(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記減圧工程の前に、前記処理室において、前記被処理部材に前記未硬化の熱硬化性樹脂を注入する注入工程を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱冷却方法。
前記減圧工程の後に、前記処理室において、前記被処理部材に前記未硬化の熱硬化性樹脂を注入する注入工程を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱冷却方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の装置では、半導体装置に樹脂を注入する注入部、樹脂を注入した半導体装置を減圧状態において脱泡する減圧部、樹脂を熱硬化させる熱風炉等が、別チャンバーとして直列に並べられた構成になっており、設置面積が大きいという問題がある。また、超音波を印加して脱泡する方法はボンディングワイヤ等の接合部にダメージを与えるという問題がある。また、減圧し、脱泡しながら、精度よく所定の温度に調節することが求められるが、加熱装置による温度制御では十分ではないという問題があった。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明の目的は、未硬化で高粘度の熱硬化性樹脂を効率よく脱泡した後、加熱して熱硬化させ、冷却して取出す加熱冷却方法、及び加熱冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の加熱冷却方法は、被処理部材を配置した気密性の処理室を真空排気しながら、圧力調節用ガスを導入して、前記処理室を減圧状態にする減圧工程と、前記減圧状態において、前記被処理部材を冷却可能な冷却装置の冷却部を前記被処理部材から離間させた状態で、非接触加熱装置を用いて前記被処理部材を加熱しながら、前記被処理部材の一部をなす未硬化の熱硬化性樹脂の脱泡を行う脱泡工程と、前記非接触加熱装置を用いて前記被処理部材を加熱し、前記未硬化の熱硬化性樹脂を熱硬化させる熱硬化工程と、前記冷却装置を用いて前記被処理部材を冷却する冷却工程と、を備える加熱冷却方法において、前記被処理部材と前記冷却装置の冷却部との距離、又は/及び、前記処理室の圧力を変更して前記被処理部材からの放熱量を調節し、前記非接触加熱装置の出力を増減させて前記被処理部材への入熱量を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、被処理部材の一部をなす未硬化で高粘度の熱硬化性樹脂を、減圧状態において、この段階では熱硬化しないように温度制御しながら加熱し、効率よく脱泡することができる。そして、脱泡した未硬化の熱硬化性樹脂を更に加熱して熱硬化させ、気泡を含まない均一で良質な硬化物を得ることができる。
【0010】
本発明の加熱冷却方法において、前記減圧状態が、10Pa〜10kPaの範囲内で調節されることが好ましい。
【0011】
上記範囲内で調節すれば、被処理部材と冷却部が離間していても気体の分子運動によって熱が伝わるので、加熱と冷却をバランスさせて精度よく温度制御することができる。
【0012】
本発明の加熱冷却方法において、前記処理室に導入される前記圧力調節用ガスが、水素、ヘリウムから選ばれる1種、又は水素とヘリウムの混合ガスであることが好ましい。
【0013】
上記ガスによれば、熱伝導がよいので、被処理部材の熱を効率よく冷却装置の冷却部へ放熱させることができる。
【0014】
本発明の加熱冷却方法において、前記被処理部材と前記冷却装置の冷却部との距離が、0mm〜50mmの範囲内で調節されることが好ましい。
【0015】
上記範囲内で調節すれば、被処理部材と冷却部が離間していても気体の分子運動によって熱が伝わるので、加熱と冷却をバランスさせて精度よく温度制御することができる。
【0016】
本発明の加熱冷却方法において、前記減圧工程の前に、前記処理室において、前記被処理部材に前記未硬化の熱硬化性樹脂を注入する注入工程を備えることが好ましい。
【0017】
上記方法によれば、未硬化の熱硬化性樹脂の注入、脱泡、加熱、冷却を、1台の装置で連続して行うことができる。
【0018】
本発明の加熱冷却方法において、前記減圧工程の後に、前記処理室において、前記被処理部材に前記未硬化の熱硬化性樹脂を注入する注入工程を備えることが好ましい。
【0019】
上記方法によれば、減圧状態で未硬化の熱硬化性樹脂を注入するので、注入中の気泡の捲込みを避けることができる。
【0020】
本発明の加熱冷却方法において、前記熱硬化性樹脂がシリコーンゲルであることが好ましい。
【0021】
上記方法によれば、気泡を含まないシリコーンゲルの熱硬化物を得ることができる。
【0022】
本発明の加熱冷却方法において、前記被処理部材が、半導体モジュールであることが好ましい。
【0023】
上記方法によれば、気泡を含まない熱硬化性樹脂で封止され、信頼性に優れた半導体モジュールを提供できる。
【0024】
