が600℃以下であると、焼成工程(焼結工程)においてリチウムイオン伝導体と電極活物質とが反応して、不導体などの副生成物が形成されることを抑制できる。したがって、電池特性の低下を抑制できる。また、電極活物質の種類の選択幅が広がるので、電池設計の自由度を向上できる。焼結温度が500℃以下であると、負極活物質として炭素材料を用いることが可能となる。したがって、電池のエネルギー密度を向上できる。また、導電剤として炭素材料を用いることができるので、電極層または電極活物質層に良好な電子伝導パスを形成し、電極層または電極活物質層の伝導性を向上できる。一方、焼結温度が300℃以上であると、焼成工程(焼結工程)において、電極前駆体および/または固体電解質前駆体に含まれる、アクリル樹脂などの有機結着剤を焼失させることができる。
【0025】
Li
2Oの含有量は、20mol%以上75mol%以下、好ましくは25mol%を超え75mol%以下、より好ましくは30mol%以上75mol%以下、さらにより好ましくは40mol%以上75mol%以下、特に好ましくは50mol%以上75mol%以下である。リチウムイオン伝導体がGeO
2を含む場合、このGeO
2の含有量は、0mol%を超え80mol%以下であることが好ましい。リチウムイオン伝導体がSiO
2を含む場合、このSiO
2の含有量は、0mol%を超え70mol%以下であることが好ましい。リチウムイオン伝導体がB
2O
3を含む場合、このB
2O
3の含有量は、0mol%を超え60mol%以下であることが好ましい。リチウムイオン伝導体がP
2O
5を含む場合、このP
2O
5の含有量は、0mol%を超え50mol%以下であることが好ましい。なお、上記各酸化物の含有量は、リチウムイオン伝導体中における各酸化物の含有量であり、具体的には、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとの合計量(mol)に対する各酸化物の含有量(mol)の割合を百分率(mol%)で示している。各酸化物の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)などを用いて測定することが可能である。
【0026】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、必要に応じて添加元素をさらに含んでいてもよい。添加元素としては、例えば、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr、Mn(マンガン)、Fe、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga、Se(セレン)、Rb(ルビジウム)、S(硫黄)、Y、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)、Cs(セシウム)、Ba(バナジウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Au(金)、La、Nd(ネオジム)およびEu(ユーロピウム)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体が、これらの添加元素からなる群より選ばれる1種以上を酸化物として含んでいてもよい。
【0027】
[1−2 リチウムイオン伝導体の製造方法]
以下、本技術の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の製造方法の一例について説明する。
【0028】
まず、原料として、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとを混合する。これらのGeO
2、SiO
2、B
2O
3、P
2O
5およびLi
2Oの配合量は、例えば、上述のリチウムイオン伝導体中におけるこれらの材料の含有量と同様である。なお、原料として、必要に応じて上記添加元素またはその酸化物などをさらに混合しておよい。
【0029】
次に、原料をガラス化することで、リチウムイオン伝導体を作製する。原料をガラス化する方法として、例えば、原料を融液まで溶融し、放冷する方法、融液を金属板などでプレスする方法、水銀中に投下する方法、ストリップ炉、スプラット急冷、ロール法(シングル、ツイン)の他に、メカニカルミリング法、ゾル−ゲル法、蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、PLD(パルスレーザーディポジッション)法、プラズマ法などが挙げられる。
【0030】
次に、リチウムイオン伝導体を粉体化する。粉体化の方法としては、例えばメカノケミカル法などが挙げられる。以上により、目的とするリチウムイオン伝導体の粉末が得られる。
【0031】
[1.3 効果]
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の粉末は、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとを含み、Li
2Oの含有量が20mol%以上75mol%以下である。このため、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の粉末は、低温で焼結することができる。したがって、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を用いて電極を作製する場合、電極活物質とリチウムイオン伝導体との反応を抑制でき、電池特性の低下を抑制できる。また、電極活物質の種類の選択幅が広がるので、電池設計の自由度が高くなる。また、電池の製造工程における焼成温度(焼結温度)を低温にできるので、電池製造のコストを低減できる。
【0032】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体は、無機固体電解質として用いることができる。無機固体電解質は、電位窓、Liイオン輸率および安全性(不燃性)などの点で有機固体電解質に比して優れている。
【0033】
[1.4 変形例]
リチウムイオン伝導体が、Ge、Si、BおよびPのうち2種以上、3種以上または4種全てと、Liと、Oとを含んでいてもよい。具体的には、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち2種以上、3種以上または4種全てと、Li
2Oとを含んでいてもよい。
【0034】
<2 第2の実施形態>
第2の実施形態では、上述の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体を固体電解質として正極、負極および固体電解質層に含む電池について説明する。
【0035】
[2.1 電池の構成]
本技術の第2の実施形態に係る電池は、いわゆるバルク型全固体電池であり、
図2に示すように、正極11と負極12と固体電解質層13とを備え、固体電解質層13は正極11と負極12との間に設けられている。この電池は、電極反応物質であるLiの授受により電池容量が繰り返して得られる二次電池であり、リチウムイオンの吸蔵放出により負極の容量が得られるリチウムイオン二次電池であってもよいし、リチウム金属の析出溶解により負極の容量が得られるリチウム金属二次電池であってもよい。
【0036】
(正極)
正極11は、1種類または2種類以上の正極活物質と、固体電解質とを含んでいる正極活物質層である。固体電解質が、結着剤としての機能を有していてもよい。正極11は、必要に応じて導電剤をさらに含んでいてもよい。正極11は、例えば、正極前駆体としてのグリーンシート(以下「正極グリーンシート」という。)の焼成体である。