本発明の加熱冷却機器は、被処理部材の出し入れが可能な開閉機構を有する気密性の処理室と、前記処理室を真空排気する真空排気装置と、前記処理室に圧力調節用ガスを導入するガス供給装置と、前記被処理部材を加熱する非接触加熱装置と、前記被処理部材を冷却する冷却装置と、前記被処理部材及び/又は前記冷却装置の冷却部を移動させて、前記被処理部材と前記冷却装置の冷却部との距離を変更する移動装置と、前記被処理部材の温度を計測するための温度センサと、を備え、前記被処理部材と前記冷却装置の冷却部との距離、又は/及び、前記処理室の圧力を変更して前記被処理部材からの放熱量を調節し、前記非接触加熱装置の出力を増減させて前記被処理部材への入熱量を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0025】
上記態様によれば、被処理部材と冷却部との距離、又は/及び、処理室の圧力を変更して前記被処理部材からの放熱量を調節し、非接触加熱装置の出力を増減させて被処理部材への入熱量を制御するようにしたので、減圧状態においても、被処理部材の温度を精度よく制御できる。
【0026】
本発明の加熱冷却機器において、前記非接触加熱装置の加熱部は、誘導加熱コイルであって、前記被処理部材の下方に配置された前記冷却装置の冷却部のさらに下方に配置されていることが好ましい。
【0027】
上記態様によれば、被処理部材に冷却部を当接又は近接させて配置しても、冷却部に影響されることなく、被処理部材を直接加熱することが可能となり、加熱冷却効率を高めて処理時間を短縮できると共に、被処理部材を処理室内で移動させることなく、加熱処理と冷却処理とを連続して行うことができる。
【0028】
本発明の加熱冷却機器において、前記非接触加熱装置の加熱部は、赤外線ランプであって、前記被処理部材の上方に配置されていることが好ましい。
【0029】
上記態様によれば、誘導加熱では直接加熱できない熱硬化性樹脂を、直接加熱することができる。
【0030】
本発明の加熱冷却機器において、前記冷却装置は、冷媒を循環させるための冷媒流路を有する冷却部と、前記処理室の外部に設置された熱交換器と、前記冷却部及び前記熱交換器を環状に接続する冷媒配管と、前記冷媒配管内の冷媒を前記冷却部と前記熱交換器との間で循環させるための循環ポンプと、前記冷却部に循環させる冷媒の流量を調節するための冷媒流量調節弁とを備え、前記被処理部材の熱は、固体間の直接接触、又は気体を介する間接接触によって、前記冷却部へ伝達されることが好ましい。
【0031】
上記態様によれば、冷媒を循環させて冷却するので、冷却能力に優れている。
【0032】
本発明の加熱冷却機器において、前記冷却部は、耐熱性を有する絶縁体材料で構成されていることが好ましい。
【0033】
上記態様によれば、磁束は絶縁体を透過するため、絶縁体の冷却板の下に誘導コイルを配置しても被処理部材を加熱することができる。また、絶縁体の冷却板は誘導加熱されないため、加熱や冷却に要するエネルギーのロスを低減できる。
【0034】
本発明の加熱冷却機器において、前記冷却部は、冷媒が循環可能な流路が形成された中空の誘導加熱コイルを備え、前記誘導加熱装置と前記冷却装置を兼ねていることが好ましい。
【0035】
上記態様によれば、中空にされた誘導加熱コイルが、誘導加熱装置と冷却装置を兼ねているので、設置スペースを節減し、処理室を小型化できる。
【0036】
本発明の加熱冷却機器において、前記冷却部は、前記中空の誘導加熱コイルと、該中空の誘導加熱コイルの上面に当接し、絶縁体材料で構成されている冷却板とを備えていることが好ましい。
【0037】
上記態様によれば、誘導加熱コイルが誘導加熱装置と冷却装置を兼ねているので、設置スペースを節減し、処理室を小型化できる。
【0038】
本発明の加熱冷却機器において、前記冷却装置を兼ねた誘導加熱コイルは、平面状に巻かれていて、その主面が平坦にされていることが好ましい。
【0039】
上記態様によれば、冷却装置を兼ねた誘導加熱コイルと冷却板との接触面積が増えるので、冷却板を効率よく冷却することができる。
【0040】
本発明の加熱冷却機器において、前記温度センサの少なくとも一つは、非接触温度センサであって、前記被処理部材の上方に配置されていることが好ましい。
【0041】
上記態様によれば、被処理部材に注入された熱硬化性樹脂の温度を直接計測し、均一で気泡を含まない硬化物が得られるように、加熱冷却装置をフィードバック制御することができる。
【0042】
本発明の加熱冷却機器において、前記処理室内に配置され、前記被処理部材に未硬化の熱硬化性樹脂を注入するための樹脂注入装置を備えることが好ましい。
【0043】
上記方法によれば、熱硬化性樹脂の注入、脱泡、加熱、冷却、1台の装置で連続して行うことができるので、装置を小型化できる。
【0044】
本発明の加熱冷却機器において、前記被処理部材の質量を測定する質量センサを備えることが好ましい。
【0045】
上記態様によれば、熱硬化性樹脂を注入する前後の被処理部材の質量から、熱硬化性樹脂の注入量を計測することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、被処理部材と冷却装置の冷却部との距離、又は/及び、処理室の圧力を変更して被処理部材からの放熱量を調節し、非接触加熱装置の出力を増減させて被処理部材への入熱量を制御することできるので、減圧状態においても、被処理部材の温度を精密に調節することができる。このため、被処理部材の一部をなす未硬化で高粘度の熱硬化性樹脂を、減圧状態において、この段階では熱硬化しないように温度制御しながら加熱し、熱硬化性樹脂に含まれる気泡を、効率よく脱泡することができる。そして、脱泡した未硬化の熱硬化性樹脂を更に加熱して熱硬化させ、気泡を含まない均一で良質な硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照し、本発明による加熱冷却機器について説明する。
【0049】
[実施形態1]
図1には、被処理部材1に未硬化の熱硬化性樹脂を注入し、減圧状態で脱泡し、加熱して熱硬化させ、冷却してから取出す加熱冷却機器100の概略構成図が示されている。
【0050】
加熱冷却機器100を用いて加熱冷却される被処理部材1は、特に限定されない。一例として、
図1には半導体素子1a、積層基板1b、ベース板1cをはんだ接合し、樹脂ケース1dに収納し、未硬化の熱硬化性樹脂1e(例えば未硬化のシリコーンゲル)を注入した半導体モジュール1が示されている。なお、前記熱硬化性樹脂1eは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂などの通常使われる樹脂でもよい。半導体素子1aは、例えばIGBT、FWD、SiC−MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などである。また、積層基板1bは、例えばアルミナや窒化ケイ素などのセラミックス板の両面に銅箔が配置されている。前記セラミックス板の半導体素子1aを接合する側の銅箔は所定の形状に加工されている、DCB(Direct Copper Bonding)基板などである。ベース板1cは、半導体素子1aに通電した時に発生する熱を拡げて冷却器(図示せず)へ効率的に伝熱するためのヒートスプレッダである。樹脂ケース1dは、半導体素子1aを保護する外箱である。熱硬化性樹脂1eは、半導体素子1aを衝撃や環境から保護するための封止材である。なお、熱硬化性樹脂1eは、後述するように加熱冷却機器100の中で注入してもよいが、他の専用注入装置で注入したあと加熱冷却機器100に搬入する方法であってもよい。
【0051】
加熱冷却機器100は、被処理部材1の出し入れが可能な開閉機構を有する気密性の処理室4と、被処理部材1の下方に配置された冷却装置3の冷却部3aと、冷却部3aの下方に配置された非接触加熱装置2の加熱部2aと、被処理部材1の上方に配置された非接触加熱装置2の加熱部2cと、被処理部材1と冷却部3aとの間の距離を変更するための移動装置10と、被処理部材1の温度を計測するための温度センサ5と、計測した温度に基づき非接触加熱装置2及び冷却装置3を制御する制御装置6と、制御装置6に信号を入力するための入力装置7と、処理室4を真空排気する真空排気装置8と、処理室4へ圧力調節用ガスを導入する圧力調節用ガス供給装置15と、処理室4を大気圧へ戻すための置換用ガス供給装置16と、被処理部材1に熱硬化性樹脂を注入するための樹脂注入装置17、とを備えている。
【0052】
本発明においては、被処理部材1に対して加熱部2a、加熱部2b、冷却部3aが縦置きされているので、従来の加熱部と冷却部とが横置きされている場合に比べて、装置を大幅に小型化することができる。
【0053】
以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0054】
処理室4は、蓋部4aと底部4bとで構成される気密室であって、蓋部4aは、開閉装置13の駆動モーター13aから延出されたシャフト13bによって支持され、シャフト13bと共に昇降動作し、底部4bに対して開閉可能とされている。蓋部4aの上面の内側には、被処理部材1から放射される赤外線ふく射を反射して被処理部材1に再入射させるための遮熱カバー12a、12bを取付けることができる。ここで、遮熱カバー12a、12bは、非接触加熱装置2による加熱を妨げない構造にされている。処理室4には真空排気装置8が接続されており、処理室4を真空排気することができる。また、処理室4には圧力調節用ガス供給装置15と、置換用ガス供給装置16が接続されており、処理室4に圧力調節用ガス、及び置換用ガスを供給することができる。
【0055】
非接触加熱装置2の一つは、加熱部2a(以降は、具体的に誘導加熱コイル2aともいう)と電源2bで構成され、加熱部2aは冷却部3aの下方に配置されている。誘導加熱は、誘導加熱コイル2aに交流電流を通電し、その磁束変化によって、被処理部材1の導電部分に渦電流を発生させ、渦電流によるジュール発熱によって被処理部材1を直接的に加熱する方法であり、他の非接触加熱装置に比べると構造が簡単で、小型化することができ、処理室4の中に設置することもできる。また、消耗部分もないことから、メンテナンスの必要がなく、連続運転に適している。