【0037】
正極活物質は、例えば、電極反応物質であるリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極材料を含んでいる。この正極材料は、高いエネルギー密度が得られる観点から、リチウム含有化合物などであることが好ましいが、これに限定されるものではない。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)や、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物(リチウム遷移金属リン酸化合物)などである。中でも、遷移金属元素は、Co、Ni、MnおよびFeのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より高い電圧が得られるからである。
【0038】
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、Li
xM1O
2またはLi
yM2O
4などで表されるものである。より具体的には例えば、リチウム遷移金属複合酸化物は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiVO
2、LiCrO
2またはLiMn
2O
4などである。また、リチウム遷移金属リン酸化合物は、例えば、Li
zM3PO
4などで表されるものである。より具体的には例えば、リチウム遷移金属リン酸化合物は、LiFePO
4またはLiCoPO
4などである。但し、M1〜M3は1種類または2種類以上の遷移金属元素であり、x〜zの値は任意である。
【0039】
この他、正極活物質は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどである。
【0040】
正極活物質は、正極活物質粒子の粉末である。正極活物質粒子の表面が、被覆剤により被覆されていてもよい。ここで、被覆は、正極活物質粒子の表面の全体に限定されるものではなく、正極活物質粒子の表面の一部であってもよい。被覆剤は、例えば、固体電解質および導電剤のうち少なくとも1種である。正極活物質粒子の表面を被覆剤で被覆することで、正極活物質粒子と固体電解質との界面抵抗を低減することができる。また、正極活物質粒子の構造の崩壊を抑制できるので、掃引電位幅を広げ、多くのリチウムを反応に使えるようになると共に、サイクル特性も向上できる。
【0041】
固体電解質は、上述の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体である。このリチウムイオン伝導体の焼結体は、例えば、非晶質、結晶質、または非晶質と結晶質とが混在したものである。なお、上記正極活物質粒子の被覆剤としての固体電解質も、上述の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体であってもよい。
【0042】
導電剤は、例えば、炭素材料、金属、金属酸化物および導電性高分子などを単独でまたは2種以上含んでいる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブなどを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。炭素繊維としては、例えば、気相成長炭素繊維(Vapor Growth Carbon Fiber:VGCF)などを用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを用いることができる。カーボンナノチューブとしては、例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)などのマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)などを用いることができる。金属としては、例えば、Ni粉末などを用いることができる。金属酸化物としては、例えば、SnO
2などを用いることができる。導電性高分子としては、例えば、置換または無置換のポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびこれらから選ばれる1種または2種からなる(共)重合体などを用いることができる。なお、導電剤は、導電性を有する材料であればよく、上述の例に限定されるものではない。
【0043】
(負極)
負極12は、1種類または2種類以上の負極活物質と、固体電解質とを含んでいる負極活物質層である。固体電解質が、結着剤としての機能を有していてもよい。負極12は、必要に応じて導電剤をさらに含んでいてもよい。負極12は、例えば、負極前駆体としてのグリーンシート(以下「負極グリーンシート」という。)の焼成体である。
【0044】
負極活物質は、例えば、電極反応物質であるリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極材料を含んでいる。この負極材料は、高いエネルギー密度が得られる観点から、炭素材料または金属系材料などであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0045】
炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)または高配向性グラファイト(HOPG)などである。
【0046】
金属系材料は、例えば、リチウムと合金を形成可能な金属元素または半金属元素を構成元素として含む材料である。より具体的には、金属系材料は、例えば、Si、Sn、Al、In、Mg、B、Ga、Ge、Pb、Bi、Cd(カドミウム)、Ag、Zn、Hf、Zr、Y、Pd(パラジウム)またはPt(白金)などの単体、合金または化合物のいずれか1種類または2種類以上である。但し、単体は、純度100%に限らず、微量の不純物を含んでいてもよい。金属系材料の具体例としては、Si、Sn、SiB
4、TiSi
2、SiC、Si
3N
4、SiO
v(0<v≦2)、LiSiO、SnO
w(0<w≦2)、SnSiO
3、LiSnO、Mg
2Snなどが挙げられる。
【0047】
金属系材料は、リチウム含有化合物またはリチウム金属(リチウムの単体)でもよい。リチウム含有化合物は、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)である。この複合酸化物としては、例えば、Li
4Ti
5O
12などが挙げられる。
【0048】
負極活物質は、負極活物質粒子の粉末である。負極活物質粒子の表面が、被覆剤で被覆されていてもよい。ここで、被覆は、負極活物質粒子の表面の全体に限定されるものではなく、負極活物質粒子の表面の一部であってもよい。被覆剤は、例えば、固体電解質および導電剤のうち少なくとも1種である。負極活物質粒子の表面を被覆剤で被覆することで、負極活物質粒子と固体電解質との界面抵抗を低減することができる。また、負極活物質粒子の構造の崩壊を抑制できるので、掃引電位幅を広げ、多くのリチウムを反応に使えるようになると共に、サイクル特性も向上できる。
【0049】
固体電解質は、上述の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体である。このリチウムイオン伝導体の焼結体は、例えば、非晶質、結晶質、または非晶質と結晶質とが混在したものである。なお、上記負極活物質粒子の被覆剤としての固体電解質も、上述の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体であってもよい。