【0056】
ただし、被処理部材1が、非磁性材料で電気抵抗の低い金属、例えば銅で構成されている場合は、直に誘導加熱することが難しいため、誘導加熱され易い材料で構成された被加熱部材9(以降は、具体的にワーク台9ともいう)の上に載置し、誘導加熱コイルによってワーク台9を誘導加熱し、加熱されたワーク台9からの熱伝導によって間接的に被処理部材1を加熱してもよい。ワーク台9は、電気抵抗の高い金属又はカーボン等で構成されていることが好ましく、形状は特に限定されない。なお、以降の説明では、説明を簡潔にするため、ワーク台9を含めて被処理部材1と呼ぶことにする。
【0057】
誘導加熱コイル2aの形状は、特に限定されず、例えば導線を巻いて中央に空所を有する主面の外形が円形又は縦長の楕円形の平板、あるいは主面の外形が中央にくびれを有する瓢箪形の平板のものを用いることができる。なお、導線は、自己発熱による過熱を防ぐために、冷媒が循環可能な流路が形成された中空パイプであってもよい。
【0058】
非接触加熱装置2のもう一つは、加熱部2c(以降は、具体的に赤外線ランプ2cともいう)と電源2dで構成され、加熱部2cは被処理部材1の上方に配置されている。赤外加熱は、被処理部材1に赤外線を吸収させて非接触で加熱する方法であり、絶縁体材料でも加熱できる。また、被処理部材1の上方に配置されているので、被処理部材1の上面を直接加熱することができる。
【0059】
冷却装置3は、冷却部3aと、熱交換器3bと、冷却部3a及び熱交換器3bを環状に接続する冷媒配管3cと、冷媒配管3c内の冷媒を冷却部3aと熱交換器3bとの間で循環させる循環ポンプ3dと、冷却部3aに循環させる冷媒の流量を調節するための冷媒流量調節弁3eとで構成されている。このうち、熱交換器3b、循環ポンプ3d、流量調節弁3eは、処理室4の外部に設置されている。また、熱交換器3bには、図示しない配管を通して、冷媒配管3c内を流れる冷媒と熱交換して冷媒を冷却するための流体が流れるようになっている。
【0060】
冷却部3aは、例えば処理室4の底部4b上に設置された、冷媒循環流路を備える板状の部材で構成することができる。冷却部3aの材質は、特に限定されず、耐熱性があり、熱伝導に優れているものが好ましい。また、非接触加熱装置が誘導加熱装置である場合は、冷却部3aは、誘導加熱されないように、磁束を透過させる絶縁体であることが好ましい。具体的には炭化珪素、セラミックス、石英ガラス等を使用することができ、炭化珪素は熱伝導率が高いため特に好ましい。なお、冷媒配管3cを循環ポンプ3dの注入側で冷媒流量調節弁3eの手前から分岐して、中空パイプで構成された誘導加熱コイル2aに冷媒を流通させ、誘導加熱コイル2aを冷却してもよい。
【0061】
移動装置10は、被処理部材1を支持するフレーム10aと、フレーム10aを昇降させるための複数本の昇降シャフト10bと、昇降シャフト10bを駆動するための昇降アクチュエータ10cからなり、被処理部材1を上下方向に移動させて、被処理部材1と冷却部3aとの間の距離を変えることができる。被処理部材1を上昇させた場合は、被処理部材1と冷却部3aとの熱伝達係数が小さくなって放熱量も減る。逆に、被処理部材1を下降させた場合は、冷却部3aへの熱伝達係数が大きくなって放熱量が増える。被処理部材1を弱く加熱して低温保持したい場合は、被処理部材1を冷却部3aへ近づけ、熱伝達係数を大きくして被処理部材1からの放熱量を増やすことにより、誘導加熱による入熱量と均衡し易くして、温度制御性を高めることができる。一方、被処理部材1を強く加熱して高温保持したい場合は、被処理部材1を冷却部3aから遠ざけ、熱伝達係数を小さくして被処理部材1の放熱量を減らすことにより、小さい電力でも高温加熱することができる。更に、被処理部材1を冷却する場合は、被処理部材1を冷却部3aに当接させて急冷することができる。被処理部材1を加熱する場合、被処理部材1と冷却部3aとの距離は、被処理部材1の放熱量の調節し易さから、0mm〜50mmの範囲で調節するとよい。そして、被処理部材1と冷却3aとの距離を正確に調節するために、位置センサ11を備えることができる。なお、移動装置10は、被処理部材1の位置を変えず、冷却部3aを移動させて、被処理部材1と冷却部3aとの間の距離を変える装置であってもよい。
【0062】
温度センサ5は、特に限定されず、例えば熱電対、赤外線放射温度計等を用いることができる。ただし、温度センサ5は、誘導加熱の影響を受けない種類のセンサであるか、誘導加熱されないように電磁的に遮蔽された構造とされていることが好ましい。上記のうち、赤外線放射温度計は誘導加熱の影響を受けない温度センサである。温度センサ5が熱電対である場合は、芯線部分が直接的に誘導加熱されないように、シースで被覆されていることが好ましい。例えば、加熱冷却装置100において、被処理部材1の下方に設置されている下部温度センサ5aとして、シース熱電対を用いることができる。下部温度センサ5aは、熱接触を高めるためにバネ等で付勢されて、被処理部材1の下面に当接されている。仮に、下部温度センサ5aの先端部付近が冷却部3aに触れていると、温度の低い冷却部3aの影響を受けるので、少なくとも下部温度センサ5aの先端と冷却部3aとの間には隙間を設けることが好ましい。一方、被処理部材1の上方に設置されている上部温度センサ5bは、未硬化の熱硬化性樹脂に接触させなくても正確に温度を計測できる、赤外線放射温度計であることが好ましい。