【0050】
導電剤は、上述の正極11における導電剤と同様である。
【0051】
(固体電解質層)
固体電解質層13は、上述の第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体を含んでいる。このリチウムイオン伝導体の焼結体は、例えば、非晶質、結晶質、または非晶質と結晶質とが混在したものである。固体電解質層13は、例えば、固体電解質層前駆体としてのグリーンシート(以下「固体電解質グリーンシート」という。)の焼成体である。
【0052】
(電池の動作)
この電池では、例えば、充電時において、正極11から放出されたリチウムイオンが固体電解質層13を介して負極12に取り込まれると共に、放電時において、負極12から放出されたリチウムイオンが固体電解質層13を介して正極11に取り込まれる。
【0053】
[2.2 電池の製造方法]
次に、本技術の第2の実施形態に係る電池の製造方法の一例について説明する。この製造方法は、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体を形成する工程と、これらの前駆体を積層して焼成する工程とを備える。なお、この電池の製造方法では、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体がすべて、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を含んでいる場合を例として説明する。
【0054】
(正極前駆体の形成工程)
正極前駆体としての正極グリーンシートを次のようにして形成する。まず、正極活物質と、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体(固体電解質)と、有機系結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して、原料粉末としての正極合剤粉末を調製したのち、この正極合剤粉末を有機溶剤などに分散させて、正極グリーンシート形成用組成物としての正極スラリーを得る。なお、正極合剤粉末の分散性を向上させるため、分散を数回に分けて行ってもよい。
【0055】
有機系結着剤としては、例えば、アクリル樹脂などの有機結着剤を用いることができる。溶媒としては、正極合剤粉末を分散できるものであれば特に限定されないが、グリーンシートの焼成温度よりも低い温度領域で焼失するものが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどの炭素数が4以下の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジメチルエチルアミンなどのアミン類、テルピネオールなどの脂環族アルコールなどを単独または2種以上混合して用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。分散方法としては、例えば、攪拌処理、超音波分散処理、ビーズ分散処理、混錬処理、ホモジナイザー処理などが挙げられる。
【0056】
次に、必要に応じて、フィルタにより正極スラリーをろ過し、正極スラリー中の異物を除去するようにしてもよい。次に、必要に応じて、正極スラリーに対して、内部の気泡を除去するための真空脱泡を行うようにしてもよい。
【0057】
次に、例えば、支持基材の表面に正極スラリーを均一に塗布または印刷することにより、正極スラリー層を成形する。支持基体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子樹脂フィルムなどを用いることができる。塗布または印刷の方法としては、簡便で量産性に適した方法を用いることが好ましい。塗布方法としては、例えば、ダイコート法、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップ法、スピンコート法などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0058】
後工程にて正極グリーンシートを支持基材の表面から剥がしやすくするために、支持基材の表面に剥離処理を予め施しておくことが好ましい。剥離処理としては、例えば、剥離性を付与する組成物を支持基材の表面に予め塗布または印刷する方法が挙げられる。剥離性を付与する組成物としては、例えば、バインダーを主成分とし、ワックスやフッ素などが添加された塗料、またはシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0059】
次に、正極スラリー層を乾燥させることにより、支持基材の表面に正極グリーンシートを形成する。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、熱風などによる送風乾燥、赤外線や遠赤外線などによる加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法を単独で用いてもよいし、2以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(負極前駆体の形成工程)
負極前駆体としての負極グリーンシートを次のようにして形成する。まず、負極活物質と、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体(固体電解質)と、有機系結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して、原料粉末としての負極合剤粉末を調製したのち、この負極合剤粉末を有機溶剤などに分散させて、負極グリーンシート形成用組成物としての負極スラリーを得る。この負極スラリーを用いる以外のことは上述の「正極前駆体の形成工程」と同様にして、負極グリーンシートを得る。
【0061】
(固体電解質前駆体の形成工程)
固体電解質層前駆体としての固体電解質グリーンシートを次のようにして形成する。まず、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体(固体電解質)と、有機系結着剤とを混合して、原料粉末としての電解質合剤粉末を調製したのち、この電解質合剤粉末を有機溶剤などに分散させて、固体電解質グリーンシート形成用組成物としての電解質合剤スラリーを得る。この電解質合剤スラリーを用いる以外のことは上述の「正極前駆体の形成工程」と同様にして、固体電解質グリーンシートを得る。
【0062】
(前駆体の積層および焼成工程)
上述のようにして得られた正極グリーンシート、負極グリーンシートおよび固体電解質グリーンシートを用いて、次のようにして電池を作製する。まず、固体電解質グリーンシートを挟むように正極グリーンシートと負極グリーンシートとを積層して積層体する。その後、積層体を加熱するとともに、少なくとも積層体の厚さ方向に圧力が加わるように積層体をプレスする。これにより、積層体を構成する各グリーンシートに含まれる有機系結着剤が溶融されるとともに、積層体を構成する各グリーンシート間が密着される。積層体を加熱しながらプレスする具体的な方法としては、例えば、ホットプレス法、温間等方圧プレス(Warm Isostatic Press:WIP)などが挙げられる。
【0063】
次に、必要に応じて積層体を所定の大きさおよび形状に切断する。次に、積層体を焼成することにより、積層体を構成する各グリーンシート中に含まれるリチウムイオン伝導体を焼結させるとともに、有機系結着剤を焼失させる。
【0064】
積層体の焼成温度は、リチウムイオン伝導体の焼結温度以上、好ましくはリチウムイオン伝導体の焼結温度以上600℃以下、より好ましくはリチウムイオン伝導体の焼結温度以上500℃以下である。ここで、リチウムイオン伝導体の焼結温度とは、積層体に含まれるリチウムイオン伝導体が一種類である場合には、そのリチウムイオン伝導体の焼結温度を意味する。これに対して、積層体に含まれるリチウムイオン伝導体が2種以上である場合には、それらのリチウムイオン伝導体の焼結温度のうち最大のものを意味する。
【0065】
積層体の焼成温度がリチウムイオン伝導体の焼結温度以上であると、リチウムイオン伝導体の焼結が進行するので、正極、負極および固体電解質層のリチウムイオン伝導性を向上できる。また、正極、負極および固体電解質層の強度を高めることができる。積層体の焼成温度を600℃以下または500℃以下とする理由は、第1の実施形態において述べたリチウムイオン伝導体の焼結温度を600℃以下または500℃以下とする理由と同様である。
【0066】
焼成工程前において積層体に含まれるリチウムイオン伝導体が非晶質である場合には、焼成工程においてリチウムイオン伝導体を結晶質、または非晶質と結晶質とが混在したものとしてもよい。また、焼成工程前において積層体に含まれるリチウムイオン伝導体が非晶質と結晶質とが混在したものである場合には、焼成工程においてリチウムイオン伝導体を結晶質としてもよい。以上により、目的とする電池が得られる。
【0067】
[2.3 効果]
本技術の第2の実施形態では、正極グリーンシート、負極グリーンシートおよび固体電解質グリーンシートに含まれる固体電解質が、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体、すなわち低温焼結可能なリチウムイオン伝導体である。したがって、正極グリーンシート、負極グリーンシートおよび固体電解質グリーンシートの焼成温度を低温にすることができる。これにより、積層体の焼成工程における正極活物質および負極活物質のダメージを抑制し、電池特性の低下を抑制できる。また、正極活物質および負極活物質の種類の選択幅が広がり、電池設計の自由度が向上する。
【0068】
正極グリーンシート、負極グリーンシートおよび固体電解グリーンシートを低温にて一括焼成して全固体電池を作製することができる。したがって、焼成による正極11、負極12および固体電解質層13に対するダメージを抑制しつつ、正極11と固体電解質層13の間の界面抵抗、および負極12と固体電解質層13の間の界面抵抗を下げることができる。
【0069】
正極11および負極12内において、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体が焼結されているため、正極11および負極12の膜強度が高い。したがって、正極11および負極12の層厚を厚くした場合にも、電池性能を維持することができる。
【0070】
グリーンシートプロセスを用いて全固体電池を作製することで、電池容量に寄与しない外装材などの部材を無くす、または一般的な円筒型、角型またはスタック型のリチウムイオン電池に比べて電池容量に寄与しない外装材などの部材を減らすことができる。したがって、電池または電池パック全体に対する正極活物質および負極活物質の占有率を高めて、電池容量(エネルギー密度)を向上できる。
【0071】
電解質として固体電解質を用いているため、安全性が向上する。このため、電池構造や制御回路などを簡素化できる。したがって、電池の体積エネルギー密度および重量エネルギー密度が向上する。
【0072】
[2.4 変形例]
上述の第2の実施形態では、正極、負極がそれぞれ正極活物質層、負極活物質層のみにより構成された例について説明したが、正極および負極の構成はこれに限定されるものではない。例えば、
図2Aに示すように、正極21が、正極集電体21Aと、この正極集電体21Aの一方の面に設けられた正極活物質層21Bとを備えていてもよい。また、負極22が、負極集電体22Aと、この負極集電体22Aの一方の面に設けられた負極活物質層22Bとを備えるようにしてもよい。この場合、正極活物質層21Bと負極活物質層22Bとが対向するように、正極21と負極22とが固体電解質層13を介して積層される。なお、上述の第2の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
正極集電体21Aは、例えば、Al、Ni、ステンレス鋼などの金属を含んでいる。正極集電体21Aの形状は、例えば、箔状、板状、メッシュ状などである。正極活物質層21Bは、第2の実施形態における正極(正極活物質層)11と同様である。
【0074】
負極集電体22Aは、例えば、Cu、ステンレス鋼などの金属を含んでいる。負極集電体22Aの形状は、例えば、箔状、板状、メッシュ状などである。負極活物質層22Bは、第2の実施形態における負極(負極活物質層)12と同様である。
【0075】
なお、正極21および負極22のうち一方が集電体と活物質層とを備え、他方が活物質層のみを備える構成としてもよい。
【0076】
図2Bに示すように、電池が、正極31と、この正極31の両面に設けられた負極32と、正極31および負極32の間に設けられた固体電解質層13とからなる積層体を備える構成としてもよい。電池が、この積層体の両端に外装材33をさらに備えるようにしてもよい。固体電解質層13が積層体表面を覆っていてもよい。この場合、固体電解質層13が負極32の一方の端面を覆うように設けられて、積層体表面の固体電解質層13と、正極31と負極32との間に設けられた固体電解質層13とが繋がっていてもよい。また、固体電解質層13が正極31の他方の端面を覆うように設けられて、正極31の両面に設けられた固体電解質層13が繋がっていてもよい。なお、上述の変形例と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
正極31は、正極集電体21Aと、この正極集電体21Aの両面に設けられた正極活物質層21Bとを備える。負極32は、負極集電体22Aと、この負極集電体22Aの一方の面に設けられた負極活物質層22Bとを備える。外装材33は、例えばアクリル樹脂などの樹脂材料により構成されている。
【0078】
上述の第2の実施形態では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池に対して本技術を適用した例について説明したが、本技術はこの例に限定されるものではない。電極反応物質として、例えば、NaもしくはKなどの他のアルカリ金属、MgもしくはCaなどのアルカリ土類金属、またはAlもしくはAgなどのその他の金属を用いる電池に本技術を適用してもよい。
【0079】
上述の第2の実施形態では、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体がグリーンシートである場合を例として説明したが、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体が圧粉体であってもよい。正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体のうち1層または2層の前駆体がグリーンシートであり、残りが圧粉体であってもよい。正極前駆体としての圧粉体は、プレス機などで正極合剤粉末を加圧成形することで作製される。負極前駆体としての圧粉体は、プレス機などで負極合剤粉末を加圧成形することで作製される。固体電解質層前駆体としての圧粉体は、プレス機などで電解質合剤粉末を加圧成形することで作製される。なお、正極合剤粉末、負極合剤粉末および電解質合剤粉末は、有機系結着剤を含んでいなくてもよい。