【0063】
真空排気装置8は、排気量調節弁8aを有する配管8bと、真空ポンプ8cとを備える。例えば、ガス流量一定の下では、排気量調節弁8aの開度を増減させて排気量を調節し、処理室4の圧力を制御することができる。真空ポンプ8cは、特に限定されず、例えばロータリポンプ、ダイアフラムポンプ、ピストン型ポンプ等を用いることができる。ただし、可燃性ガスを排気する場合は、安全のため、真空ポンプ8cは防爆型であることが好ましい。
【0064】
圧力調節用ガス供給装置15は、ガス流量調節弁15aを有する配管15bと、圧力調節用ガスボンベ15cとを備える。例えば、排気量一定の下では、ガス流量調節弁15aの開度を増減させてガス流量を調節し、処理室4の圧力を制御することができる。圧力調節用ガスは、特に限定されないが、熱伝導のよいガスが好ましく、例えば水素、ヘリウム、もしくは水素とヘリウムの混合ガスを好適に用いることができる。
【0065】
置換用ガス供給装置16は、ガス流量調節弁16bを有する配管16bと、置換用ガスボンベ16cとを備える。置換用ガスとしては、特に限定されず、安価な不活性ガス、例えば窒素、アルゴン等を用いることができる。被処理部材1を冷却する時は、処理室4に置換用ガスを導入して大気圧に戻し、ガスの熱伝導率を高めてから冷却すると、迅速に冷却することができる。
【0066】
樹脂注入装置17は、熱硬化性樹脂の注入量を調節する注入量調節弁17aを有する配管17bと、熱硬化性樹脂を注入するノズル17cと、熱硬化性樹脂の供給タンク17dとを備える。被処理部材1の重量は、例えば重量センサ18で計測することができ、熱硬化性樹脂の注入による被処理部材1の重量変化に基づいて、注入量を算出することができる。
【0067】
図2には、加熱冷却機器100を制御する制御システムの一構成例が示されている。制御装置6は、演算機能を有する制御装置本体6aと、RAM、ROM、磁気ディスク、光ディスク等からなる記憶部6bと、制御装置本体6aの下位に接続されている各種制御器6c〜6iと、を備えることができる。
【0068】
制御装置本体6aには、入力装置7と、記憶部6bと、図示しないディスプレイ、プリンタ等からなる表示装置とが接続されている。入力装置7から入力するデータとしては、例えば、目標加熱温度、目標冷却温度、目標保持時間、目標処理圧力等が挙げられる。制御装置本体6aは、入力装置7から入力された入力データと、記憶部6bに格納されたプログラムやデータに基づいて、制御器6c〜6iに制御信号を送ることができる。
【0069】
温度制御器6cには、上部温度センサ5bと、赤外線ランプ2cを駆動する電源2dが接続されている。被処理部材1の上面温度は上部温度センサ5bによって計測され、計測温度を知らせる計測信号bが温度制御器6cに送られる。温度制御器6cは、制御装置本体6aから送られてくる目標温度と計測温度とを比較して制御信号gを電源2dに送り、電源2dによって赤外線ランプ2cに通電する電流量を調節し、被処理部材1への入熱量を制御することができる。
【0070】
温度制御器6dには、下部温度センサ5aと、誘導加熱コイル2aを駆動する電源2bが接続されている。被処理部材1の下面温度は下部温度センサ5aによって計測され、計測温度を知らせる計測信号cが温度制御器6dに送られる。温度制御器6dは、制御装置本体6aから送られてくる目標温度と計測温度とを比較して制御信号hを電源2bに送り、電源2bによって誘導加熱コイル2aに通電する交流電流の周波数、電流量を調節し、被処理部材1への入熱量を制御することができる。
【0071】
冷媒流量制御器6eには、下部温度センサ5aと、冷却部3aに通流される冷媒の流量を調節する冷媒流量調節弁3eが接続されている。冷媒流量制御器6eは、制御装置本体6aから送られてくる目標温度と計測温度とを比較して制御信号iを冷媒流量調節弁3eに送り、冷却部3aに通流される冷媒の流量を調節して、冷却部3aの冷却能力を制御することができる。
【0072】
位置制御器6fには、位置センサ11と、被処理部材1と冷却部3aとの距離を調節する昇降アクチュエータ10cが接続されている。被処理部材1の位置は位置センサ11によって計測され、計測位置を知らせる計測信号dが位置制御器6fに送られる。位置制御器6fは、制御装置本体6aから送られてくる目標位置と計測位置とを比較して制御信号jを昇降アクチュエータ10cに送り、被処理部材1と冷却部3aとの距離を調節して、被処理部材1の放熱量を制御することができる。
【0073】
排気量制御器6gには、圧力センサ14と、処理室4の真空排気の排気量を調節する排気量調節弁8aが接続されている。処理室4の圧力は圧力センサ14によって計測され、計測圧力を知らせる計測信号eが排気量制御器6gに送られる。排気量制御器6gは、制御装置本体6aから送られてくる目標圧力と計測圧力とを比較して制御信号kを排気量調節弁8aに送り、処理室4の圧力を調節して、被処理部材1の放熱量を制御することができる。なお、排気量調節弁8aは、開度を一定に保つように固定することもできる。この場合、ガス流量を増減させて圧力を制御する。
【0074】
ガス流量制御器6hには、圧力センサ14と、処理室4に導入される圧力調節用ガスの流量を調節するガス流量調節弁15aが接続されている。処理室4の圧力は、圧力センサ14によって計測され、計測圧力を知らせる計測信号eがガス流量制御器6hに送られる。ガス流量制御器6hは、制御装置本体6aから送られてくる目標圧力と計測圧力とを比較して制御信号lをガス流量調節弁15aに送り、処理室4の圧力を調節して、被処理部材1の放熱量を制御することができる。なお、ガス流量制御器6hは、ガス流量を一定に保つように制御することもできる。この場合、排気量を増減させて圧力を制御する。
【0075】
注入量制御器6iには、重量センサ18と、被処理部材1の樹脂ケース1dに注入される熱硬化性樹脂の注入量を調節する注入量調節弁17aが接続されている。被処理部材1の重量は、重量センサ18によって計測され、計測重量を知らせる計測信号fが注入量制御器6iに送られる。注入量制御器6iは、制御装置本体6aから入力された目標注入量と計測重量とを比較して制御信号mを注入量調節弁17aに出力し、熱硬化性樹脂の注入量を制御することができる。
【0076】
次に、加熱冷却機器100を用いて被処理部材1を加熱冷却する方法について説明する。以下、被処理部材1を半導体モジュール1とし、熱硬化性樹脂1eをシリコーンゲル1eとし、圧力調節用ガスをヘリウムとし、置換用ガスを窒素とする。
【0077】
図3には、温度センサ5aによって計測される半導体モジュール1の温度の推移と、圧力センサ14によって計測される処理室4の圧力の推移が、タイムチャート上に示されている。時刻t0〜t8は、実行命令が発行される時刻や、温度、圧力の変化する変化点の時刻を表している。
【0078】
(1)注入工程(時刻t0〜時刻t1)
開閉装置13によって処理室4の蓋部4aを上昇させて処理室4を開け、半導体モジュール1をワーク台9に載置して搬入した後、開閉装置13によって処理室4の蓋部4aを下降させて処理室4を閉じる。そして、時刻t0において、供給タンク17dに貯蔵された未硬化のシリコーンゲルを注入量調節弁17aを介してノズル17cから吐出させ、半導体モジュール1の樹脂ケース1dにシリコーンゲルを注入する。シリコーンゲルの注入速度は、注入量調節弁17aの開度によって調節する。また、シリコーンゲル1eの注入完了は、重量センサ18の計測値から検知する。
【0079】
(2)減圧工程(時刻t1〜時刻t2)
時刻t1において、排気量調節弁8aを全開にし、真空ポンプ8cを用いて、処理室4を真空排気し、所定の真空度に到達した後、ヘリウムをガス流量調節弁15aによって流量制御しながら一定流量で導入する。排気量調節弁8aの開度を調節して、処理室4の圧力が目標圧力(例えば400Pa)になるように圧力制御する。
【0080】
時刻t2において、処理室4の圧力が安定して一定値となる。
【0081】
(3)昇温工程1(時刻t2〜時刻t3)
時刻t2において、移動装置10によって半導体モジュール1を載置したワーク台9を下降させて、ワーク台9と冷却部3aとの距離が狭くなるように(例えば3mmとなるように)接近させる。次に、誘電加熱コイル2aに通電してワーク台9を誘導加熱し、ワーク台9からの固体熱伝導によって半導体モジュール1のシリコーンゲル1eを間接加熱し、下部温度センサの示度が目標温度(例えば65℃)になるまで昇温する。減圧した状態で加熱することによって、シリコーンゲル1eの粘度が低下し、シリコーンゲルに内在するガスや水分が気化し、脱泡され易くなる。ただし、シリコーンゲル1eの温度が粘度上昇温度(例えば84℃)を超えると、粘度が急激に上昇し熱硬化し始めるため、高精度で温度制御する必要がある。誘導加熱によってワーク台9の下面温度を制御する方法によれば、シリコーンゲル1eの温度はワーク台9の下面温度よりも高温にはならないので、粘度上昇温度を超えてオーバシュートする危険性が小さく安全である。時刻t3において、目標温度に到達すると、温度制御器6dが働き、誘導加熱コイル2aに通電する交流電流の周波数と電流量を調節して、一定温度を保持するように制御する。この時、冷媒流量調節弁3eは、大きく開いた状態に固定し、冷媒流量を増やして冷却部3aの冷却能力を高めた状態にしておく。冷媒流量を増減させて温度制御するよりも、誘導加熱電流を増減させて温度を制御する方が、温度制御し易いためである。
【0082】
(4)脱泡工程(時刻t3〜時刻t4)