【0080】
上述の第2の実施形態では、正極前駆体、固体電解質層前駆体および負極前駆体を積層してから焼成する例について説明したが、正極前駆体、固体電解質層前駆体および負極前駆体を焼成して焼成体(焼結体)としてから、これらの焼成体を積層して積層体を形成してもよい。この場合、積層体のプレス後に積層体を焼成しなくてもよいし、必要に応じて積層体のプレス後に積層体を焼成するようにしてもよい。
【0081】
正極前駆体、固体電解質層前駆体および負極前駆体のうち1層または2層の前駆体を予め焼成して焼成体(焼結体)とし、それ以外の残りの層を未焼成の前駆体のままとしておき、それらの焼成体と前駆体とを積層して積層体を形成してもよい。この場合、積層体のプレス後に積層体を焼成することが好ましい。
【0082】
正極前駆体、固体電解質層前駆体および負極前駆体のうちの2層を予め積層し焼成しておき、この積層体に残りの未焼成の1層を積層して積層体を形成してもよい。この場合、積層体のプレス後に積層体を焼成することが好ましい。
【0083】
正極前駆体、固体電解質層前駆体および負極前駆体のうちの2層の前駆体を予め積層し焼成するとともに、残り1層の前駆体を別途焼成して焼成体としておき、それらを積層して積層体を形成してもよい。この場合、積層体のプレス後に積層体を焼成しなくてもよいし、必要に応じて積層体のプレス後に積層体を焼成するようにしてもよい。
【0084】
上述の第2の実施形態では、正極前駆体、負極前駆体をそれぞれ正極グリーンシート、負極グリーンシートにより形成する場合を例として説明したが、正極前駆体および負極前駆体の少なくとも一方を以下のようにして形成してもよい。すなわち、固体電解質層前駆体または固体電解質層の一方の面に正極スラリーを塗布または印刷した後、乾燥させて正極前駆体を形成するようにしてもよい。また、固体電解質層前駆体または固体電解質層の他方の面に負極スラリーを塗布または印刷した後、乾燥させて負極前駆体を形成するようにしてもよい。
【0085】
上述の第2の実施形態では、正極、負極および固体電解質層のすべてが、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体を固体電解質として含んでいる構成を例として説明したが、本技術はこの構成に限定されるものではない。例えば、正極、負極および固体電解質層のうちの少なくとも1層が第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体を固体電解質として含んでいてもよい。より具体的には例えば、正極、負極および固体電解質層のうちの1層または2層が第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体の焼結体を固体電解質として含み、それ以外の残りの層が第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体以外のリチウムイオン伝導体を固体電解質として含むようにしてもよい。
【0086】
上述の第2の実施形態では、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体のすべてが、第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を含んでいる構成を例として説明したが、本技術はこの構成に限定されるものではない。例えば、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体のうちの少なくとも1層が第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を含んでいてもよい。より具体的には例えば、正極前駆体、負極前駆体および固体電解質層前駆体のうちの1層または2層が第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体を含み、それ以外の残りの層が第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体以外のリチウムイオン伝導体を含むようにしてもよい。
【0087】
第1の実施形態に係るリチウムイオン伝導体以外のリチウムイオン伝導体は、リチウムイオンを伝導可能なものであればよく特に限定されず、無機系または高分子系のリチウムイオン伝導体のいずれであってもよい。無機系のリチウムイオン伝導体としては、例えば、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
7P
3S
11、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S、Li
10GeP
2S
12などの硫化物や、Li
7La
3Zr
2O
12、Li
6.75La
3Zr
1.75Nb
0.25O
12、Li
6BaLa
2Ta
2O
12、Li
1+xAl
xTi
2-x(PO
4)
3、La
2/3-xLi
3xTiO
3などの酸化物が挙げられる。高分子のリチウムイオン伝導体としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。
【0088】
上述の第2の実施形態では、正極および負極の両方が固体電解質を含む電極である場合を例として説明したが、正極および負極のうちの少なくとも一方が固体電解質を含まない電極であってもよい。この場合、固体電解質を含まない電極は、例えば蒸着法またはスパッタ法などの気相成長法で作製されていてもよい。
【0089】
上述の第2の実施形態では、積層体をプレスした後、焼成する工程を例として説明したが、積層体をプレスしながら、焼成する工程を採用してもよい。
【0090】
上述の第2の実施形態に係る電池を複数積層して、積層型電池を構成してもよい。
【0091】
<3 第3の実施形態>
第3の実施形態では、第2の実施形態またはその変形例に係る二次電池を備える電子機器について説明する。
【0092】
[3.1 電子機器の構成]
以下、
図3を参照して、本技術の第3の実施形態に係る電子機器400の構成の一例について説明する。電子機器400は、電子機器本体の電子回路401と、電池パック300とを備える。電池パック300は、正極端子331aおよび負極端子331bを介して電子回路401に対して電気的に接続されている。電子機器400は、例えば、ユーザにより電池パック300を着脱自在な構成を有している。なお、電子機器400の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザにより電池パック300を電子機器400から取り外しできないように、電池パック300が電子機器400内に内蔵されている構成を有していてもよい。
【0093】
電池パック300の充電時には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック300の放電時(電子機器400の使用時)には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、電子回路401の正極端子、負極端子に接続される。
【0094】
電子機器400としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォンなど)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなど)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、照明機器、玩具、医療機器、ロボットなどが挙げられるが、これに限定されるものでなない。