時刻t3〜時刻t4の間(例えば40秒間)は、シリコーンゲル1eに含まれている気泡が効率よく脱泡されるように、シリコーンゲル1eの温度と、処理室4の圧力を一定に保つ。
【0083】
(5)昇温工程2(時刻t4〜時刻t6)
時刻t4において、処理室4へのヘリウム導入と真空排気を止め、置換用ガス供給装置16から窒素を供給して、処理室4を大気圧に戻す。同時に、誘導加熱コイル2aの出力を上げ、赤外線ランプ2cによる加熱も行って、シリコーンゲル1eを熱硬化させる硬化温度(例えば110℃)まで昇温する。このように、脱泡工程で使用していた高価なヘリウムを安価な窒素に切り替えることによって運転経費を節減できる。ただし、大気圧にするとワーク台9と冷却部3aとの間の熱伝導がよくなり放熱量が増大して昇温し難くなるため、移動装置10によってワーク台9を冷却部3aから遠ざけて放熱量を減らし、加熱に要する電力負担を軽減する。
【0084】
(6)熱硬化工程(時刻t6〜時刻t7)
時刻t6〜時刻t7の間(例えば1時間)は、シリコーンゲル1eを硬化温度に保ち熱硬化させる。シリコーンゲル1eは、赤外線波長23μm付近に吸収ピークを有するので、上方から赤外線を照射して直接加熱することができる。シリコーンゲル1eの表面温度を上部温度センサ(例えば赤外放射温度計)5bを用いて非接触で計測し、温度制御器6cによって赤外線ランプ2cの出力を制御する。同時に、誘導加熱コイル2aによって下方からシリコーンゲル1eを加熱する。このように、上下から加熱すると、シリコーンゲル1eの中は温度が一様になり、均質なシリコーンゲル硬化物を得ることができる。なお、この間、目標圧力(例えば400Pa)になるように減圧状態に圧力制御してもよい。硬化時に減圧状態にすることによって、シリコーンゲルに内在するガスを除去することができる。
【0085】
(7)冷却工程(時刻t7〜時刻t8)
時刻t7において加熱を止める。ワーク台9を下降させて冷却部3aに当接させる。そして、冷媒流量調節弁3eを全開にして、半導体モジュール1を急冷する。所定温度まで冷却した後、時刻t8において、処理室4の蓋4aを上昇させて処理室4を開け、半導体モジュール1をワーク台9と共に搬出する。
【0086】
以上述べた方法によって、シリコーンゲル1eを熱硬化させ、半導体モジュール1を封止することができる。シリコーンゲル1eは、脱泡してから、熱硬化させているので、気泡を含まず、封止性に優れている。
【0087】
[実施形態2]
実施形態2では、加熱冷却機器100を用い、圧力調節用ガスとして水素、置換用ガスとして窒素を使用する。水素は、ヘリウムよりも安価で熱伝達に優れている。
【0088】
図4には、実施形態2のタイムチャートが示されている。このうち、(1)注入工程(時刻t0〜時刻t1)、(2)減圧工程(時刻t1〜時刻t2)、(3)昇温工程1(時刻t2〜時刻t3)、(4)脱泡工程(時刻t3〜時刻t4)については、圧力調節に水素を使用するものの、実施形態1と同様の操作を行うので説明を省略する。昇温工程2以降の操作は、下記のようになる。
【0089】
(5)昇温工程2(時刻t4〜時刻t5)
時刻t4において、誘導加熱コイル2aの出力を上げ、同時に赤外線ランプ2cによる加熱も行って、シリコーンゲル1eを熱硬化させる硬化温度まで昇温する。しかし、処理室4は、水素を導入しながら真空排気することにより、減圧状態を維持する。加熱に要する電力を節約するため、ワーク台9を冷却部3aから遠ざけて放熱量を減らしてもよいが、放熱量を極端に減らしてしまうと、入熱量と放熱量をバランスさせることが難しくなり、温度制御性が悪化する。よって、ワーク台9の下面と冷却部3aとの距離は、0mm〜50mmの範囲内で変更する。
【0090】
(6)熱硬化工程(時刻t5〜時刻t6)
時刻t5〜時刻t6の間(例えば1時間)は、処理室4を減圧状態に維持したまま、シリコーンゲル1eを硬化温度に保ち熱硬化させる。
【0091】
(7)冷却工程(時刻t6〜時刻t9)
時刻t6において加熱と水素の導入を停止し、ワーク台9を下降させて冷却部3aに当接させる。そして、冷媒流量調節弁3eを全開にして、半導体モジュール1を冷却する。水素の導入を止めた後、しばらく真空排気してから、時刻t7において置換用ガスを導入して、処理室4を大気圧に戻す。所定温度まで冷却した時刻t9において、処理室4の蓋4aを上昇させて処理室4を開け、半導体モジュール1をワーク台9と共に搬出する。
【0092】
[実施形態3]
実施形態3では、冷却加熱機器100を用い、圧力調節用ガスとしてヘリウム、置換用ガスとして窒素を使用する。
【0093】
図5には、実施形態3のタイムチャートが示されている。
【0094】
(1)減圧工程(時刻t0〜時刻t1)
開閉装置13によって処理室4の蓋部4aを上昇させて処理室4を開け、半導体モジュール1をワーク台9に載置して搬入した後、開閉装置13によって処理室4の蓋部4aを下降させて処理室4を閉じる。そして、時刻t0において、排気量調節弁8aを全開にし、真空ポンプ8cを用いて、処理室4を真空排気し、所定の真空度に到達した後、圧力調節のためヘリウムをガス流量調節弁15aによって流量制御しながら一定流量で導入する。処理室4の圧力は、排気量調節弁8aの開度を調節して、目標圧力になるように圧力制御する。時刻t1において、処理室4の圧力が安定して一定値となる。
【0095】
(2)注入工程(時刻t1〜時刻t2)
時刻t1において、供給タンク17dに貯蔵された未硬化のシリコーンゲルを注入量調節弁17aを介してノズル17cから吐出させ、半導体モジュール1の樹脂ケース1dにシリコーンゲルを注入する。シリコーンゲルの注入速度は、注入量調節弁17aの開度によって調節する。また、シリコーンゲル1eの充填完了は、重量センサ18によって検知する。
【0096】
以降の、(3)昇温工程1(時刻t2〜時刻t3)、(4)脱泡工程(時刻t3〜時刻t4)(5)昇温工程2(時刻t4〜時刻t6)、(6)熱硬化工程(時刻t6〜時刻t7)、(7)冷却工程(時刻t7〜時刻t8)については、実施形態1と同様の操作を行うので説明を省略する。
【0097】
上記態様によれば、減圧状態でシリコーンゲルを注入するので、気泡が抜け易いという長所がある。
【0098】
[実施形態4]
実施形態4では、冷却加熱機器100を用い、圧力調節用ガスとして水素、置換用ガスとして窒素を使用する。
【0099】
図6には、実施形態4のタイムチャートが示されている。
【0100】
(1)減圧工程(時刻t0〜時刻t1)
開閉装置13によって処理室4の蓋部4aを上昇させて処理室4を開け、半導体モジュール1をワーク台9に載置して搬入した後、開閉装置13によって処理室4の蓋部4aを下降させて処理室4を閉じる。そして、時刻t0において、排気量調節弁8aを全開にし、真空ポンプ8cを用いて、処理室4を真空排気し、所定の真空度に到達した後、水素をガス流量調節弁15aによって流量制御しながら一定流量で導入する。排気量調節弁8aの開度を調節して、処理室4の圧力が目標圧力になるように圧力制御する。時刻t1において、処理室4の圧力が安定して一定値となる。
【0101】
(2)注入工程(時刻t1〜時刻t2)
時刻t1において、供給タンク17dに貯蔵された未硬化のシリコーンゲルを注入量調節弁17aを介してノズル17cから吐出させ、半導体モジュール1の樹脂ケース1dにシリコーンゲルを注入する。シリコーンゲルの注入速度は、注入量調節弁17aの開度によって調節する。また、シリコーンゲル1eの充填完了は、重量センサ18によって検知する。
【0102】
以降の、(3)昇温工程1(時刻t2〜時刻t3)、(4)脱泡工程(時刻t3〜時刻t4)(5)昇温工程2(時刻t4〜時刻t5)、(6)熱硬化工程(時刻t5〜時刻t6)、(7)冷却工程(時刻t6〜時刻t9)については、実施形態2と同様の操作を行うので説明を省略する。
【0103】
上記態様によれば、減圧状態でシリコーンゲルを注入するので、気泡が抜け易いという長所がある。
【0104】
[実施形態5]
本発明に係る加熱冷却機器の他の実施形態について説明する。
図7には、冷媒が循環可能な流路が形成された中空パイプの誘導加熱コイル2aと、誘導加熱コイル2aの上方に配置した絶縁体材料で構成されている冷却板3aaを備え、加熱部と冷却部が兼用になっている加熱冷却機器101が示されている。誘導加熱コイル2aの断面は冷却板3aaとの接触面積を大きくするため、冷却板3aaに接する面が平坦にされている。具体的には中空を有する矩形断面になっている。被処理部材1を冷却する場合は、移動装置10によって、ワーク台9を冷却板3aaに当接させて、急冷することができる。上記態様によれば、誘導加熱コイル2aが加熱部と冷却部を兼ねているので、設置スペースを節減し、処理室を小型化できる。
【0105】
なお、被処理部材1は、実施形態1〜4から選ばれるいずれか1つの方法にしたがって処理される。
【0106】
[実施形態6]
図8には、冷媒が循環可能な流路が形成された中空パイプの誘導加熱コイル2aを備え、加熱部と冷却部が兼用になっている加熱冷却機器102が示されている。誘導加熱コイル2aの断面はワーク台9との接触面積を大きくするため、ワーク台9に接する面が平坦にされている。具体的には中空を有する矩形断面になっている。上記態様によれば、誘導加熱コイル2aが加熱部と冷却部を兼ねているので、設置スペースを節減し、処理室を小型化できる。
【0107】
なお、被処理部材1は、実施形態1〜4から選ばれるいずれか1つの方法にしたがって処理される。
【0108】
[実施形態7]
図9には、加熱冷却機器101から樹脂注入装置17を除いた加熱冷却機器103が示されている。専用の樹脂注入装置(図示せず)を用いて半導体モジュール1に未硬化のシリコーンゲルを充填した後、処理室4に搬送し、実施形態1又は実施形態2に記載された、減圧工程以降の工程手順にしたがって処理される。
【0109】
[実施形態8]
図10には、加熱冷却機器103から更に赤外線ランプ2cを除いた加熱冷却機器104が示されている。専用の樹脂注入装置(図示せず)を用いて半導体モジュール1に未硬化のシリコーンゲルを充填した後、処理室4に搬送し、実施形態1又は実施形態2に記載された、減圧工程以降の工程手順にしたがって処理される。