【0095】
(電子回路)
電子回路401は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部などを備え、電子機器400の全体を制御する。
【0096】
(電池パック)
電池パック300は、組電池301と、充放電回路302とを備える。組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の二次電池301aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、
図3では、6個の二次電池301aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。複数の二次電池301aが積層型二次電池を構成していてもよい。二次電池301aとしては、第2の実施形態またはその変形例に係る電池が用いられる。
【0097】
充電時には、充放電回路302は、組電池301に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器400の使用時)には、充放電回路302は、電子機器400に対する放電を制御する。
【0098】
[3.2 変形例]
上述の第3の実施形態では、電子機器400が複数の二次電池301aにより構成される組電池301を備える場合を例として説明したが、電子機器400が、組電池301に代えて、一つの二次電池301aのみを備える構成としてもよい。
【0099】
上述の第3の実施形態では、第2の実施形態またはその変形例に係る二次電池を電子機器に適用した例について説明したが、第2の実施形態またはその変形例に係る二次電池は電子機器以外のものにも適用可能である。例えば、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)、鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、ロードコンディショナー、信号機などの駆動用電源または補助用電源、住宅をはじめとする建築物または発電設備用の電力貯蔵用電源などに搭載し、あるいは、これらに電力を供給するために使用することができる。第2の実施形態またはその変形例に係る二次電池は、いわゆるスマートグリッドにおける蓄電装置としても用いることができる。このような蓄電装置は、電力を供給するだけでなく、他の電力源から電力の供給を受けることにより蓄電することができる。他の電力源としては、例えば、火力発電、原子力発電、水力発電、太陽電池、風力発電、地熱発電、燃料電池(バイオ燃料電池を含む)などを用いることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
本技術の実施例について以下の順序で説明する。
i イオン伝導率の評価(1)
ii イオン伝導率の評価(2)
iii 焼成時の副反応
iv 焼成時のカーボン焼失
v 全固体電池の充放電特性(1)
vi 全固体電池の充放電特性(2)
【0102】
<i イオン伝導率の評価(1)>
(
参考例1−1)
まず、Li
2OとGeO
2とをモル分率でLi
2O:GeO
2=23.3mol%:76.7mol%となるように混合し、大気中にて加熱溶融した。次に、この溶融物をツインローラで急冷した後、ボールミルで粉砕を行って、固体電解質として非晶質のLi−Ge−O系固体電解質の粉末を得た。次に、得られたLi−Ge−O系固体電解質の粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型し、窒素雰囲気下にて550℃で1時間焼成した。その後、ペレットの両面を研磨することにより、目的とする固体電解質層を得た。
【0103】
(実施例1−2)
Li
2OとSiO
2とをモル分率でLi
2O:SiO
2=35.5mol%:64.5mol%となるように混合したこと以外は
参考例1−1と同様にして、固体電解質層を得た。
【0104】
(実施例1−3)
Li
2OとB
2O
3とをモル分率でLi
2O:B
2O
3=42.7mol%:57.3mol%となるように混合したこと以外は
参考例1−1と同様にして、固体電解質層を得た。
【0105】
(実施例1−4)
Li
2OとP
2O
5とをモル分率でLi
2O:P
2O
5=50mol%:50mol%となるように混合したこと以外は
参考例1−1と同様にして、固体電解質層を得た。
【0106】
(実施例1−5)
Li
2OとP
2O
5とをモル分率でLi
2O:P
2O
5=60mol%:40mol%となるように混合したこと以外は
参考例1−1と同様にして、固体電解質層を得た。
【0107】
(SEM観察)
上述の実施例1−
2〜1−5
、参考例1−1の固体電解質層の作製工程において、焼成前後のペレットをSEM(Scanning Electron Microscope)観察した。その結果、低温550℃で固体電解質の粉末が焼結されていることが確認された。
【0108】
(イオン伝導率)
評価サンプルとしての固体電解質層の両面に電極として金(Au)を蒸着したのち、温度25℃にて交流インピーダンス測定を行い、コール−コールプロットを作成した。
図4A、
図4Bにそれぞれ、実施例1−2、1−3の固体電解質層のコール−コールプロットを示す。次に、このコール−コールプロットからリチウムイオン伝導率を求めた。その結果を表1に示す。なお、イオン伝導率は、コール−コールプロットのグラフの半円の直径の長さで評価した。測定装置としてはソーラトロン社製のSolartron 1260/1287を用い、測定周波数を1MHz〜1Hzとした。
【0109】
【表1】
【0110】
上記評価結果から、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種と、Li
2Oとを組み合わせることで、低温焼結可能な固体電解質(リチウムイオン伝導体)が得られることがわかる。
【0111】
<ii イオン伝導率の評価(2)>
(実施例2−1)
まず、Li
2OとSiO
2とB
2O
3とをモル分率でLi
2O:SiO
2:B
2O
3=70.83mol%:16.67mol%:12.5mol%となるように混合し、大気中にて加熱溶融した。次に、この溶融物をツインローラで急冷した後、ボールミルで粉砕を行って、固体電解質として非晶質のLi−Si−B−O系固体電解質の粉末を得た。次に、得られたLi−Si−B−O系固体電解質の粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型し、窒素雰囲気下にて380℃で1時間焼成した。その後、ペレットの両面を研磨することにより、目的とする固体電解質層を得た。
【0112】
(SEM観察)
上述の実施例2−1の固体電解質層の作製工程において、焼成前後のペレットをSEM観察した。その結果、低温380℃で固体電解質の粉末が焼結されていることが確認された。
【0113】
(イオン伝導率)
温度−30℃〜80℃の範囲にて交流インピーダンス測定を行う以外は実施例1−
2〜1−5
、参考例1−1と同様にして、実施例2−1の固体電解質層のリチウムイオン伝導率を求めた。その結果を
図5A、
図5Bに示す。
【0114】
上記評価結果から、Li
2OとSiO
2とB
2O
3とを組み合わせることで、低温焼結可能な固体電解質(リチウムイオン伝導体)が得られることがわかる。
【0115】
<iii 焼成時の副反応>
(X線回折)
本実施例において、X線回折パターンの測定には、株式会社リガク製のSmartLab(3kw)を用いた。なお、線源としてはCuKαを用いた。
【0116】
(実施例3−1)
まず、Li
2OとSiO
2とB
2O
3とをモル分率でLi
2O:SiO
2:B
2O
3=54mol%:11mol%:35mol%となるように混合し、大気中にて加熱溶融した。次に、この溶融物をツインローラで急冷した後、ボールミルで粉砕を行って、固体電解質として非晶質のLi−Si−B−O系固体電解質の粉末を得た。次に、得られたLi−Si−B−O系固体電解質の粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型し、窒素雰囲気下にて430℃で1時間焼成した。ペレットの焼成前後のX線回折パターンの測定結果を
図6A(焼成前)、
図6B(焼成後)に示す。なお、焼成前後のペレットをSEM観察して、上記焼成温度にてLi−Si−B−O系固体電解質の粉末が焼結されていることを確認した。
【0117】
図6Aでは、ブロードなピーク(ハロー)が観察される。一方、
図6Bでは、
図6Aよりも明瞭なピークが観察される。この結果から、焼結により固体電解質の結晶化が進行したことがわかる。
【0118】
(実施例3−2)
まず、正極活物質としてのLiCoO
2粉末を準備した。このLiCoO
2のX線回折パターンの測定結果を
図7Aに示す。次に、実施例3−1と同様にしてLi−Si−B−O系固体電解質の粉末を得た。次に、正極活物質としてのLiCoO
2粉末とLi−Si−B−O系固体電解質の粉末とを混合して正極合剤粉末を調製した後、この正極合剤粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型し、窒素雰囲気下にて430℃で1時間焼成した。ペレットの焼結後のX線回折パターンの測定結果を
図7Bに示す。なお、焼成前後のペレットをSEM観察して、上記焼成温度にてLi−Si−B−O系固体電解質の粉末が焼結されていることを確認した。
【0119】
図7Bに示されたX線回折ピークは、
図6Bと
図7AとのX線回折ピークの総和となっている。この結果から、固体電解質としてLi−Si−B−O系固体電解質の粉末を用いた場合には、正極活物質と固体電解質とを反応させることなく、固体電解質の粉末を焼結できることがわかる。
【0120】
(比較例3−1)
まず、固体電解質としてLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3粉末を準備した。また正極活物質としてLiMn
2O
4粉末を準備した。次に、Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3とLiMn
2O
4とを混合して正極合剤粉末を調製し後、この正極合剤粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型し、アルゴン雰囲気下にて温度830℃で2時間焼成した。ペレットの焼結前後のX線回折パターンの測定結果を
図8A(焼成前)、
図8B(焼成後)に示す。なお、焼成前後のペレットをSEM観察して、上記焼成温度にてLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3粉末が焼結されていることを確認した。
【0121】
図8Aでは、Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3およびLiMn
2O
4それぞれに起因するX線回折ピークが観察される。一方、
図8Bでは、一部LiMn(PO4)3に起因するX線回折ピークが観察される。この結果から、固体電解質としてLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3を用いた場合には、焼成工程において固体電解質と正極活物質とが反応していることがわかる。したがって、焼成工程において不導体などの副生成物が形成され、固体電解質および/または正極活物質の本来の特性が得られなくなる虞があることがわかる。
【0122】
<iv 焼成時のカーボン焼失>
(実施例4−1)
まず、実施例1−3と同様にして、固体電解質としてLi−B−O系固体電解質の粉末を得た。次に、このLi−B−O系固体電解質の粉末と負極活物質としてのカーボン粉末とを混合して負極合剤粉末を調製した後、この負極合剤粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型することにより、負極前駆体を得た。
【0123】
(比較例4−1)
まず、固体電解質としてLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3を準備した。次に、このLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3と負極活物質としてのカーボン粉末とを混合して負極合剤粉末を調製した後、この負極合剤粉末を直径10mm、厚さ約1mmの円盤状にペレット成型することにより、負極前駆体を得た。
【0124】
(TGAおよびTMA測定)
上述のようにして得られた実施例4−1、比較例4−1の負極前駆体の熱重量分析(Thermo Gravimetry Analysis:TGA)および熱機械分析(Thermomechanical Analysis:TMA)を窒素雰囲気下で行った。実施例4−1の負極前駆体の分析結果を
図9A、
図9Bに示す。また、比較例4−1の負極前駆体の分析結果を
図10A、
図10Bに示す。なお、
図9A、
図10A中の縦軸に示した負極の重量は、温度0℃における負極の初期重量に対する負極の重量変化量を百分率で表している。また、
図9B、
図10B中の縦軸に示した負極の長さは、温度0℃における負極の初期長さに対する負極の長さ変化量を百分率で表している。
【0125】
図9Aから、実施例4−1では、TGA曲線が温度上昇に伴って550℃付近から減少していることから、550℃付近からカーボンが焼失し始めていることがわかる。また、
図9Bから、TMA曲線が450℃付近で急激に減少していることから、焼結温度が約450℃であることがわかる。
【0126】
図10Aから、比較例3−1では、TGA曲線が温度上昇に伴って700℃付近から減少していることから、700℃付近からカーボンが焼失し始めていることがわかる。このカーボンの焼失は、カーボンが大気中の酸素と反応、または固体電解質に含まれる酸素と反応して二酸化炭素となったためである。また、
図10Bから、TMA曲線が750℃付近で急激に減少していることから、焼結温度が約750℃であることがわかる。
【0127】
上記結果から、固体電解質としてLi−B−O系固体電解質を用いた場合には、固体電解質の焼結温度が低いため、負極活物質としてカーボンを用いることが可能であることがわかる。固体電解質としてLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO)
3を用いた場合には、固体電解質の焼成温度が高いため、負極活物質としてカーボンを用いることは困難であることがわかる。
【0128】
<v 全固体電池の充放電特性(1)>
(実施例5−1)
[固体電解質層前駆体の作製工程]
まず、Li−Si−B−O系固体電解質の粉末90質量部と、結着剤としてのアクリル樹脂10質量部とを混合して、固体電解質合剤の粉末を調製したのち、その固体電解質合剤の粉末を有機溶剤としてのテルピネオールに分散させて、ペースト状の固体電解質スラリーを得た。なお、Li−Si−B−O系固体電解質の粉末としては、実施例3−1と同様のものを用いた。
【0129】
次に、得られた固体電解質スラリーを高分子樹脂フィルム上に塗布し、100℃で乾燥させすることにより、高分子樹脂フィルム上にグリーンシートを形成した。次に、高分子フィルムとともにグリーンシートを円盤状に打ち抜いた後、グリーンシートを高分子樹脂フィルムから剥離した。これにより、固体電解質層前駆体としての固体電解質グリーンシートが得られた。
【0130】
[負極前駆体の作製工程]
まず、負極活物質としてグラファイト粉末45質量部と、固体電解質としてLi−Si−B−O系固体電解質の粉末45質量部と、結着剤としてアクリル樹脂粉末10質量部とを混合して、負極合剤の粉末を調製したのち、その負極合剤の粉末を有機溶剤としてのテルピネオールに分散させて、ペースト状の負極スラリーを得た。なお、Li−Si−B−O系固体電解質の粉末としては、実施例3−1と同様のものを用いた。
【0131】
次に、得られた負極スラリーを高分子樹脂フィルム上に塗布し、100℃で乾燥させすることにより、高分子樹脂フィルム上にグリーンシートを形成した。次に、高分子フィルムとともにグリーンシートを円盤状に打ち抜いた後、グリーンシートを高分子樹脂フィルムから剥離した。これにより、負極前駆体としての負極グリーンシートが得られた。
【0132】
[前駆体の積層および焼成工程]
まず、固体電解質グルーンシートと負極グリーンシートとを積層して、積層体を温間等方圧プレスにより加圧した。次に、窒素雰囲気下にて430℃で1時間焼成した。これにより、固体電解質層と負極とからなる積層体が得られた。
図11A、
図11Bに、焼成前後の負極グリーンシートのSEM像を示す。
図11A、
図11Bから、430℃の低温焼成でLi−B−O系固体電解質の粉末が焼結されていることがわかる。
【0133】
次に、積層体の表面のうち負極側の表面に銅箔を貼付けるとともに、固体電解質層側の表面に対極としてリチウム金属箔を貼付けた後、積層体を油圧プレスにより加圧した。以上により、目的とする全固体電池(全固体リチウムイオン二次電池)が得られた。
【0134】
(充放電特性)
以下の測定条件により評価サンプルに対して充放電を行い、充放電曲線を求めた。その結果を
図11Cに示す。
環境温度:25℃
充放電範囲:0.03V〜2.0V
充放電レート:0.1C
【0135】
図11Cから、実施例5−1の全固体電池では、高い充放電容量が得られることがわかる。
【0136】
<vi 全固体電池の充放電特性(2)>
(実施例6−1)
[固体電解質層前駆体および負極前駆体の作製工程]
実施例5−1と同様にして、固体電解質層前駆体としての固体電解質グリーンシートおよび負極前駆体としての正極グリーンシートを得た。
【0137】
[正極前駆体の作製工程]
まず、正極活物質としてLiCO
2粉末45質量部と、固体電解質としてLi−Si−B−O系固体電解質の粉末45質量部と、結着剤としてアクリル樹脂粉末10質量部とを混合して、正極合剤の粉末を調製したのち、その正極合剤の粉末を有機溶剤としてのテルピネオールに分散させて、ペースト状の正極スラリーを得た。なお、Li−Si−B−O系固体電解質の粉末としては、実施例3−1と同様のものを用いた。
【0138】
次に、得られた正極スラリーを高分子樹脂フィルム上に塗布し、100℃で乾燥させすることにより、高分子樹脂フィルム上にグリーンシートを形成した。次に、高分子フィルムとともにグリーンシートを円盤状に打ち抜いた後、グリーンシートを高分子樹脂フィルムから剥離した。これにより、正極前駆体としての正極グリーンシートが得られた。
【0139】
[前駆体の積層および焼成工程]
まず、固体電解質グリーンシートを挟むように正極グリーンシートと負極グリーンシートとを積層して、積層体を温間等方圧プレスにより加圧した。次に、窒素雰囲気下にて430℃で1時間焼成した。これにより、正極と負極と固体電解質層とからなる積層体が得られた。
図12A、
図12Bに、焼成前後の正極グリーンシートのSEM像を示す。
図12A、
図12Bから、430℃の低温焼成でLi−B−O系固体電解質の粉末が焼結されていることがわかる。
【0140】
次に、積層体の表面のうち負極側の表面に銅箔を貼付けるとともに、正極側の表面にアルミニウム箔を貼付けた後、積層体を油圧プレスにより加圧した。以上により、目的とする全固体電池(全固体リチウムイオン二次電池)が得られた。
【0141】
(充放電特性)
以下の測定条件により評価サンプルに対して充放電を行い、充放電曲線を求めた。その結果を
図12Cに示す。
環境温度:25℃
充放電範囲:2.5V〜4.2V
充放電レート:0.1C
【0142】
図12Cから、実施例6−1の全固体電池では、良好な充放電特性が得られることがわかる。
【0143】
以上、本技術の実施形態およびその変形例、ならびに実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0144】
例えば、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0145】
また、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0146】
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとを含み、
上記Li
2Oの含有量が20mol%以上75mol%以下であるリチウムイオン伝導体。
(2)
上記リチウムイオン伝導体が上記GeO
2を含む場合、該GeO
2の含有量が80mol%以下であり、
上記リチウムイオン伝導体が上記SiO
2を含む場合、該SiO
2の含有量が70mol%以下であり、
上記リチウムイオン伝導体が上記B
2O
3を含む場合、該B
2O
3の含有量が60mol%以下であり、
上記リチウムイオン伝導体が上記P
2O
5を含む場合、該P
2O
5の含有量が50mol%以下である(1)に記載のリチウムイオン伝導体。
(3)
上記Li
2Oの含有量が25mol%を超え75mol%以下である(1)または(2)に記載のリチウムイオン伝導体。
(4)
上記リチウムイオン伝導体の焼結温度が、600℃以下である(1)から(3)のいずれかに記載のリチウムイオン伝導体。
(5)
上記リチウムイオン伝導体の焼結温度が、300℃以上500℃以下である(1)から(3)のいずれかに記載のリチウムイオン伝導体。
(6)
GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち2種以上と、Li
2Oとを含む(1)から(5)のいずれかに記載のリチウムイオン伝導体。
(7)
(1)から(6)のいずれかに記載のリチウムイオン伝導体と、
活物質と
を含む電極。
(8)
上記活物質が、炭素材料を含んでいる(7)に記載の電極。
(9)
上記リチウムイオン伝導体は、焼結されている(7)または(8)に記載の電極。
(10)
上記リチウムイオン伝導体が、非晶質である(7)から(9)のいずれかに記載の電極。
(11)
上記リチウムイオン伝導体が、非晶質と結晶質との混合状態である(7)から(9)のいずれかに記載の電極。
(12)
正極と、負極と、電解質とを備え、
上記負極、上記正極および上記電解質の少なくとも1つが、(1)から(6)のいずれかに記載のリチウムイオン伝導体を含んでいる電池。
(13)
(12)に記載の電池を備え、
上記電池から電力の供給を受ける電子機器。
(14)
正極前駆体、固体電解質前駆体および負極前駆体を積層して積層体を形成し、
上記積層体を600℃以下で焼成する
ことを含み、
上記正極前駆体、上記固体電解質前駆体および上記負極前駆体の少なくとも1つが、GeO
2、SiO
2、B
2O
3およびP
2O
5のうち1種以上と、Li
2Oとを含み、
上記Li
2Oの含有量が20mol%以上75mol%以下である電池の製造方法。